「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

13
Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved. 在宅医療24時間体制強化のための 診診連携とそのモデル化 1 村上典由、北山摂、市川敦央、西田美幸、 遠矢純一郎 医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク 2013.9.22

Upload: -

Post on 03-Jul-2015

1.926 views

Category:

Documents


3 download

TRANSCRIPT

Page 1: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

在宅医療24時間体制強化のための

診診連携とそのモデル化

1

村上典由、北山摂、市川敦央、西田美幸、

遠矢純一郎医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック

在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク 2013.9.22

Page 2: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

住所 東京都世田谷区用賀2-41-18

理事長 野間口聡

従業員数 217人(医師85人,看護師24人他)

<在宅医療診療実績>

松原アーバンクリニック(有床診) 桜新町アーバンクリニック

鎌倉アーバンクリニック

医療法人社団和五会鷺沼ファミリークリニック[連携医療機関]

有床の機能強化型在支診(2法人4クリニック連携)

在宅医 52名(常勤13名、非常勤39名)

患者数 1700名(個人宅300名、施設1400名)

看取り数 327名/年

(連携医療機関 医療法人社団和五会 鷺沼ファミリークリニック含む)

2

医療法人社団プラタナス

※厚生局届出実績(2013年7月)

Page 3: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

[はじめに] 在宅医療では24時間対応が大きな負担

在宅医療に求められる24時間対応は、患者が最期まで安心して在宅療養

するための重要な要素であるが、主治医にとっては大きな負担であり、在

宅医療の普及が進まない要因になっているとも言われている。

3

非常に負

12%

負担であ

38%

あまり負

担ではな

36%

まったく

負担では

ない

2%

どちらと

もいえな

12%

非常に負

20%

負担であ

34%

あまり負

担ではな

36%

まったく

負担では

ない

0%

どちらと

もいえな

10%

24時間コール対応 24時間往診対応

※「在支診・病の緊急コール・往診体制等に関する調査」 (2013.6 メディヴァ調査)

Page 4: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

機能強化型連携制度が新設された

平成24年診療報酬改定で「機能強化型在宅療養支援診療所」という制度

が新設された。医師の負担を増さずに、24時間対応を充実させることを

目的とした制度である。

4

イ 所属する常勤医師3名以上

ロ 過去1年間の緊急の往診実績5件以上

ハ 過去1年間の看取り実績2件以上

※複数の医療機関が連携しての上記要件を満た

すことも可

機能強化型在支診の施設基準

グループ診療、あるい

円滑な診診連携が重要

※機能強化型については厚労省資料より、 診療報酬の増額割合は当院の診療実績より

※ 診療報酬が5~10%増額(患者自己負担も増額)

Page 5: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

しかし、機能強化型の届出は増えたが、実際の連携は進んでいな

機能強化型の届出数は2800件。特に連携型が増加した。

しかし、主治医でない患者への緊急往診は非常に少なく、実際の

連携は進んでいない。

5

12,841 10,933

2,604

221

0

5,000

10,000

15,000

平成23年 平成24年

単独強化型

連携強化型

従来在支診

97% 92%80%

3%8%

20%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

従来の在支診 連携強化型 単独強化型

1回以上

0回

機能強化型在支診の届出数 主治医でない患者への緊急往診の有無

※「在宅医療(その3)」(2013/6 中医協)

連携型でも主治

医以外の往診は

8%しかない

Page 6: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

有床診

当法人での2010年までの夜間・休日の往診体制

6

各クリニックの主治医が夜間・休日も往診を担当していた。

主治医

主治医主治医

主治医

Page 7: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

有床診

当法人での2011年からの夜間・休日の往診体制

7

当直医を置き、全クリニックの夜間・休日に代理往診できる体制を整備。

2012年から

機能強化型連携を届

当直医

Page 8: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

主治医でない医師による代理往診の問題点とその対策

8

主治医

• 患者・家族の不満になるのでは?

• 別クリニックから往診すると初診料が発生し患者負担が増

える

• 頻回往診していたのにターミナル加算等が取れない

• 代理往診医への報酬をどうするか?

代理往診医

(当直医)

• 診たことのない患者の緊急コール対応は難しい

• 主治医から具体的な指示をもらいたい。

• 初診になるので、保険証確認、カルテ登録、請求などが大

• 待機コストがかかる、不公平感

主治医が

コール対応

当直医が主治医クリニック

として代理往診金銭の精算× ×

当法人の解決策は、、

Page 9: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

機能強化型連携

当法人の代理往診の仕組み

9

急変

看取り

Cクリ

ニック

主治医

Bクリ

ニック

主治医

Aクリ

ニック

主治医

代理往診医

(当直医)

① 主治医がコール対応

<臨時往診する場合は>

② 当直医に往診依頼

③ 主治医が診療内容を指示

④ Aクリニックの医師

として往診

⑤ 診察後、結果を報告

⑥ 診療報酬の算定

⑦ 当直医の待機コストと

代理往診料の支払い

Page 10: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

考えられる課題に対する対策

10

課題 対策

① 患家の理解・あらかじめ夜間・休日は主治医以外の医師が往診す

る可能性があることを説明しておく

② 代理往診の依頼方法 ・「依頼マニュアル」を作成、全主治医に周知

③ 当直医のレベルのUP ・「代理往診マニュアル」を作成、入職時に教育

④ 当直医のできることの明確化・往診バッグの中身、持参薬剤、検査機器を共有

⑤ 診療所間のコスト負担の調整・待機コスト・往診コストをクリニック間で毎月精算

事務スタッフが中心になって課題の対策を行い、毎月の連携会議で共有。

Page 11: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

夜間・休日の

臨時往診

年間490件

結果、昨年1年間の代理往診実績は490件

11※2012.3~2013.2 夜間・休日の臨時往診実績より

1年間で夜間・休日の臨時往診は490件。そのうち代理往診は82%(403

件)、看取りが48件であった

代理往診によるクレームは無く、一定の質を維持することができた

待機医師に

よる代理往

診 82%

主治医によ

る往診 18%

夜間・休日の

臨時往診

年間490件

往診403件

うち看取り48件

Page 12: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

代理往診医の待機コストは強化型連携の増収分でカバーができる

12

(夜間) 45,000円×30日=1,350,000円

(休日) 60,000円× 9日= 540,000円

約 190万円

1ヶ月全て当直医を配置

待機コスト/月

÷

患者1名あたり 1万円

強化型(有床)での増収/月

在宅患者 190 名でカバー

(夜間) 20,000円× 9日= 180,000円

(休日) 30,000円× 9日= 270,000円

約 45万円

週末だけ宅直医を配置

待機コスト/月

÷

患者1名あたり 5千円

強化型(無床)での増収/月

在宅患者 90名でカバー

※強化型連携による増収額は当院の診療報酬実績より算出。

※待機人件費は当院での実績金額。

実際は臨時往診の収入もあるの

で、

さらに少人数でもカバーできる

小規模連携

のケース

Page 13: 「在宅医療24時間体制強化のためのモデル化」 村上典由

Copyright © Mediva Inc. All Rights Reserved.

考察・課題

13

• 今回の取り組みの結果、以下の条件が整えば代理往診が問題なく行えるこ

とがわかった。

① 日常の診療での患家との信頼関係と、代理往診についての事前の説明

② 代理往診を行うルール・環境の整備

③ クリニック間の金銭精算などを行うコーディネート役の存在

• 待機医師を置くいう経済的な問題についても、一定の在宅患者数がいれば

、強化型連携の増収分で待機コストをカバーすることができる。また、待

機医師を配置する日数を絞ることで、小規模の連携でも実践できることが

わかった。

• 一方で、もう一つの主治医の負担要因である、24時間コール対応について

は解決されていないので別の方策を考える必要がある。