平成２９年度 新潟薬科大学

応用生命科学部 応用生命科学科

チャレンジ＆コミュニケーション入試

実験課題

「中和滴定による食酢中の酢酸濃度測定」

中和滴定による食酢中の酢酸濃度測定

【目的】 中和とは酸の水素イオン（H+）の量と塩基の水酸化物イオン（OH-)の量が等しく

なった場合に、水と塩を生じる現象である。水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和

滴定によって、試料中の酸の濃度を測定することができる。

本実験は水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により、食酢中の酢酸濃度

を求めることを目的とする。食酢中には種々の酸が含まれているが、ここでは食酢に

含まれる全ての酸が酢酸であると仮定する。また、食酢の密度は 1.0 g/cm3 とする。

酸 ＋ 塩基 → 塩 ＋ 水 酢酸 水酸化ナトリウム 酢酸ナトリウム

CH3COOH + NaOH → CH3COONa + H2O

酢酸と水酸化ナトリウムの中和滴定曲線

右図は 0.10 mol/L 酢酸（CH3COOH）水溶

液 10 mL を 0.10 mol/L 水酸化ナトリウム

（NaOH）水溶液で滴定した場合の試料溶液

中の pH の変化を示した図である。

0.10 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液の滴定

量が10 mL に達する前後で、pHが6から12に急

激に変動する。この急激な変動のポイントが中

和反応が終わった点（中和点）に対応する。

中和点に達するまでに滴下した水酸化ナトリウ

ム水溶液の体積を正確に測定することによって、

試験溶液中の酢酸モル濃度を正確に算出す

ることが可能となる。

中和点と指示薬

フェノールフタレイン（アルカリ検出の指示薬）

酸性溶液 無色透明

水酸化ナトリウム水溶液を用いて酸の試料溶

液の滴定を行った場合の中和点は、pHが急激

に変動する点（pH 6→12）である。この部分に変

色域をもつ指示薬を利用することにより、中和反

応が終ったことを正確に決定することができる。

本実験では酸性溶液で無色透明、アルカリ

溶液で赤色が濃くなるフェノールフタレイン溶液を

用いる。

アルカリ溶液 赤紫色（濃い桃色）

pH8以上で赤色が濃くなる

本試験における課題

本試験では、初めに必要な試薬と実験器具一式、試料の食酢が与えられる。この食酢中の酸の濃度を求めることが課題である。 実験手順は、 1) 与えられた食酢を10倍に希釈する。 2) 10倍に希釈した食酢を水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。 3) 3 ～ 4回滴定を行い、滴定量の平均値を算出する。 4） 最初に与えられた食酢の濃度を計算する。

次項より、操作の詳細を記す。

使用する試薬と実験器具（１）

食酢とビーカー

ビュレット （50 mL）

フェノールフタレイン溶液

0.10 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液 蒸留水とスポイト付きピペット

食酢

使用する実験器具（２）

メスフラスコ （100 mL）

ホールピペット （10 mL）

安全ピペッター 三角フラスコ （50 mL） ロート

目の高さを液面 [meniscus, 凹（凸）面]に合わせる。液面の湾曲している底部の目盛を最小目盛の1/10までの値を読む。例えば、下の写真の場合は、26.54 mL、26.55 mL、26.56 mLのどの値であるかについては自分で判断する。

実験操作Ⅱ ビュレット目盛の読み方

26

27

26.55

－注意事項－ 安全ピペッターにホールピペットを取り付ける場合、ピペットの先をなるべく短く持って取り付けて下さい。ホールピペットの先を長く持って取り付けようとした場合、ピペットが破損し、大怪我をする危険性があります。十分に注意して下さい。

安全ピペッターとホールピペットの接続 実験操作Ⅲ

安全ピペッターにホールピペット（10 mL）を取り付ける。

食酢を10 mLより少し多めにビー

カーに加える。安全ピペッターを取り

付けたホールピペットを用い、安全ピ

ペッターのダイヤルを回して食酢を吸

い上げる。この時、ビーカーを少し傾

けて液を片寄らせる。ホールピペット

の標線に合わせ、正確に10 mLを量

りとる。ホールピペットで吸い上げる

時には、空気を吸い上げないように

注意する。

実験操作Ⅳ 食酢試料の準備

正確に量りとった食酢10 mLを100 mLのメスフラスコに移す。メスフラスコを

倒さないように注意して、ピペットの先端をメスフラスコに入れ、ダイヤルを戻し

て食酢をメスフラスコに移す。

メスフラスコを傾けて、ビーカに入っている蒸留水をメスフラスコの標線の手

前まで加える。

実験操作Ⅴ １０倍希釈食酢試料の調製 （１）

スポイト付きピペットを用いて蒸留水を標線まで加える。メスフラスコに栓をして、栓の部分を指でしっかり押え、メスフラスコを上下逆にして軽く振り混ぜ、溶液を均一にする。

実験操作Ⅵ １０倍希釈食酢試料の調製 （２）

調製した10倍希釈食酢試料10 mLを新しいホールピペットを用いて正確に量りとり、三角フラスコに移す。

実験操作Ⅶ 中和滴定の準備（１）

三角フラスコにフェノールフタレイン溶液を2～3滴加え、その後、 三角フラスコの下に白い紙を置き、ビュレットをセットする。

実験操作Ⅷ 中和滴定の準備（２）

ビュレットの目盛の値（水酸化ナトリウム水溶液の量）を正確に読みとり記録する。水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ滴下し、三角フラスコを軽く振り混ぜる。滴下直後には薄ピンク色になるが、試料溶液が酸性であるため、すぐに消える。

実験操作Ⅸ 中和滴定（１）

水溶液の赤色が消えにくくなったら、注意深く水酸化ナトリウム水溶液を一滴ず

つ滴下する。中和点になると、滴下後に三角フラスコを軽く振っても薄ピンク色が

消失しなくなる。最後の一滴を見つけ出せるように注意深く滴下する。中和点に達

したら、滴下をやめ、ビュレットの目盛りを読み、正確な値を記録する。その後、水酸

化ナトリウム水溶液の消費量を求める。

実験操作Ⅹ 中和滴定（２）

26.55 mL

中和点以前→無色

中和点→薄ピンク（成功）

中和点以降→赤（失敗）

実験操作Ⅺ 中和点の見つけ方

① 中和滴定は３ ～ ４回行い、水酸化ナトリウム水溶液の 消費量の平均値を計算する。 ② 中和滴定により得られた水酸化ナトリウム水溶液の消 費量の平均値から、10倍希釈食酢試料溶液中の 酢酸のモル濃度（mol/L）を計算する。 ③ 得られた酢酸のモル濃度（mol/L）から、食酢中の酢酸 の質量パーセント濃度(%)を計算し、有効数字2けたの 値を求める。ただし、食酢に含まれる全ての酸が酢酸 （一価の弱酸）であると仮定し、食酢の密度を 1.0 g/cm3 とする。

実験データの処理

実験データの処理（計算例）

1回目 7.52 mL、2回目 7.58 mL、3回目 7.57 mL、4回目 7.53 mL ⇒ 平均 7.55 mL 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液 の平均滴下量は 7.55 mL 食酢中の酢酸濃度を X mol/L とすると、 C V = C’V’ (C ： 濃度 mol/L，V : 容量 mL) より

したがって、食酢中の酢酸濃度は、 X = 0.0755 (mol/L) 食酢中の酢酸含有率は、酢酸の分子量が60.05 gであるので、 0.0755 mol/L = 0.0755 ×60.05 g/L → 4.534 g/L → 0.453 g/100 mL → 0.453％

X (mol/L) × 10 (mL) = 0.1(mol/L) × 7.55 （mL）

試料を10倍に希釈しているため、食酢中の酢酸の含有率は、4.53％となる。

①

②

③