20150314 moriishi
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大学図書館問題研究会大阪支部 3月例会
2015-03-14
大阪大学 情報推進部情報基盤課 森石みどり
国立大学図書館協会海外派遣事業による調査報告北米におけるシェアード・プリントWESTと自動書庫、アクティブ・ラーニングスペース例
本日の内容
• 国立大学図書館協会 海外派遣事業
• シェアード・プリント
• WEST紹介
• WEST参加館見学
– カルフォルニア大学 北部書庫施設
– ユタ州立大学
– ユタ大学
• アクティブ・ラーニングスペース
• まとめ
国立大学図書館協会海外派遣事業
• 短期派遣:1週間程度。支給上限25万円
• 12月くらい~ 募集開始
• ~3月31日 申請締切
• 申請書
–調査研究テーマ、調査の概要、訪問先、旅程
–事前に訪問先に連絡を取り、担当者名と連絡先も申請書に記載
–旅費概算
テーマの設定
• 『学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)』 H25.8
–適切なコンテンツの管理と空間の確保
•アクティブ・ラーニングのための空間の確保
•「自動書庫の導入」
•「紙媒体の重複保存を抑制するシェアード・プリントの導入」
• 大阪大学の自動書庫(H27.4 稼働予定)
• シェアード・プリント + 自動書庫(+LC)
Shared Print
• 複数の図書館で協力し、共同で蔵書保存
• 集中型と分散型
–集中型:共同で使用できる書庫に移送・保存
–分散型:各図書館が担当資料を責任もって保存
• ≠Shared Strage(共同書庫)
• 北米を中心に複数の取り組み
• カナダ・香港・オーストラリア・フィンランド・イギリスなどで取り組み
Shared Print プログラム• PAPR: Print Archive and Preservation
Registry
– シェアード・プリント・プログラム・ディレクトリ
–約30プログラム登録
• ASERL:Association of Southeastern Research Libraries
– 東南部フロリダ大、25機関、分散型、雑誌
• CIC-SPR:Committee on Institutional Cooperation Shared Print Program
– イリノイ大、15大学、集中型、3社雑誌
• WEST
WEST概要
Western Regional Storage Trust
• University of California(UC)が中心。幹事館はCalifornia Digital Library(CDL)
• 分散型、雑誌バックナンバー
• 研究図書館、19州から109館参加
• 雑誌をリスク(消失可能性)で3種類に分け、それぞれに保存ルールを設定
• アーカイブビルダーとアーカイブホルダー
• UC学内 Shared Print プログラムも実施
訪問先
ユタ州立大学自動書庫150万冊
ユタ大学自動書庫200万冊
UC NRLF北部書庫施設
UCバークレー校
WEST members
CDLWEST幹事館
日程(4泊6日)
• 日本-サンフランシスコ時差:16時間(サマータイム)
• サンフランシシコ-ソルトレイク時差:1時間
9/2 9/3 9/4 9/5 9/6 9/7
午前 サンフランシスコ空港到着予定10時実際22時(米国時間)
NRLF ソルトレイクへ移動
ユタ大学 サンフランシスコへ移動
成田へ
午後 関空出発予定16時実際21時(日本時間)
UCバークレー校東アジア図書館ドゥ図書館
CDL
ローガンへ(高速バス)
ユタ州立大学
ユタ大学
(ソルトレイクシティ市立図書館)
成田着伊丹へ
カルフォルニア大学University of California:UC
• 10の大学(キャンパス)からなる州立大学群
• 学生と教職員合計 40万人
• 100の図書館に図書館員2,400人
• 蔵書数約3,800万冊
• 南北の書庫施設(Regional Library Facility)
California Digital Library : CDL
• 電子ジャーナル契約・提供
• データベース・電子化・機関リポジトリ
• シェアードプリント
カルフォルニア大学②学内Shared Print Program
• 南北の書庫施設(Regional Library Facility) に、重複なしで資料を移動・保存
• 早い者勝ち(状態を確認していない)
• 廃棄不可。元の所蔵館への移動は可
• 2004- Shared Print Program
• 重複を整理しながら、構成員に資料へのアクセスを保証する
• 管理にかかる時間を減らし、保存のコストも減らす
• JSTORやIEEEから。ElsevierやWileyの雑誌へ
• 現在は、分野別・出版社別に、雑誌だけではなく単行本のプログラムも。
WEST• 保存・冊子へのアクセス確保・スペースの再生
• 2009-2010 15~20大学で準備
• 2011-2013 implementation phase
• 2014-2016 sustainability phase
• v.1-2005までを、2035年まで25年保存
• すでに15,000タイトル 35万冊を保存
• 規模に応じた参加費(保存館は割引)と、カーネギー・メロン財団の補助金
• CDLが幹事館。9大学からなる実行委員会
WEST②• リスクに応じた保存レベル=アーカイブタイプ:
Gold・Silver・Bronze(+Platinum)と保存ルール
(巻号や状態の確認、欠号補充、保存場所など)
• アーカイブホルダー=保存館(26)
• アーカイブビルダー=欠号等補充作業館(6)
– 補充が終われば、アーカイブホルダーになる。
• 欠号補充は寄贈により行われ、資料の所有権はアーカイブビルダーに移管
• 保存不可になったら1年前に通知し、委譲先を探す
• 参加館の求めに応じ提供(ILL+館内利用)
タイトルカテゴリとアーカイブタイプ
WEST③
タイトルカテゴリ
冊子のみ
冊子+アグリゲーターEJアーカイブなし
冊子+EJ/アーカイブ
リスク
高
中
低
アーカイブタイプ
Gold
Silver
Bronze
精査レベル
号+状態
巻
なし
保存場所
保存書庫施設
図書館 /
保存書庫施設
http://www.cdlib.org/services/west/docs/WESTOverviewPresentation_2011_06.pdfのp.11を編集
WEST④ サイクル• 毎年約1年サイクルで、保存雑誌選定・保存
• ツールで、最も所蔵期間が長い保存館を抽出・選定
• 1-3月 所蔵データ提供(参加館)
• 4-5月 所蔵確認・分析(CDL)
• 5-12月 保存雑誌・保存館調整(委員会・CDL)
• 5-12月 巻号状態確認・補充(アーカイブビルダー)
• 1-3月 保存雑誌の情報を、公開方針・基準に従ってOCLCとPAPRに公開(アーカイブホルダー)
• 参加館に deseliction リスト送付(CDL)。廃棄は各館判断。次のサイクル開始
WEST⑤ まとめ
• 雑誌の消失可能性にしたがって、かけるべき保存コストに差をつけている
– EJがあるものの保存に手間をかけない
• 作業が分散している
– 幹事館:保存館の選定・調整
–アーカイブビルダー:欠号補充(予算配分有)
• 選定や保存などプログラムにかかるコストとサイクルが予測しやすい
• 同じルール・同じ基準で、毎年継続できる持続可能なプログラム
WEST⑥ 課題と今後
• 幹事館の負担・調整の難しさ(保存館の依頼等)
• 基準などの改訂
• 単行本のシェアード・プリント
–雑誌との違い。電子の有無や利用され方の違い
–目録情報の信頼性
–利用者調査
NRLF
Northen Regional Library Facility
• ハーバード(1986)より古い1982年建設
• 2回(1990,2005)増築(Phase I~III)
• 740万冊収容可能 600万冊所蔵
• 15.5度 湿度50%
NRLF②
• 資料種別・大きさ別・受入順配架
• 新たにラベル貼り付け
• 書棚に図書を前後2列置き
• 低コスト
UCバークレー校 東アジア図書館
East Asian Library
• 参考図書を移動
UCバークレー校 ドゥ図書館
Doe Library
• メインライブラリ
• 地下書庫
ドゥ図書館②
• 雑誌や参考図書を移動
Utah State University:USU
• 農業応用科学・工学・人文社会・教育学部等
• 学生数 27,000 教員800 職員1,600
Merrill-Cazier Library
• 蔵書数 160万冊
ユタ州立大学
ユタ州立大学② BARN
Borrower’s Automated Retrieval Network
• 150万冊収容可能、 54万冊所蔵
• 全ての製本雑誌 34万冊:基本的にEJ有
• 利用が少ない図書20万冊:10年貸出がない図書や参考図書の2冊目以降
• マイクロフィルム等
• 温度15.5度 湿度30%
• 100件/日程度の出納
ユタ州立大学③ BARN• ダイフク製自動書庫。ブックトラックを収納
• 固定配架(巻号順・請求記号順)
• 入庫も負担ではないし、入庫後は機械が管理
• 職員のブラウジングが可能で、大変効率的
ユタ州立大学④
• 自館のスペースの問題はない
• 蔵書の除籍もあまり行っていない
• WESTに参加しているのは、図書館協力のため
• WEST蔵書分析のための目録データの抽出に時間がかかる(が、手間ではない)
• 欠号補充の要請には、なかなか応えられない(EJのないGold資料は、自館でも必要)
• アーカイブホルダーへの招待
• 協力の仕方に関わらず、今後も協力していく
ユタ大学
The University of Utah
• 17学部(医・法・工・建築・芸・教育・人文・ビジネス・理・薬・歯学部等)
• 学生数 30,000 大学ランキング143位
The J. Willard Marriott Library
• 2009年リニューアルオープン
• 350万冊
• 5階建
• 48,000平米
ユタ大学②
Library Maps - Marriott Library
http://lib.utah.edu/info/library-maps.php
Knowledge Commons
• 250台以上のPC 300以上のソフト
• スキャナ・プリンタ・動画編集用PC・障碍者用PC
• 学生スタッフが中心に対応
• 職員は、環境を用意し、機器も把握し、サポートも担当
ユタ大学③
Student Computing Services
• 参考・学生スタッフのカウンターとは別に、機器貸出カウンター
• 学生スタッフの教育、オンライン教材作成
• 多種多様な貸出機器
• 3Dスキャナ・3Dプリンタ・ポスタープリンタ
• 3Dプリンタ講習会(週1回)
ユタ大学④
ユタ大学⑤• スペースは足りない。今後もコモンズは拡大
• 参考図書の利用チェックと入れ替え・縮小
• 大学・学生の利用にあわせた図書館。コモンズは教員と学生と図書館員が関連し結びついて発展
• タブレット普及で、机もやがてはなくなる
• カウンターも壁であり、違う形にしたい
• スペースが活動を生みだす
Automated Retrieval Center• 200万冊収容可能 100万冊所蔵• 特別コレクション、マイクロやDVDなど紙以外の資料、利用が少ない図書、雑誌、政府資料等
• 16.7度 30%
ユタ大学⑥ ARC
• HK-SYSTEMS製
• binに請求記号が見えるように収納
• 列で資料種別が決まっている
• binのリロケーションはない
• どの資料を自動書庫にいれるかは、各分野担当者と自動書庫担当者が参加する委員会で決定
ユタ大学⑦ ARC
ユタ大学⑧• WESTへの協力は、WESTの目的に賛同したから
• 自館スペースも足りていない
• 貸出は激減しているが、図書館の利用は増加しており、学生はスペースを求めている
• ハーバード等とは大学の使命が違う
• 大学として保存するべきもの
– 古いコンピュータの歴史の本・ユタ発行新聞原紙
• 大学のカリキュラムを確認して除籍も実施
• 大学として保存していく資料ならば、アーカイブホルダーになる可能性もないわけではない(が、WESTに資料を寄贈するほうがいい)
まとめ① 訪問から
• スペースの問題は共有されている
• 保存が前提
• 「保存コスト」キャンパス内保存>遠隔保存>共同保存
• 大学の使命・カリキュラム・利用状況等から、適切な保存コストの保存方法を選択
• 自動書庫はコストがかかるので、利用が少ない資料の中でも、近くにあるべきもの、利用されるものを保存する場所
まとめ②
シェアード・プリント
• 利用の少ない資料の保存コストを最小化
• 重複が多い一般的な資料が保存対象
• 重複が多い資料を対象にするほうが、各館で回復できるスペースを最大化できる
• 目録と、保存情報公開の重要性
Right-Scale Shared Print
• 参加館数やタイトル数に基準はなく、調整・保存が可能な適切なスケールから
国内事例・取り組み• 三大学連携(千葉大・お茶の水大・横国大)
• 東海・北陸地区(名古屋大学を中心。共同書庫建設のための予算要求)
• NPO法人共同保存図書館・多摩デポ
• 立教大・慶応義塾大(遠隔書庫)
• 東大・京大・名大(BNC)
• 広島大学(学内図書館で分散保存)
• 北海道大学(EJ有の雑誌を1誌保存)
日本で実施するうえでの課題
• 保存環境
• 保存情報を明示する方法。目録フィールド調整等
• 教員の理解
–選書と経費は部局・教員から
• 実施範囲と幹事館
• 蔵書分析システム
• 所有権(蔵書統計) ?
まとめ④
• 北米は2000年以前から検討、2000年を過ぎて取り組みが進み、2010年以降本格化
• いずれスペースは足りなくなる
• 信頼関係の構築と調整には時間がかかる
• 重複状況の調査等、データの重要性
• どれくらいの労力と資金を投資できるか
• 確実に保存する枠組みを固めることで、必要に応じた対応を可能とする
参考文献 (アクセス日2015-03-12)
• California Digital Library. WEST: Western Regional Storage Trust.http://www.cdlib.org/services/west/
• Center for Research Libraries (CRL). PAPR - Print Archive and Preservation Registry.http://papr.crl.edu/
• 大学図書館における冊子体コレクションの将来~日本版Shared Printの可能性~(当日配布資料). KEIO大学図書館国際フォーラム2014, 2014-02-28.http://www.lib.keio.ac.jp/jp/sharedprint/
• 小特集 : 電子資料と図書館.大学図書館研究. 2012, 95http://www.jcul.jp/ojs/index.php/daitoken/issue/view/9
• 菅原 光(訳). The Western Regional Storage Trust (WEST) : 大規模な学術雑誌(冊子体)の共同保管. 大学図書館研究. 2012, 95, 28-32.http://www.jcul.jp/ojs/index.php/daitoken/article/view/117
• 村西明日香. 北米における冊子体資料の共同管理の動向. カレントアウェアネス. 2014, 319, CA1819, 26-31.http://current.ndl.go.jp/ca1819
• 名古屋大学. 米国共同保存書庫視察報告書. 名古屋大学. 2014.http://hdl.handle.net/2237/20477
• 国立大学図書館協会 学術情報委員会 学術情報の利用促進と保存プロジェクトチーム. 学術情報の利用促進と保存プロジェクトチーム報告 2014.http://www.janul.jp/j/projects/si/gkjhoukoku201406b.pdf
• 文部科学省科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会. 学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ). 2013http://bit.ly/1EeWJz0
• Marriott Library, The University of Utah. Computer Labs & Services.http://lib.utah.edu/services/labs/
Salt Lake City Public Library
ありがとうございました