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平成25年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) 自動運転自動車 平成26年2月 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155)

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平成25年度 特許出願技術動向調査報告書(概要)

自動運転自動車

平成26年2月

特 許 庁 問い合わせ先

特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03-3581-1101(内線2155)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第1章 調査概要

第1節 調査対象と目的

現代において自動車は生活を営む上で必要不可欠になってきており、各家庭における

自動車保有台数の増加、高齢運転手の増加、物流ニーズの多様化でトラックや商用車の

増加等、様々な要素から交通渋滞や交通事故の増加が問題となっている。

現在においては、自動車に搭載されたカメラやレーダ等の車載センサを用いて障害物

を認識し、衝突の可能性がある場合に運転手に警報を出力したり、自動でブレーキを行

う技術や、先行車両との距離を認識して、適切な車間距離を保つように自動で駆動力を

制御する技術、また車線を認識して車両が車線から逸脱しそうになった場合に、警報を

出力したり、車線内に復帰するように操舵制御等を行う技術等、一般的に予防安全シス

テムや運転負荷軽減システムと呼ばれる技術が車両メーカーにより市場投入されており、

交通事故回避に役立てられている。また、これら予防安全技術を統合して完成するとも

いえる運転手による操縦を必要としない完全な自動運転自動車に関する技術も開発がな

されている。

我が国における自動運転自動車は、実用化に向けたロードマップ(国土交通省)で 2020

年代初頭に高速道路本線上での連続走行を目指すとされており、各自動車メーカーによ

る自動運転自動車の実証実験も行われている。

海外に目を向けると、Google 社が開発した自動運転自動車の公道走行実験が報道され

ており、IT 業界等の他業種が自動運転自動車市場に参入する可能性も存在している。

そこで、本調査では自動運転自動車における技術発展状況、研究開発状況、日本及び

外国の技術競争力、産業競争力を明らかにし、日本企業及び政府機関が取り組むべき課

題、今後目指すべき研究・技術開発の方向性を検討するべく、市場動向、特許出願動向、

論文動向について調査を行った。調査対象は、自動運転自動車、運転支援システム、自

動運転自動車及び運転支援システムのための通信システム、自動運転自動車及び運転支

援システムの要素技術とした。、本調査における自動運転自動車とは、公道を走ることを

前提とした自動車であって、人間が運転操作をしなくても目的地まで自動的に移動し得

る自動車を指す。ただし、軌道上を無人で走る車両や、大規模採掘場等で無人で走るト

ラック等は調査対象範囲外とした。

図 1-1 に本テーマにおける調査対象範囲を示す。自動運転自動車は、特定の環境下に

限定されずに自動運転を可能とする完全自動運転と、特定の環境下において自動運転が

可能でそれ以外は運転手による運転に切り替えが行われる一部自動運転に分けられる。

自動運転自動車は更に単独で自動運転を行う単独走行と、他車両と隊列を形成して自動

運転を行う隊列走行、管制からの指示により走行制御がなされる車群制御にも分けられ

る。運転支援システムは、車線維持支援、衝突被害軽減/回避、車間距離制御、合分流

支援、駐車支援、右左折支援、車線変更支援、自動発進/停止支援に分けられる。要素

技術は、車載センサ等の認知技術、走行経路生成等の判断技術、制動制御や操舵制御等

の操作技術、自動車と運転手間の調停等の HMI 技術、システム設計に分けられる。また、

認知技術には車車間通信、路車間通信、歩車間通信による認知を含み、これら通信技術

における品質やセキュリティに関する技術も存在する。

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 1-1 調査対象範囲(イメージ図及び技術俯瞰図)

〈自動運転自動車イメージ図〉

ゲート

ウェイ

エンジンECU

ステアリングECU

レーダー

レーザー

レーダー

レーダー

カメラ

無線装置

ブレーキECU

車両接近!

歩行者用端末

前方注意!!

車載表示装置

路車間通信歩車間通信

車車間通信

〈技術俯瞰図〉

ECU・ソフト フェールセーフ

システム設計

完全自動運転

一部自動運転

単独走行

隊列走行

車群制御(交通管制)

自動運転自動車

車線維持支援

車間距離制御 車線変更支援

駐車支援

衝突被害軽減/回避

合分流支援

右左折支援

自動発進/停止支援

運転支援システム

運転負荷軽減システム

予防安全システム

要素技術

走行経路生成

衝突可能性判断

走行安定化・運転嗜好

地図生成

操作タイミング

判断技術

走行制御 警報

操作技術

監視 操作

HMI

走行環境認知

認知技術

車載センサ

車車間通信

路車間通信

歩車間通信

通信品質

セキュリティ

通信(外部情報)

※ADAS:Advanced Driver Assistant System

(先進運転支援システム)を含む

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

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資料編

第6部

第2節 自動運転自動車の技術概要

技術俯瞰図中の技術内容は以下のとおりである。

1.自動運転自動車

人による運転操作なく自動走行が可能な完全自動運転と、特定の環境下において自動

走行が可能でそれ以外は運転手による運転に切り替えが行われる一部自動運転の自動運

転自動車。また単独で自動運転を行う単独走行や、他車両と隊列を形成して自動運転を

行う隊列走行、管制からの指示により走行制御がなされる車群制御。

なお、本調査においては、運転手の監視下における運転か、運転手不在かは区別しな

い。

2.運転支援システム

(1)車線維持支援

車線維持支援は、車線と自車位置との関係を認識する手段を自車に搭載し、自車が

車線に近づきすぎた場合(車線を逸脱しそうになった場合)に運転手に警報を行う、

又は適正な位置に復帰するようにハンドル操作の補助を行う技術。

(2)車間距離制御

先行車両を車載センサ等で検知した場合は、先行車との距離を測定し、先行車の車

速変化に応じて、設定した車間距離もしくは車速を保つように制御を行う技術、設定

車速を一定に保つように車両制御を行う技術。

(3)駐車支援

カメラを用いた駐車区画線の認識や、レーダによって駐車空間を検出することで、

目標駐車位置を設定し、目標駐車位置までの走行軌跡を演算して、目標駐車位置まで

の操舵方向を支持することで、駐車を支援する技術。また、走行軌跡に沿って車両の

制駆動力や操舵を制御して自動で駐車させる技術。更に、これら技術を備え、人によ

る運転操作なく車両を入出庫する技術。

(4)車線変更支援

車線変更時に、死角となる後側方の障害物を検出し、障害物が存在する場合には警

報を出力する技術。また変更先の車線まで車両の制駆動力や操舵を制御して自動で車

線変更させる技術。

(5)合分流支援

高速道路等の合分流地点において、合流先の車両等を検出し、スムーズに合流が可

能となるよう、タイミングを出力したり、合流先まで車両の制駆動力や操舵を制御し

て自動で走行させる技術。

(6)右左折支援

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

交差点において、信号機情報や周辺車両を検出することにより、例えば対向車が存

在するにもかかわらず、右折しようとしている場合等において警報を出力したり、適

切な右折タイミングを出力する技術。

(7)自動発進/停止支援

交差点等において、信号機の色を認識して赤信号である場合や先行車が存在する場

合に自動で停車する技術。また、信号機の色が青信号である場合や、先行車が走行を

開始した場合に、自動で発進したり、交差点を通過走行させるような技術。

(8)衝突被害軽減/回避

車両の進行方向に障害物が検出し、障害物の存在位置及び自車両の速度や進行方向

等の情報を基にして、自車両と障害物が今後衝突するの可能性を判定し、衝突の可能

性が高い場合において事前に運転手に警告する、もしくは制動力の補助や自動で制動

を実施する技術。

3.通信システム

(1)車車間通信システム

車両同士が無線通信技術を用いて、情報(自車他車位置情報、速度情報等)をやり

取りする技術。例えば先行車両から無線通信技術を用いて先行車両の走行情報(他車

位置情報、速度情報等)を取得して、先行車両の走行挙動を予測し、所定の車間距離

を保って追従するように車両制御する技術。

図 1-2 車車間通信システムに関するイメージ図

出典:総務省「SIG-III 検討報告(案)」

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/wire/pdf/051

006_2_s03.pdf

(2)路車間通信システム

インフラからの情報(信号機情報、規制情報、歩行者情報等)を、車載端末が無線

通信技術を介して取得する技術。例えば、交差点等において車両から死角となってい

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

る場所に存在する二輪車の存在をインフラが認識して、車両に送信することで、車両

の運転手に二輪車の存在を報知する技術。また信号機から信号機の切り替わりタイミ

ングを取得して、車両の運転手に報知するような技術。

図 1-3 路車間通信システムに関するイメージ図

出典:総務省「SIG-III 検討報告(案)」

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/wire/pdf/051

006_2_s03.pdf

(3)歩車間通信システム

歩行者の持つ携帯端末等と車載端末とが無線通信を行うことにより、歩行者の存在

を認識する技術。交差点や横断歩道において歩行者が所持する携帯端末から無線通信

を介して、車両が歩行者の横断動作を認識し、運転手に報知するような技術。

4.要素技術

(1)認知技術

ミリ波レーダやカメラ等の車載センサや、車車間通信や路車間通信等の外部からの

情報取得によって車両周囲の走行環境を認知する技術。

(2)判断技術

認知技術によって得られた車両周囲の走行環境を基に、車両の走行経路の生成や障

害物との衝突可能性や衝突場所を判断、走行安定化のための路面推定、地図を生成、

車両の操作タイミングを判断する技術。

(3)操作技術

判断技術によって生成された走行経路や衝突可能性等の情報を基に車両制駆動力を

制御したり、操舵制御を行うことで車両を操作する技術。

(4)HMI(Human-Machine-Interface)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

運転手と機械とが情報をやり取りするための手段であり、運転手や機械の監視技術、

手動運転と自動運転の切り替え技術、また機械に指示を与えるための操作手段、人と

機械の調停を担う技術等において用いられるもの。

(5)システム設計

自動運転や運転支援システムに関連する ECU の構成や構造、OS やソフトウェアに関

する技術、フェールセーフに関する技術、異常診断に関する技術。

第2章 市場動向調査

自動運転関連市場は、現状では自動運転自動車自体の市場がまだ立ち上がっておらず、

LKAS/LDW、ACC、PCS といった運転支援システムとして展開している。これらを統合した ADAS

の世界市場規模は 2012 年で 1,363 千システムである(図 5-1-1)。市場シェアは BMW、ダイ

ムラー、ボルボ、フォルクスワーゲンといった欧州自動車メーカーが上位を占め、現状で

は欧州メーカーが先行している。日本は富士重工業の「Eye Sight」によって欧州メーカー

に次ぐシェアを有している(図 5-1-2)。その他国内では、トヨタ自動車、本田技研工業、

日産自動車が比較的先行しており、これら運転支援システムを搭載した自動車の国内外へ

の実績が比較的高い。米国メーカーの実績は ACC と PCS が中心である。米国のユーザーは

ASCD に慣れているため ACC は受け入れられやすい。また、PCS も高級車を中心に導入が進

んでいる。車線維持支援関連は LDW の警報のみの搭載が多く、米国では LKAS の普及が遅れ

ている。訴訟の多い米国では PL 法に対するメーカーの対応が慎重であり、運転手の意思に

反して車が制御される LKAS の製品化に対してメーカーがあまり積極的ではないという実

情がある。

図 2-1 ADAS 世界市場規模推移

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

2011年 2012年 2013年

(見込)

2015年

(予測)

2020年

(予測)

(千システム) 日本 欧州 北米 その他

出典:トヨタテクニカルディベロップメント株式会社の調査に基づき作成

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資料編

第6部

図 2-2 ADAS 世界市場シェア

BMW

26%

Daimler

22%Volvo

21%

Volkswagen

15%

富士重工業

8%

その他

8%

2012年 1,363千システム

出典:トヨタテクニカルディベロップメント株式会社の調査に基づき作成

このような地域によっての差は見られるが、自動運転を構成する運転支援システムの市

場は拡大が見込まれている。これらの運転支援システムを発展させた自動運転自動車を商

品化すると発表している自動車メーカーも多い(表 2-1)。

表 2-1 主要メーカーの自動運転自動車に関する取組み

メーカー 近の取り組み

トヨタ自動車

(日本)

・2015 年に高速道路での同一車線内での自動運転技術の実用化を目指す。

・2013 年 11 月、「ロサンゼルスオートショー2013」で、運転中の運転手の意識や認

知の仕組みを研究するための車両「ドライバー・アテンション・リサーチ・ビー

クル」を公開。

・2013 年 10 月、首都高速道路を実際に自動走行できる試験車両を初めて公開

・2013 年 1 月「国際家電ショー(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」

で、自動運転技術を備えた試作車(レクサス LS600h)を発表。

・2012 年 9 月、スタンフォード大学と自動運転技術に関する共同研究を進めると発

表。

日産自動車

(日本)

・2020 年までに自動運転自動車の実用化を目指す。

・2013 年 9 月、同社は高度運転支援技術を搭載した車両について、日本で初めて自

動車検査証及びナンバープレートを取得。

・2013 年 2 月、米国のカリフォルニア州シリコンバレーに R&D センターを開設。

当センターは、自動運転自動車とインターネット応用技術の開発拠点にする計画

となっている。

・2012 年 10 月に行われた「CEATEC JAPAN2012」に自動運転機能を搭載した EV ベー

スのテストカー「NSC-2015」を出展。

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要約

第1部

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資料編

第6部

メーカー 近の取り組み

富士重工業

(日本)

・2020 年代の実用化を目指す「アイサイト 202x」では、自動運転を視野に入れて

いる。

本田技研工業

(日本)

・2025 年以降に自動運転自動車の一般道路での実用化を想定。

・2020 年までに高速道路での自動運転車発売、駐車場での自動走行技術(自動バレ

ーパーキング)の実用化を目指す。

・2014 年、Google(グーグル)、Audi(アウディ)、General Motors(GM)、現代自

動車グループ、米国半導体メーカーNVIDIA と共同で、自動車への Android プラッ

トフォーム統合を目指す業界団体「Open Automotive Alliance (OAA)」を結成。

・2012 年 11 月に開催した「ロサンゼルスモーターショー12」(テーマは『2025 年

のハイウェイパトロールカー』)に、自動運転自動車「CHP ドローンスクワッド」

を発表。

フォード・モーター

(米国)

・2025 年以降、完全自動運転自動車の実用化を目指す

・2017 年~2025 年、順次自動走行技術を導入していく計画

グーグル

(米国)

・2017 年までに自動運転自動車を実用化する見通し

・2014 年、Audi(アウディ)、General Motors(GM)、本田技研工業、現代自動車グ

ループ、米国半導体メーカーNVIDIA と共同で、自動車への Android プラットフォ

ーム統合を目指す業界団体「Open Automotive Alliance (OAA)」を結成。

・2012 年 8 月までに、トヨタのプリウスやレクサス RX450h を改装した自動走行車

で 30 万マイル(48 万㎞)以上の試運転を行っている。

GM

(米国)

・2020 年までに高度なシステムを搭載した全自動走行車の生産を目指す。

・2018 年に運転手不要の完全自動運転の生産を行うことを CES2008 で発表。

・2017 年までに高速道路本線に限定した自動運転技術の実用化を目指す。

・2014 年、Google(グーグル)、Audi(アウディ)、本田技研工業、現代自動車グル

ープ、米国半導体メーカーNVIDIA と共同で、自動車への Android プラットフォー

ム統合を目指す業界団体「Open Automotive Alliance (OAA)」を結成。

アウディ

(ドイツ)

・数年以内に高速道路での自動運転が可能な車両を発売。

・2013 年、CES2013 にて、渋滞になると自動運転に切り替わり、適度に車間距離を

保つ自動運転自動車を発表。

ダイムラー

(ドイツ)

・2020 年までに自動運転自動車を市場投入できるとの見方を示す。

BMW

(ドイツ)

・2020 年までに高速道路での自動運転の確立を目指す。

・2013 年、Continental(コンチネンタル)と業務提携し、欧州の高速道路で高度

な自動運転の段階的な導入に向け、共同で技術開発を進めている。

・2012 年 1 月、「Connected Drive Connect(CDC):情報・通信・運転手支援」の一

環として自動運転自動車を発表。

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要約

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資料編

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メーカー 近の取り組み

コンチネンタル

(ドイツ)

・2025 年までに完全な自動運転の実現を目指す。

・2016 年までに部分的に自動化する一連のソリューションを開発および提供する予

定。

・2013 年 9 月、IBM(アイ・ビー・エム)と提携し、自動運転支援システム技術を

拡大すると発表。

・2013 年、BMW(ビーエムダブリュー)と自動運転技術開発に関して業務提携を行

う。

ボルボ

(スウェーデン)

・2017 年、スウェーデン、ヨーテボリ市周辺の一般道で自動運転の走行計画

また、特定の地域内(特区やスマートシティなど)での実用化時期も比較的近いと考え

られる。既に国内外で様々な実証試験が行われており、国内では電機メーカーが開発した

一人乗り自律走行車の特区での走行試験も行われている。特に社会的需要という観点から

は、高齢化が進んだ運転アシストや公共交通機関という形での導入の可能性が考えられる。

その場合、低速、小型、短距離への対応が必要となる。

一般道路での自動運転自動車の本格的な普及には法規制、各種規格標準化が進められて

いくことが必要である。技術的な今後の課題としては、車線変更への対応などに代表され

る危険・障害のある状況に車を制御できるかどうかである。現状の安全支援技術は危険の

も少ない状態へと車を制御することが大前提として開発されている。このような安全支

援を 優先にした技術だけでは実際に運転するユーザーが満足する自動運転機能になると

は言い難い。

安全性を重視するあまり、本来ユーザーが車に求めている利便性(目的地に早く着くな

ど)を阻害する可能性がある。トラックなどの業務用車両の中には早さを要求されている

ものある。このようなユーザーメリットと安全支援技術をメインにした自動運転との課題

を解決するためには、車両間で情報をやり取りすることなどによって安全面だけでなく快

適性や効率性を高めることが可能となると思われる。例えば、全車両に車車間通信を搭載

するなど、ドラスティックな対応が必要であると思われる。

また、米国では、車車間通信端末の搭載義務付けを検討中であり、欧州では 2015 年 10

月までに eCall(緊急時に救援機関に位置情報等を通知するシステム)の搭載義務化を採

択している。さらにロシアでは ERA GLONASS(eCall のロシア版)搭載の義務化法案が提出

されている。

企業の取り組みとしては、米国のクアルコムが 5.9GHz 帯 DSRC に対応したスマートフォ

ンのデモを行うなど(2013 年 10 月発表)、通信システムの開発が進められており、このよ

うな大手通信会社による高精度 GNSS、車車間通信に対応したチップの組み込みによって、

キー技術である通信デバイスが広く普及していく可能性がある。

通信端末としてスマートフォンを利用する動きも活発であり、パナソニックは GM 及び国

内複数自動車メーカーと連携し、スマートフォンで自動車を操作できるシステムの開発や

事故防止システム等の車載関連技術にスマートフォンの通信機能を組み合わせることを考

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えている。なお、本田技研はクアルコムと共同でスマートフォンを活用した自動車安全技

術の実証実験を開始している。

また、コンチネンタルは 2013 年 9 月に、IBM と提携しインターネット経由でソフトウエ

アなどを更新できる拡張性の高いクラウド・コンピューティング型の次世代車両基盤(プ

ラットフォーム)の開発を進めることを発表した。 また、ソフトウエアなどに強みを持つ

米シスコとも協業し、IT 業界との連携を強化しており、今後は自動車関連メーカーと IT

企業との協業関係の構築が加速していく可能性がある。さらに、コンチネンタルは IBM、

シスコと提携し、ビッグデータ活用及びセキュリティ技術への取り組みを開始している。

第3章 政策動向調査

各国の普及ロードマップに関しては以下の状況となっている。

日本は内閣府の日本再興戦略が今後の自動運転自動車に関する政策の柱になると思われ

る。これによると早期に公道自動走行実験に必要な要件検討と実施を行い、2020 年には自

動走行システムの試用開始が掲げられている。国土交通省の「オートパイロットシステム

に関する検討会」では ACC を高度化した「路車・車車協調型の運転支援」によって 2020

年代初頭頃のオートパイロットシステムの実現を目指している。

米国は US-DOT、NHTSA が中心となって取り組みを行っている。US-DOT は 2013 年に車車

間システムの NCAP(New Car Assessment Program)の適用を判断し、2015 年に路車間シス

テムの展開判断を計画している。NHTSA と、カリフォルニア州の PATH など州レベルでの取

り組みが活発である。

欧州では、これまで欧州フレームワークプログラム(FP)が代表的なプロジェクトであ

ったが、2014 年からは HORIZON 2020 に引き継がれている。ロードマップに関しては、現

在 ERTRAC 等によって検討されており、現段階の案では 2020 年に安全技術を基にした自動

運転の製品化を挙げている。

各国のロードマップでは、2015 年から 2020 年にかけて、自動運転自動車の実用化を目

標としており、今後さらに詳細な取り組みが決定されていくものと思われる。

既に、自動車メーカーの中には 2020 年までに自動運転の製品化を行うことを発表してい

る企業もある。また、米国では州レベルでの取り組みが活発であり、場合によっては政府

のロードマップより先んじてメーカー主導や米国の州単位で自動運転の普及が進んでいく

可能性もある。

表 3-1 に国別普及ロードマップの概要を示す。

国別普及ロードマップによると、各国のロードマップで言及されているのは ACC、路車・

車車協調制御型 ACC、路車・車車協調サービス、ダイナミック・ブレーキサポート、衝突

防止ブレーキ、アクティブセーフティとなっており、運転支援システムである予防安全運

転支援システム又は路車・車車間協調システムを基本とした普及を想定していると考えら

れる。

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表 3-1 日本、米国、欧州の普及ロードマップ比較

国 主体、プロジェクト 普及時期・内容 言及されている技術

内閣府、日本再興戦略 2020 年

自動走行システムの試用

- 日本

国土交通省、オートパイロッ

トシステムに関する検討会

2020 年代初頭

オートパイロットシステムの実現

ACC

路車・車車協調制御型 ACC

US-DOT、ITS Strategic

Research plan 2010-2014

2013 年

車車間システムの NCAP 適用

2015 年

路車間システムの展開

路車・車車協調サービス 米国

NHTSA、Preliminary

Statement of Policy

Concerning

Automated Vehicles

2017 年

自律走行の基本的安全性要件の開

発終了

ダイナミック・ブレーキサポ

ート、

衝突防止ブレーキ等

欧州 欧州委員会、HORIZON2020 2020 年

アクティブセーフティによる自動

運転の製品化と市場投入

アクティブセーフティ

先に挙げた普及ロードマップへの取り組み以外での、政府主導によるこれまでの主要な

導入プロジェクトの国別の状況を表 3-2 に示す。

日本では国土交通省が先進安全自動車(ASV)という観点で、警察庁が新交通管理システ

ム(UTMS)という観点で取り組んでいる。また、NEDO では省エネルギーという観点から隊

列走行での自動運転などの開発が行われている。

米国では DARPA が自律走行技術、US-DOT が車両間通信による衝突回避システム、TRB は

今後焦点となる研究開発の課題を抽出している。

欧州ではこれまで欧州フレームワークプログラム(FP)によって取り組まれてきた。主

に高速道路での隊列走行での自動運転実証運転が中心である。

中国では ITS への取り組みの一環として安全運転支援システムを重点分野とする段階に

とどまっている。

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第4部

第5部

資料編

第6部

表 3-2 日本、米国、欧州、中国の政府主導による主要な導入プロジェクト比較

国 主体 プロジェクト名 主要な関連技術

国土交通省 1991 年~ ASV 推進計画 車両周辺状況検知センサ

情報処理装置

道路インフラとの連携

自動制御・自動操舵技術

警察庁 1993 年~ UTMS 交通信号制御、交通情報提供など

日本

経済産業省・

NEDO

2008~2012 年エネルギーITS 推進事

CACC(Cooperative Adaptive Cruise

Control)等による隊列走行

DARPA 2004 年~ ロボットカー レーダー、GNSS、カメラなどによる自律走

行技術

US-DOT 2011 年 Connected Vehicle

Technology Challenge

車両間通信による衝突回避システム

米国

TRB 1990 年代~ Automated Vehicle 研究開発の課題を抽出中

1994~2002 年 CHAUFFEUR 赤外線カメラ、車車間通信による隊列走行

2008~2011 年 HAVEit レーダー、カメラ、赤外線車車間通信によ

る追随走行

速度制御、車線制御技術による高度な運転

支援

2009~2012 年 SARTRE

カメラ、レーダー、レーザーセンサ、車車

間通信による乗用車の隊列走行

FP

2004~2011 年 City Mobil プロジェ

クト

専用道路・専用路線での自動運転

iMobility フ

ォーラム

2010~2020 年インテリジェントカ

ACC、車線変更支援、交通管制

欧州

ド イ ツ 運 輸

省、アーヘン

工科大学

2005~2009 年 KONVOI カメラ、レーダー、レーザーセンサ、車車

間通信による大型トラックの隊列走行

中国 政府 2011~2015 年交通産業政策(ITS へ

の取り組み)

各種半導体、センサ、アンテナ、GNSS、レ

ーザーレーダーなどによる安全運転の支援

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4章 標準化動向調査

これまで行われてきた協調型 ITS に関する標準化活動に関して、欧州では欧州委員会が

発行した M/453(Mandate 453)に基づき、欧州の標準化機関 ESTI、 CEN に対し協調型 ITS

に関する標準化の項目が割り付けられた。また米国では DOT の主導のもとに CAMP でのプロ

ジェクトをベースとした SAE の標準化活動が開始された。このように政府主導で資金提供

を行い協調型 ITS に関する標準化活動が開始された。更に欧州-米国間で標準化に関する協

調活動として EU-US Task Force グループが形成され、各地域標準機関の間で矛盾なき標準

を検討する動きに至った。日本は、米国や欧州のように国際的な標準化活動になっておら

ず、欧米が遂行した互恵関係を構築するような協調活動に対し後塵を拝したため、防御的

標準活動として日本の仕様を国際標準に組み入れる活動を行っている。

1.システム機能の標準化(表 4-1)

現在 ISO TC204 WG14 では、自動運転を実現するための構成要素である ADAS の機能要

件に関する標準化を進めており、日本は議長国として標準化の先導を担っている。更に

近年は ADAS のみならず協調システムの機能要件に関する標準化にも着手し、この分野に

おける世界標準のリーダーシップを取っている。また、ISO TC204 WG14 にて自動運転シ

ステムの端緒として CACC の標準化を開始している。

2.通信標準化(表 4-1)

通信標準化においては、メッセージセット標準化、通信セキュリティの標準化、周波

数標準化等が挙げられる。

メッセージセットに関する各国の標準化作業では、欧州の標準化機関 ESTI と米国の標

準化機関 SAE はそれぞれ C2C-CC、CAMP といった自動車メーカーを主体としたプロジェク

トと密接な関係にあり、欧米では、政府、地域標準化機関、自動車メーカーの三者が一

体となった協調体制を確立している。また、国際標準については、現在 ISO TC204 WG18

(2009 年新設)及び WG16 にてメッセージセットの世界標準を策定中である。

通信セキュリティの標準化に関し、日本では電子情報技術産業協会(JEITA)が担当し

ている。欧米間では地域標準としての協調活動を開始したが、双方の通信アーキテクチ

ャーの相違、セキュリティ確保のための通信チャンネルの相違等が原因となり合意形成

には至らなかった。その後、米国では SAE 及び IEEE で、欧州では ETSI W5 で別々に検討

されている。国際標準化は ISO TC204 WG17 で検討されている。

3.地図標準化(表 4-1)

通信以外の標準化では地図標準化も重要となる。地図については、ISO/TC204 の専門

委員会(車両交通情報制御システム)を中心に標準化が進められており、日本が議長国

である WG3 では ITS 協調システムにおける Local Dynamic Map(動的地図)に関するテ

ーマも設定されている。また欧州においても WG18 にて Local Dynamic Map の標準化を進

めており、他の車両の経路予測や障害物の正確な位置特定に活用するとしている。

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 4-1 日本、米国、欧州の標準化取り組み状況

日本 米国 欧州

ISO TC204

議長輩出 WG WG3, WG14 WG8, WG16

WG1, WG4, WG5,

WG10, WG18

WG14 の枠組みで日本

が自律系システム標準

化の草案を検討中

WG14 において未検

WG14 において未検

自動運転システムの

標準化

WG14の枠組みで自動運転システムの端緒としてCACCの標準化を開

自動化レベルの標準

日本自動車工業会、国

土交通省にて議論

NHTSA が 5 段階、SAE

が 6 段階に定義

ドイツ連邦道路交

通研究所が 3 段階

に定義

日本から提案した協調システムの標準化を、WG14 で行っている

SAE が標準化を実施 WG18 の協調システ

ムの標準化は、CEN

が主導

協調システムの標準

US-DOT と EC は共同で Task Force を締結

SAE の J2735、J2945 ETSI の TS102637 シ

リーズ

メッセージセットの

標準化

国土交通省自動車局と

警察庁が個別に規格化

WG14 の枠組みで検討 メッセージフォーマットやデータ品質に

関する調整で協調

WG18 と WG16 で標準策定中

SAE、IEEE で活動 ETSI で活動 セキュリティ標準化 WG17 の国内分科会と

して JEITA が担当 EU-US Task Force はハーモナイゼーショ

ンまで至らず

通信標準化 ITS 周波数帯:700MHz

帯、5.8GHz 帯

ITS 周 波 数 帯 :

5.9GHz 帯

ITS 周波数帯:DSRC

(5.9GHz 帯)

地図標準化 WG3 の枠組みで検討中

国内の協調システム標

準化検討ワーキンググ

ループで、LDM に対す

る WG14 からみた要件

を検討

WG18 の枠組みで Local Dynamic Map の国

際標準化を検討

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第5章 法規制動向調査

自動運転自動車に関する国際条約にはジュネーブ道路交通条約とウィーン道路交通条約

があり、それぞれにおいて運転手の義務が記載されている。主要国はいずれかの条約を基

に国内の道路交通に関わる法律を作成している。ジュネーブ道路交通条約、ウィーン道路

交通条約のいずれも走行中の車両には運転手がいなければならないと定義しており、自動

運転自動車を走行させるためにはこれらの条約を改正しなければならないという見解もあ

る。

日本では今のところ公道での自動運転自動車の走行は限定的であり、完全自動運転自動

車に関する法律は未整備である。

米国では既に 3 州において自動運転車両承認が行われ、法的に受け入れることを検討す

る州が増加している。Bryant Walker Smith(スタンフォード大学フェロウ)が作成した白

書では「自動運転は米国ではおそらく合法である」と結論付けられている。

ドイツの道路交通規則では自動運転の実現に際して制約となる事項はないとされている。

英国ではこれまで公道での自動運転自動車の走行を認めていなかったが、英国政府は、

2013 年末までに英国の公道で無人走行車の実証運転を実施することを発表した。今のとこ

ろ自動運転自動車に関する法律は未整備である 。

今後、米国を中心に自動運転自動車に関する法整備が進んでいくと思われる。そのなか

で、 終的な責任の所在をどうするかなどの議論が進んでいくとみられる。自動車メーカ

ー各社はまずは法整備の進んだ地域での実績を積むことで市場の本格的な立ち上がりに向

けた準備を行っていくと思われる。法整備の進展状況がその国の今後の自動運転に関する

市場のイニシアティブを握ることに大きく影響すると考えられる。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第6章 特許動向調査

第1節 調査方法・調査対象・技術区分

1.調査方法

国内特許文献については、特許情報データベースには日立製作所の Shareresearch を

利用し、外国特許文献には、トムソンロイター社の Derwent World Patents Index(以

下 DWPI と呼ぶ)を用い、検索は Thomson Innovation で行った。

検索を実施したのは、2013 年 8 月であり、調査対象期間の 2011 年から 18 ヶ月を経過

している。ただし、各国での公開から Shareresearch、DWPI データとして収録されるま

でには、発行国からのデータ提供にかかるタイムラグと、データベース会社の作業期間

が必要である。また PCT 出願の各国移行のずれ等で全データを反映していない可能性が

ある。従って、本調査報告における 2010 年、2011 年の出願のデータは真の数値より少

ない可能性があることに留意されたい。

2.調査期間と調査対象文献及び調査対象国

(1)調査期間

2005 年‐2011 年(優先権主張年ベース)

(2)調査対象文献

PCT(特許協力条約)に基づく国際出願(以下「PCT 出願」という。)

日本、米国、欧州、中国、韓国をはじめとする各国・地域への特許出願及び登録特許

(3)調査対象国

日本、米国、欧州、中国、韓国、インド、ブラジル、ロシア、ASEAN(タイ、ベトナム、

マレーシア、インドネシア、シンガポール、フィリピン)

(4)解析対象

解析の対象とした出願人国籍は、日本、米国、欧州、中国、韓国の 5 か国・地域であ

り、それ以外は「その他」とした。

出願人国籍を「欧州国籍」とする国は、以下に示す EPC 加盟 38 ヶ国である。また、出

願先として「欧州」とするのは、欧州特許条約(EPC)加盟国のうち以下に示す DWPI

収録国である 21 ヶ国と欧州特許庁(EPO)である。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

3.技術区分

自動運転自動車、運転支援システム、要素技術の技術区分を表 6-1~表 6-11 に示す。

表 6-1 自動運転自動車の技術区分

大区分 中区分 小区分 説明

運転手無し

※運転手無しと判断可

能なもの

運転手無しを狙った技術であること

が明らかな技術

単独走行

上記以外 上記以外

運転手無し

※運転手無しと判断可

能なもの

運転手無しを狙ったものであること

が明らかな技術(先頭車両以外が無人

車両、もしくはすべての車両が無人車

両である資料)

隊列走行

上記以外 上記以外(すべての車両が有人である

隊列走行、もしくは有人・無人との開

示が特にされていないもの)

自動運転自動車

車群制御(交通管制) 管制からの指示等により、交通流を

適化する技術(渋滞緩和等)

表 6-2 運転支援システムの技術区分

大区分 中区分 小区分 説明

車線維持支援 車線維持のための支援機能に関する

技術

車間距離制御(Active

Cruise Control)

Active Cruise Control に関する技術

駐車支援 駐車シーンにおける支援機能に関す

る技術

車線変更支援 車線変更シーンにおける支援機能に

関する技術

合分流支援 道路の合流地点における支援機能に

関する技術

右左折支援 右左折シーンにおける支援機能に関

する技術

運転負荷軽減システ

自動発進/自動停止支

援(信号機や停止線)

発進・停止を行うための支援機能に関

する技術

予防安全システム 衝突被害軽減/回避 差し迫った衝突の被害を軽減・回避す

る技術

運転支援システ

その他 上記以外の運転支援システムに関す

る技術

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 6-3 シーン・場所の技術区分

大区分 中区分 説明

混在環境 非自動運転自動車との混在環境

隊列編成 隊列走行に入る時、隊列走行から出るとき

渋滞 渋滞路や渋滞時

専用道 自動運転自動車や運転支援システムのための専用道路

カーブ カーブやカーブ手前等

交差点 交差点

合流・分流 道路への合流や分流に関するもの。一般道も含む。例えば、高

速道路での IC(インターチェンジ)や JCT(ジャンクション)、

PA・SA(パーキングエリア等)での合流、分流

環境適合性 路面状況、温度、湿度、高度、天候、日照等に応じたもの

死角(車載センサや

運転手によって認知

できない死角)

障害物や、物理的な場所によって、車載センサや運転手が認知

できない死角への対応

シーン・場所

その他、特定の交通

状況下

上記に該当しない、特定の環境下を特徴(限定)としたもの

表 6-4 課題の技術区分

大区分 中区分 説明

快適性向上 快適性全般の課題

省エネルギー エネルギー消費(燃費向上、省電力化等)を抑えるもの全般の

課題

インフラ不要化 路車間通信を不要にするという課題

低コスト 低コストに関する課題

走行安定性(スリッ

プ防止等)

スリップや挙動安定化に関する課題

データ信頼性 認知情報の信頼性に関する課題

安全性 交通事故の低減、防止に関する課題

省人化 人(運転手)の低減、隊列走行等の被牽引車両の無人化に関す

る課題

高齢者・障害者対応 高齢者や障害者に関する課題

運転負荷低減 運転負荷の低減の低減に関する課題

交通流の改善 渋滞緩和等を目的として交通流の改善・制御に関する課題

緊急避難 緊急時の課題、例えば運転手の心臓発作や災害時に運転手を介

さずに車両を制御するもの、事故後の走行制御等

課題

その他 上記以外の課題

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 6-5 通信システムの技術区分

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

途絶 通信が途中で途切れた場合に、対処する

ための技術

遅延 情報の送受信が遅れた場合に、対処する

ための技術

干渉 他の通信と干渉した場合に、対処する技

通信品質

その他 上記以外の技術

真正性 なりすまし防止

機密性 情報漏えい防止(通信中に個人情報等が

漏れてしまうことを防止)

完全性 データの改ざんを防止

車車間通信

セキュリティ

その他 上記以外の技術

途絶 通信が途中で途切れた場合に、対処する

ための技術

遅延 情報の送受信が遅れた場合に、対処する

ための技術

干渉 他の通信と干渉した場合に、対処する技

通信品質(途

絶・遅延・干

渉)

その他 上記以外の技術

真正性 なりすまし防止

機密性 情報漏えい防止(通信中に個人情報等が

漏れてしまうことを防止)

完全性 データの改ざんを防止

路車間通信

セキュリティ

その他 上記以外の技術

途絶 通信が途中で途切れた場合に、対処する

ための技術

遅延 情報の送受信が遅れた場合に、対処する

ための技術

干渉 他の通信と干渉した場合に、対処する技

通信品質(途

絶・遅延・干

渉)

その他 上記以外の技術

真正性 なりすまし防止

機密性 情報漏えい防止(通信中に個人情報等が

漏れてしまうことを防止)

完全性 データの改ざんを防止

通信システム

歩車間通信

セキュリティ

その他 上記以外の技術

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

切り替え 車車間通信と路車間通信を切り替える

ための制御

協調、優先順

車車間通信と路車間通信の情報の両方

を用いて制御を行う技術、車車間通信と

路車間通信のいずれかを優先して制御

に用いるような技術

車車間、路車

間、歩車間共

その他 上記以外の技術

通信 -車載セ

ンサの共用

車載センサで得られた情報と、通信によ

り得られた情報との協調、共用に関する

技術

表 6-6 認知技術(認知方法)の技術区分

大区分 中区分 小区分 詳細区分 小区分 説明

ミリ波レーダ

マイクロ波レ

ーダー

レーザーレー

ダー

カメラ

GNSS(GPS 等)

超音波センサ

磁気センサ

音響センサ

赤外センサ

電波 /電界セ

ンサ

左記のセンサを使うことに特徴を有する

もの

フュージョン 複数のセンサにより 1 つの対象物を認知

しているものはフュージョンに付与する

車載センサ

その他 上記以外の車載センサ

1 対複数の

通信

複数の車両との車車間通信のための技術

1対 1の通信 1 つの車両との車車間通信のための技術

中継による

通信

他車両やインフラを中継して遠隔地の他

車両と通信を行う技術

認知技術

(認知方

法)

通信(外部

情報)-通

信相手

車車間通信

その他 上記以外のもの

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 中区分 小区分 詳細区分 小区分 説明

電波ビーコ

道路上に設置されている電波による無線

通信システム

光ビーコン 道路上に設置されている光による無線通

信システム

磁気マーカ

ー(道路埋

設型等)

道路に埋設された磁気マーカー

RFID/トラ

ンスポンダ

ID 情報を埋め込んだ IC タグ等による無線

通信

Bluetooth Bluetooth(2.45GHz)による無線通信

近距離通信

( 狭 域 通

信)

ループコイ

電線を使ったインダクタンス変化による

検知

漏洩同軸ケ

ーブル

(LCX)

LCX (Leaky Coaxial cable)

その他 上記以外の近距離通信

通信衛星 通信衛星との通信に関するもの

放送波、FM

多重

基地局等からの放送波や FM 多重に関する

通信

路 車 間 通 信

(インフラ-

車)

遠距離

その他 上記以外の遠距離通信

歩車間通信 歩行者や自転車に乗っている人が身につ

けている携帯端末等との通信に関する技

携帯端末を中

車両内における携帯端末(スマートフォン

等)を介して通信を行うもの

表 6-7 認知技術(認知内容)の技術区分

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

自車位置情報 自車両の位置情報の認知

他車位置情報 他車両の位置情報の認知

速度・加速

度・制動・操

舵・方向指示

器情報(自車)

自車両の制御状態の認知

認知技術(認知

内容)

車載センサ

速度・加速

度・制動・操

舵・方向指示

器情報(他車)

他車両の制御状態の認知

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

道路形状 道路形状(曲率、幅、車線)

道路構造 道路構造(交差点、分岐、縁石、周辺構

造物)

信号機情報 信号機情報

交通標識、路

面標示

交通標識、路面標示

路面・天候状

況情報

路面・天候状況情報

道路環境

その他 上記以外の道路環境

歩行者・自転

車情報(位

置)

歩行者や自転車の位置を認識するもの

落下物情報

(位置)

落下物の位置を認識するもの

障害物等

その他 上記以外の障害物

渋滞・混雑情

渋滞情報を認識するもの

自車位置情報 自車両の位置情報の通信でのやり取り

他車位置・相

対距離情報

他車両の位置情報の通信でのやり取り

速度・加速

度・制動・操

舵・方向指示

器情報(自車)

自車両の制御情報の通信でのやり取り

速度・加速

度・制動・操

舵・方向指示

器情報(他車)

他車両の制御情報の通信でのやり取り

道路形状・構

道路形状・構造(曲率、幅、車線、交差

点、分岐、周辺構造物)

信号機、交通

標識、路面標

示情報

信号機、交通標識、路面標示

路面・天候状

況情報

路面・天候状況情報

車車間通信

道路環境

その他 上記以外の道路環境

障害物等

歩行者・自転

車情報(位

置)

通信で歩行者や自転車の位置情報を受

信するもの

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

落下物情報

(位置)

通信で落下物位置情報を受信するもの

その他 上記以外の障害物

渋滞・混雑情

通信で渋滞情報を受信するもの

自車両に対す

る制御情報

遠隔操作用の制御情報

自車位置情報 自車両の位置情報の通信でのやり取り

他車位置・相

対距離情報

他車両の位置情報の通信でのやり取り

速度・加速

度・制動・操

舵・方向指示

器情報(自車)

自車両の制御情報の通信でのやり取り

速度・加速

度・制動・操

舵・方向指示

器情報(他車)

他車両の制御情報の通信でのやり取り

道路形状・構

道路形状・構造(曲率、幅、車線、交差

点、分岐、周辺構造物)

信号機、交通

標識、路面標

示情報

信号機、交通標識、路面標示

路面・天候状

況情報

路面・天候状況情報

道路環境

その他 上記以外の道路環境

歩行者・自転

車情報(位

置)

通信で歩行者や自転車の位置情報を受

信するもの

落下物情報

(位置)

通信で落下物位置情報を受信するもの

障害物等

その他 上記以外の障害物

渋滞・混雑情

通信で渋滞情報を受信するもの

路車間通信

自車両に対す

る制御情報

遠隔操作用の制御情報(センターや路側

機から、制動信号等を受信して、車両を

自動で制動させるもの)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

車両位置・相

対距離情報

車両の位置や、相対距離の情報を通信で

やり取り

速度・加速

度・制動・操

舵・方向指示

器情報

車両の速度・加速度・制動・操舵・方向

指示器情報

道路形状・構

道路形状・構造(曲率、幅、車線、交差

点、分岐、周辺構造物)

信号機、交通

標識、路面標

示情報

信号機、交通標識、路面標示

路面・天候状

況情報

路面・天候状況情報

道路環境

その他 上記以外の道路環境

歩行者・自転

車情報(位

置)

通信で歩行者や自転車の位置情報を受

信するもの

落下物情報

(位置)

通信で落下物位置情報を受信するもの

障害物等(※)

その他 上記以外の障害物

渋滞・混雑情

通信で渋滞情報を受信するもの

歩車間通信

自車両に対す

る制御情報

遠隔操作用の制御情報

※障害物は「通常道にないもの」と考える

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 6-8 判断技術の技術区分

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

地図生成 走行場所周辺の他車両・歩行者や等の動

く物体や信号等の障害物の位置も含め

た動的な地図の作成に関する技術

自己位置の同

動的地図上での自車位置を判断する技

横方向位置の

同定

自車両の横方向位置を検出・同定する技

術、車線と自車両との距離を同定する技

生成 走行時の 適な車線内での走行軌跡や、

障害物を避けるための走行軌跡を生成

する技術

優先順位 走行進路を複数生成し、衝突回避等の観

点から優先順位を設定している技術

走行進路

その他 上記以外の技術

走行経路

目的地経路 目的地までの 適なルートを生成する

技術

自車 自車両の挙動(位置、方向、速度等)に

基づき衝突可能性を推定する技術

他車 他車両の挙動(位置、方向、速度等)に

基づき衝突可能性を推定する技術

歩行者 歩行者の挙動(位置、方向、速度等)に

基づき衝突可能性を推定する技術

モデル推定

その他 上記以外の技術

自車 自車両の挙動(位置、方向、速度等)に

基づき衝突可能性を推定する技術

他車 他車両の挙動(位置、方向、速度等)に

基づき衝突可能性を推定する技術

歩行者 歩行者の挙動(位置、方向、速度等)に

基づき衝突可能性を推定する技術

MAP 判断(※)

その他 上記以外の技術

衝突可能性

その他 衝突可能性をモデルや MAP 以外に基づ

いて推定する技術

判断技術

車体の衝突部

自車両への衝突部位がどこかを判断し

ている技術

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- 26 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

大区分 中区分 小区分 詳細区分 説明

操作タイミン

操作のタイミングを判断するもの。例え

ば、衝突回避や運転嗜好のために、ブレ

ーキや操舵のタイミングを 適なもの

にするために、それらのタイミングを判

断する技術

運転嗜好 運転手の運転の仕方等の運転手独自の

嗜好を判断する技術

路面状況推定 μ推定、摩擦円、タイヤモデルを使った

推定技術等

重心・重量推

車両の重心や重量を推定する技術

走行安定化の

ための推定

その他 上記以外の推定技術

※MAP:認知情報に基づいて予め決められた設定値に基づいているもの。「速度、方向に応じて推定する」

といったようにしか記載されていないものは全て MAP とみなす。

表 6-9 操作技術の技術区分

大区分 中区分 小区分 説明

制動(ブレーキ自

動制御)

制動制御の自動化に関する技術

操舵(ハンドル、

操舵角自動制御)

ステアリング操舵の自動化に関する技術

駆動力(アクセ

ル、エンジン駆動

力、変速比制御)

駆動力制御の自動化に関する技術

サスペンション

制御

サスペンション制御の自動化に関する技術

複数を同時に操

作するもの

制動制御・操舵制御・駆動力制御・サスペンシ

ョン制御のいずれか複数を同時に操作する技術

走行制御の自動

その他 制動制御・ステアリング操舵制御・駆動力制御・

サスペンション制御以外の走行制御の自動化に

関する技術

車内警報 車載ディスプレイ上への表示警告や車内スピー

カからの音声警告等

車外警報 車車間通信や歩車間通信で車外の車両や歩行者

への警告等

操作技術

警報

その他 上記以外に対する警報

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- 27 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

表 6-10 HMI の技術区分

大区分 中区分 小区分 説明

運転手→機械 運転手が車両を監視するための技術

機械→運転手 機械が運転手を監視する技術(疲労や脇見や居

眠り等を監視)

監視

その他 上記以外の監視技術

手動運転→自動

運転

運転手の手動運転から自動運転への切り替えに

関する技術

自動運転→手動

運転

自動運転から運転手への切り替えに関する技術

切り替え

その他 上記以外の切り替え技術

音声認識 運転手の声により操作を行う技術

ジェスチャ認識 運転手の手や目の動きにより操作を行う技術

遠隔操作 遠隔操作により車両を走行制御する技術 ※遠

隔自動駐車等

操作方法

その他 上記以外の操作技術

HMI

( Human-Machine

-Interface)

調停 機械⇔運転手の

調停

人と機械が行うもの(認知、判断、操作等)に

ついて調停を行う技術

表 6-11 システム設計の技術区分

大区分 中区分 説明

ECU 構造 自動運転や運転支援システムに関連する ECU の構成や構造に関する

技術、複数の ECU 間で連携して走行制御を行う技術

OS・ソフトウェア 自動運転や運転支援システムに関連する OS やソフトウェアに関する

技術

システム設

フェールセーフ、異

常診断

自動運転や運転支援システムに関連するハードウェア・ソフトウェア

のフェールセーフや異常診断に関する技術、緊急状況により車両を自

動で停車制御するものもフェールセーフに含む

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2節 全体動向

全体の出願動向を見ると、本テーマの調査対象技術(図 1-1)に関する特許の日米欧

中韓への出願件数は 36,855 件で、日本を出願先国とする出願が も多く 44.7%を占め

ており、次いで欧州(24.4%)、米国(14.3%)、中国(9.1%)、韓国(7.5%)となって

いる(図 6-1)。

また、出願人国籍別に見ると日本国籍出願人による出願が も多く、全体の 59.5%を

占めている。次いで欧州国籍出願人(21.7%)、韓国籍出願人(7.8%)、米国籍出願人

(7.4%)、中国籍出願人(2.5%)となっており(図 6-2)、日本国籍による出願が も

多くなっている。

図 6-1 出願先国別出願件数推移及び出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):

2005 年‐2011 年)

注: 20010 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全データを反映していな

い可能性があるため、点線にて示す。なお、以降のグラフにて同様の理由のデータは点線にて示す。

図 6-2 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主

張年):2005 年‐2011 年)

日本

16,487件

44.7%

米国

5,265件

14.3%

欧州

9,008件

24.4%

中国

3,346件

9.1%

韓国

2,749件

7.5%

合計36,855 件

5,466

5,597 6,041

5,744 5,088

4,680

3,806

0

2000

4000

6000

8000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張2005-2011年

日本

21,914件

59.5%

米国

2,739件

7.4%

欧州

7,984件

21.7%

中国

924件

2.5%

韓国

2,861件

7.8%

その他

433件

1.2%

合計36,855 件

5,518 5,665 6,119 5,826

5,152 4,740

3,835

0

2000

4000

6000

8000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

日本 米国 欧州 中国 韓国 合計

優先権主張2005-2011年

出願件数

出願年(優先権主張年)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日米欧中韓の 5 か国・地域での出願件数の収支を、図 6-3 に示す。

日本国籍出願人は米欧に比較的多くの出願を行っている。一方で、他国からの日本に

対する出願は少ない。米国籍出願人は欧中に比較的多くの出願を行っており、欧州国籍

出願人は米中に比較的多くの出願を行っている。米国における特許出願と中国における

特許出願は、他国に籍を置く出願人が過半数を占めており、米国や中国が出願先として

注目されていることがわかる。

図 6-3 出願先国別出願人国籍別出願件数収支(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):

2005 年‐2011 年)

885 件

2,548 件

3 件

2,085 件

66 件

254 件

981 件

15 件

5 件

475 件 122 件

1,289 件

102 件

122 件

564 件

402 件

138 件

72 件

206 件

12 件

日本国籍

15,786件

95.7%

米国籍

122件

0.7%

欧州国籍

475件

2.9%

中国籍

5件

0.0%

韓国籍

66件

0.4%

その他

33件

0.2%

日本への出願

16,487 件

日本国籍

2,085件

23.1%

米国籍

885件

9.8%

欧州国籍

5,826件

64.7%

中国籍

12件

0.1%

韓国籍

102件

1.1%

その他

98件

1.1%欧州への出願

9,008 件

日本国籍

206件

7.5%

米国籍

72件

2.6%欧州国籍

138件

5.0%

中国籍

3件

0.1%

韓国籍

2,317件

84.3%

その他

13件

0.5%

韓国への出願

2,749 件

日本国籍

2,548件

48.4%

米国籍

1,258件

23.9%

欧州国籍

981件

18.6%

中国籍

15件

0.3%

韓国籍

254件

4.8%

その他

209件

4.0%

米国への出願

5,265 件

日本国籍

1,289件

38.5%

米国籍

402件

12.0%

欧州国籍

564件

16.9%

中国籍

889件

26.6%

韓国籍

122件

3.6%

その他

80件

2.4%

中国への出願

3,346 件

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 技術区分別動向

技術区分別の出願動向を見ると、自動運転自動車に関する出願では、日本国籍の出願

件数が 61.4%と 多となっている。出願件数推移については、日本国籍は 2010 年にか

けて出願件数が増加している。欧州国籍は 2009 年に出願件数が減少したが、2010 年以

降は増加している。米国籍についても、2010 年に増加している。また、中国籍は 2011

年に、韓国籍は 2008 年と 2010 年には欧米を越える出願件数となっている。これらのこ

とから世界的に自動運転自動車の開発が盛んになってきたのは 2008 年~2010 年頃であ

ると考えられる(図 6-4)。

図 6-4 技術区分(自動運転自動車)の出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

隊列走行に関する出願では、日本国籍からの出願が多く、特に NEDO の実証実験が開始さ

れた 2008 年から出願が増加している(図 6-5)。

図 6-5 技術区分(自動運転自動車:隊列走行)の出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率

(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

41

65

51

67 68

100

59

0

20

40

60

80

100

120

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2005-2011年

日本

277件

61.4%

米国

30件

6.7%

欧州

55件

12.2%

中国

36件

8.0%

韓国

44件

9.8%

その他

9件

2.0%

合計

451件

11

17 17

27

3844

23

0

10

20

30

40

50

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願件数

優先権主張2005-2011年

日本

144件

81.4%

米国

18件

10.2%

欧州

7件

4.0%

中国

4件

2.3%

韓国

4件

2.3%

その他

0件

0.0%

合計177件

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

運転支援システムに関する出願では、日本国籍の出願件数が 多であり割合は 54.0%

となっている。次いで欧州国籍の出願が多く割合は 26.4%となっている。運転支援シス

テムについての研究開発は日本と欧州が他の国に比べてリードしている可能性がある

(図 6-6)。

図 6-6 技術区分(運転支援システム)の出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧

中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

駐車支援に関する出願では、日本の出願件数が も多く、次いで欧州、中国、米国、

韓国と続いている。なお、中国は 2009 年以降、年々増加傾向にあり、2011 年において

は他の国の出願件数を上回っている(図 6-7)。

図 6-7 技術区分(駐車支援)の出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年

(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

1,285

1,100

1,301 1,382 1,293

1,233

1,123

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願件数

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

優先権主張

2005-2011年

日本

4,705件

54.0%

米国

654件

7.5%

欧州

2,304件

26.4%

中国

214件

2.5%韓国

762件

8.7%

その他

78件

0.9%

合計

8,717件

322

263

311

357 345 356

273

0

200

400

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願件数

優先権主張2005-2011年

日本

929件

41.7%

米国

115件

5.2%

欧州

851件

38.2%

中国

293件

13.2%

韓国

21件

0.9%

その他

18件

0.8%

合計2,227件

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

自動運転自動車、運転支援を適用するシーン・場所に関する出願では、カーブ、交差

点、死角、合流・分流、専用道といった特定の道路環境に関する出願が見られ、特にカ

ーブ、交差点、死角に関する出願が多くなっており、こういったシーン・場所を意識し

た開発が活発に行われている(図 6-8)。

図 6-8 技術区分(シーン・場所)別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出

願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

自動運転自動車や運転支援システムにおける自動運転自動車(単独走行、隊列走行、

車群制御)及び運転支援システムにおける、省エネルギー、高齢者・身障者対応、交通

流の改善、渋滞、緊急避難に関する技術区分の相関図を見ると、省エネルギーについて

は、自動運転自動車の車群制御、運転支援システムの車間距離制御、自動発進/停止支援

に関する出願が多くなっており、交通流の改善については、自動運転自動車の車群制御、

運転支援システムの車間距離制御に関する出願が多くなっており、渋滞については、運

転支援システムの車間距離制御に関する出願が多くなっている。(図 6-9)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願件数

出願年(優先権主張年)

混在環境 隊列編成 渋滞専用道 カーブ 交差点合流・分流 環境適合性 死角その他、特定の交通状況下

優先権主張2005-2011年

混在環境

7件

0.3%

隊列編成

20件

0.8%渋滞

77件

3.0%

専用道

9件

0.3%

カーブ

631件

24.5%

交差点

938件

36.4%

合流・分流

141件

5.5%

環境適合性

107件

4.1%

死角

553件

21.4%

その他、特定の

交通状況下

96件

3.7%

合計

2,579件

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-9 技術区分(自動運転自動車、運転支援システム)と技術区分(課題から一部抜粋)の相

関(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

5

6 5 1 4

1114

1 2

25

642 10 10 1

46

1 7

5 10

1 1 4

2 6

12 1 2 21

2 2 2 6 2281

技術区分

技術区分

省エネルギー 高齢者・身障者対応

交通流の改善

渋滞 緊急避難

単独走行

隊列走行

車線維持支援

車間距離制御

駐車支援

車線変更支援

合分流支援

右左折支援

自動発進/停止支援

衝突被害軽減/回避

車群制御

自動運転自動車

運転支援

システム

安全性

車載センサを利用した運転支援システムに関する出願では、既に市場に投入されてい

る衝突被害軽減/回避技術、駐車支援技術、車間距離制御、車線維持支援に関する出願が

多く、また車線変更支援や合分流支援、自動発進/停止支援、右左折支援等の出願も見ら

れ(図 6-10)、車載センサを使ってより高度な運転支援を行うシステムの研究開発が行

われている。

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-10 技術区分(運転支援システム×認知技術(認知方法):車載センサ)別出願件数推移及

び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

車載センサや車車間通信、路車間通信により周辺環境を認識する技術が出願されてお

り、車載センサでは自車位置や自車の運転状態(速度、制動、操舵情報等)を中心にし

て 他車の位置や速度、道路形状・構造、信号機情報や交通標識、歩行者等、幅広く多く

の出願があり(図 6-11)、車車間通信では他車の位置や速度に関するものが多く(図 6-12)、

路車間通信では他車の位置や速度、道路形状・構造、信号機・交通標識、渋滞・混雑情

報等に関するものが多く出願されている(図 6-13)。

図 6-11 技術区分(認知技術(認知内容):車載センサ)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

3,043

160 580

24 284 30

1,584 147

372 157 166 19

5,386 521 2,137 162

516 66

825 76 143 13 63 9

1,431 98

599 32 167 15

419 25

348 4 12 2

268 21 24 6 25 5

211 14 78 15 12

299 21 96 3 47

641 28 189 167 43 13

12 6 6 1

170 15 29 2 5

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

自車位置

速度・加速度・制動

・操舵・方向指示器情報(自車)

他車位置

道路形状

道路構造

信号機情報

交通標識・路面標識

速度・加速度・制動

・操舵・方向指示器情報(他車)

路面・天候状況

歩行者・自転車情報

落下物情報

渋滞・混雑情報

0

50

100

150

200

250

300

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願件数

出願年(優先権主張年)

車線維持支援(車載センサ) 車間距離制御(車載センサ)

駐車支援(車載センサ) 車線変更支援(車載センサ)

合分流支援(車載センサ) 右左折支援(車載センサ)

自動発進/自動停止支援(車載センサ) 衝突被害軽減/回避(車載センサ)

優先権主張2005-2011年

車線維持支援

(車載センサ)

471件10.9%

車間距離制御

(車載センサ)

730件16.9%

駐車支援

(車載センサ)

1,435件33.2%

車線変更支援

(車載センサ)

182件4.2%

合分流支援

(車載センサ)

29件0.7%

右左折支援

(車載センサ)

54件1.2%

自動発進/自動停

止支援

(車載センサ)111件

2.6%

衝突被害軽減/回

避(車載センサ)

1,316件30.4%

合計

4,328件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-12 技術区分(認知技術(認知内容):車車間通信)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

145 25 6011 30 11

254 30 5016

5211

10811

328 23 6

23314

309 17 3

22 9

12 3 1

6 1 1

24 8 11 2 3 1

9 2 1

17 8 10 1

28 7 9 1 9 1

8 6

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

自車位置情報

他車位置・相対距離情報

速度・加速度・制動・操舵・方向指示器情報(自車)

速度・加速度・制動・操舵・方向指示器情報(他車)

道路形状・構造

信号機、交通標識、路面表示情報

路面・天候状況情報

道路環境その他

歩行者・自転車位置

落下物情報(位置)

障害物等その他

渋滞・混雑情報

自車両に対する制御情報

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- 36 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-13 技術区分(認知技術(認知内容):路車間通信)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

184 41 8111

733

808 8 8 14

210 22 276

475

791 16 2 2 2

9113 18 5

281

164 3415 18

389

387 4 7 4 1

2496

46 3823 1

27 6 5 1 5 2

1 1

448 17 5

30824

4410

685

28

4 10 3 14

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

自車位置情報

他車位置・相対距離情報

速度・加速度・制動・操舵・方向指示器情報(他車)

道路形状・構造

信号機、交通標識、路面表示情報

路面・天候状況情報

道路環境その他

歩行者・自転車位置

落下物情報(位置)

障害物等その他

渋滞・混雑情報

自車両に対する制御情報

速度・加速度・制動・操舵

・方向指示器情報(自車)

注: 道路環境その他には、道路勾配、踏切、規制情報、等がある。

注: 障害物その他には、他車両(事故車両や停止車両等)、等がある

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

日本と他国との車車間通信及び路車間通信の出願件数を比較すると、1 対 1 の車車間

通信の特許出願件数は、日本が米国、欧州の約 4~5 倍程度であるのに対して、電波ビー

コンや光ビーコンによるに路車間通信は日本が他国の約 15 倍以上 の出願件数となって

いる (図 6-14)。

図 6-14 技術区分(認知技術(認知方法):通信(外部情報)-通信相手)別-出願人国籍別出

願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

140 34 39 16 15 2

282 56 66 5 17 12

38 1 1 10

572 51 97 5 39 6

167 10 11 5 9 1

189 2 8 4 5 3

7 5 10 3 3

37 15 11 12 17

16 11 9 8 5

6

5

1,229 212 241 76

244 58

135 34 50 65 13

17 7 7 7 2 1

122 8 32 3 24 5

1,380 199 172 61 165 23

108 20 20 16 13 7

技術区分

出願人国籍

路車間通信

(Bluetooth)

路車間通信

(ループコイル)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

車車間通信

(1対複数)

車車間通信

(1対1)

車車間通信

(中継)車車間通信

(その他)路車間通信

(電波ビーコン)

路車間通信(磁気マーカ)

路車間通信

(RFID)

路車間通信

(光ビーコン)

路車間通信(LCX)

路車間通信

(その他)

路車間通信

(通信衛星)

路車間通信(放送波)

路車間通信

(その他)

歩車間通信

携帯端末中継

近距離

遠距離

注: 車車間通信その他には、通信相手に特に限定が無いもの、等がある。

注: 近距離 路車間通信その他には、通信形態が特に限定されないもの、等がある。

注: 遠距離 路車間通信その他には、通信形態が特に限定されないもの、等がある。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

通信の信頼性に関する出願では、日本国籍による出願が多く見られるが、車車間通信

や路車間通信の品質を課題とした出願が特に多い(図 6-15)。また米国籍による出願で

は路車間通信の品質を課題とした出願は見られず、セキュリティを課題とした出願が多

くなっている。

また、欧州国籍においては米国籍とは逆に路車間通信のセキュリティを課題とした出

願は見られず、品質を課題とした出願が多くなっている。

図 6-15 技術区分(通信システム)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優

先権主張年):2005 年‐2011 年)

123 6 191 5

23 81

188 153 5

56 101

93 5

61 1

502 1

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

車車間通信(品質)

路車間通信(品質)

車車間通信

(セキュリティ)

路車間通信(セキュリティ)

歩車間通信(品質)

歩車間通信(セキュリティ)

通信協調

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

また、日本では車車間通信において、2012 年から利用可能となった 700MHz 帯を優先

して実用化のための検討が進められている。図 6-16 には 700MHz 帯を用いた技術に関す

る出願について出願件数推移及び出願件数比率を示した。

日本国籍の出願人からのみ出願が見られ、2007 年(総務省「周波数割当計画」変更)

を境に出願がなされており、2009 年以降に出願が増加している。日本における政策にお

いて、2012 年から利用可能となった 700MHz 帯を、安全支援無線システムで実用化する

ための検討が進められており、それに伴って既に 2009 年から 700MHz 帯での通信利用を

考慮した開発が活発化していたと思われる。

図 6-16 700MHz 帯を用いた技術における出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、

出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

0 15

3

17

41

29

0

10

20

30

40

50

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願年(優先権主張年)

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

出願件数

優先権主張2005-2011年

日本

96件

100.0%

米国

0件

0.0%

欧州

0件

0.0%

中国

0件

0.0%

韓国

0件

0.0%

その他

0件

0.0%

合計

96件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

また、車載センサによる認知として、自他車位置や運転状態(速度、制動、操舵情報

等)、道路形状や構造、歩行者や自転車情報に関する出願が多く見られているほか、信号

機や、交通標識、路面・天候状況といったものを認識する技術が出願されている(図 6-17)。

図 6-17 技術区分(認知技術(認知内容):車載センサ)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

3,043

160 580

24 284 30

1,584 147

372 157 166 19

5,386 521 2,137 162

516 66

825 76 143 13 63 9

1,431 98

599 32 167 15

419 25

348 4 12 2

268 21 24 6 25 5

211 14 78 15 12

299 21 96 3 47

641 28 189 167 43 13

12 6 6 1

170 15 29 2 5

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

自車位置

速度・加速度・制動

・操舵・方向指示器情

報(自車)

他車位置

道路形状

道路構造

信号機情報

交通標識・路面標識

速度・加速度・制動

・操舵・方向指示器情

報(他車)

路面・天候状況

歩行者・自転車情報

落下物情報

渋滞・混雑情報

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

認知方法としての車載センサに関する出願では、いずれの国籍もカメラでの認知が

多となっている状況である。現在の認知技術の主流はカメラによるものと言える。磁気

センサ、音響センサ、電波/電界センサの開発は日本と欧州が行っている状況である。日

本と欧州の国籍の出願人は認知技術において幅広く研究開発を行っていると言える(図

6-18)。

フュージョンには、カメラで先行車を検知し、レーダーで距離を測る技術が多く、近

年は障害物の種類を特定する等、物体の正確な大きさを検出するような技術になってい

る。また、超音波センサとカメラを用いたものや、超音波センサとレーダーを用いたも

のが見られた。

図 6-18 技術区分(認知技術(認知方法):車載センサ)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中

韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

989 90 177 39 70 9

646 91 172 37 72 12

971 99 196 61 98 8

5,239 268 1,047 125 501 93

644 141 194 86 244 36

276 35 197 55 86 12

25 5 21 2 3

50 7 20 1 1 1

219 17 57 37 24 13

97 9 21 11 2

98 56 93 9 86 3

4,542 496

2,691 346 587 93

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

ミリ波レーダー

マイクロ波レーダー

レーザーレーザー

カメラ

GNSS

超音波センサ

音響センサ

赤外センサ

電波/電界センサ

フュージョン

磁気センサ

車載センサその他

注:車載センサその他には、車速センサ、加速度センサ、舵角センサ等の車両状態判別センサが入ってい

る。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

自動運転自動車に利用される車載センサとしては、カメラや GNSS が多くなっている

(図 6-19)。また、欧州国籍による高精度 GNSS に関する出願が多くなっており、欧州で

は高精度 GNSS の開発が積極的に進められている可能性がある(図 6-20)。

図 6-19 技術区分(自動運転自動車×認知技術(認知方法):車載センサ)別-出願人国籍別出

願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

101

51

102 1

371

3 41

12 5 4 10 4

3 4

2 1 1

4

381

5 4 15

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

ミリ波レーダー

マイクロ波レーダー

レーザーレーザー

カメラ

GNSS

超音波センサ

音響センサ

赤外センサ

電波/電界センサ

フュージョン

磁気センサ

車載センサその他

注:車載センサその他には、車速センサ、加速度センサ、舵角センサ等の車両状態判別センサが入ってい

る。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-20 技術区分(認知技術(認知方法):車載センサ:GNSS(GPS 等))と新型 GNSS に関する

出願の出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

0

100

200

300

400

500

600

700

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

出願件数

出願人国籍

新型GNSS GNSS(全体)

判断技術に関する出願では、日本国籍の出願が 多である。また、各国とも判断技術

としては、地図生成、走行進路生成、目的地経路、衝突可能性 MAP 判断自車、運転嗜好、

路面状況推定という技術の出願件数が他に比べて多い。衝突可能性モデル推定はその他

の技術に比べて出願件数が少ない。日本国籍及び欧州国籍については、衝突可能性モデ

ル推定において、他の国籍に比べて件数が多くなっている。日本国籍においては、操作

タイミングに関する出願が他国と比較して多くなっている(図 6-21)。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-21 技術区分(判断技術)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優先

権主張年):2005 年‐2011 年)

626 74 190 6

97 13

88 7 9 10

37 21 16 1 16 5

490 62 288 1

107 6

39

3 3 1 1 4

31 18 1 11

581 44 140 22

133 2

7

3 11 1 1

13 7 7 2 1

7 12 1

16 11 13 6

260 26

106 12 27 7

163 8 35 7 23 4

85 6 35 2 2

454 27

53 5 8 3

3

5 3 2 12

38

1 7 4

165 9 15 1

245 63 100 1

51 2

306 62 88 6

74 3

117 52 20 5 17

113 2

技術区分

出願人国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

地図生成

自己位置の同定

走行経路・走行進路生成

走行経路・

走行進路優先順位

走行進路・その他

走行経路・目的地経路

衝突可能性・モデル推定自車

衝突可能性・モデル推定他車

衝突可能性・モデル推定歩行者

衝突可能性・MAP判断自車

衝突可能性・MAP判断他車

衝突可能性・MAP判断歩行者

車体衝突部位

衝突可能性・その他

衝突可能性・MAP判断その他

衝突可能性・MAP判断その他

操作タイミング

運転嗜好

走行安定化のための推定・路面状況推定

走行安定化のための

重心・重量

推定その他

横位置方向の同定

地図生成

自己位置の同定

走行経路・走行進路生成

走行経路・

走行進路優先順位

走行進路・その他

走行経路・目的地経路

衝突可能性・モデル推定自車

衝突可能性・モデル推定他車

衝突可能性・モデル推定歩行者

衝突可能性・MAP判断自車

衝突可能性・MAP判断他車

衝突可能性・MAP判断歩行者

車体衝突部位

衝突可能性・その他

衝突可能性・MAP判断その他

衝突可能性・MAP判断その他

操作タイミング

運転嗜好

走行安定化のための推定・路面状況推定

走行安定化のための

重心・重量

推定その他

横位置方向の同定

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

HMI に関する出願では、運転手を監視する HMI が多くなっており(図 6-22)、近年では

自動運転と手動運転の切り替えに関する出願が増えてきている(図 6-23)。

また、自動化レベル毎の HMI に関する出願件数を図 6-24 に示す。現状はレベル1の出

願件数が多いため、レベル 1 での HMI に関する出願が多くなっている。レベル 2 におけ

る HMI は、HMI における監視(機械→運転手)、HMI 切替自動運転→手動運転、HMI 調停

(機械⇔運転手)について出願があり、レベル 3 における HMI は、HMI における監視(機

械→運転手)、HMI 切替手動運転→自動運転について出願があり、レベル 4 における HMI

は、HMI における監視(機械→運転手)、HMI 切替手動運転→自動運転、HMI 切替自動運

転→手動運転、HMI 調停(機械⇔運転手)、HMI 調停(機械⇔運転手)について出願があ

る。なおレベル 4 における監視(機械→運転手)には、運転手状態(車酔い等)を監視

して自動運転の制御を行うもの等が挙げられる。現在市場に普及しているものはレベル

1 のシステムであるため、レベル 2~4 における HMI の研究開発はこれから活発化するも

のと思われる。

図 6-22 技術区分(HMI)別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優

先権主張年):2005 年‐2011 年)

図 6-23 技術区分(HMI:切り替え、HMI:操作方法から一部抜粋、HMI:調停)別出願件数推移

及び出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願件数

出願年(優先権主張年)

HMI監視(運転手→機械) HMI監視(機械→運転手)HMI切替(手動運転→自動運転) HMI切替(自動運転→手動運転)HMI操作(音声認識) HMI操作(ジェスチャ)HMI遠隔操作 HMI調停(機械⇔運転手の調停)

0

2

4

6

8

10

12

14

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

出願件数

出願年(優先権主張年)

HMI切替(手動運転→自動運転) HMI切替(自動運転→手動運転)

HMI操作(音声認識) HMI操作(ジェスチャ)

HMI調停(機械⇔運転手の調停)

HMI監視(運転手

→機械)

4件

0.2%

HMI監視

(機械→

運転手)

1,948件

87.3%

HMI切替(手動運

転→自動運転)

25件

1.1%

HMI切替(自動運

転→手動運転)

27件

1.2%

HMI操作方法(音

声認識)

27件

1.2%

HMI操作方法

(ジェスチャ認

識)

34件

1.5%

HMI遠隔操作

109件

4.9%

HMI調停(機械⇔

運転手の調停)

58件

2.6%

合計

2,232件

HMI切替(手動運

転→自動運転)

25件

14.6%

HMI切替(自動運

転→手動運転)

27件

15.8%

HMI操作方法(音

声認識)

27件

15.8%

HMI操作方法

(ジェスチャ認

識)

34件

19.9%

HMI調停(機械⇔

運転手の調停)

58件

33.9%

合計

171件

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要約

第1部

第2部

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第5部

資料編

第6部

図 6-24 技術区分(HMI)と自動化レベルの相関(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):

2005 年‐2011 年)

4

1586 1 5

5 1 2

6 1 1

1

1

3310 2

技術区分

技術区分

レベル1 レベル2 レベル3 レベル4

HMI監視

(運転手→機械)

HMI切替

(手動運転→自動運転)

HMI監視

(機械→運転手)

HMI切替

(自動運転→手動運転)

HMI操作

(音声認識)

HMI操作

(ジェスチャ)

HMI調停

(機械⇔運転手の調停)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

システム設計に関する出願では、いずれの項目も日本国籍による出願件数が も多い。

また、韓国籍の出願人が ECU 構造の出願において米国や欧州を上回る数の出願件数を誇

っており、韓国での ECU に関する研究開発が盛んになっている可能性がある。中国籍に

おいては OS/ソフトウェア、フェールセーフ異常診断の出願がない(図 6-25)。

図 6-25 技術区分(システム設計)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願、出願年(優

先権主張年):2005 年‐2011 年)

124 23 24 10 766

129 21 43 10

239 19 465

技術区分

出願人国籍日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

ECU構造

OS/ソフトウェア

フェールセーフ、

異常診断

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 出願人国籍別動向調査

出願人国籍毎の自動運転自動車と認知方法の2つの技術区分間の相関を見ると、日本

は路車間通信を利用した自動運転自動車に関する出願が他国と比べて多くなっている

(図 6-26~図 6-30)。これらのことから、日本は他国に比べて路車間通信に強みがある

と考えられる。

図 6-26 技術区分(自動運転自動車)と技術区分(認知技術(認知方法))の相関(日本国籍出

願人による出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

24 3 3

1 1

19 39 5

4 2 10

自動運転自動車

認知方法

車載センサ

車車間通信

路車間通信

歩車間通信

携帯端末

単独走行(運転手無し)

単独走行(それ以外)

隊列走行(運転手無し)

隊列走行(それ以外)

車群制御(交通管制)

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- 49 -

本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-27 技術区分(自動運転自動車)と技術区分(認知技術(認知方法))の相関(米国籍出願

人による出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

3

4

6 7

12

自動運転自動車

認知方法

車載センサ

車車間通信

路車間通信

歩車間通信

携帯端末

単独走行(運転手無し)

単独走行(それ以外)

隊列走行(運転手無し)

隊列走行(それ以外)

車群制御(交通管制)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-28 技術区分(自動運転自動車)と技術区分(認知技術(認知方法))の相関(欧州国籍出

願人による出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

2

7

9 4

21

5

自動運転自動車

認知方法

車載センサ

車車間通信

路車間通信

歩車間通信

携帯端末

単独走行(運転手無し)

単独走行(それ以外)

隊列走行(運転手無し)

隊列走行(それ以外)

車群制御(交通管制)

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-29 技術区分(自動運転自動車)と技術区分(認知技術(認知方法))の相関(中国籍出願

人による出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

61

5 2

7 2

101

9

自動運転自動車

認知方法

車載センサ

車車間通信

路車間通信

歩車間通信

携帯端末

単独走行(運転手無し)

単独走行(それ以外)

隊列走行(運転手無し)

隊列走行(それ以外)

車群制御(交通管制)

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 6-30 技術区分(自動運転自動車)と技術区分(認知技術(認知方法))の相関(韓国籍出願

人による出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

61

6

31

2 6 2

自動運転自動車

認知方法

車載センサ

車車間通信

路車間通信

歩車間通信

携帯端末

単独走行(運転手無し)

単独走行(それ以外)

隊列走行(運転手無し)

隊列走行(それ以外)

車群制御(交通管制)

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第5節 出願人別動向調査

1.出願件数ランキング

日本、米国、欧州、中国、韓国への出願件数上位の出願人ランキングを見ると、トヨ

タ自動車が 上位にあり、上位 10 位には日産自動車、本田技研工業、GM、富士重工業、

現代自動車といった自動車メーカーや、デンソー、ボッシュ、アイシン AW といった自動

車系部品メーカーとなっており、全て自動車関連メーカーとなっている(表 6-12)。

表 6-12 出願人別出願件数上位ランキング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005

年~2011 年)

順位 出願人 件数

1 トヨタ自動車 4,864

2 デンソー 2,655

3 ボッシュ(ドイツ) 2,176

4 日産自動車 1,744

5 本田技研工業 1,539

6 アイシン AW 1,141

7 GM(米国) 933

8 三菱電機 640

9 富士重工業 625

10 現代自動車(韓国) 622

注:日本国籍以外の出願人にはカッコ()内に出願人国籍を示す。

なお、以降の表においても同様の理由にて表示を行う。

2.技術区分別の出願件数ランキング

自動運転自動車における出願件数上位の出願人ランキングを見ると、自動車関連メー

カーの他には、IHIエアロスペースや IHI、小松製作所が上位 10位に入っている(表 6-13)。

表 6-13 技術区分(自動運転自動車)における出願人別出願件数上位ランキング(日米欧中韓へ

の出願、出願年(優先権主張年):2005 年~2011 年)

順位 出願人 件数

1 トヨタ自動車 91

2 デンソー 22

3 富士重工業 21

4 GM(米国) 18

5 シーメンス(ドイツ) 17

6 IHI エアロスペース 16

6 IHI 16

8 小松製作所 15

9 本田技研工業 14

10 ADVANCED TRANSPORT SYSTEMS(イギリス) 10

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

運転支援システムにおける出願件数上位の出願人ランキングを見ると、自動車関連メ

ーカーが上位 10 位を占めている(表 6-14)。

表 6-14 技術区分(運転支援システム)における出願人別出願件数上位ランキング

(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

順位 出願人 件数

1 トヨタ自動車 1,072

2 ボッシュ(ドイツ) 829

3 デンソー 511

4 日産自動車 497

5 GM(米国) 357

5 アイシン AW 357

7 本田技研工業 297

8 現代自動車(韓国) 222

9 アイシン精機 216

10 富士重工業 213

OS・ソフトウェアに関する出願別の出願件数上位ランキングを見ると、米国の SEARETE

(特許管理会社 Intellectual Ventures と同じ企業と考えられている)が上位に入って

いる(表 6-15)。自動運転自動車は今後大きな市場が見込めるため、こういった企業が

特許ポートフォリオを構築していく可能性がある。

表 6-15 技術区分(システム設計:OS・ソフトウェア)における出願人別出願件数上位ラン

キング(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2005 年‐2011 年)

順位 出願人 件数

1 デンソー 27

2 アイシン AW 23

3 アイシン精機 16

3 フォルクスワーゲン(ドイツ) 16

5 アドヴィックス 15

5 トヨタ自動車 15

7 豊田中央研究所 10

8 パイオニア 9

9 SEARETE(米国) 6

9 富士通テン 6

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第7章 論文動向調査

第1節 調査方法・調査対象・技術区分

1.データベースと検索方法

本調査のデータベースにはトムソン・ロイター社の Web of Science と Conference

Proceedings を使用した。

2.調査対象期間と調査対象文献

(1)調査期間

2005 年‐2012 年(発表年)

(2)調査対象文献

日本及び外国における学術雑誌や専門誌、学術会議で発表された論文。

3.技術区分

論文動向調査の技術区分は特許動向調査と同様のものを用いている。(表 6-1~表 6-11

参照)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第2節 全体動向

全体の論文発表動向を見ると、本テーマの調査対象技術(図 1-1)に関する論文発表

件数は 4,130 件で、欧州国籍(34.7%)が も多く、次いで米国籍(23.7%)、中国籍

(10.0%)、日本国籍(7.8%)、韓国籍(4.9%)と続いている。発表件数はいずれの国

籍も年々増加傾向にある(図 7-1)。

図 7-1 研究者所属機関国籍別論文発表件数推移及び論文発表件数比率(論文発表年 2005 年~

2012 年)

301 373

512 531

629

473

575

736

0

500

1000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

発表年

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

発表年2005-2012年

論文件数

日本

323件

7.8 %

米国

977件

23.7%

欧州

1,433件

34.7%

中国

414件

10.0%

韓国

203件

4.9%

その他

780件

18.9%

合計4,130 件

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 技術区分別動向

技術区分別の論文発表動向を見ると、自動運転自動車に関する論文発表では、米国籍

が も多く、34.0%を占めている。次いで、欧州国籍が 28.5%、中国籍が 10.2%、韓国

籍が 6.0%、日本国籍が 4.9%となっている。論文件数推移については、米国籍が 2005

年から既に他の国籍よりも多くの論文発表がなされており、2011 年に一度減少するもの

の、2012 年には再度多くの論文発表が見られる。また欧州国籍は 2007 年以降において、

発表件数が大きく減少することなく毎年論文発表がなされている。中国籍においては、

2012 年に大幅に発表件数が増えている(図 7-2)。

図 7-2 研究者所属機関国籍別論文発表件数推移及び論文発表件数比率(自動運転自動車、論文

発表年 2005 年~2012 年)

72

89 90

117

99 88

78

121

0

50

100

150

200

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

発表年

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計

発表年2005-2012年

論文件数

日本

37件

4.9 %

米国

256件

34.0%

欧州

215件

28.5%

中国

77件

10.2%

韓国

45件

6.0%

その他

124件

16.4%

合計754 件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

隊列走行に関する論文発表では、欧州からの発表件数が も多くなっており、隊列走

行の実証実験と研究が進んでいるためと考えられる(図 7-3)。

図 7-3 技術区分(自動運転自動車)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(論文発表年 2005

年~2012 年)

5 100 53 16 25 38

14 92 64 28 10 33

110 16 4

111

14 49 62 21 6 37

37 20 8

37

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

単独走行

(運転手無し)

隊列走行(運転手無し)

単独走行

(それ以外)

隊列走行

(それ以外)

車群制御

(交通管制)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

自動化レベルに関する論文発表では、米国ではレベル 4 に関する発表件数が 64.8%を

占めており、日本や欧州国籍と比較してかなり多くなっており、米国ではレベル 4 に関

する研究開発が活発に行われているものと考えられる。また、中国、韓国籍においても、

レベル 4 に関する発表件数は、中国で 58.5%、韓国で 58.4%を占めている。ただし、絶対

数では、欧州国籍のレベル 4に関する発表件数は米国籍の発表件数に迫っている(図 7-4、

図 7-5)。

各技術区分の定義は、レベル 1:運転支援システムを1つだけ備える車両を対象とし

た論文、レベル 2:運転支援システムを 2 つ以上備える車両を対象とした論文、レベル 3:

特定環境で利用される一部自動運転自動車を対象とした論文、レベル 4:環境を特定し

ない自動運転自動車を対象とした論文、とした。

図 7-4 自動化レベルにおける国籍別論文発表件数と特許出願件数の比較(論文発表年 2005 年~

2012 年)

<日本国籍>【論文】 <日本国籍>【特許】

<米国籍>【論文】 <米国籍>【特許】

レベル1

41件

49.4%

レベル2

5件

6.0%

レベル3

0件

0.0%

レベル4

37件

44.6%

合計83 件

レベル1

4,493件

91.6%

レベル2

136件

2.8%

レベル3

38件

0.8%

レベル4

239件

4.9%

合計4,906 件

レベル1

115件

30.4%

レベル2

7件

1.9%

レベル3

11件

2.9%

レベル4

245件

64.8%

合計378 件 レベル1

616件

91.1%

レベル2

30件

4.4%

レベル3

2件

0.3%

レベル4

28件

4.1%

合計676 件

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

<欧州国籍>【論文】 <欧州国籍>【特許】

<中国籍>【論文】 <中国籍>【特許】

<韓国籍>【論文】 <韓国籍>【特許】

レベル1

262件

52.2%

レベル2

25件

5.0%

レベル3

10件

2.0%

レベル4

205件

40.8%

合計502 件

レベル1

2,178件

92.8%

レベル2

115件

4.9%

レベル3

6件

0.3%

レベル4

49件

2.1%

合計2,348 件

レベル1

43件

35.0%

レベル2

3件

2.4%レベル3

5件

4.1%

レベル4

72件

58.5%

合計123 件

レベル1

210件

84.7%

レベル2

2件

0.8%

レベル3

1件

0.4%

レベル4

35件

14.1%

合計248 件

レベル1

720件

90.1%

レベル2

35件

4.4%

レベル3

3件

0.4%

レベル4

41件

5.1%

合計799 件

レベル1

27件

36.0%

レベル2

3件

4.0%レベル3

2件

2.7%

レベル4

43件

57.3%

合計75 件

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 7-5 自動化レベル別の国籍別論文発表件数と特許出願件数の比較(論文発表年 2005 年~2012

年)

【論文】

41 115 262 43 27

57 25

3 3

11 105 2

37 245 205 72 43

日本 米国 欧州 中国 韓国

レベル4

レベル3

レベル2

レベル1

所属機関国籍

【特許】

4,493 616 2,178 210

720

136 30 115 2 35

38 2 6 1 3

239 28 49 35 41

日本 米国 欧州 中国 韓国

レベル4

レベル3

レベル2

レベル1

出願人国籍

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

自動運転自動車、運転支援を適用するシーン・場所に関する論文発表では、カーブ、

交差点、死角に関する発表が多く、特に交差点に関する発表件数が群を抜いており(図

7-6)、各国からの出願が多く見られ、活発に研究が進められている領域である。

図 7-6 技術区分(シーン・場所)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(論文発表年 2005 年

~2012 年)

1 1

1

2

1

19 5

3 2 2

22 43 49 8 7 11

1 3

1 4 5 2 2 2

1 3

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

混在環境

隊列編成

渋滞

専用道

カーブ

交差点

合流・分流

環境適合性

死角

その他、特定の

交通状況下

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

車車間通信における認知に関する論文発表では、自車位置情報、他車位置情報・相対

距離情報、速度・加速度・制動・操舵・方向指示器情報(自車)の件数が多く、車車間

通信においては車両位置や車両の状態を通信することについて研究が進められているも

のと考えられる。

路車間通信における認知に関する論文発表では、車車間通信と比較して、道路形状・構

造や、信号機、交通標識等、渋滞・混雑情報、等の件数が相対的に多くなっており、車

車間通信では取得が難しい情報を路車間通信により取得するといった方向性が考えられ

る(図 7-7、図 7-8)。

図 7-7 技術区分(認知技術(認知内容):車車間通信)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数

(論文発表年 2005 年~2012 年)

4 12 18 6 22

4 8 11 52

13

111 11 5 8

1 22

1

5

35 7

1

6

12 1

3 2 2

1 2

10

1 2

4

2

1

2 3 3

4

5 122

17

1 1

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

自車位置情報

他車位置・相対距離情報

速度・加速度・制動・操舵・方向指示器情報(自車)

速度・加速度・制動・操舵・方向指示器情報(他車)

道路形状・構造

信号機、交通標識、路面表示情報

路面・天候状況情報

道路環境その他

歩行者・自転車位置

落下物情報(位置)

障害物等その他

渋滞・混雑情報

自車両に対する制御情報

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

図 7-8 技術区分(認知技術(認知内容):路車間通信)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数

(論文発表年 2005 年~2012 年)

1

7 191

5 14

1 23

1 2

25 7 3

24

3 2

1 47

14

3 34

1 16

26

3 4 3

1

4 3 2

26 7 4

26

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

自車位置情報

他車位置・相対距離情報

速度・加速度・制動・操舵・方向指示器情報(他車)

道路形状・構造

信号機、交通標識、

路面表示情報

路面・天候状況情報

道路環境その他

歩行者・自転車位置

落下物情報(位置)

障害物等その他

渋滞・混雑情報

自車両に対する制御情報

速度・加速度・制動・操舵

・方向指示器情報(自車)

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

通信品質やセキュリティに関する論文発表では、日本や米国からの発表が多く見られ

るが、欧州では通信品質やセキュリティに関する論文発表件数が少なくなっており、他

国と比較して 10分の 1程度となっている。欧州では CAM、DENMが既に標準化されており、

標準化に関わる通信品質やセキュリティについて、論文があまり出ていない可能性があ

る(図 7-9)。

図 7-9 技術区分(通信システム:車車間通信、路車間通信、歩車間通信、通信-車載センサの共

用)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(論文発表年 2005 年~2012 年)

39 54 4 40 36 46

18 141

7 6 13

23 38 4 23 17 26

7 7 2 2 5

1

1

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

車車間通信(品質)

路車間通信

(品質)

車車間通信

(セキュリティ)

路車間通信(セキュリティ)

歩車間通信(品質)

歩車間通信(セキュリティ)

通信協調

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

車載センサに関する論文発表においては、いずれの国籍においてもカメラによる認知

技術が も多く、次いでミリ波レーダー、マイクロ波レーダー、レーザーレーダーのレ

ーダー関連が多い結果となった。超音波センサ、磁気センサ、音響センサ、電波/電界

センサ、フュージョンについては論文発表がなされているが、カメラやレーダーに比べ

て少ない結果となった。

なお、カメラや GNSS についてその他の国籍が多くなっているが、それぞれについて台

湾、カナダ、オーストラリアが多く見られた(図 7-10)。

図 7-10 技術区分(認知技術(認知方法):車載センサ)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数

(論文発表年 2005 年~2012 年)

5 2052

7 5 10

5 1850

7 7 9

8 2568

9 6 11

22 59 10823 10

49

1858 70

31 1554

3 1 9 2 4 9

2 1 2 3

1 1 1

4 1 6 1 1 4

4 3 2 2

1251 70

18 630

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

ミリ波レーダー

マイクロ波レーダー

レーザーレーダー

カメラ

GNSS

超音波センサ

音響センサ

赤外センサ

電波/電界センサ

フュージョン

磁気センサ

車載センサその他

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

車載センサによる認知内容に関する論文発表では、自他車位置や、道路形状、歩行者・

自転車情報に関する発表が多く、日米欧中韓から見られる。また、欧州国籍からは他国

と比較して信号機情報や交通標識・路面標識、歩行者・自転車情報に関する論文発表が

多くなっており、その数は 2 倍以上となっている。特に欧州では車載センサにより信号

機や、交通標識、歩行者等を認知して自動運転や運転支援を行っていく研究開発が積極

的に行われている可能性がある(図 7-11)。

図 7-11 技術区分(認知技術(認知内容):車載センサ)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数

(論文発表年 2005 年~2012 年)

18 33 37 14 13 30

5 11 17 62

7

8 29 50 17 7 28

7 124 2

7

10 26 49 115

19

26 5

1 2

38

1 2

1 1 8 1

1 711

3 1 3

9 15 38 116 3

5 41 1 2

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

自車位置情報

速度・加速度・制動

・操舵・方向指示器情報(自車)

他車位置

道路形状

道路構造

信号機情報

交通標識・路面標識

速度・加速度・制動

・操舵・方向指示器情報(他車)

路面・天候状況

歩行者・自転車情報

落下物情報

渋滞・混雑情報

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

判断技術に関する論文発表においては、米国籍及び欧州国籍の件数が多い状態である。

特に米国籍は走行進路生成・運転嗜好・路面状況推定に関する技術区分が他の国籍より

も多く、欧州国籍は地図生成・目的地経路・衝突可能性モデル・衝突可能性 MAP に関す

る技術区分が他の国籍よりも多い結果となった(図 7-12)。

図 7-12 技術区分(判断技術)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(論文発表年 2005 年~2012

年)

3 8 17 42

5

1

1

7 32 21 7 19

1 1

211 3

16

3 9 1

1

1

1 1

3 91

1

32 2

1

2 8 5 21

3

2 9 3 71 1

12

1

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

地図生成

自己位置の同定

走行経路・走行進路生成

走行経路・走行進路優先順位

走行進路・その他

走行経路・目的地経路

衝突可能性・モデル推定自車

衝突可能性・モデル推定他車

衝突可能性・モデル推定

歩行者

衝突可能性・MAP判断自車

衝突可能性・MAP判断他車

衝突可能性・MAP判断

歩行者

車体の衝突部位

衝突可能性・その他

衝突可能性・MAP判断

その他

衝突可能性・モデル推定

その他

操作タイミング

運転嗜好

走行安定化のための路面状況推定

走行安定化のための重心・重量推定

推定その他

横位置方向の同定

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

HMI に関する論文発表においては、いずれの国籍も HMI の監視(機械→運転手)の件

数が 多である。また HMI 操作方法においては、米国籍及び欧州国籍のみで音声認識に

関する論文発表がなされており、遠隔操作に関する技術区分においてはいずれの国籍に

おいても論文発表がなされている結果となった(図 7-13)。

図 7-13 技術区分(HMI)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(論文発表年 2005 年~2012 年)

1

3 13 28 43

19

21

51

31

31

3 5 6 33

9

41

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

HMI操作方法

ジェスチャ認識

HMI監視機械→運転手

HMI監視その他

HMI切替手動→自動

HMI切替

自動→手動

HMI切替

その他

HMI操作方法

音声認識

HMI監視

運転手→機械

HMI操作方法

遠隔操作

HMI操作方法

その他

HMI調停

機械⇔運転手

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

システム設計に関する論文発表では、ECU 構造及び OS/ソフトウェアは各国からの論

文発表がなされている結果となった。フェールセーフ・異常診断については、件数は少

ないが欧州国籍及び中国籍からのみ抽出される結果となった(図 7-14)。

図 7-14 技術区分(システム設計)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(論文発表年 2005 年

~2012 年)

1 5 5 2 3 3

2 4 10 5 1 5

3 1 2

技術区分

所属機関国籍

日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

ECU構造

OS/ソフトウェア

フェールセーフ、

異常診断

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第4節 研究者所属機関・研究者別動向

研究者所属機関においては、北米の大学が上位 4 位を占めており、次いで台湾の大学

がランクインしている。またスペイン、シンガポールの大学も上位に入っている(表 7-1)。

自動運転自動車に絞ったランキングにおいては、カーネギーメロン大学やマサチューセ

ッツ工科大学、スタンフォード大学等、米国の大学が多くなっている(表 7-2)。

表 7-1 研究者所属機関別論文発表件数上位ランキング(論文発表年 2005 年~2012 年)

順位 研究者所属機関 件数

1 Univ Waterloo(カナダ) 50

2 Univ Calif Berkeley(米国) 44

3 Carnegie Mellon Univ(米国) 39

4 MIT(米国) 36

5 国立成功大学(台湾) 34

6 国立交通大学(台湾) 33

7 Univ Michigan(米国) 29

8 Univ CarlosIII Madrid(スペイン) 28

9 Nanyang Technol Univ(シンガポール) 27

9 Univ Illinois(米国) 27

表 7-2 研究者所属機関別論文発表件数上位ランキング(自動運転自動車、論文発表年 2005 年~

2012 年)

順位 研究者所属機関 件数

1 Carnegie Mellon Univ(米国) 16

2 MIT(米国) 11

3 Univ Toronto(カナダ) 10

4 ソウル大学(韓国) 9

4 USA(米国) 9

6 Stanford Univ(米国) 8

6 Tech Univ Carolo Wilhelmina Braunschweig(ドイツ) 8

8 中国科学院(中国) 6

8 Ohio State Univ(米国) 6

8 Univ Calif Santa Barbara(米国) 6

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

研究者別動向においては、米国及び欧州の研究者が上位を占めている結果となってい

る(表 7-3)。

表 7-3 研究者別論文発表件数上位ランキング(論文発表年 2005 年~2012 年)

順位 研究者 所属機関 件数

1 Gerla Mario Univ Calif Los Angeles(米国) 19

2 Milanes Vicente Spanish National Research

Council(スペイン) 18

2 Shen Xuemin(Sherman) Univ Waterloo(カナダ) 18

4 Hartenstein Hannes Univ Karlsruhe(ドイツ) 17

5 Sengupta Raja Univ Calif Berkeley(米国) 16

6 Perez Joshue UPM CSIC(スペイン) 14

7 Bai Fan Carnegie Mellon Univ(米国) 13

8 Krishnan Hariharan Univ Calif Berkeley(米国) 12

8 Onieva Enrique UPM CSIC(スペイン) 12

8 Thrun Sebastian Stanford Univ(米国) 12

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第8章 提言

第1節 普及シナリオに基づく提言

≪提言詳細≫

1.2020 年頃の自動運転自動車像と自動運転技術の早期確立・適用範囲拡大

我が国や諸外国では、安全・快適を目指して自動運転自動車の研究開発や普及・製品

化を行っており、特に日米欧では現在製品化されている運転支援システムをより高度化

し、高速道路や駐車場等での特定環境下における運転手監視の下での自動運転自動車(自

動化レベル 3)の普及・製品化を目指して研究開発を進めており、2020 年が一つの区切

りとして位置づけられている。

しかしながら、現実の交通環境は複雑であって技術的課題も多く、まずは技術的ハー

ドルの低い上記特定環境下での実用化を着実に実現するべきである。

また、車車間通信や路車間通信技術、及び、そのための道路インフラを、上記技術的

課題を簡素化するための手段や、自律型自動運転をさらに高度化させるための手段とし

て利用し、自動運転技術の早期確立や適用範囲の拡大を進めていくべきである。

特に、日本において技術の蓄積がある隊列走行については、実用化のための技術課題

と社会的課題の解決策を早期に検討し、研究開発と社会環境の整備を進めていくべきで

ある。

併せて、自動運転自動車の普及のためには、自動運転の導入による消費者へのメリッ

トを訴求することも重要であり、そのための研究開発も今後も進めていく必要がある。

2.運転手不要の完全自動運転や自動化レベル 4 への対応

日本や欧州では、運転手不要の完全自動運転や、自動化レベル 4 の自動運転の普及は

2020 年以降と推測されるが、米国では 2020 年までに運転手不要の自動化レベル 4 の普

及が開始される可能性もあり、これらの研究開発においても米国に後れをとらないよう、

技術動向を常時把握するべきである。

≪提言に至る経緯≫

1-1.2020 年頃の自動運転自動車像

自動運転関連市場は、現状では LKAS/LDW、ACC、PCS といった運転支援システムとして

展開している。これらを統合した ADAS の世界市場規模は 2012 年で 1,363 千システムで

ある。市場シェアは BMW、ダイムラー、ボルボ、フォルクスワーゲンといった欧州自動

【提言1】

2020 年頃までに運転手監視の下での自動化レベル 3 の自動運転自動車を普及・製品化す

る計画が進行している。

車車間通信や路車間通信技術を、複雑な交通環境における技術的課題を簡素化するため

の手段や、自律型自動運転をさらに高度化させるための手段として利用し、自動運転技術

の早期確立や適用範囲の拡大を進めていくべきである。

運転手不要の完全自動運転や自動化レベル 4 に関する技術動向を常時把握するべきであ

る。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

車メーカーが上位を占め、現状では欧州メーカーが先行している。日本は富士重工業の

「Eye Sight」によって欧州メーカーに次ぐシェアを有している。これら運転支援システ

ムを搭載した自動車の国内外への実績が比較的高い。

これらの運転支援システムを発展させた自動運転自動車を商品化すると発表している

自動車メーカーも多く、例えば GMは CES2008 で運転手不要の完全自動運転の生産を 2018

年に行うことを発表し、2017 年までに高速道路本線に限定した自動運転技術の実用化を、

2020 年までに高度なシステムを搭載した全自動走行車の生産を目指しており、コンチネ

ンタルは 2016 年までに部分的に自動化する一連のソリューションの開発及び提供、高度

な自動化のシステムを 2020 年に、完全自動化のシステムを 2025 年までに提供する考え

である。また、自動車メーカーではないが、Google(グーグル)は 2012 年 9 月に、自動

運転車を 5 年以内に実用化すると発表している。

トヨタ自動車は 2015 年に高速道路での同一車線内での自動運転技術の実用化、本田技

研工業は 2020 年までに駐車場での自動走行技術(自動バレーパーキング)の実用化、日

産自動車は 2020 年までに自動運転自動車の実用化を目指している。

特許出願においては、車載センサを利用した運転支援システムに関する出願が行われ

ており、既に市場に投入されている衝突被害軽減/回避技術、駐車支援技術、車間距離制

御、車線維持支援に関する出願が多いが、車線変更支援や合分流支援、自動発進/停止支

援、右左折支援等の出願も見られ(図 6-10)、車載センサを使ってより高度な運転支援

を行うシステムの研究開発が行われている。

我が国では、内閣府が 2013 年 6 月に「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」を策定し、戦

略市場創造プラン(ロードマップ)の「テーマ 3:安全・便利で経済的な次世代インフラ

の構築」において、安全運転支援システム、自動走行システムの開発・環境整備を掲げ

ており、2020 年には自動走行システムの試用開始を掲げている。

また、国土交通省のオートパイロットシステムに関する検討会による「オートパイロ

ットシステムの実現に向けたロードマップ(案)」が策定され、車両側の検討事項として、

「運転支援システムの複合化⇒さらなる高度化」や、また代表シーンとして「同一車線

⇒車線変更⇒分合流へと支援領域を拡大」が掲げられている。また同ロードマップでは

2020 年代初頭頃に高速道路本線上での連続走行を目指している。

米国は US-DOT、NHTSA が中心となって取り組みを行っており、US-DOT は 2013 年に車

車間通信システムの NCAP(New Car Assessment Program)の適用を判断し、2015 年に路

車間通信システムの展開判断を計画している。また、SAFETY PILOT にて路車間通信、車

車間通信の実証実験が行われている。

欧州では、これまで欧州フレームワークプログラムが代表的なプロジェクトであった

が、2014 年からは HORIZON 2020 に引き継がれている。ロードマップに関しては、現在

ERTRAC 等によって検討されており、2020 年に安全技術を基にした自動運転の製品化を挙

げている。

日米欧では現在製品化されている運転支援システムをより高度化し、高速道路や駐車

場等での特定環境下における自動運転の普及・製品化を目指し研究開発を進めており、

2020 年が一つの区切りとして位置づけられている。日本や欧州では 2020 年頃までに普

及・製品化を目指す自動運転のレベルは運転手監視の下での特定環境下(高速道路や駐

車場)における自動運転(自動化レベル 3)となっており、運転手不在または自動化レ

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

ベル 4 の自動運転自動車の普及・製品化は 2020 年以降と予測される。

高速道路や駐車場といった特定環境でのみの自動運転は技術的ハードルも低くなり、

実用化を早くすることができるため、自動運転自動車の普及の過程においては、まずは

特定環境下において普及させていくべきである。

特許出願においても、シーン・場所別の分析ではカーブ、交差点、死角、合流・分流、

専用道といった特定の道路環境に関する出願が見られ(図 6-8)、また隊列走行(図 6-5)

や、駐車支援(図 6-7)に関する出願も見られる。

1-2.自動運転技術の早期確立・適用範囲拡大

交差点やカーブ等の道路環境では技術的課題も多く、自動運転を実現するためのハー

ドルは高い。そのたメーカー、特許出願において、交差点、カーブ、死角に関する出願

が多くなっている(図 6-8)。論文発表においても、交差点、カーブ、死角に関する発表

が多く、特に交差点に関する発表件数が群を抜いている(図 7-6)。

このような技術的課題が多い環境下での自動運転の普及・製品化は 2020 年以降となる

可能性が高い。交差点のように、より複雑な交通環境において自動運転を行うためには、

より多くの情報を正確に入手する必要がある。日米欧では車車間通信や路車間通信に関

する実証実験や普及の検討を行っており、特許出願においても、車車間通信や路車間通

信による認知情報の取得に関する出願が見られ、車車間通信では車両の位置や状態に関

する出願が多く、路車間通信では車両の位置や状態以外にも、道路形状・構造や、信号

機、交通標識等、渋滞・混雑情報が車車間通信と比較して相対的に多くなっている(図

6-12、図 6-13)。

通信を利用することにより、より多くの正確な情報(他車両の速度情報や位置情報、

信号、標識情報や死角における情報等)を得ることが可能となり、通信の利用や道路イ

ンフラの整備により複雑な交通環境での技術的課題を早期に解決していくことが可能と

なる。

日本は路車間通信における道路インフラの整備が他国と比べて進展しており、警察庁が

推進する「安全運転支援システム(DSSS)」、国土交通省道路局が推進する「走行支援道

路システム(AHS)」及び国土交通省自動車交通局が推進する「先進安全自動車(ASV)」

により公道での実証実験が進められている。

特許出願において、日本と他国との車車間通信及び路車間通信の出願件数を比較する

と、1 対 1 の車車間通信の特許出願件数は、日本が米国、欧州の約 4~5 倍程度であるの

に対して、電波ビーコンや光ビーコンによるに路車間通信は日本が他国の約 15 倍以上の

出願件数となっている(図 6-14)。さらに、日本は路車間通信を利用した自動運転自動

車に関する出願が他国と比べて多くなっている(図 6-26~図 6-30)。

路車間通信では、道路形状・構造等の認知に関する出願件数が車車間通信と比較して

相対的に多くなっており、車車間通信では取得が難しい情報を路車間通信により取得す

ることが考えられ、さらに路車間通信による自車位置や他車位置(相対位置含む)情報

の認知に関する出願も多く、路車間通信を利用して様々な情報の認知を行うことが考え

られている(図 6-12、図 6-13)。このように、道路インフラと協調し道路における自他

車両の位置検出技術の開発が進められている。

日本が強みを持っている路車間通信技術を利用することで、自動運転の適用範囲を上

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本編

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

述したような技術課題が多い道路環境(交差点、カーブ等)まで早期に拡大していくこ

とが考えられる。

また、国土交通省の「オートパイロットシステムの実現に向けたロードマップ(案)」

では高度インフラ情報(合分流、渋滞発生箇所での走行支援等)の提供は 2020 年以降で

あり、2020 年頃までは静的情報(道路構造データ)、動的情報(規制箇所等)の提供か

ら進んでいくとされている。そこで、まずは通信に頼らず自動運転可能な自動車(自律

型自動運転)の研究開発を進め、自律型自動運転をさらに高度化させるための手段とし

て車車間通信や路車間通信技術を利用していくことも考えられる。これにより、自車周

辺の車両や歩行者等の情報を得て予測性の高い自動運転が可能となる。

さらに、路車間通信や車車間通信により得られる広域の情報を活用することで、自動

運転技術の適用範囲を交通渋滞の削減等にも拡大することが期待されている。

1-3.隊列走行

日本では、NEDO のエネルギーITS 推進事業において隊列走行の実証実験が 2008 年から

開始され、隊列走行の実証実験では車車間通信技術を利用している。米国ではカリフォ

ルニア PATH で隊列走行(CACC)の実証実験、研究が行われており、欧州ではフレームワ

ークプログラムで車車間通信を利用した隊列走行の実証実験が行われた。自動車メーカ

ー各社の見解によると高速道路上での隊列走行の実現は 2017~2020 年初頭と見込まれ

ている。

特許出願においては、日本からの隊列走行に関する出願が多く、特に NEDO の実証実験

が開始された 2008 年から出願が増加している(図 6-5)。論文発表においては、欧州か

らの発表が も多くなっている(図 7-3)。

隊列走行技術は地方の公共交通や運輸事業への利用が可能であり、実現可能な社会環

境(特区や車両管理)の整備が望まれる。日本の隊列走行技術を早期に実現すべく、研

究開発と社会環境の整備を今後も進めていくべきである。

1-4.消費者メリット

自動運転自動車を普及させるためには消費者へのメリットを訴求する必要があり、特

に、渋滞の低減や、省エネルギー化(CO2 排出低減)、高齢者・身障者への運転負荷の低

減、緊急時(災害時や運転手の心臓発作等)における避難、等が挙げられる。

特許出願においても、自動運転自動車や運転支援システムにおける、安全性や、省エ

ネルギー化や交通流の改善、渋滞への対応に関する出願が多く見られ、高齢者・身障者

対応や、緊急避難に関する出願も見られる。省エネルギーについては、自動運転自動車

の車群制御、運転支援システムの車間距離制御、自動発進/停止支援に関する出願が多く

なっており、交通流の改善については、自動運転自動車の車群制御、運転支援システム

の車間距離制御に関する出願が多くなっており、渋滞については、運転支援システムの

車間距離制御に関する出願が多くなっている。(図 6-9)。このように、消費者へのメリ

ットを訴求するための研究開発は今後も進めていく必要がある。

2.自動化レベル 4 への対応

日本や欧州では、運転手不在または自動化レベル 4 の自動運転自動車の普及・製品化

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

は 2020 年以降と予測される。一方、米国では 2018 年に運転手不要の完全自動運転の生

産を行うと発表している自動車メーカーも存在し、2020 年までに運転手不要の自動化レ

ベル 4 の普及が始まる可能性がある。

論文発表においても、米国ではレベル4に関する発表件数が全体の 3 分の 2 程度を占

めており、日本や欧州国籍と比較してかなり多くなっている(図 7-4、図 7-5)。

日本においても、運転手不要の自動運転自動車や自動化レベル 4 の自動運転自動車につ

いて、他国に遅れをとらないよう技術動向を常時把握していく必要がある。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

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資料編

第6部

第2節 ビジネス展開を考慮した技術開発への提言

1.市場形成のための協業

≪提言詳細及び経緯≫

自動運転自動車はセンシング技術や、情報処理技術(ソフトウェアや、OS、アプリケ

ーション)等の技術が多く集まる、高度な情報処理を伴った技術統合型の工業製品であ

る。

したがって、自動車メーカー単独による開発や、既存の汎用技術の単なる流用による

開発では、要求される性能の実現や、低コスト化及び開発期間の短縮等の観点から限界

があり、開発体制の抜本的見直しが必要である。実際、IT 関連企業が自動車の情報シス

テムの開発で自動車メーカーや半導体メーカーと提携したことが発表されるなど、自動

車メーカー及び自動車部品メーカーのみならず、電機メーカーや IT 企業といった新規プ

レイヤーを巻き込んだ開発体制の構築の事例も存在する。

日本の企業は自前で行う開発だけではなく、自動車メーカーや電機・IT 企業等との分

野間、企業間を超えた協業関係を構築する必要がある。

特に、以下の情報処理の技術分野においては、従前のプレイヤーに知的資源の十分な

蓄積がないことが想定され、協業関係の構築が必要と考えられる。また、これらの技術

分野において、実用化に向けた技術を獲得することが、市場獲得のための重要なステッ

プになるものと考えられる。

(1)OS(オペレーティングシステム)、ミドルウエアやプラットフォーム技術

車載センサや通信装置、これらから入手される膨大な情報を処理する装置や、自動

運転を行うための各アクチュエータの制御装置などを多数搭載するため、情報の授受

を円滑に行う必要があり、これらの機器を統合して制御を行うソフトウェアの重要性

が高まる。

このようなソフトウェアの基盤を握ることで、将来的にはアプリケーションやハー

ドウェアまで握っていける可能性がある。

また、ソフトウェア技術等について自動車メーカー(サプライヤー)と IT・電機メ

ーカーとの連携した開発が進められており、今後も協業関係の構築が加速していく可

能性がある。

(2)ハッキング等を防止する通信セキュリティ技術

【提言2】

市場を形成するため、業種や技術分野を超えた協業関係を構築し、コストの低減や開発

期間の短縮を行うべきである。特に、次のような情報処理技術に関する協業関係の構築に

留意するべきである。

(1) OS(オペレーティングシステム)、ミドルウエアやプラットフォーム技術

(2) ハッキング等を防止する通信セキュリティ技術

(3) スマートフォン及びビッグデータ並びにこれらの組合せと自動運転自動車との統合

技術

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

通信による外部ネットワークとの接続が進む中、車載システムのハッキングの危険性が

高まり、自動運転自動車においては走行制御システムもハッキング対象となる可能性があ

り、安全な運転支援が妨害される恐れがある。自動運転自動車おいて通信をより有効に活

用していくためには、ハッキング(情報の改ざん、漏えい、なりすまし等)を防止する通

信セキュリティの対策が一層必要となり、安全性が高く、使いやすい通信セキュリティ技

術を獲得することが重要である。

精度の高い通信セキュリティ技術を獲得できれば、あらゆる情報(国内外企業が保有す

るビッグデータ等)の利用が可能となり、当該技術を利用して情報コンテンツ(アプリケ

ーション)自体も押さえることができる可能性がある。

(3)スマートフォン及びビッグデータ並びにこれらの組合せと自動運転自動車との統

合技術

通信端末としてスマートフォンを利用する動きも活発であり、電機メーカーと自動

車メーカーとが連携し、スマートフォンで自動車を操作(エンジン始動停止、車庫入

れ等)できるシステムの開発や、事故防止システム等の車載関連技術にスマートフォ

ンの通信機能を組み合わせることが考えられている。

このように、通信端末として広く普及しているスマートフォンと自動運転自動車と

の融合は、ユーザーインターフェースとしても受け入れやすく、消費者が自動運転自

動車に魅力を感じる要因となり得る。

また、車載センサから得られる走行中のデータを通信により収集しビッグデータと

して自動運転自動車に活用することも考えられ、自動車自体がセンサとなり、全ての

車両データを吸い上げてビッグデータとし、それを活用していく環境が将来的に考え

られる。自動運転自動車やその通信設備を通じて収集できるビッグデータの活用は、

ユーザーの利便性の向上や自動運転性能の更なる向上につながる。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

2.国際標準化の推進

≪提言詳細≫

これまで行われて来た協調型 ITS に関して、日本は、米国や欧州のように国際的な標

準化活動になっておらず、各国間の協調体制という観点からは日本は遅れをとっていた

が、自動運転自動車に関しては日本が技術的に優位に立っており、今後は自動運転自動

車の標準化活動のリーダーシップをとっていくべきである。

自動運転自動車の標準化においては、まず、自動運転システム機能の標準化が必要で

あり、さらに、個別の技術分野毎の標準化を進めていくべきである。

自動運転のアプリケーションおよびメッセージセットの標準化は ISO、自動運転に関

する通信に関しては ITU を通じ、日本の自動運転の仕様を国際標準にすべく、戦略的な

国際標準化活動を展開するチャンスである。そのためには、標準化の初期の段階で官民

を含めて各地域の標準化機関(ETSI,CEN, SAE)との協調活動を行い、日本としての意向

を積極的に発信する必要がある。

自動運転のように技術革新が速い分野の国際標準化でリーダーシップを発揮するため

には、従来のように技術が確立し性能を実証してから標準化プロセスに入るのではなく、

構想段階から国際的な議論の場に載せることが必要である。技術を確立し検証するプロ

セスを国際的に共有することにより、タイムリーに標準仕様の合意形成を行うことがで

きる。

世界貿易機関(WTO: World Trade Organization)の政府調達協定(GPA:Agreement on

Government Procurement)のルールに適合するために、行政機関の調達において自国内独

自の仕様でないことを示す必要がある。その意味において、国際標準化の審議対象に早

い段階から日本の技術が含まれるようにすることも必要である。

標準化を進めるべき主な対象は次のとおりである。

(1)システム機能の標準化

現在 ISO TC204 WG14 では、自動運転を実現するための構成要素である ADAS の機能

要件に関する標準化を進めており、日本は議長国として標準化の先導を担っている。

更に近年は ADAS のみならず協調システムの機能要件に関する標準化にも着手し、この

分野における世界標準のリーダーシップを取っている。また、ISO TC204 WG14 にて自

動運転システムの端緒として CACC の標準化を開始している。

自動運転や協調システムにおいては、システムそのものの機能だけではなく、人間

【提言3】

標準化の初期の段階で官民を含めて国際標準化機関(ISO,ITU 等)や各地域の標準化機関

(ETSI,CEN, SAE)との協調活動を行いつつ、次のような標準化を進めるべきである。

(1) システム機能の標準化(自動運転の定義、複合的機能要件、作動要件、評価手法と

いう、首尾一貫した一連の標準化)。ISO/TC204 の WG14 の議長国である日本が先導

して積極的に進めていくべき。

(2) 通信標準化(メッセージセット、通信セキュリティが重要)。

(3) 地図標準化。ISO/TC204 の WG3 の議長国である日本が先導して積極的に進めていく

べき。

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

と自動制御システムの関わり合いに関する自動化レベルの定義や、これまで単独で標

準化の検討が成されてきた各種走行支援システムを統合する複合システムが協調作動

する際の相互機能要件、システムのアーキテクチャー等、総合的な標準化が必要であ

り、日本が主導的に標準化を行うべきである。

自動運転の定義から始まり、その複合的機能要件、作動要件、評価手法の策定とい

う首尾一貫とした一連の標準化プロセスを主導的に行うことによりシステム標準の確

立を実現し、更に自動運転を実現するに際し、自動化レベルと運転手間の主権を保証

するための HMI 系の標準化を行うべきである。

(2)通信標準化

(2-1)メッセージセットの標準化

通信標準化においては、メッセージセット標準化、通信セキュリティの標準化、周

波数標準化等が挙げられる。国際標準において も重要と考えられるのは、メッセー

ジセット及びデータエレメントの部分であり、日本が開発した製品を諸外国に輸出し

ていくためには、特にメッセージセット、データエレメントの部分でしっかりと標準

化を進めていくべきであり、また通信手段のマイグレーション(移行)を前提として

システムを構築していくことが重要である。

また、協調型システムや自動運転の先読み処理では、路車間あるいは車車間の通信

が標準化されおり相互接続性が確保されなければならない。また、どのような状況に

対して何を運転手に伝えどう制御するのか、どのような情報を受け渡し(メッセージセ

ット)それに対してどのような運転制御を行うのか、など国際的に統一的な合意を形成

しておくことが必要である。そのためには、自動車の制御技術に加え、人の運転行動、

交通環境などの知見を総合したアプローチが必要である。通信手段は技術革新が速く

時代とともに大きく変化するのに対して、自動運転において普遍性を持った根幹とな

るこの分野をリードしてゆくことが戦略的に重要である。

現在 ISO TC204 WG18 及び WG16 にてメッセージセットの世界標準を策定中であり、

日本としては積極的に標準策定活動に参画していく必要性がある。

(2-2)通信セキュリティの標準化

通信に関するセキュリティの標準化に関し、欧米間にて地域標準としての協調活動

を開始したが、双方の通信アーキテクチャーの相違、セキュリティ確保のための通信

チャンネルの相違等が原因となり、共通標準化に関する課題解決に至らず合意形成が

出来なかった。双方は検討結果の課題をまとめた形で 2012 年にワークショップを開催

して協調活動を終了している。

将来の自動運転の実用化に関しては通信に関するセキュリティは非常に重要であり、

日本としてはセキュリティ確保に関する必要な要件をまとめ、各地域とセキュリティ

標準化に関する協調活動を行う必要性がある。

(3)地図標準化

日本が議長国である ISO/TC204の WG3では ITS協調システムにおける Local Dynamic

Map(動的地図)に関するテーマも設定されており、議長国である日本が先導して地図

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

の標準化を積極的に進めていくべきである。

≪提言に至る経緯≫

国際標準化へ向けた体制について

これまで行われてきた協調型 ITS に関する標準化活動に関して、欧州では欧州委員会

が発行した M/453(Mandate 453)に基づき、欧州の標準化機関 ETSI、 CEN に対し協調

型 ITS に関する標準化の項目が割り付けられた。また米国では DOT の主導のもとに CAMP

でのプロジェクトをベースとした SAE の標準化活動が開始された。このように政府主導

で資金提供を行い協調型 ITS に関する標準化活動が開始された。更に欧州-米国間で標準

化に関する協調活動として EU-US Task Force グループが形成され、各地域標準機関の間

で矛盾なき標準を検討する動きに至った。日本は、米国や欧州のように国際的な標準化

活動になっておらず、欧米が遂行した互恵関係を構築するような協調活動に対し後塵を

拝したため、防御的標準活動として日本の仕様を国際標準に組み入れる活動を行ってい

る。今後は、各国との協調活動が必要である。

一方、自動運転自動車に関しては日本が技術的に優位に立っており、自動運転自動車

の標準化活動のリーダーシップをとっていくべきである。

自動運転自動車の標準化に関し、システム機能、メッセージセット及び地図に関する

標準化は ISO、自動運転に関する通信に関する標準化は ITU において策定作業が進めら

れており、日本の自動運転の仕様を国際標準にすべく、戦略的な国際標準化活動を展開

するチャンスである。そのためには、標準化の初期の段階で官民を含めて各地域の標準

化機関(ETSI,CEN, SAE)との協調活動を行い、日本としての意向を積極的に発信する必

要がある。

日本は欧米の標準化動向を注視するとともに、標準化に取り組んでいる企業や、現に

セキュリティ関連技術の開発を進めている企業をキャッチアップし、早い段階から欧米

の標準化活動に対し提携関係を構築していくべきである。

自動運転のように技術革新が速い分野の国際標準化でリーダーシップを発揮するため

には、従来のように技術が確立し性能を実証してから標準化プロセスに入るのではなく、

構想段階から国際的な議論の場に載せることが必要である。技術を確立し検証するプロ

セスを国際的に共有することにより、タイムリーに標準仕様の合意形成を行うことがで

きる。

世界貿易機関(WTO: World Trade Organization)の政府調達協定(GPA:Agreement on

Government Procurement)のルールに適合するために、行政機関の調達において自国内独

自の仕様でないことを示す必要がある。その意味において、国際標準化の審議対象に早

い段階から日本の技術が含まれるようにすることも必要である。

(1)システム機能の標準化

自動運転自動車の標準化においては、具備するべき機能を纏める必要があり、まず

は自動運転システム機能の標準化が必要である。システム標準を行い、更に自動運転

のアプリケーションやメッセージセットの標準化を進めていくべきである。

現在 ISO TC204 WG14 では、自動運転を実現するための構成要素である ADAS の機能

要件に関する標準化を進めており、日本は議長国として標準化の先導を担っている。

更に近年は ADAS のみならず協調システムの機能要件に関する標準化にも着手し、この

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本編

目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

分野における世界標準のリーダーシップを取っている。また、ISO TC204 WG14 にて自

動運転システムの端緒として CACC の標準化を開始している。

自動運転や協調システムにおいては、システムそのもの機能だけではなく、人間と

自動制御システムの関わり合いに関する自動化レベルの定義や、これまで単独で標準

化の検討が成されてきた各種走行支援システムを統合する複合システムが協調作動す

る際の相互機能要件、システムのアーキテクチャー等、総合的な標準化が必要であり、

日本が主導的に標準化を行うべきである。

自動運転の定義から始まり、その複合的機能要件、作動要件、評価手法の策定とい

う首尾一貫とした一連の標準化プロセスを主導的に行うことによりシステム標準の確

立を実現し、更に自動運転を実現するに際し、自動化レベルと運転手間の主権を保証

するための HMI 系の標準化を行うべきである。

(2)通信標準化

通信標準化においては、メッセージセット標準化、通信セキュリティの標準化、周

波数標準化等が挙げられる。

日本は路車間通信を用いた協調型システムを世界に先駆けて実用化したが、その後、

欧州を中心としてこの分野の標準化作業がその時点における 新技術動向に沿って進

められてきた。しかし、それも実用化を前にして既に 新技術ではなくなっている。

このような状況を踏まえて、通信標準化において も重要と考えられるのは、メッセ

ージセットの部分であり、どのような情報をやり取りするのかを合わせておかなけれ

ば日本で開発したものを輸出することができない。

例えば、ヨーレートの分解能は 0.001 まで定義している欧州に対して日本は 1 とい

う程度であることや、Forward Vehicle Collision Warning 等安全運転システムに使

用するメッセージセットの更新周期は欧米では10msecに対して日本は100msecとなっ

ている等、このような部分を日本の仕様とは異なるもので標準化されてしまうと WTO

TBT(Technical Barriers to Trade)により日本で開発したものがそのまま輸出でき

なくなってしまう。

また、どのような状況に対して何を運転手に伝えどう制御するのか、どのような情

報を受け渡し(メッセージセット)それに対してどのような運転制御を行うのか等、国

際的に統一的な合意を形成しておくことが必要である。そのためには、自動車の制御

技術に加え、人の運転行動、交通環境などの知見を総合したアプローチが必要である。

通信手段は技術革新が速く時代とともに大きく変化するのに対して、自動運転におい

て普遍性を持った根幹となるこの分野をリードしてゆくことが戦略的に重要である。

通信を利用した自動運転自動車の普及には、通信技術およびアプリケーションの標

準化が課題であるが、日本が開発した製品を諸外国に輸出していくためには、特にメ

ッセージセット及びデータエレメントの部分でしっかりと標準化を進めていくべきで

ある。さらに、通信技術は技術変化が速く標準化作業が追い付かない部分もあり、通

信手段のマイグレーション(移行)を前提としてシステムを構築することが重要であ

る。

各国の標準化作業では、欧州の標準化機関 ETSI と米国の標準化機関 SAE はそれぞれ

C2C-CC、CAMP といった自動車メーカーを主体としたプロジェクトと密接な関係にあり、

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

欧米では、政府、地域標準化機関、自動車メーカーの三者が一体となった協調体制を

確立し、メッセージセット、データエレメントに関する調整を行っている。

国際標準については、現在 ISO TC204 WG18(2009 年新設)及び WG16 にてメッセー

ジセットの世界標準を策定中であり、日本としては積極的に標準策定活動に参画して

いく必要がある。

特許出願においては、車車間通信で車両位置や車両の状態を認知するものが多く出

願されており(図 6-12)、路車間通信で道路形状・構造や、信号機、交通標識等、渋

滞・混雑情報を認知するものが多く出願されている(図 6-13)

論文発表においては、車車間通信による渋滞・混雑情報の認知を行うものが欧州国

籍から多く発表されている(図 7-7)。

通信セキュリティの標準化に関して、日本では ISO TC204 WG17(Nomadic Device:

ノーマディックデバイス)にて電子情報技術産業協会(JEITA)が担当している。また、

通信に関するセキュリティの標準化に関し、欧米間にて地域標準としての協調活動を

開始したが、双方の通信アーキテクチャーの相違、セキュリティ確保のための通信チ

ャンネルの相違等が原因となり、共通標準化に関する課題解決に至らず合意形成が出

来なかった。双方は検討結果の課題をまとめた形で 2012 年にワークショップを開催し

て協調活動を終了している。

将来の自動運転の実用化に関しては通信に関するセキュリティは非常に重要であり、

日本としてはセキュリティ確保に関する必要な要件をまとめ、各地域とセキュリティ

標準化に関する協調活動を行う必要性がある。

米国はサイバーテロへの関心が高く、標準化にも積極的に取り組んでいる。論文発

表件数においても、米国籍からの車車間通信及び路車間通信の品質やセキュリティに

関する発表件数は多い(図 4-3-8)。標準化作業は米国 IEEE1609.2 で行おうとしてい

るが、システムの制御に対してどこまで考えているかは不明である。

欧州では PRESERVE、EVITA で制御を前提とした通信系のセキュリティ標準化を検討

している。

論文発表件数(図 7-9)においては、日本や米国からの通信品質やセキュリティに

関する発表が多く見られるが、欧州では通信品質やセキュリティに関する論文発表件

数が少なくなっており、他国と比較して 10 分の 1 程度となっている。欧州では CAM、

DENM が既に標準化されており、標準化に関わる通信品質やセキュリティについて、論

文があまり出ていない可能性がある。また欧州では、車車間通信や路車間通信を利用

して運転手に対する認知支援(情報のやり取り)を行う技術に関する論文発表は他国

と同程度以上に行われており(図 7-7、図 7-8)、欧州は通信標準化についての検討が

終了し、アプリケーションに必要な技術の開発に移行しているものと考えられる。

周波数については各国毎の事情があり(日本は 700MHz 帯、5.8GHz 帯、欧米は 5.9GHz

帯)、周波数を各国で標準化することはないと想定されるため、製品化に当たっては各

国の周波数帯域に合わせた仕様を構築する必要がある。一方、プロトコルについては

日米欧が大よそ同じ仕様となっている。より安全で快適な自動運転自動車の実現に向

けて、周波数帯域の整理によるチャンネル数の増加や通信効率向上のための技術開発

が望まれる。

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目次

要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

(3)地図標準化

通信以外の標準化では地図標準化も重要となる。地図については、ISO/TC204 の専

門委員会(車両交通情報制御システム)を中心に標準化が進められており、日本が議

長国である WG3 では ITS 協調システムにおける Local Dynamic Map(動的地図)に関

するテーマも設定されている(表 1-3-5)。また欧州においても WG18にて Local Dynamic

Map の標準化を進めており、他の車両の経路予測や障害物の正確な位置特定に活用す

るとしている。議長国である日本が先導して地図の標準化を積極的に進めていくべき

である。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

3.固有技術、特定技術への特化の回避

≪提言詳細≫

日本の技術やシステムが世界をリードしていくためにも、自動運転自動車の普及の過

程における各国の社会環境や市場環境を視野に入れて研究開発を進めていくべきである。

将来、自動運転自動車が普及していく過程において、他国がまずは車車間通信のみ又

は自律型の自動運転自動車の研究開発を重点的に行っていくことも考え、日本は通信利

用型(特に路車間通信利用型)の自動運転自動車の研究開発だけを重視した研究開発で

は無く、自律型自動運転についても研究開発を積極的に行っていく必要がある。

また、運転支援や自動運転の精度向上のために必要な通信端末の普及について、日本

は他国に遅れを取らないような対策が必要である。

さらに、日本企業の多くは自動化レベル 3 を目指しているが、諸外国ではレベル 4 の

普及が進んでいく可能性もあり、日本においてもレベル 4 の研究開発を進めていくべき

である。

≪提言に至る経緯≫

国が異なれば社会環境や市場環境が異なるため、自動運転自動車に対するアプローチ

も異なるということに注意を払い、それらの環境にも適応できる技術をリードし続ける

ようにすることが肝要である。

(1)普及過程における各国のニーズ(自律型、車車間通信のみ利用型)への対応

日米欧では、路車間通信システムと車車間通信システムに関する実証実験が進めら

れており、将来的には通信技術を用いた自動運転自動車の普及が進んでいく可能性が

高いが、車載通信機やインフラ整備等、通信システムの普及には多くのコストや時間

が発生するため、自動運転自動車の普及が進む過程では、インフラが不要な車車間通

信のみを利用した自動運転自動車又は通信システムに依存しない自律型の自動運転自

動車の普及も考えられる。

特に米国や中国等の広大な地域では、全ての地域において(例えば郊外等)インフ

ラ整備を行うことは難しく、都市部では通信利用による自動運転を行い、郊外では自

律型による自動運転を行うといった形での自動運転自動車の普及が進んでいく可能性

も考えられる。

日本は路車間通信技術や車車間通信技術の研究開発を進めており、特許出願におい

ても路車間通信技術や車車間通信技術の出願件数は多い(図 6-12、図 6-13)。

また、日本は欧米と比較してインフラ整備が進んでおり、路車間通信システム利用

【提言4】

各国の社会環境や市場環境を視野に入れて研究開発を行い、日本の技術レベルが世界を

リードしていくべきである。その際、次のような点に留意が必要である。

(1) 日本は通信利用型(特に路車間通信依存)の開発中心だが、海外では自律型又は車

車間通信のみを利用した自動運転から普及する可能性がある点。

(2) 海外では車両への通信端末の搭載義務化が予定又は決定している点。

(3) 海外では一気にレベル 4 を目指した開発も行われている点。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

型の自動運転自動車の普及の進み易さは日本が他国をリードしている状況である。

日本はこの強みを活かすべきであるが、自動運転自動車が普及していく過程におい

て、他国がまずは車車間通信のみ又は自律型の自動運転自動車の研究開発を重点的に

行っていくことも考え、日本は通信利用型(特に路車間通信利用型)の自動運転自動

車だけを重視した研究開発では無く、インフラに依存しない自動運転自動車について

も研究開発を積極的に行っていく必要がある。

論文発表件数においても、欧米では車載センサによる認知に関する発表件数が多く

なっており、特に欧州では他国と比較して信号機情報や交通標識・路面標識、歩行者・

自転車情報に関する論文発表が 2 倍以上となっている(図 7-11)。

現在製品化されているものは、車載センサにより周辺環境を認識する運転支援シス

テムであり、特許出願においても、車載センサによる認知として、自他車位置や運転

状態(速度、制動、操舵情報等)、道路形状や構造、歩行者や自転車情報に関する出願

が多く見られているほか、信号機や、交通標識、路面・天候状況といったものを認識

する技術が出願されている(図 6-11)。このように、多くの情報を車載センサに認識

する技術開発を今後も進めていくべきである。

日本の技術やシステムが世界で孤立しないためにも、自動運転自動車の普及の過程

における各国のニーズも見据えた上で研究開発を進めていくべきである。

(2)通信端末の搭載義務化

米国では、車車間通信端末の搭載義務化を検討中であり、欧州では 2015 年 10 月ま

でに eCall(緊急時に救援機関に位置情報等を通知するシステム)の搭載義務化を採

択している。さらにロシアでは ERA GLONASS(eCall のロシア版)搭載の義務化法案が

提出されている。米国の車車間通信端末は、現時点では車両速度や位置等の情報交換

を行い衝突回避の運転支援を行うためのものであるが、将来的には自動運転に転用し

得る通信端末の搭載義務化とも考えられる。また、欧州の eCall は車載電話から救援

機関への自動通報に過ぎないが、欧州の交通の安全性を高めるために、政策と産業界

はすでに eCall の先を見据えた取り組みを始めている。前方緊急警告と交通標識認識

は、運転と交通安全を革命的に変える可能性があるものである。

しかし日本では車両に通信端末を搭載することを義務化する予定は今のところない。

車両に関わる通信インフラは、現時点で我が国は他国より進んでいると言えるが、他

国における通信端末の搭載義務化により、通信環境の優位性の逆転もあり得るため、

運転支援や自動運転の精度向上のために必要な通信端末の普及について、他国に遅れ

を取らないような対策が必要である。

(3)自動化レベル 4 の研究開発

日本企業の多くは自動化レベル 3 を目指しているが、諸外国ではレベル 4 の普及が

進んでいく可能性もある。

論文発表では、米国、中国、韓国籍において、レベル 4 に関する発表件数が約 6 割

を占めており、日本や欧州国籍(約 4 割)と比較してかなり多くなっている(図 7-4、

図 7-5)。

ただし、絶対数では、欧州国籍のレベル 4 に関する発表件数は米国籍の発表件数に

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要約

第1部

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第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

迫っている。

日本においてもレベル 4 の研究開発を進めていくべきであり、日本の技術やシステ

ムが世界をリードしていくためにも、自動運転自動車の普及の過程における各国の社

会環境や市場環境を視野に入れて研究開発を進めていくべきである。

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要約

第1部

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資料編

第6部

4.使用可能な周波数帯域の戦略的活用

≪提言詳細≫

日本では 5.8GHz が ETC や路車間通信で世界に先駆けて実用化され、新たに特性の異な

る 700MHz も使えるようになっている。700 MHz 帯の通信距離や見通し外通信を活かして、

死角における他車両や歩行者の位置や物影からの飛び出しの危険性に関する情報を事前

に入手することで、自動運転における安全性をより向上させる技術を確立し、今後市場

として期待されている新興国(東南アジア等)へのインフラ輸出をにらみ、700 MHz 帯

通信技術や、他技術(準天頂測位や動的な地図)とのパッケージ技術について研究開発

を進めていくべきである。

≪提言に至る経緯≫

日本では 5.8GHz が ETC や路車間通信で世界に先駆けて実用化され、新たに特性の異な

る 700MHz も使えるようになっており、日本では 700 MHz 帯を用いた車車間通信システム

が開発されており、路車間通信システムとの統合も検討されている。

700MHz 帯のメリットとして、通信距離(数百m)や電波の回り込み(見通し外通信)が

可能であり、都市型の混在交通や死角からの情報通信が可能であることが挙げられる。

日本ではさらに 5.8GHz 帯を用いた通信技術の開発が進められているが、5.8GHz では

通信距離が数十m程度であり電波の直進性が高く、死角や見通し外からの通信は困難で

ある。

ただし、5.8GHz 帯は広帯域であり、700MHz 帯と比較して、より直近の情報のやりとり

に向いていると考えられる。

このように 5.8GHz 帯の特性を活かして直近、見通し内の周辺環境を認識するとともに、

700 MHz 帯の通信距離や見通し外通信を活かして、死角における他車両や歩行者の位置

や物影からの飛び出しの危険性に関する情報を事前に入手することで、自動運転におけ

る安全性をより向上することが可能となる。

特許出願においても、700 MHz 帯を利用した通信技術に関する出願は日本国籍からの

み出願されており、日本の強みであることが窺える(図 6-16)。

また、700 MHz 帯を活用してより安全性を高めるためには、周辺物体(他車両や歩行

者等)の挙動推定技術の発展も必要であり、特許出願で見られる衝突可能性をモデルに

より推定するといった技術の開発を進めていくべきである(図 6-21)。

なお、欧米では 5.9GHz 帯が利用されており、日本のように 700 MHz 帯は利用されてお

らず、日本の 700 MHz 帯を活用した通信技術の欧米への輸出は困難であるが、今後市場

として期待されている新興国(東南アジア等)へのインフラ輸出をにらみ、700 MHz 帯

通信技術や、他技術(準天頂測位や動的な地図)とのパッケージ技術について研究開発

【提言5】

使用可能な周波数帯域の特性を活かして、次のような観点から通信システムの構築や施

策の促進を行うべきである。

(1)通信距離特性を活かした通信エリアの拡張

(2)見通し外特性を活かした死角領域対応技術の確立

(3)上記の帯域を用いた通信インフラの新興国への輸出

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

を進めていくべきである。

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要約

第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

5.知財戦略

≪提言詳細及び経緯≫

自動運転自動車の研究開発では、特に情報処理技術に関して業種を超えた協業関係の

構築が求められる(提言2)。グローバル化の進展を受け、国境を越えた協業関係の構築

も想定され、その成果物しての特許権を中心とする知的財産(コンテンツ、ノウハウ等を

含む)についても、従前の国内企業どうしの協業との場合とは異なる国際的な対応が求め

られることになる。

例えば、共有にかかる特許権の扱いは国ごとに相違しており、各国の制度や慣行への

対応が求められる。

また、この協業関係においては、自動車としての安全性や信頼性技術に強みのある自

動車メーカーに対して、電機メーカーや IT 企業が情報処理分野における課題解決手段を

提供する構図となり、これまでの事業構造(垂直統合型構造の自動車メーカー、水平分

業型構造の電機メーカー・IT 企業)や商習慣の相違から、権利の帰属、実施許諾や譲渡

の制限、不実施補償及びノウハウの管理等の問題が生じる可能性がある。また、自動運

転自動車の研究開発の過程で技術上の課題やデータを提供した自動車メーカーよりも、

課題解決手段を提供した電機メーカーや IT 企業が知的財産権取得のうえで優位に立つ

可能性も想定される。

さらに、技術のソフトウェア化や IT 化にともない、IT 通信業界では事例が見られる

ものの、自動車技術分野ではあまり見られなかったパテントプールへの対応に迫られる

可能性も想定される。

同時に、自動運転自動車の研究開発では、各国の社会環境や市場に応じた対応が求め

られる(提言4)。自動車技術分野は、高度な世界標準化を推進してきた分野であるが、

国や地域の実情に応じたオーダーメード型の研究開発が行われることに伴い、知的財産

権やノウハウの管理においても、技術の適用先や事業化を見据えたポートフォリオの構

築等、これまで以上に細やかな対応が求められる。

自動運転自動車や予防安全技術に対しても、NPE(Non-Practicing Entity)による特

許訴訟の提起が確認されている。自動運転自動車の市場拡大に合わせ NPE の更なる参入

や活発化も想定され、その動向についても注意を払う必要がある。

【提言6】

自動運転自動車の研究開発において要求される、業界や技術分野を超えた協業体制及び

国・地域の社会環境や市場環境を視野に入れた研究開発並びに自動運転自動車の事業化に

適合した知財戦略を採るべきである。また、この技術分野における NPE の動向にも注意を

払うべきである。

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第1部

第2部

第3部

第4部

第5部

資料編

第6部

第3節 要素技術への対応に関する提言

1.動的、高精度な環境認識技術

≪提言詳細≫

自動運転自動車にはより精緻化された地図が必要であり、高精度 GNSS による位置情報

(準天頂衛星からの測位補正情報)と、車載センサと通信技術による周辺環境情報とを

融合させて動的な地図を生成する技術(周辺環境と自車両との相対位置検出技術等)や、

これらの技術を摺合せて動的な地図を生成する技術(車載センサと通信による重複情報

のマッチング等)の研究開発を進めていくべきである。

また、高精度 GNSS や車車間・路車間通信に対応したチップを汎用デバイスに組み込ん

でいく努力が必要である

≪提言に至る経緯≫

(1)各種技術の融合

車載センサにおける認知方法として、現状ではカメラとレーザーレーダーを利用す

る技術が発展している。物体認識で優れているカメラと遠距離の物体検知に優れてい

るレーザーレーダーは今後もキーデバイスになってくると考えられる。

将来的にはより高精度な GNSS(キネマティック GNSS 等)の利用の拡大の可能性

がある。

日本の準天頂衛星システムからの測位補正情報によりセンチメートル(cm)級の誤差

にて測位が可能な高精度の GNSS が利用可能になれば、現在のナビゲーションシステム

(数十m級の誤差)では得られない高精度な位置把握が可能となる。

特許出願においては、特にカメラとレーダーのフュージョンが多くなっているが、超

音波センサとカメラを用いたものや、超音波センサとレーダーを用いたものも見られ、

各種フュージョン(どのようなセンサを組み合わせるか)について注目するべきであ

る(図 6-18)。

また、GNSS を利用した出願も多くなっている(図 6-18)。欧州国籍による高精度 GNSS

に関する出願が多くなっており、欧州では高精度 GNSS の開発が積極的に進められてい

る可能性がある(図 6-20)。

論文発表において、米国では、自動運転自動車に利用される車載センサとして、ミリ

波レーダーやマイクロ波レーダー、レーザーレーダーといったレーダーに関する論文

発表が行われており、日本や欧州とは異なる傾向である。自動運転自動車において米

国ではレーダー技術も重要であると考えられている可能性がある。

自動運転自動車における重要な技術として、動的、高精度な環境認識(動的な地図)

も想定される。例えば交差点において右左折する場合に、自車の位置や障害物の位置

【提言7】

高精度 GNSS による位置情報と車載センサ、通信技術による周辺環境情報とを融合、摺合

せて動的な地図を生成する技術の研究開発を進めていくべきである。

高精度 GNSS や車車間・路車間通信に対応したチップの汎用デバイス化を進めていくべき

である。

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資料編

第6部

が道路や周辺環境に対してどこにあるのか正確に判断できないと、どのタイミングで

ステアリングをきるべきか等の判断ができず問題となるが、高精度な GNSS と、精緻で

動的な地図を利用することにより、このような課題を解決でき、高度な自動運転が可

能となる。

動的な地図を作成するには、周辺環境における自車位置や周辺環境(他車、歩行者、

道路形状、交通標識、障害物等)をどのように認識するのかが重要である。

特許出願においては、車載センサや車車間通信、路車間通信により周辺環境を認識す

る技術が出願されており、車載センサでは他車の位置や速度、道路形状・構造、信号

機情報や交通標識、歩行者等、幅広く多くの出願があり(図 6-11)、車車間通信では

他車の位置や速度に関するものが多く(図 6-12)、路車間通信では他車の位置や速度、

道路形状・構造、信号機・交通標識等に関するものが多く出願されている(図 6-13)。

周辺環境認識において、グーグルのロボットカーのように通信を使わず車載センサ

のみで認識する技術もあり、通信に頼らず情報を得て動的な地図を作成していくこと

も考えられるが、車載センサでは認識が難しい情報を通信から得る等(例えば、他車

両の速度情報を車車間通信により得たり、信号機や交通標識情報を路車間通信により

得る等)、通信を活用して動的地図の生成や地図の精緻化を進めていくことも考えられ

る。また、通信情報を利用するためには、車載センサによる認識情報と通信による認

識情報の摺合せ技術も必要となる。

自動運転自動車では、より精緻化された地図と、高精度 GNSS による位置情報と、車

載センサと通信技術による周辺環境情報とを融合、摺合せて動的な地図を生成する技

術(例えば、車載センサと通信による重複情報のマッチング等)の研究開発を進めて

いくべきである。

(2)デバイスの汎用化

高精度な GNSS の利用拡大の可能性があるが、現時点では高価であり、汎用性も低い。

今後の自動運転の普及の観点から、各種キーデバイスの一層の価格低下が望まれる。

例えば米国では、クアルコムが 5.9GHz 帯 DSRC に対応したスマートフォンのデモを

行うなど(2013 年 10 月発表)、通信システムの開発が進められている。このような通

信大手により高精度 GNSS や車車間通信に対応したチップが組み込まれることでデバ

イスの汎用化が成されており、広く普及していく可能性がある。

日本においても、高精度 GNSS や車車間・路車間通信に対応したチップを汎用デバイ

スに組み込んでいく努力が必要である。

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第6部

2.HMI の開発の方向性

≪提言詳細≫

自動化レベル 3 では、自動運転と手動運転の切り替えが発生するが、急激な切り替え

は回避しなければならない。そのため、監視対象が機械と運転手のいずれであっても、

自動運転と手動運転との円滑な切替や、運転手と車両(機械)との調停(役割分担)に

ついての HMI 技術等、自動化レベル 3 に適した HMI の開発が重要であり、このような HMI

の開発を積極的に進めて行くべきである。

≪提言に至る経緯≫

HMI については、欧州 SMART64 プロジェクトの研究報告書では、下記のような新たな

HMI のアプローチが必要とされている。

・運転手が自動化の動作と限界を理解するのを助ける HMI コンセプト

・運転手が車両の制御に強制介入するための HMI コンセプト

・運転手にとって操作が理解できかつ容易に使用可能な異なった自動化を統合する外部

HMI コンセプト

・車両がどのような反応をするかを交通弱者や非自動化車両が知るための HMI コンセプ

また、NEDO のエネルギーITS においても、自動運転を目指した HMI 技術の開発が進め

られている。

自動化が進む(運転支援の度合いが高くなる)程、運転手の運転意識の低下が懸念さ

れるため、実用化に際しては運転手モニター技術が必須になり、HMI については、現状

では運転手を監視する技術(居眠り防止等の予防安全技術)が発展しているが、より自

動化が進むことで運転手が車両(機械)を監視する技術(自動運転の安全な運行状況等

のモニタリング)が発展する可能性がある。

特に、特定の交通状況下において自動運転を行うような一部自動運転自動車が普及す

ると、自動運転と手動運転との切替えをどう行うか、運転手と車両(機械)との調停(役

割分担)が重要となってくると考えられる。

また、完全な自動運転自動車の場合は手動運転が介在しないため、運転手と車両(機

械)との調停や切替えに関するシステムが不必要となると考えられる。

このように、自動運転のレベルごと、監視対象ごとに必要とされる HMI は異なってく

ることが考えられ、 適な HMI の開発が重要である。

以下に、監視対象ごと、自動運転のレベルごとに必要となる HMI を示す。

自動化レベルは、0:運転手によるコントロール、1:運転支援(1 つ)、2:高度運転

支援(複数)、3:一部自動運転、4:完全自動運転とした。

なお、レベル 3:一部自動運転とは特定環境下における自動運転を指し、レベル 4:完

【提言8】

自動運転と手動運転との円滑な切替や、運転手と車両(機械)との調停(役割分担)等、

自動化レベル 3 に適した HMI の開発を積極的に進めて行くべきである。

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資料編

第6部

全自動運転とは環境を特定しない自動運転を指す。

また、レベル 3、4 は運転手監視下と運転手不在を区別していない。

(1)監視対象:運転手(機械による監視)

レベル 1-2 :

LKAS、ACC、PCS 等の自動運転の基礎となる支援システムは、運転手を直接の監視

対象としないので、基本的には HMI 不要。予防安全システムの一つとして、運転手の

居眠り、脇見等を検知し、警告する HMI は有りうる。

レベル 3 :

一部自動運転実行中は、円滑な手動運転への切替えを可能とするため、運転手の状

態を監視し、切替えに先立って警告する HMI が必要。

レベル 4 :

運転手監視の場合:運転手の居眠りや脇見等を検知して警告する HMI は必要。

運転手非監視の場合:運転手の居眠りや脇見等を検知して警告する HMI は不要。

(2)監視対象:機械(運転手による監視)

レベル 1-2 :

運転手主権のもと各支援システムを動作させていて、運転時運転手は安全確認を要

するため、機械の監視までは困難であるが、運転支援に関する情報の提示内容が詳細

化される可能性が高く、短時間で支援内容を確認できる HMI が必要となる。また、一

般的な機械故障警告用の HMI も考えられる。

レベル 3 :

一部自動運転実行中は主権が機械に有り、機械の正常動作と目標制御の状態の監視、

異常動作の監視、機械の対応限界の監視、一般的な機械故障の監視を行う。これらを

可能とする HMI が必要。

レベル 4 :

運転手監視の場合:機械の正常動作と目標制御の状態の監視、異常動作の監視、機

械の対応限界の監視、一般的な機械故障の監視を行う。これらを可能とする HMI が必

要。

運転手非監視の場合:常時主権が機械に有り、運転手による監視、HMI は不要。一

般的な機械故障の警告用の HMI は有りうる。

いずれの監視対象においても、自動運転レベル3についてのHMIの開発が重要である。

特許出願においても、運転手を監視する HMI が多くなっており(図 6-23)、近年では

自動運転と手動運転の切り替えに関する出願が増えてきている(図 6-22)。

また、現状はレベル 1 での HMI に関する出願が多くなっており、

レベル 2 における HMI は、HMI における監視(機械→運転手)、HMI 切替自動運転→手動

運転、HMI 調停(機械⇔運転手)について出願があり、

レベル 3 における HMI は、HMI における監視(機械→運転手)、HMI 切替手動運転→自動

運転について出願があり、

レベル 4 における HMI は、HMI における監視(機械→運転手)、HMI 切替手動運転→自動

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第4部

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第6部

運転、HMI 切替自動運転→手動運転、HMI 調停(機械⇔運転手)、HMI 調停(機械⇔運転

手)について出願がある。レベル 4 においても監視(機械→運転手)の出願があるのは、

運転手状態(車酔い等)を監視して自動運転の運転制御を行うもの等があり、レベル 4

における自動運転自動車においても特に運転手の体調等を監視する HMI 技術が必要であ

ると考えられる。

現在市場に普及しているものはレベル 1 のシステムであるため、レベル 2~4 における

HMI の研究開発はこれから活発化するものと思われる。(図 6-24)

また、自動運転のレベルにかかわらず、車両がどのような反応をするかを周辺の交通

弱者や非自動化車両に知らせるための HMI の開発も重要である。

なお、ユーザー(運転手)の使い易さの観点では、こうした HMI がメーカーによって

大きく異ならないようにすべきである。

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第1部

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第3部

第4部

第5部

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第6部

3.予測推定技術、制御アルゴリズム、運転手の運転個性

≪提言詳細及び経緯≫

自動運転や運転支援システムでは、走行路前方等における障害物との衝突可能性の判

断や、走行するための走行環境の認識が重要な課題となる。これら衝突可能性や走行環

境の認識を行うために今後高度化してくべき技術を以下のとおり示す。

(1)センシング技術

車載センサを使って衝突対象や障害物、周辺環境を検出する技術である。車載センサ

の高度化によって、対象物のより精密な検出を行うことが可能となる。

特許出願では、自動運転自動車に利用される車載センサとして、特にカメラや GNSS

に関する出願が多くなっており(図 6-19)、こういったセンサが今後も利用されていく

と考えられる。

(2)環境認識技術

センシングされた情報に基づいて、他車両や、歩行者、障害物、信号機、標識、道

路構造等の意味理解を行い、周辺環境を認識する技術である。

信号機の色や、標識の内容判断までの意味理解を行うためには環境認識技術の高度

化が必要となる。

特許出願においては、車載センサにより他車位置や、歩行者、落下物等を認識する

技術に関する出願が行われている(図 6-17)。

(3)モデル化

他車両や歩行者等の動きをモデルにより予測し衝突可能性等を判断する技術である。

特許出願では、衝突可能性をモデルにより推定する技術に関して、日欧による国籍

の出願が他国籍による出願と比較して多く見られている(図 6-21)。

(4)ビッグデータ

車両速度、移動軌跡、交通量統計、事故事例等の蓄積データであり、今後ますます

の活用が期待されている。例えば、車両の急ブレーキデータを分析して危険箇所を把

握し、自動運転の安全な走行に活かしたり、車両の交通流を分析し制御を行うことで

渋滞緩和やそれに伴う CO2 排出を低減することが可能となる。

(5)予測推定技術

(1)~(4)を活用して予測推定技術を高度化するべきである。自動運転を行う

際の自車両の自己位置の推定や、周辺の障害物(他車両や歩行者含む)の動きを予測

推定(軌道予測)する技術等が挙げられる。

(6)制御アルゴリズム

(5)の予測推定技術を活用した制御アルゴリズムの開発が望まれる。予測推定技

術により推定された自車両の位置や周辺環境に基づいて、操舵、制動、駆動力を制御

し、自車両の速度や走行軌跡等を決定する制御アルゴリズムである。(1)~(5)で

得られた情報を制御に的確に反映させることで、より安全且つ快適な自動運転自動車

【提言9】

センシング技術、環境認識技術、モデル、ビッグデータを活用した予測推定技術の高度

化、また、その予測推定技術を活用した制御アルゴリズムの開発を進めていくべきである。

さらに、運転手の運転個性への適合を考慮した技術開発を進めていくべきである。

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第4部

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第6部

を実現することができる。

(7)運転手の運転個性

運転の自動化に伴い運転手の運転個性に適応する自動運転や運転支援の技術が重要

となる。運転手の日常運転を学習し、自動運転の走行軌跡や車間距離等に反映させて

いくことが考えられる。

特許出願において、運転嗜好の判断に関する技術で日本の出願件数は他国籍と比較

して多く見られており(図 6-21)、運転手の運転個性に関する技術開発(運転行動の

モデル化等)について今後も積極的に進めていくべきである。