平成30年度 snsいじめ相談@かながわ 実施結果 · 平成30年度...
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平成30年度 SNSいじめ相談@かながわ
実施結果
平成30年11月
神奈川県教育委員会
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平成30年度 SNSいじめ相談@かながわ
実施結果
1 目的
近年、スマートフォンの普及に伴い、中高生の多くがSNSをコミュニケーシ
ョン手段として活用している。また、SNSを通じたいじめ等のトラブルの増
加や、いじめを受けて一人で悩む子どもたちへの対応が課題となっている。
こうした中で、県教育委員会では、SNSを活用したいじめ相談体制の構築に
向けて、文部科学省の補助事業(国 10/10)を活用し、試行的にSNSによる相談
窓口を開設し、生徒のいじめ等に関する相談に対応した。
2 実施状況
(1) 使用SNS
無料通信アプリ「LINE」 (2) 相談対象生徒
県内の学校から抽出した101校の生徒約 5万8千人
・県立(高校36校・中等教育学校1校・特別支援学校8校)
・市町村立(中学校43校・義務教育学校1校・高校2校)
・私立(中学校4校・高校5校・中等教育学校1校) (3) 実施日時
平成30年9月10日(月)~9月23日(日)の2週間 17時~21時(4時間) (4) 実施方法等
〇 実施対象校の生徒に相談窓口につながるQRコードを記載したカードを
配付(夏休み明けから配付し9月5日までに完了)
〇 相談を希望する生徒は、QRコードから「友だち登録」を行った上で実
施日時にLINEに接続した。 (5) 委託事業者 トランス・コスモス(株) / (一社)全国心理業連合会
(6) 相談員態勢 相談員11人+管理者2人 (7) アンケートの実施
○ 相談直後に生徒が相談についてどのような印象を持ったか等について、
LINE上でアンケート(1回目)を行なった。
○ その後、2週間程度の間を空け、相談の結果が状況の改善に結びついた
か等について、LINEを通じてアンケート(2回目)を行なった。
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3 結果概要
(1) 友だち登録者数 669人
(2) 相談アクセス件数 191件
(3) 相談件数 183件(相談者の実人数は131人)
(4) 1日当たりの平均相談対応件数 13.1件
(5) 同一相談者による2回以上の相談回数の状況
2回18人、3回9人、4回2人、6回2人
(6) 1件当たりの平均相談時間 1時間28分
(7) 相談者吹き出し数 1回あたり平均:58.9回 最多:258回
(8) 相談員からLINE電話に接続を勧めた件数 24件
(9) LINE電話に接続できた件数 1件
4 実施結果(データ) (1) 日時別相談対応件数
〇 相談開始初日の件数が最多で29件、最少の相談件数は16日(日)で5件とい
う結果だった。
〇 期間中の1日平均相談件数は13.1件で 16日以降の後半は平均7.4件と前半
に比べ少ない状況だった。
〇 時間帯では初日から3日目まで17時台の割合が高かったが、4日目以降は
18時以降の割合が高くなっている状況だった。
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(2) 男女比
〇 女性からの相談が男性の2.4倍と多くなっている。
(3) 学校種別相談件数
〇 中学校が84件(45.9%)で最多となっている。
(4) 学年別内訳
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〇 中学1年生が37件(20.2%)で最多である。
〇 次いで中学2年生25件(13.7%)、中学3年生20件(10.9%)となっている。
〇 学年進行とともに相談件数が減少する傾向が見られた。
(5) 相談に要した時間
〇 相談時の平均対応時間は1時間28分だった。
〇 対応時間の分布としては30分~60分未満が一番多く47件と全体の25.7%だ
った。
〇 また、180分以上の相談も8件あり全体の4.4%を占めた。
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(6) 相談者別相談回数
〇 相談者の実人数131人のうち、1回のみの相談が100人(76.3%)、複数回の
相談者は31人(23.7%)だった。
〇 複数回の中でも4回以上相談した相談者は4人、最大は6回の2人だった。
(7) 相談内容別相談件数
件 数 割 合
25 13.7%6 3.3%0 0.0%2 1.1%1 0.5%1 0.5%3 1.6%2 1.1%
11 6.0%
51 27.9%
40 21.9%12 6.6%8 4.4%
14 7.7%12 6.6%5 2.7%1 0.5%6 3.3%
20 10.9%14 7.7%
183 100.0%
主 訴
交友関係・性格の悩み
恋愛に関する悩み
学業・進学の悩み
学校・教員の対応
家族に関すること
性・からだのこと
不登校に関すること
相談終了後の返礼
その他 ※
合 計
無応答
その他のいじめ
いじめの態様
金品を隠されたり、壊されたり、捨てられたりする
嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする
パソコンや携帯電話等で嫌なことをされる(LINE)
小 計
冷やかしからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる
仲間外れ、無視をされる、陰口を言われる
軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり蹴られたりする
ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする
金品をたかられる、取られる
※その他の主な内容
・SNS相談がどのようなものか覗いてみるといった「冷やかし」。
・取組みを知ってアクセスした成人の方から「よい取組みなので続けてほし
い」とのご意見。
・主訴が不明の書き込みなど。
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(8) アンケート結果
ア.1回目のアンケート(案件ごとに相談対応直後に実施)
質問1 今日の相談は役に立ちましたか?
回答者数(人) 割合
(1)役に立った 82 86.3%
(2)どちらでもない 11 11.6%
(3)役に立たなかった 2 2.1%
計 95 100.0%
質問2 また相談したいと思いますか?
回答者数(人) 割合
(1)また相談したい 79 80.6%
(2)わからない 16 16.3%
(3)もう相談したくない 3 3.1%
計 98 100.0%
イ.2回目のアンケート(相談後2週間をめどに実施)
質問1 今回のLINE相談で悩みごとは改善しましたか?
回答者数(人) 割合
(1)改善した 23 36.5%
(2)わからない 24 38.1%
(3)変わらない 16 25.4%
計 63 100.0%
質問2 LINE相談後に親や先生などに悩みごとを相談しましたか?
回答者数(人) 割合
(1)相談した 13 21.0%
(2)相談しなかった 49 79.0%
計 62 100.0%
質問3 またLINE相談をしたいと思いますか?
回答者数(人) 割合
(1)また相談したい 38 63.3%
(2)わからない 15 25.0%
(3)相談しない 7 11.7%
計 60 100.0%
質問4 電話相談に比べて、LINE相談はどうでしたか?
回答者数(人) 割合
(1)相談しやすかった 48 81.4%
(2)わからない 9 15.3%
(3)相談しにくかった 2 3.4%
計 59 100.0%
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(9) 友だち登録数の推移
〇 相談開始時点で友だち登録者数は593人おり、相談開始以降は平均6.2人
ずつのペースで友だち登録数が増加している。
〇 相談を希望する生徒は、早めに友だち登録を行い、相談開始を待ってい
た可能性がある。
(10) 相談事例(実際の事案を加工)
事例1(いじめ)
事実と異なる噂を広められている。 事例2(いじめ)
部活動の仲間から悪口を言われる。顧問や友人に話せる人がいない。 事例3(いじめ)
いじられている友人が平気そうにしているが、本当は辛い思いをして
いるのではないか心配だ。 事例4(交友関係)
交際している異性のかつての交際相手から無視される。 事例5(学校)
クラスが騒がしくて、馴染めない。 事例6(教員)
部活動の顧問が厳しくて理不尽だと感じる。
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5 分析
(1) 特徴
ア 高い満足感
〇 アンケート調査(1回目)によると、相談が「役に立った」と回答した
相談者は86.3%、「また相談したい」と回答した相談者は80.6%に上った。
○ 相談の約2週間後に実施したアンケート(2回目)では、相談で悩みごと
が「改善した」と回答した相談者は36.5%、相談後に親や先生に「相談し
た」と回答した相談者は21.0%にとどまったが、「また相談したい」と回答
した相談者は63.3%いた。
〇 問題の改善にはつながらないとしても、誰かに聞いてもらうことで気が楽
になることが考えられる。
〇 こうしたことから、SNS相談を利用した相談者は高い満足感を得ていた
ことが推測できる。
イ 相談のしやすさ
〇 同じくアンケート調査(2回目)では、電話相談に比べてSNSが「相談
しやすかった」という者が81.4%を占めていた。
〇 SNSは、音声でのやり取りがないことから、「家族などに知られる心配
がなく、気兼ねなく相談できる」との感想があった。
〇 SNSを日ごろから使い慣れているといった理由のほかに、他人に知られ
る心配がないといった点もSNS相談が支持される要因だと考えられる。
ウ 多様な相談内容
〇 今回の試行では「SNSいじめ相談」として対象者に周知したことから相
談を受けた183件のうち、51件(27.9%)がいじめに関するものだった。
〇 しかし、いじめ以外の相談も相当数あり、「交友関係・性格の悩み」が40
件(21.9%)で、いじめに関する相談件数に迫る多さだった。
〇 また、いじめ以外の事案では「学校・教員の対応」14件(7.7%)、「恋愛
に関する悩み」「家族に関すること」がそれぞれ12件(6.6%)となっている。
〇 相談内容について大人の視点で捉えると、総じて緊急な対応が求められる
ような深刻な事案は少なかった。
エ 相談内容の可視化
〇 SNS相談では、やり取りを可視化できるため、相談者が相談員とやり取
りした内容を読み返すことによって、課題の整理がしやすいと考えられる。
〇 また、相談員としては、別の相談員への引き継ぎがスムーズにできること
が特徴として挙げられる。
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(2) 課題
ア 対象者の設定
今回の試行では、平成29年9月に長野県で実施されたSNS相談を参考に、
アクセスしてもつながらない相談者を極力出さないように、県内の101校か
ら抽出した5万8千人を対象として調査を行った。
11人の相談員が受けられる相談件数を約600件と想定したが、実際は183件
にとどまった。
他の自治体で行っているように、できるだけ広く対象者を設定することが
望ましい。しかし、一方で相談率を下げない工夫が必要である。
SNS相談の活用に向けては、今回の試行で得た日別、曜日別及び時間帯
別などのデータを参考に、より多くの子どもたちを対象とできるよう工夫す
る必要がある。
イ 相談スキル
SNS相談は文字によるやり取りを行うことから、「共感・寄り添い」
を伝えることが難しいとも言われており、SNS相談ならではの工夫が必
要とされている。
今回のSNS相談では、受託者において相談員の研修等を行い、SNS
の特性に応じた相談技法を身につけたうえで相談に応じたことも相談者の
満足度の高さにつながったと思われる。
こうしたことからSNS相談については、スキルを身に付けた相談員を
配置する必要である。
ウ 費用
SNS相談の場合は、相手の真意を聞きだすまでに時間がかかるといっ
た特徴があり、今回の試行では、1回当たりの平均相談時間が1時間28分
で、吹き出しの数の平均が58.9回だったことから、時間と手間がかかるこ
とが改めて分かった。
相談に要する費用について、1件当たりのコストが割高に感じることか
ら、費用を圧縮するための何らかの工夫を講じる必要がある。
エ SNS相談から通話相談への切り替え
今回の試行では、希死念慮等の緊急性の高い相談や内容が複雑な相談に
対応する場合、SNSによるやり取りだけでは限界があることから、電話
による通話に切り替えて相談を継続できる取扱いとした。
実際は、緊急性の高い案件はなかったが、いじめなど込み入った相談の
24件について相談者に電話相談への切り替えを促したところ、切り替えが
できたのは1件のみだった。
SNS相談から電話への切り替えは難しいため、緊急性の高い事案の場
合の対応方法を検討する必要がある。
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6 今後の方向性
今回の試行により、電話では相談できないが、SNSを通じてならば気軽に相
談できるという子どもたちの存在が改めて確認できた。
特に、子どもたちがSNS相談を評価していることは、「誰かに相談してよか
った」という経験を肯定的に捉えていることである。
SNS相談については様々な課題はあるが、今回の試行で得たデータを踏まえ
て、その相談体制について引き続き検討を進めていく必要がある。