20120216 屈折矯正手術 @第9回kgk勉強会

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屈折矯正手術後の 角膜と合併症 ~歴史を交えて~ 2012216日第9KGK勉強会 京都府立医科大学眼科 加藤浩晃

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20120216 屈折矯正手術 @第9回KGK勉強会

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Page 1: 20120216 屈折矯正手術 @第9回KGK勉強会

屈折矯正手術後の

角膜と合併症

~歴史を交えて~

2012年2月16日 第9回KGK勉強会

京都府立医科大学眼科

加藤浩晃

Page 2: 20120216 屈折矯正手術 @第9回KGK勉強会

項目

屈折矯正手術後の角膜と合併症

~歴史を交えて~

② PRK 〔photorefractive keratectomy(レーザー屈折矯正角膜切除)〕

③ LASIK (laser in situ keratomileusis)

① RK 〔radial keratotomy(放射状角膜切開術)〕

Page 3: 20120216 屈折矯正手術 @第9回KGK勉強会

屈折矯正手術の歴史

1885年 世界初 角膜への屈折矯正手術 (ノルウエー)

白内障術後の乱視に対して角膜の内側から角膜切開を行った

1939年 世界初 近視に対して屈折矯正手術 (日本)

順天堂大学 佐藤勉教授が角膜前後面放射状角膜切開術を開発

当時は角膜内皮細胞の存在が知られていなかったため

水疱性角膜症が相次いで発生した!!(1960年代廃止)

円錐角膜治療からヒントを得て角膜表裏面にメスで切開を

加え角膜中央部分を平面化させた

1974年 Fyodorov(フィヨドロフ)がのちのRKを開発!(旧ソ連)交通事故で角膜表面に傷を負った近視の少年が回復と共に正視になった

→角膜前面のみから切開すれば安全な近視矯正が可能なことを発見

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1.RK 〔radial keratotomy(放射状角膜切開術)〕

角膜裏面には一切切開を入れずに表面のみ切開

中心部から放射状に4~12本

角膜の屈折力を弱め屈折力を調整

《欠点》

手術を行う眼科医の熟練を要する

近視の度数により切れこみが深くなり

角膜の強度が落ちる

※角膜厚の90%以上深くないと矯正効果は期待できない

輪部まで切開すると角膜脆弱・血管侵入

⇒現在は輪部の1mm以上手前で停止する術式(mini-RK)のみ行われている

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RK術後の角膜

【手術の効果】

年齢、optical zone(OZ)の直径切開線の長さ・深さ・本数

【矯正効果 大】

年齢高い、OZ小さい切開線が長く・深く・本数多い

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1975年 エキシマレーザーが開発

アメリカIBM社によって開発

当初は半導体などの基盤加工(電子回路を作成)に使用されていた

1983年 エキシマレーザーを屈折矯正手術に使用(アメリカ)

生体に応用できないか動物実験開始

角膜に熱変性を一切起こすことなく安全に切除可能であることを確認

1985年 エキシマレーザーを臨床応用開始 (ドイツ)

1986年 PRKが開発

1988年 PRKが始まる (アメリカ)

1990年 LASIKが始まる (ギリシャ Pallikaris(パリカリス))

屈折矯正手術の歴史

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1995年10月 FDAがエキシマレーザーを認可 (アメリカ)

1997年後半 LASIK手術が広がり症例数upPRKが主流だった1996年~1997年前半はLASIK症例は少なかった

2000年 厚生労働省がエキシマレーザーを認可 (日本)

屈折矯正手術の歴史

Page 8: 20120216 屈折矯正手術 @第9回KGK勉強会

2.PRK 〔photorefractive keratectomy(レーザー屈折矯正角膜切除)〕

《欠点》

術後に疼痛→CL装用(3日~1週間)視力安定に時間を要する

時として角膜上皮下混濁(ヘイズ)が発生

角膜上皮をメス・薬液・エキシマレーザーを用いて取り除き

Bowman膜から角膜中央部にエキシマレーザーを照射

《利点》

フラップ作成に伴なう障害がない

ハロー、グレアなどの副作用が出にくい

角膜の切除量が少なくすむ

術後の角膜強度が保てる

★エキシマレーザーによる上皮除去の際の遠視化

PTKモードで遠視化傾向

→最近は球面状レーザー照射で遠視化は少なくなったVISIX社STAR S4のセブンビーム照射ニデック社 EC-5000のフレックススキャン機能

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PRK術後の合併症

①haze(角膜上皮下混濁)

角膜実質細胞のレーザーに対する創傷治癒過程において生じた混濁

0.1%フルメトロン 6回/日より経過を見て漸減(1~2年かかることあり)

特に術後1年間は紫外線を避けることが予防になるとの報告もある

術後1~3ヶ月に発症のピーク

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3.LASIK(laser in situ keratomileusis)

LASIK

Epi LASIK

角膜上皮を剥離しないので疼痛がほとんどなく

視力回復が早くヘイズもほとんど起きない

LASIKでは上皮切開縁以外の実質の切開面ではほとんど創傷治癒反応は起きない

⇒外傷による切開面の解離の可能性

追加照射が可能

フラップを作成した後の角膜切除にエキシマレーザーを使用

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LASIK術後の合併症

① Diffuse lamellar keratitis(DLK)層間の炎症細胞浸潤

最初は点状の白い混濁

発症頻度は5%まれな病気ではない

※遅れると面状の混濁になりフラップが融解してしまう

★Linebargerの分類により診断して治療を行う!

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DLKの分類 (Linebargerの分類)

Stage 1

Stage 2

炎症細胞の浸潤

フラップ周辺部にSPK様の点状混濁フルオで染色されない

⇒0.1%フルメトロンの頻回点眼

炎症細胞のフラップ下びまん性浸潤

⇒リンデロン点眼、ステロイド内服も考慮

Stage 3

Stage 4

炎症細胞が角膜中央部に集まる

術後4日くらい⇒フラップ下の灌流洗浄

周辺の炎症細胞は消退

角膜実質中央に実質混濁・ストリエ

⇒数ヶ月洗浄せずに保存的に経過観察

Page 13: 20120216 屈折矯正手術 @第9回KGK勉強会

② フラップのしわ

視力には影響しないことが多い

しわが瞳孔領にかかり視力低下や

見えにくさの訴えがあるとき

→早期にしわのばし手術

LASIK術後の合併症

★しわの程度で分類

microstriae < wrinkle < fold

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③ epithelial ingrowth(上皮迷入)

LASIK術後の合併症

角膜上皮のフラップ下への迷入

ゆっくり起きる、術後1~3ヶ月になって発見

まれにmelting(上皮細胞が実質細胞を溶かす)こともある

瞳孔領にかからない島状のものはそれ以上増殖少ない⇒経過観察

Page 15: 20120216 屈折矯正手術 @第9回KGK勉強会

④ フラップ下感染

ブドウ球菌

LASIK術後の合併症

非定型抗酸菌症

フラップ下

斑状・顆粒状の白色混濁

※ニューキノロンはほとんど反応しない!

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★ keratectasia(医原性円錐角膜)

LASIK術後の合併症

PRKよりLASIKで起こりやすい

角膜厚を削り過ぎない!

円錐角膜疑いの患者には手術を行わない!!

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LASIK適応検査= Keratectasiaの予防

① 円錐角膜疑い患者の発見

TMSによる円錐角膜スクリーニング≪正常角膜≫

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② 角膜後面の異常

オーブスキャン

≪正常角膜≫

・後面エレベーションマップ

平均曲率半径55.0D以下後面の前方突出47µm以下中心の色調3色以内

・角膜厚470µm以上

③ 術後の角膜厚

レーザー照射後の角膜の厚みを250µm以上にする角膜厚の測定精度には±25µmの測定誤差あり⇒術前の計算上は術後予想される角膜厚を275µmは確保するべき

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フェムトセカンドレーザーによるフラップ作成

レーザーによってフラップレーザーによってフラップレーザーによってフラップレーザーによってフラップ

作成を行う作成を行う作成を行う作成を行う

従来の作成法よりも自由な従来の作成法よりも自由な従来の作成法よりも自由な従来の作成法よりも自由な

形で作成できる形で作成できる形で作成できる形で作成できる

2 ミクロンミクロンミクロンミクロン

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① 屈折値の安定しているすべての屈折異常

(近視、乱視、遠視)

②②②② 6D6D6D6D以内の近視

ただし医学的根拠を必要とし、かつ十分なイン

フォームド・コンセントをもとに10Dを超えない範囲

で行う

③③③③ 6D6D6D6D以内の遠視

④④④④ 20202020歳歳歳歳以上

日本眼科学会ガイドラインの適応

(2004年2月 再作成)