2014年改正韓国民事訴訟法及び 民事執行法上の外国判決の ......2014...

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2014年改正韓国民事訴訟法及び民事執行法上の外国判決の承認及び執行  93

Ⅰ.外国裁判の承認及び執行に関する     改正民事訴訟法及び民事執行法の条文

民事訴訟法第217条(外国裁判の承認)① 外国裁判所の確定判決またはこれと同一の効力が認められる裁判(以下,「確定裁判等」という)は,次の各号の要件をすべて揃えたら承認される。(改正2014年 5月20日)  1 .大韓民国の法令または条約による国際裁判管轄の原則上その外国裁判所の国際裁判管轄権が認められること

  2 .敗訴した被告が訴状またはこれに準ずる書面及び期日通知書や命令を適法な法 s気によって防御に必要な時間の余裕をおいて送達を受けたか(公示送達やこれと似た送達による場合を除く)送達を受けなかったとしても訴訟に応じたこと

講  演

2014年改正韓国民事訴訟法及び 民事執行法上の外国判決の承認及び執行─ DuPont v. Kolon事件と関連して─

李   圭 鎬 金 知萬 (訳)

Ⅰ.外国裁判の承認及び執行に関する改正民事訴訟法及び民事執行法の条文Ⅱ.意義Ⅲ.DuPont対 Kolon Industries, Inc. and Kolon USA, Inc事件Ⅳ.外国裁判所の承認要件Ⅴ.2014年改正民事執行法の主要内容Ⅵ.評価

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  3 .その確定裁判等の内容及び訴訟手続に照らしてその確定裁判等の承認が大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に反しないこと

  4 .相互保証があったか,大韓民国とその外国裁判所が属する国において確定裁判等の承認要件が顕著に均衡を喪失せず,重要な点において実質的な差がないこと

② 裁判所は第 1項の要件が充足されていたかについて職権で調査しなければならない(新設2014年 5月20日)【題目改正2014年 5月20日】

第217条の 2(損害賠償に関する確定裁判等の承認)① 裁判所は損害賠償に関する確定裁判等が大韓民国の法律または大韓民国が締結した国際条約の基本秩序に顕著に反する結果を招く場合には該当確定裁判等の全部または一部を承認できない。② 裁判所は第 1項の要件を審理するときには外国裁判所が認めた損害賠償の範囲で弁護士の報酬をはじめ訴訟と関連した費用や経費が含められるかとその範囲を考慮しなければならない。(本条新設2014年 5月20日)

民事執行法[施行2014年 5月20日][法律第12588号,2014年 5月20日,一部改正]第26条(外国裁判の強制執行)① 外国裁判所の確定判決またはこれと同一な効力が認められる裁判(以下,「確定裁判等」という)に基礎した強制執行は大韓民国の裁判所において執行判決でその強制執行を許可すれば,できる。(改正2014年 5

月20日)② 執行判決を請求する訴えは債務者の普通裁判籍があるところの地方裁判所が管轄し,普通裁判籍がないときには民事訴訟法第11条の規定によって債務者に対する訴えを管轄する裁判所が管轄する。[題目改正2014年5月20日]

第27条(執行判決)① 執行判決は裁判の当否を調査せず,しなければならない。② 執行判決請求する訴えは次の各号のうち,いずれかの一つに該当すれば却下しなければならない。(改正2014年 5月20日)

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  1 .外国裁判所の確定裁判等が確定されたことを証明しなかったとき  2 .外国裁判所の確定裁判等が民事訴訟法第217条の条件を揃えなかったとき

Ⅱ.意義

 国際訴訟において外国裁判の承認及び執行につき,最も重要な争点は懲罰的損害賠償判決の承認及び執行である。外国裁判の承認及び執行に関する条約に対して交渉することにあたって,懲罰的損害賠償という争点は主な障害物の一つである。換言すると,米国以外の国が米国で宣告された懲罰的損害賠償判決の執行を許可するか否かはハーグ条約草案(the proposed Hague Convention

on the Jurisdiction and the Recognition and Enforcement of Foreign Judgments in

Civil and Commercial Matters)を成案することにあたって,成敗を左右する最も難しい問題の一つとして評価されている(1)。懲罰的損害賠償判決に対する論争にもかかわらず,終局には条約が成立することができるが,懲罰的損害賠償に関する内容はその交渉において排除されると予想される。したがって,米国裁判所が宣告した裁判は将来に特定締約によって執行されるが,懲罰的損害賠償の部分はその締約で排除されると考えられる(2)。 しかし,それは今後の問題であり,現状態では懲罰的損害賠償判決の承認及び執行は結局各国の国内手続法に委ねられている。たとえば,米国内で提起された製造物責任訴訟において懲罰的損害賠償判決を受けた場合,韓国国籍の被告が米国内で財産がほとんどなく,大韓民国で相当な財産を有しているとすれば,米国内の判決は原告が大韓民国において執行できない限り,無意味であろう。米国と韓国の間では外国裁判の承認及び執行に対して国際条約が締結されていないため米国の判決債権者は執行判決請求訴訟を提起すべきところである

( 1)  Louise Lussier, A Canadian Perspective, 24 Brook. J. Int’l L. 31, 69 (1998); John Y. Gotanda, Punitive Damages: A Comparative Analysis, 42 Colum. J. Transnat’l L. 391, 443 (2004).

( 2)  Preliminary Draft Convention on Jurisdiction and Enforcement of Foreign Judgments in Civil and Commercial Matters, adopted 30 Oct., 1999, by the Special Commission of the Hague Conference on Private International Law 〈http://www.hcch.net/e/conventions/draft36.e.html〉

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韓国の国内手続法によるべきである。国際訴訟において懲罰的損害賠償判決の承認と関連してはその外国裁判が民事裁判に該当するか否かと韓国の公序に反するかが核心的争点である。 デュポン対コーロン事件(E.I. DuPont de Nemours and Co. v. Kolon Industries

Inc. et al.)(3) において米国の化学企業であるデュポン社は自社の先端繊維素材(アラミド)の営業秘密を不正取得したとして,韓国企業であるコーロンインダストリーを相手として営業秘密侵害による損害賠償請求の訴えを提起した。これに対して米国バージニア州東部地区所在の連邦地方裁判所は2011年11月アラミド技術の営業秘密を侵害したことを理由としてデュポン社に 1兆ウォン( 9億 2千万ドル)の賠償金を支払うような平決を宣告した。2012年 8月には米国バージニア州東部地区所在の連邦地方裁判所は,アラミド関連技術をコーロンが不当取得したと判示しながらデュポン社が提起した防弾服用の合成繊維に対する販売禁止訴訟で原告請求の引用判決を宣告した。コーロンが2006年から 5年間輸出したアラミドの輸出額の規模が30億ウォン余りに該当するところ,この平決でコーロンは総輸出額の300倍を超える賠償額を支払う危機に追い込まれた。控訴審では勝訴したが,韓国企業が懲罰的損害賠償判決を米国等の外国で宣告を受ける可能性が常に存在する。2010年 7月30日に発刊された「国際民事訴訟手続の改善方案」の最終報告書によると,設問に応じた国内企業の116個の企業のうち,「外国裁判所の判決に実際の損害賠償の範囲を超える部分がある場合,国内裁判所が承認及び執行を拒否できるように改正する方案」については84.5%が,「外国裁判所の判決に含まれた弁護士報酬等の訴訟費用が過多な場合,国内裁判所がこれの承認及び執行を拒否できるように改正する方案」に対しては86.2%が,「外国裁判所の判決の承認要件中一つの送達の適法性と適時性の要件を国内裁判所が職権で調査できるように改正する方案」については82.8%が賛成した(4)。すなわち,設問対象企業のうち,相当の国内企業が外国裁判所の懲罰的損害賠償判決または時刻企業の立場を保護するために過多な損害賠償判決に対して韓国裁判所が承認ないし執行しないようにするという意見を見せた。また,外国裁判所の判決に含まれている弁護士報酬等の訴訟費用が過多な場合に外国裁判所の判決に対する承認ないし執行時に十

( 3)  Case No. 3: 09─cv─00058 (U.S. District Court for the Eastern District of Virginia).

( 4)  李圭鎬=ホ・ドンウォン=ジョン・ヨンス=ソン・ヨンジン「国際民事訴訟手続の改善方案の最終報告書」全国経済人連合会(2010年 7月30日)

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分に考慮すべきであるという立場を見せており,さらに送達の適法性と適時性の要件については韓国裁判所が職権で調査しなければならいという立場を採っていた。とくに,送達の適法性と適時性の要件と関連して調査対象の企業116

社のうち,外国裁判所を管轄裁判所として被訴事例があったという56社の中で欠席判決等の送達手続において問題が生じた場合が半分を超える30社(53.6%)であって,手続的な部分で具体的な問題発生事項を問い合わせした結果無応答を除いた18社の応答中「召喚状または訴状送達が正しく行われていなかったため,訴訟において防御権を行使することができなかった」と答えた業者が 8社で,送達の問題は国際争訟につき重要であるというこがわかる。本稿では,外国裁判の承認及び執行に関する改正民事訴訟法(施行2014年 5月20

日,法律12587号,2014年 5月20日一部改正)及び改正民事執行法(施行2014

年 5月20日,法律12588号,2014年 5月20日一部改正)を解説し,分析して業界従事者と法律家に役に立てるようにしたい。

Ⅲ.DuPont対 Kolon Industries, Inc. and Kolon USA, Inc事件

1 .背景 アラミド繊維は強力な耐久性を有しており,同じ重さの鋼鉄より強度が 5倍も高い。そして,熱と化学薬品に対しても強い耐性を持っている。このような特性のため現在防弾服とヘルム,産業現場で使用される紐やケーブル等の素材として使われている(5)。デュポン社は1965年アラミド繊維を世界最初に市販しており,1973年「ケブラ」というブランドをリリースした。デュポン社に続き,日本の化学製品会社である「テイジン」が「トワロン」という自社のブランドを作ってデュポン社とアラミド市場を両分してきた。コーロン者は1979年韓国科学技術院(Korea Advanced Institute of Science and Technology; 以下,「KAIST」)のユン・ハンシック博士チーム(6) を支援し,アラミドの基礎研究を開始した。ユン・ハンシック博士チームは1984年アラミド繊維のパルプを作る源泉技術を開発し,1985年コーロン社と商用化のため共同開発に入った。コーロン社は1986年初めてアラミド繊維の試験生産に成功するが製品のリリースま

( 5)  http://www.businesspost.co.kr/news/articleView.html?idxno=1199( 6)  ヨーロッパ特許出願番号83 108 182.3(Application No. 83 108 182.3)の特

許権者は KAISTである。

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では至らなかった(7)。コーロン社はユン・ハンシック博士チームが所属していた KAIST(職務発明)から技術の移転を受ける頃,デュポン社はアラミド繊維材料を供給するオランダの「Akzo N.V.」(現在日本のテイジン(Teijin

Aramid))社と一緒にヨーロッパの特許庁に異議申請を提起した。デュポンと「Akzo N.V.」社はヨーロッパ特許庁で特許登録された KAISTのアラミド繊維(発明の名称:Highly oriented aromatic polyamide short fiber)が自社らの中間製品であると主張し,ヨーロッパ特許庁の異議部(Opposition Division)はデュポン社と「Akzo N.V.」社の意義申請を受けて特許取消の決定を下した。これで,KAISTは特許取消決定に不服して,1991年12月ヨーロッパ特許庁の控訴審判所(Boards of Appeal of the European Patent Office)の合意部は KAISTのユン・ハンシック博士チームの技術を新規性と進歩性がある発明という審決を下し,KAISTの特許を維持した(8)。 この審決以降 2年が経った1993年コーロン社はアラミド繊維の量産体系を構築するために設備に投資した。デュポン社がアラミドの原料を生産する「Akzo N.V.」社に原料を供給できないように圧力を加え,コーロン社はアラミド生産に必要な原料を確保することに困難を経験した(9)。そのうち,コーロン社は1997年外貨危機によってこの事業を中断したが,2001年再びこの事業を進行して2003年試製品の清算に成功して2005年世界 3番目で「ヘラクロン」という独自のブランドを出仕した。コーロン社は韓国グミ市に年間 5千トンを生産できる規模の設備を持っている。

2 .事件の概要  3代パラアラミド(para─aramid)製造社である DuPont,Teijin Aramid及びコーロン(Kolon)は米国内でパラアラミド繊維を販売していた。デュポン社は1965年パラアラミド繊維を発明して一定の間に自社ブランドであるKevlar繊維で米国内のパラアラミドの全体市場を占有したテイジン社は1987

年米国市場に競争製品である Twaron繊維を販売し始めて,1990年以降毎年デュポン社の市場占有率を減少させはじめた。コーロン社側の専門家の承認のうち,一人の証言によると,2006年から2009年までの間,米国内パラアラミド市

( 7)  http://www.businesspost.co.kr/news/articleView.html?idxno=1199( 8)  Case No. T 347/89─3.3.3. (6 December, 1991).( 9)  http://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_ general/549819.html

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場でデュポン社が占める市場占有率は2006年最高59%から2009年55%に落ちて,その減少された市場占有率の多くはテイジン社が占めるようになっていた(10)。米国内のパラアラミド市場はデュポン社とテイジン社の 2社に集中されており,合計米国販売の99%を占めていた。このような極端的な市場集中はこの産業の高い進入の壁としてなっていた。パラアラミド製品は製造期限に敏感で高かった。そしてコーロン側が立証したとおり,潜在的重要者は自身の具体的な要求を従属しているのかの可否を確認するために個別パラアラミド製品をテストして適合可否を判断した。このような過程は一般的に 6カ月から 3年ほどがかかることであった。テイジンの市場の食い荒らしにもかかわらず,デュポン社が1997年から2005年まで75%程度の純利益を設けており,この製品の重要者の間で価額差別化を行なう能力を有していた(11)。 このような背景の中,2009年 2月 3日デュポン社はコーロン社(韓国会社)及びその米国支社である Kolon USA, Inc者がデュポン社のケブラアラミド繊維(KEVLAR aramid fiber)に関する営業秘密及び秘密情報を不法取得するために持続的に談合行為をしたとし,コーロン社に訴えを提起した。すなわち,デュポン社はコーロン社を相手として提起した訴えで原告側は被告が営業秘密の侵害行為,営業秘密情報の窃取,共謀及びケブラと関連したその他の商事不法行為を行なったと訴状で主張した。2012年 8月30日米国裁判所はコーロン社に今後20年間全世界的にヘラクロンを生産したり,販売したりすることができないと禁止命令を下した。2012年 8月31日コーロン社は第 1審裁判所の禁止命令等に対する仮処分及び緊急執行停止を申請した。米国控訴裁判所は緊急執行停止の申請のみを承認した。 そのあと,2012年 9月 4日コーロン社は第 1審判決に不服して提起した。コーロン社控訴審でデュポン社の営業秘密主張に証拠が不十分である点と第 1審でコーロン社に決定的に有利な証拠が排除されていた点を提起した。米国連邦控訴裁判所は2012年 9月21日コーロン社側が申請した仮処分の申請を承認した。控訴審弁論は2013年 5月17日終結された。2014年 2月28日,デュポン社との訴訟と関連した弁護士費用支給請求訴訟においてもコーロン社がデュポン社に敗訴した。したがって,コーロン社は敗訴が確定されれば追加で1883万4175

(10)  Kolon Industries Inc., v. E.I. DuPont de Nemours & Co., Case No. 12─1587, at 3 (4th Cir. April 3, 2014).

(11)  Id.

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ドル(弱198億ウォン)を賠償するようになる。 2014年 4月 3日米国バージニア州のリッチモンド所在の控訴裁判所は第 1審裁判所がコーロン社の提出した証拠を排除したことは間違っていたと説示しながら,2011年に宣告された第 1審判決を破棄した。第 1審裁判所はデュポン社が先端繊維製品であるアラミドと関連した営業秘密を侵害されたとしてコーロン社に民事訴訟を提起し, 1審裁判所は 9億1990万ドル(弱 1兆ウォン)を賠償するように判示したことがある。コーロン社が2006年から 5年間輸出したアラミドの輸出額規模が30億ウォン余りに該当するが,この評決でコーロン社は総輸出額の300倍を超える賠償額を支払うようになった。2013年 Kolon

Industries, Incの売上高は5,261,500,000,000ウォン(4,760,676,800米国ドルないし4,194,803,434ユーロ)であり,営業利益額は231,600,000,000ウォン(209,554,831米国ドルないし184,646,293ユーロ)である点を勘案すると,その懲罰的損害賠償額の規模は過度であることがわかる。 これに対して控訴裁判所はデュポン社の営業秘密であることを立証するに足りる証拠が不足であると判示しつつ, 1審においてコーロン社に決定的に有利な証拠が裁判過程で排除されたと判示した。控訴裁判所は新しい判事が再度裁判するように命じた。この判決は訴訟が原点から再度はじまることになったことを意味する(12)。しかし,韓国企業が懲罰的損害賠償を命じた外国判決ないし域外適用を認めた外国裁判所の侵害禁止判決に露出できるという点でこのゆな争点に対し,改正韓国民事訴訟法の意義を分析する必要がある。

Ⅳ.外国裁判所の承認要件

1 .改正民事訴訟法第217条の表題 改正民事訴訟法第217条の表題を「外国裁判の承認」と修正した。承認対象には外国裁判所の判決のみならず決定等のその他の裁判も含まれるからである。そして,この条文は外国裁判の承認に関するものであるからその趣旨を十分に生かすために「外国裁判の承認」として表題を決めた。韓国大法院2010年4月の宣告2009ダ68910判決では「外国裁判所の判決とは,裁判権を有する外国司法機関がその権限に基づいて私法上の法律関係に関して対立的当事者に対する相互館の尋問が保証された手続において最終的に行なった裁判」を意味

(12)  http://www.businesspost.co.kr/news/articleView.html?idxno=1199

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し,その名称や形式等は問題とならないという趣旨で判示したため,改正民事訴訟法第217条の表題の変更は既存の判例と差異がものではない。改正民事訴訟法第217条の表題変更は韓国の既存の学説(13) と符合する。

2 .承認対象 外国裁判所で確定された終局裁判に加え,その外国裁判所で確定された終局裁判が再審等の特殊な場合を除いて,他の一般的な不服手続や訴訟によってはその効力が否定できないようにするため改正民事訴訟法第217条第 1項で,「外国裁判所の確定判決またはこれと同一の効力が認められる裁判」として修正した(14)。すなわち,改正民事訴訟法第217条第 1項は外国裁判所の確定判決はむろん,既判力がある判決以外の裁判についても承認が可能であると拡大している。既判力が認められる和解調書等も確定判決と同一の効力が付与される場合には承認が可能であるとみる。すなわち,裁判上の和解及び請求の放棄または認諾等が調書に記載された場合に該当著書が作成された国の法律によって韓国民事訴訟法のように確定判決と同一の効力を認めるなら韓国で承認できる(15)。 そして,外国裁判所ではなく,外国裁判所書記等が下した判決が改正民事訴訟法第217条による承認対象となるのかが問題になる。大法院2010. 04. 29. 宣告2009ダ68910判決では「アメリカ合衆国のカリフォルニア州旧民事訴訟法(2002年 9月22日改正され,2003年 1月 1日に効力発生する前までのもの)でいわば承認判決(confession judgmentまたは judgment by confession)に対して規定する第1132条ないし第1134条は,被告が特定金額の債務に関して訴訟手

(13)  石光現『国際私法と国際訴訟』(第 5巻)(博英社・2012年)444頁脚注13;同「国際裁判管轄と外国判決の承認及び執行」国際私法研究第20巻第 1号(2014年)32頁

(14)  第19代国会法制司法委員会の第324回 1次法制司法委員会の会議録13頁;外国裁判所の裁判が終局的裁判であるか否かについて改正以前の大法院判例は一貫していなかった。大法院2010. 4. 29. 宣告2009ダ68910判決は執行判決の対象である外国判決の終局性を要求したが,米国裁判所の回生計画案の認可命令によって発生した免責効力の承認に関して,大法院2010. 3. 25. 2009マ1600決定は認可命令が民事訴訟法第217条による承認対象であるとして外国判決の承認要件としての外国判決の終局性の争点に関して一貫していない立場を採っていた。石光現「承認対象である外国判決の概念に関する大法院裁判の相容れない」法律新聞第3976号(2011年)11頁

(15)  濟州地法1998. 5. 28. 宣告97カハップ2982参照。

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102  比較法学 49巻 3号

続を経ず判決として登録することを書面で承認し,さらに被告の代理人の弁護士がその提案された判決内容を検討したことと被告に上記規定上の手続きを利用することによって放棄する訴訟法上の権利及び防御手段に関して説明してその手続を利用するように助言したことを書面で確認した場合に,当事者が訴訟手続を経ることなくても被告の債務承認陳述書及び被告の代理人の弁護士の確認陳述書等を判決として登録することを申請できる。また,このような申請があれば裁判所の書記(clerk)は上記各書類に署名した後これを判決として登録しなければならないと規定している。 このような承認判決の制度は原告の承認判決申請があれば,裁判所の書記が,司法機関の関与がない状態で作成された被告の債務承認陳述書及び被告の代理人の弁護士の確認陳述書の提出可否のみを検討してこれを判決として登録することであり,その過程で当事者に対する相互間の尋問の機会等が保証されていたとはいえない。したがって,上記のような,いわば承認判決は,たとえその名称が「判決」であって,正式の判決と類似した効力を有していたとしても,また被告が尋問権等の訴訟法上の権利を意図的・自発的に放棄するようにして承認判決手続を利用するように事前に同意したとしても,これを裁判所が当事者間の相互間の尋問が保証された司法手続きで終局的になした裁判とは言えず……」と,して米国カリフォルニア州の承認判決は外国裁判所の判決ではないと判示した(16)。このような判例の立場は改正民事訴訟法第217条第 1項においても依然として維持されると予想される。

3 .承認要件として公序(改正民事訴訟法第217条第 1項第 3号) 改正民事訴訟法第217条第 1項第 3号では,「その確定裁判等の内容及び訴訟手続に照らしてその確定裁判等の承認が韓国の善良な風俗やその他の社会秩序に反しないこと」の要件を外国裁判の承認要件の中の一つとして規定している。改正前の民事訴訟法第217条第 1項第 3号では,「その判決の効力を認めることが大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に反しないこと」として規定していたが,改正民事訴訟法第217条第 1項第 3号では実体的公序と手続的公序の両者を明示的に規定している。同様に日本の民事訴訟法(平成19年 6月27

(16)  キム・ウジン「承認判決と外国判決の承認・執行─対象判決:大法院2010. 4. 29. 宣告2009ダ68910判決─」金文換総長定年記念論文集第 1巻:国際関係法の新しい地平(2011年)607頁;グ・ザホン「執行判決の対象となる外国裁判所の判決の意味」大法院判例解説通巻第83号(2010年)335頁

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日法律第95号)第118条第 3号では,「外国裁判所の確定判決の効力」という表題で「判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと」を外国裁判所の確定判決の承認要件中の一つとして規定し,日本民事訴訟法も実体的公序と手続公序を外国判決の承認要件で一緒に包摂している。

4 .相互保証要件(改正民事訴訟法第217条第 1項第 4号) 改正前民事訴訟法第217条第 4号では,「相互保証があること」という要件を外国裁判所の確定判決の承認要件中の一つとして規定していたが,改正民事訴訟法第217条第 1項第 4号では「相互保証があったか,大韓民国とその外国裁判所が属する国において確定裁判等の承認要件が顕著に均衡を喪失せず,重要な点で実質的に差がないこと」として規定している。相互保証要件に対する改正民事訴訟法の規定は既存の判例の立場を反映したものである。 相互保証とは,「外国が条約または国内法によって韓国判決の当否を調査なく,韓国民事訴訟法上の外国裁判所の確定判決の承認要件と同じであるか,またはこれより寛大な条件の下で韓国判決の効力を認める場合」と,定義している(17)。しかし,大法院2004.10.28.宣告2002ダ74213判決では,「我が国と外国の間に同種の判決の承認要件が顕著に均衡を喪失せず,外国の要件が我が国の要件より全体として過重でなく重要な点で実質的にほぼ差がないほどであれば,相互保証の要件が具備される」との趣旨として相互保証の要件を緩和した。後者の判決が判例(18) として定着された(19)。

(17)  大法院1971. 10. 22. 宣告71ダ1393判決(18)  同旨,大法院2009. 6. 25. 宣告2009ダ22952判決;大法院2013. 2. 15. 宣告

2012ム73判決(19)  大法院2013. 2. 15. 宣告2012ム66判決「離婚及び親権者・養育者指定・幼児

引渡」では,「民事訴訟法第217条第 4号は我が国の実が受ける不利益を防止して国際関係において衡平を求めるために外国判決の承認要件として「相互保証があること」を要求していたが,判決国において外国判決の承認要件が我が国のそれとすべての項目にかけて完全に同じであるか,むしろ寛大であることを要求するのはあまりに外国判決の承認範囲を狭める結果となり,国際的交流が頻繁な現在の現実と合わず,むしろ外国で我が国の判決にチアする承認を拒否するようにしてしまう不合理な結果を招くことを考慮すると,我が国と外国の間に同種判決の承認要件が顕著に均衡を喪失せず,外国において定めた要件が我が国で定めたそれより全体として過重でなく重要な点で

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 国際民事司法共助法第 4条は相互主義という表題の下,「司法共助に関する条約が締結されていない場合でも司法共助を嘱託する外国裁判所が属する国が同一または類似した事項に関して大韓民国裁判所の司法共助嘱託に応じる保証をした場合にはこの法を適用する」と,規定している。この条文でも類推できるように相互保証という用語から現在の大法院はんれうぃも導くことには限界が感知できる。 そのため,改正民事訴訟法第217条第 1項第 4号は,「相互保証」という用語を削除することで国際的に生じうる誤解をなくすため,従前の規定と同じように「相互保証」という用語をそのまま維持しながら相互保証という概念で現行判例を導くことには限界があるという点を認識して大法院2004. 10. 28. 宣告2002ダ74213判決等で緩和された概念の「相互保証」も包摂する形態として立法したものである。

実質的にほぼ差がない程度であれば民事訴訟法第217条第 4号で定める相互保証の要件を具備していたとみるのが相当である。また,このような相互の保証は外国の法令,判例及び慣例等によって承認要件を比較して認められるのであれば十分であって必ず当事者国との条約が締結されている必要はなく,当該外国で具体的に我が国の同種判決を承認した自レがなくても実際に承認できると期待できる状態であれば十分である」と判示した。具体的に大法院2013.2.15.宣告2012ム66判決「離婚及び親権者・養育者指定・幼児引渡」では,「甲が配偶者乙を相手として米国オレゴン州の裁判所に離婚訴訟を提起して子女丙等に対する親権と養育権を甲に付与することなどを内容とする判決が確定されたが,上記判決が民事訴訟法第217条第 4号で定める外国判決の承認要件として「相互保証」の要件を揃えていたかが問題となった事案で,米国オレゴン州法が離婚に関する外国判決の承認及び効力に関して特別な規定をおいていないが,オレゴン州裁判所は礼譲(Comity)によって外国判決の場合でも外国裁判所が実際的管轄を有しており,裁判結果が欺罔によって不正に取得されていおらず,適正な送達と尋問等の適法手続によって構成になされており,オレゴン州の公共秩序に反しない場合にはこれを承認してきた点に照らし,オレゴン州の外国判決の承認要件は我が国に比べ顕著に均衡を喪失しておらず,我が国の民事訴訟法が定めたそれより全体として過重ではなく,重要な点で実質的にほぼ差がないからオレゴン州が我が国の同種判決を承認することに期待できるという理由で,上記判決が相互保証の要件を揃えていたとみた原審判断は正当である」と判示した。

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5 .送達要件の審理(職権調査事項) とくに,外国裁裁判の承認要件中の送達要件が職権調査事項(20) であるか,抗弁事項であるかについては従来学説上の論難があった(21)。送達要件に対しては大法院2010. 4. 29. 宣告2009ダ68910判決が職権調査事項である点を明確にした。改正民事訴訟法第217条第 2項は判例にしたがって外国裁判の承認要件が職権調査事項に該当する点を明文化した。

6 .懲罰的損害賠償を宣告した外国裁判所の確定裁判に対する承認の可否( 1) 既存の学説及び判例 韓国の通説的見解によると,懲罰的賠償は被害者が被った損害の程度と関係なく,海外者の制裁と一般予防を目的とするので,少なくとも相当な金額を超過する限度ではその承認及び執行が韓国の公序に反すると主張する(22)。 懲罰的賠償が問題となった事例では,水原地方裁判所平澤支院2009. 4. 24. 宣告2007カハップ1076判決がある。約定保証金とその 2倍相当の懲罰的損害賠償金の支給を命じるワシントン州裁判所の判決に基づく執行判決の請求事件に対して水原地方裁判所は,「懲罰的損害賠償金は損害填補を超えて故意的に違反行為をした者を懲戒したり,そのような違反行為の発生を抑制したりするためのものであるが,これは損害賠償義務に対して懲罰的性格を付与せず損害発生善の状態としての回復に目的がある韓国の損害賠償制度と根本理念が異なり,韓国の損害賠償体系で約定保証金の 2倍相当の懲罰的損害賠償金の支給を命じることは原告に対する適切な賠償のために必要な程度を超える」とみて,懲罰的損害賠償金とその遅延利息の支給を命じる部分は執行を不許可した。ただし,特定法律で三倍賠償制度を導入した現状況でこの判決が維持できるかは再度検討する必要がある。

(20)  キム・サンウォン=パク・ウドン=リ・シユン=リ・ゼソン編『注釈民事訴訟法( 5)』韓国司法行政学会(1998年)215頁;金柱祥,「外国判決の承認と執行」司法論集第 6集(1975年)500頁;崔公雄「外国判決の效力」司法論集第18集(1987年)349頁

(21)  外国判決の承認要件としての層厚要件は抗弁事項であると主張した見解としては,石光現『国際私法と国際訴訟(第 1巻)』(博英社,2001年)422~423,429頁

(22)  ヤン・ビョンヘ「公序要件と懲罰的賠償判決に関して」ILKAM Law Review第 4巻(1999年)47頁;石光現『国際民事訴訟法』(博英社,2012年)380頁

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( 2) 2014年改正民事訴訟法の内容 改正民事訴訟法第217条の 2では「損害賠償に関する確定裁判等の承認」という表題で,第 1項においては「裁判所は損害賠償に関する確定裁判等が大韓民国の法律または大韓民国が締結した国際条約の基本秩序に顕著に反する結果を招く場合には該当確定裁判等の全部または一部を承認できない」と規定している。 まず,この条文は改正民事訴訟法第217条の 2第 1項で定めた外国裁判の承認要件に加え,損害賠償に関する確定裁判等には追加的な承認要件を加えるためのものではない。改正民事訴訟法第217条第 1項第 3号の公序要件と関連して立法したものである。ただ,損害賠償に対する確定裁判等の承認条文を公序要件に対する但し規定とするか,それとも別途の条文として立法することが妥当であるかにおける立法過程で悩みがあったが(23),大韓民国の法律の基本秩序または大韓民国が締結した国際条約の基本秩序,すなわち国内法秩序を「大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序」と同一線上で見ることが難しい点と外国裁判の承認要件に但し規定を置くことが適切であるか否かに対する論難があったため,これを最終的には別途の条文として規定するようになった(24)。ここで「損害賠償に関する確定裁判等が大韓民国の法律の基本秩序または大韓民国が締結した国際条約の基本秩序に顕著に反する結果を招く場合に,「大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序」に違反したこととなるが,これは「公序」概念が一貫性を維持する意味で,つまり普遍主義的観点で判断すべきであろう。改正民事訴訟法第217条 2で規定した「大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序」(公序)と同じ意味であるかが問題になろう。これと関連しては2002年民事訴訟法の全部改正前の法文が「外国裁判所の判決」が公序に反する場合を規定している点,大韓民国の法律または国際条約の「基本秩序」が結局公序に含まれる点等に照らしてみると,実質的な差がないという見解が存在す

(23)  立法論議過程で法の根本的原則(fundamental principles of the law)という表現が検討されと言われている。ユン・ソングン「外国判決及び仲裁判定の承認要件としての公序違反」国際私法研究第20巻第 2号(2014年)443頁脚注12

(24)  李圭鎬「外国裁判の承認等に関する改正民訴法・民事執行法に対する評価」法律新聞(2014年)11頁;ユン・前掲注24・443頁では,このゆな規定方式が1927年ゼネーブ協約(Convention on the Execution of Foreign Arbitral Awards)第 1条第(e)項で公序と法の原則並置したことを連想させるという。

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る(25)。法秩序が社会秩序に含まれる概念ではあるが,上記の概念を相互区別する実益があるかについては疑問である。したがって,改正民事訴訟法第217

条 2における焦点は損害賠償に関する外国の確定判決等が大韓民国の法律の基本秩序あるいは大韓民国が締結した国際条約の基本秩序に「顕著に反する結果を招」かいなかに委ねられているといえる。参考としてハーグ裁判管轄合意条約(The 2005 Hague Convention on Choice of Court Agreements)第11条第 1

項は「判決が当事者に懲罰的損害賠償を含んで実際に被った損失または損害を填補することではなく損害賠償を引用する場合に判決の承認または執行はその範囲内で拒否できる」と規定している。ハーグ裁判管轄条約第11条第 1項は外国判決の承認または執行の要請を受けた国の裁判所(the court addressed)が該当事件で自国裁判所も同一の損害賠償額を認めるかについて審査できるということを意味するのではない(26)。ハーグ裁判管轄合意条約第11条は損害賠償判決が実損害額を超過することが明白な場合のみ適用される(27)。とくに,この条文は懲罰的または抑止的損害賠償額(punitive or exemplary damages)に適用される(28)。したがって,ハーグ裁判管轄合意条約第11条第 1項でこのような類型の損害賠償を明示的に規定した(29) しかし,例外的な事例につき,裁判国の裁判所によって填補的性格の損害賠償額で性格決定となった損害賠償額もこの条文の適用を受けることができる(30)。ハーグ裁判管轄合意条約第11条

(25)  ユン・前掲注24・443頁;オ・ジョンフ「執行判決の拒否事由である公共秩序違反に関する研究─請求意義事由があるとき執行判決をなすことが公共秩序違反であるのか?」民事訴訟第11巻第 1号(2006年)318頁では,「善良な風俗」は社会秩序または公序の一種としてみて,さらに322頁では,韓国民事訴訟法第217儒第 3項の「善良な風俗その他の社会秩序」あるいは公共秩序が韓国法の基本的原理を言いすることであるとみることができると主張する。

(26)  Trevor Hartley & Masato Dogauchi, Convention of 30 June 2005 on Choice of Court Agreements: Explanatory Report by Trevor Hartley & Masato Dogauchi, para. 205 (d), p. 855, available at http://www.hcch.net/upload/expl37final.pdf (last visit on April 1st, 2015) (以下,‘Harley/Dogauchi, Explanatory Report’);パク・ジョンフン「ハーグ裁判管轄合意の協約」国際私法研究第18号(2012年)233~278頁

(27)  Harley/Dogauchi, Explanatory Report, para. 205 (d), p. 835.(28)  Harley/Dogauchi, Explanatory Report, para. 205 (d), p. 835.(29)  Harley/Dogauchi, Explanatory Report, at para. 205 (d), p. 835.(30)  Harley/Dogauchi, Explanatory Report, at para. 205 (d), p. 835.

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第 1項は損害賠償額の予定(liquidated damages)のみならず,法廷損害賠償額(statutory damages)の場合にも適用される(31)。ハーグ裁判管轄合意条約第11条第 1項によると,損害賠償額の予定や法廷損害賠償額と関連して承認及び執行の要請を受けた国の裁判所はそのような損害額が適切な水準の賠償額を構成に評価できる額を提供することではなく,被告を制裁しようとする意図した限度内のみ承認及び執行を拒否できる(32)。 そして,改正民事訴訟法第217条の 2第 2項は「外国裁判所が引用した損害賠償が訴訟と関連した費用と経費を填補するか否かはその範囲を考慮しなければならない」と規定したハーグ裁判管轄合意条約第11条第 2項をモデルとしたものである。その他に弁護士報酬は国によってその水準が異なるためこれを考慮した条文を置く必要があった。そのような点で改正民事訴訟法第217条の 2

第 2項は「裁判所は第 1項の要件を審理するときには外国裁判所が認めた損害賠償の範囲に弁護士報酬をはじめ訴訟と関連した費用と経費が含まれるかはその範囲を考慮しなければならない」と規定したものである(33)。

(31)  Harley/Dogauchi, Explanatory Report, at para. 205 (e), p. 835.(32)  Harley/Dogauchi, Explanatory Report, at para. 205 (e), p. 835.(33)  2010年 3月26日韓国国際私法学会が承認した国際知的財産訴訟原則第28条

第 1項では「承認国の裁判所は外国裁判が当事者に懲罰的損害賠償等実際に被った損失または損害を填補することでなく過度な損害賠償を命じる場合にはその範囲内で裁判の承認または執行を許諾しないことができる」と規定して,同原則第28条第 2項では「第 1項において承認国の裁判所は外国裁判が命じた損害賠償が訴訟と関する費用の填補を含むのか否かを考慮すべきであり,外国裁判の承認または執行を許諾しないことができる」と規定している(「国際知的財産訴訟原則」国際私法研究第16号(2010年)361~413頁)。国際知的財産訴訟原則第28条第 2項前段の部分は懲罰的損害賠償の性質決定の問題であり,同原則第28条第 2項後段の部分は公序条項の運営に関する問題である。

   知的財産権に関する国際私法原則(日韓共同提案,以下「日韓共同提案」という)第407条は「懲罰的損害賠償または現実で発生した損害の填補を超えた過度な損害賠償を命じる外国裁判はその範囲において承認または執行できない」と,規定している。

   一方,米国とヨーロッパでも国際知的財産訴訟に関する類似の原則を制定する学会の動きがあった。米国法律家協会(The American Law Institute)2007年 5月14日制定した「国際紛争事件における裁判管轄権,準拠法指定及び判決を規律する原則」(Intellectual Property: Principles Governing Jurisdiction, Choice of Law, and Judgments in Transnational Disputes(以下,

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( 3) 評価 2014年 4月17日に開催された第19代国会法制司法委員会の 1次法案審査の第1小委員会において「下請け取引の公正化に関する法律(34) や期間制及び短時

「ALI原則」という))と知識財産関連の抵触法に関するヨーロッパマックスフランクグループ(European Max Planck Group on Conflict of Laws in Intellectual Property (CLIP))が2011年12月 1日制定した知識財産に関する抵触法の原則(Conflict of Laws in Intellectual Property: the CLIP Principles(以下,「CLIP原則」という))がそれにあたる。

   CLIP原則第 4:402条第 2項は ALI原則第411条第 2項に学んで懲罰賠償が填補賠償であるか否かを判断するにあたって訴訟費用の不安を含むのか否かを考慮すべきであると規定している。The American Law Institute, Intellectual Property: Principles Governing Jurisdiction, Choice of Law, and Judgments in Transnational Disputes, May 14, 2007, p. 187 (American Law Institute Publishers, 2008); Pedro de Miguel Asensio, “Article 4: 402: Non─Compensatory Damages,” at European Max Planck Group on Conflict of Laws in Intellectual Property, Conflict of Laws in Intellectual Property: the CLIP Principles and Commentary, para. 4: 402. N02, p. 446 (2013)によると,ALI原則第411条第 2項は相当の部分がハーグ裁判管轄合意協約第 1条に基礎したものであるという。さらに,Asensio教授は外国裁判の不承認する義務を類似した非填補的損害賠償制度を設ける国には負担してはならないという側面で日韓共同提案第407条の文言が国際的観点からみると過度に制限的であると主張する)。しかし,日韓共同提案第407条では国際知的財産訴訟原則第28条第 2項に相応する条文を設けていない。なぜならば,国際知的財産訴訟原則第28条第 2項前段の部分は懲罰的損害賠償の性質決定問題として,そして同原則第28条第 2項後段の部分は公序条項の運営と関連した問題で,個別的事例の特性に依存することが多きいと考えて各国の裁判所の解釈に委ねることにしたからである。(木棚照一編著『知的財産の国際私法原則研究─東アジアからの日韓共同提案─』早稲田大学比較法研究所叢書40号(2012年)53~54頁;「知的財産権に関する国際私法原則(日韓共同提案)」国際私法研究第17号(2011年)594頁)

(34)  下請け取引の公正化に関する法律(施行2014. 11. 29. 法律第12709号,2014. 5. 28. 一部改正)

  第35条(損害賠償責任)  ① 現事業者がこの法の規定を違反することで損害を被った者がいる場合には

その者に発生した損害に対して賠償責任を負う。ただし,現事業者が故意または過失がないことを立証した場合にはそうではない。(改正2013. 5. 28.)

  ② 現事業者が第 4条,第 8条第 1項,第10条,第11条第 1項・ 2項及び第12

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間労働者保護等に関する法律」(35) で損害額の 3倍まで懲罰的損害賠償を認める立法が最近設けられている点を認識しながらも懲罰的損害賠償として高額賠償の民事判決を承認することは公序良俗に反する趣旨で認めた韓国の通説及びドイツ,日本等の立法例ないし判例を改正民事訴訟法に明示的に置こうとしたものである。 前述したように改正民事訴訟法第217条の 2における焦点は損害賠償に関する外国の確定裁判が大韓民国の法律の基本秩序または大韓民国が締結した国際条約の基本秩序に「顕著に反する結果を招くかいなか」に委ねられていたと言

条の 3第 3項を違反することで損害を被った者がいる場合にはその者に発生した損害の 3倍を超えない範囲で賠償責任を負う。ただし,現事業者が故意まあは過失がないことを立証した場合にはそうではない。(改正2013. 5. 28.)

  ③ 裁判所は第 2項の賠償額を定めるときには次の各号の事項を考慮しなければならない。(新設2013. 5. 28.)

    1.恋または損害発生の恐れを認識した程度    2.違反行為によって受給事業者と異なる者が被った被害規模    3.違反行為によって現事業者が取得した経済的利益    4.違反行為による罰金及び課徴金    5.違反行為の期間・回数等    6.現事業者の財産状態    7.現事業者の被害救済努力の程度  ④ 第 1項または第 2項によって損害賠償請求の訴えが提起された場合「独占

規制及び校正取引に関する法律」第56条の 2及び第57条を準用する。(改正2013. 5. 28.)

  【本条新設2011. 3. 29.】(35)  期間制及び短時間労働者保護等に関する法律(施行2014. 9. 19. 法律第

12469号,2014. 3. 18. 一部改正)  第13条(調整・仲裁または是正命令の内容)  ① 第11条の規定による調整・仲裁または第12条の規定による是正命令の内容

には差別的行為の中止,賃金等の労働条件の改善(就職規則,団体協約等の制度改善命令を含む)あるいは適切な賠償等が含まれうる。(改正2014. 3. 18.)

  ② 第 1項による賠償額は差別的処遇に基づいて期間制労働者または短時間労働者に発生した損害額を基準として定める。ただし,労働委員会は使用者の差別的処遇に明白な故意が認められるか差別的処遇が反復される場合には損害額を基準として 3倍を超えない範囲で賠償を命じることができる。(新設2014. 3. 18.)

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えよう。この条文はハーグ裁判管轄合意条約第11条第 1項に比べ,外国判決の承認及び執行をより容易にできるようにするのではないか疑問が生じる。第19

代の国会法制司法委員会では改正民事訴訟法第217条の 2と関連して既存の裁判所の判例や通説そしてドイツの判例で使われている用語である「基本秩序」を導入して,その範囲を明確にかつ具体的に定めた点を明らかにしている(第19代の国会法制司法委員会第323回 1次法案審査第 1小委員会の会議録(2014

年 4月17日),33頁)(36)。したがって,改正民事訴訟法第217条の 2第 1項は既存の判例を受容したことを明らかにしている。しかし,「顕著に」という用語のため,実務上・解釈上の混乱が過重されるかという恐れがある。これと関連して水原地方法院2013. 11. 28. 宣告2013カハップ14630判決及びこの事件の控訴審であるソウル高等法院2014. 12. 11. 宣告2014ナ1463判決に注目する必要がある。 米国裁判所の特許侵害判決で認めた原告の損害額の承認が公序に反するか否かが問題になって事案である水原地方法院2013. 11. 28. 宣告2013カハップ14630

判決につき,裁判所は「この事件 1, 2審判決で引用された損害賠償額は過度であるものの,原告に利益を付与過ぎて,被告には過重な責任を賦課することに見え,さらに外国判決の承認の可否を判断するにあたって外国判決の基礎となった事実関係と韓国との連結を意味する,いわゆる事件の内国関連性も重要な考慮要素であるところ,被告が大韓民国の法人であり,この事件第 1, 2審判決を承認する場合大韓民国法人である被告が破産する恐れがある点に照らして事件の内国関連性も比較的に強いというべきであるから,この事件第 1, 2

審判決の承認は原告が求める金額の70%に該当する9,109,278.5ドルを限度にこれを制限した。これに反してこの事件の控訴審であるソウル高等法院はソウル高等法院2014年12. 11. 宣告2014ナ1463判決で,「米国第 1, 2審判決が原告の

(36)  大法院2012. 5. 24. 宣告2009ダ22549判決では,「民事訴訟法第217第 3号は外国裁判所の確定判決の効力を認めることが大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に反しないことでなければならない点を外国判決の承認要件の一つとして規定しているところ,ここで外国判決の効力を認めること,すなわち外国判決を承認した結果が大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に反するか否かはその承認可否を判断する視点で,外国判決の承認が大韓民国の国内法秩序が保護しようとする基本的な道徳的信念と社会秩序に与える影響を外国判決が扱う事案と大韓民国との関連性の程度に照らしてみて判断すべきであり,このときその外国判決の主文のみならず理由及び外国判決を承認する場合発生する結果まで総合的に検討すべきである」と,判示した。

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損害額を算定することにおいて使用した方式が韓国裁判所で使用される方式と本質的に大きな差があるといえないから,それに起訴して下された米国第 1,2審判決が認めた原告の損害額が填補賠償の範囲を超過しているとみることが難しく,米国第 1, 2審判決が原告の損害額を算定することにおいて使用した方式が韓国裁判所で使用される方式と本質的に大きな差があったということが難しいからそれに起訴して下された米国第 1, 2審判決を承認することが公序良俗に反すると言えない」と判示して,米国裁判所の判決が認めた原告の損害額をそのまま承認した(37)。この事案は2015年 4月 1日現在上告審において継続中であるが2014年改正民事訴訟法第217条の 2が適用できるという側面から今後その結果が注目される。

Ⅴ.2014年改正民事執行法の主要内容

 現行「民事執行法」は国内企業に対する外国裁判所の判決のみを国内で承認・執行できるようになっているが,韓・EUの FTA,韓米 FTAの発行等で国内企業に対する外国においての多様な法的訴訟も増加すると予想されるから外国裁判所の確定判決だけでなく,これと同一の効力が認められる裁判も国内承認・執行対象に含まれるようにした。ただし,改正民事訴訟法第26条第 1項では外国裁判というと外国裁判所の判決のみならず,多様な決定等その他の裁判も国内承認の対象に含むようにすることであり,非訴事件や対審構造によらなかった裁判まで執行の対象と拡大される恐れがあるため,執行対象の範囲を「確定判決または確定判決と同一の効力が認め荒れる裁判」までとした。改正前の民事執行法第26条では「執行判決でその適合を宣告すればできる」と,規定された部分を改正民事執行法第26条第 1項では「執行判決でその強制執行を許可するとできる」と,改正した。旧民事執行法第26条第 1項ではその適法が強制執行の適法であるか,それとも外国裁判の適合であるかについて論難の余地があったが,これにように改正することでそのような論難の余地を解消したものである(38)。

(37)  ロ・テアック「2014年国際私法主要判例紹介」国際私法研究第20巻第 2号(2014年)536頁

(38)  石光現・前掲書14・428頁

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Ⅵ.評価

1 .過度な損害賠償を命じた外国判決の承認問題 2014年 4月17日開催された第19代の国会法制司法委員会の 1次法案審査の第1小委員会で「下請け取引の公正化に関する法律や期間制及び短時間労働者保護等に関する法律で損害額の 3倍まで懲罰的損害賠償を認める立法が最近設けられている点を認識しながらも懲罰的損害賠償として高額賠償の民事判決を承認することは公序良俗に反する趣旨で認めた韓国の通説及びドイツ,日本等の立法例ないし判例を改正民事訴訟法において明示的に置こうとしたものである。当初民事訴訟法改正案第217条第 1項第 3号では,「その裁判の内容及び訴訟手続に照らしてみてその裁判の承認が大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に違反しないこと。ただし,損害填補の範囲を超える損害賠償を命じる外国裁判はその超過範囲で大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に違反したものとみる」という,見做し規定を追加していた。しかし,一定の法理解釈に関する見做し規定を置くことは自然でないという指摘があり,修正案としてこの但し書きに見做し規定を置く代わりに民事訴訟法第217条の 2として別途条項を設けた(第19代の国会法制司法委員会第323かい 1次法案審査第 1小委員会の会議録(2014年 4月17日),16頁)。この時点において,その修正提案として「損害賠償に関する確定裁判の全部または一部の承認が大韓民国の法律あるいは大韓民国が締結した国際条約に反する結果を招く場合には,該当確定裁判等の全部または一部を承認できない」という,案が再び提出された。けれども,「大韓民国法律」という部分においてその包包摂範囲が広すぎて,強行規定違反の場合すべてが韓国裁判所で承認できないように解釈される余地があったという点及び大企業の場合には外国で過度な損害賠償判決受けたとき,国内承認時宣言できるが,中小企業の場合には外国と取引をなすときに前もって担保が要求されうる点(上記会議録,17~18頁)を考慮しつつ,その条文を「裁判所は損害賠償に関する確定裁判等が大韓民国の法律または大韓民国が締結した国際条約の基本秩序に顕著に反する結果を招く場合には該当確定裁判等の全部または一部を承認できない」として,既存の裁判所判例と通説そして,ドイツ判例で使われていた用語である「基本秩序」を導入してその範囲を明確にかつ具体的に定めた点を明らかにしている(上記会議録,33頁)。したがって,改正民事訴訟法第217条 2第 1項は既存の判例を受容したことを明らかにして

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いる。 それから,改正民事訴訟法第217条 2第 1項を解釈するにあたって既存の下級審判例の立場はそのまま尊重されると考えられる。改正民事訴訟法第217条の 2を新設することにおいて立法経過を見ると十分にわかるようなことであるが,その文言だけでは改正民事訴訟法第217条第 1項第 3号の公序要件との相関関係を分かることは難しいという批判に直面できる。そして, 3倍賠償を認める法律が増加することによって外国裁判が損害賠償制度に関する大韓民国の法律の基本秩序を顕著に反する結果を招く場合を判断することが決して簡単な作業ではないと予想される。第19代の国会法制司法委員会の第 1次法案審査第1小委員会の会議録で関係機関は,「基本秩序」という用語が挿入されないと,中小企業に打撃が大きいと言うが,懲罰的損害賠償を宣告した外国判決を承認しないドイツ,日本における中小企業が前述した不利益を受けているかについて疑問であり,米国内に財産を多く持っている大企業に対しては現地で執行すれば足りるので,韓国において承認及び執行を要求する必要がないという点から見ると,その要件を難しくすることは韓国中小企業に不利益であるとみるのは妥当である。そのような論拠の不当にもかかわらず,改正民事訴訟法第217

条 2第 1項の法文が既存の判例を反映したことを明らかにしたことは幸いのことである。そして,国際私法第32条第 4項では,「外国法が適用される場合に不応行為による損害賠償請求権はその性質が明白に被害者の適切な賠償のためのものでないか,またはその範囲が本質的に被害者の適切な賠償のための必要な程度を超えるときにこれを認めない」と規定しているところ,抵触法規定を外国裁判の承認及び執行に関する規定を調和できるように解釈する知恵が求められる。それにもかかわらず今回の改正民事訴訟法及び民事執行法はその改正過程で見られるように輸出企業の不安感をある程度解消しようとして努力した点は肯定的に評価できよう。

2 .域外的効力を認めた外国の侵害差止判決の執行問題 2015年 4月 1日現在まで外国裁判所の侵害差止判決の域外的効力が問題となった事案はない。しかし,Dupont事件で見られるように侵害差止判決の域外的効力が問題になりうる事案の場合外国判決の承認及び執行が韓国の善良な風俗やその他の社会秩序に反するか否かを判断する必要がある。外国裁判の効力を認めることが韓国の公序に反するか否かと関連しては大法院2010. 3. 25. 自2009マ1600決定を参考する必要がある。大法院2010. 3. 25. 自2009マ1600決定は

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「外国裁判所の免責裁判等を承認するためにはその免責裁判等の効力を認めることが大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に反しないという要件を充足すべきであるところ(旧民事訴訟法第217条第 3号),ここで大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序に反する場合とは,国内債権者の外国倒産手続きに対する適法な手続参加権が侵害される等外国裁判所の免責裁判等の成立手続が善良な風俗やその他の社会秩序に反する場合や外国裁判所の免責裁判等の内容が善良な風俗やその他の社会秩序に反する場合のみならず,外国裁判所の免責裁判等による免責的効力を国内で認めることになると国内債権者の権利や利益を不当に侵害する等その具体的結果が善良な風俗やその他の社会秩序に反する場合等も含まれる」として,外国裁判の効力を承認した具体的結果が韓国の公序に反すると外国裁判の承認しないことを明らかにしている。具体的に大法院2010. 3. 25. 自2009マ1600決定は,「米国破産裁判所の回生計画認可決定による免責的効力を国内で認めることが旧会社整理法(2005. 3. 31. 法律第7228号債務者回生及び破産に関する法律付則第 2条によって廃止)の属地主義の原則を信頼して米国破産裁判所の回生手続に参加せず債務者所有の国内所在財産に対する仮押えを終え,強制執行や破産手続等を通じて債権を回収しようとした国内債権者の権利を顕著にかつ不当に侵害されることになり,その具体的結果が韓国の善良な風俗やその他の社会秩序に反する場合に該当するから,上記の米国破産裁判所の回生計画認可決定は旧民事訴訟法第217条第 3号の要件を充足していないから承認できない」と,判示した。 しかし,営業秘密の侵害行為による侵害差止請求に対して域外的効力を有する米国の侵害差止判決が宣告された場合,その侵害差止判決に対して韓国裁判所が承認及び執行することが韓国の公序に反すると一律的に言及するのは困難な側面が存在する。特許権侵害行為による侵害差止請求に対して米国連邦裁判所の侵害差止判決を宣告した場合,この判決の承認及び瀬一行が韓国で問題になり得る事案とは区別する必要がある。後者の場合には属地主義が適用されるから域外的効力を認めた米国連邦裁判所の特許権侵害差止判決を承認する結果が韓国裁判所の特許権の場所的効力を国内に制限した公序に反するとしてその判決の承認を拒否するからである。たとえば,日本のカードリーダー事件で日本最高裁判決は,差止・廃棄請求は「米国特許権の独占的排他的効力に基づいて」とし,「特許権の効力」の問題として登録国法,すなわち米国法によると判示しながら米国の侵害差止及び侵害廃棄の判決は外国で侵害の積極的誘導を行なった者にも差止・廃棄を命じることができるという点で日本の特許法秩序

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の基本理念(属地主義原則)と両立できないし,公序に反することであると判示した(39)。 もし,最終的に米国連邦裁判所が Dupont社の営業秘密を認めてコーロン社の営業秘密侵害行為による侵害差止を命じる判決を宣告して確定する場合には,その米国連邦裁判所の侵害差止判決を韓国裁判所が承認及び執行するか否かは Dupont社の製造工程に対する国内裁判所が営業秘密侵害行為を認め,全世界的に20年間その侵害行為の禁止を命じることができるか否かによると言える。立法管轄の問題で国内法上の域外適用を明示しない限り,韓国裁判所が域外適用を認めた判決を宣告したことがない(40)。したがって,国内法上の域外

(39)  最高裁平成14年 9月26日,民集56巻 7号,1551頁(40)  日本国籍の全日本空輸(All Nippon Airways)を含む16個の国際航空社が

油類割増料を導入したり,変更したりする方法で構成取引法上の不当共同行為禁止を違反したとして韓国公正取引委員会は是正措置及び課徴金を賦課した。これに対して全日本空輸等が公正取引委員会を相手として是正命令取消等の訴えを提起したが,この事案に対して大法院2014. 5. 16. 宣告2010デュ13655判決は,「国間の交易が活発に行われている現代の状況では,国外での行為であっても行為がなされた国と直・間接的な交易がある以上国内市場にいずれかの形態としてある程度の影響を及ぶようになり,国外での行為によって国内市場に影響を及ぶとしてそのようなすべての国外行為に対し国内の公正取引法を適用できると解釈する場合,国外行為に対する公正取引法の適用範囲をあまりにも拡張させ,不当な結果を招く恐れがある点等を考慮すると,公正取引法第 2条の 2でいう「国内市場に影響を与える場合」は,問題となった国外行為で国内市場に直接的であり,相当でかつ合理的に予測可能な影響を与える場合に制限解釈すべきであり,該当当否は問題となった行為の内容・意図,行為の多少である財貨または用役の特性,取引の構造及びそれによって国内市場に及ぶ影響の内容と程度等を総合的に考慮して具体的・個別的に判断すべきである」と判示した。

   また,この寺家では,「当該行為に対する外国法律または外国政府の政策が国内法律と異なって,外国法律等によって許容できる行為であってもそのような事情だけで当然に公正取引法の適用が制限されるとは言えない。ただ,同一の行為に対して国内放ると外国法律等が衝突され,事業者に適法な行為を選択できなくようにする程度に止まると,そのような場合でも国内法律の適用の実を強制することができないから,当該行為に対して公正取引法の適用による救済の要請に比べ外国法律等を尊重すべき要請が顕著に優越な場合には公正取引法の適用が制限できることであって,そのような場合に該当するか否かは当該行為が国内市場に与える影響,当該行為に対する外国政

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適用を認めた外国判決を承認及び執行することは公序に反するとみることが妥当であろう。これと関連して,独占規制及び公正取引に関する法律(41)(以下,「公正取引法」という)第 2条の 2では,「この法は国外でなされた行為であっても国内市場に影響を与える場合には適用する」と規定して,立法管轄の問題として韓国公正取引法の域外適用を認めている。韓国不正競争防止法及び営業秘密保護に関する法律第10条は「営業秘密侵害行為に対する差止請求権等」の表題の下,第 1項では「営業秘密の保有者は営業秘密侵害行為をしようとする者に対してその行為によって営業上の利益が侵害されるか,侵害される恐れがある場合には裁判所にその行為の差し止めまたは予防を請求できる」と規定し,第 2項で「営業秘密保有者が第 1項による請求を行うときには侵害行為を造成した物の廃棄,侵害行為に提供された設備の除去,その他侵害行為の差し止めまたは予防のために必要な措置を共に請求できる」と,規定している。立法管轄の問題として域外適用を明らかに規定しない限り,外国判決の効力は外国の裁判所が独自的立場で行なった訴訟行為の効力の問題としてその外国の民事訴訟法によるべきであり,それが韓国にいかなる効力が認められるかについては韓国民事訴訟法第217条,民事執行法第26条及び第27条によるものであろう。なぜならば,これは民事訴訟法の場所的効力の限界に該当するかという問題であるためである。この場合,民事訴訟法の場所的効力の限界は民事裁判権が及ぶ地域的限界と一致する(42)。韓国不正強制防止及び営業秘密保護に関する法律は域外適用に対しては立法管轄の問題として規定していないため20年間全世界的な域外適用の効力を有する米国裁判所の営業秘密侵害差止判決は韓国裁判所において承認することは難しいことであろう。 国際知的財産訴訟の原則は外国裁判の承認・執行手続きを規定した第 3章の第32条(知的財産権の侵害差止裁判の執行)において,「知的財産権侵害の差

府の関与程度,国内法律と外国法律等が相容れない程度,これによって当該行為に対し国内法律を適用する場合外国事業者に及ぶ不利益及び外国政府が有する正当な利益を阻害する程度等を総合的に考慮して判断すべきである」と,判示した。この事案で大法院は「国外における事業者が共同で行なった競争を制限する合意の対象に国内市場が含まれているとすれば,特別の事情がない限り,合意が国内市場に影響を与えると言えること」という理由で原告の主張を受け入れなかった。

(41)  施行2015年 1月20日,法律13071号,2015. 1. 20. 一部改正(42)  金洪奎・姜泰源「民事訴訟法」(三英社,2008年)35頁

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し止めを命じる外国裁判(市街物またはその物の製造あるいは複製手段の差押及び廃棄等の命令を含む)は執行国法の手続きによって,そして執行国で同一の状況下で類似した救済手段を命じることができる範囲内でこれを執行できる」と,規定している。さらに,日韓共同提案第403条は「知的財産権の差止,侵害物及びその物品の製造及び複製手段の廃棄等を命じる外国裁判は承認または執行が要求される国の法律上同一の状況下でこれに相当する救済手段を命じることが可能な限度内で承認または執行することができる」と規定している(43)。ただし,ALI原則第412条第 1項第 b号は「執行国裁判所が判決国の裁判所であれば本案に関して同一の判断をしたことである場合に差止的救済策が執行国の裁判所の領域内で利用できないとすれば執行国の裁判所は全的にその領域内のみに影響を与える領域内の行為を差止するか命じることを拒絶できる。執行国の裁判所が差止的救済策の範囲を制限すると,差止的救済策に替えて損害賠償的救済策を命じなければならない」と規定しており,ALI原則第412条第 2項では,「執行国の裁判所は侵害物及びその物の製造あるいは複製する手段の差押及び廃棄そしてその判決の公告をはじめ判決に記載されたその他の救済策を命じることができる」と規定している。とくに,ALI原則第412条第 1項第 b号は,「金銭賠償を原則として差止請求を例外と評価してきた米国法の特徴と TRIPs協定による強制実施許諾東都の関係で外国差止命令の執行が拒絶できる場合を念頭に置こうとしたものである(44)。 これと関連してこのような事情は公序要件の範囲内で個別的に審査することが適切であり執行を認めない場合に金銭賠償を承認執行規則中に規定することには体系的に問題があり得ると判断して,日韓共同提案第403条は侵害差止・廃棄を命じる外国裁判が第401条による承認・執行の対象ができるのみを明示した(45)。

(43)  木棚・前掲書34・49頁; 「知的財産権に関する国際私法原則(日韓共同提案)」・前掲書34・589頁

(44)  木棚・前掲書34・111頁; ALI, supra note, Reporters’ Notes 2 to § 412, at pp. 192.

(45)  木棚・前掲書34・50頁