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2019. 3 4 12 1 30 30 30 2 担当 カンキツ JA香川県 東部果樹振興センター 上原 佑介 3 4

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1カンキツ類の状況

平成30年産の温州ミカンも、長期

貯蔵の普通温州を残すのみとなりま

した。平成30年産も前年同様、収穫ま

での激しい気象変動によって果実体

質が非常に弱く、クエン酸濃度の低

下が顕著であるため貯蔵性が低い傾

向です。全国情勢としても、他県主要

貯蔵産地も果実体質の弱さから前倒

しでの出荷となりました。また、暖冬

も影響し、長期貯蔵は困難と思われ

ますので、果実の状況を点検し、果実

にあわせた適期の出荷によってロス

果軽減に努めましょう。

中晩柑類は、全体的に糖度がやや

高く、クエン酸濃度の低下が早い傾

向です。加えて、暖冬の影響で気温が

やや高めで推移していますが、万一、

急な寒波の襲来により冷気の停滞す

るような園地を中心に苦味、虎斑症

(ヤケ)、ス上がりが発生し品質が著

しく害する懸念がありますので、気

象条件、果実の状態等を確認し、早め

の収穫を行いましょう。

温州ミカン、中晩柑類ともに、収穫

後、平成30年産が豊作、不作樹にかか

わらず葉色の黄変した樹が見られま

す。収穫後の施肥や液肥の葉面散布

を行い、樹勢と葉色の回復を図りま

しょう。

2中晩柑類の管理

⑴収穫

不知火やせとか、清見など、収穫期

をむかえる品種は、果実内容(糖度・

クエン酸濃度)を確認するとともに、

食味検査を行い、適期の収穫を行い

ましょう。

①不知火

ブランド果実「デコポン」となる

ためには、果実の品質が、糖度計示

度13.0以上、クエン酸濃度1.

00%以下が条件です。本年産は糖

度が高い傾向であり、クエン酸濃度

も早くから低下しています。食味検

査等により、適期の収穫時期を逃さ

ないよう、果実の状態を確認しま

しょう。ただし、糖度の低い園で、品

質の低下や果皮障害果の発生が懸念

される場合は、「デコポン」品質を断

念し、「不知火」品質で収穫すること

も検討してください。また、クエン酸

濃度が高い場合には収穫を遅らせま

すが、寒波の来襲が懸念される場合

は、早めに収穫しましょう。

②清見

中晩柑の収穫は寒波による被害を

避けるため年内に収穫が多く行われ

ていますが、清見は糖の上昇が遅く、

3月上旬以降に糖度が最も高くなり

ます。例年では、3月になるとクエン

酸濃度が1.00%程度で、果肉が柔

軟多汁になり、食味が向上します。

③せとか

清見と比較して耐寒性は若干低

いとされています。収穫はクエン酸

濃度が1.00%前後となる時期に

行います。しかしながら、清見も含め

て、不知火同様品質低下が懸念され

る場合は収穫を検討しましょう。

⑵予措・貯蔵

いよかん、はっさく、はるみ、甘夏

は前号を参照して下さい。

①不知火

担当

カンキツ

JA香川県東部果樹振興センター

上原 佑介

3▶4月

樹園

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3月中に出荷を行う果実は3%程

度、4月以降に出荷を行う果実は4

~5%の予措を行います。虎斑症(ヤ

ケ果)の発生防止のため、温度および

湿度が急変しないよう、貯蔵庫内の

環境をなるべく一定に保ちましょ

う。また、短期間の貯蔵の場合には、

予措を行わず、果袋に果実が入った

ままで貯蔵することも可能です。

長期貯蔵の場合は、果袋から果実

を出し、コンテナ等で直接風の当た

らない所で30日程度、5~7%の予

措を行います。貯蔵は、ポリ個装(腐

敗果からの細菌拡散を防ぐため)と

し、果実が重なり過ぎない程度(2段

まで)で木製の貯蔵箱もしくはコン

テナで貯蔵します(写真1)。貯蔵期

間中は外温も高くなりますので、冷

風貯蔵機器があれば庫内温度を8~

10度、湿度は85~90%で貯蔵します。

果実は定期的に点検し、ロス(腐敗)

果の増加がみられた場合は早めの出

荷を検討します。

②清見

予措の程度は、貯蔵期間との関係

があり1ヵ月以内の貯蔵であれば2

~3日程度、貯蔵期間が2~3ヵ月と

なる場合は15~20日で2~4%の予

措を行います。予措が8%以上になる

と虎斑症が発生するおそれがありま

すので、果実の減量に注意して強い予

措は行わないようにしましょう。

貯蔵中および出庫後に発生する虎

斑症に注意します。虎斑症の発生を

防止する貯蔵法として、ポリ個装で

の貯蔵があります。貯蔵温度は5℃

で果皮色が最も良くなり、虎斑症の

発生も少ない傾向です。湿度は、ポリ

個装の場合は70~80%で管理します

が、裸果貯蔵の場合は90%前後の高

湿で行います。また貯蔵中は、換気を

朝夕に充分行います。

③せとか

予措は、果実の体質が基本的に弱

く、収穫直後から出荷するため、積極

的な予措は行わず、出荷までの期間

自然予措とします。収穫後の果汁の

消耗によってス上がりが発生しやす

いため、長期貯蔵は避けましょう。特

に、大玉果は注意が必要です。

3整枝・剪定

全国的に温州ミカンの隔年結果

は収束傾向となっていますが、平成

30年産は極早生温州を除き、小原紅

早生を含めた早生温州、普通温州と

もに平年と比較してやや豊作傾向で

した。ただし、開花期以降、新梢の発

生も見られましたので、平成31年産

はやや裏年となることが予想されま

す。しかしながら、年々園地内での着

果のバラつきが大きくなっています

ので、樹ごとの予想着花量に合わせ

た剪定を行う必要があります。中晩

柑類は、充実した春芽を確保し大玉

果生産が可能となるよう早めの剪定

を実施しましょう。

★剪定を始める前に・・・

前号でも触れましたが、植え付け

時に初期収量を多くするため密植

で植栽している園地では、樹が混み

始めると、縮伐もしくは、間伐を計画

しましょう。密植になると、防除や収

穫・運搬、マルチ設置等の作業性が極

めて悪化するばかりでなく、過度の

剪定により、徒長枝の発生を促し、品

質管理が非常に困難になります。収

穫量の増大も大切ですが、市場、消費

者ニーズからも品質の高い果実を生

産することは極めて重要です。

⑴整枝・剪定(図1、2)

剪定の目的は樹形を整えることが

すべてではなく、主に①樹勢を調節

して樹体栄養状態を良好に保つ②風

通しや防除効率を向上させ、病害虫

の発生を防ぐ③防除や摘果、収穫等

写真1 ポリ個装の貯蔵不知火

主枝は2~3本程度。あまり傾けず、まっすぐに!樹勢が弱い品種の亜主枝の配置

樹勢が強い品種の亜主枝の配置

0.9m

0.9m

0.9m

70°

30°

主枝主枝

主枝

亜主枝

側枝

側枝

1.2m

1.2m上幹0.3m

約30㎝

第1亜主枝と第2亜主枝の間に空間をとる!

第1亜主枝は長く、水平に!

図1 ミカンの一般的な樹形(岸野原図)

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の作業性を向上させることなど重要

な要素が多く含まれています。カン

キツ類だけではなくすべての果樹類

にも言えることですが、ただ枝を間

引き、枝数を減らすことだけが剪定

ではありません。全体に日当たりを

よくし、作業性を向上させ、品質の高

い果実を生産できるしなやかな枝を

作り上げるためには「整枝」が非常に

重要となります。基本として安定生

産が可能な樹体形成は、「剪

定」と「整枝」が一体となっ

て初めて成り立ちます。

⑵温州ミカンの整枝

温州ミカンの基本的な樹

形として、主枝は2~3本

が理想です。亜主枝を長く

伸ばす場合には2本主枝で

もかまいません。主枝の角

度はできるだけ真直ぐに立

てるよう誘引すると、徒長

枝の発生や、外へのかぶさ

り枝が少なくなります。第

1、第2亜主枝は水平に伸

ばすとともに、これらにか

ぶさる亜主枝がないように

空間は十分とります。写真

2のように、整枝がきちん

とできている樹は、樹勢維

持、高品質果実の安定生産

が期待できます。一方、写真

3のように整枝による主枝形成が出

来ていない樹は、主枝候補枝が寝て

しまうことで強い徒長枝が発生し、

樹勢のコントロールが難しくなるだ

けでなく、樹形の改善が困難となり

ます(強い徒長枝が発生→切り返し

の繰り返しとなり樹冠拡大に時間を

要する)。十分な整枝ができていない

樹に対して、一度に完全な整枝をし

てしまうと、強剪定となり、夏芽が多写真2 整枝による主枝形成が出来ている例 写真3 整枝による主枝形成が出来ていない例

込み合った枝は立ち枝を基から間引く③

⑤少ない結果母枝は切らない

上向きの果梗枝は剪除

④水平からやや下向きの果梗枝を残す

小玉果が多く結実した弱い果梗枝(成りカス)は整理する

②樹高の切り下げ ①同年枝

①競合枝

①かさぶり枝

①下垂枝

①内向枝

①枯枝

図2 温州ミカンの剪定のポイント

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く発生して着果が不安定になり、大

玉果や荒皮果の発生等品質が悪くな

るだけでなく、隔年結果を誘発しま

す。ま

た、樹勢の強い樹(品種)ほど、間

伐等の実施により樹間に余裕を持た

せ、樹勢の安定と着果確保が高品質

果実の安定生産のためには非常に重

要です。豊作が予想される樹では、作

業性を向上させるため、樹高の切り

下げも効果的です。

⑶温州ミカンの剪定

平成30年産は、台風や豪雨の影響

もあり黒点病の発生が見られまし

た。黒点病対策として特に樹冠内部

に発生している枯れ枝は出来るだけ

除去しておきましょう(写真4)。

また、亜主枝から伸び過ぎた側枝

を切りつめる場合や切り返し剪定を

行う場合は出来るだけ節で行うよう

にします(写真5、6)。節ではないと

ころで切り返すと、思うように発芽

せず材木化し、枯死すれば黒点病の

発生源となる可能性が高くなります

(写真7)。

①着花が多いと予想される樹

結果母枝が多く旺盛な樹は、着花

は多くなり発芽は少なくなる傾向に

あることから、着花が予想される新

梢部分を基部から切り返して、花の

着かない新梢(予備枝)の発生を促し

たりするなど、次年産のため発芽さ

せる部位を作るような剪定を行いま

す。また亜主枝を確立させるため、亜

主枝から出ている立枝の処理を行う

場合は、特に樹勢の強い(大玉にな

りやすい)普通温州などは果実をな

らして、重みで倒して横枝に変えて

いくようにします。立枝が密集し、込

み合って日光の入る隙間も無い状態

であれば、その部分をノコ剪定で間

引きし、日当たりを確保します。徒長

写真4 黒点病の発生源となる枯れ枝

写真7 悪い切り返し例

写真8 春梢、夏梢、輪状芽

写真5、6 節での切り返し方法

夏梢 春梢

輪状芽

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枝になっている夏秋梢は元から間引

き、横から斜め上向きの枝は、夏梢と

春梢の境(輪状芽)の上を基本として

切除します(写真8)。ただし、中途切

りによる切り返しは、着花しても生

理落果しやすいような貧弱な枝しか

発生しないため望ましくありません

(写真9)。

②着花が少ないと予想される樹

平成30年産が豊作であった樹で、

収穫痕(なりかす)の果梗枝が多く、

結果母枝の発生が少ない樹は、整枝

にこだわった剪定はせずに、着花を

確保することを最優先します。剪定

は、かぶさり枝になりそうな果梗枝

や上向きの果梗枝の剪除程度にとど

め、着花を見ながら剪定をするか、

剪定を見送ります。このような樹に

10%以上の除葉をすると、夏芽が発

生し強樹勢となり、収穫時に出荷で

きない大玉で、品質の悪い不良の果

実となります。

4中晩柑類の整枝・剪定(図3)

基本的な骨組みは温州ミカンと同

じですが、中晩柑類は大玉果を生産

するための剪定を行う必要がありま

す。このためには、有葉果となるよう

に枝を強固に維持し、亜主枝や側枝

は15度程度の角度で先が上がってい

る樹相にします。また、できるだけ着

果位置を太枝に近づけるよう側枝の

更新や夏秋梢の処理が剪定の中心に

なります。果梗枝は、中晩柑では、結

果層が外に広がって垂れ下がり、大

玉果生産に向かないため、切り返し

ます。温州ミカン同様、剪定量が30%

以上の過度は樹勢の衰弱を招くので

注意します。

5苗木の剪定方法(写真10~14)

苗木の管理は、主枝形成や誘引を

丁寧に行うことで早期樹冠拡大を行

い、早期に結果させるためには重要

となります。樹形を整え、理想の形に

近づけるよう、早期から整枝を行い

ましょう。また、根本に近い部分から

発生した枝は、樹勢が強いため年数

が経過すると樹形が乱れ、果実品質

を損なうおそれがありますので、早

めに切除します(親殺し枝)。

写真10~12 若木の剪定方法(例)①は主枝候補②は亜主枝候補

枝の先端は樹勢維持のため、やや上げ気味!

果梗枝は、垂れ下がって太枝から遠ざかるので除去!

白筋の入った若い枝を主体に残す

葉が小さく黒ずんだ枝を間引きせん定

図3 中晩柑の剪定方法

写真13、14 親殺し枝の除去

② 主枝候補を誘引

写真9 中途切り例

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6春肥の施用

平成30年産が豊作、不作樹にかか

わらず葉色が薄い傾向で、樹勢の低

下が懸念されます。春肥を施用する

ことによって、新梢・新葉・子房・花

は充実し、生理落果の軽減にもつな

がります。春肥は開花期頃から効果

を発しますので、地温の上昇や養分

競合も考慮し、春肥施用前に春草の

除草をしておくことが重要です。園

地内では樹によって結実量が違いま

す。結果母枝の多い樹は豊作年に当

たりますので春肥は10%から20%増

施して樹勢衰弱をさせないようにし

ます。肥料は、植物性中心の有機質肥

料なら3月中下旬、動物性中心の有

機質肥料なら3月下旬~4月上旬、

化成中心の肥料なら4月上中旬に

チッソ成分比で年間施肥量の30%~

40%程度を施用します(10a当たり

施用例:温州ミカン、中晩柑類・香川

有機ペレット088を100㎏)。発

芽・緑化促進として、葉面散布を3月

中旬からあわせて行うと効果的で

す。また極端に着花が多い園地では、

開花前に花肥として化成肥料を追肥

します。

7品種更新

カンキツ類の栽培にも適地適作が

あります。近年、異常気象や天候不順

の影響もありますが、マルチ被覆等

による生産を複数年行っても品質が

向上しない場合は、圃場に適してい

ると思われる品種への転換も必要で

す。ただし、品種更新に対しては、各

生産者の経営状況や労働力を加味し

ながら、品種の選択をしなければな

りません。

たとえば、早生ミカンが高糖度に

なる条件の良い園地を、更なる高価

格販売を目指して、小原紅早生に替

えること、また、水分量が多く(地下

水位が高く)、温州ミカンの糖度が向

上しない園地には不知火のような高

糖系中晩柑に転換するなど、それぞ

れの園地条件や生産者の生産構成品

種などを考慮していろいろと考えて

みましょう。近年は特に、市場、消費

者は高品質で「おいしい」果実を必要

としています。

⑴苗木の植え付け(図4)

3月上旬には植穴に苦土石灰やヨ

ウリン、完熟たい肥などを施してお

き、3月下旬頃に苗木を植栽します。

苗木は、掘り取り時の際傷んだ根が

あれば切りとり植えつけます。植え

付けは、必ず周囲よりやや高めに植

えつけるように行い、接ぎ木部分は

必ず出すようにします。発芽後は、1

芽1新梢になるよう芽かぎを実施し

ます。

図4 苗木の春季管理

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⑵高接ぎ更新(図5、写真15~17)

苗木による更新では成木となるま

でに7年~8年程度かかります。高

接ぎ更新をすると数年で成木並みの

収量を確保できます。高接ぎ木用の

中間台木はカミキリムシの被害のな

い樹勢の良い若木が理想です。

接ぎ穂は、3月中旬までに採取し、

充実した夏芽もしくは春芽を用い、

葉を取り除いてポリ袋に入れて冷暗

所に保存します。その際は品種の間

違い等が起こらないよう袋に記載

したりタグを付けるなどしておきま

す。(2週間ほどで葉柄が落下するの

で、袋から出し、接ぎ穂の枯死がない

か確認しましょう。)

接ぎ木は、3月下旬

から5月の上旬までに

実施します。時期が早

いほうが伸長しやす

いですが、遅い方が活

着しやすくなります。

穂木は、充実の良い箇

所で2芽ほどとり、メ

デールテープを薄く巻

き、濡らしたタオルな

どで包み、乾燥を防止

します。

接ぎ方は、切接ぎと

腹接ぎを併用します。

新梢伸長後支柱による

誘引を行い、風による

ふらつき等でせっかく

活着した穂木がかげ落

ちないよう穂木を挿す

部位は樹冠内部側に行

います。台木の切り込

みは、あまり角度をつ

けず、コツンとあたる

まで入れます。穂木を

挿した部位は、接ぎ口

に雨水や害虫が入らな

いよう接木テープなど

でしっかりと固定しま

す。大きな切り口はカ

ルースのような木切口

面保護被覆用アルミ

フィルムを使用し、乾燥を防止しま

す。接

ぎ木処理後は、日焼け防止のた

め、白塗剤を枝幹部に塗布し、発芽し

たら、1芽1新梢に芽かぎをします。

伸長した主枝候補枝は、必ず垂直方

向からやや斜め方向へ誘引しておき

ましょう。

8病害虫防除

ミカンハダニやカイガラムシ類の

初期密度を下げる目的で冬期(12

月~1月)にマシン油乳剤を散布し

ていないところは、必ず散布してお

きましょう。

図5 高接ぎ更新の方法

写真15~17 穂木の作り方

切口もしっかり覆う

形成層背面をくさび型に

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平成31年産のビワは、開花始期以

降がやや高温で推移したため、生育

が前進し、開花期間も長い傾向とな

りました。寒波の影響もなく、順調に

生育していると思われます。平成28

年の1月24日の寒波の影響で生産量

が激減して以降、隔年結果の幅が大

きくなっており、平成31年産は豊作

傾向が予想されます。これから摘果、

袋かけの作業にかかっていくと思わ

れますが、出来るだけ早く摘果に取

り掛かり、大玉果生産を図りましょ

う。種子が正常な健全果を選択し、品

質の高い果実生産を目指しましょう

(写真1、表1)。また、隔年結果を是

正するため、摘房によって花房がつ

いている枝とカラ枝(摘房した枝)が

ほぼ同じ数になるように調整し、予

備枝の設定を図りましょう。

1摘果

寒害が発生する危険がなくなっ

た、3月上旬から始めます。寒害を受

けやすい所では3月下旬から開始し

ます。果皮の緑色が濃く大きな5角

形の様な果実を中心に、陽玉やなつ

たよりのような大玉系統果では1果

房当たり3果、茂木や田中は2果を

残し、寒害被害果や傷果、病害虫被害

果、小玉果を摘果します。この時、1

小果梗当たり1果として、隣接する

果実が当らないようにします。でき

るだけ近接した果実を残すことによ

り、熟度を揃えることができます。

また、十分に摘房できていない園

地では、この時期までに着果した枝

と無着果枝の割合が1対1になるよ

う摘房します。

2袋かけ

モモチョツキリゾウムシやシンク

イムシの食害軽減や、すれ果等の発生

防止、正品率の向上、裂果の防止など

の目的で袋かけを実施します。袋の種

類は、各産地の販売方針によって異な

りますが、近年夏期の高温による障害

果の発生が多くなっていますので、オ

レンジ袋や遮光率の高い二重袋など

が効果的です。特に、なつたよりや陽

玉に発生する紫斑症(果実表面に紫色

の色班が発生する症状)対策として、

大きめの二重袋をかけましょう。

3防除

ビワキジラミの分布の拡大にとも

なって、ビワに対する被害が拡大する

おそれがあります。ビワキジラミが媒

介すると、幼虫が排泄したロウ物質に

より花房、果実にススを伴い、果実品質

を著しく低下させます。このため、早く

からビワキジラミを対象とした防除

を検討する必要があります。ただし、袋

かけを行った後での防除では、袋の中

で増殖してしまいますので、必ず袋か

け前に防除を行いましょう。薬剤は、3

月中下旬頃の袋かけ前にスタークル

顆粒水溶剤2,000倍(前日/2回)

に薬液の浸達を高める展着剤‘まくぴ

か’(5,000倍)を加用します。‘まく

ぴか’は泡が立ちやすいため、薬剤を先

に調整し、最後に混和させましょう。

ビ ワ

担当

JA香川県東部果樹振興センター

上原 佑介

写真1 健全果(大きくなる果実)の見分け方

表1 健全果と障害果の所見項目 健 全 果 障 害 果(凍害果)

果形

丸みのある五角形横に張って大きい果実長崎早生など開花が早く大きくなっているものは注意

丸く見える縦が長く細長く小さい

果皮の色

やや薄い緑色でさえがある長崎早生などの生育の早い果実は黄色がかかっている田中などの生育が遅い果実は緑が濃い(葉の色)

毛じ つやがあり、緻密に生えている つやが無く、やや薄くなっている

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モモの開花時期は、気温が3月上

旬から平年より高く推移すると開花

が早くなります。昨年のあかつきの

開花始めは高瀬町の早い園地は3月

26日、府中果樹研究所は3月29日で

した。3月の気温が平年より2~3

度高いと開花は昨年並みに早くなり

ますので、気象データーを参考に管

理作業をします。

1摘蕾

開花することで多くの貯蔵養分を

使います。無駄な開花を少なくし大

玉生産を図る目的です。また、早生桃

など一気に摘果すると急激に残った

果実に養分が集中することから核割

れや、白桃では生理落果しますので

急激な養分変化を起こさないように

するために実施します。

2仕上げ摘蕾時期

2月の摘蕾ではまだ蕾がかたく花

芽がスムーズに取れませんが3月に

入り花芽が徐々に大きくなり蕾とな

り、開花時期に近づくと取れやすく

なります。摘蕾は開花直前から開花

期に実施すると効率が上がります。

3方法

結果母枝の発生部は実が枝に挟さ

まれたり品質が悪いので取ります。

1月~2月に取れにくかった先端

も一個にします。また、粗摘蕾で見落

とした蕾も取ります。程度は10㎝程

度の短果枝は先に1蕾20~30㎝の中

果枝は先と中央部に2蕾30㎝以上の

長果枝は先から中央部にかけて果実

が当たらない間隔で5蕾程度としま

す。

JA香川県西部果樹振興センター

担当香川 忠義

モ モ

写真1 摘蕾前写真 写真2 摘蕾後の写真

写真3 先に1蕾の写真 写真4 摘蕾方法の写真

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2019. 3 42019. 3 421

暖冬傾向の中、2~3月で生育は

前進していると思われます。加温栽

培では急な低温での被害はありませ

んが、無加温施設では発芽直後の低

温に注意しましょう。施設の中央部

分に冷気がたまり、被害が出やすい

為、サーキュレーター(扇風機等)など

で空気を循環しましょう。温度の高

い日が続く場合は発芽直後の作業が

慌ただしくなるため、できる限り圃

場の準備等は早めに行いましょう。

1施設ブドウ

⑴新梢管理

発芽後の生育不良が見られる場合

には、その新梢へメリット青300倍

を3~5日間隔に3回程度葉面散布

して生育を均一となるようにします。

芽かぎは、1芽座につき1芽とし、

その際に主枝1m当たり10本程度に

減らします。(シャインマスカットは

主枝1m当たり8本)また、不発芽に

より芽が欠損した場合は隣の芽座か

ら2本出す等の対策をとります。

新梢の誘引時期は、展葉数枚に

なった頃から芽がかげない様に順次

誘引を実施します。

摘心は、展葉8~10枚頃に、品種に

応じて房先5~8枚程度とします。

また、摘心後の副梢の処理は、房まで

は2枚、房先は1枚となるように定

期的に処理します。

育成中のシャインマスカットで

は、主枝候補が太くなりすぎると翌

年に芽萎えをおこし芽とびしやすい

ので2~3本程度伸ばし樹勢をコン

トロールします。また、副梢は3~5

枚程度残し、翌年の芽萎えや不発芽

防止とします。また、シャイン以外の

主枝候補は1本とし副枝は2枚残し

ます。(図1・2)

ブドウ

JA香川県東部果樹振興センター

担当瀬戸 宏隆

図1 品種毎の花穂整形要領

車どうしが対になったところから残す

3~3.5(8車前後)

4~5(8~10車)

5前後(12車前後)4~5

8(12車前後)

7~9

(子房咲き)(普通咲き)

ロザリオ時期/開花直前

先端は満開時に切除

ピオーネ時期/開花14日目から

開花始め先端は切らない

ベーリーA(無核)時期/第1回ジベレリン

処理2~4日前

ネオ・マス時期/開花5日前から

開花始めまで

ベーリーA(有核)時期/開花5日前から

開花始めまで

シャインマスカットは肩が巻きにくいため、肩部を決めてから先を残す。

3.5cm(10~11車)

シャインマスカット時期/開花1週間前から

開花直前まで先端は切らない

図2 シャインマスカット花穂整形(開花14日前~直前)

ジベ処理の目印に

車を2つ残す

赤○の車は切除青○の車はジベ目印

3㎝

約3.5㎝

6粒以上

開花14日前

開花直前10~11車

図4 2~3年目主枝先(シャインマスカット)

主枝候補

2〜3本伸ばす

10葉摘芯

4~5葉摘芯

10葉摘芯

4~5葉摘芯

秋に直径1.5cm程度が良い

図3 苗枝立て方(シャインマスカット・ピオーネ等)

8月31日摘芯

副梢4~5葉摘芯1mで

摘芯↑棚下 30~50cm↑

摘芯

1mで摘芯 ↑

2葉摘芯止める50 cm

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剪定後の管理について

昨年の病害虫については、場所に

もよるがカメムシの被害が全体的

に多い年だったことから、薬剤の散

布が効率的にできるように樹高に

切り下げに取り組んで下さい。カメ

ムシの被害は集団で飛来し、園地ご

とに大きな被害を受けることがあり

ます。少しでも飛来してくる確率を

下げると共に、作業性も加味し高い

主枝の切り下げを再度確認して下さ

い。三年~四年ほどかけて高い主幹

を切り下げます。(写真1)

近年温暖化の影響により富有柿

のような品種の着色が遅れ、県下の

出荷最盛期も年々遅れている傾向に

あります。作業分散も加味し、優良品

種更新に向けた接ぎ木(穂木)の準備

を行いましょう。特に着色不良園や、

労力分散を計画し早生柿(太秋柿・早

秋柿など)への更新も考えましょう。

剪定時に一年生の充実した枝を採取

し、パラフィン処理を行って下さい。

(写真2)

⑵花穂整形

花穂整形の方法については、図3・

4の通りですが花穂整形を行う前に

作業効率を上げるためにも充実不足

等の花穂を除去します。

また、ジベレリン処理をする品種

は、利用する部分の3~4㎝離した

上側にジベレリン処理の目印として

2車残します。

育成中のシャインマスカットで

は、地上部と地下部のバランスが取

れていないことが殆どである為、早

期の結実を行うとさらにバランスが

崩れ樹勢低下につながるので、結実

は早くても4年目からとします。

JA香川県東部果樹振興センター

担当瀬戸 宏隆

カ キ

写真2 パラフィン処理用鍋

1年目切り下げ

2年目切り下げ

3年目切り下げ

4年目切り下げ

カキ皮むき画像

写真1 切り下げ目印

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1新梢管理

⑴芽かぎ

新梢をそのままにしておくと棚下

が暗くなり、品質が低下します。特

に「さぬきゴールド」や「さぬきエン

ジェルスイート」は、発芽率が高くそ

の傾向が顕著です。

そのため、4月上旬頃に強すぎる

新梢や下向きの新梢をかぎとり、10

~15枝/㎡程度とします。

ただし、主枝の基部から発生する

新梢は翌年の母枝として利用できる

ものは残します。

また、香緑やヘイワードなどの強

風の影響により枝折れしやすい品種

や晩霜の受けやすい園地では20%程

度多く残します。

⑵誘引

誘引は、新梢の基部が軟らかい時

期(4月下旬頃)から行います。新梢

が硬くなった以降は、捻枝し枝を棚

に添わせてから誘引します。

誘引作業が遅れると、風によるか

げ落ちが多くなるので遅れないよう

にします。

⑶摘心

枝の巻きつき防止のため、新梢の

伸びが弱まった枝に摘心を行いま

す。強

く伸びる枝に摘心を行った場

合、副梢が発生します。副梢はさらに

1~2梢残してせん除します。

2摘蕾

摘蕾は、蕾が確認できたら早く実

施して余分な養分を使わないように

します。

基部に近い果実は大玉になりやす

いですが奇形果が多く、先は小玉果

とりやすいです。

そのため、基部に近い蕾は枝の強

弱に関係なく摘蕾し、先端も摘蕾し

ます。また、中心花蕾の横についてい

る側花蕾も同時に除けます。

特にさぬきゴールドは節間が短く

果実どうしがすれ合うので蕾と蕾の

間隔に気を付けます。

摘蕾時の新梢状況と新梢当たりの

摘蕾基準は以下のとおりです。

摘蕾は、その後の強風による被害

による枝折れ、奇形果や病害虫被害

果の摘果のことも考えながら摘蕾時

にあまり除け

すぎることな

いように気を

付けて行いま

す。ま

た、近年温

暖化等により

開花が前進し

ている傾向の

ため、摘蕾は品

種構成を考え

早めから行い

ます。

キウイフルーツ

JA香川県西部果樹振興センター

担当近藤 直樹

写真1 誘引後の枝

写真2 摘蕾後

摘蕾時新梢状況弱い 中庸 強い

最 終 枝 長 ~10㎝ 10~30㎝ 30~90㎝ 90㎝~

着蕾数/枝 0~1蕾 1~2蕾 2~4蕾 3~4蕾キウイフルーツ画像