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製錬副産物からのレアメタル回収技術開発 金属資源技術部生産技術課 滝口 浩之 平成29年8月29日(火) 平成29年度第4JOGMEC金属資源セミナー

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    製錬副産物からのレアメタル回収技術開発

    金属資源技術部生産技術課

    滝口 浩之

    平成29年8月29日(火)

    平成29年度第4回JOGMEC金属資源セミナー

  • レアメタル回収技術開発(製錬副産物からのレアメタル回収技術)のポイント

    ◆ 事業の概要 ◆非鉄製錬副産物中にはアンチモン、セレン等レアメタル元素が含まれ、特にほぼ全量中国からの供給(本邦需要

    量約6,000t/年の約90%)に依存しているアンチモンは、国内の非鉄製錬所から発生するスラグや煙灰等の副産物に含有され、一部は回収されているものの、国内需要に対応するための回収技術は未だ確立していない。このため、非鉄製錬プロセスから発生する副産物から効率的にアンチモンを回収するための技術を確立することに

    よって、アンチモンの中国からの輸入依存量を低減し、国内産業の資源安定供給の確保を図る。

    1.事業期間と予算

    ・期間:平成25~28年度(4ヵ年)・予算:委託費、 28年度0.7億円、27年度0.8億円・委託先:DOWAメタルマイン㈱他

    2.事業目標 :国内鉛製錬所1ヶ所におけるアンチモン回収量を現状から

    30%向上(約480t/年⇒ 約624t/年)させることを目指す。3.事業内容 :

    アンチモン原料として未利用であった製錬副産物から、効率的にアンチモンを濃縮・分離するプロセスを開発し、既存のアンチモン回収プロセス等と組み合わせることにより、総合的にレアメタル(アンチモン、セレン等)の回収量を向上する。

    アンチモン

    1

    4.実績 :乾式法のより一層の効率化を行うとともに、湿式法と組み合わせることで目標であるアンチモン回収量30%向上を達成できるプロセスを構築し、経済性があることを確認した。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Antimony-4.jpg

  • 2概要

    ・非鉄製錬で発生するスラグや煙灰からアンチモン等を回収する技術開発・実証を行う。背景・アンチモンは中国からの輸入依存量が高い。・現在は国内製錬所から発生する副産物の一部からしかSbの回収を行っていない。・本事業ではこれまで対象としていなかった製錬副産物からSbを回収するプロセスの技術開発を行う。

    目標:製錬所一か所当たりのSb回収量を480トン/年から30%増産する。事業期間:平成25年度から4年間

    はじめに

    アンチモン地金

  • アンチモンについて(2015) 3

    用途主要用途は難燃助剤(三酸化アンチモン)。特殊鋼向け、バッテリー電極(アンチモン金属)

    製錬副産物からSb回収技術を確立することで、アンチモンの輸入依存量を低減し、国内産業への資源の安定供給確保を図る。

    76%

    4%

    4%

    3%3% 10%

    鉱石生産量 147,121トン

    中国

    ロシア

    タジキスタン

    トルコ

    ボリビア

    その他

    76%

    15%

    1%8%

    塊・粉の輸入相手国 5,138トン

    中国

    ベトナム

    インド

    その他

    (出典)JOGMECマテリアルフロー2016

    Graph1

    中国

    ロシア

    タジキスタン

    トルコ

    ボリビア

    その他

    売上高

    鉱石生産量 147,121トン

    76%

    10%

    76

    4

    4

    3

    3

    9

    Sheet1

    売上高

    中国 チュウゴク76

    ロシア4

    タジキスタン4

    トルコ3

    ボリビア3

    その他 タ9

    Graph1

    中国

    ベトナム

    インド

    その他

    日本の輸入相手先(5,138トン)

    塊・粉の輸入相手国 5,138トン

    76

    15

    1

    8

    Sheet1

    日本の輸入相手先(5,138トン) ニホンユニュウアイテサキ

    中国 チュウゴク76

    ベトナム15

    インド1

    その他 タ8

  • 再委託

    4経済産業省 鉱物資源課

    JOGMEC金属資源技術部 生産技術課

    DOWAメタルマイン㈱ 東北大学 宮崎大学

    秋田県資源技術開発機構

    東北大学

    有識者による委員会

    実施体制図

    共同研究

    委託

    共同研究委託

    再委託

    予算規模:H25年度(0.80億円)H26年度(0.79億円)H27年度(0.80億円)H28年度(0.72億円)

  • 5技術開発の全体像

    鉛製錬、銅製錬系から出てくるSbを含有する製錬副産物を対象原料とする。

    乾式法によるSb濃縮DOWAメタルマイン㈱(ガス酸化精製法、ハリス法)

    湿式法によるSb濃縮DOWAメタルマイン㈱(秋田県資源技術開発機構、東北大学)(アルカリ浸出、 F浴浸出、KOH浴浸出など)

    代替法によるアンチモン濃縮技術

    の開発(東北大学、宮崎大学)

  • 6

    溶解

    脱Te、脱As

    粗鉛

    脱Cu

    脱Sbハリス基本反応式(420℃)2Sb+2.5O2+6NaOH→2Na3SbO4+3H2O2Sb+2NaNO3+4NaOH→2Na3SbO4+N2+2H2O

    脱Sb粗鉛

    450℃、NaOHTe、As≦0.01%

    340℃、降温Cu≦0.05%

    ハリス法

    ハリス法は工程が多く設備が大きくなるが、高い品位のSb濃縮物を得ることができる。またTeの濃縮物を回収することも可能である。

    ハリス法とは、NaOHを添加し、脱SbハリスケーキとしてSbを分離する方法である。

    脱Te,Asハリス

    脱Cuハリス

    脱Sbハリスケーキ

  • ガス酸化精製法 7

    基本反応式Pb+0.5O2→PbO3PbO+2Sb→3Pb+Sb2O3PbO+Sb2O3→PbO-Sb2O3

    酸素流量の向上(酸素2点吹き、先端絞りランス)により、酸素効率96%、脱Sb速度0.13%-Sb/hを達成した。またSb濃縮物の品質向上(品位29%→44%、Sb3+比率87%→97%)にも成功した。

    ガス酸化精製法とは、酸素ガスを炊込みPb-Sb-OスラグとしてSbを分離する方法である。(本方法はハリス法に比べて単純な設備で実施できるが、Sb品位はハリス法より低い濃縮物で不純物は多くなる。)

  • 乾式法によるSb濃縮技術の開発 8

    粗鉛からの乾式法によるSb濃縮の技術は、 Cost、Delivery等の面からガス酸化精製法を選定し、実証試験を実施。

  • ソーダ精製

    9

    F浴浸出法により合金用途の品質規格を満足する。Sbメタルの製造が可能であることを実証することができた。

    F浴浸出法

    破砕・粉砕

    硫酸洗浄

    Pb-Sbスラグ

    F浴浸出

    還元溶錬

    Sbメタル(合金用途)

    中和

  • 10KOH法

    F浴浸出により回収したSbメタルでは、合金用の規格は満足するが、Sbの需要の大半を占めるSb2O3向けの規格に対応できないため、KOHを用いた新規プロセスによりSbの高純度化を行うことができた。

    還元

    粉砕

    Pb-Sbスラグ

    Sb浸出

    Na置換

    Sbメタル

    粗Sbメタル

    KOH法

  • 11

    酒石酸系浸出では、電解採取により電着Sbを溶解→徐冷またはソーダ精製することにより、Sb2O3用途の品質規格を満足するSbメタルの製造が可能であることを実証できた。またPb-Sbスラグも処理可能であることが分かった。

    酒石酸系浸出

    ※秋田県資源技術開発機構、東北大学( DOWAメタルマインより委託)の基礎研究をもとに実施

    前処理

    Sb浸出

    原料

    浄液

    電解採取

    Sbメタル

    NaOHを用いてAsを浸出除去。

    酒石酸系浸出(酒石酸Na、NaOH)

    Pb,Bi,Te除去

  • 12事業化に向けての検討

    パターン①ではSbメタルを624t/年(回収率87%)、パターン②-1、②-2、③ではSbメタルを638t/年(回収率89%)を生産することができる。

    乾式法によるSb濃縮ガス酸化精製法

    湿式法によるSb濃縮・パターン①F浴浸出・パターン②-1F浴浸出: Sb濃縮物酒石酸系浸出:Sb含有スラグ、Sb含有煙灰・パターン②-2酒石酸系浸出・パターン③KOH法

  • 13

    変動費の大半を薬剤費が占めるが、いずれのパターンでも売上高>売上原価となり、投資回収が可能。

    経済性評価

  • 14

    いずれのパターンでも、現状のSb価格であれば収益が見込めるため、状況に応じてプロセスを選定。

    現時点での優先順位は、①>②-2>②-1=③

    経済性評価

  • 15

    総合的に優位な静置式加熱炉を選定し、実操業まで展開

    原料は処理後もそのままの形を維持しており、機械的な飛散はほとんどなし。できた製品(Sb濃縮物)は検出下限以下までSeが低下し、Sb原料として処理可能になった。

    Seが高くて処理が進んでいなかったSe含有Sb残渣からSeを分離・回収し、残ったSb濃縮物については、Sb原料とする。

    Sb以外のレアメタル回収(Se回収)

  • 16

    H27年4月~H28年12月で約350t-wetのSe含有Sb残渣について脱Se処理を実施し、約8tのSeを回収。Se分離後のSb濃縮物もSb原料として処理継続中。

    Sb以外のレアメタル回収(Se回収)取扱い原料の変更に伴い、H27年4月より加熱炉が1基遊休となったため、本件で得られた知見をもとにSe含有Sb残渣からのSe分離処理を実施。

  • 宮崎大学共同研究:アンチモン濃縮物を得るための新規抽出剤および吸着材の開発およびその応用に関する基礎研究

    目的:有機相と水相において、Au、Sb/As、Seなどの金属イオンを選択的に回収する。

    17

    抽出剤 吸着剤30℃,24h

    有機相(15cm3)0.1-0.5 mol/dm3 toluene水相(15cm3)Metal 1×10-3 mol/dm3pH(1M NH4NO3)HNO3,H2SO4,HCl

    分析は原子吸光光度計およびICP発光分析装置を用いて測定した。

    吸着材:0.05g体積15cm330℃,24h,120rpm

    代替法によるアンチモン濃縮技術の開発

  • 0

    20

    40

    60

    80

    100

    -0.5 0 0.5 1

    Extr

    actio

    n pe

    rcen

    tage

    [%]

    log[HCl]eq

    Sb(III)

    As(III)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    -0.5 0 0.5 1

    log[HCl]eq

    Sb(V)

    As(V)

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    -0.5 0 0.5 1

    log[HCl]eq

    Sb(V)

    As(III)

    18DDCMP

    抽出剤によるSb(Ⅲ,Ⅴ)の回収

    N NO

    NNO

    Sb(Ⅲ)-As(Ⅲ)混合系 Sb(Ⅴ)-As(Ⅲ)混合系 Sb(Ⅴ)-As(Ⅴ)混合系

    抽出剤:0.01 mol dm-3溶媒:toluene溶媒のみによるSb(Ⅲ),As(Ⅲ)の抽出を含む。

  • 19

    DBC (ジアルキルカテコール)を用いて、高濃度の塩酸溶液において、SbとAsの完全分離が可能である。

    OHOH

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    -1 -0.5 0 0.5 1

    Extr

    actio

    n pe

    rcen

    tage

    [%]

    log[HCl]eq

    抽出剤:0.5 mol dm-3溶媒:toluene

    DBC(ジブチルカテコール)

    抽出剤によるSb(Ⅲ,Ⅴ)の回収

  • 20

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1log[HCl]eq

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1log[H2SO4]eq

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    0 2 4 6 8 10

    Adso

    rptio

    n pe

    rcen

    tage

    [%]

    pHeq

    Sb(III)As(III)As(V)Se(IV)Se(VI)

    CACを用いて、下記の各溶液において、Sb(Ⅲ,Ⅴ)とAs (Ⅲ,Ⅴ)の混合溶液から、Sb(Ⅲ,Ⅴ)のみを高選択的に吸着できる。さらに脱離が容易なため繰返し使用できる。

    HCl H2SO4pH(NH4NO3:1 M)

    CAC(クエン酸キトサン誘導体)

    吸着材によるSb(Ⅲ,Ⅴ)の回収

  • 21

    海老や蟹の殻から得られるchitosanを原料として、キトサン誘導体を合成した。CACによりSb(Ⅲ)を高選択的に吸着できる。

    chitosan

    CAC(クエン酸キトサン誘導体)

    キチン・キトサンを基体としてキトサン誘導体の合成及び吸着選択性

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1Ad

    sorp

    tion

    perc

    enta

    ge [%

    ]log[HCl]eq

    CACchitinCLACGLCMAC

    HCl系、金属濃度:Sb(Ⅲ)0.1mol dm-3

    + クエン酸O

    NH2

    OH

    CH2OH

    O

    n

    加熱

  • • 製錬副産物からのアンチモン濃縮方法として、乾式法であるガス酸化精製法を最適な手法として選定した。

    • アンチモン濃縮物からのアンチモン回収方法として、F浴浸出法が経済性を考慮すると最も良いという結論とした。しかしながらF浴浸出法以外の、酒石酸系浸出やKOH法においても経済性があるという評価を得た。

    • 以下の基礎研究を行い、代替法によるアンチモン濃縮技術を得た。(1)アルカリ焙焼法によってシリケートガラス質の難処理アンチ

    モン含有スラグからSb等の有価金属を回収するフローを選定した。

    (2)新規抽出剤としてSb回収に優れたDDCMPや吸着材のCACを開発した。

    22まとめ

    スライド番号 1スライド番号 2スライド番号 3アンチモンについて(2015)スライド番号 5スライド番号 6スライド番号 7ガス酸化精製法�乾式法によるSb濃縮技術の開発�スライド番号 10スライド番号 11スライド番号 12スライド番号 13スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16スライド番号 17スライド番号 18スライド番号 19スライド番号 20スライド番号 21スライド番号 22スライド番号 23