平成23年度次世代高信頼・省エネ it 基盤技術開発・実証事業...

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平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 (近畿地域中小企業利活用基盤整備事業) 新規ビジネス創出研究会 報告書 平成24年3月 財団法人 関西情報・産業活性化センター

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Page 1: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業

(近畿地域中小企業利活用基盤整備事業)

新規ビジネス創出研究会 報告書

平成24年3月

財団法人 関西情報・産業活性化センター

Page 2: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

目 次

1.研究会の概要 ....................................................................................................................1

(1)目的 ...........................................................................................................................1

(2)体制 ...........................................................................................................................2

(3)検討フロー ................................................................................................................3

(4)検討の経緯 ................................................................................................................4

2.各研究会の検討結果の概要 ..............................................................................................5

(1)中小ユーザ IT利活用研究会 .....................................................................................5

(2)大手・地域ベンダ連携研究会 ...................................................................................8

(3)マーケットプレイス研究会 .................................................................................... 15

3.新規ビジネス創出研究会の検討結果 ............................................................................ 17

(1)各コミュニティの形成 ........................................................................................... 17

(2)新規ビジネス創出モデルについて ......................................................................... 19

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1.研究会の概要

(1)目的

情報サービス分野は、我が国の基幹産業であるだけでなく、製造業・サービス業といっ

た各産業のみならず、電力・交通・水等の社会システムに至るまで広く活用されている。

また、我が国の情報サービス産業は、技術的な観点から見ても高信頼・高品質のシステム

制御技術等を有しており、高度社会システムの根幹やイノベーションを支えている。

現在、情報技術分野はクラウドコンピューティングを利活用した大容量情報の蓄積・分

析等による新たな価値を提供するサービス等が急速に普及してきている。今後も次世代情

報処理基盤としてクラウドコンピューティングを利活用したビジネス向けのサービス等が

さらに普及していくものと予測されている。

一方で、急速に進展するクラウドコンピューティングによる情報技術環境の変化は、情

報サービス産業の構造変化をもたらすものと推測されている。特に、中小 ITベンダは首都

圏を中心とした大手 ITベンダからの受託開発を主流としてきたが、今後、クラウドサービ

ス等に対応したビジネスモデルの転換等が必要となっていくことが『情報経済革新戦略(平

成 22年 5月経済産業省産業構造審議会情報経済分科会)』においても指摘されているとこ

ろである。

また、我が国経済の大宗を占める中小企業においては、グローバル化する経済の中で競

争力強化、生産性向上は喫緊の課題であり、その課題解決のために IT利活用は必要不可欠

であるが、大企業に比べ情報技術の知識や活用能力、人材、IT投資額等において不十分な

状態にある。

そこで、地域中小企業の競争力強化や生産性向上を図るとともに、情報サービス産業の

構造的課題に対応することを目的として、経済性かつ利便性の高いクラウドコンピューテ

ィングの利活用を中心に、中小企業の IT利活用の促進と中小 ITベンダのクラウドサービ

スの展開等との連携強化を図るため、地域におけるクラウド利活用環境整備事業を実施す

る。

特に近畿地域においては、比較的規模の大きな ITサービス事業者と地域ベンダとが共に

立地しており、これらが相互に補完し合うことで、地域産業の IT利活用が促進されると考

えられる。また情報系の大学や研究機関の集積もあり、これら機関から産み出される技術

によって新規ビジネスを創出するなど、新たな産業活性化の起点となることも期待される。

そこで、本研究会では、近畿地域の ITベンダが提供するクラウドサービスと、それを活

用する地域ユーザの活性化を促進するために、地域コミュニティの役割、自立化のための

方策等について検討する。

そのために、本研究会では、中小ユーザ IT利活用研究会、大手・地域ベンダ連携研究会、

マーケットプレイス研究会の検討結果をもとに議論を行う。その際、地域コミュニティの

形成に関して、参加するメリット、継続して運営していくための課題及び地域展開方策等

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の視点でもって整理を行い、各研究会にフィードバックするとともに、検討内容の改善策

や地域コミュニティ拡大のための方策、戦略を取りまとめることを目的とする。

図-1 新規ビジネス創出研究会と各研究会との関係

(2)体制

研究会のメンバーは、以下のとおりである。

表-1 委員名簿

(順不同、敬称略)

氏  名 所属/役職

座長 中野 秀男 大阪市立大学 名誉教授

委員 足立 尚樹 知能技術株式会社 取締役

中村 好宏 財団法人京都高度技術研究所 情報事業部 担当部長

川端 一輝一般社団法人ITC-Labo. 代表理事(中小ユーザIT利活用研究会 座長)

鴨井  功一般社団法人情報サービス産業協会 理事(大手・地域ベンダー連携研究会 座長)

生田  勝特定非営利活動法人ITC近畿会 理事(マーケットプレイス研究会 座長)

加藤 正和 ITPプラザ 代表

中塚 一雄 特定非営利活動法人ITコーディネータ協会 事務局 部長

新規ビジネス創出研究会

中小企業の IT 化促進とビジネス発掘を目的に自

立して活動する地域組織づくりの検討

研究会 3回実施

中小ユーザ IT 利活用研究会

・研究会

企業の経営相談から IT 化案件を

発掘するための仕組みの検討

研究会5回

・実証事業

金融機関の顧客担当を通じて、ユ

ーザ企業の IT 化案件発掘事例の

分析

大手・地域ベンダ連携研究会

・研究会

地域ベンダがクラウドビジネスへ

参入するための課題を抽出し解決

するための新たなビジネスモデル

の検討

研究会5回

・実証事業(交流会)

クラウドビジネスへ参入するため

に、ベンダ間の連携、協業を促進

することを目的とした出会いの場

(交流会)を開催

ベンダ向け研修会 11 回実施

マーケットプレイス研究会

クラウドサービスをユーザに供

給するための課題や対応策につ

いての検討

研究会 13 回

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(3)検討フロー

本研究会では、中小ユーザ IT利活用研究会、大手・地域ベンダ連携研究会、マーケット

プレイス研究会の検討結果をもとに、地域クラウドコミュニティの形成に関して、継続的

に運営していくための課題や地域コミュニティ拡大のための方策等について検討した。

検討フローを以下に示す。

図-2 検討フロー

地域コミュニティのあるべき姿

地域コミュニティの展開方策

地域の活動事例

各研究会の検討結果

中小ユーザ IT利活用研究会

・IT経営ガイドブック作成

大手・地域ベンダ連携研究会

・関西地域における ITベンダのクラウドビジネスに関する調査

マーケットプレイス研究会

・中小 ITユーザ、中小 ITベンダのクラウドに関する現状認識 等

地域コミュニティ形成に向けての課題

地域コミュニティ運営に向けての課題

各研究会の検討結果の取りまとめ

地域コミュニティにおける新たなビジネスモデル提示

各研究会の検討結果

中小ユーザ IT利活用研究会

・IT経営ガイドブックの効果の検証

大手・地域ベンダ連携研究会

・ITベンダのクラウドビジネス参入のための交流会

マーケットプレイス研究会

・中小ユーザにクラウドサービスを供給していくための課題や対応策 等

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(4)検討の経緯

各研究会において検討した内容は以下の通りである。

第1回研究会

日時 : 平成 23年 7月 25日(月)15:00~17:00

場所 : (社)中央電気倶楽部 316号室

議題 : ○本研究会の主旨及び各研究会の概要説明

・中小ユーザ IT 利活用研究会

金融機関の職員向けガイドブックの概要及び研究・実証事業について

・大手・地域ベンダ連携研究会

地域ベンダ向けアンケート(案)の説明及び研究・実証事業について

・マーケットプレイス研究会

研究会検討テーマの説明

・新規ビジネス創出研究会

本研究会の検討事項及び各研究会の取りまとめ

○委員からの情報提供

「地域におけるユーザ企業の活動事例及び連携の可能性」

知能技術株式会社 取締役 足立 尚樹 氏

「京都クラウドビジネス研究会及びジャパン・クラウド・コンソーシアム

(JCC)の活動概要」

財団法人京都高度技術研究所 情報事業部 担当部長 中村 好宏 氏

第2回研究会

日時 : 平成 23年 10月 25日(火)15:00~17:00

場所 : 財団法人関西情報・産業活性化センター 第1会議室

議題 : ○各研究会の検討経過報告及び今後の検討内容について

・中小ユーザ IT 利活用研究会

IT 経営ガイドブックの提示、説明会の開催状況の報告

・大手・地域ベンダ連携研究会

地域ベンダ向けアンケート調査結果、関西クラウド構想の検討案の報告

・マーケットプレイス研究会

テーマ別検討状況報告

○新規ビジネス研究会の今後の検討内容について

第3回研究会

日時 : 平成 24年 3月 8日(木)15:00~17:00

場所 : 財団法人関西情報・産業活性化センター 第1会議室

議題 : ○各研究会の検討結果とりまとめ

○地域コミュニティにおける新たなビジネスモデル提示

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2.各研究会の検討結果の概要

(1)中小ユーザ IT利活用研究会

1)事業概要

本研究会では、経営課題を抱えている中小企業から、クラウド利活用による課題解決が

効果的な中小企業を発掘するために、日頃から中小企業との接点が強い金融機関の法人担

当や支援機関の相談員に着目し、その方々が、顧客から受ける相談内容の解決手段として、

IT、特にクラウドの活用を常に考えることが出来る方策について検討すること目的とした。

また、金融機関の顧客担当及び支援機関の相談員が取引先企業に対して、クラウドを利

活用することにより経営課題が解決できることを説くツール(ガイドブック)を作成し、

利用方法についての説明会を開催した。ガイドブックには、クラウドの特徴、中小企業の

クラウド利活用に関するメリット、利活用により課題が解決できた事例等を記載した。

IT経営ガイドブックについては、中小ユーザ IT利活用研究会の報告書を参照されたい。

このガイドブックを活用して、ITを効果的に活用して、自社の経営課題の解決を希望す

る企業を発掘するとともに、ガイドブックの効果についても検討を行った。

2)事業実施結果

金融機関に対して、IT経営ガイドブックの説明会に参加した受講者のアンケートより、

日頃より受ける経営相談の内容についてみると、「事業継承」、「税務、財務」に関する相談

が多く、IT関連の相談がきわめて少ないことが分かる。しかし、金融機関の顧客担当が説

明会を受講の後、企業訪問等により受ける経営全般の相談の中から、IT化により課題解決

につながると思われものが半数強を占めることから、効果的な IT活用が課題解決につなが

ると認識されたものと思われる。

図-3 金融機関に入る経営相談及び説明会受講後 IT化で解決できると思われる相談

金融機関の顧客担当が、ユーザ企業から受けた経営相談の中から、IT経営ガイドを活用

して、IT化により課題解決につながると想定されるケースを6社発掘した。

6社については、専門家を対象企業に派遣して、相談内容を確認の上、経営課題の抽出

等 IT化計画に向けての準備をすすめている。

Page 8: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

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表-2 IT化により課題解決につながると想定される企業の概要

紹介元 業 種 売上(百万円) 従業員数 相談分野

A行 紳士服製造・販売 491 28名 販売・生産指図の管理

B行 病院、学校等向け給食 600 7名 事業計画(マーケティン

グ)

B行 婦人靴販売(直営店8店

舗)

1,950 24名 経営改善計画

B行 水産卸、小売 3,000 40名 経営計画(業務拡大)

C行 広告デザイン - 個人事業主 マーケティング

C行 建築用塗料、資材販売 1,300 10名 マーケティング

金融機関の顧客担当に対して、ユーザ企業からの経営相談を受けた時に、IT経営ガイド

の活用状況についてアンケート調査を行った結果、約1割が経営相談につながり、そのう

ち IT相談につながったケースもみられた。

図-4 IT経営ガイドを説明した場合の顧客からの反応

さらに、IT経営ガイドを活用した金融機関の顧客担当や支援機関の相談員からは、事例

の追加や導入効果が分かる記載等の要望があり、今後の活用を踏まえ、IT経営ガイドの見

直しを行う必要が生じた。

図-5 IT経営ガイドの活用に対する要望

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また、今回発掘した IT化案件は、IT化計画を策定するために専門家の指導を必要とする

ため、中小企業支援ネットワーク強化事業等の派遣制度の活用が求められる。このことに

より、今後は、各種派遣制度の効果的な活用策を検討する必要がある。

現行の活動では専門家の紹介は可能であるが、発掘した企業に対して IT導入へ誘導する

ための一気通貫の仕組みがないため、公的支援機関が運営する各種専門家派遣制度等と組

み合わせて対応する必要がある。

以下に、IT化案件の発掘から IT導入までの流れ及び派遣制度の活用を示したものを図-

6に示す。

図-6 IT化案件の発掘から IT導入までの流れ

本研究会の活動を通じて、IT経営ガイドを活用することにより、経営相談の中から IT化

で解決が見込まれる案件を発掘することができた。

また、金融機関の顧客担当者が IT経営ガイドの説明を受けたことにより、ユーザ企業の

経営改善に対して、前向きに IT化を進める姿勢がうかがえる結果となった。

今後、経営相談の中から IT化案件を増やすための方策も明らかになってきた。その方策

を以下に示す。

・相談案件を進めるに当たり、有償・無償の範囲やそれに伴う費用を提示する

・IT経営ガイドに IT導入による効果や事例企業を増やして企業へ配布する

・相談企業の負担を軽減するために、各種支援機関が実施している専門家派遣制度の活用

方法を検討する 等

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(2)大手・地域ベンダ連携研究会

1)事業概要

始めに、関西地域の ITベンダを対象に、クラウドビジネスに関する意識、クラウドビジ

ネスへの参入状況等を把握し、クラウドビジネスへ参入するための課題を抽出するととも

に、参入のための必要機能について検討することを目的としてアンケート調査を行った。

さらに、アンケート調査結果を補完するために、ヒアリング調査も実施した。

次に、アンケートやヒアリング結果を踏まえ、中小 ITベンダがクラウドビジネスへ参入

するために、大手ベンダと地域 ITベンダ、中小 ITベンダ同士が連携して新たなサービス

を構築するための仕組み「関西クラウド構想」について検討を行った。

さらに、関西地域の大手・中小ベンダ、及び交流会参加者を対象に、この構想及びクラ

ウドビジネス参入の可能性についての意見を求めるために、関西地域のベンダの協業やパ

ートナーとの連携を促進することを目的とした交流会を開催した。

2)事業実施結果

①アンケート、ヒアリング調査結果

関西地域の ITベンダに対して実施した「関西地域におけるクラウドビジネスに関する調

査」アンケート、ヒアリング調査結果より、以下のことが明らかとなった。

なお、アンケート調査結果の詳細については、大手・地域ベンダ連携研究会の報告書を

参照されたい。

○クラウドビジネスについて

・大手ベンダは、プライベートクラウドを主体とした戦略をとっている

・中小 ITベンダは、クラウド事業への転換を考えているが、初期投資コスト、技術的

な要因等が課題である

図-7 従業員規模別クラウド事業への取り組み

○ベンダのビジネス環境

・中小 ITベンダの開発は、受託開発型の占める割合が高く、案件も減少しており、経

営に対する危機感が強い

15.4%

7.1%

100.0%

9.1%

15.4%

42.9%

50.0%

50.0%

54.5%

75.0%

15.4%

7.1%

0.0%

40.0%

0.0%

9.1%

0.0%

23.1%

28.6%

33.3%

20.0%

50.0%

18.2%

0.0%

30.8%

14.3%

16.7%

40.0%

0.0%

9.1%

25.0%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

顧客(ユーザ)からSaaS/クラウド形態でのサービス提供依頼があったため

自社のサービス環境の転換の必要を感じたため

従来から行ってきたパッケージ/SI提案によるビジネス展開に限界を感じたため

市場で競合する同業他社がSaaSによるビジネス提供を始めたから

クラウドブームだから

限られた人員の中で販売チャネルを構築し市場開拓を行う必要があった

ネットワーク経由のサービス提供形態による初期導入、保守メンテ負担経費の軽減

その他

5人以下 6人以上50人以下 51人以上100人以下

101人以上300人以下 301人以上 N=58

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9

図-8 従業員規模別事業領域

○大手ベンダ、行政に対する中小ベンダの要望

・中小 ITベンダは、ベンダ間連携による新たなシステム構築の仕組みを要望している

図-9 大手ベンダ、行政に対する中小ベンダの要望

○インフラ・ファシリティ関連

・中小 ITベンダは、国内事業者の iDCを利用する場合に、高度なサービスとそれに見

合う価格による利用を余儀なくされるため、最低限必要なサービスに応じた価格を

要望している

図-10 iDC利用状況

38.5%

80.6%

44.4%

65.0%

55.6%

7.7%

36.1%

33.3%

25.0%

55.6%

30.8%

33.3%

77.8%

60.0%

55.6%

46.2%

55.6%

66.7%

65.0%

33.3%

46.2%

30.6%

44.4%

40.0%

11.1%

15.4%

16.7%

11.1%

35.0%

33.3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

5人以下

6人以上50人以下

51人以上100人以下

101人以上300人以下

301人以上

顧客の細かな要望を実現するス

クラッチ開発主体の提案

自社パッケージを主体としたコ

ストパフォーマンスの高い提案

システムインテグレータとして

他社パッケージを含む総合提案

委託開発において協業ベンダと

分担し安価で高信頼なソフト

ウェアを開発 サーバ、ネットワークなどのイ

ンフラの設計構築

その他

48.6%

33.3%

38.9%

18.1%

41.7%

34.7%

25.0%

9.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

支援機関・金融機関によるユーザ案件情報

サポート

業界動向など公的機関による情報提供

金融機関・公的機関等による開発融資、補

助金などの情報

大手ベンダが提供するIaaS、PaaS

に関する情報

大手ベンダが運営するクラウドサービスと

ビジネスで協業するための情報

クラウドサービス開発に必要な技術支援を

行う専門家

クラウドサービス立上げ時に事業戦略立案

など経営的視点で支援を行う専門家

その他

3.3% 10.0%

20.0% 6.7% 6.7%

3.3% 3.3%

23.3% 10.0%

53.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

Google App Engine

Force.com

Windows Azure

Amazon Web Service(EC2,S3など)

NTTコミュニケーションズ

インターネットイニシアティブ(IIJ)

NTTデータ

富士通

NEC

ニフティ

KDDI

ソフトバンクテレコム

その他PaaS

その他IaaS

自社で運営

海外大手:12

国内大手:4

その他 :10

自社:16

N=88

N=72

N=42

Page 12: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

10

②関西地域のベンダが連携して新たなサービスを構築する仕組み「関西クラウド構想」

前述の中小 ITベンダを対象としたクラウドビジネス参入に関するアンケート調査、ヒア

リング調査を踏まえ、中小 ITベンダがクラウドビジネスへ参入するために、大手ベンダと

地域 ITベンダ、中小 ITベンダ同士が連携して新たなサービスを構築するための仕組みに

ついて検討を行った。この仕組みを「関西クラウド構想」として以下にその内容について

述べる。

関西クラウドに整備すべき機能は以下のとおりである。

○SaaS開発・運用環境の提供

SaaS開発・運用環境では、IaaS、PaaSを所有するベンダが SaaS運用ベンダに安価で提

供することにより、開発された SaaSオブジェクト(中小ベンダが所有するアプリケーショ

ンを SaaS化して、それぞれのアプリケーションが結合できるようにしたもの)をプラット

フォーム上で結合する。

図-11 SaaS運用環境の提供イメージ

○新たな SaaSサービスの構築

関西のベンダ企業が得意とするアプリケーションの情報を集積して、新しい SaaSサービ

スの構築を支援する。集積したアプリケーション情報の中から、SaaSオブジェクトの情報

として、関西クラウドデータベースに登録する。

大手ベンダと中小ベンダ、あるいは複数の中小ベンダで連携し、関西クラウドデータベ

ースに登録された SaaSオブジェクトを組み合わせて、新たな SaaSサービスを構築する。

図-12 新しい SaaSサービスの構築イメージ

Page 13: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

11

○地域ベンダの発掘

関西ならではのサービスを提供するために、テーマを決めたイベント(アワード、コン

テスト)を開催し、新たな SaaSサービスを構築するための SaaSオブジェクトを SaaS化す

ればよいアプリケーションを発掘する。

図-13 地域ベンダの発掘イメージ

○関西発クラウド情報発信

関西クラウドデータベースに登録された SaaSオブジェクトの情報は、関西クラウドデー

タベースに登録され、関西クラウドのポータルサイトより、情報発信する。

大手ベンダや地域中小ベンダが、顧客ニーズに応じた新たな SaaSサービスを構築するた

めに、ポータルサイトから SaaSオブジェクト情報を検索する。

図-14 関西発クラウド情報発信のイメージ

4つの機能の詳細については、大手・地域ベンダ連携研究会報告書を参照されたい。

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12

③実証事業「ITベンダのクラウドビジネス参入のための交流会」

中小ベンダのクラウドビジネス参入の仕組みとして、研究会で検討した「関西クラウド

構想」について、関西地域の大手・中小ベンダ、及び交流会参加者に、この構想及びクラ

ウドビジネス参入の可能性についての意向を確認するとともに、関西地域のベンダが所有

する各種クラウドサービスやクラウド化すればよいアプリケーションを紹介することによ

り、参加者が相互に情報交換することができ、協業等連携するきっかけづくりを目的とし

た交流会を開催した。

開催の概要は以下のとおりである。

開催日時 : 平成 24年 2月 22日(水)13:00~17:30

開催場所 : ステラホール 梅田スカイビル タワーウエスト3階

講演テーマ:

「クラウドビジネス参入のためのビジネスモデル構築に向けて」

講師 大阪市立大学名誉教授・大学院創造都市研究科特任教授 中野 秀男 氏

「関西クラウド構想の実現に向けて」

講師 NECシステムテクノロジー株式会社 顧問(研究会座長)鴨井 功 氏

「ポスターセッション出展ベンダ(40社)によるプレゼンテーション」

当日は、来場者 115名に加え、ポスターセッション参加企業、関係者と合わせて、合計

150名が参加した。

ポスターセッションには、大手・中小ベンダ合わせて 40社が出展した。

出展社アンケート結果の要約は、以下のとおりである。

出展社のほとんどは、クラウド関連各種サービス PRや協業先、新たなパートナーを探す

目的で出展した。

交流会では、「出展社相互の情報交換の場(ポスターセッション、プレゼンテーション)

を通じて、自社 PR及びクラウド事業者の各種サービス内容が分かり、大変有意義であった」

との評価を得ることができた。

協業先、パートナー企業探しについては、概ね来場者と出展社との名刺交換等をほとん

どの企業が行っている。出展社が自らブースを回るなどして自社 PRを行った企業や後日商

談を行うこととなった企業もみられる。このことから、パートナー企業を見つける場とし

ては有効であったと思われる。

Page 15: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

13

図-15 協業先・パートナー企業探しについて

関西クラウド構想については、概ね7割の企業が賛同しており、「関西発のサービスをよ

り多く提供していくためには、ユーザが安価で使いやすい環境を、個々のベンダが対応し

ていくのではなく、組織がサービス情報を提供して、対応していくべきであると考える。

そのためにも、小規模ベンダにクラウドビジネスに参入できる環境を整備すべきである」

との意見を得た。

イベントについては、出展企業のほとんどが継続を要望している。その理由として、「販

路開拓、商材の情報収集等につながりメリットが大きい」との意見を得た。しかし、イベ

ントの有料化実施については、出展費用によるが、中小ベンダの参加が見込めにくい状況

にある。

図-16 交流会等イベントについて

参加者アンケート結果の要約は、以下のとおりである。

講演会、ベンダポスターセッション、プレゼンテーションは、約6割が「参考になった」

との意見を得た。

クラウドビジネスについては、約4割が「参考になった」との意見を得た。

参加者では、「協業先、パートナー企業を探すことができた」と回答した参加者が約3割

にとどまり、より活発な交流を促進するために工夫することが課題となった。

5.6%

94.4%

33.3%

33.3%

11.1%

2.8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①自社に役立つ製品やサービスが見つかった

②来場者、出展社と名刺交換した

③展示ブースを回り自社PR活動、商談を行った

④来場者、出展社と後日商談することとなった

⑤活動したが協業先、パートナー企業を見つけることができなかった

⑥その他

Q5:(3)協業先・パートナー企業について (N=36)

82.9%

11.4% 5.7%

Q8:(6)イベントについて (N=35)

①是非継続してほしい

②継続してほしい

③そう思わない

Page 16: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

14

図-17 関西クラウド構想に対する意向

関西クラウド構想については、概ね半数の参加者が「賛同する」との回答を得た。

イベントの継続については、参加者においても6割強が「継続」を要望している。

これらのことから、今後も継続的にベンダの意向を踏まえながらイベントの継続に向け

て検討を進める必要がある。

図-18 イベントの継続に対する意向

さらに、個別相談会には5社8名が参加し、ITC他専門家2名(一般社団法人 ITC-Labo.

理事長 川端一輝氏、NPO法人 ITC近畿会理事 生田勝氏)で対応した。

交流会事業の詳細については、大手・地域ベンダ連携研究会の報告書を参照されたい。

本研究会では、地域ベンダが連携してクラウドビジネスに参入するための課題を明確に

するために、中小ベンダを対象としたアンケート調査を実施した。さらに、アンケート調

査結果より明らかになった課題を解決するために、必要な4つの機能を備えた「関西クラ

ウド構想」を検討し、大手ベンダと中小ベンダ、中小ベンダ同士の連携による新たなクラ

ウド参入のための仕組みを提案した。

しかし、関西クラウド構想を実現するためには、4つの機能の詳細な検討(①SaaS開発・

運用環境の提供、②新たな SaaSサービスの構築、③地域ベンダの発掘、④関西発クラウド

情報発信)を行う必要がある。さらに、関西企業のクラウドサービスデータベースについ

ての検討、加えて、具体的な組織づくりや運営方法についても検討を行い、関西クラウド

構想を推進していく必要がある。

関西クラウド構想の詳細検討を行うために、国を始めとする行政機関や関連団体に対し

て、予算計上の働きかけを行うとともに、研究会メンバーの継続的な参加及び役割等を明

確化していく必要がある。

77.1%

0.0% 22.9%

Q6:(4)関西クラウド構想について (N=35)

①賛同する

②賛同しない

③わからない

63.6% 27.3%

0.0%

9.1% Q12:⑧このようなイベントを継続してほしい (N=22)

はい

どちらでもない

いいえ

無回答

Page 17: 平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業 …マーケットプレイス研究会 図-2 検討フロー 地域コミュニティのあるべき姿

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(3)マーケットプレイス研究会

1)事業概要

中小 ITベンダの SaaSクラウドの活用による IT経営、IT化推進において課題とその対策

を明確にするとともに、マーケットプレイスの活用による課題と対策についても明確にし、

中小ユーザ、専門家、中小 ITベンダの IT経営、IT化推進の参考とすることを目的とした。

なお、本研究会は、特定非営利活動法人 ITC近畿会に委託して実施した。

研究会では、NPO法人 ITC近畿会メンバーを中心に検討を進め、必要に応じて、学識経験

者や有識者の意見・アドバイスを取り入れ 13回実施した。

検討項目及びその概要は以下のとおりである。

○中小ユーザ企業、中小 ITベンダのクラウドに関する現状認識

中小ユーザ企業の現状について、クラウドを導入している中小ユーザ企業へのヒアリン

グ等より考察すると、中小ユーザの経営課題と中小 ITベンダが提案するシステムとの間で

ニーズの不一致が生じている。中小ユーザ企業は、システムライフサイクルが来ないと検

討できない所がほとんどの状況である。

一方、中小 ITベンダは、クラウドの潮流に危機感を感じており、やむなくビジネスモデ

ル転換を模索し始めている。

○中小ユーザ企業が必要とするクラウドサービス

中小ユーザ企業向け SaaSアプリケーションサービスを5つのサービス(①業務支援型サ

ービス、②業種共通業務サービス、③業種対応業務サービス、④企業活動で必要とするト

ータルサービス、⑤オンプレミス連携サービス)に分類して、サービス機能や費用につい

て整理した。

○中小ユーザ企業へのクラウドサービスの供給方法

中小ユーザ企業に対する供給方法として、3つの供給方法(①業界、業種ソリューショ

ンとしての供給、②業務ソリューションとしての供給、③ビジネスプロセスアウトソーシ

ング(BPO)としての供給)を提案した。

○クラウドサービス供給にあたっての支援サービスのあり方

マーケットプレイスの観点から、地域の中小 ITベンダ、ITコンサルタントが中小ユーザ

企業の IT経営、クラウド活用を促進するに当たり、有効と思われる支援サービスとして、

5つの支援サービス(①中小ユーザ企業と ITコンサルタントのマッチング、②中小ユーザ

企業と供給者のマッチング、③ITコンサルタントと中小 ITベンダのマッチング、④クラウ

ドサービスの見える化、⑤業界、業種への支援サービスとしてのマーケットプレイス)を

提案した。

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○中小ユーザ企業で必要となる運用管理業務

クラウドサービス利用時の運用管理業務についてオンプレミスシステムの運用管理業務

と比較した。クラウドサービスを利用することにより、業務の多くは、クラウド事業者が

行うこととなるが、オンプレミス型に比べ、新たな業務として、従量課金での費用管理、

ネットワーク環境やパソコン等ユーザ企業所有の設備の管理、利用ユーザがアクセスする

パソコンの管理等の業務が増加することについて述べた。

○クラウド利用における情報セキュリティ対策

クラウドの利用時、供給時において、経済産業省のガイドラインをもとに、中小ユーザ

企業にも理解できる対策として解説した。

○契約モデルと SaaSクラウド利用時の要考慮事項(課題・問題、リスク)

SaaSクラウド利活用上の問題点や課題を洗い出し、それに対する解決方法について、経

済産業省や業界団体が提示している契約モデルと関連から考察した。

2)事業実施結果

本研究会では、情報システム部門を持たない中小ユーザ企業が、SaaSクラウドを利活用

して IT経営、IT化を推進する際、そのような中小ユーザ企業にサービスを提供する中小

ITベンダ、そのような中小ユーザ企業、中小 ITベンダを支援する専門家の参考となり、IT

経営が一層推進することを狙って検討を進めた。その結果、SaaSクラウド利活用にあたっ

てマーケットプレイスによる中小ユーザ企業と中小 ITベンダの双方向コミュニケーション

の場とそれをコーディネートする ITコーディネータ(専門家)、行政等を含めたコミュニ

ティの形成がきわめて重要であることが分かった。

しかし、SaaSクラウドについては、導入実績や事例、運用実績においても従来のオンプ

レミスシステムに比べて少ない状況である。

そこで、今後は、実際の SaaSクラウドサービスの選定・導入を実施し、さらに以下のこ

とを検証していく必要がある。

・中小ユーザ企業が安心して SaaSクラウドサービスが選定、導入できる仕組み

・中小ユーザ企業の期待に応える中小 ITベンダの地域で良好なサービスメニューと運用

を含むビジネスアウトソーシングの提供

・ITコーディネータ等の専門家が実績に裏付けられたノウハウで中小ユーザ企業や中小

ITベンダ、その他関係者を支援できる仕組み

研究成果の詳細については、マーケットプレイス研究会の報告書を参照されたい。

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3.新規ビジネス創出研究会の検討結果

(1)各コミュニティの形成

ここでは、各研究会の検討結果を踏まえ、関西地域におけるユーザ、ベンダ、支援(専

門家、支援機関)の各コミュニティの形成について検討する。

1)ユーザコミュニティ

ユーザコミュニティは、日頃から企業との接点が強い金融機関、業界団体等で構成する。

これらの機関を通じて、ユーザ企業の IT化案件の発掘を行う。

中小ユーザ IT利活用研究会の検討結果より、金融機関を通じた経営相談から IT化につ

ながる案件が潜在的にあることが分かった。

今後は、今回参加した金融機関からの更なる IT化案件の発掘を行うとともに、大阪地域

の他の金融機関への働きかけや大阪地域以外の他地域の金融機関への働きかけを行い、さ

らなる IT化案件の発掘を行うべきである。

金融機関以外に、損保、生保関連企業への働きかけや業界団体への働きかけについては、

今後も継続的に検討を進めるべきである。

今後の具体的な進め方については、関西地域における ITベンダ、地域の支援機関、金融

機関、専門家等で構成する連絡会議「関西 IT利活用促進連絡会議」にて、引き続き活動を

行うものとする。この会議は、ユーザ企業の IT利活用を促進するための検討の場として平

成 22年より活動を開始している。

図-19 IT化案件発掘のための展開イメージ

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2)ベンダコミュニティ

ベンダコミュニティは、ITベンダ関連団体に所属している企業等で構成する。関連団体

を通じて、コミュニティ参加企業の拡大を図り、地域のユーザ企業の IT化案件に対して、

システム提案を行い、地産地消型ビジネス構築を行う。

大手・地域ベンダ連携研究会の検討結果より、地域の中小ベンダは、大手と中小ベンダ、

中小ベンダ同士が連携してクラウドビジネスへの参入意向が強い。そのために、必要な機

能を備えた関西クラウド構想に対する期待が大きい。さらに、その実証事業として行った

交流会においても事業継続ニーズが多いこと等が明らかとなった。

今後は、関西クラウド構想を実現するためにも、地域ベンダの意向を反映した交流会の

開催について検討をすすめるとともに、交流会参加企業を増やし、参加企業のデータベー

ス化を進める。さらに、SaaSアプリケーションの構築等ベンダ連携のモデルケース事例の

創出についても検討を進めるべきである。

今後の具体的な進め方については、財団法人関西情報・産業活性化センターが主体とな

って、大手・地域ベンダ連携研究会メンバーを中心に、大きく2つのテーマについて引き

続き検討することとする。

○ベンダ連携を促進するための交流会の開催検討

○関西クラウド構想の実現化方策の検討

・4つの機能の詳細な検討(①SaaS開発・運用環境の提供、②新たな SaaSサービス

の構築、③地域ベンダの発掘、④関西発クラウド情報発信)

・ITベンダのデータベース(関西クラウドデータベース)の構築検討

・ベンダ連携による SaaSアプリケーション構築事例の創出

・運営方法についての検討

図-20 ITベンダのデータベース化(関西クラウドデータベース)

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3)支援コミュニティ

支援コミュニティは、ユーザ企業に対する IT化のアドバイス及びベンダに対するビジネ

ス支援を行う専門家(ITコーディネータ、中小企業診断士、税理士等)で構成する。

専門家は、ユーザ企業の IT化計画の策定支援を行い、RFP等 IT化計画を策定する。また、

ベンダ同士の協業や連携によるビジネス創出支援を行う。

今後は、ユーザ企業や中小 ITベンダの多様なニーズに適切に対応することができる専門

家のコミュニティへの参加を増やすとともに、適切なマッチングを図り、ユーザ企業の IT

化や中小ベンダの経営力強化を図るべきである。

図-21 専門家による支援イメージ

(2)新規ビジネス創出モデルについて

前述の3つのコミュニティが、効果的に連携することにより、中小企業の IT化を促進し、

商流を生み出すことができると考える。

商流の流れを整理すると、ユーザコミュニティからの IT化案件が発掘できれば、支援コ

ミュニティからその企業の IT化計画策定を支援する専門家を選定(ユーザ企業と専門家と

のマッチング)する。IT化計画を策定する費用(専門家派遣)について、各種支援機関と

連携して、ユーザ企業の負担を軽減する。

ユーザ企業が策定した IT化計画をもとに、ベンダコミュニティに対して説明会を実施し、

システム提案を求め、IT導入を行うベンダを選定(ユーザ企業とベンダとのマッチング)

する。

○e相談所の活用

各コミュニティの役割を繋ぐものとして、e相談所がその役割を担う。

e相談所は、ITベンダの提供するサービスや専門家の得意分野等を登録しているデータ

ベース(情報 BANK)を整備している。このベータベースを活用して、ユーザ企業と専門家、

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ユーザ企業と ITベンダとのマッチングを支援する。さらに、リアルの場としてのビジネス

マッチング商談会等についてもユーザとベンダとの効果的なマッチング手段である。そこ

で、クラウド導入による成功事例紹介等もユーザ企業の IT 化促進につながると思われる。

○SaaS/クラウドマーケットプレイスの活用

ユーザ企業の IT導入に向けて、短納期で低価格で技術的なノウハウがなくても手軽に導

入できる SaaS/クラウドの活用、ユーザが利用しやすい SaaS/クラウドのマーケットプレイ

スの活用についてもユーザ企業の IT化支援として重要となる。

○関西クラウド(ポータルサイト)の活用

また、ベンダが新たに構築したクラウドサービスを関西クラウドポータルサイトから PR

することで、ITベンダの新たなサービスの構築を促進する。これについては、マーケット

プレイスと連携して、新しいサービスとしてユーザに示すことにより、よりユーザ企業の

SaaS/クラウド利活用促進につながるものとなる。

これで、ユーザ企業の IT化案件の発掘から IT導入までの一連の流れ(商流)となる。

この流れが、繰り返し頻繁に行われることにより、商流の規模が大きくなり、関西地域

のユーザ企業の IT化が促進され、地域活性化に大きく貢献する。

そのための仕掛けとして考えたビジネスモデルの概念を以下に示す。

図-22 新規ビジネスモデルの概念

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新規ビジネスモデルの概念を実現するためには、以下のような課題がある。

・各コミュニティの役割分担の明確化及び相互連携方策

・コミュニティ全体を運営する組織、推進体制の確立

・活動に伴う受益者負担の割合(額)等

今後、このような課題に取り組み、関西地域における地産地消型ビジネスモデルを構築

することにより、地域活性化に貢献するものとなる。

具体的な活動内容を以下に示す。

○「関西 IT利活用促進連絡会議」

次年度においても、引き続き関西 IT利活用促進連携会議のメンバーである金融機関、支

援機関、ITベンダ団体、専門家団体の参加を得て、検討を進める。

金融機関においては、今年度の成果を踏まえ、大阪以外の地域展開(京阪神地域を中心)

についても検討する。

・金融機関の協力を得て、中小 ITユーザの IT化案件の発掘の継続的実施

・IT経営ガイドの見直し・増刷及びガイド活用の説明会の開催

○「関西クラウド研究会(仮称)」

今年度の大手・地域ベンダ連携研究会メンバー及び交流会のポスターセッション参加企

業を中心に、以下の項目ごとに参加メンバーを募り、検討を進める。

・ITベンダのニーズを踏まえ、テーマを絞った交流会の開催検討

・SaaS/クラウドの情報収集(データベース化)及び情報発信(ポータルサイト)の検討

・SaaSの商材を用いて、ベンダ間連携による新たな SaaS開発モデルの構築

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平成23年度次世代高信頼・省エネ IT 基盤技術開発・実証事業

(近畿地域中小企業利活用基盤整備事業)

新規ビジネス創出研究会 報告書

発行 財団法人関西情報・産業活性化センター 情報化推進グループ

〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田一丁目3番1-800号

大阪駅前第1ビル8階

電話 06-6346-2543

e-mail [email protected]

平成 24 年 3月発行