28p-pm016 吸収促進剤による薬物の経 吸収性の よ 有...

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28P-pm016 吸収促進剤による薬物の経吸収性の改善効かな吸収促進剤開のたの基検討 村 1 ,杉山 1 ,坂本 直子 1 木 伸光 1 安行 美智 1 大輔 2 林 2 ,勝見 英正 1 ,坂根 稔康 1 ,山本 昌 1 1 京都薬大, 2 就実 大薬) 【目的】薬物の経鼻吸収は経口吸収に比べて良好かつ速やかである。しかし、薬 物によっては経鼻吸収性は十分ではなく、このような薬物については吸収促進剤 の利用が考えられる。吸収促進剤は薬物吸収性を十分に改善する有効性に加え、 高い安全性も備える必要があるが、これまでは LDH やタンパク漏出が障害性の指 標として測定されてきた。しかし、実用化を考えた場合、膜障害性の他、投与部 位の生理機能も含めた総合的な安全性評価が重要である。鼻腔の持つ生理機能と して、嗅覚、感染防御機能を担う繊毛運動 (MC) があるが、本研究では MC に注 目し、各種吸収促進剤が MC に与える影響を検討した。同時に、モデル薬物 FD4 に対する吸収促進効果を in vivo 動物実験in vitro Calu-3 単層膜透過実験により評 価し、各吸収促進剤の有効性・安全性を総合的に評価した。 【方法】MCの評価 :ラット鼻中隔粘膜に蛍光微粒子を滴下し、蛍光顕微鏡により その動きを観察した。移動距離から移動速度を算出し、MCの指標とした。動物実 FD4 と吸収促進剤を含む投与液を点鼻投与又は鼻腔内灌流した。経時的に採 血を行うとともに、実験終了後の鼻腔洗浄液又は灌流液中のLDH活性、タンパク 濃度を測定した。Calu-3 透過実験 :定法により培養したCalu-3 単層膜を用い、促 進剤濃度やapical側薬液体積などを変化させ、FD4 の透過性変化を測定した。 【結果・考察】MC は吸収促進剤により程度は異なるものの低下した。また、FD4 及び吸収促進剤を点鼻投与した場合、顕著な吸収促進効果は観察されなかった。 そこで鼻腔内灌流を行ったところ、吸収促進効果は顕著に増大した。Calu-3 膜透 過実験で apical 側薬液体積を変化させたところ、薬液体積に依存して透過促進効果 も変化し、吸収促進剤自体の動態が重要である可能性が示唆された。

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28P-pm016吸収促進剤による薬物の経鼻吸収性の改善:より有効かつ安全な吸収促進剤開発のための基礎的検討◯苗村 ひとみ1,杉山 綾香1,坂本 直子1,佐々木 伸光 1,安行 美智1,井上 大輔2,古林 呂之2,勝見 英正1,坂根 稔康1,山本 昌1(1京都薬大,2就実大薬)

【目的】薬物の経鼻吸収は経口吸収に比べて良好かつ速やかである。しかし、薬物によっては経鼻吸収性は十分ではなく、このような薬物については吸収促進剤の利用が考えられる。吸収促進剤は薬物吸収性を十分に改善する有効性に加え、高い安全性も備える必要があるが、これまでは LDHやタンパク漏出が障害性の指標として測定されてきた。しかし、実用化を考えた場合、膜障害性の他、投与部位の生理機能も含めた総合的な安全性評価が重要である。鼻腔の持つ生理機能として、嗅覚、感染防御機能を担う繊毛運動 (MC) があるが、本研究では MC に注目し、各種吸収促進剤が MC に与える影響を検討した。同時に、モデル薬物 FD4

に対する吸収促進効果を in vivo動物実験、in vitro Calu-3単層膜透過実験により評価し、各吸収促進剤の有効性・安全性を総合的に評価した。【方法】MCの評価:ラット鼻中隔粘膜に蛍光微粒子を滴下し、蛍光顕微鏡によりその動きを観察した。移動距離から移動速度を算出し、MCの指標とした。動動物実験:FD4 と吸収促進剤を含む投与液を点鼻投与又は鼻腔内灌流した。経時的に採血を行うとともに、実験終了後の鼻腔洗浄液又は灌流液中のLDH活性、タンパク濃度を測定した。Calu-3 透過実験:定法により培養したCalu-3 単層膜を用い、促進剤濃度やapical側薬液体積などを変化させ、FD4の透過性変化を測定した。【結果・考察】MCは吸収促進剤により程度は異なるものの低下した。また、FD4

及び吸収促進剤を点鼻投与した場合、顕著な吸収促進効果は観察されなかった。そこで鼻腔内灌流を行ったところ、吸収促進効果は顕著に増大した。Calu-3 膜透過実験で apical側薬液体積を変化させたところ、薬液体積に依存して透過促進効果も変化し、吸収促進剤自体の動態が重要である可能性が示唆された。