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第3章 化合物命名法と国際単位系 制作日:2008年12月23日 作:千葉大学 小熊 幸一 標準化教育プログラム [ 個別技術分野編-化学分野 本資料は、経済産業省委託事業である 「平成20年度 国内人材育成等基盤体制 強化事業 (標準化に関する教育体制整備)」 の成果である。

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第3章 化合物命名法と国際単位系

制作日:2008年12月23日制 作:千葉大学

小熊 幸一

標準化教育プログラム[ 個別技術分野編-化学分野 ]

本資料は、経済産業省委託事業である「平成20年度 国内人材育成等基盤体制強化事業 (標準化に関する教育体制整備)」の成果である。

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化合物命名法と国際単位系 2

学習のねらい ・・・・・ 第3章 化合物命名法と国際単位系

化学に関連する下記の標準について学ぶ。

1 原子量

2 化合物命名法

3 国際単位系(SI)

◆ 解説

この章の学習のねらいは,化学の基本である原子量,化合物の命名法,単位に関する国際的な標準について学ぶことにある。

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化合物命名法と国際単位系 3

目 次 ・・・・・ 第3章 化合物命名法と国際単位系

1 原子量

2 化合物命名法

3 国際単位系(SI)

まとめ

演習問題(A・B)

参考資料

◆ 解説

本章は,ここに書いてあるように,先ず原子量,次いで化合物命名法,そして国際単位系について説明し,最後にまとめ,演習問題,参考資料を示す。

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化合物命名法と国際単位系 4

炭素の同位体12Cのモル質量を0.012 kg mol-1とし,これを基準として定めた各原子のモル質量の相対値を相対原子質量と呼ぶ。自然に存在する同位体について重みつき平均を求めたものを原子量と呼び,同位体の存在しない元素(F, Na, Alなど)の原子量は,それらの相対原子質量に一致する。

〈例〉 炭素の原子量

天然の炭素には12C と13Cの2種の安定同位体があり,それぞれの相対

原子質量と存在比は, 12C(相対原子質量12)98.90%と13C(相対原子質量13)1.10%。したがって,炭素の原子量は

12 ×(98.90/100) + 13×(1.10/100) = 12.011

天然の炭素は,すべて相対質量が12.011の炭素原子から構成されているとみなすことができる。

1 原子量 ① 原子量の定義

◆ 解説

先ず,原子量の定義であるが,炭素の同位体12Cのモル質量を0.012 kg mol-1とし,これを基準として定めた各原子のモル質量の相対値を相対原子質量と呼ぶ。

また,自然に存在する同位体について重みつき平均を求めたものを原子量と呼ぶ。

したがって,同位体の存在しない元素(F, Na, Alなど)の原子量は,それらの相対原子質量に一致することになる。

ここに炭素の原子量の計算例を示す。

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化合物命名法と国際単位系 5

多くの元素の原子量は一定ではなく,物質の起源や処理の仕方に依存する。原子量とその不確かさは地球上に起源を持ち,天然に存在する物質中の元素に適用される。同位体存在度の不確かさは,自然に,あるいは人為的に起こりうる変動や実験誤差のために,元素ごとに異なる。

〈例〉 市販品のリチウム化合物のリチウムの原子量は6.939から6.996の幅を持つ。これは6Liを抽出した後のリチウムが試薬として出回っているため。

「化学と教育」55巻,4号.(2007)

6Liの用途:核融合 (ウランの核分裂で発生した中性子を6Liと反応させる)

n + 6Li → 4He + 3H 3H + 2H → 4He + n

国際純正及び応用化学連合(IUPAC)の原子量及び同位体存在度委員会(CIAAW)新しく測定されたデータの収集と検討をもとに2年ごと(奇数年)に新しい原子量表を発表。

1 原子量 ② 原子量についての注意事項

◆ 解説

原子量について注意しなければならないことがある。それは,多くの元素の原子量は一定ではない,ということである。

原子量は,物質の起源や処理の仕方に依存する。すなわち,原子量とその不確かさは地球上に起源を持ち,天然に存在する物質中の元素に適用されるものなのである。同位体存在度の不確かさは,自然に,あるいはここに示す例のように人為的に起こりうる変動や実験誤差のために,元素ごとに異なる。現在市販されているリチウム化合物中のリチウムの原子量は,6.939から6.996の幅を持っている。その理由は,核融合の目的のために6Liを一部分離した後のリチウムが試薬として市販されているためである。

参考: 6Li + n → 3H + 4He の反応熱が4 MeVに達する。

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化合物命名法と国際単位系 6

(1) ISO/IEC規格の作成指令(ISO/IEC Directives – Part 2:Rules for

the structure and drafting of International Standards (2004年版)(国際規格の構成及び起草規定)

規格の構成,規格の書き方などの規格作成の詳細を規定。命名法については規定なし。

(2) ISO 78-2:1999 Chemistry -- Layouts for standards– Part 2: Methods

of chemical analysis (化学分析法の規格の作成)

「4.3 化学命名法」の項目で,「命名法はIUPACの勧告を適用するのが望ましい」 としている。

ISO 78-2:1999の翻訳JISはない。

IEC: International Electrotechnical Commission

2 化合物命名法 ① ISOにおける命名法の標準化の状況

◆ 解説

次に,化合物命名法について説明する。

先ず,ISO(国際標準化機構)/IEC(国際電気標準会議)では,関連分野の国際規格を作成する際の規則を定めているが,命名法についての規則は決めていない。

ISO規格の中に化学分析法の規格の作成についての規定に「4.3化学命名法」という項目があるが,そこでは命名法はIUPACの勧告を適用することを勧めている。なお,このISO規格を翻訳したJISはない。

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化合物命名法と国際単位系 7

(1)JIS Z 8301:2005 規格票の様式及び作成方法(Rules for the layout and drafting of Japanese Industrial Standards)

国際規格の提案及び国際規格のJIS化を容易にするとの意図から,2005年版から基本的な部分はISO/IEC Directives – Part 2 を導入,

整合を図った。

このJISでも化合物命名法の規定はない。

化合物名を専門用語と見なした場合JIS Z 8301における専門用語の優先順位用語に関するJISに規定してある用語>この規格に関連するJISで規定する用語>文部科学省編集の学術用語集に記載されている用語

学術用語集「化学編」(文部科学省編)には化合物命名法は記載なし

2 化合物命名法 ② JISにおける命名法標準化の状況 (1)

◆ 解説

次に,日本工業規格における命名法標準化の状況についてみてみることにする。

JIS Z 8301は,規格票の様式とその作成方法を規定しているが,国際規格の提案及び国際規格のJIS化を容易にすることを意図して2005年版から,基本的な部分は,先ほど説明したISO/IEC指令– Part 2 を導入し,整合を図った。しかし,このJISでも化合物命名法についての規定はない。

化合物名を専門用語と見なした場合,JIS Z 8301における専門用語の優先順位はここに示したように考えられている。

化学用語の基準として,しばしば用いられる文部科学省編集の学術用語集「化学編」には化合物命名法は書いていない。

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化合物命名法と国際単位系 8

(2) JIS K0050:2005(化学分析方法通則): 化合物命名法の規定はなし。この規格はISO 78-2:1999に近い。

(3) JIS K8008:1992(生化学試薬通則): 酵素についてはIUB勧告の推奨名を用い,推奨名がない場合は最も広く用いられている慣用名を用いる。たんぱく質などについては,原則としてIUPAC又はIUBの命名に従う。

IUB: International Union of Biochemistry (国際生化学連合)

2 化合物命名法 ② JISにおける命名法標準化の状況 (2)

◆ 解説

JIS K 0050(化学分析通則)は化合物命名法を規定していない。この規格は先に示しましたISO 78-2:1999に近い内容である。

また, JIS K 8008(生化学試薬通則)では,次のように規定している。酵素についてはIUB(国際生化学連合)勧告にある推奨名を用い,推奨名がない場合は最も広く用いられている慣用名を用いる。たんぱく質などについては,原則としてIUPAC又はIUBの命名に従う。

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化合物命名法と国際単位系 9

(1)IUPAC命名法Nomenclature of Inorganic Chemistry Recommendation 1990

© 1990 by IUPAC (Blackwell)Nomenclature of Organic Chemistry Sections A, B, C, D, E, F

and H 1979 Edition © 1979 by IUPAC (Pergamon Press)A: 炭素と水素のみからなる炭化水素,B: 炭素以外の元素が環を構成している化合物,C: 炭素,水素,窒素,カルコゲン,ハロゲンからなる化合物,D: Cの部

に定められていない官能基を持つ化合物,E: 立体化学,F: 天然有機化合物,H: 同位体による置換を受けた化合物

日本語翻訳版: 山崎一雄訳著,無機化合物命名法(東京化学同人,1993).平山健三・平山和雄訳著,有機化学・生化学命名法〔上・下〕(南江堂,1980・1981)

要約解説版:日本化学会化合物命名小委員会編,化合物命名法(補訂7版,2000)

有機化学命名法に対する補足修正を含むガイドA Guide to IUPAC Nomenclature of Organic Compounds Recommendations 1993© 1993 by IUPAC (Blackwell)

解説: “化学と工業”,Vol. 48, No. 3, p. 463(1995)

2 化合物命名法 ③ 主な命名法 (1)

◆ 解説

次に,現在用いられている主な命名法について説明する。

先ず,IUPAC命名法だが,大きく分けて無機化合物と有機化合物に分けてまとめられている。無機化合物の命名法については,1990年にNomenclature of Inorganic Chemistry Recommendation 1990が刊行された。

また,有機化合物については, Nomenclature of Organic Chemistry Sections A, B, C, D, E, F and H 1979 Editionが刊行された。 これらの命名法は,ここに示したように日本語に翻訳され,解説書も刊行されている。有機化合物についての補足修正を含むガイドは1993年に刊行され,解説は日本化学会の「化学と工業」に掲載されている。

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化合物命名法と国際単位系 10

(2) Chemical Abstracts (CA)命名法IUPAC命名法を基礎にしながら独自の命名規則を採用化学構造に対応する体系名を原則化合物と名称の1:1の対応を厳守

(3) 日本語命名法日本語による化合物命名法規則は,日本化学会が中心に制定。IUPAC命名法を基本とし,英語の化合物名を日本語訳する際は字訳とする。字訳基準の詳細は下記解説書を参照。CA命名法の使用も認められている。

日本化学会化合物命名小委員会:“化合物命名法” (補訂7版),©日本化学会 (2000)

2 化合物命名法 ③ 主な命名法 (2)

isobutane2-methylpropane

vinyl

isopropyl

toluene

IUPAC

ethenyl

1-methylethyl

methylbenzene

CA

◆ 解説

二番目によく用いられている命名法は化学関連の文献抄録誌Chemical Abstractsに使われているもので,IUPAC命名法を基礎にしながら独自の命名規則を採用している。すなわち,化学構造に対応する体系名を原則にしつつ, 化合物と名称の1:1の対応を厳守している。

ここに例を示す。IUPAC命名法でイソブタンと呼ばれるものが,Chemical Abstractsの命名法ではプロパンの2の位置にメチル基がついたものとして2-メチルプロパンと呼ばれる。

また,IUPAC命名法でトルエンが,CA命名法ではベンゼン核にメチル基が付いたものとしてメチルベンゼンとなる。

次に,日本語での命名法は,日本化学会が中心になって制定している。基本はIUPAC命名法で,英語の化合物名を日本語訳する際は,字訳することになっている。字訳の基準は,日本化学会化合物命名小委員会が作成した“化合物命名法” (補訂7版)に詳しく記載されている。

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化合物命名法と国際単位系 11

(1) 元素名

IUPACの名称 Chemical Abstracts の名称

Aluminium Aluminum

Caesium Cesium

(2) 原子番号,同位体,化合物中での原子状態の書き方

元 素記 号

質量数 電荷数

原子番号 原子の数

Wの英語表記はtungstenとwolframが認められている。

O,166

−23CO質量数16の酸素同位体: 炭酸イオン:

2 化合物命名法 ④ IUPAC元素記号等の記載法

◆ 解説

それでは,現在最も広く用いられているIUPAC命名法を説明する。

先ず,元素名だが,IUPACの名称とCAの名称で異なるものがいくつかある。ここに例を示す。日本語でアルミニウムは,IUPACでaluminiumと言い,CAではaluminumと言う。

また,セシウムはIUPACでcaesium,CAでcesiumとなる。タングステンの英語表記は,tungstenとwolframのどちらも認められている。

原子番号は元素記号の左下,同位体を示すための質量数は左上,化合物中での原子の数は右下,電荷数は右上にそれぞれ書くことになっている。例えば,質量数16の酸素の同位体及び炭酸イオンは講義資料のように記載する。

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(陽性成分)数 (陰性成分)数

(中心原子の)アルファベット順又は実際の結合の順

(中心原子の)アルファベット順又は実際の結合の順

①陽性成分と陰性成分とは続けて書き,間隔は置かない。②イオンの電荷は化学記号の右肩に+,2+,3+,・・・,-,2-,3-,・・・を

つけて表す。1価のときは1を書かない。2価以上の時は数字を先に電荷の符号を後に書く。

③結晶水は,化学式の末尾に中黒・を置き,その次に書く。例: CuSO4・5H2O

2 化合物命名法 ⑤ IUPAC無機化合物の化学式

◆ 解説

次に,無機化合物の化学式の書き方であるが,先ず陽性成分の元素記号とその数を書く。その場合,中心原子のアルファベット順又は実際の結合の順に書く。そして間隔を空けないで陰性成分とその数を書く。その際,中心原子のアルファベット順又は実際の結合の順に書く。

イオンの電荷を書く時は,化学記号の右肩に+,2+,3+,・・・,-,2-,3-,・・・のように書く。1価のときは1を書かない。結晶水は,化学式の後に中黒・をつけ,その次に書く。

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化合物命名法と国際単位系 13

(a)英語名

陽 性 成 分

数を示す 名 称 酸化数また接頭語 語尾変化なし はイオンの

電荷数

名称のアルファベット順

空白

数を示す 名 称 酸化数また接頭語 (-ide, -ate,-ite) はイオンの

電荷数

名称のアルファベット順

陰 性 成 分

NaCl sodium chlorideAlK(SO4)2・12H2O aluminum potassium (bis)sulfate dodecahydrateNaNO2 sodium nitriteNa6ClF(SO4)2 hexasodium chloride fluoride (bis)sulfateNaHCO3 sodium hydrogencarbonateFeCl3 iron trichloride

iron(Ⅲ) chloride (ストック方式)iron(3+) chloride (ユーエンス-エバンス方式)

〈例〉

2 化合物命名法 ⑥ IUPAC無機化合物の命名 (1)

◆ 解説

次に,無機化合物の命名法を説明する。

先ず,英語名であるが,最初に陽性成分を書く。その際,陽性成分の数を示す接頭語を最初に,ついで陽性成分の名称,必要あれば次に酸化数又はイオンの電荷数を書く。陽性成分が複数ある場合は名称のアルファベット順に書く。陰性成分は,先ず,その数を示す接頭語,次に名称(-ide,-ate,-ite),必要あれば酸化数又はイオンの電荷数を付けます。陰性成分が複数ある場合は,名称のアルファベット順に書く。

例をここに示す。 AlK(SO4)2・12H2O はミョウバンと呼ばれる化合物だが,陽性成分が2種類あるので,アルファベット順にアルミニウムが最初にあり,次にカリウムを書く。

(SO4)2はbis(sulfate)であって,disulfateではない。disulfateはS2O7を意味する。

ミョウバンの場合,bisは省略しても構わない。

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化合物命名法と国際単位系 14

(b) 日本語名

陰 性 成 分 陽 性 成 分

数詞又 (酸化数)酸,化 数詞又 名 称 酸化数又は数を示 名 称 酸,化 (イオンの は数を示 語尾変化なし はイオンのす接頭語 電荷数) す接頭語 電荷数

式中で陽性成分に近い方から 式中で陰性成分に近い方から

AlK(SO4)2・12H2O (ビス)硫酸カリウムアルミニウム十二水和物Na6ClF(SO4)2 塩化フッ化(ビス)硫酸六ナトリウムNaHCO3 炭酸水素ナトリウムFeCl3 三塩化鉄,塩化鉄(Ⅲ),塩化鉄(3+)

〈例〉

2 化合物命名法 ⑥ IUPAC無機化合物の命名 (2)

◆ 解説

日本語名は陰性成分を先に書く。複数の陰性成分が含まれる場合は,式中で陽性成分に近い方から先に書く。陽性成分は,式中で陰性成分に近いものから先に書く。先ほどのミョウバンを例にとると, (ビス)硫酸カリウムアルミニウム十二水和物となる。ここでビスは省略しても構わない。

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化合物命名法と国際単位系 15

[ 中心原子 (陰イオン性配位子)数(中性配位子)数 ] イオンの電荷数

それぞれの式の先頭の記号のアルファベット順

陰イオン性あるいは中性の配位子がそれぞれ2個以上ある時は,配位子の化学式中の元素記号で先頭にある文字のアルファベット順に並べる。ただし,ヘテロ原子を含む有機配位子では,ヘテロ原子の記号のアルファベット順に並べる。複雑な錯体の化学式を書くときは,[( )],[{( )}], [{[( )]}]の順にカッコを用いる。

〈解説〉

2 化合物命名法 ⑥ IUPAC配位化合物 (錯体) の化学式

例: [CoCl(NH3)5]2+ [Co(H2O)2(NH3)4]

3+

[CuCl2{CO(NH2)2}2]

◆ 解説

配化合物の化学式は,最初に中心原子,次に陰イオン性配位子とその数,次に中性配位子とその数を書き,これらをカギカッコで囲み,右上にイオンの電荷数を書く。陰イオン性あるいは中性の配位子がそれぞれ2個以上あるときは,配位子の化学式中の元素記号で先頭にある文字のアルファベット順に並べる。ただし,ヘテロ原子を含む有機配位子では,ヘテロ原子の記号のアルファベット順に並べる。

ここに例を示します。

最初の例では,陰イオンである塩化物イオンが中性のアンモニアより先に書いてある。

2番目の例では,配位子が両方とも中性ですので,Hの含まれるH2Oを先に書く。

3番目の例では,配位子に尿素が含まれているため大カッコ{}を使う。

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化合物命名法と国際単位系 16

(a)英語名

数を示す接頭語 配位子の名称 中心原子* 酸化数またの名称 はイオンの

電荷数配位子の名称のアルファベット順

* 陰イオンの場合,“中心元素名+ate(酸化数あるいはイオンの電荷数)”

[Cu(NH3)4]2+ tetraamminecopper(Ⅱ) テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン

tetraamminecopper(2+) テトラアンミン銅(2+)イオン

[Fe(CN)6]4- hexacyanoferrate(Ⅱ) ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸イオン

hexacyanoferrate(4-) ヘキサシアノ鉄酸(4-)イオン

LiAlH4

正しくは Li[AlH4] lithium tetrahydridoaluminate(1-) テトラヒドリドアルミン酸リチウム

〈例〉

2 化合物命名法 ⑦ IUPAC配位化合物 (錯体) の命名 (1)

◆ 解説

配位化合物の英語による命名は,先ず配位子の数を示す接頭語があり,次に配位子の名称,次に中心原子の名称及びその酸化数又はイオンの電荷数を書く。配位子が複数ある場合は,その名称のアルファベット順に並べる。

例をここに示す。

最初の例にあるように,アンモニアは配位子になると”ammine”となる。アンモニア分子が4個含まれるため接頭語のtetraが付いている。2番目の例は陰イオンなので,中心元素名にateを付けるが,Feの元素名ironにateは付けず,ラテン語のferrumを用いてFe(II)についてはferrate(II)とする。同様な例は,銅 copper: cupr-um,銀 silver: argent-um, 金 gold: aur-um, 鉛 lead: plumb-um, スズ tin: stann-um, アンチモン antimony: stib-ium.3番目のLiAlH4 は有機合成でよく用いられる化合物である。これをlithium aluminium hydride と呼ぶのは誤りで,[AlH4]-のリチウム塩である。

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化合物命名法と国際単位系 17

[Cu(NH3)4]2+ tetraamminecopper(Ⅱ) テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン

tetraamminecopper(2+) テトラアンミン銅(2+)イオン

[Fe(CN)6]4- hexacyanoferrate(Ⅱ) ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸イオン

hexacyanoferrate(4-) ヘキサシアノ鉄酸(4-)イオン

LiAlH4

正しくは Li[AlH4] lithium tetrahydridoaluminate(1-) テトラヒドリドアルミン酸リチウム

(b) 日本語名

中心原子* 酸化数又数を示す接頭語 配位子の名称 の名称 はイオンの

電荷数式中で中心金属に近い順

*陰イオンの場合, “・・・中心原子名(酸化数)酸”,“・・・中心原子名酸(イオンの酸数)”

〈例〉

2 化合物命名法 ⑧ IUPAC配位化合物 (錯体) の命名 (2)

◆ 解説

前ページの錯イオンを日本語で表す時は,先ず配位子の数を示す接頭語,配位子の名称,中心原子の名称及びその酸化数又はイオンの電荷数をこの順で書く。なお,錯イオンが陰イオンであるときは,中心原子の名称は,“・・・中心原子名(酸化数)酸”あるいは“・・・中心原子名酸(イオンの酸化数)”と書く。これらの例は,それぞれテトラアンミン銅(Ⅱ)イオン又はテトラアンミン銅(2+)イオン,ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸イオン又はヘキサシアノ鉄酸(4-)イオン,最後はテトラヒドリドアルミン酸リチウムと呼ぶ。

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化合物命名法と国際単位系 18

2 化合物命名法 ⑨ 有機化合物の命名

命名法の種類

(1)置換基命名法炭化水素又は基本複素環の水素原子を特性基で置き換えたことを示す命名法。IUPAC規則では,一般に置換基命名法を優先的に用いるよう指示されている。

(2)基官能命名法基の名称と官能の種類の名称とから組み立てる命名法。比較的簡単な化合物の場合に便利。

以上の他に,付加命名法,減去命名法,接合命名法,代置命名法などがある。

◆ 解説

次に有機化合物の命名法について説明する。

有機化合物の命名法にはいくつかあり,その第一が置換基命名法である。この命名法は,炭化水素あるいは基本複素環の水素原子を特性基で置き換えたということを示す命名法で,IUPACでは一般にこの命名法を用いるように指示されている。

2番目は,基官能命名法で,基の名称と官能の種類の名称とから組み立てる命名法である。この方法は比較的簡単な化合物の場合に便利である。

以上の他に,付加命名法,減去命名法,接合命名法,代置命名法などがある。

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化合物命名法と国際単位系 19

(置換基命名法による)

接 頭 語 語 幹 接 尾 語

置換基の表示 骨格の表示 不飽和結合の表示 置換基のうち優先順位(位置,数,種類の表現) (母体構造) (位置,数,種類の の高い主基の表示

表現) (主基の位置,数,種類の表現)

① 炭化水素の骨格を語幹とし,その前後に,置換基,多重結合の種類と数を表す接頭語を付ける。置換基の位置は,炭化水素骨格に端から番号を付けて示す。

② 鎖式炭化水素の骨格は,炭素数によって,methane(CH4),ethane(CH3CH3),propane(CH3CH2CH3),butane(CH3CH2CH2CH3)・・・・などとする。

③ 二重結合,三重結合を含まない場合は語尾は-aneである。二重結合がある場合には語尾を-ene,三重結合がある場合には語尾を-yneとする。

命名の基本則(1)

2 化合物命名法 ⑩ IUPAC有機化合物の命名 (1)

◆ 解説

ここでは,IUPACが推奨する置換基命名法について説明する。

概略を示すと,最初に「接頭語」として置換基の位置,数,種類を示す。2番目に「語幹」として骨格(母体構造)を示す。接尾語として不飽和結合の位置,数,種類を示し,次いで置換基のうち優先順位の高い主基の位置,数,種類を書く。

命名法の基本則をもう少し詳しく説明する。

先ず,炭化水素の骨格を語幹とし,その前後に,置換基,多重結合の種類と数を表す接頭語を付ける。置換基の位置は,炭化水素骨格に端から番号を付けて示す。

第2に,鎖式炭化水素の骨格は,炭素数によって,methane(CH4),ethane(CH3CH3),

propane(CH3CH2CH3),butane(CH3CH2CH2CH3)・・・・などとする。

第3に,二重結合,三重結合を含まない場合は語尾は-aneである。

二重結合がある場合には語尾を-ene,三重結合がある場合には語尾を-yneとする。

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化合物命名法と国際単位系 20

④ 非芳香性の環は,炭化水素名の前にcyclo-を付ける。芳香性のものは,簡単なものにはbenzene, naphthaleneのように以前から使われてきた名前をそのまま使う。

⑤ 置換基は原則として,主基となる場合に使われるものと,そうでない場合の2種類の名称を持つ。ただし,ハロゲン,炭化水素基は接頭語としてしか表現されない。〈例〉 -OH : hydroxy(接頭語),-ol(接尾語)

⑥ CHO, COOHが主基になる場合,二つの名称が可能。CHO : -al(アール),COOH : -oic acid (酸); 直鎖のアルデヒド,

カルボン酸の命名に使用CHO : -carbaldehyde(カルバルデヒド),COOH : -carboxylic acid

(カルボン酸); 環についたアルデヒド,カルボン酸の命名に使用

命名の基本則 (2)

(置換基命名法による)

2 化合物命名法 ⑩ IUPAC有機化合物の命名 (2)

◆ 解説

非芳香性の環は,炭化水素名の前にcyclo-を付ける。芳香性のものは,簡単なものにはbenzene, naphthaleneのように以前から使われてきた名前をそのまま使う。

置換基は原則として,主基となる場合に使われるものと,そうでない場合の2種類の名称を持つ。ただし,ハロゲン,炭化水素基は接頭語として しか表現されない。

例えば, -OH は接頭語の場合 hydroxy,接尾語の場合 -ol となる。

CHO, COOHが主基になる場合,二つの名称が可能である。

CHO : -al(アール),COOH : -oic acid (酸);

これらは,直鎖のアルデヒド,カルボン酸の命名に使用する。

CHO : -carbaldehyde(カルバルデヒド),COOH : -carboxylic acid (カルボン酸);

これらは,環についたアルデヒド,カルボン酸の命名に使用する。

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化合物命名法と国際単位系 21

⑦ 同じ置換基が複数ある時は,その数を置換基の名前の前に置く接頭語によって表す。二重結合,三重結合が複数あるときは,それぞれ-ene, -yneの前に数を表す接頭語をつけて表す。1個のときは何も書かない。2,3,4,5,6 個を表す接頭語は,それぞれdi,tri,tetra,penta,hexaである。これらは置換基(多重結合を含めて)が1成分でできている場合に使われる。置換基が二つ以上の成分からできている場合,bis,tris,tetrakis,pentakis,hexakisを使う。

〈例〉-CHCl2が3個あれば,tris(dichloromethyl)-である。

(置換基命名法による)

命名の基本則 (3)

2 化合物命名法 ⑩ IUPAC有機化合物の命名 (3)

◆ 解説

同じ置換基が複数ある時は,その数を置換基の名前の前に置く接頭語によって表す。二重結合,三重結合が複数あるときは,それぞれ-ene, -yneの前に数を表す接頭語を付けて表す。1個のときは何も書かない。2,3,4,5,6 個を表す接頭語は,それぞれdi, tri, tetra, penta, hexaです。

これらの接頭語は,置換基(多重結合を含めて)が1成分でできている場合に使われる。

置換基が二つ以上の成分からできている場合,bis, tris, tetrakis, pentakis, hexakisを使う。

例えば,-CHCl2が3個あれば,tris(dichloromethyl)-である。

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化合物命名法と国際単位系 22

①主基を決める。

②骨格となる炭化水素(あるいは環)を選び出し,主基とともに名称を与える。

③鎖に端から番号を付ける。

④主基以外の置換基の種類・数・位置を全て数え上げ,置換基の名称の

アルファベット順に整理し(順番を決める時は,数を表す接頭語は無視),

置換基の位置+数+種類を示す記号を接頭語として並べる。

2 化合物命名法 ⑪ 有機化合物命名の手順

◆ 解説

これから有機化合物の命名の手順を説明する。

先ず,主基を決める。

次に,骨格となる炭化水素(あるいは環)を選び出し,主基とともに名称を与る。

次に,鎖に端から番号を付ける。

次いで,主基以外の置換基の種類・数・位置をすべて数え上げる。

そして,置換基の名称のアルファベット順に整理し(順番を決めるときは,数を表す接頭語は無視します), 置換基の位置+数+種類を示す記号を接頭語として並べる。

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化合物命名法と国際単位系 23

5-fluoro-1,6-dihydroxy-3-hexen-2-one

F OHO-CH2-CH-CH=CH-C-CH2-OH

6 5 4 3 2 1

①置換基は,OH,F,C=O。この中で優先順位がもっとも高いC=Oが主基。

②骨格となる炭化水素鎖は炭素6個,hexane。しかし,中に二重結合がある

ので,hexeneとなる。主基のC=Oは語尾の-oneで表すのでhexeneone。

ここでeとoの母音が重なるので,前のeを削除してhexenone。

③炭素鎖に端から番号を付けるが,右から付けた方が主基C=Oに小さな番号

が付くので右から番号を付ける。二重結合は,番号の小さい方を指定する。

F,OHを考えずに名前を付ければ3-hexen-2-one。

④置換基Fはfluoro,OHはhydroxy。fluoroの方がhydroxyより前にくる。

したがって,全部をまとめると,5-fluoro-1,6-dihydroxy-3-hexen-2-one。

字訳すると5-フルオロ-16-ジヒドロキシ-3-ヘキセン-2-オン。

2 化合物命名法 ⑫ 命名の実例

◆ 解説

先の手順をここに具体的に示すことにする。

まず,置換基は,OH, F, C=Oの三つである。

この中で,名称がアルファベット順で最初になるC=Oの優先順位が最も高く,これが主基となる。

次に,骨格となる炭化水素鎖は,ここに番号を付けましたように炭素6個であるから,hexaneとなる。しかし,中に二重結合があるので,hexeneとなる。主基のC=Oは語尾の-oneで表すのでhexeneoneとなるが,ここでeとoの母音が重なるため,前のeを削除してhexenoneとなる。

さらに,炭素鎖に端から番号を付けるが,右から付けた方が主基C=Oに小さな番号が付くので,右から番号を付けます。また,二重結合は,番号の小さい方を指定する。この段階で,F, OHを考えずに名前を付ければ 3-hexen-2-one となる。

置換基 F はfluoro,OH はhydroxy。置換基はアルファベット順で,fluoroの方がhydroxyより前にくる。したがって,全部をまとめると,5-fluoro-1,6-dihydroxy-3-hexen-2-one。字訳すると 5-フルオロ-1,6-ジヒドロキシ-3-ヘキセン-2-オンである。

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化合物命名法と国際単位系 24

2 化合物命名法 ⑬ 現在では不適切な名称例

クロロベンゼン

ポリスチレン

トルエン

ベンゼン

テトラクロロメタン

トリクロロメタン

コレステロール

塩化物イオン

炭酸水素ナトリウム

シアン化カリウム

ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムヘキサシアノ鉄酸(4-)カリウム

ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムヘキサシアノ鉄酸(3-)カリウム

塩化鉄(III),塩化鉄(3+),三塩化鉄

硫酸鉄(II),硫酸鉄(2+)

水酸化ナトリウム

現在の正式な名称

ベンゾール

ポリスチロール

塩化ベンゼン

トリオール

四塩化炭素

クロロホルム

コレステリン

塩素イオン

重曹(重炭酸ソーダ)

青酸カリ(ウム)

フェロシアン化カリ(ウム)

フェリシアン化カリ(ウム)

塩化第二鉄

硫酸第一鉄

カセイ(苛性)ソーダ

現在では不適当な名称

◆ 解説

ところで,左側に示す名称は古くから使われてきたものだが,現在では,右側に示す名称が正式なものとなっている。ときには慣用的に古い名称が使われることがあるので,注意が必要である。

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化合物命名法と国際単位系 25

「計測器は公平な第三者」

原画:1936年Francis Wallace作,原題「二心ある計量」

三井清人著「国際単位と品質規格」,p.41,ほるぷ出版(1993)

3 国際単位系

◆ 解説

では,次に国際単位系について説明することにする。

この漫画は,ここに書いてあるように,1936年に Francis Wallaceという人が描いたもので,のちにアメリカ商務省が計量週間の広報ポスター用に復刻したものである。原題は「二心ある計量」とある。ご覧のように,当事者である鶏肉を売る店主と買い手の女性はともに第三者(はかり)の指示に注目しているが,第三者への影響力は逆向きに働いている。計測器は公平でなければならないことを示している。

この話を鉄鉱石の貿易を例にすると,鉄鉱石を売る側は鉄鉱石の量(質量)を多めに言い,鉄鉱石を買う側は鉄鉱石の量(質量)を少なめに言うことに対応する。

国境や分野間の壁が次第に低くなり,いわゆるボーダレス化が進む中で,平和で長続きする国際関係と貿易は,両国民の公平感の上に成り立つものである。そのためには,各国の通貨・計量の単位や各種の規格・基準を互いに正しく理解し,適切に調和させることが必要で,国際単位の制定の根拠はここにある。

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化合物命名法と国際単位系 26

背景経済活動の進展とともに計量の重要性は国際的規模で認識され,メートル単位系を改良した国際単位系(SI: Le Système International d’Unités)が1960年の

国際度量衡総会(CGPM)で採択され,SI単位系が成立。

その間,フランスをはじめメートル条約国が自国の計量法をSIに改正し,経済及び文化の発展に大きく貢献。

目的計量の基準を定め,適正な計量の実施を確保し,もって経済発展及び文化の向上に寄与する。

1992年5月に改正された“新計量法”: SI単位を全面的に採用,1993年11月11日から施行。

3 国際単位系 ① わが国の計量法

◆ 解説

先ず,わが国の計量法について見ておきたいと思う。

この計量法が誕生した背景には,経済活動の進展とともに計量の重要性は国際的規模で認識され,メートル単位系を改良した国際単位系(SI: Le Système International d’Unités)が1960年の国際度量衡総会(CGPM)で採択され,SI単位系が成立したことがある。その間,フランスをはじめメートル条約国が自国の計量法を SI に改正し,経済及び文化の発展に大きく貢献した。

わが国の計量法の目的は,計量の基準を定め,適正な計量の実施を確保し,もって経済発展及び文化の向上に寄与することである。

なお,1992年5月に改正された“新計量法”はSI単位を全面的に採用し,1993年11月11日から施行されている。

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化合物命名法と国際単位系 27

3 国際単位系

◆ 解説

これは,1998年に国際度量衡局が発行したフランス語及び英語の文書“Le Systèminternational d’Unités (The International System of Units) 7e édition”の日本語版である。

原書は,国際単位系(SI)に関して,国際度量衡総会(CGPM)及び同委員会(CIPM)が行った決議,勧告,声明などを中心に,SIを理解し利用するために必要な資料を集めた基礎資料としての国際文書である。

なお,フランス語と英語で用意された版のうち,正規のものはフランス語版である。

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化合物命名法と国際単位系 28

1948年 第9回国際度量衡総会(CGPM) 国際度量衡委員会(CIPM)

・計量単位の完全な規則の確立を検討すること

・上記のためにあらゆる国の科学,技術及び教育の各界における意見について

公的な調査を開始すること

・メートル条約の全加盟国が採用しやすい一つの実用計量単位系の確立に関する

勧告を行うこと

委 託

1954年 第10回 CGPM

次の六つの量を実用単位系の基本単位として採用長さ,質量,時間,電流,熱力学的温度,光度

1960年 第11回CGPM

この実用単位系に国際単位系という名称と国際的な略称SIを採用,接頭語,組立単位,以前に採用されていた補助単位についての規則,並びにその他の指示事項を与えた

3 国際単位系 ③ 国際単位系の沿革

1971年 第14回CGPM

物質量を基本単位に採用

◆ 解説

ここで,国際単位系設立の概略の流れを見ておく。

1948年に開催された第9回国際度量衡総会(CGPM)は,国際度量衡委員会(CIPM)に対して,次のような三つのことを委託した。

・計量単位の完全な規則の確立を検討すること

・上記のためにあらゆる国の科学,技術及び教育の各界における意見について公的な

調査を開始すること

・メートル条約の全加盟国が採用しやすい一つの実用計量単位系の確立に関する勧

告を行うこと

1954年の第10回CGPMで次の六つの量を実用単位系の基本単位として採用した。

長さ,質量,時間,電流,熱力学的温度,光度

1960年の第11回CGPMで,この実用単位系に国際単位系という名称と国際的な略称SIを採用し,接頭語,組立単位,以前に採用されていた補助単位についての規則,並びにその他の指示事項を与えた。

さらに,1971年の第14回CGPMで,物質量が基本単位として採用された。

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化合物命名法と国際単位系 29

平和で長続きする国際関係と貿易は両国民の公平感の上に成り立つ

各国の通貨・計量の単位や各種の規格・基準を正しく理解し,適切に調和させることが必要

国際的な規格・基準の整備が活発化

1960年 世界度量衡総会CGPMでメートル系単位を基にした実用単位系SIの採用を決議

“モル”は1971年にCGPMで採用を決議

3 国際単位系 ③ 国際単位系の背景

◆ 解説

国際単位系が作られた背景にはここに示すようなことがある。

先ず,平和で長続きする国際関係と貿易は両国民の公平感の上に成り立つということである。

そのためには,各国の通貨・計量の単位や各種の規格・基準を正しく理解し,適切に調和させることが必要である。このようなことを背景として,国際的な規格・基準の整備が活発化し,そのような時代の流れの中で,1960年の世界度量衡総会CGPMでメートル系六つの単位を基にした実用単位系SIの採用を決議し,“モル”は1971年にCGPMで採用が決議された。

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化合物命名法と国際単位系 30

自然科学の分野で測定される量(長さ,時間,圧力,温度など)は,“物理量”と呼ばれる。物理量の測定は,“その物理量を同じ種類の基準量と比較して,何倍にあたるかを決定する作業”である。“一般に通用する正確な基準量”を“単位”という。

“物理量 = 数値 × 単位”

物理量の表し方

基準量の何倍であるかを示す数値

約束で決めた正確な基準量

3 国際単位系 ④ 単位とは

◆ 解説

それでは,基本的なことですが,単位とは何か,を考えてみる。

自然科学の分野で測定される量(長さ,時間,圧力,温度など)は,通常,“物理量”と呼ばれる。また,物理量の測定は,“その物理量を同じ種類の基準量と比較して,何倍にあたるか,を決定する作業”である。“一般に通用する正確な基準量”を“単位”と呼ぶ。

すなわち,物理量は,基準量の何倍であるかを示す数値に,世界中の人が約束で決めた正確な基準量の「積(かけ算)」で表される。

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化合物命名法と国際単位系 31

3 国際単位系 ⑤ 国際単位系 (SI) の仕組み (1)

cd

mol

K

A

s

kg

m

SI単位の記号

カンデラ

モル

ケルビン

アンペア

キログラム

メートル

SI単位の名称

光度

物質量

熱力学温度

電流

時間

質量

長さ

基本物理量

SI基本単位の名称と記号

◆ 解説

ここに示す七つの単位がSIを構成する基本単位である。長さ,質量,時間,電流,熱力学温度,物質量,光度の各物理量に対して,それぞれ単位の名称と記号を紹介している。

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化合物命名法と国際単位系 32

〈SI基本単位の定義-1〉

① メートルメートルは,1 秒の299 792 458 分の1 時間に光が真空中を伝わる行程の長さである。

② キログラムキログラムは質量の単位であって,国際キログラム原器の質量に等しい。

日本国キログラム原器

③ 秒秒は,セシウム133 の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770 倍の継続時間である。

④ アンペアアンペアは,真空中に1 メートルの間隔で平行に置かれた無限に小さい円形断面積を有する無限に長い2 本の直線状導体のそれぞれを流れ,これらの導体の長さ1メートルごとに2×10-7 ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流である。

3 国際単位系 ⑤ 国際単位系 (SI) の仕組み (2)

◆ 解説

次に,各基本単位の定義を説明する。

① メートル

メートルは,長さの単位であって,1 秒の299 792 458 分の1 の時間に光が真空中を伝

わる行程の長さである。

② キログラム

キログラムは質量の単位であって,国際キログラム原器の質量に等しい。

③ 秒

秒は時間の単位であって,セシウム133 の原子の基底状態の二つの超微細準位の間

の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770 倍の継続時間である。

④ アンペア

アンペアは電流の単位で,真空中に1 メートルの間隔で平行に置かれた無限に小さい

円形断面積を有する無限に長い2 本の直線状導体のそれぞれを流れ,これらの導体

の長さ1メートルごとに2×10-7 ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流である。

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化合物命名法と国際単位系 33

〈SI基本単位の定義-2〉

⑤ ケルビン熱力学温度の単位,ケルビンは,水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。

⑥ モル1 モルは,0.012 キログラムの炭素12 の中に存在する原子の数と等しい数の

要素粒子を含む系の物質量である。2 モルを用いるとき,要素粒子が指定されなければならないが,それは原子,

分子,イオン,電子,その他の粒子又はこの種の粒子の特定の集合体であってよい。

⑦ カンデラカンデラは周波数540×1012 ヘルツの単色放射を放出し,所定の方向におけるその放射強度が1/683 ワット毎ステラジアンである光源の,その方向における光度である。

3 国際単位系 ⑤ 国際単位系 (SI) の仕組み (3)

◆ 解説

⑤ ケルビン

熱力学温度の単位,ケルビンは,水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。

⑥ モル

1 モルは,0.012 キログラムの炭素12 の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子を含む系の物質量である。

2 モルを用いるとき,要素粒子が指定されなければなりませんが,それは原子,分子,イオン,電子,その他の粒子又はこの種の粒子の特定の集合体であっても構わない。

⑦ カンデラ

カンデラは光度の単位であって,周波数540×1012 ヘルツの単色放射を放出し,所定の方向におけるその放射強度が1/683 ワット毎ステラジアンである光源の,その方向における光度である。

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化合物命名法と国際単位系 34

10の整数乗倍の単位を作るためのSI接頭語

倍 数 接頭語 記号1024 ヨタ Y1021 ゼタ Z1018 エクサ E1015 ペタ P1012 テラ T109 ギガ G106 メガ M103 キロ k102 ヘクト h101 デカ da

倍 数 接頭語 記号10-1 デシ d10-2 センチ c10-3 ミリ m10-6 マイクロ μ10-9 ナノ n10-12 ピコ p10-15 フェムト f10-18 アト a10-21 ゼプト z10-24 ヨクト y

3 国際単位系 ⑤ 国際単位系 (SI) の仕組み (4)

◆ 解説SI単位を用いて大きな物質量あるいは小さな物質量を表すとき,ここに示す接頭語を組み

合わせて使う。

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化合物命名法と国際単位系 35

固有の名称と記号で表されるSI組立単位(1)S I 単 位

量 名 称 記号 他のSI単位に SI基本単位

よる表現 による表現

平面角 ラジアン rad 1(a) m/m

立体角 ステラジアン sr 1(a) m2/m2

周 波 数 ヘ ル ツ Hz s-1

力 ニュートン N m・kg・s-2

圧力,応力 パスカル Pa N/m2 m-1・kg・s-2

エネルギー,仕事,熱量 ジュール J N・m m2・kg・s-2

仕事率,工率,放射束 ワット W J/s m2・kg・s-3

電気量,電荷 クーロン C s・A

電位,電圧,起電力 ボルト V W/A m2・kg・s-3・A-1

静電容量 ファラド F C/V m-2・kg-1・s4・A2

電気抵抗 オーム Ω V/A m2・kg・s-3・A-2

(a) 単位記号“1”は表示しない。

3 国際単位系 ⑤ 国際単位系 (SI) の仕組み (5)

◆ 解説

この表は,固有の名称と記号で表される単位を示す。これらは,先の七つの基本単位の組み合わせで表現できるもので,SI組立単位と呼ばれる。

なお,脚注にあるように,単位記号“1”は表示しない。

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化合物命名法と国際単位系 36

固有の名称と記号で表されるSI組立単位(2)S I 単 位

量 名 称 記号 他のSI単位に SI基本単位

よる表現 による表現

コンダクタンス ジ-メンス S A/V m-2・kg-1・s3・A2

磁束 ウェーバ Wb V・s m2・kg・s-2・A-1

磁束密度 テスラ T Wb/m2 kg・s-2 ・A-1

インダクタンス ヘンリー H Wb/A m2・kg・s-2・A-2

セルシウス温度(b) セルシウス度 ℃ K

光束 ルーメン lm cd・sr

照度 ルクス lx lm/m2 m-2・cd・sr

放射能 ベクレル Bq s-1

吸収線量 グレイ Gy J/kg m2・s-2

線量当量 シーベルト Sv J/kg m2・s-2

酵素活性 カタール kat s-1・mol(b) 0 ℃ = 273.15 K

3 国際単位系 ⑤ 国際単位系 (SI) の仕組み (6)

◆ 解説

この表は,組立単位の続きである。

日常的に温度の単位に用いるセルシウス度は, 0 ℃ = 273.15 Kの関係にある。

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化合物命名法と国際単位系 37

SIに属さないがSIと併用されている単位

名 称 記 号 SI単位による値

分 min 1 min = 60 s

時 h 1 h = 60 min = 3600 s

日 d 1 d = 24 h = 86400 s

度 ゜ 1゜= (π/180) rad

分 ′ 1′= (1/60)゜ = (π/10800) rad

秒 ″ 1″= (1/60)′= (π/648000) rad

リットル L 1 L = 1 dm3 = 10-3 m3

トン t 1 t = 103 kg

3 国際単位系 ⑤ 国際単位系 (SI) の仕組み (4)

◆ 解説

ここに示す単位は,SI には属しないが,SI と併用が認められている単位である。

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化合物命名法と国際単位系 38

① 一つの量は原則としてただ一つの単位を持つ(1量1単位)。

② SI 組立単位はSI 基本単位の掛け算と割り算の組合せで作られるので,単位の換算係数はいつも1である。

③ 単位の定義は現代の科学技術の到達限界までの明確さを持つ。

④ SI 単位に1個のSI 接頭語を付けた単位を使うことができる。

3 国際単位系 ⑥ SIの特徴

◆ 解説

SIの特徴を示すと,以下の4点を挙げることができる。

① 一つの量は原則としてただ一つの単位を持つ(1量1単位)。

② SI 組立単位はSI 基本単位の掛け算と割り算の組合せで作られるので, 単位の換算

係数はいつも1である。

③ 単位の定義は現代の科学技術の到達限界までの明確さを持つ。

④ SI 単位に1個のSI 接頭語を付けた単位を使うことができる。

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化合物命名法と国際単位系 39

a 量計算の原則

①量を記号で表し,数学の演算規則を用いて,関連する量の間の関係を最終の一般式の形まで導く。

②求める左辺の未知量を右辺の既知量で表した最終段階で,既知量を数値と単位の積で置き換え,数値と単位の両方を一緒に計算する。

【例】1 mol (=101.325kPa) の理想気体は273.15 Kで1 atmの時22.414 Lの体積を占める。300.00 Kで200.00 kPaの圧力を加えたときの体積を求める。

[解答]状態方程式はpV = nRTである。二つの条件をそれぞれ添え字1,2で表すと,p1V1 = nRT1,p2V2 = nRT2であるから,

となる。この一般式の各量に数値と単位を代入すると,

となる。

112

21

2

22 V

TpTp

pnRTV ==

L472.12L414.22K15.273Pak00.200K00.300Pak325.101

2 =×××

=V

3 国際単位系 ⑦ 量の計算 (1)

◆ 解説

次に,量計算の原則を示す。

①量を記号で表し,数学の演算規則を用いて,関連する量の間の関係を最終の一般式

の形まで導く。

②求める左辺の未知量を右辺の既知量で表した最終段階で,既知量を数値と単位の積

で置き換え,数値と単位の両方を一緒に計算する。

最初の例をここに示す。後で改めて説明するが,物理量は斜体の文字,単位は立体の文字で表す。

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化合物命名法と国際単位系 40

b 単位の換算

【例1】密度の単位g cm-3を基本単位に換算する。[解答]

となる。

【例2】圧力の単位psi(pound per square inch)をSI単位Paに変換する。ただし,重力の標準加速度g=9.806 65ms-2を用いる。1ポンド=1 lb=0.453 592 37kg,1インチ=2.54 cmである。[解答]

333336

3

32

33 101101

10101

)10(1011 −−

−− ×=×=

×=

×== mkgmkg

mkg

mkgcmgd

Pa7575.6894m

smkg108947573.6

)m1054.2(sm80665.9kg45359237.0

2

23

22

2

=×≈

××

=

p

3 国際単位系 ⑦ 量の計算 (2)

◆ 解説

次に,単位の換算の例を示す。

最初の例は,密度の単位 g cm-3 を SI 基本単位に換算するものである。

次の例は,圧力の単位 psi (pound per square inch) を SI 単位 Pa に変換するものである。

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化合物命名法と国際単位系 41

1 SI単位の記号

① 単位記号にはローマン体(立体)を使用。原則として小文字で表記。名称が人名に由来する場合は,記号の最初の1文字は大文字。単位の名称が欧文で表記されるときは,それが文頭に現れる時,又は「セルシウス度」という名称が現れる場合を除いて,常に小文字で始まる。

② 単位記号はその量が複数であっても形を変えない。

③ 単位記号が文章の終わりに現れ,文章の終わりを示すために通常に付ける終止符(ピリオド)の場合以外には,通常の省略用語に付ける省略符としての記号(ピリオド)を一切付けない。

3 国際単位系 ⑧ SI単位の表記に関する規則 (1)

◆ 解説

次に,SI単位の表記についての規則を説明する。

先ず,SI単位の記号であるが,

① 単位記号にはローマン体(立体)を使用する。原則として小文字で表記する。

名称が人名に由来する場合は,記号の最初の1文字は大文字とする。単位の名称

が欧文で表記される時は,それが文頭に現れる時,又は「セルシウス度」という名

称が現れる場合を除いて,常に小文字で始まる。

② 単位記号はその量が複数であっても形を変えない。

③ 単位記号が文章の終わりに現れ,文章の終わりを示すために通常に付ける終止符

(ピリオド)の場合以外には,通常の省略用語に付ける省略符としての記号(ピリオ

ド)を一切付けない。

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化合物命名法と国際単位系 42

2 SI単位の代数的な表記法

① 組立単位が二つ又はそれ以上の異なった単位の乗算によって作られる場合は,中点又は適当な間隔で単位の間を区切る。

例 N・m 又は N m

② 組立単位が,一つの単位を別の単位で除して作られる場合は,斜線(/),水平の線,又は負の指数を用いてもよい。

例 m/s, 又は m・s-1

③ 不明確さを避けるために,括弧付きで用いるのでない限り,同じ行の中で乗算記号又は除算記号が斜線に続いて記してはならない。複雑な場合には不明確さを避けるために,負の指数又は括弧を用いなければならない。

例 m/s2 又は m・s-2

m・kg/(s3/A) 又は m・kg・s-3・A

不適例 m/s/sm・kg/s3/A 及び m・kg/s3・A

m

s

3 国際単位系 ⑧ SI単位の表記に関する規則 (2)

◆ 解説次に,SI単位の代数的な表記法について説明する。

① 組立単位が二つ又はそれ以上の異なった単位の乗算によって作られる場合は,

中点又は適当な間隔で単位の間を区切る。

例 N・m 又は N m

② 組立単位が,一つの単位を別の単位で除して作られる場合は,斜線(/),水平の線,

又は負の指数を用いてもよいことになっている。

例 m/s, 又は m・s-1

③ 不明確さを避けるために,括弧付きで用いるのでない限り,同じ行の中で乗算記号

又は除算記号が斜線に続いて記してはいけない。複雑な場合には不明確さを避

けるために,負の指数又は括弧を用いなければならない。

例 m/s2 又は m・s-2

m・kg/(s3/A) 又は m・kg・s-3・A

不適例 m/s/s

m・kg/s3/A 及び m・kg/s3・A

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化合物命名法と国際単位系 43

3 SI接頭語の使用規則

① 接頭語の記号はローマン体(立体)で書き,接頭語の記号と単位記号の間には間隔を空けない。

② 接頭語の記号と単位記号を結合して作られた全体は,不可分な新しい記号(その単位の10進の倍量及び分量の単位記号)を形成し,これに正又は負の累乗を行ったり,またこれを他の単位記号と組み合わせて合成単位を作るために使用することもできる。

例 1 cm3 = (10-2 m)3 = 10-6 m3

1 μs-1 = (10-6 s)-1 = 106 s-1

1 V/cm = (1 V)/(10-2 m) = 102 V/m

③ 複数の接頭語を並べて作られるような合成接頭語を用いてはならない。例 1 nm 不適例 1 mμm

④ 接頭語は決して単独では用いてはならない。例 106/m3 不適例 M/m3

3 国際単位系 ⑧ SI単位の表記に関する規則 (3)

◆ 解説

次いで,接頭語の使用規則を説明する。

① 接頭語の記号はローマン体(立体)で書き,接頭語の記号と単位記号の間には間隔

を空けない。

② 接頭語の記号と単位記号を結合して作られた全体は,不可分な新しい記号(その単

位の10進の倍量及び分量の単位記号)を形成し,これに正又は負の累乗を行っ

たり,またこれを他の単位記号と組み合わせて合成単位を作るために使用すること

もできる。

例 1 cm3 = (10-2 m)3 = 10-6 m

1 μs-1 = (10-6 s)-1 = 106 s-1

1 V/cm = (1 V)/(10-2 m) = 102 V/m

③ 複数の接頭語を並べて作られるような合成接頭語を用いてはならないことになって

いる。

例 1 nm 不適例 1 mμm

④ 接頭語は決して単独では用いてはいけない。

例 106/m3 不適例 M/m3

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化合物命名法と国際単位系 44

4 無次元での組成の表現

組成の表現 記 号 読み方 比 率

百分率 % パーセント 10-2

千分率 ‰ パーミル 10-3

百万分率 ppm ピーピーエム 10-6

十億分率 ppb ピーピービー 10-9

一兆分率 ppt ピーピーティー 10-12

千兆分率 ppq ピーピーキュー 10-15

例: ppmは次式で求められる.成分の量(g)

ppm = × 106

試料の量(g)

注意:試料量と成分量は同じ単位で表現して計算する

例外の例: 水の密度はほぼ1 g/cm3であるので,水中の微量成分濃度を

表す場合,mg/Lをppmと表示することがある。

3 国際単位系 ⑧ SI単位の表記に関する規則 (4)

◆ 解説

無次元で組成を示す場合は,講義資料にあるような記号,読み方となる。

ここで気をつけなければならないことは,試料量と成分量は同じ単位で表現することである。ただし,水中の微量成分の比率を表す場合,水の密度を 1 g/cm3として,試料量を体積単位で表現することがある。例えば, mg/Lをppmと表示することがある。

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化合物命名法と国際単位系 45

a 用語の使い方

単位の定義・名称・記号は国際的な規約によって厳密に定められている。使用者が勝手に変更することは許されない。

量の用語・定義・記号については,ある程度の自由裁量が認められている。自然科学あるいは技術分野で使用される量の大部分については,ISO及びIUPAC,IUPAP などから勧告されている標準的な用法*にできるだけ従う。これに従わない場合は,明確な説明を記載するのが原則。

*日本化学会標準化専門委員会監修,朽津耕三訳,“物理化学で用いられる量・単位・記号”,講談社(1991). 2版(1993).3版(準備中) 。

ISO: International Organization for Standardization, 国際標準化機構IUPAP: International Union of Pure and Applied Physics, 国際純粋・応用物理学連合

3 国際単位系 ⑨ 物理・化学で使う量の用語 (1)

◆ 解説

物理・化学で使う用語の使い方について説明する。

単位の定義・名称・記号は国際的な規約によって厳密に定められている。使用者が勝手に変更することは許されない。

量の用語・定義・記号については,ある程度の自由裁量が認められている。しかし,自然科学あるいは技術分野で使用される量の大部分については,ISO及びIUPAC, IUPAP などから勧告されている標準的な用法*にできるだけ従うことが必要である。これに従わない場合は,明確な説明を記載するのが原則である。

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化合物命名法と国際単位系 46

b 量記号の書き方と使い方

自然科学で使われる量の記号: ラテン文字又はギリシャ文字の1文字を用い,斜体(イタリック体)で表記例外:レイノルズ数 Re など輸送現象に関する量の記号

変数( 例えば a, i, x など )と関数( 例えば f(x) )も斜体で表記

物体の位置を表す座標 x ,y ,z や粒子に付けた番号 i ,量子数n ,l ,m は斜体

目安:“二つ以上の数値を代入できる記号(添字を含む)は斜体”

3 国際単位系 ⑨ 物理・化学で使う量の用語 (2)

◆ 解説

次に,量記号の書き方と使い方ですが,自然科学で使われる量の記号:ラテン文字又はギリシャ文字の 1文字を用い,斜体(イタリック体)で表記する。

例外:レイノルズ数 Re など輸送現象に関する量の記号

変数( 例えば a , i , x など )と関数( 例えばf(x) )も斜体で表記する。

物体の位置を表す座標 x , y , z や粒子に付けた番号 i , 量子数 n , l , m は斜体で表記する。

目安:“二つ以上の数値を代入できる記号(添字を含む)は斜体”で書く。

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化合物命名法と国際単位系 47

a 数学記号の使い方

“日本工業規格 JIS Z 8201-1981 数学記号”,日本規格協会を参照。本規格はISOの国際的勧告に基づく。

立体と斜体の使い分け立体で表記するもの

数字(文章・図表いずれも)特定された数(自然対数の底e,虚数単位i,円周率πなど)演算記号(log,sin,exp,微分関連のd,∂,∇,総和の∑など)特定された関数の記号(ガンマ関数Γ(x))

斜体で表記するもの一般の変数の記号(x,y,z,量子数n,l,m など)

一般の関数(f (x) など)

3 国際単位系 ⑩ 数学記号と数字 (1)

◆ 解説数学記号の使い方については, “日本工業規格 JIS Z 8201-1981 数学記号”に記載され

ている。

立体と斜体を使い分ける必要がある。

立体で表記するものは

数字(文章・図表いずれも)

特定された数(自然対数の底e,虚数単位i,円周率πなど)

演算記号(log, sin, exp, 微分関連のd, ∂, ∇, 総和の∑など)

特定された関数の記号(ガンマ関数Γ(x) )

斜体で表記するものは

一般の変数の記号(x, y, z,量子数n, l, m など)

一般の関数(f (x) など)

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化合物命名法と国際単位系 48

b 数字の書き方

(i) 小数点

① 小数点のほかに,ピリオド「.」又はコンマ「,」を使わない。

② 数字の値が+1と-1の間にある場合,小数点の前には常に0(ゼロ)を置く。

③ 桁数の多い数字を書く時は,読みやすくするために半角の空白を

用いて3桁ごとのグループに分けてもよい。ただし,小数点の直前又は直後に4桁の数字が来た時は,そのスペースを省略する。

例: 42 173.325 73 2173.325 73 2173.32570.325 732 1

④ きわめて大きい,又は小さい数値を書く時は,0から9までの数字と10の“べき”の積の形で表す。

例: 0.000 0428 は 4.28×10-5 と書く。

3 国際単位系 ⑩ 数学記号と数字 (2)

◆ 解説数字の書き方では,先ず小数点がある。

① 小数点のほかに,ピリオド「.」又はコンマ「,」を使わない。

② 数字の値が+1と-1の間にある場合,小数点の前には常に0(ゼロ)を 置く。

③ 桁数の多い数字を書く時は,読みやすくするために半角の空白を用いて3桁ごとの

グループに分けても構わない。ただし,小数点の直前又は直後に4桁の数字が来

た時は,そのスペースを省略する。

例: 42 173.325 73 2173.325 73 2173.3257

0.325 732 1

④ きわめて大きい,又は小さい数値を書くときは,0から9までの数字と10の“べき”の

積の形で表す。

例: 0.000 0428 は 4.28×10-5 と書く。

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化合物命名法と国際単位系 49

(ii) 数値の不確かさ

ある量の推定値に割り当てられる不確かさは,計量における不確かさの表現のガイド(Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement,ISO,1995) に従って評価,表現。

ある量xに付随する標準不確かさ(例えば,包含係数k =1の推定標準偏差など)は記号u(x)で表す。

不確かさの表現法の例

m n = 1.674 927 28(29) × 10-27 kg

ここで,m nは量記号(この場合,中性子の質量)であり,括弧内の数はm nの推定値の合成標準不確かさを推定値の最後の2桁で表したときの値。この場合,u (m n) = 0.000 00029× 10-27 kg。包含係数k が1と異なる場合には,k の値を明示。

3 国際単位系 ⑩ 数学記号と数字 (3)

◆ 解説

数値の不確かさは,計量における不確かさの表現のガイド(Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement, ISO, 1995) に従って評価,表現する。

ある量xに付随する標準不確かさ(例えば,包含係数k =1の推定標準偏差など)は記号u (x)で表す。

不確かさの表現法の例

m n = 1.674 927 28(29) × 10-27 kg

ここで,m nは量記号(この場合,中性子の質量)であり,括弧内の数はm nの推定値の合成標準不確かさを推定値の最後の2桁で表したときの値である。

この場合,u (m n) = 0.000 00029× 10-27 kg

包含係数k が1と異なる場合には,k の値を明示する。

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化合物命名法と国際単位系 50

c 量の四則演算

単位記号は数式の一部。数値と単位との積として量の値を表現すると,数値と単位はともに通常の代数演算の規則に従う。

例えば,T = 293 Kという式はT /K = 293とも書ける。下表の先頭行を量と単位との比で表せば,表の内容を数値だけで表すことができる。

例えば,温度T に対する蒸気圧p,及び温度Tの逆数に対する蒸気圧pの自然対数の表を作成する場合,下表の書式を用いることができる。

T /K 103 K/T p /MPa ln(p /MPa)

216.55 4.6179 0.5180 -0.6578273.15 3.6610 3.4853 1.2486304.19 3.2874 7.3815 1.9990

3 国際単位系 ⑩ 数学記号と数字 (4)

◆ 解説量の四則演算を説明する。

単位記号は数式の一部とみなす。数値と単位との積として量の値を表現すると,数値と単位はともに通常の代数演算の規則に従う。例えば,T = 293 Kという式はT /K = 293とも書くことができる。この表の先頭行を量と単位との比で表せば,表の内容を数値だけで表すことができる。例えば,温度T に対する蒸気圧p,及び温度T の逆数に対する蒸気圧p の自然対数の表を作成する場合,この表の書式を用いることができる。

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化合物命名法と国際単位系 51

同様に図の軸についても,その値が単位を伴わない単なる数となるように,数のように命名すると便利である。

3 国際単位系 ⑪ グラフの両軸の説明の書き方

◆ 解説

グラフの縦軸,横軸の説明も,ここに例を示すように,その値が単位を伴わない単なる数となるように命名すると便利である。このグラフでは,横軸は絶体温度の逆数に1000を乗じた数をとり,縦軸は圧力をMPaで除した数の自然体数をとっている。

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化合物命名法と国際単位系 52

A 数学定数(自然現象と独立な定数 例:π,eなど)

B 物理・化学定数B1 基礎物理定数

物質によらない普遍的な定数(微細構造定数,量子数,光速,電子の静止質量,アボガドロ定数など)

B2 物質定数B2-1 原子・分子に関するミクロの物質定数

(原子の質量,磁気モーメント,分子の回転定数など)B2-2 原子・分子の集合体に関するマクロの物質定数

(熱容量,抵抗率,浸透圧など)

* 朽津耕三,化学,50, 262 (1995)

3 国際単位系 ⑫ 化学で使う定数*

◆ 解説

化学で使う定数には,数学定数と物理・化学定数に分類できる。

数学定数は,自然科学現象と無関係なπやeなどが相当する。

物理・化学定数は,基礎物理定数と呼ばれる物質によらない普遍的な定数と,物質に依存する物質定数とに分類できます。

基礎物理定数は,例えば,微細構造定数,量子数,光速,電子の静止質量,アボガドロ定数などである。

物質定数には,原子・分子に関するミクロの物質定数,例えば,原子の質量,磁気モーメント,分子の回転定数などと原子・分子の集合体に関するマクロの物質定数,例えば,熱容量,抵抗率,浸透圧などがある。

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化合物命名法と国際単位系 53

JIS Z 8202-0 量及び単位: 一般原則JIS Z 8202-1 量及び単位: 空間及び時間JIS Z 8202-2 量及び単位: 周期現象及び関連現象JIS Z 8202-3 量及び単位: 力学JIS Z 8202-4 量及び単位: 熱JIS Z 8202-5 量及び単位: 電気及び磁気JIS Z 8202-6 量及び単位: 光及び関連する電磁放射JIS Z 8202-7 量及び単位: 音JIS Z 8202-8 量及び単位: 物理化学及び分子物理学JIS Z 8202-9 量及び単位: 原子物理学及び核物理学JIS Z 8202-10 量及び単位: 核反応及び電離性放射線JIS Z 8202-12 量及び単位: 特性数JIS Z 8202-13 量及び単位: 固体物理学

3 国際単位系 ⑬ JIS

物理現象の量的な表記に関するJIS

◆ 解説

JISには,物理現象の量的な表記に関して講義資料のような規格がある。必要に応じて参照して下さい。

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化合物命名法と国際単位系 54

ISO 31-0 Quantities and units(量及び単位): Part 0; General principle(一般原則)

ISO 31-5 Quantities and units(量及び単位): Part 5; Electricity and magnetism(電気及び磁気)

ISO 31-6 Quantities and units(量及び単位): Part 6; Light and relatedelectromagnetic radiations (光及び関連する電磁放射)

ISO 31-8 Quantities and units(量及び単位): Part 8; Physical chemistry and molecular physics (物理化学及び分子物理学)

ISO 31-9 Quantities and units(量及び単位): Part 9; Atomic and nuclear physics(原子物理学及び核物理学)

ISO 31-10 Quantities and units(量及び単位): Part 10; Nuclear reactions and ionizing radiations(核反応及び電離性放射線)

ISO 31-11 Quantities and units(量及び単位): Part 11; Mathematical signs andsymbols for use in the physical sciences and technology

(物理科学及び技術で使用する数学記号)ISO 31-12 Quantities and units(量及び単位): Part 12; Characteristic numbers

(特定数)

3 国際単位系 ⑭ ISO 規格

前ページの⑬JISとほぼ対応するISO規格

◆ 解説

前ページのJISにほぼ対応するISO規格としては,講義資料のような規格がある。

必要に応じて参照して下さい。

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化合物命名法と国際単位系 55

ま と め ・・・・・ 第3章 化合物命名法と国際単位系

1 炭素の同位体12Cのモル質量を0.012 kg mol-1として求めた各原子のモル質量の相対値を相対原子質量と呼び,自然界の同位体存在比を考慮した平均値を原子量と呼ぶ。

2 多くの元素の原子量は一定ではなく,その不確かさは元素によって異なる。

3 英語による化合物の命名には,IUPAC(国際純正及び応用化学連合)が制定した命名法が主として用いられている。

4 その他の化合物命名法としてChemical Abstractsの索引名,日本語による化合物命名法としては日本化学会が中心になって制定した命名法がある。

5 国際単位系(SI)は,計量の基準を定めたものであり,7種の基本単位(長さ,質量,時間,電流,温度,物質量,光度)から構成される。

6 物理量は,数値と単位の積で表す。

◆ 解説

以上,第3章をまとめると

1 炭素の同位体12Cのモル質量を0.012 kg mol-1として求めた各原子のモル質量の相

対値を相対原子質量と呼び,自然界の同位体存在比を考慮した平均値を原子量と

呼ぶ。

2 多くの元素の原子量は一定ではなく,その不確かさは元素によって異なる。

3 英語による化合物の命名には,IUPAC(国際純正及び応用化学連合)が制定した命

名法が主として用いられている。

4 その他の化合物命名法として,Chemical Abstractsの索引名,日本語による化合物

命名法としては日本化学会が中心になって制定した命名法がある。

5 国際単位系(SI)は,計量の基準を定めたものであり,7種の基本単位(長さ,質量,時

間,電流,温度,物質量,光度)から構成されている。

6 物理量は,数値と単位の積で表す。

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化合物命名法と国際単位系 56

CH3CH3CH3CH3

演習問題 A ・・・・・ 第3章 化合物命名法と国際単位系

1 次の元素の名称を英語と日本語で書きなさい。(1) Cr (2) Ti (3) Mn (4) Nd (5) Se (6)U

2 次の化合物の名称を日本語で書きなさい。(1) KNaCO3 (2) Ca5F(PO4)3 (3) AlK(SO4)2・12H2O(4) Na(UO2)3Zn(CH3COO)9・6H2O (5)NaCl・NaF・2NaHSO4

3 次の化合物の名称を日本語で書きなさい。(1) [Co(NH3)6]Cl3 (2) K4[Fe(CN)6] (3) [CoCl(NH3)5]Cl2(4) [CuCl2{CO(NH2)2}2] (5) Na[PtBrCl(NO2)(NH3)]

4 次の化合物について日本語で命名しなさい。CH3CHCH2CH CHCH3 CH3CH CHCHCH CH2

(2)

(3) CH C CH CH CH CH2

(1)

◆ 解説

1 (1) chromium クロム (2) titanium チタン (3) manganese マンガン

(4) neodymium ネオジム (5) selenium セレン (6) uranium ウラン

2 (1) 炭酸カリウムナトリウム (2) フッ化トリス(リン酸)五カルシウム (3) 硫酸カリウム

アルミニウム十二水和物 (4) 九酢酸亜鉛トリウラニル(VI)ナトリウム六水和物

(5) 塩化フッ化ビス(硫酸水素)四ナトリウム

3 (1) ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物 (2) ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム

(3)ペンタアンミンクロロコバルト(III)塩化物 (4) ジクロロビス(尿素)銅(II)

(5) アンミンブロモクロロニトロ白金(II)酸ナトリウム

4 (1) 2,3,5-トリメチルヘキサン 2,4,5-ではない。 (2) 3-メチル-1.4-ヘキサジエン

(3) 1,3-ヘキサジエン-5-イン 二重結合に,より小さな番号を付ける。

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化合物命名法と国際単位系 57

演習問題 B ・・・・・ 第3章 化合物命名法と国際単位系

5 次の化合物について日本語で命名しなさい。

(2)(1) (3)

6 密度の単位g cm-3 をSI基本単位に換算しなさい。

7 圧力の単位psi (pound per square inch)をSI単位Paに換算しなさい。ただし,重力の標準加速度g = 9.80665 m s-2 を用いる。 また,1ポンド = 0.4535924kg,1インチ= 2.54 cmである。

◆ 解説

5 (1) 2-メチル-2-ブテン-1,4-ジオール (2) m-トリルメタノール(3) p-ヒドロキシベンゼンスルホンアミド

6 d = 1 g cm-3 = (1×10-3) kg/(10-2m)2 = 1×10-3 kg/10-6 m3 = 1×103 kg m-3 となる。

7 p = (0.4535924 kg×9.80665 m s-2)/(2.54×10-2 m)2 ≒ 6.89×103 (kg m s-2/m2) = 6890 Pa となる。

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化合物命名法と国際単位系 58

化合物命名法1 日本化学会 化合物命名小委員会:「化合物命名法」(補訂7版)(2000)2 中原勝儼,稲本直樹:「化合物命名法」,裳華房(2007)

国際単位系1 I. Mills, T. Cvitaš, K. Homann, N. Kallay, K. Kuchitsu: 「物理化学で用い

られる量・単位・記号」,朽津耕三訳,講談社サイエンティフィク(1991)2 三井清人:「国際単位と品質規格」,ほるぷ出版(1993)3 SI採用促進委員会編:「計量法とともに歩むSI化ガイドブック」,日本規格協会

(1997)4 伊庭敏昭:「絵ときSI単位」,オーム社(1998)5 「国際単位系(SI)」,国際文書第7版(1998)日本語版,工業技術院計量

研究所訳・監修(1999)6 小泉袈裟勝,山本 弘:「単位のおはなし」,改訂2版,日本規格協会(2002)

参考資料 ・・・・・ 第3章 化合物命名法と国際単位系

共通した資料1 日本化学会編:「第5版 実験化学講座1 基礎編Ⅰ 実験・情報の基礎」,丸善

(2003)

◆ 解説

本章の参考資料を示す。

さらに詳しいことを学びたい場合に参考にして下さい。