第3章評価対象の概要・概況 - mofa.go.jp · 7 el oro machala 559.846 5,988 93 14 8...

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15 第3章 評価対象の概要・概況 3-1 エクアドルの開発状況 3-1-1 エクアドルの政治経済状況 1. 国の概観 エクアドル共和国は南米大陸の北西に位置し、大西洋に面している。エクアドルの 面積は 25.6 万平方キロメートルであり、日本の本州と九州を足した面積とほぼ同様 である 3 。エクアドルの国名は、スペイン語で赤道を意味する「el ecuador」が由来とな っており、その名のとおり、エクアドル北部地域には赤道が通っている。エクアドルは 南米の中でも多様性に富んだ地形を有しており、アンデス山脈の高地「ラ・シエラ」、 海岸地方の平地「ラ・コスタ」、アマゾンの熱帯雨林「エル・オリエンテ(アマゾン地域を 示す「アマソニア」と区分されることもある)」、そしてガラパゴス諸島の 4 つの地域区分 に分けられている。首都であるキトは海抜 2,850m のアンデス山脈の中腹に位置して いる。 エクアドル統計庁( INEC: Instituto Nacional de Estadísticas y Censos de Ecuador)によると、2006 年のエクアドルの人口は、1,328 万人であり、人口の 62% が都市部に集中している。農村部に占める人口の割合は 38%である。その割合を地 域別にみると、コスタ(海岸地域)50%、シエラ(山岳地域)45%、アマソニア 5%となっ ており、人口の多くは、コスタ及びシエラに分散していることがわかる。人口の 77%メソティソと呼ばれる白人と先住民の混血であり、白人が 10%、先住民が 7%、ムラー トと呼ばれる黒人と先住民の混血が 3%、黒人が 2%となっている 4 。しかし、実際には 先住民の人口は 20%にのぼるとの指摘もある。公用語はスペイン語であるが、先住 民の多くはケチュア語を話している。また、アマソニアに住んでいる先住民は様々な 言語を使用している。 エクアドルは 14 世紀にインカ帝国に支配された後、16 世紀にスペインの植民地と なった。スペインによる植民地支配は約 300 年に及び、その間支配者である白人と被 支配者である先住民の間に経済格差が生じていった。エクアドルは 1822 年に大コロ ンビアとしてスペインから独立し、1830 年に大コロンビアから分離独立を果たした。 日本とエクアドルは 2008 年に外交関係樹立 90 周年を迎えている。 3 外務省ホームページ「エクアドル共和国基礎データ」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ecuador/data.html; アクセス日 2009 1 16 日) 4 外務省ホームページ「エクアドル共和国基礎データ」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ecuador/data.html; アクセス日 2009 1 16 日)

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第3章 評価対象の概要・概況

3-1 エクアドルの開発状況

3-1-1 エクアドルの政治経済状況

1.国の概観

エクアドル共和国は南米大陸の北西に位置し、大西洋に面している。エクアドルの

面積は 25.6 万平方キロメートルであり、日本の本州と九州を足した面積とほぼ同様

である3。エクアドルの国名は、スペイン語で赤道を意味する「el ecuador」が由来とな

っており、その名のとおり、エクアドル北部地域には赤道が通っている。エクアドルは

南米の中でも多様性に富んだ地形を有しており、アンデス山脈の高地「ラ・シエラ」、

海岸地方の平地「ラ・コスタ」、アマゾンの熱帯雨林「エル・オリエンテ(アマゾン地域を

示す「アマソニア」と区分されることもある)」、そしてガラパゴス諸島の4つの地域区分

に分けられている。首都であるキトは海抜 2,850m のアンデス山脈の中腹に位置して

いる。

エクアドル統計庁( INEC: Instituto Nacional de Estadísticas y Censos deEcuador)によると、2006 年のエクアドルの人口は、1,328 万人であり、人口の 62%が都市部に集中している。農村部に占める人口の割合は 38%である。その割合を地

域別にみると、コスタ(海岸地域)50%、シエラ(山岳地域)45%、アマソニア5%となっ

ており、人口の多くは、コスタ及びシエラに分散していることがわかる。人口の 77%は

メソティソと呼ばれる白人と先住民の混血であり、白人が 10%、先住民が 7%、ムラー

トと呼ばれる黒人と先住民の混血が 3%、黒人が 2%となっている4。しかし、実際には

先住民の人口は 20%にのぼるとの指摘もある。公用語はスペイン語であるが、先住

民の多くはケチュア語を話している。また、アマソニアに住んでいる先住民は様々な

言語を使用している。

エクアドルは 14 世紀にインカ帝国に支配された後、16 世紀にスペインの植民地と

なった。スペインによる植民地支配は約300年に及び、その間支配者である白人と被

支配者である先住民の間に経済格差が生じていった。エクアドルは 1822 年に大コロ

ンビアとしてスペインから独立し、1830 年に大コロンビアから分離独立を果たした。

日本とエクアドルは 2008 年に外交関係樹立 90 周年を迎えている。

3 外務省ホームページ「エクアドル共和国基礎データ」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ecuador/data.html;アクセス日 2009 年 1 月 16 日)4 外務省ホームページ「エクアドル共和国基礎データ」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ecuador/data.html;アクセス日 2009 年 1 月 16 日)

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表 3-1 エクアドルの県別人口分布

県名 県庁所在地 人口(2001)

面積(km2)

人口密度(人/km2)

Canton数

1 Azuay Cuenta 626.857 8,639 73 152 Bolivar Guaranda 176.089 3,254 54 73 Cañar Azoques 206.981 3,908 53 74 Carchi Tulcán 160.983 3,699 44 65 Cotopaxi Latacunga 384.499 6,569 59 76 Chimborazo Riobamba 513.225 5,287 97 107 El Oro Machala 559.846 5,988 93 148 Esmeraldas Ciudad Esmeraldas 385.223 15,216 25 89 Guayas Guayaquil 3,070.145 20,503 150 2810 Imbabura Ibarra 344.044 4,599 75 611 Loja Loja 440.835 11,027 40 1612 Los Rios Babahoyo 650.178 6,254 104 1313 Manabí Portoviejo 1,186.025 18,400 64 2214 Morona Santiago Macas 115.412 25,690 4 1215 Napo Tena 90.139 13,271 7 916 Pastaza Puyo 61.779 29,520 2 417 Pichincha Quito 2,101.799 9,494 221 918 Tungurahua Ambato 441.034 3,334 132 919 Zamora Chinchipe Zamora 76.601 23,111 3 920 Galápagos Puerto Baquerizo

Moreno18.640 8,010 0 3

21 Sucumbíos Nueva Loja 128.995 8,331 15 722 Orellana Francisco de Orellana 86.493 20,733 4 423 St.D de los

TsáchilasSt.Domigo de losClorados

287.018 1

24 Santa Elena Santa Elena 238.889 3

注) 23 Santo Domigo de los Tsachilas、24 Sata Elena の 2 県は 2007 年 11 月に成立

出所:•INEC(2002) Censo de Poblacion y Vivienda 2001 より作成

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表 3-2 エクアドルの地方別人口分布

男性 女性 合計

都市部 4,103,193 62.39% 4,332,445 64.65% 8,435,638 63.53%

農村部 2,473,520 37.61% 2,369,201 35.35% 4,842,721 36.47%

計 6,576,713 100.00% 6,701,646 100.00% 13,278,359 100.00%

Costa 3,305,110 50.25% 3,319,483 49.53% 6,624,594 49.89%

Sierra 2,947,636 44.82% 3,063,209 45.71% 6,010,845 45.27%

Amazonia 323,967 4.93% 318,953 4.76% 642,921 4.84%

計 6,576,713 100.00% 6,701,645 100.00% 13,278,360 100.00%

出所:INEC (2007) Encuesta de Condiciones de Vida (ECV) 2005-2006 より作成

2. 政治

(1)政治動向概観

エクアドルにおける政治は、独立(1822年)以来、自由党と保守党の 2大政党制が

長く続いた。しかし 1979 年の民政移管後は、小党分立の傾向が強くなり、国会で与

党が過半数を占めることは少なかった。このため、政権は常に不安定で、1979 年か

ら現在までに 11 回の政権交代があり 12 人の大統領が就任した。このように政情不

安が常態化した背景には、(イ)政党腐敗とポピュリズム、(ロ)山岳部と海岸部の対立

のように地域主義が政治に影響(少数与党)、(ハ)軍の政治に対する影響力(クーデ

ターを起こし易い)があると言われている。

2007年 1月に就任したコレア大統領(左派政権)は政治改革を最優先課題とし、そ

の柱である憲法改正を通じて政権基盤の強化を行っている。同年4月15日には制憲

議会召集の是非を問う国民投票が実施され、82%の賛成で承認された。そして同年

9 月 30 日に実施された制憲議会選挙ではコレア派は過半数を獲得した。2008 年 9月に実施された憲法改正を問う国民投票では、国民の支持を受け、新憲法草案は過

半数の賛成票をもって可決された。同 10 月の新憲法公布、そして 2009 年 4 月の新

憲法下での新たな選挙による再選、を目指している。

以下、評価対象期間である 2003 年以降の内政の変化を概観する。

【グティエレス政権】2003 年 1 月に就任したグティエレス大統領は、労働組合系の支

持を受け、先住民系パチャクティクを巻き込んだ連立政権を発足させたが、その後

2003年8月のパチャクティクの連立離脱、外交面での米国への接近等の理由から支

持層を失い、数か月で政権運営は困難に直面した。野党勢力と手を結び、何とか政

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権維持をしたものの、2004 年末には、最高判事更迭劇を契機として反政府活動が活

発化、2005 年 4 月に国会により大統領罷免を決定された。同決議によりパラシオ副

大統領が大統領を継承した。

【パラシオ政権】パラシオ政権は、就任時の重点政策として小選挙区制導入などの政

治改革やインフラ整備を挙げて、2005年政権に就いた。政情の長期安定化を最優先

課題として、憲法改正、司法改革、選挙法の改正(国会議員数の見直し、二院制の導

入)などを国民投票にかけ、2007 年の次期政権から、それまでの汚職・腐敗の構図

を取り払い、新しい体制でエクアドルの立て直しを目指す改革案を国会に提出したが、

既成政党の反対で審議未了のまま任期を終えた。

【コレア政権】2006年10月15日に行われた総選挙で、コレア候補は、ノボア候補(国

家行動機構革新党(PRIAN: Partido Renovador Institucional Acción Nacional))に4%の差を付けられ 2 位となったが、同年 11 月 26 日に行われた決選投票で勝利し、

2007 年 1 月から 4 年の任期で政権の座についた(1979 年の民政移管以降、8 回総

選挙が行われたが、第一回投票で候補者が過半数を獲得したことはなく、すべて決

選投票)。国会においてコレア大統領の国家同盟(AP:Alianza País)は議席を持たな

いことから、左派及び中道左派との連携を模索し、勝利した。一方、決選投票で敗れ

たノボア候補の PRIAN は国会議員選挙で第一党となっており、この状況を打開する

ため、コレア大統領は制憲議会の招集の是非を問う国民投票を 2007 年 4 月に実施

し、国民の同意を得た後、同9月に制憲議会議員選挙を実施。結果、与党APが議員

数の過半数を押さえることに成功している。開催期間中、制憲議会は大統領・国会以

上の権限を持つ。2008年9月に実施された憲法改正を問う国民投票では、新憲法案

は約 64%の賛成を持って承認された。

表 3-3 2006 年 11 月 26 日大統領選挙決選投票結果候補者名 得票数

(票)得票率(%)

コレア(AP) 3,517,635 56.67ノボア(PRIAN) 2,689,418 43.33有効投票総数 6,207,053 100.00白 票 70,219無効票 681,960投票総数 6,966,145有権者登録総数 9,165,125

注)政党の正式名称は次のとおり。AP:Alianza País(国家同盟)、PRIAN:Partido Renovador Independiente Acción Nacional(国家行動機構改進党)出所: エクアドル最高選挙裁判所ホームページ(http://www.tse.gov.ec/)

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(2)コレア政権の特徴

コレア政権の公約の主な柱は新憲法制定のための制憲議会の設置、対米自由貿

易協定(FTA: Free Trade Agreement)交渉の打切り、米軍によるエクアドル空軍基

地(マンタ基地)の2009年11月以降の使用許可延長拒否、予算を貧困層に重点的に

配分するための社会開発政策の充実化である。

また、2007 年就任時の各方面への発言からみたコレア政権の特徴としては、

(1)社会政策資金捻出のための対外債務支払を限定、(2)ドル化の継続、

(3)石油輸出国機構(OPEC: Organization of the Petroleum ExportingCountries)への再加盟(2007 年に加盟)、(4)多国籍石油企業との契約の見

直しの可能性の示唆、(5)石油精製能力強化、(6)アンデス共同体(CAN:Comunidad Andina)の制度強化及び南米南部共同市場(MERCOSUR: MercadoComún del Sur)への加盟希望、などがある。なお、米国との FTA には農産物・

製造業の打撃を懸念し反対の立場を取っているが、米国がアンデス諸国に与え

ている優遇的取扱いである ATPDEA(Andean Trade Promotion and DrugEradication Act 5)については、2009 年 6 月に到来する期限の延長を希望してい

る。

(3) コロンビアとの国境における問題

グティエレス、パラシオ政権以来、コロンビア政府の国境付近での麻薬撲滅のため

の除草散布が問題であったが、2008 年 3 月コロンビア政府がエクアドル領内にある

反政府組織 FARC の基地を空爆したことから、両国関係が悪化した。

(4) コレア政権 1 年目の評価

コレア大統領は、2008年 1月の政権 1周年演説の中で、今後の政策方針として内

政・外交について次のように述べている。6

イ 内政

(イ) エクアドルを地方自治促進の観点から見て7つの県に統合し、地方自治が円滑

5 コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビアの麻薬原産国 4か国に対し与えられているアメリカ市場への優遇関税措置で、アンデス特恵関税制度とも呼ばれる。コカインの原料、コカの葉の代替作物化など麻薬対策への協力の見返りに1991年当時のブッシュ政権が打ち出した。アンデス諸国は6000品目以上の産品を関税なしで輸出可能となり、各国の対米輸出ブームを支えている。6 在エクアドル日本大使館(2008 年)「エクアドル内政・外交 2008 年 1 月」

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に行われるようにする必要がある。従来の政治集団を形成するような政治的区割や、

山岳地帯・海岸地帯・アマゾン地帯・ガラパゴス諸島といった地政学的に住民を分割

するような自然区割は望ましくない。

(ロ) 省庁や国家機関の数が多く極めて非効率であるので、大統領府に7つの政策

調整担当大臣を置き、同大臣はグループ化された傘下の各行政機関の政策を調整

する。

ロ 外交

「プラン・エクアドル」の実行に当たり、南米諸国連合(UNASUR: Union deNaciones Suramericanas)やCANと協力していく。また、エクアドルをアジアとラテン

アメリカの門戸とすべく尽力する。また、「マンタ-マナウス間回廊」の開設にも努め

る。

ハ 経済

(イ) 経済政策における政府の主たる義務は、国内生産を活性化し、十分な雇用を

創出することである。セメント産業は、国内生産業の柱となるものであるため、政府は

その活性化のため外国投資誘致等を目指している。

(ロ) 鉱山部門においては、鉱山規則・コントロール庁及び国営鉱山公社

(Corporacion Estatal Minera)を設立予定である。ただし、新鉱山法案が承認される

までは、制憲議会は鉱山コンセッションを与えることを控えるべき。

(ハ) エクアドル経済のアキレス腱は外的部門であり、非石油部門の貿易赤字は年

間4,000百万ドルに上るが、このような状況の原因は通貨のUSドル化によるものであ

る。エクアドル経済を支えているのは、合計2,000百万ドルに及ぶ原油価格の高騰と

海外移民による送金である。また、エクアドルには奢侈品及び国内産品と競合する産

品に高い関税を課し、国内産業促進に必要とされる原料輸入に対する関税を撤廃す

るという能動的な貿易政策が必要とされている。

(ニ) 2008年4月、4ヶ所の水力発電所建設を開始する予定。これにより、1時間当た

りの1KWの単価を2セントに減少し、発電能力を45%アップすることができるだろう。

これらにより、エクアドルは電力輸入国であることから卒業し、ひいては電力輸出国と

なる可能性もある。

21

(5) 行政

イ 行政機関

エクアドルの行政は、22 省、5 つの調整機関、8 つの庁からなる。

国際協力の窓口となるエクアドル国際協力庁(AGECI)は、2007 年大統領令 699号により、外務省管轄化の国際協力庁(INECI)から移管され大統領府国家計画開

発庁(SENPLADES: Secretaría Nacional de Planificación y Desarrollo)の管轄下

となっている。

表 3-4 エクアドルの行政機関Ministerios 省 備考Medio Ambiente 環境省Trabajo y Empleo 労働雇用省Finanzas 財務省Agricultura,Ganadería, Acuacultura y Pesca 農牧水産省Transporte y Obras Pública 運輸・公共事業省Gobierno, Cultos, Policías y Municipalidades 内務自治省Electricidad y Energía Renovable 電力・再生エネルギー省Relaciones Exteriores, Comercio y Integración 外務・貿易・統合省 従来の INECI は、SENPLADES へ移動Cultura 文化省Coordinación de la Producción 生産調整省Coordinación de Desarrollo Social 社会開発調整省Minas y Petróleos 鉱山石油省LitoralJusticia y Derechos Humanos 司法・人権省Salúd Pública 公共保健省Turismo 観光省Industrias y Competitividad 産業・競争力省Inclusión Económica y Social 経済社会抱合省Educación 教育省Desarrollo Urbano y Vivienda 都市開発・住宅省Defensa Nacional 防衛省Deporte スポーツ省(Ministerios de Coodinadores) (調整関連省庁)

Coordinación Interna y Externa 内外調整省Coordinación de Patrimonio Cultural yNatuaral 文化自然遺産調整省

Coordinación de Política Económica 経済政策調整省Coordinación de Política 政策調整省Coordinador de Sectores Estratégicos セクター戦略調整省

Secretarías 庁Nacional de Planificación y Desarrollo 大統領府国家計画開発庁

INECSENACYT

統計庁科学技術庁

Decreto Ejecutivo 490 del viernes 3 de agostode 2007.

AGECI 国際協力庁Decreto Ejecutivo 699 del pasado 30 deoctubre de 2007 により外務省の INECI より移管

General de la Presidencia 大統領府官房庁de Pueblos, Movimientos Sociales yParticipación Ciudadana 国民・社会運動・市民参加庁

Nacional de Ciencia y Tecnología 科学技術庁General de la Administración Pública yComunicación 公共管理・コミュニケーション庁

General Jurídica 司法庁Nacional de Migrante 移民庁Nacional Antecorrupción 汚職対策庁

ロ 行政区出所:エクアドル大統領府ホームページ(http://www.tse.gov.ec)より作成

22

統計庁( INEC)のホームページによるとエクアドルの行政区は、24 の県

(Provincia)からなり、その下に郡(Canton)及び市に相当する区(Parroquia)がある。

また、州知事が地方行政における長であるが、大統領によって任命される。

24 の県は、地理的に大きく 4 地域に分けられている。

シエラ(山岳地帯)

コスタ(海岸地帯)

アマソニア(アマゾン地域)

島(ガラパゴス)

図 3-1 行政区マップ

出所:INEC ホームページ(www.inec.gov.ec/)

23

3.経済

(1)概観

エクアドルが達成した 1990 年代初期の高い経済成長率と福祉の改善は 1990 年

後半の経済パフォーマンスの悪化により一転した。一連の国際的経済・金融危機とい

う外的ショックと自然災害、そして脆弱な経済運営によって、1999 年末には国内にお

いても厳しい経済危機が発生した。

こうした経済危機の影響とインフレは2000年における通貨のUSドル化の引き金と

なった。ドル化は一時国内に大きな動揺をもたらしたものの、インフレ抑制や経済安

定化には役立った。ドル化以降の経済回復は一部には交易条件の改善、特に石油

価格の高騰によるものとされている。2004 年~2005 年は良好な経済パフォーマンス

により年平均 7%の成長率を達成した。

最近では石油価格の高騰にかかわらず経済成長は低迷し、2007 年にはラテンア

メリカの平均成長率を下回る 2.5%となった。2008 年の実質経済成長率は政府の強

力な財政支出により 3.1%が期待されたものの、食料価格の上昇からインフレ率は

9%に達するものと見込まれている。

民間投資が低調であることは、エクアドルの経済成長率維持を阻害する主要なボト

ルネックとなっている。投資環境の悪化の他に、新憲法の合意内容に関する不信感

から当面民間投資は低調にとどまると予測されている。具体的には、エネルギー、銀

行、通信といった戦略的な分野において政府介入が増大してくると考えられている。

表 3-5 エクアドルのマクロ経済指標の推移(2002-2008 年)

(単位:%)2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

実質 GDP 成長率 4.2 3.6 8.0 6.0 3.9 2.5 3.1消費物価指数の変化(前年比) 9.3 6.1 1.9 3.1 2.9 3.3 9.0貿易収支 -5.6 -1.7 -1.4 -0.5 1.5 1.0 2.7

石油 6.2 5.5 8.5 9.6 10.6 10.5 14.3非石油 -11.8 -7.1 -9.8 -10.1 -9.1 -9.5 -10.0

経済収支 -4.7 -1.5 -1.7 0.8 3.6 3.6 4.9対内直接投資(FDI) 5.1 3.0 2.6 1.3 0.7 0.4 0.9

非石油 0.9 0.8 0.6 0.3 0.2 0.2 0.2移民送金 5.8 5.7 5.6 6.6 7.1 7.0 6.4外貨準備高(輸入額何ヶ月分) 2.0 2.2 2.2 2.7 2.1 3.2 3.6公的負債(ドルベース)*1 56.9 49.9 43.1 38.5 33.9 32.0 28.2

対外公的負債 45.8 40.2 33.9 29.2 24.7 23.5 20.6

エクアドル原油輸出価格(ドル/バーレル) 21.8 25.7 30.1 41.0 49.6 59.9 58.0

出所:World Bank (2008a) Ecuador Country Brief

*1 偶発負債は除く(2007 年の GDP の 12%以上を占めるとされている)

24

エクアドルの短期的なマクロ経済の状況は安定しているが、米国に端を発する世

界的不況と金融危機の影響で、外部環境は急速に悪化しつつある。これはエクアド

ルの輸出に負の影響を与え、成長率にも影響しよう。主な懸念材料は、徴税率の低

さや石油価格に左右される構造を有する政府財政のバランスが脆弱なことと、国際

市況に影響されやすい輸出構造によって国際収支の経常勘定バランスが脆弱である

ことである。

失業率は 1990年代後半以降、景気の停滞と政局不安などから10%を上回る高い

水準にあった。キト、グアヤキル、クエンカの 3 都市を対象としたエクアドル中銀統計

によれば、2000 年のドル化以降は雇用拡大や海外移民の増加により、失業率は

10%以下まで低下したこともあったが、その後再び 10~11%台へと上昇している。ま

た、国際通貨基金(IMF)の国際金融統計(IFS: International Financial Statistics)によれば、2006 年の失業率は 10.1%であった。

表 3-6 エクアドルの失業率

(単位:%)

2000 2003 2004 2005 2006

9.0 11.5 8.6 10.7 10.1出所:IMF(2007) International Financial Statistics 2007

最近では、2008 年秋からの原油価格の下落や対外債務よりも国内の社会開発に

優先的に支出をするといったコレア政権の公的債務の利子不払い宣言(デフォルト)

は、海外からの直接投資を減少させ国際金融市場からの資金調達を困難にする可

能性があるなど、エクアドル経済にとって一層の懸念材料となろう7。

なお、国際機関や二国間ドナーからの借款については、エクアドル政府不当債務

監視委員会の報告書によれば、世界銀行及び米州開発銀行(IDB)からの債務が不

当債務に含まれると解釈できる記述があるものの、具体的にどの債務をさすのかは

明らかになっておらず、現時点で国際機関に対するエクアドルからの債務返済に特

段の問題は発生していない。ただし、パリクラブ債務については不当債務とは認定さ

れていないものの、右報告書にはパリクラブのコンディショナリティ原則等が反則的で

ある旨記述されていることや、右返済停止宣言によりエクアドル国債の市場価格の大

7 この不履行宣言は、全ての公的債務不履行を宣言したものではないことには注意する必要がある。エクアドル政府は、2000 年のノボア政権当時、対外債務の再構築のため、既存のブレディー債 62 億 9,800 万ドルをグローバル国債に転換した。この転換について、現政権は、ブレディー債の市場価値が 15 億 7,500 万ドルであったにもかかわらず不当に水増しされ、39 億 5,000 万ドルのグローバル国債が発行された、また、この転換交渉が JP モルガン等の米国系金融機関により行われたことは不当であると説明している。ノボア政権下で発行されたグローバル国債は、グローバル国債 2012(債務残高 5億 1,000万ドル、年利 12%)、グローバル国債 2015(債務残高 6億 5,000 万ドル、年利 9.38%)、グローバル国債 2030(債務残高 27 億ドル、年利 10%)の 3 種類である。これらのうち、今次、エクアドル政府が債務不履行を宣言したのは、2008 年 12 月 15 日に利払い期日を迎えたグローバル国債 2015 についてのみである。

25

幅な減価見込まれているといった問題が発生している。

このような状況の中、現時点で対我が国への債務返済を含め、パリクラブ債務の

返済に特段の問題はないものの、現在のエクアドルを取り巻く状況に鑑みれば、今後

債務返済が滞る可能性も否定できず、引き続き状況を注視していく必要がある。

(2)エクアドルマクロ経済の特徴

エクアドル経済の産業構造は、石油や金、銅などの地下天然資源やバナナやエビ

などの農林水産資源からなる一次産品依存型で、これらが生産、輸出の大半を占め

る。つまり、天候や国際市況に左右され易い不安定な構造を持ち、世界経済の動向

に左右されがちな産業構造を有する。このため、エクアドルは産業構造の一層の多

様化を図る必要がある。エクアドルは 1970 年代初めまでは農産物が総輸出の 80%を占める農業国であったが、1972 年以降石油生産・輸出が本格化し、現在は石油産

業が経済の中心となっている。

1999 年に経済危機・金融危機8の影響を受けた際の打開策として、2000 年 1 月に

US ドルを法定通貨とする通貨改革の実施を宣言した。これによって、エクアドルは南

米では初となる完全なドル化を実施した。ドル化により経済は安定化に向かい、2004年には8%の成長率を達成した。しかし世界経済の後退に伴う石油の生産・輸出の減

少から 2007 年の成長率は 2.5%に低下した。なお、2008 年の成長率は 3.1%と推定

されている(世界銀行統計)。

表 3-7 エクアドルセクター別国内総生産

(GDP: Gross Domestic Product)

単位セクター (百万ドル) (%) (百万ドル) (%) (百万ドル) (%) (百万ドル) (%) (百万ドル) (%)

農林水産業 2,210 7.7 2,219 6.8 2,463 6.6 2,777 6.7 3,196 7.2鉱業 2,859 10.0 3,981 12.2 5,396 14.5 6,557 15.8 6,876 15.5製造業 2,735 9.6 2,881 8.8 3,296 8.9 3,725 9.0 4,063 9.1電気・水道 661 2.3 579 1.8 541 1.5 554 1.3 617 1.4建設 2,137 7.5 2,680 8.2 3,100 8.3 3,482 8.4 3,784 8.5卸売・小売 3,776 13.2 3,999 12.3 4,402 11.8 4,828 11.7 5,264 11.8運輸・通信 2,513 8.8 2,639 8.1 2,862 7.7 2,999 7.2 3,304 7.4金融・保険 574 2.0 670 2.1 895 2.4 1,087 2.6 1,233 2.8サービス 7,419 25.9 8,836 27.1 10,118 27.2 11,276 27.2 12,021 27政府サービス 1,624 5.7 1,769 5.4 1,946 5.2 2,148 5.2 2,338 5.3自営業 48 0.2 50 0.2 48 0.1 60 0.1 63 0.1その他 2,786 9.7 3,045 9.3 2,903 7.8 2,915 7.0 3,099 7調整項目 -706 -2.5 -705 -2.2 -784 -2.1 -1,005 -2.4 -1,144 -2.6総計 28,636 100 32,642 100 37,187 100 41,402 100 44,490 100

20072003 2004 2005 2006

出所:Instituto Espanol de Comercio Exterior ホームページ

8 (1)財政収支悪化、(2)エルニーニョによる自然災害、(3)石油価格の下落、(4)政情不安によるスクレ安、(5)企業業績悪化による不良債権の増大、(6)銀行預金流出、(7)ブレディ債にデフォルト

26

一方、物価は 1990 年末の経済危機と政治不安により通貨スクレが大幅に下落し

1999 年のインフレ率(CPI: Cosumer Price Index)は 52.2%達した。2000 年にはス

クレの対ドルレートが切り下げられた(1ドル=25,000スクレで固定)ことから輸入イン

フレや賃金上昇に発展し 96.1%という高いインフレ率を記録した。しかし、ドル化によ

って物価上昇を抑制することに成功し、2002 年は 9.3%、2004 年は 1.9%とインフレ

率は大幅に改善した。2006 年のインフレ率は、食糧価格の下落により 2.9%であった

(エクアドル中銀)。その後、世界銀行の統計によれば 2007 年のインフレ率は 3.3%を維持したが、2008 年は食糧価格の高騰から 9%に上昇したと推定されている。

図 3-2 1988-2005 年の都市の貧困率、実質最低賃金、実質為替レート

(指標:1990 年を 100 とする)

出所: SIISE(2006)El reto de alcanzar los objetivos de desarrollo del

milenio en Ecuador

27

(3)財政

歳入面では、石油収入への依存度が高いため、石油価格に左右され易く不安定で

ある。また歳出面では非効率な徴税システム、国境紛争への支出増加、などにより

2001 年以降は慢性的赤字となっている。

表 3-8 エクアドル中央政府の財政

(対 GDP 比率(%))2000 2003 2004 2005 2006

収入 20.4 16.7 15.0 16.3 16.7支出 20.3 17.5 16.8 16.8 16.9収支 0.1 -0.4 -1.0 -0.5 -0.2注)収支の誤差はエクアドル大蔵省の微調整による

出所: Banco Central del Ecuador (2006) Memoria Anual 2006

(4)貿易、対外債務

エクアドルの国際収支は 2006 年に赤字に転落している。これは石油輸出により貿

易収支が大幅に改善されているものの、海外からの直接投資の停滞や現・預金など

の流出により、投資・資本収支の赤字が急増しているためである。

表 3-9 国際収支表

(単位:百万ドル)2004 2005 2006

1 経常収支 -542 295 1,503貿易収支 284 732 1,729輸出 7,968 10,427 13,125(うち石油・石油精製) 4,234 5,870 7,545輸入 -7,684 -9,695 -11,395サービス収支 -954 -1,130 -1,325所得収支 -1,902 -1,942 -1,950移転収支 2,030 2,635 3,049

2 投資・資本収支 140 -102 -2,062(うち直接投資) 837 493 271

3 誤差脱漏 683 473 428(総合収支) 281 666 -131

出所: Banco Central del Ecuador (2006)

28

国際収支表から見るエクアドルの海外取引の特徴は、以下のとおりに要約される。

イ 石油輸出が輸出額の半数を占めることから、貿易収支は国際石油価格に左右さ

れる。

ロ エクアドル人の海外からの送金増加により経常移転収支が増加している。

ハ これら「石油収入」と「海外からの送金」は経常収支の大幅な改善に寄与している

が、この 2 つの要因が負の影響をもたらすと経常収支や国際収支が悪化する。

ニ 直接投資には一定の流入があるものの、対米関係の悪化、ベネズエラとの関係

強化による投資環境の悪化により減少傾向にある。また現預金などはネットの流

出が続き、投資・資本収支を大幅に悪化させたことから総合収支は赤字に転落し

た。

(5) 主な産業

イ 石油と石油産業

石油部門の発展は 1960~1970 年代にテキサコ、ガルフがアマゾン地域で大油田

を発見したことに始まる。1980 年代後半は石油価格の低迷や地震によるパイプライ

ンの破壊などにより石油生産量が減少したが、1990 年代は石油開発への誘致のた

めに法令が改正され、2003 年には第2石油パイプラインが稼動したことから生産量と

輸出量は大幅に拡大した。

エクアドルはラテンアメリカの最大の原油輸出国の1つで、原油は総輸出額の約半

分、税収の 1/3 を占める。しかし、国内の需要を満たすための石油精製施設が不足

していることから精製された石油製品を海外からの輸入に依存している。高い石油価

格は輸出収入を増加させる反面、精製石油輸入額も増加することから、石油価格の

高騰によってエクアドルは必ずしも恩恵を受けているというわけではない。1992 年の

OPEC 脱退後、2007 年には再加盟したが、OPEC の中では小規模の石油生産国で

あり、52 万バーレル/日の生産割当てをもつ。(現在は割当よりも低い水準で生産し

ている)。石油ガスジャーナル(Oil and Gas Journal)によれば、エクアドルの石油埋

蔵量は 45 億バーレルで南米では 4 番目である。また、南米では5番目の産油国であ

り 2007 年の生産量は 2006 年(53 万 8 千バーレル/日)より減少し 51 万 2 千バー

レル/日であった。石油輸出の 50%は米国向け、残りはラテンアメリカとアジア向け

であった。すなわち、2007 年には 20 万 3 千バーレル/日の原油と精製品を米国に

輸出しているが(米国から見れば輸入の 2%)、これは南米ではベネズエラに次ぐ輸

出量である。

29

ロ バナナと対日本輸出

バナナはエクアドル輸出産品として石油に次ぐ重要な品目で、10%のシェア(2006年)を占めている。日本に対する輸出は、農林水産物が大半を占めているが、そのな

かでもバナナは対日本輸出の 3 割近くを占め(2006 年)、3 番目の石油・石油製品

(11%)を大きく引き離している。対日貿易は 2001 年以降赤字基調が続き 2007 年は

3 億ドル近くの赤字である。

ハ 投資環境と日本の企業

コレア政権は米国との依存経済(2005年の輸出の50%が米国向け)を軽減する政

策を打ち出し、FTA 交渉の打切り、ベネズエラとの関係強化、中国国営企業の石油

開発認可などを行ったため、海外からの投資は 2005 年の 4.9 億ドルから 2007 年に

は 1.9 億ドルに減少するなど低調であった。

日本企業についても、ブラジル企業から石油のコンセッションを譲り受けた企業の

プロジェクト具体化が、種々の理由でエクアドル政府の認可を受けるのに長時間かか

るなど、積極的に進出しようとする環境にはない。

30

3-1-2 エクアドルの社会開発状況

エクアドルの社会開発状況を分析する。

1.概観

1000 人当たりの「乳幼児死亡率」は 1998 年の 19%から 2003 年には 15%に減少

したが、2006 年には再び 20 に増加している。

「平均寿命」に関しては 2000 年の 72.3 歳と比べ、2008 年には 75.0 歳となった。

また、「高等学校への進学率」は1999年の51.4%から2006年は55.4%と上昇した。

貧困と不平等の撲滅はエクアドルの主要な開発目標である。このためには労働集

約的な成長、開発過程における貧困層(特に女性)の役割重視、より広範囲の人間に

対する社会サービスの充当を達成することが必要となってくる。

貧困人口の割合は 1990年の 40%から 2001年には 45%に増加したが、これは主

として 1997年から 1998年にかけてアジアで発生した経済危機の影響がその後中南

米に及んだことが原因として挙げられる。2001 年からはマクロ経済の安定化が貧困

の増加を緩和し、2001 年~2004 年の貧困率は 20%代にまで落ち着いた。しかしな

がら、2004 年における農村の貧困水準がいまだ都市の 2 倍以上であることにみられ

るように、都市と農村の格差は大きい。人口の 10%を占める富裕層が、50%を占め

る貧困層の 3 倍以上、貧困層 50%のうち 10%に相当する最貧層の 60 倍以上の所

得を得ているという事実からも理解できるように、エクアドルはいまだに大きな貧富の

格差を解消できていないのが現状である。

2.貧困

(1)貧困の定義

エクアドル統計庁(INEC)によると貧困の定義は様々であり、今まで不定期に実施

されてきた生活状況調査(ECV: Encuesta de Condiciones de Vida)の結果より、

イ)消費・収入によるもの、ロ)基礎ニーズによるもの、ハ)Kuzman 分類法にによるも

の、の 3 通りの貧困指標を算出している。政府の様々な文献を見る限り、消費・収入

レベルによる貧困指標が最も使用されている。

消費・収入による貧困指標

ECV の結果をもとに収入による貧困指標が算出されている。2006 年の第 5 回

31

ECV による貧困の定義は、表 3-10 のとおりである。

表 3-10 2006 年 ECV の結果:収入による貧困の定義

定義

最貧困1 人あたり 1 日 2141 キロカロリーの最低限の栄養を確保するだけの

収入を得ない層(1 日あたり 1.06 US ドル以下)

貧困最低限のカロリーと基礎サービスを得ることができない層(一日あたり

1.89 US ドル以下)

出所:INEC (2007)

エクアドルにおける貧困状況を表わす際には、ECV の結果をもとに作成された表

3-11 がよく使用されており、コレア政権の国家開発計画にも掲載されている。

この表から、2006 年時のエクアドルの貧困状況の特徴として以下のことを挙げるこ

とができる。

貧困層は、国民全体の 38%、最貧層は 13%であり、国民の 10 人に 4 人が貧困

として位置付けられている。

貧困層の割合が高いのは、アマソニア地域で 60%に上り、最貧層も 40%と非常

に高い数値を示している。貧困層の割合は、コスタ地域の方がシエラ地域よりも

高いが、最貧層の割合は、シエラ地域の方が高くなっている。

都市部農村部別では、農村部の貧困層及び最貧層の割合が 60%強、25%強と

都市部に比較して圧倒的な高さとなっている。

人種別では先住民の貧困の割合が高く約68%に達し、最貧困でも40%弱を占め

る。

1999 年の ECV と比較すると全体的に数値は改善しているが、同年は通貨危機

の年で人々の生活状況が逼迫していたことを考慮すれば、1995 年の数値と合わ

せて貧困状況の変化を分析することが肝要である。その際、コスタ地域の貧困・

最貧とも 1995 年と比較すると悪化している点に注意する必要がある。また国全

体の数値についても 1999 年と比較するとドラスティックに数値が改善したように

見えるが、1995 年と比較すると状況はそれほど大きく改善していないことがわか

る。

国家開発計画にも述べられているとおり、この間人口全体が増加していることを

考えれば、貧困者、最貧困層者の絶対数は増加している。

32

表 3-11 エクアドルの貧困状況の推移

(収入によるもの 単位:%)1995 1999 2006

貧困 最貧 貧困 最貧 貧困 最貧地域別

海岸地域 36.07 9.06 52.85 15.98 40.31 10.85山岳地域 41.73 18.53 51.44 24.65 33.75 12.20

アマゾニア地域 60.57 23.80 NA NA 59.74 39.60都市部農村部別

農村部 63.00 27.37 75.05 37.68 61.54 26.88都市部 23.02 4.11 36.39 7.99 24.88 4.78

全体国全体 39.34 13.60 52.18 20.12 38.28 12.86

出所:SENPLADES(2007) Plan Nacional de Desarrollo 2007-2010, SIISE,INEC の資料より作成

(2)貧困の分布

ECV による県別の貧困指標は表 3-12 のとおりである。広大かつ人口稀少のアマ

ソニア地域は、5 県平均の数値を取り、アマソニア地域として統計がまとめられている。

最も貧困が深刻なのはボリバル県で、以下アマソニア地域、カルチ県、チンボラソ県、

マナビ゙県、エスメラルダス県と続いている。ボリバル、カルチ、チンボラソは、山岳地

域(シエラ)であるが、マナビ、エスメラルダスは沿岸地域(コスタ)である。最貧層の割

合を見てみると、アマソニア地域が約 40%で最も多く、続いてボリバル、チンボラソ、

カルチ、コトパクシ、エスメラルダスの各県が 20%を超えており、ロハ、インバブラの

両県の指標も限りなく 20%に近い数値を示している。

この結果を見る限り、広大、人口稀少かつアクセスの厳しいアマソニアを除けば、

山岳地帯では、特にボリバル、カルチ、チンボラソ、コトパクシ、ロハ、インバブラの貧

困状況が深刻であることがわかる。また沿岸地域においては、マナビ、エスメラルダ

スの両県における数値が深刻であると言うことができる。

33

表 3-12 県別貧困指標

(単位:%)県名 貧困 最貧

Bolívar 60.62 32.31Amazonía 地域* 59.76 39.61Carchi 54.59 24.73Chimborazo 54.09 28.76Manabí 53.23 18.69Esmeraldas 49.75 21.25Los Ríos 49.04 12.61Cotopaxi 47.93 21.66Loja 47.16 19.90Imbarura 43.69 19.81Canár 38.73 13.13Tungurahua 36.20 10.19Guayas 34.77 7.34El Oro 28.07 5.13Azuay 26.62 7.03Pichincha 22.42 5.13

国全体 38.28 12.8

*Morona Santiago、Napo、Orellana、Pastaza、Sucumbíos、Zamora Chinchipe の 5 県平均

出所: INEC(2007)より作成

図 3-3 県別貧困マップ

出所:INECI(2004)Cooperacion para el Desarrollo Ecuador 2003-2004

34

(3)先住民と貧困

先住民の貧困の割合は高く、「貧困」では 68%、「最貧困」では 40%を占める。この

数字は両者とも他の人種と比べかなり高い。

表 3-13 人種別貧困

地域 貧困 最貧困

農村 61.54 26.88

都市 24.88 4.78

人種 貧困 最貧困

先住民 67.79 39.32

アフロエクアトリアナ 43.28 11.64

メスチソ 30.78 8.28

白人 27.41 7.58

その他 26.14 13.20

国全体 38.28 12.86

出所: INEC(2007)より作成

BOX1: エクアドルの先住民比率

中南米において、エクアドルのイメージとしてしばしば登場するのが山高帽をかぶっ

た先住民の姿であり、南米においてはボリビア、ペルーと並んで先住民の多い国とし

て認識されている。一方で、本調査でも示した通り、公式統計上のその比率はそれほ

ど高くはなく、その信憑性に疑問を投げかける意見も少なくない。

2006 年の ECV によるとエクアドルにおける先住民人口の比率は、67 万人と人口

の 7%を占めている。この数値については、様々な機関がそれぞれの見解を示して

いる。エクアドル先住民連盟(CONAIE: Confederación de NacionalidadesIndígenas del Ecuador )は、2001 年時で先住民の人口比率は 35%(=420 万と推

定)しており、 IDB の先住民とコミュニティ開発ユニット(Unidad de PueblosIndigenas y Desarrollo Comunitario)は、1999 年に 240 万人の先住民と 60 万人の

アフロエクアトリアノがいるとしており、これを合わせると人口の 25%に相当するとし

ている。

これだけの誤差が出る理由として、現地にて先住民、メスチソを問わず、行く先々

でヒアリングをしたところ、ECV のアンケートの取り方に理由があるのではないかとの

意見が多く聞かれた。アンケートでは、調査時に「あなたは先住民ですか?」との項目

35

があるが、回答する国民は自分が先住民と認識していても、過去に受けてきた先住

民への差別から、メスチソ(混血)であると回答する方が後々面倒なことにならないだ

ろうとの理由で自分はメスチソであると答えるのだという。また、CONAIE では、アン

ケートを実施する場所は、比較的交通の便の良いところを選択しがちであり、先住民

の多く住むアマソニアや、山岳部の人口稀少地でアンケートの採取が少ないからだ、

とのコメントを得た。これらの点は、IDB の調査報告でも指摘されており9、また同報告

書では、その他の理由として、先住民は全般的にスペイン語の理解度が低いこと、ア

ンケート実施者が、非先住民であり、先住民が国勢調査に対する正直な回答するだ

けの信頼感が十分に得られていないことを指摘している。

実際に、山岳部を訪れてみると先住民の割合が ECV の統計上以上に高いのでは

ないかとの印象を受けるのは確かだが、今後も公式統計としてはECVの結果が使用

されていくこととなろう。

県別先住民人口先住民人口 先住民%

国全体 676,616 7.1

Costa 43,425 0.9

El Oro 7,283 1.6

Esmeraldas 4,172 1.4

Guayas 29,356 1.1

Los Rios 2,346 0.5

Manabi 268 0.0

Sierra 492,219 11.2

Azuay 17,165 3.5

Bolívar 25,711 21.1

Cañar 33,925 21.4

Carchi 2,496 2.1

Cotopaxi 64,586 23.7

Chimboraz 114,392 37.1

Imbabura 63,649 22.9

Loja 11,643 3.8

Pichincha 114,776 5.8

Tungurahua 43,875 11.9

Amazonia 140,972 34.0

出所:•INEC(2007)

9 IDB(2004)Indicadores de Pueblos Indigenas,p5

36

(4)他ラ米諸国(特にアンデス共同体加盟国)との指標の比較

世界開発報告 2008 によると 2006 年度のエクアドルの一人当たり GNI は、2,840US ドルで、低中所得国として位置付けられている10。隣国コロンビアの一人当り GNIである 2,740 US ドル、同じくペルーの 2,920 US ドルと同程度であり、ボリビアの

1,100 US ドルと大きな差があることを確認することができる。またもう 1 つの開発の

段階を図る指標である国連開発計画(UNDP: United Nations DevelopmentProgramme)の人間開発指標であるが、177 か国中 89 位であった。これを他国と比

較しても、一人当り GNI と同様にコロンビア(75 位)、ペルー(87 位)と近いところに位

置付けられていることがわかる。

表 3-14 基礎指標(2006 年)

エクアドル ボリビア コロンビア ペルー ベネズエラ

面積(Km2)人口(千人) 13 404 9 627 45 518 27 574 27 007

人口密度(人/km2)* 48 9 41 22 31人口増加率

*(%)2000-20051.44 2.24 1.50 1.21 1.78

経済活動人口率(%) 65.4 71.3 69.1 69.8 57.0GNI(10 億ドル)* 38.1 10.3 125.0 82.7 164.0

1人当たり GNI(ドル)* 2,840 1,100 2,740 2,920 6,070産業%(一次/二次/三次) 6/46/48 14/20/60 12/34/54 7/34/60 N/A人間開発指標順位 HDI** 89/177 117/177 75/177 87/177 74/177

一人当たり ODA* 16 63 11 14 2経常収支(百万ドル)* 1 539.6 1 319.1 -3 057.0 2 589.2 27 167.0貿易収支(百万ドル)* 440.3 860.5 -1 797.8 7 985.2 28 725.0

輸出 14 192.2 4 742.7 28553.8 26 340.2 66 609.2輸入 13 760.9 3 639.7 30351.9 18 331.1 38 145.6

移転収支(百万ドル) 3 049.3 822.3 4 743.3 2 184.5 -46.0対外債務残高(百万ドル 17 099.4 3 248.1 40 162.1 28 300.2 44 952.0対外債務対 GDP 比 47.2 52.9 31.3 36.0 33.7

外国投資 FDI 270.7 237.1 5 364.6 3 466.5 -2 632.0

社会支出/国家予算

出所:*は世界銀行(2007)「世界開発報告 2008」、**は、UNDP (2007) Human Development Report2007/2008(数値は 2005 年)、それ以外は、CEPAL (2008) Anuario Estadístico de América Latina yel Caribe2007 より作成

10 高所得国 USドル11,116以下、中所得国 USドル906以上USドル1,115以下(高中所得国 USドル3,596以上 11,115 以下、低中所得国 US ドル 906 以上 US ドル 3,595 以下)、低所得国 US ドル 905 以下

37

(5)人間開発指標(HDI: Human Development Index)の比較

UNDP の人間開発報告 2007-2008 によると、2005 年時のエクアドルの人間開発

指標は、0.772 で、調査対象 177 国中 89 位であった。

人間開発指標は、0.800 以上を高位人間開発指標国、0.500 以上 0.799 以下を中

位人間開発指標国、0.499 以下を低位人間開発指標国としており、これによるとエク

アドルは中位人間開発指標国となる。

表 3-15 他国との HDI の比較(2006)

HDI 177 か国中出生時予想寿命

(歳)成人識字率

(15 歳以上%)1 人当たり GDP

(PPP US$)1. アイスランド 0.968 1. 日本 82.3 1. グルジア 100.0 1. ルクセンブルグ 60,22887. ペルー 0.773 49. オマーン 75.0 51. メキシコ 91.6 108. モロッコ 4,55588. レベノン 0.772 50. アルゼンチン 74.8 52. ヨルダン 91.1 109. ガイアナ 4,50889. エクアドル 0.772 51. エクアドル 74.7 53. エクアドル 91.0 110. エクアドル 4,34190. フィリピン 0.771 52. ボスニアヘルツェゴビナ 74.5 54. 中国 90.9 111. エジプト 4,33791. チュニジア 0.766 53. スロバキア 74.2 55. スリランカ 90.7 112. ジャマイカ 4,291177. シエラレオーネ 0.336 177. ザンビア 40.5 139. ブルキナファソ 23.6 174. マラウィ 667

出所:UNDP(2007)より作成

表 3-16 南米諸国との HDI の比較(2006)

HDI 177 か国中 HDI出生時

寿命(歳)

成人識字率

(15 歳以

上%)

就学率

(小中高)

1 人当たり

GDP(PPPUS$)

保健指標 教育指標 収入指標

89. エクアドル 0.772 74.7 91.0 NA 4,341 0.828 0.858 0.62938 アルゼンチン 0.869 74.8 97.2 89.7 14,280 0.831 0.947 0.82840 チリ 0.867 78.3 95.7 82.9 12,027 0.889 0.914 0.79946 ウルグアイ 0.852 75.9 96.8 88.9 9,962 0.848 0.942 0.76870 ブラジル 0.800 71.7 88.6 87.5 8,402 0.779 0.883 0.74074 ベネズエラ 0.792 73.2 93.0 75.5 6,632 0.804 0.872 0.70075 コロンビア 0.791 72.3 92.8 75.1 7,304 0.788 0.869 0.71685 スリナム 0.774 69.6 89.6 77.1 7,722 0.743 0.854 0.72587 ペルー 0.773 70.7 87.9 85.8 6,039 0.761 0.872 0.68495 パラグアイ 0.755 71.3 93.5 69.1 4,642 0.771 0.853 0.64197 ガイアナ 0.750 65.2 NA 85.0 4,508 0.670 0.943 0.636117 ボリビア 0.695 64.7 86.7 86.0 2,819 0.662 0.865 0.557

出所:UNDP(2007)より作成

(6)所得格差

エクアドル中銀年次報告11によれば、ジニ係数(都市部)の年次別推移は過去 10

11 Banco Central del Ecuador (2006)、p.65

38

年(1996-2005 年)で 2001 に最高値 0.62 を記録し、その後、0.56(2002)、0.56(2003)、0.57(2004)、0.55(2005)と 0.55 前後で推移している。

更に注目すべき点は、エクアドルのジニ係数は他のラテンアメリカ諸国と比べ極め

て高いことである。IDB の 2008 年のラテンアメリカ経済社会進歩に関する年次報告

書によれば、ブラジル、コロンビア、グアテマラと共に「高い不平等」と「低い社会移

動」の分類国に入り、0.60 強のジニ係数(調整後)で最高値であった。

以上からエクアドルは所得格差がラテンアメリカでは大きい国と言える。

図 3-4 ラテンアメリカの社会移動と不平等

出所:IDB(2008) Economic and Social Progress in Latin America- IPES 2008Report, Outsiders? The Changing Patterns of Exclusion in Latin America and theCaribbean

(7)ミレニアム開発目標(MDGs:Millenium Development Goals)の達成状況

世界銀行の世界開発報告によればミレニアム開発目標(MDGs)に向けた状況は、

おおむね改善傾向にあると言える。例えば初等教育総就学率は106%、であった。乳

幼児死亡率も 1990 年と比較して半減、1,000 人あたり 24 人となった。浄化された水

源を継続して利用できる人口の割合は 95%であった。目標 8 の開発のためのグロー

バル・パートナーシップの推進では 2007 年のインターネットの利用者が少ないものの

急増した。

39

表 3-17 南米諸国の MDGs の達成状況

出所:World Bank (2008b) World Development Report 2009

極貧と飢餓の撲滅 普遍的 初等 教育 等 妊産婦保健の改善

国名

最貧 20%層が消費・所得に占める割合%

幼児栄養失調の割合%

普遍的初等教育の達成初等教育修了率%

男女平等の促進小中学校就学者の男女比率%

幼児死亡の削減1,000 人当たり5 歳未満児死亡率

訓練を受けた医療関係者が介助した分娩の割合%

避妊手術普及率15-49 歳既婚女性の使用割合%

HIV/AIDSその他疾病との戦いHIV 感染率%(15-49 歳人口)

1992-2005 1990 2000

-07 1991 2006 1991 2006 1990 2006 1990 2000-07 1990 2000

-07 2005

アルゼンチン 3.1 .. 2.3 .. 97 .. 104 29 16 96 99 .. .. 0.6ウルグアイ 4.5 .. 6.0 94 99 .. 106 23 12 .. 99 .. .. 0.5エクアドル 3.3 .. 6.2 .. 106 .. 100 57 24 .. 75 53 73 0.3コロンビア 2.9 .. 5.1 70 105 108 104 35 21 82 96 66 78 0.6チリ 3.8 .. .. .. 95 100 99 21 9 .. 100 56 .. 0.3パラグアイ 2.4 2.8 .. 68 95 98 99 41 22 66 77 48 73 0.4ブラジル 2.9 .. 3.7 93 106 .. 103 57 20 72 97 59 .. 0.5ペルー 3.7 8.8 5.2 101 96 101 78 25 80 87 59 46 0.6ベネズエラ 3.3 .. .. 43 96 105 103 33 21 .. 95 .. .. 0.7ボリビア 1.5 8.9 5.9 .. 101 .. 98 125 61 43 67 30 58 ※

40

表 3-18 エクアドルの MDGs の達成状況ミレニアム開発目標の目標 1990 1995 2000 2007

目標 1.極度の貧困と飢餓の撲滅貧困線(国内値)以下の人口(人口に対する割合) .. 34.0 46.0 ..栄養摂取量が必要最低限レベル未満の人口の割合 8 5 .. ..15 歳以上の就業率(全体) 55 59 64 6615~24 歳の就業率 43 42 49 48国内収入全体において下位 20%の人々が占める割合 .. 3.2 3.3 ..無給家族労働者といった脆弱就業(全就業者に対する割合) 36 34 36 33目標 2.普遍的初等教育の達成1 年生に入学したもののうち 5 年生まで進級する子供の割合 .. .. 76 76初等教育終了率 .. 89 98 106初等教育の就学率 .. .. 100 9915~24 歳の識字率 (女性) 96 .. 96 ..15~24 歳の識字率 (男性) 97 .. 96 ..目標 3.ジェンダーの平等の水深と女性の地位向上国会における女性議員の割合 5 .. 17 2515~24 歳の男性識字率に対する女性識字率 99 .. 100 ..非農業部門における女性賃金労働者の割合 37.3 40.3 40.2 42.0初等教育における男子生徒に対する女子生徒の比率 99 .. 99 100中等教育における男子生徒に対する女子生徒の比率 .. .. 102 102目標 4.幼児死亡率の削減はしかの予防接種を受けた 1 歳児の割合 60 73 84 97乳児死亡率(1,000 人に対する割合) 43 34 27 215 歳未満児の死亡率(1,000 人に対する割合) 57 43 32 24目標 5.妊産婦の健康の改善妊産婦死亡率(100,000 人に対する割合) .. .. .. 21015~19 歳の出産率(1,000 人に対する割合) .. 85 85 83検診を受ける妊産婦の割合 76 75 69 ..目標 6.HIV/AIDS、マラリア、その他の疾病の蔓延防止避妊具普及率(15~49 歳の女性) 53 57 66 ..結核感染率(100,000 人に対する割合) 200 174 152 12815~24 歳女性の HIV 感染率 .. .. .. 0.215~49 歳の HIV 感染率(男女とも) .. .. 0.3 0.3DOTS によって発見され、治療された結核患者の割合 .. .. 5 34目標 7.環境の持続的可能性の確保二酸化炭素排出量(一人当たりトン) 1.6 2.0 1.7 ..国土面積に対する森林面積の割合 50 .. 43 39適切な衛生施設を利用できる人々の割合 71 75 80 84浄化された水源を継続して利用できる人口の割合 73 80 88 95年間取水量(内部資源に対する割合) .. .. 3.9 ..二酸化炭素排出量(GDP の PPP$あたり kg) 0.4 0.4 0.4 ..目標 8.開発のためのグローバル・パートナーシップの推進一人当たり援助額(US ドル) 16 20 12 14インターネット利用者数(100 人当たり) 0.0 0.0 1.5 11.7財及びサービスの輸出(労働者送金を除く)に対する債務利子支払総額の割合 31.0 25.0 18.5 16.5携帯電話契約者数(100 人当たり) 0.0 0.5 3.9 75.6固定電話契約者数(100 人当たり) 4.8 6.1 10.0 13.5その他出生率(女性一人当たり) 3.6 3.2 2.9 2.6一人当たりの GNI(US ドル)世界銀行アトラス方式 890 1,590 1,340 3,080GNI(10 億 US ドル)世界銀行アトラス方式 9.2 18.2 16.5 41.1総資本形成(GDP に対する割合) 20.9 21.6 20.1 20.8平均余命(歳) 69 71 73 75識字率(15 歳以上の成人) 88 .. 91 ..総人口(百万人) 10.3 11.4 12.3 13.3輸出入割合(GDP に対する割合) 65.0 54.0 68.1 67.7

出所: World Development Indicators Online, 斜字体は指定と異なる年度の数値である場合

41

3-2 エクアドルの開発計画

グティエレス政権(2003 年-2005 年)、パラシオ政権(2005 年-2007 年)、コレア政

権(2007 年~)における国家開発計画の概要は以下のとおりである。ただし、パラシ

オ政権の開発計画は前グティエレス政権の長期国家開発計画を大幅に改訂すること

なく補足・修正での計画(6 項目)であった。

3-2-1 グティエレス政権の国家開発計画

グティエレス政権の国家開発計画は、汚職、貧困、生産性と競争力の低水準といっ

た不安定な状況を打破するために、国民の生活向上に主眼を置いた4年間の国家開

発計画であった。計画の基本方針は以下の 5 つからなっていた。

(1) 汚職、刑罰の不当な免除、社会的不公平との戦い

(2) 貧困や失業との戦い

(3) 国民の安全、治安、司法の保障、食糧保障及び環境保全

(4) 競争力引き上げのための生産の改善と生産性の向上

(5) 国際舞台への積極的かつ主導的な参加

以下では、これら 5 つの基本方針のそれぞれについて概要を見ていく。

1. 汚職、刑罰の不当な免除、社会的不公平との闘い

過去 20 年間、エクアドルにおける汚職は、政府の存在意義を揺るがし、政治

と行政の不安定といった危機を誘発してきたとし、汚職撲滅に取り組む方針を示

した。

2. 貧困や失業との闘い

700万の国民が一日あたり1.2USドル以下で生活している状況にあり、その他、

エクアドルは以下の問題に直面しているとした。

保健:5 歳以下の幼児の 3 分の 1 が栄養不良で苦しんでいる。

教育:非識字者の割合は 10%、地方や女性の非識字率は更に高

い。

基幹サービス:上水道普及率は全住宅の 52%。

雇用:失業者の大部分が 29 歳未満、かつ女性が多い。

42

(職業訓練メカニズムの適用が必要)

社会投資:低水準

このような状況に対して、政府の目標として、2007 年までに貧困層の割合を

51%から 38%へ減少させること、非識字者の割合は 10%から 8%へ削減、保健

サービスを受けられない国民を 23%から 17%へ削減することを掲げた。

3. 国民の安全、治安、司法保障、食糧保障及び環境保全

第一に、治安について、エクアドルにおける殺人率はラテンアメリカの平均値を

下回るものの、世界の平均値を上回ることから、国民個人及び集団としての治安

への参加を促進するとした。

第二に、司法の保障について、現行のドル依存型経済においては海外資本の

流入は重要と考えられるため、投資の明確なルールを示すための構造面におけ

る法的改革をより一層行うとした。

第三に、環境保全について、天然資源が不適切に利用されているか、または

持続可能な利用が考慮されていないとし、(1)天然資源の持続可能な利用と保存

(太陽光発電)、(2)絶滅の危機にある脆弱な生態系の荒廃への対策(ガラパゴ

ス)、(3)環境保護の質的推進(エコツーリズム)等に取り組むこととした。

第四に、社会保障について、約 80%の国民が健康保険の利用ができないこと

から、国による健康保険制度の確立を目指すとした。

第五に、食糧保障について、貧困層の増加と貧富格差の拡大は 5 歳未満の

幼児の栄養失調の要因であり、また、先住民居住地域や農村部においても栄養

失調人口の割合が高いとした。これに対して、農村部の住民の食糧保障のため

の生産体制を強化することを目標として掲げた。

4. 競争力引き上げのための生産の改善と生産性の向上

エクアドルの経済状況について、まず、次のような認識を示した。すなわち、ま

ず、公平な所得分配を目指し、貧困層の減少を目指すためには、持続可能な政

策によって公共財政を合理化する必要がある。また公共セクターは、慢性的な赤

字、石油関連収入への大幅な依存、間接税に依存した税制と低い税収、重い対

外債務といった構造的な問題を抱えている。この他にマクロ経済においては、イ

ンフレ傾向、非持続的な成長、消耗品の輸入の増加による貿易収支の赤字とい

った問題が挙げられる。一方では、石油販売による歳入の増加(2002年)、2000年の通貨としてのドル採用による信用の拡大など良い面もあった。このような状

43

況に対して、経済分野の政府目標として、(1)2003 年から 2007 年にかけて約

5%以上の持続的経済成長を目指す、(2)インフレ率を国際水準の 6%程度まで

押し下げるとし、以下のとおりの政策を掲げた。

マクロ経済の安定化を確かなものとするためにドル化プロセスを強化する。さら

に、積極的財政政策の推進、石油輸出高の増加、構造改革の強化を進める。

戦略的生産セクターへの支援、輸出と投資誘導の振興体制を強化することにより、

国際市場に対するエクアドルの経済及び貿易面での参入を振興する。このため、

市場開放の推進、輸出製品の競争力と生産性の向上、新たな油田の調査・開発

を促進するための民間投資の誘致、観光活動の強化と発展に向けた国際協力

に取り組む。

貧困の克服に向けた支援と雇用創出の要として、中小企業、零細企業育成を強

化する。具体的には、中小企業のネットワーク化、新たな観光商品の開発、職業

訓練に取り組む。

生産インフラの開発と改善、経済活動の持続的発展を可能とする長期的展望に

立ったインフラの整備(港湾、道路、通信など)を進める。具体的には、国境幹線

道路の開発強化、全国道路網の管理の地方移管、通信分野での地域・全国レベ

ルでの参入を進める。

5. 実践的で包括的な政治改革と外交政策

世界経済のグローバリゼーションは多国間合意が優先。経済危機に起因する海

外移住は出稼ぎ労働者からの送金がエクアドルの重要な収入源の 1 つである。よ

って、移住者の社会への受入れと権利保障における二国間合意を推進する。その

目的と政策は以下のとおり要約される。

エクアドルの領土、領海及び他国との隣接地域における主権の保持に努める。

具体的には、天然資源の保全をはじめ海洋資源の保護と領空防衛を目的とする

諸活動の調整、国際治安と武装解除の支援(ペルーとの和平協定)等に取り組

む。

人権尊重、環境保全、麻薬売買とテロ撲滅のため共和国憲法及び国際協定にう

たわれている諸原則の効果的実施に努める。

地域レベルの統合を推進する。具体的には、CAN、MERCOSUR 、ラテンアメリ

カ統合連合(ALADI: Asociacion Latinoamericana de Integracion)、米州自由

貿易地域(FTAA: Free Trade Area of Americas)、欧州連合(EU: EuropeanUnion)などとの交渉プロセスへ参加するなど、国際的枠組みにおけるエクアドル

44

の参加と立場の補強につとめる。

包括的移民政策によるエクアドル移住者の社会への受容と権利遂行の保護に取

り組む。

無償資金協力選択肢の多様性、負債の交渉、民間企業の協力、自然と二酸化

炭素との交換及びその他の手段を追及し、無償の国際技術協力の増加を図る。

3-2-2 パラシオ政権の開発計画

同政権は以下の 6 項目を国家再建計画(Refundar la nacion)として挙げている。

重点政策は、外交の他、政治改革、経済政策から人的資源の強化など多岐にわた

っている。

(1) 政治制度の再構築

司法権の独立確保、国会議員選挙の小選挙区採用、国会の二院制及び地

方分権推進等の政治改革実施、政治改革に向けた国民投票の早期実施

(2) 経済政策

対外債務返済義務の尊重、石油輸出余剰金の活用を通じた生産・社会部

門への投資拡大、及び雇用の増大

(3) インフラ整備

各種基礎インフラ整備・強化への資金充当、エクアドル社会保障庁(IESS)

資金による炭化水素部門への投資プロジェクト推進

(4) 人的資源の強化

保健・教育部門の強化、科学技術部門への投資、職業能力開発

(5) 法制度の強化及び治安の改善

治安改善及び法的安全性確保のための警察、軍及び法制度強化

(6) 外交政策

南米共同体設立構想支持、グローバル化した世界における経済と自然環

境の調和重視

3-2-3 コレア政権の国家開発計画

1. コレア政権は「2007-2010年 国家開発計画」を策定している。同計画は変革の

45

ための 8 つの戦略及びそれを実施するための 12 の目標から構成されており、

各セクターが計画実施にあたり本計画の沿ったプログラムやアジェンダを掲げて

いる。代表的なものとして、国家経済プログラム(2007-2010)、社会アジェンダ

(2007、2008)、環境アジェンダ、教育計画(2006-2015)、青少年計画(2015)、女性機会均等計画(2015)、外交計画(2006-2020)などがある。

2. 本国家開発計画の現状分析の項では貧困状況の推移が最初に挙げられており、

1999年と比較して2006年は貧困層が1%減少しているものの、依然として国民

の 38%が貧困下での生活を強いられており、絶対数では貧困人口が増加して

いることが強調されている。特に農村部の貧困状況は深刻であり、この状況改

善を目指した政策が実施されていると推測することができる。なお、国際協力の

受入れに関する政策方針は国家開発計画の 1 つである外交政策の 7 つの柱の

うち 6 番目に明記されている。

3. 国家開発計画の特徴

(1)国家としてのアイデンティティ

(2)予算に占める都市比率を 33%(3)非石油産業の多様化を促進

(4)教育・保健指標の改善

(5)貧困削減→具体策として中小・零細企業への支援策

4. 国家開発計画の骨子

*新たな世紀に入り、なぜエクアドルにおいて変革が急務なのか。

*変革とは何を表すのか。開発計画の出発点と考え方

*開発から何を理解できるのか。

*新たな国家開発戦略(8 項目)

(1)内的発展、社会統合、競争力、雇用創出

(2)国家としての自立をもった国際市場への参画

(3)生産の多様化

(4)地方統合と農村開発

(5)自然遺産の持続性

(6)計画立案に関する有効な能力を備えた国家

(7)社会を主体においた経済的な民主主義

(8)権利の保障

* 開発計画への過程

46

* 目標(項目ごとに基礎的認識、現状分析、既存政策と現状、政策と戦略、目

的の 5 項目から構成)

(1) 公平性と社会統合

(2) 国民の能力向上

(3) 国民の希望と生活向上

(4) 健全で持続的な環境維持をしつつ、国民の水、土、空気へのアクセスを

保障する。

(5) 主権と平和を保障した上でのラテンアメリカの統合支持

(6) 正当かつ威厳のある安定した雇用の保障

(7) 公的スペースを確保し国民が集う場の強化及び創出

(8) 国民アイデンティティを確立し多様、多文化なアイデンティティの強化

(9) 司法へのアクセスの強化

(10) 政治への国民参画保障

(11) 堅固かつ持続的な経済システムの確立

(12) 公共福祉のための国家建築

5. 上記の目標の細分(事例として最初の項目を表示)

(目標1)公平性、結合、社会及び領土の統合を促進する。

1.1 経済的不公平を改善し、最低限 1995 年次よりも改善

(目標2)国民の能力向上

2.1 初等教育就学率96%の達成、一部障害児との統合教育

(目標3)国民の希望と生活の質の向上

3.1 乳幼児死亡率を25%削減

(目標4)健全かつ持続的な環境と水、空気、土へのアクセス保障

4.1 必要とされる新たな保養地域の設定

(目標5)主権と平和を保持した上でのラテンアメリカの地域統合を支持

5.1 予算における社会投資比率を徐々に33%まで増加

(目標6)安定的、正当かつ威厳をもった労働の保障

6.1 最貧層の安定した労働及び小規模企業へのアクセス向上

(目標7)公的スペースを確保し国民が集う場の強化及び創出

7.1 余暇やボランティア作業の時間の増加

(目標8)国民アイデンティティを確認し多様、多文化なアイデンティティの強化

8.1 国民の文化的施設サービスへのアクセスの向上

(目標9)司法へのアクセスの確立

9.1 女性・幼児・青少年への暴力削減

47

(目標10)政治及び政策への国民参加促進

10.1 公的情報へのアクセス促進

(目標11)安定的かつ持続的な経済システムの確立

11.1 健全かつ持続的な成長の確保

(目標12)国民の幸福のための国家改革

12.1 公平なシステム、発展的な地方分権、地域レベルでの秩序維持、新

たなモデルの構築

6. 補足の計画

プラン・エクアドル(開発こそが和平)の概要

2008年5月5日 内外治安調整省により策定された。その位置付けは、

(1) プラン・コロンビアによっては実現が期待できない和平と開発のための選

択肢

(2) 投資の優先度は北部の国境地域 5 県で大規模プロジェクトの計画・共同

実施・モニタリング・評価の調整

(3) 内外治安調整省に技術事務局を設置、

であり、実施に際しての柱として以下の項目を挙げている。

(1)和平と開発のための制度強化(2)経済活性化と雇用(3)基礎社会インフ

ラの向上(4)天然資源の持続的な管理(5)司法の管理と犯罪の抑制(6)人

権、人的支援、避難民(7)国家としての自治確保と国家統合

48

7. 各政権の重点項目(政策の方針)の比較

表 3-19 国家開発計画の比較表政権 グティエレス政権 パラシオ政権 コレア政権計画期間

2003~2005 年 2005~2007 年 2007~2010 年

主な政策

5 項目 6 項目 8 項目

1.汚職・刑罰の不当な免除、社会的不公平との闘い

2.貧困や失業との闘い3.国民の安全、治安、司

法の保障、環境保全4.競争力引き上げのため

の生産の改善と生産性の向上

5.国際舞台への活発かつ主導的な参加

1.政治制度の再構築2.経済政策(対外債務、投資拡大と雇用増大)

3.インフラ整備4.人的資源の強化5.法制度の強化及び治

安の改善6.外交政策(グローバル化への対応)

1.内的発展、社会抱合、競争力、雇用創出

2.国家としての自立をもった国際社会への参加

3.生産の多様化4.地方統合と農村開発5.自然遺産の持続性6.計画立案に関する有効な

能力を備えた国家7.社会を主体においた経済

的な民主主義8.権利の保障

出所: 評価チーム作成

49

3-3 ドナーの動向

3-3-1 二国間援助と国際機関を通じた援助動向の概観

表 3-20 は、エクアドル ODA に対する二国間援助と多国間援助の実績(2004-2006)の上位 5 か国、6 機関の動向を示したものについて、エクアドル政府資料から

抜粋したものである。この表の統計は、支出純額(ネット)とされているが、実際には

日本の援助実績については円借款の返済分が反映されておらず、少なくとも二国間

援助については返済分を含まない支出総額(グロス)であると考えられる。この統計

に基づき、エクアドル政府関係者の中では、日本は、二国間ドナーでは米国に次いで

二位の援助国であるという認識が持たれている。

この統計によれば、2006 年の二国間援助総額は、日本、ベルギー、スイスの増加

により前年比 18%の増加であった。また、米国は減少したが 2006年時点で 1位であ

った。また、第3位のスペインの増加が顕著である。ベネズエラ、ブラジル、チリによる

南南協力支援も二国間援助に含まれる。例えば、メキシコはエクアドルに対して奨学

金の技術援助を実施している。

一方、2006年の国際機関を通じた援助総額は前年比 5%増の 6,400万ドルであっ

た。EU と国連グループ(特に UNDP と国連児童基金(UNICEF: United NationsChildren’s Fund)の実績が大きく、EU は地方開発、保健・衛生、環境部門に支援し

ている。なお、最近の環境への関心を受けて地球環境ファシリティ(GEF: GlobalEnvironment Facility)の融資も注目される。

表 3-20 エクアドル政府資料による二国間援助と国際機関を通じた

援助動向の推移(ネット、百万ドル)2004 2005 2006

二国間援助 101.1 141.2 166.5米国 40.7 59.0 46.7日本 19.4 26.9 36.5スペイン 4.4 6.5 28.3ベルギー 4.0 11.7 18.0ドイツ 17.7 16.9 15.2

国際機関を通じた援助 39.3 60.9 64.3世界銀行 6.0 2.3 1.3IDB 3.7 1.8 3.2CAF 0.8 0.6 0.5EC(EU) 12.2 35.4 33.8国連グループ 13.6 16.0 10.8GEF ――― 4.4 4.1

出所:INECI(2003)Cooperacion para el Desarrollo Ecuador 2003-2004

50

以上は、エクアドル政府統計によるものだが、表 3-21 は、経済協力開発機構開発

援助委員会(OECD-DAC)の統計によるものである。これとエクアドル政府統計を比

較すると、二国間援助合計についてはOECD-DAC統計の方が高い金額を示す数値

になっており、国際機関援助合計についてはエクアドル政府統計の方が高い数値に

なっている。日本の援助額については、OECD-DAC統計では、円借款の返済額を差

し引く前の支出総額(グロス)で見ても、3 位から 4 位にとどまっている。

図 3-5 OECD-DAC 統計による二国間援助額の推移

(支出総額、単位:百万ドル)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

ベルギーフランスドイツ日本オランダスペインスイス米国

出所:OECD-DAC

また、国際機関実績について OECD-DAC 統計を見る際に特に気をつけるべきな

のは、アンデス開発公社(CAF)と米州開発銀行(IDB)の扱いである。OECD-DACの統計には、CAF と IDB の数値は反映されていない。

表 3-21 OECD-DAC統計による二国間援助と国際機関を通じた援助動向の推移

(ネット、百万ドル)

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

国際機関計 1.23 -0.15 35.07 17.64 31.07

DACドナー計 173.64 158.49 192.91 170.54 180.47

非DACドナー計 0.07 -0.13 -0.25 0.65 3.81

全ドナー合計 174.94 158.21 227.73 188.83 215.35

出所:OECD-DAC

51

追って議論するとおり、CAF は 2004 年に 298 百万ドル、2005 年に 340 百万ドル

の融資を行っており、これらの数値は、OECD-DAC 統計で報告されている各年の援

助供与実績を上回っている12。

3-3-2 国際機関の動向

1. 世界銀行

(1) 世界銀行の援助戦略

世界銀行は、1954年 2月から 2003年13までに、エクアドルに対して累積で 28億ド

ル以上の融資を承諾した。2003 年に策定された 2003-2007 国別援助戦略(CAS:Country Assistance Strategy)策定時に実施中とされていたプロジェクトは表 3-22の

とおりである。

CAS(2003-2007)は、以下の 3 つを主要目標として挙げている。

(成長)多様かつ持続的な経済成長

(公平)貧困者への機会の提供と経済資源へのアクセス

(ガバナンス)エクアドル国民に開かれ、かつ効率の高い政府への支援

(2) 世界銀行の重点分野

融資の特別重点分野

イ 農村道路、制度改革

ロ 教育、上水、下水、チンボラソ地域

ハ 都市の貧困、キトとクエンカとガラパゴス間の輸送

(ただし、人的開発プロジェクトに対しては早期のディスバースを予定)

調査、技術協力の重点分野

イ 成長の阻害、金融セクター、農村開発、教育、調達プロセス

ロ 地方分権、栄養、環境

ハ 政策のNota、金融セクター、貧困、金融と会計の管理(gestion)

なお、2003年のCAS策定当時において、実施中・準備中であったプロジェクトは表

12 グロスでも OECD/DAC 統計による対エクアドル援助総額は、2003 年 215 百万ドル、2004 年 243 百万ドル、2005年266百万ドル、2006年245百万ドル、2007年248百万ドルとなっており、2004年、2005年実績で、CAF単体での融資額の方が上回っている。13最新の国別援助戦略(CAS:Country Assistance Stategy)の策定時点が 2003 年である。

52

3-23 のとおりであった。

表 3-22 世界銀行:2003年時点で実施中であったプロジェクトプロジェクト名 承諾日 承諾金額(百万ドル)

1.農村貧困 2001 年 7 月 25.202.公共財政管理 2002 年 3 月 13.863.上下水道 2000 年 10 月 32.004.エネルギー、通信 2001 年 11 月 23.005.保健近代化 1998 年 6 月 45.00(計) 139.06出所: World Bank (2003) Report and Recommendation of the President of the International Bank forReconstruction and Development and The International Finance Corporation to the executive directorson a country Assistance Strategy for the Republic of Ecuador

表 3-23 世界銀行:2003 年当時に準備中であったプロジェクト

2005.7-2006.6 会計年度プロジェクト 金額(百万ドル)

1.PRAGUAS 482.地方道路 203.教育 324.チンボラソの開発 10(計) 110

2006.7-2007.6 会計年度プロジェクト 金額(百万ドル)

1.人的開発 802.キトとクエンカ間の輸送 403.Prolocal 704.地方の生産性持続 205.貧困地域の改善 20(計) 230

2007.7-2008.6 会計年度プロジェクト 金額(百万ドル)

1.経済社会開発の正義(Justicio) 202.水資源の管理 203.人的自然資源の管理 304.ガラパゴス諸島とエクアドル沿岸 未定(計) 70出所: World Bank (2003)

53

2.米州開発銀行(IDB)

(1) IDB の援助戦略

INECI 資料によれば、IDB とエクアドル政府との間での合意戦略として、2005 年に

以下が重点分野として確認されていた。

生産構造の多様化の基礎構築

-制度枠組みづくり支援

-生産性拡大の促進

-商業統合支援

社会開発の促進

-社会保護のネットワークの強化

-公共支出の効率的使用と公共サービスの改善

また、IDB は 2008 年に“IDB Country Strategy with Ecuador 2008-2011”を策定し、

重点分野として以下を挙げている。

生産インフラ(石油、電力、輸送)

生産の発展(マイクロファイナンス、金融システムの構築、地方の開発)

社会開発(住宅、教育、保健、上水・下水)

(2)IDB の融資実績

IDB は、2006 年 3 月時点で、表 3-24 のとおり 19 件で総額 361.8 百万ドルの融資

プロジェクトを実施していた。

54

表 3-24 IDB:実施プロジェクトの概要(2006 年 3 月現在)

案件名 概要

1.Programa Regularización y Admistración de

Provincia

地方の法制度整備

2.Programa de Apoyo a la gestión del comercio 貿易監理強化

3.Programa respaldo mecanismo Inovada Credito 農業信用供与

4.Programa redes Escolares Autónoma Rural 農村地域の学校のネットワーク

5.Programa de Atención Integral a menores seis Años 貧困地域の 6 歳以下の子供(教育)

6.Apoyo censo y fortalecimiento del sistema

Estadistica

人口調査、国家統計システム強化

7.Fondo de Inversión social de Emergencia 緊急社会投資基金(貧困層の改善)

8.Programa de apoyo al sector Vivienda 低所得住民の生活改善

9.Programa a Sectorial Reforma Social 貧困者対策

10.Programa Fortalecimiento Seguro social

Campesino

農民の社会保障強化

11.Programa de Apoyo a la Inversión Privada Infra 民間インフラ投資への支援

12.Programa Camino Vecial 農村道路

13.Programa de Manejo Ambiental Islas Galapagos ガラバゴス諸島の環境保全

14.Programa de Apoyo a la Decentralización 地方分権

15.Programa desarrollo Sustenable Amazonia Norte アマゾン北部の持続的な開発

16.Programa Saniamiento Ambiental del DM Quito キト市上下水道の改善

17.Programa de Manejo de Recursos Costareros 海岸地域の生活改善ネットワーク

18.Programa de Rehabilitación del Centro Historico キト市の歴史センター支援

19.Programa Sistema de Alerta Temprana y Gestion

De Riesgo Natural

火山活動地域の防災システム

(計)19 件

(注)上記 13 の内訳

IDB 融資額:10.3 百万ドル

(イ)海洋保全地域の管理

(ロ)検査と検疫停船のシステム

(ハ)関係機関の調整と手続き

(ニ)上下水道など衛生環境の調査と工事

出所:INECI(2003)

55

また、2006 年 3 月時点で、2006 年から 2007 年に新規融資決定が予定されてい

るプロジェクト一覧は図表のとおりであった(2006 年時点で承諾済みであった案件は

2 件)。

表 3-25 IDB:2006-2007 年融資プロジェクトの一覧

(単位:百万ドル)

プロジェクト 融資額

1.自然危険(災害)警報システム 5 (承諾)

2.生産性改善 200

3.キト歴史センター 8 (承諾)

4.地方開発 15

5.中小都市上水 30

6.中小都市住宅改善 18

7.バリオスとキト間の改善 37

8.基礎教育改善 40

9.クエンカの上下水道 77

10.カニオン/クエンカ国境地帯開発 10

11.キト上水衛生 48

12.エクアドル自然観光 15

13.保健の一般保障 90

14.グアヤキル上下水道 28

15.グアヤキル空港 32

16.ババ水力発電 77

17.キト空港 75

(計)17件 805

出所:INECI(2003)

なお、 IDB 融資のほか、多国間投資基金(FOMIN: Fondo Multilateral deInversiones)の実績は 2005 年 4 月現在で 12.6 百万ドル、17 プロジェクトが実施中

であった。また、技術協力として 2006 年 3 月現在で 7.16 百万ドル、38 プロジェクト

が実施中であった。

56

3. アンデス開発公社(CAF)

(1) CAF の援助目的

INECI 資料によれば、CAF とエクアドル政府が合意した CAF 援助の重点分野は

以下のとおりである。

経済の成長と持続性、ガバナンス、国家の改革支援

生産能力強化と地域統合の可能性を高めるための持続的なインフラ支援、

特に輸出産業に重点を当てた生産部門への直接支援、金融セクターの強

化、資本市場の開発、PYMES(中小企業)の資金調達や資本アクセスの改

貧困削減、社会開発の促進、環境保全

(2) 実績

エクアドルと CAF の協定により、2003 年から 2006 年まで、20 億ドルの融資が承

諾された。また、年間実行予定額は、3 億ドルから 4 億ドルとされた。2004 年と 2005年の融資実績は図表のとおりである。

表 3-26 CAF 融資実績(2004-2005)(単位:百万ドル)

承諾額 実行額

2004 年 330 298

2005 年 815 340出所:INECI(2003)

CAF は、地域横断的な道路網・鉄道網整備に取り組んでおり、エクアドル-ガイア

ナをつなぐ交通網の整備を地域統合プロジェクトの一環に位置付けている。また、地

域の環境・炭化水素とバイオ市場の促進のために、アンデス 4 か国のバイオ多様化

を目的とした取引促進のための支援を実施している。

中小企業の支援としては、民間融資が十分にわたらないセクターへの融資促進を

重点課題に挙げている。また、アンデス競争力プログラム(PAC:Programa deAndino de Competividad)により、エクアドルに対しては、ソフトウェアのクラスター、

産業エネルギーの効率化支援等を行っている。

さらに、CAF による技術協力は、2006 年実績で 20 件実施された。具体的には、グ

アヤキル市のゴミ対策、エクアドル開発銀行協会に対する制度の強化等が実施され

た。

57

4.欧州連合(EU)

(1) EU の援助戦略

EU は、2007-2013 年の対エクアドル援助戦略を策定している。この中では、「貧困

削減」「食料の安全保障」、「インフラ整備」、「環境保全」、「グッドガバナンス」が重点

課題として掲げられている。また、EU の対エクアドル援助の最終目標は MDGs 達成

のための貧困削減と言える。

さらに、その中で、優先分野として、保健、環境、地域統合(ペルー・エクアドル間の

合意に適用)、経済協力と統合、農村・地方開発が挙げられている。

このような戦略を掲げる背景として、EU はエクアドルが抱える課題を以下のように

とらえている。

国内:脆弱な中央政府のガバナンス、人的資本の悪化(不平等な富の配分と

低い社会支出から派生)

国外:コロンビアとの武力衝突、コロンビアの麻薬活動

そして、コレア政権の優先課題となっている分野に対して、政府による良質の社会

資本支出、競争と中小企業の市場参入による雇用創出という戦略支援を行うとして

いる。

表 3-27 EU による支援計画

(単位:百万ユーロ)

2007-2010 年(第一期) 2011-2013 年(第二期)2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 計 2011-2013 年

7 20 34 14 75 62出所:European Commission(2007) Ecuador Country Strategy Paper 2007-2013

(2) EU の援助内容

EU は、以下のような各種プログラムを通じてエクアドルに対する援助を行っている

PROLOCAL(貧困削減と地方開発のプログラム)

CORPEI(EC とエクアドル間の経済協力プログラム)→中小企業の輸出促進

PASSE(チンブラソ、コトバシ、ボリバル県の保健セクター支援)

環境支援プログラム(3 つの県の自然資源の分散化に対する支援)

欧州委員会人道支援事務所(ECHO: European Community Humanitarian AidOffice)による支援、災害救助・予防支援(国内外の非政府組織(NGO:Non-governmental Organizations)を通じて実施される。)

58

EU-CAN 地域プログラム(技術協力、統計計画、アンデス共同体に対する災害

予防、市民社会との活動協力)

大学連携による留学資金支援

5.国連機関

国連機関では、UNDP、UNICEF 、国連食糧農業機関( FAO: Food andAgriculture Organization)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等がエクアドル

で活動している。例えば、UNDP は、貧困削減(食糧と栄養改善、緊急雇用創出)、保

健衛生、教育、グッドガバナンスを重点分野として援助を行っている。また、UNHCRは、北部国境に支援事務所を設置し、同地域に流入しているコロンビア難民に対する

支援を実施している。

3-3-3 二国間援助

1.米国(USAID: United States Agency for International Development)

USAID は、民主化支援、南北国境地域の貧困削減及び開発に焦点を当てた(1)

グッドガバナンス (2)平和構築(北部、南部国境開発)を重点分野としているが、保

健衛生、環境分野のプロジェクトも実施している。これらのグッドガバナンスと民主化

は必ずしも分離されて実施されているわけではなく、北部国境地域におけるローカ

ル・ガバナンス支援といったようにプロジェクトレベルでは統合的に運用されている。

この北部国境地域のプロジェクト事例でも分かるとおり、USAID のガバナンス支援

は、地方自治体や市民社会を主たる対象としている。頻繁な政権交代が起こっている

中で、中央政府レベルでの支援は困難であるとの認識を USAID 関係者も有してい

る。

USAID は、エクアドルに限ったことではないが、中央政府を通じた支援を行わない

ことが特徴的である。地方のインフラ整備等も USAID の支援として実施されているが、

資金は中央政府や地方自治体を経由せずに、NGO 等を経由して行われる形態とな

っている。

2.スペイン(AECID: Agencia Española de Cooperación Internacional para elDesarrollo)

重点分野は特定していないが貧困対策、環境保全、ジェンダー支援、平和構築、経

済成長の各分野プロジェクトを展開している。

59

3.ドイツ(GTZ: Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit,KFW: Kreditanstalt für Wiederaufbau)

重点分野は(1)グッドガバナンス(民主化支援) (2)環境保全の2分野であるが、

アマゾン地域の環境保全プロジェクトと連携した先住民育成のプロジェクトを展開して

いる。

表 3-28 二国間援助の重点分野比較表重点分野 米国 スペイン ドイツ 日本1.ガバナンス ○(民主化) ○(民主化)2.平和構築 ○ △3.環境 ○ ○4.貧困 ○(備考) 保健、環境プ

ロジェクトあり重点分野はないが環境や貧困プロジェクトを実施

先住民育成 防災を重点分野としている

出所: 評価チーム作成

3.非政府組織(NGO)

多くの国際NGO及び国内NGOが貧困削減、環境保全等を目的として活動を展開

している。

主要な国際 NGO とその活動分野は以下のとおりである。

SOS KDI(オーストリア):教育・保健

PROTOS(ベルギー):上下水道・かんがい

Islas de Paz(ベルギー):農業・植林

CI(米国):教育・保健、環境保全

IBIS-Dinamarca(デンマーク):地方開発、教育

Ayuda en Accion(スペイン):基礎教育、保健インフラ

TNC(米国):環境保全

また国内 NGO は、以下のような分野で活動している。

CEDERENA:沿岸地域の農村部の生活改善、生産性の向上

FUNDACION NATURA:環境保全(リサイクル、有機肥料、森林保全)

FUNDACION PODER SOCIAL:山岳部の農村支援

FUNDACION SU CAMBIO POR EL CAMBIO:青少年の自立支援教育

60

3-4 日本の対エクアドル援助動向

3-4-1 対エクアドル援助の基本方針

外務省によると、対エクアドル支援の意義は以下のとおりとなっている14。

「エクアドルは特に先住民(公式には総人口の6%(2001年)であるが、非公式に総

人口の 20%にものぼるとも言われている)に貧困層が多く、これらの貧困層への支援

を行うことは、ODA大綱の基本方針の1つである『公平性の確保』の観点から意義が

大きい。また、近年、隣国コロンビアと接する北部国境地域に流入しているコロンビア

難民に対する支援は、「人間の安全保障」の観点からも意義は高い。」日本の対エクアドル支援は、無償資金協力及び技術協力を中心に、貧困対策、環

境保全、防災のための支援を重点分野として実行することを基本方針としている。エクアドルの一人当たり GNI は 2006 年で 2,840 ドルと、地域平均値である 4,756 ドルを大きく下回っており、中南米諸国の中では比較的援助の必要性が高い国となって

いる。また、エクアドルには、国連教育科学文化機関(UNESCOユ ネ ス コ

: United NationsEducational, Scientific and Cultural Organization)の「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に登録されているガラパゴス諸島があることから、基礎インフラの整備や生態系の保全につながるような支援が重点的に行われている。

1999年2月、日本は政策協議調査団をエクアドルに派遣し、エクアドル政府との協

議を行った。同協議では、対エクアドル支援の重点分野として貧困対策、インフラ整

備、環境保全、防災が策定された。その後、2005 年 7 月 15 日、日本の援助の現状

に沿うべく、大使館を中心とした現地ODAタスクフォースとエクアドル政府との経済協

力政策協議が実施され、新たな対エクアドル援助重点分野として、貧困対策、環境保

全及び防災の 3 分野が再策定された。各重点分野には個別開発課題が設定されて

おり、エクアドルの開発ニーズに合致するよう配慮されている。

図 3-6 対エクアドル国別援助計画における重点分野

14 外務省、「国別データブック 2007 年度版」

対エクアドル援助重点分野

重点分野① 貧困削減 重点分野② 環境保全 重点課題③ 防災

個別開発課題

①基礎インフラ(上下水道、保健医療及び教育等)整備

②産業開発・雇用創出(人材育成)

③貧農支援④地域社会の開発促進(現政

権の重点項目である北部国境地域の開発)

個別開発課題

①自然環境・生態系の保存

②環境汚染対策

個別開発課題

①自然災害に対する脆弱性の緩和

61

3-4-2 援助の実績

日本はエクアドルに対し無償資金協力及び技術協力を中心とした援助を実施して

おり、1990 年から 2007 年までに対して供与された無償資金協力の累計は 2 億

1,979 万ドル、技術協力の累計は 1 億 3,812 万ドルとなっている。

1990~2007 年の日本の対エクアドル ODA 実績の合計値は、1996~1998 年に

かけて増加した後は、減少傾向にある。この要因として、1996 年以降に対エクアドル

の円借款が実施されておらず、政府貸付等がマイナスとなっていること(すなわち、円

借款の貸付実行総額より元本の返済額が多くなっていること)が挙げられる。

日本の対エクアドル支援実績は以下のとおりである。

表 3-29 日本の対エクアドル ODA 実績(1990-2007 年)

(支出純額、単位:百万ドル)暦年 政府貸付等 無償資金協力 技術協力 合計1990 7.39 4.57 3.10 15.061991 1.00 0.41 5.70 7.111992 14.93 3.77 7.51 26.211993 12.49 1.00 10.13 23.621994 10.00 10.33 12.72 33.051995 -0.42 24.23 13.14 36.951996 22.11 16.11 9.29 47.511997 1.82 15.88 7.88 25.581998 23.14 20.23 6.04 49.411999 13.39 6.10 5.84 25.332000 0.42 12.80 6.91 20.132001 2.83 8.03 5.68 16.542002 -0.64 23.50 5.43 28.292003 -8.67 8.83 7.15 7.312004 -19.83 8.17 8.97 -2.692005 -23.69 19.60 10.26 6.172006 -19.53 17.28 6.79 4.542007 -21.54 18.95 5.58 2.99累計 15.2 219.79 138.12 373.11

出所: 外務省「ODA 国別データブック」各年度版、JICA「国際協力機構年報」各年度版より作成

*政府貸付等及び無償資金協力はこれまでに交換公文で決定した約束額のうち当該暦年中に実際に供与された

金額(政府貸付等については、エクアドル側の返済金額を差し引いた金額)。

*技術協力は、JICA によるもののほか、関係省庁及び地方自治体による技術協力を含む。

*四捨五入の関係上、合計が一致しないことがある。

62

図 3-7 日本の対エクアドル ODA 実績

(DAC 集計ベース・支出総額)

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

50

60

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

(百万ドル)

政府貸付等 無償資金協力 技術協力 合計

出所: 外務省「ODA 国別データブック」各年度版、JICA「国際協力機構年報」各年度版より作成

1.無償資金協力

(1)一般プロジェクト無償資金協力

2003 年度以降実施された草の根・人間の安全保障無償資金協力以外の無償資

金協力の案件は 14 件(供与額は約 74.5 億円)となっている。特に、地下水開発や上

水道整備といった水道分野にかかわるものが多く実施されており、対エクアドル援助

重点分野の1つである「貧困対策」の個別開発課題である「基礎インフラ整備」に向け

た取組であるといえる。

63

表 3-30 対エクアドル一般無償資金協力実績(2003 年-2007 年)

年度 案件名 種別 供与金額

2006 新マカラ国際橋建設計画(詳細設計) 一般 0.19 億円

2006 イバラ市上水道整備計画(第 2 期) 一般 3.72 億円

2006 貧困農民支援 一般 4.50 億円

2006 ワキージャス市及びアレニージャス市上水道整備計画 一般 20.09 億円

2005 イバラ市上水道整備計画(第 1 期) 一般 6.81 億円

2005 チンボラソ州地下水開発計画(第 2 期) 一般 2.70 億円

2005 ノン・プロジェクト無償 一般 5.00 億円

2005ワキージャス市及びアレニージャス市上水道整備計画(詳細設計)

一般 0.49 億円

2004 職業訓練改善計画 一般 8.90 億円

2004 チンボラソ州地下水開発計画(第 1 期) 一般 5.20 億円

2003 食糧増産援助 一般 5.20 億円

2003 アスアイ州地下水開発計画 一般 6.52 億円

2003 基礎保健サービス強化計画 一般 3.59 億円

2003 ピチンチャ州スポーツ連盟に対する文化無償協力 一般 0.39 億円

出所:外務省 ODA ホームページより作成

(2)日本 NGO 連携無償資金協力

2005 年には、日本 NGO 支援無償資金協力(現在の日本 NGO 連携無償資金協

力)として、「アスアイ州及びカニャール州における給水整備設置プロジェクト」を実施

している。同プロジェクトでは、財団法人日本フォスタープラン協会に対して 1,206 万

円が供与された。

表 3-31 対エクアドル日本 NGO 支援無償資金協力実績

年度 案件名 種別 供与金額

2005アスアイ州及びカニャール州における給水設備設置

プロジェクトNGO 1,206 万円

出所:外務省 ODA ホームページより作成

(3)緊急無償資金協力

2002年及び2006年には、火山噴火による災害に対する緊急援助のため、緊急無

償支援協力が実施された。2002 年のレベンタドール火山噴火の際には、約 1,290 万

64

円相当の緊急援助物資(簡易水槽、発電機、浄水器等)が供与された。また、2006年には、トゥングラウア火山噴火による災害支援のため約 1,000 万円相当の緊急援

助物資(テント、毛布、浄水器、発電機等)が供与されている。

表 3-32 対エクアドル緊急無償資金協力実績

年度 案件名 種別 供与金額

2006 トゥングラウア火山噴火による災害 緊急 約 1,000 万円

2002 火山噴火災害に対する緊急援助 緊急 約 1,290 万円

出所:外務省 ODA ホームページより作成

(4)草の根・人間の安全保障無償資金協力

2003 年度以降、エクアドルでは 208 件(供与限度額計 1,586,650,028 円)の草の

根・人間の安全保障無償資金協力が実施されている。分野別にみると、教育研究分

野の案件が 124 件(供与限度額計約 9.03 億円)と最も多く、次いで医療保健分野の

案件が 45 件(約 3.79 億円)、民生環境分野の案件が 32 件(約 2.52 億円)となって

いる。個別の案件の援助内容をみると、特に学校建設・改築や医療機材の導入、上

下水道整備を意図した案件に力点が置かれており、対エクアドルの援助重点分野で

ある、貧困対策、環境保全及び防災におけるエクアドル側のニーズを反映させた援

助が実施されている。

図 3-8 対エクアドル草の根・人間の安全保障無償資金協力実績

(2003-2007 年)

出所:外務省資料より作成

65

図 3-9 対エクアドル草の根・人間の安全保障無償資金協力の金額

(2003-2007 年)

出所:外務省資料より作成

66

表 3-33 対エクアドル草の根・人間の安全保障無償資金協力案件

(2003-2007 年)

年度 案件名 供与限度額(円)

民生環境 252,171,121

2007 クヌンヤク植林研究所機材整備計画 8,772,152

2007 プカラ下水道建設計画 9,001,252

2006 サン・セバスチアン上水道建設計画 8,338,653

2006 ナウテック上水道改善計画 6,612,825

2005 カヤンベ浄水設備整備計画 7,851,660

2005 クアトロ・エスキーナス浄化水槽整備計画 9,621,761

2005 グアランダ地下水取得計画 8,891,700

2005 障害者職業訓練作業所改善計画 7,561,904

2005 職業訓練機材整備計画 9,614,164

2005 チュルクナ・アルト上水道改善計画 3,952,366

2005 バイア・デ・カラケス上水道整備計画 7,136,151

2005 バジェ・ベルデ水路拡張計画 9,662,528

2005 プーヨ水路拡張計画 8,171,911

2005 プトゥグレオ上水道改善計画 9,549,429

2005 ベジャビスタ水路拡張計画 9,753,050

2005 マチャチリサイクルセンター整備計画 9,711,748

2005 ラ・セリカ上水道整備計画 9,056,587

2004 アンババキー上水道改善計画 2,985,950

2004 サン・エステバン上水道改善計画 2,870,560

2004 サンタ・ロサ上水道改善計画 2,134,440

2004 トゥケル地区上水道整備計画 4,028,970

2004 パストアルト上水道整備計画 8,787,570

2004 パストカジェ上水道整備計画 8,782,180

2004 パストパンバ上水道整備計画 8,899,330

2004 プルウアイ堤防建設計画 8,689,670

2003 エスクエラ・ノクトゥルナ水路拡張計画 7,593,158

2003 クイルチェ・ミニョ上水道計画 8,837,192

2003 サンタ・ロサ水路拡張計画 9,490,380

2003 ペグチェ下水道計画 6,628,992

2003 プリオラト上水道施設改善計画 9,693,388

2003 モンタルボ上水道計画 9,760,000

67

2003 ラガルト上水道計画 9,729,500

教育研究 903,386,258

2007 11月11日小学校教室建設計画 9,870,324

2007 9月26日小学校教室建設計画 7,173,208

2007 ア・ディスタンシア学校教室建設計画 4,677,120

2007 アルフレド・パレハ・ディエスカンセコ技術学校教室建設計画 6,718,836

2007 イシドロ・アヨラ小学校教室建設計画 9,865,452

2007 エル・キテーニョ・リーブレ小学校教室建設計画 9,943,636

2007 エル・パノ学校教室建設計画 8,584,464

2007 エロイ・アルファロ学校教室建設計画 9,656,652

2007 エンリケタ・サンティジャン聾学校教室建設計画 9,987,020

2007 キト市南部養護学校教室建設計画 9,968,924

2007 キト市北部養護学校教室建設計画 9,976,000

2007 グアランダ技術学校教室建設計画 9,860,000

2007 クレメンテ・バジェホ・ラレア小学校教室建設計画 9,841,904

2007 ゴンサロ・エスクデロ学校教室建設計画 9,843,992

2007 ジョバンニ・カジェス養護学校整備計画 8,566,484

2007 スティーブン・ホーキング養護学校整備計画 2,800,588

2007 ヒホン・カアマニョ・イ・フローレス小学校教室建設計画 9,841,904

2007 ペドロ・カルボ学校教室建設計画 9,844,224

2007 ホセ・インヘニエロス小学校教室建設計画 9,975,304

2007 ホセ・マリア・ベラス学校教室建設計画 9,844,224

2007 ホルヘ・イカサ小学校教室建設計画 9,828,448

2007 ラウル・アンドラデ学校教室建設計画 9,911,736

2006 10月6日学校教室建設計画 4,922,739

2006 1月10日学校教室建設計画 9,981,675

2006 1月10日小学校教室建設計画 4,994,889

2006 5月24日小学校教室建設計画 3,329,778

2006 アジュリキン学校教室建設計画 6,462,531

2006 アルベルト・フローレス・ゴンザレス小学校教室建設計画 3,290,151

2006 アロアシ技術学校教室建設計画 3,456,651

2006 アンヘル・ポリビオ・チャベス学校教室建設計画 9,985,449

2006 イスマエル・プロアーニョ・アンドラデ学校教室建設計画 3,453,654

2006 エスタシオン・テレナ小学校教室建設計画 3,313,128

2006 エル・エスフエルソ技術学校教室建設計画 4,873,233

68

2006 オディロ・アギラル学校教室建設計画 9,760,230

2006 カラカリ学校教室建設計画 3,307,134

2006 ガルシア・モレノ小学校教室建設計画 6,926,289

2006 カルロス・フレイレ・ラレア小学校教室建設計画 3,410,919

2006 国立聾学校教室建設計画 9,779,766

2006 コリナ・パラル・デ・ベラスコ・イバラ学校教室建設計画 4,994,334

2006 サティア・サイ小学校教室建設計画 9,683,307

2006 サン・パブロ・デ・アテナス学校教室建設計画 3,329,778

2006 サン・ミゲル・デ・ロス・バンコス学校教室建設計画 5,167,272

2006 サント・ドミンゴ学校教室建設計画 9,966,024

2006 シウダッド・デ・キニンデ小学校教室建設計画 6,723,825

2006 ドミンゴ・コルドベス・ダバロス小学校教室建設計画 4,994,667

2006 トリニダッド・カマチョ小学校教室建設計画 4,994,334

2006 ナネガリート地区グアヤス小学校教室建設計画 3,400,596

2006 ナネガル学校教室建設計画 3,451,101

2006 ハイメ・デル・イエロ技術学校教室建設計画 6,923,070

2006 ハシント・コジャワソ小学校教室建設計画 3,462,978

2006 8月2日小学校教室建設計画 3,458,538

2006 パルマール・デル・ビンベ学校教室建設計画 4,871,790

2006 ビセンテ・アンダ・アギーレ技術学校教室建設計画 6,979,680

2006 プエルト・リモン学校教室建設計画 6,659,001

2006 フェルナンド・ダキレマ小学校教室建設計画 9,906,195

2006 フロール・マリア・インファンテ学校教室建設計画 4,994,889

2006 ベルナベ・デ・ララウル学校教室建設計画 4,067,595

2006 ベルボ・ディビノ学校教室建設計画 3,290,151

2006 ホセ・ナバロ小学校及びコトチョア農業学校教室建設計画 3,460,092

2006 ホセ・リカルド・チリボガ技術学校教室建設計画 6,643,128

2006 ボリビア共和国小学校教室建設計画 9,847,032

2006 マヌエル・カジェ学校教室建設計画 9,067,812

2006 マルティン・ゴンザレス小学校教室建設計画 2,851,590

2006 ミゲル・リオフリオ小学校教室建設計画 9,097,227

2006 養護学校整備計画 1,082,250

2006 ラ・リベルタッド小学校教室建設計画 3,427,902

2006 ラファエル・バサンテ小学校教室建設計画 3,290,151

2006 ルイス・フェリペ・ボルハ学校教室建設計画 9,891,210

69

2006 レオニダス・プロアーニョ学校教室建設計画 3,329,778

2006 ロベルト・アレギ・モスコソ小学校教室建設計画 9,785,649

2005 10月9日技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 12月3日小学校教室建設計画 3,337,758

2005 7月24日小学校教室建設計画 3,310,366

2005 アブドン・カルデロン学校教室建設計画 9,255,607

2005 アルフレド・ペレス・ゲレロ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 アンドレス・コルドバ技術学校教室建設計画 9,419,745

2005 イサベル・ラ・カトリカ小学校教室建設計画 3,166,237

2005 ウンベルト・マタ・マルティネス技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 エロイ・アルファロ小学校教室建設計画 9,076,061

2005 オスワルド・ロンベイダ学校教室建設計画 9,630,000

2005 ガブリエル・ノローニャ小学校教室建設計画 3,306,407

2005 カミロ・ガジェゴス・ドミンゲス学校教室建設計画 3,334,120

2005 カルデナル・デ・ラ・トレ学校教室建設計画 3,298,382

2005 カルデロン技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 キト市立サン・フランシスコ・デ・キト学校教室建設計画 9,630,000

2005 グアランダ小学校建設計画 9,906,274

2005 国立アマブレ・アラウス小学校教室建設計画 9,298,407

2005 国立サン・フランシスコ・デ・キト小学校教室建設計画 9,372,986

2005 コトコジャオ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 サン・ハシント・デル・ブア学校教室建設計画 9,301,724

2005 サン・フェリペ・ネリー小学校教室建設計画 8,559,358

2005 サン・ホセ社会福祉協議会技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 サント・ドミンゴ小学校教室建設計画 9,301,724

2005 サンビサ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 障害児用教室建設計画 8,702,096

2005 セサル・アニバル・エスピノッサ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 ドラ・イセラ・ルセル技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 ナサコタ・プエント小学校教室建設計画 6,152,179

2005 難民児童施設整備計画 8,825,574

2005 ニカラグア共和国小学校教室建設計画 3,286,612

2005 ニコラス・アギレラ小学校教室建設計画 3,334,548

2005 野口英世小学校教室建設計画 8,800,964

2005 バルネアリオ・デ・スア小学校教室建設計画 5,990,716

70

2005 ビセンテ・アンダ・アギレ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 ファン・ウィスネス技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 フリオ・モレノ学校教室建設計画 9,630,000

2005 ベジャビスタ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 ペドロ・パブロ・トラベルサリ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 ヘルマン・アブド小学校教室建設計画 8,767,794

2005 ベンセドーレス小学校教室建設計画 9,576,072

2005 ホセ・リカルド・チリボガ技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 ポマスキー学校教室建設計画 9,199,432

2005 マヌエル・デ・エチェアンディア小学校教室建設計画 3,167,735

2005 マリア・テレサ・ダビラ小学校教室建設計画 3,335,725

2005 ミゲル・アンヘル・レオン・ポントン学校教室建設計画 8,978,691

2005 メルセデス・セバリョス・エンリケス小学校教室建設計画 5,958,188

2005 ヤルキ技術学校教室建設計画 3,337,330

2005 ラファエル・アルバラード技能学校教室建設計画 9,630,000

2005 ルイス・テルモ・パスミーニョ将軍技能学校教室建設計画 9,630,000

2004 ガラパゴス図書館建設計画 9,888,560

2003 ゴンサロ・ピサロ教室建設計画 9,629,094

2003 フリオ・モレノ・ペニャエレラ教室建設計画 9,759,390

2003 マヌエル・カベサ・デ・バカ教室建設計画 9,759,390

2003 養護学校建設整備計画 9,799,406

医療保健 379,063,158

2007 エクアドル中央大学歯科学部貧困層治療用機材整備計画 8,906,480

2007 キト北東部医療機材整備計画 9,742,144

2007 クエンカ市巡回医療計画 9,860,000

2007 チャンボ母子センター医療機材整備計画 7,689,060

2007 バカ・オルティス小児病院宿泊所建設計画 9,597,840

2007 ピチンチャ第二保健診療所医療機材整備計画 9,975,884

2007 ペルーチョ診療所整備計画 9,083,728

2006 小児形成外科手術用医療機材整備計画 9,926,286

2006 ボリバル県巡回医療計画 4,809,852

2005 アタカメス診療所整備計画 9,629,037

2005 アンディグナト診療所整備計画 9,629,465

2005 カヤンベ医療機材整備計画 9,588,805

2005 キト北西部医療機材整備計画 9,629,251

71

2005 コトコジャオ診療所機材整備計画 9,561,199

2005 コンコルディア医療機材整備計画 9,629,251

2005 サモラ・チンチペ診療所整備計画 9,630,000

2005 心臓病センター機材整備計画 9,581,208

2005 ソルカ・ロハ医療機材整備計画 6,798,031

2005 チンボラソ・アンディーノ・アルテルナティーボ病院機材整備計画 9,870,750

2005 ヒピハパ医療機材整備計画 8,507,677

2005 プーヨ医療機材整備計画 9,327,832

2005 マチャチ病院機材整備計画 9,629,893

2005 ラタクンガ医療機材整備計画 9,534,342

2005 理学療法・産婦人科医療機器整備計画 7,674,789

2005 ルイス・ベルナサ病院機材整備計画 9,085,584

2004 オタバロ理学療法機器整備計画 3,423,970

2004 サント・ドミンゴ・デ・ロス・コロラドス子供病院機材整備計画 9,898,900

2004 産婦人科診断改善計画 9,583,200

2004 ソルカ・アンバト胃癌予防計画 6,377,800

2004 ドゥラン診療所眼科機材整備計画 9,039,140

2004 パスタサ県立病院医療機材整備計画 6,523,660

2004 ババオヨ産婦人科医療機材整備計画 9,403,350

2004 パンパナル・デ・ボリバル診療所整備計画 4,941,860

2004 ホスピス機材整備計画 3,057,450

2004 ヤルキ地区眼科機材整備計画 8,790,650

2004 理学・作業療法センター機器整備計画 8,789,770

2003 アテュクチョ保健センター医療機材整備計画 4,433,480

2003 イニィゴ・アルバレス腎臓財団医療機材整備計画 8,048,340

2003 インバブラ州巡回医療計画 9,405,712

2003 エスメラルダス州巡回医療計画 9,882,000

2003 オレジャーナ県巡回医療計画 8,707,262

2003 スクンビオス州巡回医療計画 8,546,100

2003 ダミアン神父財団病院施設建設計画 8,743,130

2003 ペドロ・ビセンテ・マルドナド病院医療機材整備計画 6,012,160

2003 ポルトベロ医療機材整備計画 8,556,836

農林水産 25,522,835

2005 アンガウアナ貯水施設建設計画 8,020,185

2004 灌漑施設整備計画 8,285,200

72

2004 バイオテクノロジー機材整備計画 9,217,450

その他 26,506,656

2006 グアヤキル麻薬焼却炉施設整備計画 4,662,000

2006 選挙プロセス支援計画 2,220,000

2005 ガラパゴス環境意識啓蒙計画 9,632,461

2005 麻薬管理焼却施設整備計画 9,992,195

合計 1,586,650,028

出所:外務省

73

2.技術協力

(1)技術協力プロジェクト・開発調査

昨今の技術協力実績はやや減少傾向にあり、2007年には約 6億円となっている。

技術協力費は、技術協力プロジェクトと開発調査に分けられる。技術協力プロジェクト

として、「エクアドル共和国火山監視能力強化プロジェクト」は対エクアドル援助の重

点分野のうち主に「防災」に、「エクアドル職業訓練改善計画」は対エクアドル援助の

重点分野のうち主に「貧困対策」に、「ガラパゴス諸島海洋環境保全計画」は対エクア

ドル援助の重点分野のうち主に「環境保全」に資するものであり、対エクアドル援助の

重点分野を広くカバーしている。開発調査としては、1980 年代から 90 年代前半にか

けて様々な調査が実施されたが、2000 年以降、実施されたものとしては、2002 年~

2005 年にかけて山岳部南部地域で実施された「シエラ南部地域生産活性化・貧困削

減調査」のみである。

図 3-10 対エクアドル ODA の技術協力実績の推移

0

2

4

6

8

10

12

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

(億円)

出所:JICA ホームページ

74

表 3-34 対エクアドル技術協力プロジェクト実績

分野 案件名 協力期間エクアドル側関係機関

日本側協力機関名

防災エクアドル共和国火山監視能力強化プロジェクト

2004 年 5 月 1 日~2007 年 4 月 30日

国立理工科大学地球物理研究所

独立行政法人防災科学技術研究所

職業訓練 エクアドル職業訓練改善計画2002 年 7 月 1 日~2007 年 6 月 30日

労働雇用省職業能力開発機構(SECAP)

厚生労働省雇用能力開発機構

自然環境保全

ガラパゴス諸島海洋環境保全計画

(R/D):2004年 1 月~2009 年 1 月

ガラパゴス国立公園局

環境省、農林水産省

出所:JICA ホームページ

表 3-35 対エクアドル開発調査実績分野 案件名 協力期間 エクアドル側関係機関

農業開発・農村開発-農業政策・制度

エクアドル国シエラ南部地域生産活性化・貧困削減計画調査

2002 年 10 月~2005 年 06 月

大統領府アスアイ、カニャール、モロナ・サンチアゴ州経済復興センター

出所:JICA ホームページ

(2)専門家・ボランティア派遣、研修員受入れ

日本は JICA ボランティア事業を通じてエクアドルに青年海外協力隊及びシニア海

外ボランティアを派遣している。派遣人数は 2008年 11月末時点で 383人(活動中の

46 人を含む)であり、南米地域においては、パラグアイ、ボリビアに続く、ボランティア

派遣国となっている。

75

図 3-11 案件配置図1

出所:JICA ホームページ

76

図 3-12 案件配置図2

出所:JICA ホームページ

77

図 3-13 南米地域におけるボランティア派遣実績

(2008 年 11 月 30 日時点)

946

750

383

216 204163

646 3 2

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

パラグアイ

ボリビ

エクア

ドルペルー

コロンビア チ

ベネズエラ

ブラジ

ウルグアイ

アルゼンチン

(人)

注)人数には、一般隊員、シニア隊員、短期緊急派遣隊員及び旧制度調整員を含む。

出所:JICA シニア海外ボランティアホームページ

ボランティア事業以外に、エクアドルからの本邦研修員の受入れも行っている。

2003年から 2007年までの同国からの派遣実績は 310名に上っており、研修員は増

加傾向にある。

表 3-36 対エクアドル専門家派遣・研修員受入れ実績

(単位:人)

年度 研修員受入 専門家派遣 調査団派遣 協力隊員 他ボランティア

2003 50 11 55 27 1

2004 65 19 42 37 0

2005 64 23 26 15 1

2006 59 21 34 10 5

2007 72 11 11 27 4

累計 310 85 168 116 11

出所:JICA「国際協力機構年報」各年度版

78

図 3-14 対エクアドル専門家派遣、研修員受入れ実績

(2003 年-2007 年)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2003 2004 2005 2006 2007

(人)

研修員受入 専門家派遣 調査団派遣 協力隊員 他ボランティア

出所:JICA「国際協力機構年報」各年度版

3.円借款

1977年度から2007年度までに借款契約を締結したプロジェクトは7件(うち、ポル

トビエホ川流域導水事業はキャンセルとなっている)であり、借款契約額の合計は

51,352 百万円(キャンセルとなったポルトビエホ川流域導水事業の借款契約額は除

く)となっている。1996 年以降、円借款案件の契約が締結されていないが、これは

2003 年のパリクラブにおいてエクアドルに対する債務返済のリスケが合意されてい

たものの、日・エ二国間においてリスケE/N締結に係る二国間交渉に時間を要した

ため、円借款供与の条件が整っていなかったことが一因である。その後、2006 年 11月に E/N が締結されてリスケが正式に発効し、延滞状況の解消という意味で、対エク

アドル円借款の供与を阻害する要因は排除された。しかし、安定的な政権が誕生して

いないこと等により、新規案件の供与は行われていない。

79

表 3-37 対エクアドル円借款案件

借款契約日 案件名 部門名借款契約額(百万円)

1977 年 7 月 14 日 グアヤキル火力発電所建設事業 電力・ガス 8,100

1985 年 8 月 1 日 第 2 次送電網事業(フェ-ズ B-1) 電力・ガス 9,499

1988 年 2 月 12 日 電気通信網拡充事業 通信 7,670

1988 年 2 月 12 日 カタラマ川流域かんがい事業かんがい・治水・

干拓8,594

1990 年 11 月 15 日 送電網(フェ-ズ D)建設事業 電力・ガス 8,913

1996 年 7 月 18 日 第 2 次送電網事業(フェーズ B-2) 電力・ガス 8,576

1997 年 4 月 11 日 ポルトビエホ川流域環境改善事業かんがい・治水・

干拓12,404

出所:旧 JBIC ホームページ

80

図 3-14 対エクアドル援助プロジェクト所在地15

15 外務省(2007)

81

図 3-15 日本の対エクアドル援助重点分野における実施状況

対エクアドル

援助重点分野

環境保全 自然環境・生態系保存 環境汚染対策

エクアドル政府開発計画

他ドナーの政策(世界銀行、IDB、CAF 等)

日本の重点外交政策

ODA 中期計画

ODA 大綱

貧困対策 基礎インフラ(上下水道、保健医療及び教育等)整備

産業開発・雇用創出(人材育成) 貧農支援 地域社会の開発促進(現政権の重点項目である北部国境地域の開発)2005

年政策協議

JICA・国別事業実施計画・ポジションペーパー

JBIC・海外経済協力事業実施方針

一般無償資金協力上下水道整備、貧農支援、保健サービス強化等 14 件(供与金額 74.29 億円)

草の根・人間の安全保障無償資金協力民生環境分野 32 件(供与金額約 2 億 5,217 万円)教育研究分野 124 件(供与金額約 9 億 338 万円)医療保険分野 45 件(供与金額約 3 億 7,906 万円)農林水産分野 3 件(供与金額約 2,552 万円)その他(麻薬対策、選挙プロセス支援)3 件(供与金額約2,429 万円)

技術協力エクアドル職業訓練改善計画(2002~2007)

緊急無償資金協力トゥングラウア火山噴火による災害(2006)(供与金額約 1,000 万円)火山噴火災害に対する緊急援助(2005)(供与金額約 1,290 万円)

防災 自然災害に対する脆弱性の緩和

日本 NGO 連携無償資金協力アスアイ州およびカニャール州における給水設備設置プロジェクト(2005)(供与金額約 1,206 万円)

開発調査エクアドル国シエラ南部地域生産活性化・貧困削減計画調査(2002~2009)

草の根・人間の安全保障無償資金協力ガラパゴス環境意識啓蒙計画(2005)(供与金額約 963万円)

技術協力エクアドル共和国火山監視能力強化プロジェクト(2004~2007)

技術協力ガラパゴス諸島海洋環境保全計画(2004~2009)

出所: 評価チーム作成

82

4.今後の課題

エクアドルの一人当たり GNI は 2006 年で 2,840 ドルと準中進国レベルに達して

おり、経済成長が順当に推移すれば、一般プロジェクト型の無償資金協力は卒業が

検討されうる段階となる。しかし、国内の経済格差はなお大きく、とりわけ先住民の

貧困状況が深刻であることを考えると、困っている人々に直接支援の手を差し伸べ

られる草の根レベルの援助は、当面、なおも重要である。また、政権交代に伴う抜本

的な政策転換や、ODA 担当者の無秩序な交代に伴う困難を避けるためには、長期

大型の有償資金協力より比較的短期の無償資金協力の方が安全であると考えられ

ていた面もあるが、開発のための資金ニーズは大きい。2006 年 11 月、債務返済に

係るリスケの E/N が締結されたことから、今後は円借款の再開にも備えつつ、技術

協力プロジェクトや専門家派遣等との相乗効果が得られるような援助を実施していく

ことが重要となる。

そのためにも、エクアドル政府の担当者が円借款に関する正しい認識を得られる

よう、日本側から働きかけを行っていく必要性は高い。エクアドルでは、これまで頻繁

に政権が交代し、各省担当官も頻繁に交代したことから、長期的なプロジェクトの実

施には困難が伴った。現政権も、内外の情勢変化によっては、安定度は必ずしも確

実とは言い切れず、この国に対する支援の展開にとって、正確な円借款知識の再導

入と継承は大きな意味を持つ。