2015年度3年後期 素粒子物理学 1 第13回 2016年1...
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2015年度3年後期 素粒子物理学 1
第13回 2016年1月25日
戸本 誠高エネルギー物理学研究室(N研)
今日の内容
•前回の復習- ヒッグス機構
• Glashow-Weinberg-Salam模型
2
レポート(1月22日提出) 3
局所U(1)ゲージ不変なスカラー場φとベクトル場Aμのラグラジアンを考える
ヒッグス機構を通じて、2種類の質量を持った粒子ベクトルゲージ粒子Aμ
スカラー粒子(ヒッグス粒子)だけが現れることを示せ。
ゲージ粒子の質量スカラー粒子(ヒッグス粒子)の質量をμ、λを用いて表すそれら以外には、質量0の粒子や有限質量粒子を表すような項がラグラジアンには現れないことを示す
復習 4
場に関するEuler-Lagrange 方程式
Dirac方程式
Klein-Gordon方程式
Maxwell方程式
復習 5
自由粒子のラグランジアンフェルミ粒子の運動
U(1)局所ゲージ(位相)変換 に対して不変と要求ベクトル場 Aμ(光子場)を導入して、
相互作用する場を扱うQEDが得られるベクトル場も同時にゲージ変換する微分の代わりに共変微分
結合
光子場中の粒子の運動方程式を表すラグランジアン→
e- e-
γ
jμ(e)
Aμ
復習 6
(質量項=0のラグラジアン)
の位相変換に対しての不変性を考える
3成分のゲージ場 を導入して、
ベクトル場のゲージ変換
微分の代わりに共変微分(a=1,2,3)
)
SU(2)ゲージ場中の粒子の運動方程式を表すラグランジアン
(
復習 7
W+
u
d
W-
d
u
W3
u,d
u,d
荷電ゲージ粒子 中性ゲージ粒子
g g g
復習 8
3点ゲージ結合 4点ゲージ結合
U(1)にはなく、SU(2)にのみ現れる反応
g g2
ゲージ対称性の破れ 9
ゲージ場が質量を持つと、
ゲージ対称性が保てなくなる
光子とグルーオンは、 Good
W粒子とZ粒子は、mW=80GeVmZ=90GeV
ヒッグス場の導入10
スピン0の複素スカラー場 φ(x) を導入するφ1、φ2は、実場
(λ > 0)
-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 11
1.5
2
2.5
3
3.5
4
func1
-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 10.7
0.8
0.9
1
1.1
1.2
1.3
1.4
func2
φ1
φ2
φ2
φ1
μ2>0 μ2<0
質量μのスカラー粒子
宇宙初期 現在
相転移
VV
宇宙が冷えて
に対して不変大局的ゲージ(位相)変換
自発的対称性の破れ11
-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 10.7
0.8
0.9
1
1.1
1.2
1.3
1.4
func2
φ2
φ1
μ2<0
を満足する半径vの円周上でVが最小
ηξ
(定数項)+(η,ξの3次以上)
に真空を固定して、その周りを考える
ηの運動ξの運動 ηの質量
Goldstoneボソン
自発的対称性の破れ
これを用いて、ゲージ粒子に質量を与えられるか?
V
局所U(1):ヒッグス機構 12
U(1)局所ゲージ変換
ヒッグス場とゲージ場のラグランジアンを考える
ラグランジアンを不変にするには、
に対して
μ>0の場合、質量μを持つ荷電スカラー粒子のQEDラグランジアン
μ<0として、Aμが質量を獲得することができるか?
-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 11
1.5
2
2.5
3
3.5
4
func1
φ1
φ2
μ2>0
質量μのスカラー粒子
宇宙初期 V
局所U(1): ヒッグス機構 13
μ2<0
ηξ
-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 10.7
0.8
0.9
1
1.1
1.2
1.3
1.4
func2を代入φ2
ゲージ場Aμが質量を獲得質量を持ったスカラー場質量0のスカラー場(Goldstoneボソン)
? → Aμの偏局自由度
φ1
局所U(1): ヒッグス機構 14
ゲージ変換の自由度を利用し、
と特別のゲージを1つ決める
v, h(x), θ(x)は実数
Aμの質量ヒッグス場の運動 ヒッグスの自己相互作用
ヒッグスとAμとの相互相互作用 Aμの運動
局所SU(2): ヒッグス機構 15
WやZの質量の獲得メカニズム → SU(2)で同じことをする
ヒッグス場は、SU(2) 2重項
自発的対称性の破れ
3個の質量を持ったゲージ場と1個のヒッグス場(h)
Glashow-Weinberg-Salam模型
16
U(1)em 17
ψの運動エネルギーと質量 Aμの運動エネルギー相互作用
電磁相互作用:
が局所ゲージ変換に対して不変であるべしという要求から
γf
f
SU(2)L 18
ψの運動エネルギーと質量 W1, W2, W3の運動エネルギー相互作用
がSU(2)局所ゲージ変換に対して不変であるべし
SU(2)L相互作用:
弱い相互作用の荷電カレント19
の位相変換
の不変性を考える
荷電カレントはV-A型→左手系のみが関与(第10回)
に対して、
弱い相互作用の荷電カレントは、
中性カレント 20
弱中性カレントは、実験的に純粋なV-A型ではない
CV=CA=1ではなかった
荷電カレント同様にSU(2)の構造を持つと期待すると
しかしながら、、、
弱中性カレントは、左巻きだけではなく右巻き成分もある
弱い相互作用を含む理論の定式化 21
(1) Wμaと相互作用する3重項の弱カレント
(2) Bμと相互作用するカレント
SU(2)L
U(1)Y
左手系しか関与しない
ハイパー荷
弱アイソスピン
電弱統一 22
ψの左巻き成分と右巻き成分それぞれのSU(2)xU(1)変換
左巻きフェルミ粒子:SU(2) アイソスピン2重項レプトン クォーク
右巻きフェルミ粒子:アイソスピン1重項レプトン クォーク
右巻きニュートリノはない
LとRで別々の位相変換
電弱統一 23
電荷:SU(2)の中性カレント + U(1)の中性カレント
T T3 Q Yνe 1/2 1/2 0 -1eL- 1/2 -1/2 -1 -1
eR- 0 0 -1 -2
T T3 Q YuL 1/2 1/2 2/3 1/3dL 1/2 -1/2 -1/3 1/3uR 0 0 2/3 4/3dR 0 0 -1/3 -2/3
物理的な中性ゲージ場Aμ (U(1)em:光子) とZμ (Z粒子)
SU(2)Lのゲージ場Wμ3 とU(1)Yのゲージ場Bμ の線形結合互いに直行
電弱統一 24
混合角:ワインバーグ角
結合定数gとg’の関連付け:電磁と弱相互作用の結合の元は同じ
�igJ3µW
3µ � ig
2
0jYµ Bµ
= �igJ3µ[sin ✓WAµ
+ cos ✓WZµ]
�ig
2
0jYµ [cos ✓WAµ � sin ✓WZµ
]
= �i[g sin ✓WJ3µ + g0 cos ✓W
jYµ2
]Aµ
�i[g cos ✓WJ3µ � g0 sin ✓W
jYµ2
]Zµ
= �iejemµ Aµ
� ie
sin ✓W cos ✓W
⇥J3µ � sin
2 ✓W jemµ⇤Zµ
電弱ラグランジアン 25
質量0のフェルミ粒子と質量0のゲージ粒子のラグランジアン
ゲージ粒子の質量項 m2BμBμ は禁止 → ヒッグス機構フェルミ粒子の質量項も禁止
ゲージ不変性から
LとRで別々の位相変換
電弱相互作用のラグランジアン(電子・ニュートリノ)
ヒッグス場の選択 26
アイソスピン2重項 (T=1/2), Y=1のヒッグス場の模型
L1にスカラー場に対するラグランジアンを付け加える
光子の質量は0、W/Z粒子にだけ質量を与えたいU(1)Y, SU(2)Lゲージ対称性は破っても良いが、U(1)em対称性だけは破ってはいけない
Q=1/2+1/2=1Q=-1/2+1/2=0
自発的対称性の破れを とすれば、
なので、U(1)em 対称性は破れない
ゲージ粒子の質量 27
を代入して、ゲージ粒子の質量獲得
W±の質量
ゲージ粒子の質量 28
18v2[g2(W 3
µ)2 � 2gg�W 3µBµ + g
�2µ B2
µ] =18v2[gW 3
µ � g�Bµ]2
+0[g�W 3µ + gBµ]2
Aµ =g�W 3
µ + gBµ�g2 + g�2
Zµ =gW 3
µ � g�Bµ�g2 + g�2
MZ =12v�
g2 + g�2MA = 0
Z、γの質量
ワインバーグ角 29
g�
g= tan �W
Aµ =g�W 3
µ + gBµ�g2 + g�2
Zµ =gW 3
µ � g�Bµ�g2 + g�2
MW
MZ= cos �W
�Aµ
Zµ
�=
�cos �W sin �W
� sin �W cos �W
� �Bµ
W 3µ
�
cos �W =g�
g2 + g�2sin �W =
g��
g2 + g�2
MZ =12v�
g2 + g�2 →Wμ3とBμの混合のため、MZ>MW
ワインバーグ角、W/Zの質量、GFなどは、実験で決定Mγ=0もそうなるように模型を作っただけ (予言ではない)
GF =g2
4�
2M2W
= 1.166� 10�5 GeV�2 =1�2v2 v = 246 GeV
第10回授業
フェルミオンの質量 30
�m�� = �m(�R�L + �L�R) ゲージ不変性により禁止ヒッグス場との湯川結合を考える
L3 = �Ge
�(�e, e)L
��+
�0
�eR + eR(��, �0)
��e
e
�
L
�例:電子・ニュートリノ
自発的対称性の破れ
L3 = �Ge�2v(eLeR + eReL)� Ge�
2(eLeR + eReL)h
me =Gev�
2L3 = �meee�
me
veeh
電子の質量 ヒッグスとの相互作用
湯川結合
ゲージ粒子に質量を与えたヒッグスがフェルミオンにも質量を与える→でも、理論に質量の予言能力はない。
ヒッグス粒子と質量 31
v v
v v
v v v v
v vv v
W
Wv
v v v
v v v v
v=246GeV
v v v v v
v v v v vtL
tRtL tL tL tLtR tR tR tR tR
v=246GeV
ゲージ粒子の質量(ゲージ結合)
フェルミオンの質量(湯川結合)
g2
Yt
標準模型のLagrangian32
W±,Z,光子,グルーオンの運動エネルギーと自己相互作用
レプトン、クォークの運動エネルギーと相互作用(粒子の数だけ)W±,Z,光子,ヒッグス
の質量と結合レプトン、クォークの質量(粒子の数だけ)
ラグランジアン、美しいと思いますか?
実験的検証 33
ヒッグス粒子も発見
ある測定値を様々な測定値+標準模型で予測 → 良い一致
W、Z粒子質量、ワインバーグ角の精密測定によって、電弱理論の正当性が証明された。
階層性問題34
H
H
H
Fine tuning 問題(126)2 = O(1016)2 - O(1016)2
階層性問題EW scale <-> GUT scale246GeV 1016GeV
大統一での質量 補正量測定量
Unnatural
標準模型の問題 35
5%
27%
68%
暗黒エネルギー
暗黒物質
通常の物質
暗黒物質の候補となる粒子がない
超対称性粒子 36
→ LHC実験にて探索中時空間と内部空間の対称性:”超”対称性ファルミ粒子とボーズ粒子の対称性
超対称性があると 37
最も軽い安定な超対称性粒子は暗黒物質の有力候補
ヒッグス粒子質量の不自然さが解消
力の統一の可能性
-
~
大きな補正量を打ち消す
新しい素粒子の発見ヒッグス粒子の精密測定
LHC実験の今後データ量
2010
2012
2014
2016
2018
2020
2022
2024
2028
エネルギー13-14TeV
データ量
×4データ量×3
データ量×1
020
26
エネルギー14TeV
エネルギー14TeV
エネルギー7-8TeV
2000兆衝突
第1実験
第2実験
第3実験
第4実験
より高エネルギーへ、より沢山の陽子衝突を
38
→ 新しい標準模型を作り上げる!!
アップグレード 0
アップグレード 1
アップグレード 2
国際リニアコライダー計画 39
国際リニアコライダー計画
全長31km(調整可能)
日本では岩手が候補地
39
Future Circuler Collider 40
周長100kmの加速器LHCの7倍以上の陽子陽子衝突エネルギーを目指す
これからの素粒子物理学 41
標準模型は~100GeVまでの有効理論
標準模型を超える新しい物理の存在は確実
LHC実験 → ILC実験 → 100TeV LHC(?)
素粒子をプローブにして、真空と時空の謎にせまる