【平成30年度薬用作物産地支援栽培技術研修会(中四国...
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愛媛県における薬用作物の現状と研究の取組み
愛媛県農林水産研究所 白石豊
ミシマサイコ (柴胡)
【平成30年度 薬用作物産地支援栽培技術研修会(中四国:高知) H30.12.06】
1.愛媛県における薬用作物の栽培状況
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愛媛県における薬用作物の栽培推移
◎中山間農業の活性化◎葉たばこ廃作対策
薬用作物の導入と産地化支援
県では
愛媛県における薬用作物の主な産地
産地の位置と規模
従来からの産地
新しい産地久万高原町
大洲市・内子町
西条市
今治市
西予市
東温市
産地の多くは山あいの
中山間地域に展開
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薬用作物名 栽培戸数 栽培面積 生産市町村名
( 戸 ) ( a )
ミシマサイコ 208 3,995久万高原町、大洲市、内子町、西予市、東温市、西条市、伊予市、松野町、今治市など
シソ 3 72 大洲市
サンショウ - 520 久万高原町
計 211 4,587 21.74a/戸
※日本特産農産物協会調べより(平成27年)
愛媛県における薬用作物の栽培品目
0
40
80
120
160
200
0
40
80
120
160
200
H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28
栽培
面積
(ha)
栽培
農家
数(戸
)
図 国内および愛媛県におけるミシマサイコの栽培推移
愛媛面積 国内面積 愛媛農家数
※日本特産農産物協会調べより※※H28年の愛媛栽培面積は県農産園芸課の推計値
国内と愛媛県におけるミシマサイコの栽培推移
愛媛はミシマサイコに特化:全国面積シェア約30%
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2.愛媛県農林水産研究所における薬用作物研究の取組み
薬用作物に対する県行政の取組みと研究の流れ
H24年
H25
H26
H27
H28
H29
H30
H31
H32
葉たばこ廃作関連緊急対策事業
薬用植物産地化支援事業
○各産地において特徴ある産地化を推進○薬用植物の試作、展示・実証○薬用植物産地化条件整備事業
薬用作物生産流通体制支援事業
○小規模産地への生産流通体制整備○種苗供給体制の構築○指導体制の強化○薬用作物生産流通体制整備事業
県行政
医薬基盤健栄研との共同研究・カンゾウ、ミシマサイコ、シャクヤクなど
農水委託プロジェクト研究
薬用作物の国内生産拡大に向けた技術の開発
○薬用作物の実証栽培○医薬品メーカーとの共同研究
○連絡試験(トウキ、ミシマサイコ)
○種苗生産技術
農林水産研究所
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農林水産研究所における研究品目
78.0 %
100 %
98.8 %
97.4 %601 【12位】
840 【 6位】
1,565 【 2位】
1,464 【 4位】
根
根
根
根
ト ウ キ
カ ン ゾ ウ
シャクヤク
ミシマサイコ
ハトムギ
3
1
2
4
国内使用量
量(トン) 【順位】品 目
利用部位
輸入比率
県内面積(ha)
5 子実 472 【16位】 99.9 % -
-
-
-
36.6
ウラルカンゾウ シャクヤク‘北宰相’ 大和トウキ ミシマサイコ
ハトムギ‘あきしずく’
その他の品目
ムラサキ マオウ カラスビシャク
など
研究対象となる主な薬用作物
医薬基盤・健康・栄養研究所 との共同研究
※データは日漢協調査報告書によるH26年度原料生薬使用量
●栽培マニュアルの作成を進める。
〔研究内容〕
国内生産拡大の要望が高く主要品目である「トウキ」、「ミシマサイコ」、「カンゾウ」、「オタネニンジン」、「シャクヤク」を対象とする技術開発課題を設定し、薬用作物生産の高品質・低コスト・安定化技術を個別に開発【代表機関:農研機構(西日本農研)、共同研究機関:23機関】
①トウキの生産拡大のための技術開発 【農研機構(作物研、遺伝資源研、北海道農研、西日本農研)、医薬基盤研、県広島大、立命館大、夕張ツムラ、愛媛農水研ほか11機関】
②ミシマサイコの生産拡大のための技術開発 【農研機構(西日本農研、九州沖縄農研)、医薬基盤研、県広島大、愛媛農水研ほか7機関】
③カンゾウの導入による省力大規模生産技術の開発 【農研機構北海道農研】
④オタネニンジンの生産拡大のための技術開発 【農研機構(東北農研、中央農研)、千葉大、福島県 医大】
⑤シャクヤクの生産拡大のための技術開発 【農研機構(西日本農研、食農ビジネス)、三重農研、大阪大】
◎主要薬用作物の国内生産拡大を促進◎中山間農業の活性化
農林水産省委託プロジェクト研究
薬用作物の国内生産拡大に向けた技術の開発平成28~32年度:5年間
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10a200kg ⇒ 250kg
10a50kg ⇒ 60kg
1.2.
54,762 /10a
7030 1
14,286 /10a70
10 1
IBS1 - - =10-10-10 100kg / 10a100kg / 10a
2t / 10a10
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トウキ(セリ科)生薬名:当帰(とうき) 利用部位:根
オオブカトウキの栽培状況●愛媛県での生産は始まったばかりです。収穫までに株を開花させないことが栽培の最も重要なポイントです。
栽培のポイントトウキには大和トウキ(オオブカトウキ)とホッカイトウキの2種類があり、暖地では一般に大和トウキを作付け。
苗の養成期間を含めると、収穫までに2年間を要する。
定植用の苗は根頭径が7~8mmの中苗を用いる。株が抽台、開花すると根部は生薬としての価値を失う。
収穫した根の乾燥には時間がかかり、仕上げ調製では湯もみ作業を行う。
トウキの栽培暦
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
苗養成(1年目) ▼ ▼
本圃定植 ■ ● ● ◎ ■ ■
播種
苗掘上げ 定植 追肥 収穫
トウキの課題
7、8月の高温期に生育阻害(葉面積が著しく狭くなる。葉巻き症状。)。青枯れ株の発生 → 地温昇温抑制:敷きわら等
今年度は根頭部に障害のある個体が多発(収穫時は地上部正常)。→10月の多雨:改めて排水対策
【収穫時】根頭部の褐変、腐敗、裂化:41%トウキ:高温障害(8月)
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本県中山間地域におけるミシマサイコの栽培状況●愛媛県で最も生産量が多い薬用作物です。近年、1年生から2年生の生薬生産に移行しようとしています。
ミシマサイコ(セリ科)生薬名:柴胡 利用部位:根
栽培のポイント播種後の土壌の過乾燥や過湿は発芽不良の原因になる(発芽までの期間が長い)。
発芽からの初期生育が緩慢なため、その間の雑草防除が重要。
分枝促進、充実した種子の確保、収穫作業の効率化のためには、茎の切戻し作業を適宜実施。
ミシマサイコの栽培暦(2年生)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1年目 ▼ ▼ ◎ × × ◎
2年目 ◎ × × ◎ ■
■
播種
追肥
収穫
追肥 追肥
刈込み追肥 刈込み
刈込み刈込み
【2年目】根頭部(主根)の木質化(裂化):38%
0
20
40
60
80
100
8/29 10/31 6/12 8/8 11/2
枯死
株率
(%
)
調査日H28 H29
図 ミシマサイコの2年生栽培における枯死株発生の推移
【2年目】収穫までの枯死株率 60%
ミシマサイコの課題(2年生栽培)
2年生栽培では2年目の枯死株率が増加冬季刈り込んだ株が未出芽台風等の強風で株元のぐらつきによる生育不良、立枯れ
地上部姿勢の安定化のための草姿管理の検討(株の切り戻し位置、回数など)
根頭部の木質化→原因不明
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•国民の健康と日本の伝統医学である漢方を守るために、その基盤となる薬用作物の国内生産を維持拡大
することは重要な使命。
•薬用作物の省力・低コスト安定生産技術の確立には、伝統的な栽培、加工調製技術を科学的に理解した上で、農業分野で蓄積したノウハウを活用した新技
術の開発、導入を進めること。
•育種(品種改良)は農業発展に大きく貢献したことから、薬用作物も優良種苗の育成を図ることが今後の
重要な課題。
最後に
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