2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

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インプラント周囲病変 文献レビュー 臨床歯科を語る会 2015 救歯会 篠田純

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Page 1: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

インプラント周囲病変 文献レビュー

臨床歯科を語る会 2015 救歯会 篠田純

Page 2: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

① インプラント周囲病変の定義、分類 ② 病因、リスクファクター ③ インプラント周囲病変の診査、診断 ④ 治療法(非外科的、外科的) ⑤ メインテナンス法

CONTENTS

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アメリカ歯周病学会 2013 アカデミーレポート

Peri-Implant Mucositis and Peri-Implantitis: A Current Understanding of Their Diagnoses and Clinical Implications

出典

Page 4: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

① インプラント周囲病変の定義、分類

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インプラント周囲病変の定義、分類

インプラント周囲粘膜炎: インプラント周囲の軟組織に限局した炎症で初期の bone remodeling 後には周囲骨の吸収がない

インプラント周囲炎:インプラント周囲の軟組織に炎症があり、初期の bone remodeling 後にも進行性の周囲骨の吸収あり Clinical research on peri-implant diseases: Consensus report of Working Group 4. Sanz M, Chapple IL. J Clin Periodontol 2012;39(Suppl. 12):202-206

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② 病因・リスクファクター

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病因

インプラント周囲炎は、歯周炎と同様、基本的に細菌による損傷とそれに続く宿主の免疫反応の結果起こる。

動物(Nocitiら 2001)とヒトのクロスセクショナル研究(Heitz-Mayfieldら 2010)から、歯周炎とインプラント周囲炎に関係した細菌種は似ていて、主にグラム陰性嫌気性菌である。

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リスクファクター

歯周病の罹患歴

口腔衛生不良・補綴物の形態

残留セメント

喫煙

遺伝的要因

糖尿病

咬合負担過重

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リスクファクター

歯周病の罹患歴

システマティックリビュー(Klokkevoldら2007, Schouら2006, Karoussisら2007, Van der Weijdenら2005)で、歯周病の罹患歴がインプラントの生存率には影響しないが、歯周病に罹患していた患者ではインプラント周囲炎の割合が高くなることが示された。

ただしこれらのリビューの結果は、調査した研究の患者群やデザインにばらつきがあることに影響されているかもしれない。

歯周病の罹患歴とインプラント周囲炎の関連を示すためには、より良くデザインされたコホート研究が必要である。

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リスクファクター

口腔衛生不良・補綴物の形態

 インプラント補綴物の形態によっては、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスによる機械的な清掃を妨げることがある。これはインプラントの位置や患者の審美、発音、機能に対する希望と関係する。さらに、補綴デザインはプローブによる検査や十分なホームケアの妨げになりうる。毎日の口腔衛生を容易にするために、これらのことを考慮して補綴を行うべきである。

 歯科医は患者に適切なプラークコントロールを指導し、定期的メインテナンスに来院させる義務がある。これによりプラークコントロールが十分か確認し、問題が見つかった場合にできるだけ早く介入することが容易になる。

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口腔衛生不良・補綴物の形態2008 / 5 / 31 #24

2006 / 8 / 28

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口腔衛生不良・補綴物の形態

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口腔衛生不良・補綴物の形態2010 / 8 / 5 #36

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リスクファクター

残留セメント

インプラント周囲の歯肉縁下部のセメントの取り残しが問題になってきている。(Wilsonら 2009)

インプラントのポジショニングや上部構造のデザインのためにセメントが取り残されると、歯肉縁下における機械的非外科的清掃の妨げになりうる。(Linkeviciusら 2012)

さらに、一般的に用いられているセメントの多くはX線検査で見つけることができない。(Wadhwaniら 2010)

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リスクファクター

残留セメント

インプラント周囲の歯肉縁下部のセメントの取り残しが問題になってきている。(Wilsonら 2009)

インプラントのポジショニングや上部構造のデザインのためにセメントが取り残されると、歯肉縁下における機械的非外科的清掃の妨げになりうる。(Linkeviciusら 2012)

さらに、一般的に用いられているセメントの多くはX線検査で見つけることができない。(Wadhwaniら 2010)

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リスクファクター喫煙

4つのシステマティックリビューが喫煙者はインプラント周囲炎のリスクが高く、そのオッズ比は3.6から4.6であると結論づけている。(Klokkevoldら 2007, Strietzelら 2007, Hinodeら 2006, Heitz-Mayfieldら 2009)

さらに、コホート研究とクロスセクショナル研究でも頻繁に喫煙とインプラントの失敗の関連が指摘される。

ある研究(Klokkevoldら 2007)では喫煙者のインプラントの78%がインプラント周囲炎と診断され、非喫煙者ではたった64%であった。

より最近のクロスセクショナル研究(Rinkeら 2011)では、喫煙者はインプラント周囲粘膜炎のオッズ比が3.8、インプラント周囲炎のオッズ比が31.6であることが示された。

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リスクファクター

遺伝的要因

遺伝的要因がインプラント周囲炎のリスクファクターとして指摘されてきた。

しかしながら、相反する結果が存在するためにインターロイキン1遺伝子多型とインプラント周囲炎の関連は結論が出ていない。

27文献を評価したシステマティックリビュー(Bormannら 2010)では、これらの研究のコンセンサスを見出すことができなかった。

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リスクファクター

糖尿病

研究の数が少ないため、糖尿病とインプラント周囲炎の関連を示すエビデンスは限られている。

4つのシステマティックリビュー(Strietzelら 2007, Heitz-Mayfieldら 2009, Bornsteinら 2009, Mombelliら 2006)が、現在までのエビデンスでは糖尿病患者がインプラント周囲炎に罹患する率が高いと結論付けることはできないとしている。

これらのリビューはまた、関連を調べる場合には血糖のコントロールは重要な要因であると指摘している。血糖のコントロールは好中球の機能に影響するため、高血糖は組織治癒と免疫を阻害する。(Salviら 2008)

糖尿病とインプラント周囲炎の相関性を明らかにするためには、さらなるプロスペクティブ・コホート・スタディが必要である。

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リスクファクター

咬合負担過重

咬合負担過重に関する臨床研究を行う場合の問題の一つは定義である。加えられる咬合荷重の強さ、時間、方向、頻度と宿主の許容範囲の違いが、研究間の矛盾した結果の原因である。

咬合負担過重がインプラント周囲炎を招くいくつかのメカニズムが想定される。インプラントは歯根膜が無いため、天然歯と比べて軸方向以外の荷重に弱いと考えられている。

有限要素法による研究(Rungsiyakullら 2011, Hudiebら 2011)から、咬合荷重はインプラントの辺縁骨に集中することがわかった。

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リスクファクター

咬合負担過重

過度のストレスは骨内で microfracture を引き起こし、結果として骨喪失につながり得る。(Stanfordら 1998)

さらに最近のシステマティックリビュー(Fuら 2012)は、咬合負担過重はインプラント周囲の辺縁骨吸収に相関していることを示唆している。

しかしながら、不良な口腔衛生がいまだにカギとなる要因である。

このように、インプラント周囲炎における咬合負担過重の役割の解明には、咬合負担過重の正確な定義とともにさらなる研究を必要とする。

Page 25: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

③ インプラント周囲病変の診査、診断

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出典

日本口腔インプラント学会 日本歯周病学会       口腔インプラント治療指針 2012 歯周病患者におけるインプラント治療の指針 2008

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インプラント周囲病変の診査 来院時にインプラント体周囲の状態を把握し、インプラント周囲炎の有無を診断しなければならないが、現状では確立した評価方法は認められず、一般的には下記の項目を組み合わせて診断されている。

●細菌検査

●プラークインデックス

●ポケットや周囲粘膜からの出血

●プロ-ビング時の出血

●プロービングデプス

●インプラント体の動揺度

●エックス線検査(デンタル,パノラマ,CT など)

日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 28: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

インプラント周囲病変の診断

日本歯周病学会「歯周病患者におけるインプラント治療の指針 2008」

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④ 治療法

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インプラント周囲病変の治療法

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

科学的根拠に基づいた支持療法はいまだ確立されていないが、一般的には累積的防御療法 (CIST)が用いられている。(University of Bern School of Dental Medicine, Department of Periodontology and Fixed Prosthodontics and Institute Straumann AG, Waldenburg, Switzerland.)

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Consensus  Statements  and  Recommended  Clinical  Procedures  Regarding  Implant  Survival  and  Complica7ons.  :  Lang  NP,  Berglunt  T,  et  al.  (2004)

ポケット深さ BOP

緒言インプラント治療が確立されてきている現在、今後はインプラントをいかに長期的に安定した状態で維持していくか、合併症が発生した場合にはどのように対応していくかが大きなテーマになるものと思われる。特に、合併症の中でも最も頻度が高いと考えられるインプラント周囲炎への適切な対応は、インプラント治療の成否に大きくかかわってくる。

インプラント周囲炎の治療を行う場合には、その周囲組織の状態やそれに至った経緯などを正確に把握する必要がある。病態の評価をするために推奨されている指標としては、一般的に歯周病学的に用いられているプラークの存在、インプラント周囲のポケットの深さ(PPD)、BOPの有無、排膿の有無、X線学的な骨吸収量などが挙げられる。

このような指標を用いてインプラント周囲組織の的確な診査診断を行い、治療方針を決定していく。現在広く推奨されている治療プログラムとしては、Langらが提唱している累積的防御療法(Cumulative Interceptive Supportive Therapy, CIST)がある(表1)1)。この治療法は4つの柱から成り立っている。すなわち、A:機械的清掃・研磨、B:殺菌的治療、C:抗菌的治療、D:外科的治療(切除・再生療法)であり、これらが組織反応に応じて累積的に組み合わされた治療となる。

インプラント周囲炎の治療には、このような歯周病学的な取り組み以外に咬合の管理や生活習慣、全身状態も関与してくるが、今回は歯周病学的な取り組みに焦点を当てる。

インプラント周囲炎への取り組み

松井 孝道ITIフェロー、宮崎市開業

機械的清掃・研磨および殺菌的治療・抗菌的治療インプラント周囲炎の治療を行うに際し、まず前提として行うべきものとして、インプラント周囲の機械的清掃・研磨がある。これはインプラント表面に付着してくるプラーク、石灰化物、汚染物質などの起炎物質を取り除き、インプラント周囲組織の環境を改善することを目的とする。 しかし、インプラント周囲の機械的清掃・研磨を行っても病状に改善が認められない場合には、殺菌的治療や抗菌的治療を追加する必要がある。PPDも4~5mmと深くなる場合、あるいは5mm以上でもX線的に骨吸収がない場合には、まず殺菌的治療法として、基本的には歯周病治療に準じた薬剤によるインプラント周囲ポケット内の洗浄が必要となる。このような殺菌剤による洗浄を行っても病状の改善を期待できず、PPDが5mmを越え、X線的に軽度(2mm以下)の骨吸収を認めるようになると抗菌的治療の適応となる。

抗菌剤の全身投与は、本邦においてはメトロニダゾール、オルニダゾールは歯科での適用が除外されているため、合成ペニシリン系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系など歯周病治療で使用されている既存の薬剤が用いられるのが現状である。近年使用され始めたマクロライド系抗菌剤であるアジスロマイシンは、P. gingivalis などの主な歯周病関連細菌に対する抗菌濃度を維持することで知られており、歯周病やインプラント周囲炎に対する効果も報告されている2)。

抗菌剤の局所投与には塩酸ミノサイクリンペースト(ペリオクリン®、ペリオフィール®)が使用され、通常1週間に1回の頻度で4週間インプラント周囲ポケット内に注入する。

PD ≤ 3 mm

PD > 5 mm

PD 4 to 5 mm

プラーク沈着なしプロービング時出血なし

プラーク沈着ありプロービング時出血あり

殺菌的治療(薬剤による洗浄など)

全身的もしくは局所的な抗菌的治療

外科的治療(切除・再生療法)

機械的清掃 + 研磨

治療不要

X線写真!

プロービング時出血あり骨吸収なし

プロービング時出血あり骨吸収 ≤ 2 mm

プロービング時出血あり骨吸収 > 2 mm

A

B

C

D表1:累積的防御療法(Cumulative Interceptive Supportive Therapy)の模式図1)

日本語訳表:  ストローマン・ジャパン「インプラント周囲炎への取り組み」より

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疾患別対処法

インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲炎(軽度)

インプラント周囲炎(重度)

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疾患別対処法

インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲炎(軽度)

インプラント周囲炎(重度)

Page 34: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲粘膜炎は硬組織に影響が見られない状態であるので、天然歯の歯肉炎に準じて治療を行う。基本的にはポケット内の汚染物を取り除き、洗浄を行う。プラークや歯石のように石灰化して容易に除去できない汚染物は、インプラント体の表面、特に鏡面加工を施してある部分を傷つけないようにプラスチック製のスケーラーなどを用いて除去する必要がある。埋入深度が深い場合は、上部構造を撤去し同操作を行う。また、症状が強く発現している場合には、抗菌薬や含嗽剤の投与も行う。

 同症状を繰り返さないように、またインプラント周囲炎へ移行しないようにするためにブラッシング指導の強化、維持療法の期間短縮なども同時に行う。また、インプラント周囲粘膜炎の原因が付着歯肉の不足によるものであれば、歯肉移植術などを適用し、上部構造の形態が原因であれば、形態修正をする。

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 35: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法

インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲炎(軽度)

インプラント周囲炎(重度)

Page 36: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法インプラント周囲炎(軽度)

a)粗面の滑沢化

b)レーザー照射

c)エアアブレーション

d)フォトダイナミックセラピー(PDT)

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 37: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法インプラント周囲炎(軽度)

a)粗面の滑沢化

チタン製スケーラーや切削器具を用いて粗面を滑沢化し,鏡面に近い状態にすることで汚染物を除去する。このことで、汚染物の再付着を防止する効果が期待できる。しかし、骨との境界面の滑沢化が難しいことや、骨吸収の状態が狭いポケット状などの場合は器具が届きにくいなどの欠点も見られる。

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 38: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法インプラント周囲炎(軽度)

b)レーザー照射

粗面に付着した汚染物を除去し、無菌化する目的でレーザーを照射する。主として Er-YAGレーザーが使用されている。しかし、インプラント体全周にむらなく照射することは非常に困難であること、また骨吸収の状態が狭いポケット状の場合には確実性に欠けるなどの欠点がある。

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 39: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法インプラント周囲炎(軽度)

c)エアアブレーション

β─TCP パウダーを用いてエアアブレーションを行い、粗面に付着した汚染物を取り除く方法である。短時間での除染が可能であるが、気腫の発生やパウダーの軟組織内への迷入などの欠点も見られる。

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 40: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法インプラント周囲炎(軽度)

d)フォトダイナミックセラピー(PDT)

光感受性薬剤でポケット内を満たし、光照射による光化学反応で活性酸素種を発生させ殺菌効果を上げる治療法である。この方法は、操作が比較的容易で骨吸収の状態によらず効果が期待できる反面、新しい治療法でありその使用条件などにはさらなる検討が必要である。

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 41: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法

インプラント周囲炎(軽度)

以上の処置により汚染物の除去が確実と思われる場合には、再オッセオインテグレーションを期待して骨移植術などの再生療法を行う場合もある。

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 42: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

外科的アプローチ

Page 43: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

Implantoplasty,,Er:YAG,laser,,GBR,Schwarz,et,al.,(2012)�

During the entire observationperiod of 24 months, a total of n = 8patients missed to attend scheduledrecall sessions and therefore were

excluded from the study (per-proto-col analysis). Accordingly, the pres-ent follow-up of this randomizedcontrolled clinical study reports on a

total of 24 patients (8 men and 16women; mean age 62.3 ± 10.0 years),exhibiting a total of n = 26 implants(Fig. 1 and Table 1).

Table 1. Distribution of different implant systems in both groups at baseline

Group ANK AST BRA CAM ITI KSI REP TSV XIV NI

CPS (n = 14) 1 0 1 1 5 0 0 3 2 1ERL (n = 10) 0 1 3 0 2 1 1 1 0 1

ANK, Ankylos® (cylindrical screw, microrough surface), Dentsply Friadent, Mannheim, Germany; AST, Astra Dental Implant System® (cylin-drical screw, microthread, nanotype surface), Astra Tech Dental, Molndal, Sweden; BRA, Branemark System® (cylindrical screw, machinedsurface), Nobel Biocare AB, Goteborg, Sweden; CAM, Camlog Screw Line® (cylindrical screw, microrough surface), Camlog BiotechnologiesAG, Basel, Switzerland; ITI, ITI® (cylindrical screw, microrough surface), Institute Straumann AG, Basel, Switzerland; KSI, KSI Bauer Schra-ube® (conical screw, machined surface), KSI GmbH, Bad Nauheim, Germany; REP, NobelReplace® (tapered screw, microrough surface),Nobel Biocare AB, Goteborg, Sweden; TSV, Tapered Screw Vent® (tapered screw, microrough surface), Zimmer Dental, Freiburg, Germany;XIV, Xive® (cylindrical screw, microrough surface), Dentsply Friadent, Mannheim, Germany; NI, Non-identifiable implant systems.

(a)

(e) (f) (g)

(h) (i) (j)

(b) (c) (d)

Fig. 2. Combination therapy at Class I and Class II defect components (This case refers to Fig. 6 e,f – Schwarz et al. 2011a). (a)Bleeding on probing and suppuration. (b) Situation at 2 weeks after initial non-surgical therapy. (c) Defect situation (Class Ic + II)after granulation tissue removal. (d) Buccaly and supracrestally exposed threatened areas of the implant were completely planishedusing diamond burrs (i.e. implantoplasty). (e) Debridement and decontamination was performed at the remaining implant surfaceareas (here ERL). (f) CM was first applied at the oral aspect and the entire defect area was homogeneously augmented with NBM.(g) Application of CM at the corresponding vestibular aspect to stabilize NBM. (h) Implants were left to heal in a transmucosalposition. (i) Healthy peri-implant conditions at 12 months. The surgical procedure was associated with a pronounced increase inMR. (j) Stable peri-implant conditions at 24 months.

© 2012 John Wiley & Sons A/S

Surgical therapy of peri-implantitis 791

Page 44: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

Implantoplasty,,etching,,,GBR,:,Wil7ang,et,al.,(2009)�

measure for inflammation of the peri-implant mucosa5

and a panoramic x-ray was taken to determine bonedefects mesial and distal of the implant. To estimatemagnification factors, the implant with known lengthserved as reference. Evaluation was done by maskedexaminers (E.B. and O.Z.): Pre- and postoperativeimages were coded and evaluated together after theend of the study. Inter-observer differences were at amaximum of 11 mm.

Prior to the surgical therapy, all patients received adecontamination treatment by rinsing infected peri-implant pockets (supra- and subgingivally) with chlo-rhexidine 0.12% (three times a week with 2 mL perimplant) to resolve the acute inflammation to a chronicstage. Additionally, the implant was cleaned mechani-cally. Every week, bleeding on probing was tested.Patients were advised to use Durimplant (implant caregel, lege artis Pharma, Dettenhausen, Germany) starting2 weeks after surgery: for 1 week daily, then once perweek.

Surgical Treatment

Via marginal incision and after elevation of a mucope-riosteal flap, infected granulation tissue was removedcarefully with curettes and diamonds under local anes-thesia to gain access to the implant surface. Thecomplete implant surface below the prosthetic recon-structions (which were not removed) was smoothedwith rotating diamond grindings (see Figure 2A). After-

wards, the implant surface was decontaminated withetching gel (Gluma Etch 20 Gel, Heraeus Kulzer, Hanau,Germany; see Figure 2B). After raising a mucoperiostealflap, a small amount of bone was harvested with a tre-phine from the mandible in the chin region or inanother area with no infection. It was particulated witha bone mill and mixed 1:1 with 10 mg Colloss E(Ossacur, Oberstenfeld, Germany) in a bowl for eachimplant site treated. Osseous defects were filled to1–2 mm above the alveolar crest (see Figure 2C). Thewound was sutured without tension afterwards (seeFigure 2D). All surgical interventions were performedby three experienced surgeons (J.W., A.S., and O.Z.).

Prophylactic antibiotics (ampicillin/sulbactam,Unacid 1.5 g i.v., Pfizer Pharma GmbH, Karlsruhe,Germany; in case of allergy: Clindamycin 600 mg) weregiven perioperatively. After surgery, sufficient analgesiawas achieved with Ibuprofen (600 mg three times a dayfor 3 days). To reduce postoperative swelling which washeavy in some cases, cooling pads for 12 hours wererecommended. The first recall took place 3 days aftersurgery. After 2 weeks, the sutures were removed. Fur-ther clinical controls were performed every 3 months,radiologic controls once a year.

Statistical Evaluation

Radiologic bone defect values were defined as the dis-tance from the surrounding alveolar crest to the apicalend. Means and 95% confidence intervals (95% CI) of

A B

C D

Figure 2 Intraoperative pictures. A, After removal of granulation tissue. Note the defects after bone harvesting. B, Decontaminationwith etching gel. C, Defect fill. D, After suturing. The prosthetic reconstruction was in situ during the whole procedure.

Regenerative Treatment of Peri-Implantitis Bone Defects 423

Page 45: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

Air$abrasion,++Tetracycline,+Chlorhexidine,+EMD,+GBR+:+Stuart&et&al.&(2012)�

The International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry

14

Fig 1b Radiograph depicting a measured 5.47-mm bone loss.

Fig 1a Pretreatment photograph of an implant at the mandibular left second pre-molar implant site. There was no keratinized tissue and 3 mm of buccal recession.

Fig 1c Flap reflection revealed implant surface contamination and biofilm.

Fig 1e A bone substitute graft of anor-ganic bovine bone and platelet-derived growth factor was placed over the exposed implant surface.

Fig 1d Following surface decontamination of the implant and defect debridement, enamel matrix derivative was applied to the implant surface.

Fig 1f A subepithelial connective tissue graft obtained from the palate was sutured over the anorganic bovine bone and platelet-derived growth factor.

Fig 1h At 6 years postsurgery, PD was reduced from 8 to 3 mm, representing a 5-mm reduction. Note the 3-mm coverage of the previously exposed implant surface.

Fig 1g The flap was advanced by means of periosteal and vertical releasing incisions and then sutured coronally.

Fig 1i Six-year postsurgical radiograph demonstrating 4.48 mm of bone growth.

© 2011 BY QUINTESSENCE PUBLISHING CO, INC. PRINTING OF THIS DOCUMENT IS RESTRICTED TO PERSONAL USE ONLY.NO PART OF MAY BE REPRODUCED OR TRANSMITTED IN ANY FORM WITHOUT WRITTEN PERMISSION FROM THE PUBLISHER.

Page 46: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

Peri-implant diseases: Consensus Report of the Sixth European Workshop on Periodontology.

: Lindhe et al. (2008)

インプラント周囲炎に対する非外科治療の予知性は低い →外科処置はした方がいい

インプラント表面の感染除去のある手法(化学的、エアーアブレージョン、レーザー)が、他より優れていることは証明できなかった。  →どの感染除去法が良いかはわからない

メンブレンを用いるまたは用いないグラフトのような再生療法では、成功の程度はさまざまである。 →再生療法は結果がまちまち

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疾患別対処法

インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲炎(軽度)

インプラント周囲炎(重度)

Page 48: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

疾患別対処法インプラント周囲炎(重度)

インプラント周囲の骨吸収が進行した状態では、基本的にはインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎(軽度)の治療法を併用する。しかし、ポケットが深いことで炎症のコントロー ルが困難であり、骨吸収が進行する場合や、排膿・疼痛・違和感などの自覚症状が続く場合、またインプラント体の動揺が見られる場合にはインプラント体を除去することが必要となる。

治癒を待ってから次の処置へ移行するが、再度インプラント治療を選択する場合には、インプラント体の除去に至った経緯とその原因をよく考察し、そのリスクについて患者とよく相談する必要がある。

日本口腔インプラント学会 「口腔インプラント治療指針 2012」

Page 49: 2015 臨床歯科を語る会 インプラント周囲病変の文献レビュー

⑤ メインテナンス法

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メインテナンス残存歯のメインテナンス

 部分欠損症例における残存歯とインプラントの混在という状況は、特に歯周病に感受性の高い患者では注意が必要である。すなわち歯周病は、インプラント周囲炎のリスクファクターと考えられ、未治療あるいは治療効果の認められない歯周病罹患歯は、インプラント周囲への歯周病原細菌のリザーバー(供給源)となり、インプラントへの感染のリスクを増加させる。

日本歯周病学会 「歯周病患者におけるインプラント治療の指針 2008」

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メインテナンス残存歯のメインテナンス

 したがって、インプラント治療前に健康な歯周組織を確立しておくことと、それに続く定期的なメインテナンスプログラムが重要となる。歯周病既往のある患者においては、インプラ ント治療前後を通じて歯周治療やサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)による歯周病のコントロールを行い、広汎型侵襲性歯周炎、広汎型重度慢性歯周炎、全身疾患関連歯周炎(特に糖尿病の合併)、喫煙関連歯周炎などの歯周病ハイリスク患者においては、一般的な歯周組織検査に加えて細菌検査を併用したリスク診断を行い、患者個々のメインテナンスプログラムによるSPTを実施することが望ましい。また、残存歯の適正な咬合関係の維持を図り、必要な場合には咬合調整などによって、インプラントとの接触、咬合状態の変化による残存歯の咬合性外傷やインプラントへの咬合の過重負担(overload)を回避する必要がある。

日本歯周病学会「歯周病患者におけるインプラント治療の指針 2008」

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メインテナンスインプラントのメインテナンス

期間は約3~6か月に1度が一般的であり、下記の方法を組み合わせて行う。

●咬合調整

●機械的クリーニング(PMTC)

●ブラッシング指導

●口腔内写真による観察

●エックス線写真による観察

●その他,歯科医師・歯科衛生士による天然歯を含めた処置・指導(SRP など)

日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針 2012」

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インプラント周囲炎の予防のために

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歯周病患者におけるインプラント治療のガイドライン日本臨床歯周病学会 2013

歯周炎の既往はインプラント周囲炎、インプラント喪失のリスクであることを術者、患者が共に認識する。そのリスクは歯周炎の重症度や遺伝的因子により増加する。

残存歯の動的歯周治療はインプラント治療に先行し完了させなければならない。その際にプラークコントロールは一定レベル以上をクリアし、歯周ポケットについてもコントロールされていなければならない。

喫煙者の患者には喫煙がリスクを増加させること、また禁煙がそれを低下させることを認知させる。

歯周病患者のインプラント選択に際しては、Moderately rough, Minimally rough な表面性状を有するインプラントを選択するのが望ましい。

SPTの必要性を術者、歯科衛生士、患者が認識する。

以上を守れば歯周病の既往の無い患者と遜色のない成功率を期待できる。

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