2016.12.9 重症ards患者における腹臥位の有用性
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ARDS(acute respiratory distress syndrome)
病態:非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫 好中球主体の過剰炎症反応が関与
病態生理の一部肺水腫
表面張力低下
肺胞の虚脱
酸素化低下
特に肺の重さがかかる荷重部
仰臥位なら背側重力のため血流多い
換気血流不均衡
腹臥位にしてみよう
ARDS患者は腹臥位にすれば予後が良くなるのではないか・ 1996年~ 2004年に 4つの RCT
→酸素化は改善するものの、死亡率に有意差は出ず。しかし上記 4つの RCTを組み込んだメタ解析で、重症の ARDS患者では腹臥位によって死亡率が減少することが示唆された。
背景・腹臥位による ARDS患者の酸素化と肺障害の軽減は 度々報告されてきた・しかし生存期間の改善を認めた報告はない
背景・その一方でメタ解析により重度の ARDSでは 腹臥位による生存率延長を示唆する結果を認めた
・本研究の目的は重度の ARDS患者に 早期の腹臥位導入が生存率を改善するかを 明らかにすることである
目的・ primary 腹臥位と仰臥位での 28日死亡率の比較
・ secondary 90日死亡率、抜管の成功率・時期 ICU滞在期間、合併症などなど
PICOP:patient重度低酸素血症の ARDS患者にI:intervention腹臥位を導入するとC:comparision仰臥位のみと比べてO:outcome生存率を改善できるか
方法・前向き、多施設 (27ICU、大半はフランス )、ランダム化比較試験参加 ICUは 5年以上の腹臥位の訓練を受けている
・重度症の ARDS患者とはFiO2≧0.6PEEP≧5cmH2O1回換気量 : 予測体重×6mlのもとでPaO2/FiO2<150mmHg
方法・群分け【腹臥位群】 240人 【仰臥位群】 234人
・除外基準腹臥位禁忌の患者 頭蓋内圧亢進もしくは脳灌流圧低下 大量喀血 気管手術 (15日以内 ) DVT(2日以内 ) ペースメーカー (2日以内 ) 脊椎骨、大腿骨、骨盤骨折の既往
SP:supine positionPP:prone positionNB:neuromuscular blocker
結果
SOFAスコア、昇圧剤・筋弛緩薬の使用率で有意差あり
2群間の比較
・腹臥位群について
ICU滞在時間の 73%を腹臥位で過ごした
開始のタイミング 割り付け後、 55±55 分回数 4±4回
1日の持続時間 17±3時間
primary outcome:生存曲線
28日生存率は腹臥位群が優れていた(90日生存率も )
Secondary outcome
90日間の抜管成功率ICU滞在期間人工呼吸離脱期間で腹臥位群が優れていた
Discussion& Limitation
・重症 ARDS患者は腹臥位群の方が生存率が高かった
・メタ解析から重症 ARDS患者における腹臥位の優位性が 示唆されていたが、それを証明することができた
Discussion& Limitation
・酸素化だけでなく FiO2や PEEPにも注目し統一化したこと、 研究参加まで様子見の時間を置き、真の重症患者を選べた ことが有意な結果につながった・しかし患者を腹臥位にするという技術は難しく、 チームのたゆまぬ努力が必要である
ARDS ガイドライン 2016
私見腹臥位管理●問題点最大の課題は熟練したスタッフやマンパワー全体としてのサンプル数もまだまだ少ない●展望低コストで、死亡率の大きな改善の可能性あり実施可能な施設が増えるようにマンパワーの確保や教育などの体制が必要