3 産業構造変化の要因分析 - 名古屋大学第3章 産業構造変化の要因分析...

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3 産業構造変化の要因分析 一一日本,韓国,台湾およびタイ経済の DPG 分析 1 本稿は 1914-85 年の臼本, 63-85 年の韓国, 66-84 年の台湾, 75-82 のタイ経済をとりあげ,われわれが DPG 分析と呼ぶ方法を用いて,その産 業構造変化のパタ ンを示そうとするものである. 産業構造は経済成長とともに変化する.クズネッツ (1966) の広範周到な 研究は,これを卸 J かしがたい事実として示した.産業構造の変化は現象的に は産業ごとの成長速度の棺違として現われる.全産業が向ー速度で成長する 比例的成長は笑現せず,したがって産業構造変化は比例的成長からの議離 (DeviationfromProportionalGrowth) ととらえることができる.チェネ リー (1960) ,チェネリー・シシド・ワタナベ(1 962) などが用いた方法で あるが,経済的事実確認の方法として,このo!f E 離を数盆化し,かつ,いくつ かの要因に分解して説明することは,きわめて援要である.これをわれわれ DPG 分析と呼んでトいる. DPG 分析は日本経済についてはチ z ネリー・シシド・ワタナベ (1962) 渡部 (1970) ,渡部・駿河 (19 77),木下 (1982) ,竹中 (1984) ,隊.n 奈川 (1989) が行っており,韓国については管木・稲田 (1980) ,韓 (1989) ,台 湾についても陳.i l 奈川 (1987) がある九ただし,これらの分析は比例的成 長からの嬬離を定義して諸要閣に分解する点では共通するものの,ヨJE 離の定 室長,要因分解の方法,とりあげた婆図や対象経済の部門分割は,必ずしも共 通でない. われわれは日韓台およびタイの 4 経済について,現在利用可能な限りのデ ータをj 収集し,あらためて同一方法による DPG 分析を試みた 東アジア,

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Page 1: 3 産業構造変化の要因分析 - 名古屋大学第3章 産業構造変化の要因分析 一一日本,韓国,台湾およびタイ経済のDPG分析 1序 本稿は1914-85年の臼本,

第 3章

産業構造変化の要因分析一一日本,韓国,台湾およびタイ経済の DPG分析

1 序

本稿は 1914-85年の臼本, 63-85年の韓国, 66-84年の台湾, 75-82年

のタイ経済をとりあげ,われわれが DPG分析と呼ぶ方法を用いて,その産

業構造変化のパタ ンを示そうとするものである.

産業構造は経済成長とともに変化する.クズネッツ (1966)の広範周到な

研究は,これを卸Jかしがたい事実として示した.産業構造の変化は現象的に

は産業ごとの成長速度の棺違として現われる.全産業が向ー速度で成長する

比例的成長は笑現せず,したがって産業構造変化は比例的成長からの議離

(Deviation from Proportional Growth) ととらえることができる.チェネ

リー (1960),チェネリー・シシド・ワタナベ(1962)などが用いた方法で

あるが,経済的事実確認の方法として,このo!fE離を数盆化し,かつ,いくつ

かの要因に分解して説明することは,きわめて援要である.これをわれわれ

は DPG分析と呼んでトいる.

DPG分析は日本経済についてはチ z ネリー・シシド・ワタナベ (1962),

渡部 (1970),渡部・駿河 (1977),木下 (1982),竹中 (1984),隊.n奈川(1989)が行っており,韓国については管木・稲田 (1980),韓 (1989),台

湾についても陳.il奈川 (1987)がある九ただし,これらの分析は比例的成

長からの嬬離を定義して諸要閣に分解する点では共通するものの,ヨJE離の定

室長,要因分解の方法,とりあげた婆図や対象経済の部門分割は,必ずしも共

通でない.

われわれは日韓台およびタイの 4経済について,現在利用可能な限りのデ

ータをj収集し,あらためて同一方法による DPG分析を試みた 東アジア,

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50 !t部門経済モデルの実菌研究

東南アジア地域は iNIEsが日本を追跡し, NIEsを ASEAN諸国が追うj

といわれへその高い成長率が世界の注目を集めている.日本と韓国,台湾,

そして ASEANのなかでも近年,総悶,台湾などにつづく第5のNIEsにな

りうると期待されるタイをとりあげ,その産業構造の変化を比較分析するこ

とほ,大きな窓義をもっ調査であると考える.

ところで,産業構造の変化については,比例的成長からの議離という特別

な概念は用いず,各産業の生産額の変化そのものを要因分解する分析も数多

く報告されている"こうした手法からの批判として, DPG分析は「現実の

産業構造変化を標準的産業構造なるものからの歌隊と理解するもので,椋えも

的産業構造の決定は怒2主的にならざるをえないjとする考えもある.>)しか

し, DPG分析が用いるのは様準的産業構造からの殺離でなく,比例的成長

からの耳障離であり,その定義次第で怒%i性はかなり排除できるとわれわれは

考える.われわれの DPG分析は,いわば平均からの偏差を要因分WN-る形

になっている.生産額の変化を姿凶分解する方法に比べ,とくに慾怒約であ

るとはいいえない.

以下,第 2節でわれわれが用いた分析モデルとデータについて述べる.つ

いで第3節では 4経済の分析結果を順次,いくつかの期間に分けて報告す

る.われわれは比例的成長からの議離を 1) 梓\j~ lJ:, 投資,輸出の最終認要の

llVJ向, 2)輸入依存度の変化,および 3)投入産出関係の変化で説明する.第

3 iTdの分析は 1)各経済の絞終鍔要に注目すれば,すなわち GNP(あるいは

GDP) の成長に対しては消費,投資,総出のどの~阪が寄与したか, 2)そ

れに対してわれわれのそデノレではと'の妥協の寄与が大きしそれがと.の産業

部門を成長させたのか, 3)経済成長に寄与した主主的と産業部門が各経済の異

なるJUJI閣ではどのように変化したか, 4)他の経済との比較ではどうか,とい

う視点に沿って巡められ,分析結果のまとめは第 4節で示される.

2 分析モデルとデータ

読者産業の生産額を n行 l列のベクトル X,で表わし,これが時間とともに

ぶから X,に変化したとしよう.この間,もしも全部!可が向一速度で成長し

たのであれば Aをスカラーとして

(1) X, ~ÀX,

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第 3i;i 産業構造変化の袈F8I分析 う1

が成立L,スカラ-"は各部門共通の成長倍率,あるいは総生産額の成長倍

率となる.

前節でふれた比例的成長は(1 )式のような状態と考えることができる.と

すれば,比例約成長からのヨ1主総は現笑の x,と(1 )式が成立する場合の x,との聞の差,すなわち

(2) ax =λ(2-AX¥

と定義できるであろう.スカラー Aはここでは総生度額の成長倍率,あるい

は務部門のり~D護)平均成長倍率である.比例的成長からの'ífB離は 11 行列ベ

クトノレ axで示され,次のような性質をもっ.l)aXの各要素,すなわち生

産部門ごとの靖国iは,平均成長倍率である Aを越える率で成長した部門では

プラス,成長倍率が H乙等しい部門ではゼロ, "より小さい部門ではマイナ

スの値をとる.2)希離の絶対値は成長倍率が Aとかけ離れた部門ほど,そし

て成長倍率が同じであれば,生産額が大きい部門ほど大きくなる. 3)各言語離

はいわば平均からの偏差をとった形になっており,その合計はゼロになるべ

この比例的成長からの議離を DPG分析はいくつかの要因に分解する.そ

の方法については,われわれは以下のようなものを用いている6)

まず,各部門の需給バランスは,産業連関分析のフレームワークを援用し

て次のように表わすことができる.

(3) x, = (u'-Mf)*A,X,+ (1-iiまつFF十(1-ivlil F{+ F!"+}門戸

お辺第 l項の A,は投入係数行列,Jl1taはA,の各嬰;#に対応する各中関投入

ごとの輸入係数をその第 (i , j)要'*とする投入に闘しての輸入係数行列,

d はすべての要紫を lとする行列,記号*はアダマーノレ積を表わす7) {u'

Mf)*A,は国産品だけについて定義される投入係数行列に等しく,右辺第

1項は倒産品に対する中間需要を示す.右辺第2項の Ffは各財に対する渓

伺・政府の出~:{ïm要を表わすベクトノレ, A1F は第 iI討の消~-:rにtJ~J-,.る輸入依

存度を第 (i , i)要索とする対角行列,1は単位行列である.第 2項は国

産品に対する詳¥H-:rm姿を示L,同様にして第3項は節度品に対する投焚穏裂

を示す.第 4項,第5事!の FfdとFtdはそれぞれ国産品の在庫市11!111と申告出を

表わすベクトノレである.

( 3 )式からは

(4) x, = [1ー (μ'-Mfl*A,]-'[(1-1WηFf+ (1 -A1il F!+ F!'十万ペ

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52 多部門経済モデルの実託研究

という均衡産出翠;決定式が毒事かれる.生度額 X,は,中関投入,消費,投資

にかかわる 3つの輸入係数行列 Mf.Mf, Miと投入係数行列 A,をハラメタ

として,消費 Ff.投資 Fi,国産品在庫純増 F{dおよび国産品輸出 Ftdの4

最終需要項目が決定する形になる.

ここでパラメタ Mf.Mf. M/, AIが変化せず, 4うの最終需要ベグトノレ

Ff. Ff, F{d, Ffdがすべて λ倍になったとしよう. (4)式左辺は明らかに

AX, eなり, (1)式の比例的成長状態が実現する.すなわち,輸入依存度と

投入産出係数が変化せず,最終穏婆が全部門で等しく A倍になるならば,

( 2 )式で定義される比例的成長からの講離は起こらない.ヨ]E離をもたらす要

殴としては,最終需要が全部門で等しく A倍にならないこと,そして翰入依

存度や投入産出係数の変化が挙げられよう. (2)式は(4 )式を代入しτ次の

ように変形することができ,これがわれわれの要因分解式になる.

(5) oX = B2(l-liiii) dF'十B,(1-Mi) oFi十B28Fid+B2OFcd

ただし

+ B2(M,'-M{JAFf十段u冒'{-iI1;) AF{+ B,(M,"-M,") *A,AX.

十B2(,,' -M,") * Uh -A,) AX,

B2= [1-(μ'-Mの*A,J-IoFC = Fi-λFf

8F' = F.JーλF,'

oF}l' = Fdd一入F(d

dFCd = F2cd λF{d

右辺第 l項から第4項はそれぞれ最終需要項目である消費,投資,国産品在

庫純増,医産品輸出が全部門で等しく A倍にならなかったことから生じる比

例的成長からのヨ!被L 第5嘆から第8項までは順に消波,投資,中間投入に

関する翰入依存度と投入産出係数の変化から生じる教離を示す.ある生産部

門の比例的成長からの飛車Eは,当該部門あるいはそれに連関効果を及ぼす他

の部門において最終需要がλ倍以上に拡大したかどうか,翰入依存度が低下

したかどうか,そして投入係数上昇による中間需要拡大があったかどうかに

よってプラス,ゼロ,あるいはマイナスとなる.

われわれの DPG分析は(5 )式に必要なデ タを代入して行われる.デー

タは産業連関表から傍られ,日本については 1914,54, 55, 65, 75年の各表

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第 31;'i: 産業構造変化の婆箇分析 ラ3

と 85 年延長表をfIlいた 1914~54 年, 55~65 年, 65~75 年, 75~85 年の分

析,斡劉については63,75, 85 年の各表を用いた 63~75 年, 75~85 年の分

析,台湾については66,76, 84 年表を用いた 66~76 年, 76~84 年,タイに

ついては75,82 年表を用いた 75~82 年の分析を行っているめ.

ただし, (5)式では各需要項目ごと,さらには各投入産出関係ごとといっ

た相当に詳絡な輸入のデ タが必要になる.こうしたデータは必ずしもすべ

ての産業連関表で記載があるわけでなく, 1914, 54および85年の日本につ

いては入手できなかった.そこでわれわれは 1914~54 年と 75~85 年の日本

については,そうしたデータがなくても同様の分析が行えるよう, (3)

~(5 )式とは異なったそデノレを用いている. (3)~(5)式に対応するそのそ

デノレの需給バラソス式,均衡産出盤決定式と要因分解式は次のようになる"

(6) x, = (1- M,) (A,X,+Ff+FI+Ft)十F,'

(7) X, = [I-(1-1}],)A,]一'[(1-M,)(Ff十万+Ft)+1マ]

(8) iJX = B,(1-M,) iJF'+ B,(1一品)iJFi十段(1-M,) iJP十B,iJF'

Tこ?とし

十B,(M, -1}],)λ(A,X,十日c十Fi+Fi) + B,(1-M,) (A,-A,)AX,

B,=[l-(1 品)A,]-'

iJP = F1一入F!

oFC= Fi-λFt

式中の Ff,Ftはそれぞれ在庫純増,輸出のベクトノレ,M1は各財の輸入依存

皮を示す対角行列であり ,M1の第 (i, i)婆紫は第 z財の総入/(中間需要

+消費十投資+在庫純増)と定義している.モデルの特徴は各輸入依存度を

需要項目別でなく ,iJ1 と一括して定義したことにあり,比例的成長からの

'íJí;~維をもたらす姿悶には,最終需要である消費,投資,輸出,在庫純増が全

部門で等しく A倍にならないこと((8 )式第 l項~第4項),そして輸入依存

度と投入産出係数の変化(第5項,第6項)が挙げられることになる.

産業連関表のデータは 20~30 部門(分析期間ごとに奨なっている)に統合

し,各部門,卸売物価指数,消費者物価指数や GDPデフレーターなどで実

質化して用いている. (5)式あるいは(8 )式の要因分解は統合,実質化した

データで行ったのであるが,本稿ではその計算結果を 9~1l部門に再統合し

て示しているw,

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ぅ4 多部門経務モデルの笑証研究

第1表要閣分解の例(日本, 1914-54年)

DPG i出資 投資 輸出 総入依存度投入係数

民林水産業 2348.9 -1435.7 43.1 -152.1 287.5 一527.8鉱業 -143.7 -83.7 56.7 46.4 -52.3 一1.3化学 544.9 -328.4 63.8 28.4 -493.9 363.5 金脳 ]]]9.8 -257.8 288.0 120.8 351.2 697.3 機械 231.4 -197.7 170.1 5 【7.5 60.2 154.3 その他の製造議 227.4 -812.9 220.8 388.0 197.7 1178.1 建設 322.2 一106.3 349.8 0.7 ,. ( 75.4 商業 490.0 12.8 81. 5 -43.4 Zラ5 429.7 その他 443.1 -1562.1 274.5 266.0 180.6 973.5

合計 0.0 -4771.8 1548.3 746.7 975.1 3342.5

法) 単怯は 10箆円(1951年悩絡)

さて,再統合されたものであるが,計算結果はたとえば第 l表のようにな

る. DPGと記された列の値が(2)式で定義した産業部門ごとの比例的成長か

らのヨf6駐在であり,先にふれたように合計はぜ円そして各 DPGの大きさは

その部門の成長率と生度額に依存する.たとえば第 I表の期限では, DPG

が最大である金属部門の総生産額に対する比重は実質 (1951年間格)で 3.5

%から 10.3%に拡大L-,化学,商業はそれぞれ 2.5%から 5.8%, 5.3 %

から 8.3%へと拡大した.

この表の要因分解は(8 )式を用いており,消ri.投資,輸出,輸入依存度,

投入係数と記された各列はそれぞれ(8 )式の第3項を徐く各項に娠に対応す

る.第 3J頁の在庫純増主主図は省略したのであるが山,それを含めれば各部門,

各婆図の憾の合計は DPGに一致する DPGの全部門合計がゼロになるのと

河様,各要因の値の和も全部門合計ではゼロになる.なお,日本の

1914~54 年と 75~85 年を除く各ケースは( 5 )式を汗h、て要因分解を行って

おり,その場合は総入依存度の紛が(5 )式第 5 J頁から~~ 7項に対応するi高波,

投資,投入の三つに分けられる. tE~哲純増要閣(( 5 )式では第 3J¥'uはやは

り省略した.

われわれの DPG分析の方法は以上である.そして,たとえば日本の

1914~54 年に対する計終結果は第 1 表に示した通りであるが,以下の各ft'j

2平結果は「正規化」して示している.これは隙・桜}II(1989) で用いた方法

なのであるが,第 1表を例にすれば,各部門の DPGを丘町として,表のさを

数値を~I ox, I /2 で割って 100 倍L-,次節第 2 表の 1914~54 年部分のよう

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第 3i;i 産業J構造変化の要因分析 "

にするのである.こうして第2表以下の計算結果は,平均を上回って成長し

た部門の DPGの合計が 100,成長率が平均より小さかった部門の DPGの合

計がー100となるように識援され,ヨ罪織をもたらした要閣の{郊についてもプ

ラスの値の和を 100,マイナスの値の和を 100とする拐対尺度で記述され

ることになる

序節でふれたように,われわれは以下, GNP (あるいは GDP)の成長に

ついてはその構成要議である消費,投資,輸出,どの要因が等与したといえ

るのか,それに対して DPG分析ではどの要因の寄与が大きしそれがどの

部門を成長させたのか,といった視点で議論を進めている.われわれの分析

にとっては,ある要因が{也の要因に比べてどの程度プラスに{劫いたか,そし

てある部門の比例的成長からの議隙が他の部門に比べてと.の程度大きかった

かが重要であれ比較の尺度はたとえば10億円といった単位でなくともよ

い.or,離とその要閣を絶対的にでなく相対的に比較する限り,第2表以下の

ような正規化は必要な情報を失わない.逆に,比例的成長からのプラスの希

離をもたらした要殴の総和と成長部門の DPG合計が 100になることによっ

て,どの要因がより露宴であったか,どの部門がより成長したかが明般にな

れ期間ごとの比絞や留際比較も容易になろう.

3 日本,車産問,台湾およびタイ経済の DPG分析

前宣言のそデノレを日本,韓関,台湾およびタイにあてはめた結架は順次,第2

表から第 6表に示している.以下,われわれの論点を各経済,期間ごとに示

1..-,その結論をsfS4 nnでまとめるという形で談論を進めたい.

3.1 日本のケース

( 1) 1914~何年

この期間, 1914年と 54(tr:の {Û1から計 p~ した実質 (51 年制裕) GDP成長

率は年あたり 2ι%になり,消zy,投資,輸出の成長率はそれぞれ 2.2%,

5.2 %, 2.6 %であった問.成長率が GDPのそれをよ閏ったのは投資だ付

であり,この点で,経済成長は投資の伸びがiii引したとコ与えることができる

このことは DPG分析にも現われている.第 2表の全部門合計の儲が示す

ように,比例的成長からのプラスのヨf'離は 52.7%が投資拡大によるもので,

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う6 多部門経済モデルの笑lUE研究

第2表 日本経済の DPG分析(その1)

最終 Y!.i彊 総入依存度DPG 投入係数

n~ 'l~ 投資 総出 治資 投資 投入

1914-541"j': lill枠水産業 80.0 -48.9 1.5 -5.2 一9.8 -18‘O

鉱業 -4.9 一2.9 1.9 一1.6 1.8 。。化学 18.6 -11.2 2.2 -1.0 16.8 12.4

金脳 38.1 -8.8 9.8 4.1 12.0 23.8

機紙 7.9 -6.7 5.8 2.0 2.1 5.3 その他の製造業 7.7 27.7 7.5 -13.2 6.7 40.1 建設 11.0 -3.6 11.9 。。 0.2 2.6 商業 16.7 0.4 2.8 1.5 0.9 14.6 その他 -15.1 -53.2 9.3 -9.1 6.2 33.2

合計 0.0 -162.5 52.7 -25.4 33.2 113.9

1955-65 ff. 段林水mg控 38.0 -5.6 1.5 0.4 一0.8 。。 。o-28.7

鉱業 一2.3 0.1 0.8 0.0 。。 。。 -2.4 一1.0化学 18.7 3.7 2.4 2.4 -0.1 0.0 一0.8 10.8

金属 18.0 3.4 8.5 6.8 一0.0 0.1 2.2 1.0 機械 56.0 8.0 22.4 9.7 一0.0 0.2 -0.1 16.6 その他の製造諜 -2.2 4.3 7.8 -2.2 -0.5 。。 一1.7 -10.0

建設 7.3 一0.6 13.9 一0.8 。。 。。 0.0 5.1

箔 2量 -3.8 -4.2 4.7 -1.2 -0.0 。。 -0.1 一3.0その{也 53.7 -7.0 6.4 -3.7 一0.3 。。 一0.2 -48.9

合計 。。 2.1 68.5 10.6 -1.7 0.3 -7.6 -68.4

消t!i:, 輸出の総寄与はいずれもマイナスであった.消~"i, 輸出のマイナスは,

その成長率が各関連部門を平均以上に拡大させるほと・には大きくなかったた

めであり,投資は逆に,その高い{申びが建設,金属,サーピス(第 2表では

「その他j),機械をはじめとする各部門にプラス効果を与えることになった.

しかし,第 2君主で圧倒的にめだつのは総寄与 113.9%になり,金悩,綴

維・皮革,商業,紙製品,運総・通信,化学,石総・石炭製品など(表では

「その他の製造業j,rその{也j,金総, ~百糸、,化学),多くの部門にかかわった

投入係数変化のプラス効果である.化学,金騒などに対する輸入依存度低下

の寄与もかなり大きい

投入係数のプラス効果が大きく現われる背景には,生産技術の変化がそれ

までと異なった投入需要をI喚包したこと,そして新産業の勃興,成長が産業

間取引を域大させたことが考えられ,輸入依存度の大きな低下は輸入代替産

業の発展が考えられる. 2度の大l践をはさむなどして著しい変動にさらされ

た 40年間ではあるが,全体としては,きわめてダイナミックな成長要阪が

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第3茸E 産業構造変化の袈悶分析 う7

仰0,、ていたといえる.

( 2) 1955~65 年

この郊隠, 55年と 65年の値から計算した実質 (60年倣絡)GNPの成長

率は9.7%,消!e!i:.投資,輸出の成長率はそれぞれ 8.0%, 15.0 %, 14.4

%であった13)その大きさからは投資と輸出をマクロの成長婆悶に挙げる

ことができる.

第 2表が示すように,比例的成長からのプラスの議離は合計 68.5%を投

資の伸び, 10.6 %を輸出の伸びが説明した.両者の寄与には成長率以上の

室長があるようにみえるが,投資と輸出の絶対額に違いがあったことが原閣で

あろう.輸出はおもに機4仇鉄鋼(表では金属)の成長要図になり,投資は

機械,建設をはじめとして鉄鍛,商業などの各部門を平均以上に成長させる

ことになった. 1914~54 年の期間で有力なプラス要殴であった投入係数変

化による中間需要拡大効果は,合計ではマイナスであったものの,機械,化

学に対しては強く働いている.

この期間に平均以上に拡大したのは化学,金腐,機微という重化学工業部

門であった.おもな成長要因は化学では中間需要拡大,金属では投資,つい

で輸出,そして機械では投資,ついで中間需要となる.消費wif姿のjfyjきも各

工業製品には有利に働いているが,輸入代替はもはやなかったといってよい.

( 3) 1965~75 年

高度経済成長と石泌ショッタを含むこの 10年間,実質 (70年価終)GNP

と治~Ii, 投資,輪出の成長率は, 65年と 70年の値でみればそれぞれ 11.3

%, 8.3%, 17.5%と16.1%であり, 70年から 75年では4.7%,5.5%,

3.3 %と 11.3%であった.いずれの成長率も低下するのであるが,投資の

落ち込みはきわめて著しし後半期では輸出の成長率が突出するようになる.

全期間での GNP成長率は 7.9%,消資,投資,輸出の成長率は 6.9%,

10.2 %と 13.7%であった.輸出の成長率はやはり大きい

DPG分析については第3表に示される.輸出は機械,金属を中心に比例

的成長からのプラスの議離の 31.5%を説明し,逆に投資はほとんど全部門

でマイナス要因になっている.投資はこれまで一貫して重要なプラス要因で

あり続け,この期間も 10年院の成長率では GNPのそれをよ図っていた.

しかし,後半期の落ち込みが大きすぎたのであろう,投資の伸びは中間投入

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58

1965-75年~林水産探鉱 諜

イヒ 学金 属

機械その他の製造業建設

iiu * 金融・慌般・不動産公共サーピスその他

合計

1975-85生ド段林水産禁鉱捺

化 学

金 属

機械その他の製造業J.l!設梢*金滋・保険・不動産公共サーピスその他

合言i

多部門経済モデルの実証研究

第3表 日本経済の DPG分析(その 2)

最終需要 翰入依存度DPG 投入係数

消~ 投資 輪出消'fJ. 投資 投入

~19.5 -10.7 -1.0 -0.9 0.7 。。 3.3 1.8 -6.1 0.1 1.2 。。 -0.4 。。 3.1 -1.4 一0.1 -1.2 -2.5 2.5 -1.1 。。 。。 3.2 10.6 -0.4 -1.9 10.3 -0.3 。。 0.7 7.8 29.3 2.3 2.9 17.2 一0.8 0.2 0.3 9.1

-29.6 -18.9 -8.8 3.5 2.3 0.1 -2.7 10.1 44.7 0.2 -39.8 0.1 -0.0 0.0 。。 5.2 2.1 -2.3 一1.7 0.9 一0.3 。。 一0.3 6.3 15.5 0.1 -1.9 1.0 一0.3 。。 0.5 16.7 10.7 9.3 一0.2 0.2 。。 。。 0.0 1.3 31.9 15.0 6.4 3.1 -1.0 0.0 一1.5 22.9

。。 5.9 山 68.6 31.5 ー7.4 0.2 -11.1 69.0

-6.8 -2.9 一0.5 。。 0.5 -3.9 -2.1 0.2 0.2 -0.0 0.3 一1.7

-1,1.4 2.8 -1.2 一0.0 -3.8 -11.0 5.4 1.2 一5.5 一0.9 2.5 70.6 6.7 14.7 31‘4 0.4 14.0

一12.1 -9.1 -5.5 2.5 -2.1 1.5 -33.0 0.0 -30.6 0.1 。。 -2.5 17.6 4.2 0.5 3.8 一0.5 10.5 6.0 4.6 -1.1 1.5 0.6 1.5 5.8 2.5 。。 0.6 0.1 2.1

-26.2 -8.9 4.0 0.2 一1.0 -12.7

0.0 1.2 -34.4 39.2 9.2 0.9

部分を含んだ総生産の成長率にはおよばず,その f平均j成長率以上に各部

門を拡大させる姿図にならなかったようである.

この期間にはさらに2つの特徴がある lつは重化学工業化が金総,機械

に重心を移しながら引き続き主主大したのに加えて金融・保険・不動産,公共

サービス,そして fその他」といった各サービス部門の拡大がみられること,

もう lつは投入係数変化による中間需要拡大の総寄与が 69.0%になり,段

林水産業と鉱業を徐く各部門にプラス効果を与えたことである.サーピス部

門を拡大させた lつの要因はi出資の動きであり,それは第 2表の,とくに

1955~65 年の期間j と比べれば明らかである.しかし,公共サービスを徐き,

各サーピス部門の DPGに対する投入係数変化の寄与程度はいずれもより大

きなものであった.おそらくは潟度成長期に 1914~54 年の期間に観察され

たようなダイナミックな技術lll:f~, i!E業間取引の怒大が起こり,それが今回

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第3器産業綿造変化の'll!因分析

は各サ ピス部門にもおよんだのである.

( 4) 1975~85 年

59

この期間,実質 (80年価核)GNPの成長率は4.5%であり,消費,投資,

輸出の成長率は 3.5%,3.5%と9.4%であった.輸出の成長率はまさに

突出するようになる.輸出依容がきわめて強まった形である.

これは第3表でも同様である.全部門合計でプラス要因になったのは,ほ

とんど輸出だけである.ただし,輸出の寄与は 1965~75 年では機械,金lIll

で大きかったのに対L,この期限は機械だけで大きい.輸出の伸びが機械に

対してもたらした寄与を 100とすれば内訳は常気機械48,輸送機械 27,一

般機械 22 であり,この内訳は 65~75 年では輸送機械 50,一般・精密機械

29,電気機械 21であった.金lIll輸出の相対的な落ち込みと機械輸出の伸び,

より具体的には鉄鋼の落ち込みと電気機械をはじめとする各種機械の伸びが

うかがえる.

この期間,全部門合計での寄与率が -34.4%であった投資が機械に対し

てだけは相当のプラス要因になったのをはじめとして,消費,輸入依存度と

投入係数,いずれの動きも機械には有利に働き, DPGは70.6%が機械部

門に集中する結果になった. 65~75 年の期間と比べれば金属部門の DPG は

マイナスに転じ,サーピス部門のそれはいずれも小さくなっている.長らく

続いた重化学工業化が機械部門の拡大という形に変わり,その一方で経済成

長率の低かったことが影終したのであろう,サービス部門の拡大が鈍化した

のである.

なお, 55~65 年の期間以降,一貫した傾向なのであるが,輸入代替はみ

られない.輸出の伸びに対応、するように,むしろ輸入依存度の上昇がめだっ

ている.

3.2 韓国のケース

( 1 ) 1963~75 年

この期間, 63年と 75年の健から言十3ました笑質 (70年側格)GDP成長率

は年あたり 10.1%になれ消E!f,投資,輸出の成長率はそれぞれ 8.0%,

16.6%,31.0%であった, GDPと消費,投資の成長率は先に挙げた

55~65 年, 65~70 年の日本の{直にかなり近い(ただし日本の備は GNP ベー

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60 多部門経済モデルの実証研究

第4表斡国経済の DPG分析

DPG 最終需i嬰

消資

総入依存度

1963-75年

際林水建設

鉱業

化学

金属機械

その他の製造業

建設

商業

金融・保険不動産

その他

-70.6 -62.6 -2.6 -1.1 23.4 -7.1 11.3 -0.6

25.6 4.4 34.2 -6.5 5.5 -0.9

9.9 -10.4 5.7 -10.7 11.2 -18.6

0.8 3.2 -4.8

0.3 0.1 0.0 0.9 11.7 -0.5 2.5 6.4 -0.1

6.8 12.0 -0.1 1.7 40.6 -0.8 6.7 -0.2 0.0 1.7 5.7 -0.1 1.0 1.3 -0.1

1.6 8.6 0.4

7

1

0012810101

0000000000

0.5 0.0 11.5 0.7 1.7

-0.2

0.0 0.0 0.3 -6.1 0.1 2.7

0.3

1.9 6.7 2.3

一0.9一0.2

4.5

合計 0.0 -114.0 24.0 89.3 -6.1 1.3 4.9 6.1

1975-85 f手段林水産業 59.9 鉱諜 5.4

化学 一0.4金属 23.6 接被 50.1 その他の製造業 19.0 建設 ー10.2商業・飲食・旅館 一12.7金融・保険・不動産 7.3 公共サーピス 10.5 その他 0.8

-61.7 -0.8 -1.0 -0.2 -13.7 -0.7 -1.2 -0.7

1.6 5.8 9.1 -1.0 2.7 -10.2

9.7 -0.4 2.7 -0.4 10.5 0.0

-11.0 -1.1

-6.7 3.7 -0.8 0.0

8.5 0.2 16.6 0.0 23.5 0.1 -2.8 1.0

0.4 0.0 2.0 -0.4 0.9 0.0 0.1 -0.4 3.2 0.2

69281229626

01452624807

1

2

11103411703

5

1

3

5

1

3

0

0

0

0

0

00597314305

00006000000 合計 0.0 -121.5 -9.6 45.0 4.4 9.8 17.7 60.7

スのもの).GDP成長率を上回ったという点では輸出,ついで投資が成長要

悶となるが,輪出の成長率はきわだって商い.

DPG分析においても,輸出の寄与はきわめて顕著であった.第4表が示

すように,輸出の伸びは比例的成長からのプラスの講離の 89.3%を説明し,

投資の寄与を大きく超えている.輸出の伸びがより大きく,そしておそらく

はその伸びが綴維,機械,化学,金属といった多品自にわたったためて'あろ

う,投資のプラス効果が機械,建設を中心とするものであったのに対¥.-,輸

出の寄与は紡織,綴維製品,機械,化学製品,金総製品,さらには巡翰・通

信・保管,商業といった部門(表では「その他の製造業J,機械,化学,金属,

「その他J)にもおよんでいる.

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第3翠産業構造変化の姿因分析 61

平均以上に拡大したのは製造業の各部門であった.そのうち,その他の製

造業についてはその DPGのほとんどを輪出が説明し,化学,金属,機械

についても DPGの約半分がそうであった.輸出の伸ひ'に蕊引された工業

化がめだったわけである.同時期の日本でみられたようなサービス部門の鉱

大はなかったといってよい.

なお,輸入代替は化学部門の DPGの1/3弱,金属部門の DPGの1/4弱

を説明する要因になり,投入係数変化による中間需要の拡大は化学部門の

DPGの約半分を説明した.相対的に成長率が低かった消費はほぼ全部門,

マイナスに{効いた.

(2) 1975~85 年

この期間の実質 (80年価格)GDP成長率は 7.7%,消費,投資,輸出の

成長率はそれぞれ5.8%,11.2%, 13.0%であった.各成長率は依然とし

て高いとはいえ, 65~75 年の期間と比べてそれぞれ 2.4 , 2.2 , 5.4 , 17.0 ポ

イγ トずつ低下している.先進諮問の鋭気後退によるものであろう,輸出成

長率の低下はとくに著しい.

輸出,投資の寄与率低下は第4表でも示されている.輸出については各種

経工業製品(表では「その他の製造業J)の不調,投資については建設の不調

が堺いた形である.輸出のプラス効果は金属製品,電気機械,輸送機械(茨

では機械,金属)を中心に比例約成長からのプラスの3lioll誕の 45.0%,投資

は機械だけにプラスで全体ではマイナスになっている.

寄与率を増大させたのは輸入依存度と投入係数の変化によるプラス効果で

あった.前者は機械(より具体的には一般機械と輸送機械入金属などでやや

大きし後者は「その他の製造業J(おもに食料品と紡織)と機械(一般機械,

Q[気機械)で大きい.

この期間,輸出,投資の成長率が低下するといったことはあったものの,

むしろ斡悶経済はその産業構造を高度化させたように思われる.輸出のプラ

ス効果が各種'1車工業製品から機械,金属に移ったのはその現われの一つであ

れ機械(輸送機械,一般機械),金属の輸入代替,投入係数変化による中

間協要拡大も大きくなったからである.投入係数効果はその他の製造業,機

械を中心に比例的成長からのプラスの敢闘tの60.7%を説明した.サービス

部門の拡大は,この期間もなかったといえよう.

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62 多部門経済モデルの実証研究

第5表台湾経演の DPG分析

議終結型 約入依存度DPG 投入係数

消費 投資 総出 消波投資投入

1966-761手1m林水産業 50.1 -52.0 0.7 7.5 0.9 0.0 ~12.4 20.0 鉱業 8.2 -1.7 0.7 0.3 。。 0.0 一1.8 5.1 化学 22.6 -6.7 0.9 18.4 -0.2 0.2 1.0 9.9 金 属 9.8 1.1 2.7 5.1 -0.1 0.1 2.0 1.9 機械 26.6 0.6 4.9 19.1 0.1 0.8 1.0 2.8 その他の製造業 33.4 -13.9 1.9 27.5 1.1 0.6 0.5 16.1 建設 5.5 1.3 7.8 1.5 一0.1 。。 0.1 0.7 閣 議 16.4 7.7 1.9 1.8 0.1 0.1 0.2 -8.2 金融・官倹 2.2 1.6 0.0 1.3 0.2 。。 0.1 2.5 そのflli 25.3 -31.5 0.3 2.7 2.0 0.1 一2.7 7.7

合計 0.0 -117.1 16.8 66.6 -0.4 1.8 -15.5 48.3

1976-84守主

民林水産業 -29.8 8.2 -0.6 7.6 1.2 。。 6.2 -3.0 鉱 業 12.3 1.0 -1.7 0.8 0.0 0.1 -4.2 5.5 化 学 12.0 一7.8 5.0 14.8 一1.3 0.7 12.1 0.9 金 鴎 29.1 -0.1 7.7 19.9 0.1 2.4 15.4 1.7 機械 45.2 5.2 4.5 34.6 -0.8 ,., 2.2 2.7 その他の製造業 -16.2 17.1 7.7 9.0 -6.1 0.3 2.3 12.6 建設 -22.0 0.9 -22.5 0.3 。。 0.0 0.2 1.3 liiJ;'1住・飲食・旅館 8.1 2.9 -2.3 3.2 -1.0 0.4 1.7 4.4 金総・保険・不動産 9.6 一9.5 一1.2 2.4 0.4 0.2 一2.8 1.1 公務 5.6 5.6 。。 。。 。。 。。 0.0 。。その他 一10.0 8.8 4.0 1.6 0.9 0.6 2.2 0.9

合計 。。 -39.6 -57.2 78.9 9.0 10.1 17.9 15.5

3.3 台湾のケース

( 1 ) I自66~76 年

この期間,笑質 (76年価格)GDP成長率は 9.8%,消費,投資,輸出の

成長率はそれぞれ 7.6%,15.0%, 20.2%であった.成長率で GDPを上

回ったのは輸出と投資である.経済成長は輸出の伸び,ついで投資の伸びが

率引したと考えることができる.

第 5表に示されるように,輸出と投資は比例的成長からのプラスの殺離の

合計 66.6%と 16.8%を説明した.輸出のプラスは綴維製品,電気機械,

ゴム・プラスチック(表では「その他の製造業J,機械,化学)を中心とし,

投資のプラスは建設,金属を中心とするものであった. 63~75 年の期間の

韓間経済と似かよっている.

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第 3m 産業構造変化の要因分析 63

拡大したのがおもに製造業各部門であったことも同時期の韓国と同様であ

る.台湾では化学部門,投入輸入の依存度低下効果が小さし「その他の製

造業J(具体的には食料品であった)に対する中間需要拡大効果が大きいとい

った違いはあるものの,製造業各部門の拡大に最も寄与したのは,やはり翰

出の伸びであった.

( 2) 1976~例年

この期間,笑質 (81年価格)GDPの成長率は8.1%,消費,投資,輸出

成長はそれぞれ 6.8%,6.0%, 11.5%であった.韓関と同様,各成長率

は低下したのであるが,台湾では投資成長率の低下がとくに著しい叫. GDP

成長率をよ回るのは輸出だけになってしまった.

第5表では,投資不振は顕著に現われている.比例的成長からの議離は

78.9 %が輸出の伸びで説明され,投資の寄与はほぼ全部門マイナスである.

輸出のプラス効果は電気機械,金属一次製品,ゴム・プラスチックを中心と

するものであった(表では桜減,金総,化学).その他の製造業に対する寄与

は台湾でも低下している.

この期間,投資の不振があったとはいえ,比例的成長からの議離が大きか

ったのは各重化学工業部門であった.輸出のプラス効果は重化学工業部門に

より集中し,金属,化学の投入輸入を中心に輸入代替も観察されている.中

間百r}~拡大効果はそれほどでないものの,韓国と同様,台湾でも践業構造の

高度化があったと考えたい.

3.4 タイのケース

観察期間である 1975~82 年の間,タイ経済の実質 (72 年側格) GDPは年

率にして 6.9 %で拡大し,消~Jf,投資,輸出の成長率はそれぞれ 6.2 %,

6.2%, 15.4%であった.ここでも成長率からは,輸出の伸びが経済成長

を怒引した形である.

第 G表に示されるように,比例的成長からの希同tについても輸出の伸びが

もたらしたフラス効果は圧倒的に大きい.そのプラス効果はその他の製造業,

ついで段林水E君主控阿部jいているのであるが,輸出の寄与合討を 100としたも

う少し具体的な内訳は食料品 47,民業 13,繊維製品 11,畜産 4,'i1i気機械

4であった.また, iその{也の製造一業Jで大きく現われている投入係数変化

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64 多部門経済モデルの実証研究

第6表タイ経済の DPG分析

最終協聾 総入依存度DPG 投入係数

時~ :i1i 投資 翰出 消 n 投資 投入

1975-82年

h~林水産業 ~34.1 -22.5 0.1 19.1 -4.2 0.1 0.3 -18.8

鉱業 3.5 0.7 0.4 0.3 -0.1 0.2 0.6 1.2

化 学 一0.8 2.3 0.1 4.0 -0.9 0.7 6.8 0.8

金 l!li 5.5 0.9 0.6 3.0 -0.3 0.5 2.2 -2.1

機械 24.2 2.5 0.3 6.0 0.6 11.0 3.9 0.5

その他の製造業 45.5 -19.3 0.4 66.2 -10.0 。‘4・-4.8 31.5

建設 2.2 0.7 6.5 0.1 一0.1 。。 0.0 3.6

臨~ 39.3 -29.1 2.2 2.4 -1.7 0.9 0.5 7.2

金融・保険・不動産 -15.6 -17.0 。。 0.9 -0.4 0.1 。。 1.0

公共サーピス 19.1 19.0 。。 0.2 -0.1 。。 。。 0.1

その他 -10.2 -6.4 0.4 5.4 -16‘3 1.0 5.6 12.0

合計 0.0 -72.8 5.2 107.6 -33.4 15.0 -11.4 15.4

による中限需要拡大効泉については,内訳は約 72%が食料品, 15 %が綴

維製品に話号するものであった.食料品,あるいはllllili'H,司述品目がきわめて議

要な地位を占めていることがわかる.

タイについては近年,シンガポーノレ,香港,台湾,韓国につづく第 5の

NIEs になりうるとされる一方で, NAIC (Newly Agro-Industrializing

Country) という表現がしばしば用いられる.i綴維,電子工芸誌を中心とす

る輸出産業の育成と重化学工業化の双方を,同時的に達成しようとするj

NIEsに対1..-, r 1lli水畜産業と,その加工産業であるアグロイ γダス卜担ー

を納として,輸出産業の育成,雇用の創出,俊民所得の引上げを図り,これ

を通じて 1人当りの毘民所得の上昇を実現jしようというのである 15)

こうした方向は,韓国や台湾に比べて食料品,lillim側近II品目の占める地位

が大きいタイ経済には,きわめて穏当であるようにみえる しかし,この郊

隠に絞極的に展開された大規模工業開発と重化学工業振興策を反映したもの

であろう,第 6表では機械部門(一般機械,輸送機械)のプラスの DPGも

めだち,その半分以上は輸入代替が説明した16) NAIC的な方策はここでの

観測期限以降に打ち出されるようになったのであるが,この期限以降,タイ

経済には NAIC約なパターγが観察されるのか,それともこの機械部門の

輸入代替に代表されるような別のパター Yが現われるのか,より新しいデー

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第3沼産業構造変化の要因分析 65

タを加えた分析が必要なのであるが,今後の課題とせざるをえない.

4 結 語

以上,産業檎造変化を比例約成長からの主主離とみなし,そのヨje維を消費,投

資,輸出,輸入依存度と投入係数(中間需要)の動向で説明する DPG分析

を. 1914~85 年の日本. 63~85 年の韓国. 66~84 年の台湾. 75~82 年のタ

イ経済に適用した.タイについては82年までのデータしかなしまた,た

とえば白本についても観測j諮問以降に景気好転があり,その後の傾向は異な

ることが考えられるなど,条件付きのものではあるが,分析結果は次のよう

にまとめられるであろう.

(1) 観測期間中の臼本経済は,石油V ヨツ Fをはさんで二分でき,おもに

投資の伸びと産業関取引の増大がりードした工業化,霊化学工業化とい

う形から,輸出に支えられた機械部門の拡大へと成長パター γ が変化し

ている.

( 2 ) 日本経済については消費の変化,中間需要の拡大によるサービス部門

の拡大も観察される.しかし石油ショック以降は経済成長自体が鈍化し

たためであろう,その[9J;きも鈍化する.

( 3 ) 工業化の一つの段階,あるいは手段として知られる輸入代替は,戦後

の日本についてはなかったといってよい.むしろ翰出の伸びに対応した

形の総入域がめだっている.

( 4 ) 斡国,台湾でめだつのは,繊維,電気機械,化学製品などの輸出が世

ードする形の工業イじであった.サーピス部門の拡大はなかったといえる.

( 5 ) 斡国,台湾の輸出成長率は観測期間の後半には先進諸屈の景気後退に

よって低下し,台湾では投焚成長率の著しい低下がみられた.しかし,

河経済はその産業構造を高度化させてお仇輸出品目の変化,重化学工

業製品の輸入代替や中間需要拡大が観祭された.

( 6) タイ経済の成長もまた輪出主導的であったが,斡困,台湾とは奨なっ

て食料品,1m産関連品iヨがきわめて重姿な地位を占めていた.NAIC的

な発展パタ ンが期待できるのであるが,観察期間においては,機械部

門の輸入代替に代表されるようなけFNAICJ的パター Y もみられた.

Page 18: 3 産業構造変化の要因分析 - 名古屋大学第3章 産業構造変化の要因分析 一一日本,韓国,台湾およびタイ経済のDPG分析 1序 本稿は1914-85年の臼本,

66 多部門経済モデルの実証研究

1) 分析期i習はチェネリー・シシド・ワタナベ (1962)が1914-54年,渡部

(1970)が 1914-60年,渡部・駿河 (1977)が51-70年,木下 (1982)が

55-60年と 65-70年,竹中 (1984)が 70-75年と 78-81年,際・藤川

(1987)が66-81年である.ただし,斡 (1989)はもっぱら製造業を分析対象と

している.また,苛木・稲隠(1980)は自らと渡部・駿河(1977)の分析結果を

沼いた臼斡比較を行い,線・務111(1987)は渡部・駿河(1977),予f木・稲田

(1980)白分析結果を利用した日斡台比較を試みている。

2) 引用は渡辺 (1985),64頁.ただし.1J.R文の NICsをNIEsに置き換えている.

3) たとえば, 65-75年の日本と 66-80年の斡障の機械産業を対象にした分析が

被IE(1984)に, 56-76年の台湾製造業, 75-80年のタイ経済についての分析

がそれぞれタオ (1983),リーピヤチャート (1989) に示されている.

4) 鳥居 (1979),279~280 頁, リーピヤチャート (1989),39-40頁.

5) こうした性質は比例的成長からのヨ]E離,よワ具体的には(2 )式のスカラ Aを

どう定めるかにかかっているのであるが,すべての DPG分析がわれわれと開じ

ような定殺を採用しているわけではない.阪!.II奈川 (1989)を参照されたい.

6) 要閣分解の方法は他にも考えられ,そのうちのいくつかについては線・藤川

(1989)でふれている

7) アグマ ノレ杭は行列 A,B 0)第(i , j ) 要談をそれぞれ aú• んとして,行列

A*Bの第(i , j)嬰恭を a,んと tるようなMr.tである ラオ(1973),邦訳

28 頁を参![~í されたい.

8) 各連関談の出処については付録1を参照されたい.

9) 1914-54年については, (8)式第 6項の中の (A,-A,)AX,は λ(A,X,-A,ぷ)と変形 L. A1X1 を中 11司市~ベクトルで{百き換えている.第 5 写]の

A1Xlも|司械である A,にあたる 1914年の投入係数行列で符られなかったため

である.

10) 甜11可チ〉浪やデフレータ ,笑ま[イじの方法については付録 2および付去を参照

されたい

11) われわれはトレンド自]な要因に主たる関心をもっており,そのな味で在時変

動は不安定廷闘であるために省略した

12) 各成長率はチェネリー・シ γ ド・ワタナベ(1962)に抱紋されている足立梁巡

限J淡から~(出した.

13) 各成長率は付録に記した悶民所得統計から鍔出している.以 1'-,他のWHmや

線i調,台湾,タイについて挙げる他も同様である.

14) 1976年, 80年と 84J-l二の儲から計pしてみると,災n投資成長さ三は 76---初 年

の 11.8%に対L,80-例年では 0.5%になってしまう, SU ~I三代の投資不11,;に

つい亡は,たとえば劉 (1987),223-232頁が論じている

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第3I;i 産業構造変化の要閣分析 67

15) 引用はいずれも末路・安問 (1987),iii頁.

16) この期聞のタイ経済について,ユノミヤ (1987)は本務と巽なった角度から

の産業連関分析を行なっている.

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第3章産業構造変化の要因分析 69

付録産業連関表の出処および実質化の方法

1 各産業連関淡の出処は次のi麗りである.

8本:チェネリー・シシド・ワタナベ (1962)(1914年表および54年表),行政

管理庁他 (55-75年の各表),通弼産業大臣官房調査統計部 (85年延長表)

なお,チェネリー・シシド・ワタナベ (1962)は中関投入部分を投入係数由形

で与えているのであるが,小数点以下4桁までで丸めているせいか,ここで投

入係数行列の第(i, j)要索を aij,第 z部門の生産額を Xi,第 z財に対する

中間需要合計を Wiとすれば,XjaUXtが必ずしも叫と一致せず,いくつかの

部門で無視できない誤差が生じた.われわれは au=(叫II;au) alJ となるよう

な投入係数を新たに作成して滞いている (l:;a't;x;は叫に等しくなる).

韓国:The Bank 01 Korea (各表).

台湾・ Councilfor International Economic Cooperation ar叫 Development,Exec

utive Yuan (66年表), Council for Economic Planning and Development,

Executive Yuan (76年表), Directorate-General of Budget, Accounting and

Statistics, Executive Yuan (84年表).

タィ:National Economic and Socia! Development Board, Institute of Develop

ing Economies, and National StatiはicOffice (各表).

2 実質化はすべての建築述i刻表をある年の値絡で統一するというのでなく,次の

ように行っている.

日本・ 1955-65年の分析にあたっては65年を lとするデフレーターを作成して

55年表と 65年表を実質化1..-,同様にして 65-75年, 75-85年の分析にはそ

れぞれ75年をし 85年を 1とするデフレーターを使用.資料出処は日本銀行

統計局 f物価指数年報j(日目和45年版),向調査統計局 f物価指数年報j(自百和

55年版),問{昭和60年基準卸売物価指数品目・ウエイトおよび接続指数j,

総理府統計局『昭和40年器準消Z若者物価指数の改正について(資料編)j,悶

『昭和 50 年恭準消政省物価接続指数泌~æJ,総務庁統計局『昭和 60 年基iUî消費

者物価接続指数総~,{1j,経済企酒庁『国民所得統計年報j (昭和42年版),悶

f国民経済計t'):年報J(昭和 60年版および63年版). 1914年表と 54年表につ

いては51年価格で与えられており,笑質化する必授はなかった.

韓国:Bank of Korea, Ecollomic Statis/ics Yearbooh (1976, 77および87年版),

同 NaiioJlalAccozmls (87年版)から 70年を 1とするデフレーターと 8日年を

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70 多部門経済モデルの実証研究

1 とするデフレーターを作成してそれぞれ 63~75 年, 75~85 年の分析に使用.

台湾:Council for Economic Planning and Development, Executive Y回 n,

T仰 vanStatistical Da!a Bool? (81年版および87年版), Directorate-General

of Budget, Accounting and Statistics, Executive Yuan, Statistica! Y;四γbook01

tile Rゆublic01 China (88年版),問 National]ncome 01 the Rej仰 blic01

Cltina (82年版および88年版)から作成した 76年基準, 81年五E準のデフレ

ーターを使用.

タィ:National Economic and Socia! Development Board, National Accounfs 01

Tlzaill仰 d,1970-84から作成した 80年基準, 82年基準のデフレーターを使用.

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第3翠産業総造変化の要因分析 71

付表 1 部門分類(日本,その 1)

1914-54年 1955-65年

1 n~林水産業 1 段林水産業 1 EJ!林水産業W

2 鉱業 2 原油・石炭 2 鉱諜、、

3 その他の鉱諜

3 化学 10 化学 7 化学製品w

11 石油・石炭製品 8 石油・石炭製品x

4 金属 13 金属 10 鉄捺「

11 .1鉄金凶w

12 金属製品w

5 機械 14 機棋 13 機械掠封、

15 斡送機械

6 その他の製造議 4 食料品 3 食料品叩

5 織縫・皮革 4 絡綾製品、

6 木製品 5 製材・木製品w

7 紙製品 6 紙製品民

8 印制・出脹 9 詰:諜.:l:石製品、

9 コム 14 その他の製造業論

12 ;常設・土石

6 その他の製巡業

7 建設 17 建設 15 建設c

8 商業 19 商議 18 商談白

9 その他 18 'i立気・ガス・水道 16 1位1)・ガス・水道c

20 不動産 17 迎紛・通信・保管主

21 巡翰・通信 19 不動産c

22 サーピス 20 その似n

23 その他

i主) i:i己号 W,c, n は~H質化にそれぞれ卸荷物価指数. i自問者物価指数(ただし人口 5万以上の

都市のもの), GNPデフレーターを月]いたことを示す,

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72 多部門経済モデルの実証研究

付表 Z 部門分類(日本,その 2)

1965-75 :l'! 1975-85年

l 段林水産芸員 I 民主林水産業w 1 K是林水産主詰仇

2 鉱 議 2鉱主w 2 鉱業w

3 jt;宇 7 化学製品w 7 化学製品W

8 石油・石炭製品W 8 石油・石炭製品w

4 金 脳 10 鉄鈎凶 10 盟、鍛 γ

11 非鉄金脱、、 11 非鉄金属w

12 金属製品w 12 金鴎製品杭

5 機械 13 一般・ 1官官機械w 13 一般機械u

14 1立気機拶f 14 電気機械い

15 翰送機紙百 15 翰送機械w

16 詐i密機fず

6 その他の製造業 3 食料品w 3 食料品w

4 議維製品納 4 織縫製品w

5 製材・木製品w 5 n提材・木製:Rr

6 紙製品w 6 紙製品w

9 謀議・土石製品W 9 ;;¥{%.土石製品仇

16 その他の製造紫w 17 その他の製造業w

7 iI1設 17 建設c 18 建設c

8 商 業 20 if(j ~:,.< 21 荷主主d

9 金総・部設・不動産 21 金融・保険d 22 金融・保険d

22 不動且X" 23 不動践c

10 i~o!もサーピス 23 公共サービスd 24 卦共サーピスd

11 そのf也 18 l1t1J・ガス・水ill" 19 '~活力・ガス水道w

19 辺信I・通信・保管c 20 運輸・通信・保管c

24 その他d 25 その他d

注) 記号 w,c, dは主主,Jcにそれぞれ卸売物師指数 (1975-85年については総合卸売物価指数1,ji'J践者物価指数, GDPデフ ν}ターをHlいたことを示す.

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第 3翠産業構造変化の要因分析

付表 3 部門分類(斡1lH,その 1)

I 民林水産1Ii<合者"を)

2鉱業

3 化 学

4 金 属

5 機械

6 その他の製造業

7 建設

8 向主義

9 金磁・保険・不動産

10 その他

1963-75 i手

1 1品業・寵産(合精米)"

2 林主義W

3 漁業W

4 鉱業w

13 ゴム製品w

14 化学製品W

15 石油・石炭製品w

17 金曜i製品w

18 機械w

5 食料品W

6 飲料たば こw

7 紡織w

8 繊維製品u

9 皮革・同製品W

10 製材・木製品川

11 ρ ルプ・紙w

12 印刷・出阪w

16 ;市議・土石製品検

19 その他の製造業W

20 建設n

23 荷 主主自

24 StZj;出・保険・不動産n

21 )'立力・7/;ス・水江r

22 迎始・通信・保管R

25 そのf也n

註) 記号、,V,nは:u悶化にそれぞれ時点約師指数, GNPデフレ}ターを

Iflいたことを示す.

73

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74 多部門経済モデルの笑託研究

付表 4 部門分類(韓国,その 2)

1 lliH件水産業

2 鉱業

3 化学

4 金腕

5 機械

6 その般の製造染

7 建設

8 I珂*・飲食旅館

9 金融1*段・不動産

10 公共サ ピス

11 その他

1975-85 if.

1 設立程・畜産W

2 林業u

3 漁業W

4 鉱業v

14 コム製品い

15 化学製品W

16 石油・石炭製品、

18 金服製品W

19 一般機械抗

20 健気機械情

21 総送機械U

22 梢密機械情

5 食料品w

6 飲料w

7 t,ニtまこい8 紡絵w

9 絞殺製品W

10 皮革・悶製品情

11 U辺材・木製品W

12 パルプ・紅「

13 同刷出 版W

17:討議・土石製品"

23 その他の製造業桃

山正1! ;W:d

27 商業・飲食・旅館d

28 金融・院~I~ ・不動産d

29 公共サ}ピスd

25 電力・ガス・水道6

26 迎翰・通信・保管d

30 その地d

注) 記号 w,dは実質化にそれぞれ卸克物価指数, GDPデフレ タ}を

月1いたことを示す.

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第 3主主産業構造変化の要因分析

付表 5 部門分類(台湾,その 1)

1 段林水産議(古粉米)

2 鉱議

3 化学

4 走路

5 機械

6 その他の製造業

7 述設

8 間接

9 金徹・保険

10 その他

1966-76年

1 段業(昔粉末)"

2 畜産愉

3 林業い

4 挽業w

5鉱諜w

12 ゴム・フラスチック w

13 化学製品W

15 金脱製品輸

16 一般・粉管機械W

17 電気機械鴨

18 翰送機械w

6 史料品W

7 臥守斗・たばこれ

8線維製品w

9 皮革・同製品W

10 製材・木製品い

11 紙製品w

14 ~~栄・土石製品w

19 その他の製造濃町

20 建設子

23 商銀河

24 金融・保険一

21 憶力・ガス・水道W

22 迎総・迎信・保管d

おその他d

注) 記号、¥', dは"'n化にそれぞれ卸売拍師指数, GDPデフレ タ を

IIIいたことを,1ミす

75

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76 多部門経済モデルの実証研究

付表 6 部門分類(台湾,その 2)

1 .是林水産主詰

2 鉱業

3 化学

4 金鼠

5 i機械

6 その他の製造業

7 建設

8 商業・飲企・旅館

9 金融・保険・不動産

10 公務

11 その他

1976-84 ,手

1 民芸員W

2 畜産 情

3林業W

4 曲茸~W

5 鉱業w

12 ゴム・プラスチッ, W

13 基礎化学製品町

14 最終化学製品W

16 金属一次製品w

17 金腐製品w

18 一般機械町

19 電気機械W

20 翰送機械W

21 精密機械w

6 食料品W

7 弘明・たばこ、

8 綴縫製品W

9 皮革・同製品い

10 製材・木製品W

11 紙製品w

15 ~,{{2詫・土石製品w

22 その他の製造設W

23 建設d

26 商~・飲食・旅館d

27 金融保険・不動産d

28 公務d

24 電力・ガス・水道W

25 逮紛・通信・保管d

29 その他d

法) 記号 w,dは車問イi二にそれぞれ卸売物価指数.GDPデフレ}夕}を

用いたことを示す

Page 29: 3 産業構造変化の要因分析 - 名古屋大学第3章 産業構造変化の要因分析 一一日本,韓国,台湾およびタイ経済のDPG分析 1序 本稿は1914-85年の臼本,

第 3翠農業構造変化の要悶同士析

付表 7 部門分類(タイ)

1 段林水産業

2 鉱業

3 化学

4 金協

5 i機械

6 その他の製造業

7 建設

8 苅梁

9 金徴・保険不動産

10 公共サ}ピス

11 その他

1975-82年

l 隣接

2 畜産

3 林業

4 漁業

5 鉱業

14 コム製品

15 化学製品

16 石油製品

18 金鴎一立製品

19 金属製品

20 一般機械

21 電気機械

22 翰送機械

6 企料品

7 飲料

8 ホ乙十まこ

9 繊維製品

10 皮革・ i司製品

11 製材・木製品

12 ハルプ・紙

13 印刷・出版

17 :器染・土石製品

23 その他の製造主主

24 建設

27 開設

28 金融・保険・不動産

29 公共サービス

25 'i立力・水道

26 巡紛・通信

30 その他

注) 実質化は全部門,該当する GDPデフレ}ターをJTjいて行っ

た.

77