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3.8.2 テストベッド研究開発推進センター テストベッド研究開発室 室長  河合栄治 ほか 15 名 新世代ネットワークを実用化し、超高速基盤からソーシャル ICT まで支えられるテストベッドの実 現に向けて 【概 要】 テストベッド研究開発室では、新世代ネットワーク技術に関する研究開発及びその実用化を推進し、さらに ソーシャル ICT の取組を支えるテストベッドを実現するために、JGN-X 及び StarBED 3 を中心とした大規模 テストベッドインフラストラクチャの高度化を実現する技術の研究開発を行っている。 JGN-X に関して平成 26 年度は、新世代ネットワーク技術の本格的な導入、展開、運用を可能にするため に、これまでに検討を行ってきた基本アーキテクチャの改善及び各種要素技術の開発と共に、次世代テスト ベッドに向けた実技術展開を部分的に開始した。特に、物理的に構成される基幹ネットワークにおいて超高 速化(100 G 化)を実現するために、それに対応した管理運用技術の確立に向けた取組を行った。また、その 上に論理的に構成される SDN (Software-Defined Networking)テストベッドRISE (Research Infrastructure for large-Scale network Experiments)において、基幹ネットワークの物理構成から全く独立した仮想ネット ワークの構築及び仮想ホストの管理運用を一体的に実現するオーケストレーションの仕組みを導入した。なお、 StarBED 3 については、3.8.2.1 を参照いただきたい。 【平成 26 年度の成果】 1. JGN-X テ ス ト ベ ッ ド 基 幹 ネットワークアーキテクチャ の開発 JGN-X では、下位層の物理ネッ トワーク上に仮想化された上位層 ネットワークを構築し、新世代 ネットワーク技術の研究開発をサ ポートするためのテストベッド 環境を収容し提供している。平 成 26 年度は、この下位物理ネッ トワークの超高速化(100G化)を 主要拠点間で実現し、この超高速 化に対応した管理運用技術の確立に向けた取組を行った。具体 的には、物理ネットワークを共有する各実験の多様な帯域要求 に対応して各実験を保護するために動的にパスを切り替える仕 組みや、超高速化に対応したネットワーク監視を実現するため に光スイッチングとネットワークフィルタリング機能、高精度 ネットワークモニタリング機能を連携させる仕組みなどを開発 した(図1)。 2. 新世代ネットワーク実証実験環境の展開及びサービス化 当室では、新世代ネットワークプレーンとして新世代ネッ トワークのための実証実験環境を構築しており、その 1 つに SDN/OpenFlow テストベッド RISE がある。RISE では、ユー ザが自身のコントローラにより直接制御可能な SDN インフラ をテストベッド環境として提供するとともに、そのような高度 なネットワーク制御機能がオープンな形でユーザに提供される 次世代のネットワークインフラの構築運用技術の観点から研 メッシュ型 リング型 スター型 RISE オーケストレータ ユーザは多様な トポロジを実現 下位物理NWトポロジは固定的 図 2 RISE オーケストレータによる管理運用 サービス クライアント UserNWモニタ(PerfSONAR MAPerfSONAR protocol Users 計測 PS−DB PRESTA CORE SW SW ANUE OFS-MES OFS OFC- MES ネットワーク Users 計測 PS−DB PRESTA CORE SW SW ANUE 10G 100G OFS-MES OFS OFC- MES ネットワーク Users 計測 OFS-MES OFS OFC- MES ネットワーク DPIノード 観測対象物理NW 計測データexchangeスライス 図 1 超高速化に対応したネットワーク監視の仕組み 83 3.8 テストベッド研究開発推進センター

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Page 1: 3.8 テストベッド研究開発推進センター 3.8.2 テストベッド ... …...2003/08/02  · 3.8.2 テストベッド研究開発推進センター テストベッド研究開発室

3.8.2 テストベッド研究開発推進センター テストベッド研究開発室室長  河合栄治 ほか 15 名

新世代ネットワークを実用化し、超高速基盤からソーシャル ICTまで支えられるテストベッドの実現に向けて

【概 要】テストベッド研究開発室では、新世代ネットワーク技術に関する研究開発及びその実用化を推進し、さらに

ソーシャル ICT の取組を支えるテストベッドを実現するために、JGN-X 及び StarBED3 を中心とした大規模テストベッドインフラストラクチャの高度化を実現する技術の研究開発を行っている。

JGN-X に関して平成 26 年度は、新世代ネットワーク技術の本格的な導入、展開、運用を可能にするために、これまでに検討を行ってきた基本アーキテクチャの改善及び各種要素技術の開発と共に、次世代テストベッドに向けた実技術展開を部分的に開始した。特に、物理的に構成される基幹ネットワークにおいて超高速化(100 G 化)を実現するために、それに対応した管理運用技術の確立に向けた取組を行った。また、その上に論理的に構成される SDN (Software-Defined Networking)テストベッド RISE (Research Infrastructure for large-Scale network Experiments)において、基幹ネットワークの物理構成から全く独立した仮想ネットワークの構築及び仮想ホストの管理運用を一体的に実現するオーケストレーションの仕組みを導入した。なお、StarBED3 については、3.8.2.1を参照いただきたい。

【平成26年度の成果】1.JGN-X テストベッド基幹ネットワークアーキテクチャの開発

JGN-X では、下位層の物理ネットワーク上に仮想化された上位層ネットワークを構築し、新世代ネットワーク技術の研究開発をサポートするためのテストベッド環境を収容し提供している。平成 26 年度は、この下位物理ネットワークの超高速化(100 G 化)を主要拠点間で実現し、この超高速化に対応した管理運用技術の確立に向けた取組を行った。具体的には、物理ネットワークを共有する各実験の多様な帯域要求に対応して各実験を保護するために動的にパスを切り替える仕組みや、超高速化に対応したネットワーク監視を実現するために光スイッチングとネットワークフィルタリング機能、高精度ネットワークモニタリング機能を連携させる仕組みなどを開発した(図 1)。

2.新世代ネットワーク実証実験環境の展開及びサービス化当室では、新世代ネットワークプレーンとして新世代ネッ

トワークのための実証実験環境を構築しており、その 1 つにSDN/OpenFlow テストベッド RISE がある。RISE では、ユーザが自身のコントローラにより直接制御可能な SDN インフラをテストベッド環境として提供するとともに、そのような高度なネットワーク制御機能がオープンな形でユーザに提供される次世代のネットワークインフラの構築運用技術の観点から研

3.8 テストベッド研究開発推進センター

メッシュ型

リング型

スター型

RISEオーケストレータ

ユーザは多様なトポロジを実現

下位物理NWのトポロジは固定的

図 2 RISEオーケストレータによる管理運用

サービスクライアント(User)

NWモニタ(PerfSONAR MA)

DPIノードDPIノードPerfSONARprotocol

Users

計測

PRESTAPRESTAPRESTA

PS−DB

PRESTA

CORESW

光SW

ANUE

OFS-MES

OFS

OFC-MES

ネットワーク

Users

計測

PRESTAPRESTAPRESTA

PS−DB

PRESTA

CORESW

光SW

ANUE

10G100G

OFS-MES

OFS

OFC-MES

ネットワーク

Users

計測 OFS-MES

OFS

OFC-MES

ネットワーク

DPIノード

観測対象物理NW

計測データexchangeスライス

図 1 超高速化に対応したネットワーク監視の仕組み

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究開発を進めている。平成 26 年度は、下位の JGN-X が提供する半固定的な仮想ネットワークの構成から独立したネットワーク構成を実現する仕組みや、仮想ホスト環境をネットワークに組み込んで管理運用する仕組みを統合し、RISE オーケストレータとして運用を開始した(図 2)。これにより、広域インフラにおいて NFV

(Network Function Virtualization)の概念にあるようなネットワーキングとコンピューティングが融合したプログラマブルなインフラ及びその統合的な管理運用を実現した。

3.テストベッド高度化技術の研究開発次世代の SDN では、現在のクラウドが実現しているようなマル

チテナント化(多数のユーザが共有インフラを自由に使ってサービスを構築可能にすること)が求められている(図 3)。従来の SDNマルチテナント化手法は、SDN のコントロールプレーンに限定したユーザ多重化による方式であり、インフラを共有していることを意識する必要があり、ユーザ数が増えた場合の対応が困難であった。当室では、コントロールプレーンとデータプレーンの両方が連携することにより、マルチテナント SDN における利便性及びユーザ数の規模拡張性を向上する手法を開発してきた。平成 26 年度は、本手法を実際のネットワーク環境に適用するため、日本、米国、台湾の学術組織が参画して構築されたネットワーク基盤(PRAGMA-ENT)への導入を行い、運用を開始した。

4.新世代ネットワーク技術の実証実験新世代ネットワーク技術の可能性について実インフラストラクチャを用いて提示していくことは、その実用

化に向けて非常に重要であり、国内外でデモを実施した。特に、さっぽろ雪まつりでは神奈川工科大学ほかと共同で 100 Gbps 回線上での非圧縮 8 K 映像のマルチキャスト伝送に世界で始めて成功し(図 4)、放送局間での高精細映像素材伝送のようなシングルソースマルチユースの実現モデルを示した。

各テナントは、自身のSDNコントローラを用い、インフラを制御して独自のサービスNWを実現

マルチテナント化

共有された物理SDNインフラ

テナントネットワーク(仮想SDN)

図 3 SDNインフラのマルチテナント化

100Gbps100

100

東京・大手町

8K@60Pカメラ・レコーダ大手町景色

ダウンコンバータ

8K/4Kレコーダ

大阪・うめきた 北陸<4k伝送機>QG70x4

<4k伝送機>QG70x4

<4k伝送機>QG70

4K30P映像再配信

<4k伝送機>QG70x4

8K非圧縮 24Gbps

8K非圧縮 24Gbps

8K非圧縮24Gbps

受信側での選択的受信

8K/ 4K映像ハンドリングover StarBED3

NTT-IT8KサーバSharp

8Kモニタ

ワンソースマルチユース配信 →各大学へ

8K表示装置(KAIT) 堂島 大手町うめきた

石川

北海道の映像

図 4 非圧縮 8K映像のマルチキャスト伝送のインフラ構成

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活動状況

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