3、特異点解析 - university of...
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コ 講座 プラズマ理論の技法
3、特異点解析
徳 田 伸 二
(日本原子力研究所那珂研究所)
Singular Point Analysis
TOKUDA ShinjiNαたαFμsガon1~召s6α70h Es∫αわ1∫sh〃38ηち/αPαn A言o醜’o En678y R6s6α7ch Zn31々泥16,1わαrαん’31!-0193,/αP召n
(Received.20Apri12002)
Abstract
An introductory reviewis given onrecent developmentsin the methodsforstability analysisofatoroidally
confined plasma.Emphasis is put on the perturbation analysis of a magnetohydrodynamic system that has
themarginally stablestateasateminalpointofcontinuousspectraWeaddressourselvestotheasymptoticmatching method pertinent to such a problem.The Newcomb equation and inner layer eq.uations are essen-
tial ingredients in the methods and the numerical methods for solving them are(iiscussed.
Keywords:
magnetohydrodynamic stability,tokamak,spectral analysis,eigenvalue problem,asymptotic matching,
outer region,inner region,Newcomb equation,inner layer eqation,response method
特異点解析というのは相当幅が広いジャンルであり,
また,数学的に未解決な問題も残されているので,ここ
でその全てを解説することはできない.よって,実際に
私がMHD安定性解析において,どのように特異点解析
を用いているのかを中心にお話しする.
まず,序論で簡単な例をもとに特異点解析の概要を述
べ,次にMHD安定性解析における接続問題,それから
理想MHD内部層間題やN’ewcomb間題に対する数値解
法について解説する.その後,少し系統は異なるが外部
モード問題への応用について述べ,さらに抵抗性MHD
内部層問題というのをお話しする.
3.1序論 MHD安定性解析というのは広い意味で「固有値解析」
であると言える[1-3].そして,それを行なう際にしばし
ば現れるのが「漸近接続問題」[4]である.ここでは,こ
の二つのキーワードに対応する簡単な問題例として,井
戸型ポテンシャル問題とWKB法を紹介する[5].
以下のような,エネルギーEを固有値とする一次元
Schr6dinger方程式を考える.
慕+争IE-uα)]ψ一・
境界条件:ψ(0)=0,0<冗<・・
(1)
(2)
まず,ポテンシャルがない(U(%)=0)場合は自由状態
なので,解は
ψ(%)=sin伽 (3)
である.固有値Eは任意の定数をとれるので,α厩ho〆s6一配α’ゐ∫oん㍑4αs@吻3∫on.nαんα.ノ磁紘80か
913 J.Piasma Fuslon Res.Vol.78,No.9(2002)913-924
Joumal ofPlasma an(i Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002
E=(hπ)2/2別>0は連続スペクトルである.これは,量
子力学的には散乱状態を意昧する.一方,
uα)一/謬濃 (4)
のような井戸型ポテンシャルを考えた場合,井戸の深さ
Uoが十分深ければ,そこに離散固有値(点スペクトル)が
存在する.それでは,このような束縛状態が存在するた
めに必要な,最小の深さUoを求めるという間題を考え
てみる.束縛状態の境界条件としては,
ψ(O)=ψ(+○○)=0
y ア=αx
’
ア=Slnx
!
!
!
!
!!
’
!
!
!
ノ1
!
(5)
である.まず,井戸の外側の領域では波動関数は減衰し,
ψ(冗)=o exp(一翫), (%>α)
κ2一一2響 万
(6)
(7)
、
、
、
、
、
π/2
、 !、 ’
ノ
ノ
! 、
ノ 、! 、
、
、、
、 ’!
ノ
ノ
Fig.1 Condition that the two graphs intersect.
ノ
/X
や電流分布ということになり,例えば,プラズマの圧力
がある程度高くなれば,そこで束縛状態というのが
MHD方程式から出てきて,そのために閉じ込め圧力の
限界が決まるといったことである.このような問題の解
析方法として漸近接続法[4]が用いられる.
漸近接続法のすべてを説明するのは大変なことだが,
簡単な問題で,例えば,
と表される.また,井戸の中の領域では
ψ(%)=sin(たκ),(0<%<α)
h2一婆(E+研))
充
(8)
(9)
d2ツ
欲2+馴κ)y(冗)=o
境界条件:y(0)=y(π)=0
(?(%)>0(0≦冗≦π)
(12)
(13)
(14)
と表される.ここで,κ=αにおいてψ(%)とdψ/砒が連
続であるという接続条件から,雇=獅/刎に対する方程式
蜘一±(2論)昭(㎞)・漁)<・(1・)
が求まる.よって,Fig.1の交点から,束縛状態が存在す
るために必要な井戸の深さが
・一(,論)毘く多一砺>謙 (11)
のように求まる.このように,固有値問題の一般的な性
質として,まずは自由状態(連続スペクトル)が存在し,
それに対してある程度深いポテンシャルが加えられる
と,東縛状態(点スペクトル)が現れるということが言
える.それが例えば水素の場合では可算無限個あり,中
性子と陽子の場合は一つだけ存在する.そこで,MHD
安定性解析というものを,「固有値問題が点スペクトル
をもつ条件」を求める事であるとみなす.すると,井戸
の深さに相当するものがプラズマの圧力勾配(ベータ値)
といった方程式の固有値Eを求める場合に,WKB法と
いうのが用いられる.この方法は,S,(冗)(乞=O,1,…)と
いう未知関数と小さなパラメータδを用いて,解を
yα)一呵ま耳δ’ )1(15)
のように展開して表し,このS,(冗)を逐次的に決めてい
く手法である.方程式は
歩(薯)2+蜘一・
ま(・薯薯+撃)一・
のように各オーダごとに分解される.
メータδが
1δ=一 厄
(16)
(17)
(18)
(16)式から,パラ
(19)
と決まり,最初の二つ(So(卑),S1(冗))までを解いた近似
914
Lecture Note
解(WKB解)として
ツα)一・繍曲[可諏司
と求まる.境界条件を用いると固有値は
Singular Point Ana翌ysis
(20)
源一 朋 (%一1,2,…) (21) 兀π煽砒’
という離散的な値に決まる.この結果は,%が大きいほ
どδが小さくなり,より厳密解に近くなることが言える.
これで何も問題がなければここで終りだが,WKB解
で問題となるのは,もしQ(κ)=0となる点があると,こ
の近似が破綻することである.これの対策としてはいろ
いろ方法があるが,ここでは漸近接続法を用いた手法を
紹介する.先程の方程式を改めて,
1d2y7評+ρ(冗)y(冗)=o (22)
と書き直し,9(O)=0であるとする(E;1/ε2とおい
た).∬=0の近傍でQ(x)=砿という直線で近似できる
とした場合,その近傍では
1d2y7評=一鰐(κ) (23)
S.Tokuda
霧 2霧z
Rcgloll IH’
’
アm(x)is・scillat・ry, 穿 0ノ
ノバ
慨
κ
RcgiQllIア1(x)isexponential三ydecreas1
’ ’職 鴨 聯巴 叩 ぜ
イ彰 蒙Reglonll IxIく〆く1
という方程式で表され,この%=0は特異点ではない.つ
まり,先程の問題は近似が悪いのであって,もとの方程
式は悪さをしていない.よって,π=0の近傍で別な良い
近似解を見つけて,WKB解とつなげてやればよいこと
になる.これが接続問題である.接続の仕方を簡単に説
明すると,例えばFig.2のようにQ(x)がゼロ点をもって
いた場合,領域皿では振動的な解
ym(%)一F卜Q(冗)r1/4
・s㎞[証o緬欲1+9]
が得られ,領域1では指数関数的に減少する解
煎)一6[ρα)1一拠exp[一諾爾d冗1
(24)
(25)
が得られる.ここで,領域Hの解yII(卑)を見つけて
yl(冗),ylil(卑)とつなげてやれば,未知定数F,g,Cの問
の関係が求まり,WKB問題が解けたことになる.そこ
で,領域Hについてはx;厩(α《1)と変換し,%=0
の近傍で引き延ばされた変数オを用いてyII(%)の方程式
x
Fig、2 Three regions for the case when Q(x)is increasing and
Q(0)=0.
を導く.冗=0におけるρ(冗)の傾きがαであるとき,
α≡ε2/3α一1/3と定義してやれば,(23)は
d2yII
dオ2=砂II(オ) (26)
というAiryの微分方程式[4]になる.この解はAiry関数
ん(オ),β(オ)を用いて,
ツII(オ)=z)ん(渉)+Eβ(オ)
で表されるが,Airy関数はオ→・○において
州一嘉1/4expチオ3/2
Bf(オ)一が1/4exp暑渉3/2
(27)
(28)
(29)
という形に漸近することが知られている.まず,yII(オ)
のオ→+・・とyl(冗)のκ→0とを接続することで,
D=2冴(αε)一1〆66,E=0 (30)
が求まり,さらに,ッII(オ)のオ→一・・とyIII(κ)の
%→0とを接続することで,
(αε)1/6 πF=海P=26・9=π
(31)
が求まる.このように,ッ(冗)のWKB近似であるッ1(ヱ)とyII王(劣)の両方が適切な領域が存在しない場合に,
ッII(∬)を用いることで二つの領域を漸近接続することが
できた.MHD理論では領域1,皿を外部領域,領域∬を
内部領域(または内部層)と呼ぶ.内部領域では,特殊
関数の漸近展開がしばしば活躍する.
3.2 MHD安定性解析における接続問題
それでは,これまでの話がどのようにMHD安定性解
析につながるのかを説明する.ここでは方程式系は一流
915
Joumal ofPlasma and Fusion Research Vol.78,No.9 September2002
体を考える[6,7].
∂ρ
一十▽・(ρ∂)=0∂ピ
Dρ可u=一▽カ+ノ×B
携(カρ一「)一・
E+u×.B;ηブ
ただし,
D ∂一=一十u・▽Dオ ∂オ
(32)
(33)
(34)
(35)
(36)
また,変位電流を無視した準定常なマクスウェル方程式
を用いる.
▽×B=μoブ
▽・B=0
∂B
一+▽×E=0∂オ
▽プー0
プラズマの平衡条件は,∂/∂オ=0とu=0より,
▽ρ=ノ×B
(37)
(38)
(39)
(40)
(41)
であり,これらを基礎方程式とする.幾何学的な配位は
トカマクに代表されるような軸対称配位を考える[8]
(Fig.3).軸対称系(プ,~,φ)における平衡磁場は
B=▽φ×▽ψ+F▽φ (42)
で表され,ψ(7,z);collstは磁気面(B・▽ψ=0)に相当
し,Fはトロイダル磁場を与える関数である.平衡条件
から,F=F(ψ),ρ一ρ(ψ)のようにψだけの関数で表さ
れることがわかる.さらにトカマク配位の特徴として,
トロイダル磁場凧耽FI▽φ1はポロイダル磁場β1,=1▽φ
×▽ψ1より十分大きい状況を想定する(Bt》Bi,).
実際にMHD方程式を取り扱うときには,磁気面関数
ψを座標系に用いるのが便利であり,磁束座標系(ψ,θ,φ)がよく使われる.ここで二つの回転角を用いて
いるが,トロイダル角φは先程の軸対称系と同じであ
り,厳密に定義できるのに対し,ポロイダル角θの定義
には任意性がある.例えば,θを
Z
Φ醸議
鼠
認
獺
裟慧
慧難
顯
難難螺警
蒙
難嚢鍵馨
灘
瞬
Fig.3 Axisymmetric(tokamak)configuration
B・▽φ9(ψ)二B.▽θ
r
(43)
となる(磁力線を直線にみる)ように定義することは常
に可能ではあるが,これの力学的アナロジーを議論する
ときりがないので,ここでは深く立ち入らない.このよ
うなトーラス上のベクトル場の特徴として,有理面とい
うのがある.これは,
9(ψ,,,/,、)一塾L
%
(44)
のように安全係数g(ψ)が有理数となるような磁気面
ψ,珈のことであり,この面上では磁力線がポロイダル方
向に%回,トロイダル方向に窺回廻って閉じている.
MHD理論ではこの有理面が重要で,しばしば問題と
なる、ある物理量を表すスカラー関数∫(ψ,θ,φ)はθ,φ
の二重周期関数であり,一般に
∫(ψ,θ,φ)一Σ痴(ψ)exp[i(漉θ一%φ)]
”’,”
(45)
のように展開される.ある別,%の成分に着目する(ヘリ
シティを決める)と,
916
Lecture Note SingularPolntAnalysis S.Tokuda
B・▽万1~,n=i(吻B・▽θ一ア2B・▽φ)ガ,1,、,
=i[(B・▽θ)(窺一アη(ψ))]ガ,,,,、
(46)
(47)
より,磁力線に沿ったガ,,,“の変化はψ刀,/,、という有理面上
でゼロになることがわかる.つまり,磁力線とヘリシ
テイが一致している物理量は,磁力線に沿って一定であ
ることがわかる.ある意味当たり前のことを表してはい
るが,このことが現実に様々な問題を引き起こす.例え
ば有理面のために方程式が解けなかったり,物理的には
磁場の弾性がそこで消失したりする.
また,具体的に運動方程式をみてみると,中性流体と
は異なるMHDの特徴として,.渦が発生しやすいことが
挙げられる.オイラー方程式の場合はヘルムホルツの渦
定理(渦の不生不滅)が流体力学の教科書[9]に必ず書か
れているが,MHD方程式の場合にはあまりそういうこ
とは書かれていない.それは,平衡状態でない限り,一
般には
▽×(ノ×B)≠0 (48)
であり,渦が発生しやすいからである.もう一つMHD
において重要なのは準中性条件▽ゴニ0であり,これを
用いると渦度に対する方程式(Shear-Alfv6n則)[8]が得
られる.
Bく▽×霧)一B惣・▽(台)+2κB・▽ρ(49)
これによると,渦を生成する項は二つあって,一つは磁
場に平行方向の電流の湾曲による項であり,もう一つは
磁場の曲率(κ)と圧力勾配による項である.圧力が低
い場合や,曲率のないスラブ形状の場合は第二項はゼロ
であり,第一項が効いてくる.しかし,ここで大事なの
は,第一項は有理面においてゼロになることで,これが
方程式に特異性を出す原因となる.
以上は渦度の磁場に平行な成分に対する方程式の話で
あるが,運動方程式だけでもまだ解くべき方程式が二つ
残されている.これらをなるべく簡約化して扱いやすく
する方法,すなわち,簡約化されたMHD方程式(re-
ducedMHD equation)の導出法としては色々提案されて
いるが,考え方としては二通りに分けられる[7,8].一つ
は,方程式にグローバルに適用されるパラメータ(例え
ばアスペクト比)が非常に小さい(または非常に大きい)
として,簡約化する方法である.もう一つは,そのよう
なことができない場合に,特定の領域,あるいは特定の
モードだけを解析の対象にする考え方である.ここでは
一番簡単な簡約化方法として,アスペクト比が1より十
分大きく(アスペクト比展開),ベータ値が有限でありな
がら,低いという近似を用いる.7本のMHD方程式を
線形化し,1本にまとめると,静電ポテンシャルψに関
する固有値間題は
哉{[γ2+∫(冗)]割+P(劣)ψ(%)一・
という形で表される[8].
のため固定境界条件
ψ(0)=ψ(1)=0
(50)
領域は区間(0,1)とし,簡単
(51)
を考える.ここで,γ2が固有値であり,関数八x)は区間
(0,1)において∫(x)≧0を満たす.つまり,固有値γ2
が正(不安定側)であれば,その固有関数はeXI)(γオ)で
成長することに相当する.また,γ2が負(安定側〉であ
るときは,
ヨ冗A∈(0,1),γ2十∫(冗A)=0 (52)
であるため,γ2は連続スペクトルに属することがわか
る.また,八%o)=0を満たす点κoが存在することが問題
となり,すなわち,そこが有理面に相当する.
我々の目的は,ポテンシャルV(κ)がベータ値βに依
存して変化する際に,最初に不安定固有値γが現れる
ベータ限界β、,を求めることである.これは安定性解析
における一つの課題である.もう一つは,そのγが現れ
るときのγのβ依存性を求めることであり,つまりβ。,
の近傍で
γ=6(β一βcr)α (53)
としたときの,指数αを求めることである(Fig.4).こ
の二番目の課題については,かつて議論されたことも
あったが,単純に方程式を解くだけでは求まらないた
め,不可能であろうと思われていた.この間題について
は後で述べるように,また別の手法を必要とする.
私がこの研究を始めたころは,理想MHD方程式を解
く数値計算が世界中で行なわれ[10,11],このβ、,を求め
ようとしたが,数値的には求まっても,なかなか厳密と
はいえなかった.なぜなら,β。,の近傍ではγ2は非常に小
さく,1γ2+∫(冗)1の所が有理面においてゼロに近づ
き,方程式自身が特異になるためである.このような困
難を解決する自然な方法として用いられるようになった
のが接続問題である.
まず,有理面(∫(卑o)一〇)近傍を内部層,その外側を
917
Joumal ofPlasma an(i Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002
γ
↓
β67
βFig、4 Critical betaβcrl unstable modes appearforβ>βGr.
外部領域と見なす.いま,問題としている不安定固有値
γ2が現れ始めるところ(β=βcr)では,成長率に相当す
るγ2がアルヴェン周波数よりもずっと低いので,∫(冗)
がゼロでない外部領域ではγ2(プラズマの慣性)は無視
できる.すると,
計(冗)劇+7(冗)ψ一・ (54)
が外部領域に対する方程式となり,これはNewcomb方
程式と呼ばれている.この方程式において有理面は確定
特異点[!2]となっている.
一方,内部層においては∫(π)がゼロになるため,プラ
ズマの慣性γはいくら小さくても無視できない.そこで,
∫(冗)の冗=万o近傍の振る舞いを,
∫(%)一(冗一%。)2あ,あ>0 (55)
としよう.ここで,定数ズ)は磁場のシアに関係する量で
ある.独立変数の引き延ばしを
γκ一κo=ε2,ε=一《1 孫
のように行なえば,内部層方程式は
晶[(1+~2)讐レ伽一・
(56)
(57)
で表される(P=7(%o)贋)).これはWKBでいうところ
の特殊関数で記述される部分になっており,これならば
解析的に解くことができる(解は引数が虚数のルジャン
ドル関数になる).
「なぜ,元の方程式をそのまま解かずに,このような
接続問題を用いるのか」と疑問に思われるかも知れない.
確かにそういう側面もあるが,接続間題を解くことには
いくつかの利点がある.第一に,物理モデルの拡張性が
挙げられる.物理モデルが理想MHDであろうと抵抗性
MHDであろうと,外部領域の方程式はN’ewcomb方程式
のままであり,変わるのは内部層方程式だけである.っ
まり,Newcomb方程式を解析的,数値的に解く手法が
すでに得られていれば,後は物理モデルに敏感な内部層
方程式を有理面においてのみ解くだけで良い.実際には
様々な問題を含んでいるが,このような意味で接続問題
は拡張性の良い手法である.第二に,数値計算の有利性
というのがある.元の方程式をそのまま解くよりも,接
続問題を用いた方が,数値計算の高速性,高分解能が期
待できる.第三は,結果の解析性である.すなわち,接
続問題は物理について見通しの良い解析的な結果を得る
ことができる.
ここで,理想MHD安定性における変分原理について
言及する[!,6,8].プラズマの変位ξによる全エネルギー
変化は
確一劫IQ+ξ圃2+酬▽・ξ12+・1るi2}dτ
で表される.ここで,
Q一▽×(ξ×B)
▽ψnレ= ξn=ξ・π 1▽ψド
(58)
(59)
(60)
0=21▽ヵe,1[κ、、一σ2B2+σ(B×π)・▽×(B×π) (61)
ノ・Bσ= B2
(62)
積分の中の第一項は磁場によるポテンシャルエネルギー
で,compressionalAlfv6n項とshearAlfv6n項を含む.第
二項は圧縮性の項である.0には閉じ込めプラズマの圧
力からの寄与と磁力線に平行な電流からの寄与の両方が
含まれている.境界条件を満たし,2乗可積分な任意の
変位ξを代入した時,四が負になるものが存在すれ
ば,プラズマは不安定である.よって,第三項が不安定
性を引き起こす原因であることがわかり,例えば,磁力
線が曲率をもたず,一様な平衡は常に0=0であり,安
定であることがわかる.また,この躍を停留にするよう
なξを求めるEuler方程式が,先程のNewcomb方程式
918
Lecture Note SlngularPoint Analysis S.Tokuda
と一致する.
それでは,N’ewcomb方程式
蜘一計(冗)劇+照)ψ一・ (63)
を解いてみる.f(冗o)=0となる点物は確定特異点であ
り,その近傍では
昔(オ・審)一Pψ一・
D-7(κ・),オーレ%。
あ
(64)
(65)
と表される.よって,確定特異点のまわりのFrobenius角皐[12]壱よ
ψ(万)=団レ,[劣「レー1
ンー一音+μ・μ一(青+P)翅
(66)
(67)
1と求まる.ここで,μが実数であるための条件P>一一 4は,Suydam安定条件と呼ばれる.もし,この条件が破れ
ると,N’ewcomb方程式の解は有理面の近傍で無限回振
動し,不安定側に可算無限個(ゼロに収束する)の固有
値が存在することが証明されている.トカマクにおいて
も,このSuydam条件を使ってプラズマ閉じ込めの安定
性のチェックが行なわれている(SuydamMercier条件
と呼ばれる)[6].以下では,Suydam条件は満たされて
いるとし,レは実数とする.すると,1球は二乗可積分な
解,囲一レー1は二乗可積分でない解となり,プラズマの分
野では前者を「小さい解」,後者を「大きい解」と呼んで
いる.
以上は特異点近傍における解の振る舞いであるが,外
部領域全体については
魚)=(炉冗。)2
照)一(μ2一去)一β2(岡2
境界条件:ψ(0)=ψ(1)=0
(68)
(69)
(70)
のように,∫や7が2次関数の場合において解析解が求
まっている.このとき,左側(κ<冗o)の解は
ψα)一{轡)+締)1淵
ψセ(κ)一(会)μr(・一μ)lzr一㌦(β1~1)
(71)
(72)
ψ£(x)一(書)一μF(1+μ)[~1}毘卿)(73)
で表される.ただし,z=冗一冗oであり,Bessel関数
綱一(着鳳諾黙) (74)
を用いている.接続するために必要な情報は冗→掬一〇
の極限における解の挙動であり,今の場合は
ψ1!(x)㏄lzr1!2一μ
ψ£(%)㏄12r1〆2+μ
(75)
(76)
である.ここで,姥(冗)は二乗可積分でないので「大きい
解」,輔(κ)は二乗可積分なので「小さい解」だとわかる.
未定係数姥とぺについては,境界条件ψ(0)=0より,両
者の間の比だけが求まる.
∠一1一豊一ψ£(o)
L6£ ψセ(o)
一一(書) F(㍑牝(農1)(77)
この』ジは歴史的な意味で一1をつけているが,これは二
乗可積分な解に対する二乗可積分でない解の割合であ
り,接続データと呼ばれる.Newcomb問題を解くとい
うことは,要は境界値間題Nψ=0を解いて,接続データ
を求めることに帰着される.
また,右側の解(x>%o)についても同様に接続データ
が存在する.外部領域を解いた結果を整理すると,以下
のようになる.
卿)一/紗)+姥α)
卿)一臨α)+嬬α)
(ズく劣o)
(卑>κG)
(%<πo)
(%>πo)
一般解:ψ(冗)=OI、ψL(%)+6RψR(冗)
(78)
(79)
(80)
ここで行なったことは別の見方をすれば,境界点κ=0
から境界条件を満たす解で出発し,確定特異点x=掬
まで解析接続したときの,小さい解と大きい解の比を求
めたと解釈できる[12コ.こう考えると,有理面が複数あ
る場合でも,境界点から確定特異点へ,確定特異点から
確定特異点へと次々に解析接続を行うことによって,接
続データを求めることができる.
次にNewcomb間題に随伴する固有値問題というもの
919
Jouma夏of Plasma an(l Fusion Research VoL78,No.9 September2002
を導入する[13,14].Newcomb方程式ノ〉ψ=0は同次方
程式であるので,通常は二乗可積分な解はもたず,確定
特異点のまわりで二乗可積分でない成分が含まれる.し
かし,これがたまたま二乗可積分な自明でない解をもつ
ことがあり(刀ガ=0),このときは臨界安定状態と解釈
される.なぜそう言えるのかを理解するために,New-
comb方程式に随伴する固有値問題
ノ〉ψ(冗)=一λρ(%)9(%)
ρ(π)一(炉劣。)2ρ。,ρ。>0
(81)
(82)
を考える.ここで,確定特異点でゼロになる2次関数
ρ(冗)を用いたのは,数学的には重み関数を意味する.つ
まり,関数空間における内積を
γ,λo
、
、
、
、
、
、
、
、
γ
、β,, \
、
、、
λo、、
β
(ξζ)一垢1ξ(冗)ζ(冗)ρ(冗)砒(83)
Fig.5 βcristhezeropointofbothγandλo.
で定義する.さらに,双線形形式
騰ζ)一五1←器一%ζ)砒 (84)
を考える(これは理想MHDのポテンシャルエネルギー
に対応する).随伴固有値問題において,固有値λに対応
する固有関数をξλとすると,λ=W(ξλ,ξλ)より,λは
ちょうど仮想変位ξλによるエネルギー変化に相当し,負
のλが存在することは不安定であることを意味してい
る.ちなみに,この固有値間題は数学的にSturm-
Liouville型[1]に分類され,固有値λはすべて離散固有
値で,最小固有値λoが存在する.また,異なる固有値に
属する固有関数ξ,ζが互いに直交することも知られてい
る((ξ,ζ)=O).
このような随伴固有値問題を考える利点は大きい.も
との固有値間題と随伴固有値問題を比較してみる.
毒{[γ2+∫(κ)]幕}諏β)ψ(%)一・
計(x)盤}+[vα;β)+λρα)1ρα)一・
(85)
(86)
まず,随伴固有値問題の最小固有値λoの符合が正から負
へ変わる時のβの値が,もとの固有値間題に対する臨界
ベータ値β,,を与えている(Fig.5).さらに,もとの固有
値問題を解くのは困難であるのに対し,随伴固有値間題
の最小固有値は数値的に容易に求まる.さらに,前にも
述べたγのβ依存性を調べるのにも役立つ.ポテンシャ
ルU(絹β)がβに関して滑らかな関数とすると,最小固
有値λ0はβの正則関数であることが期待でき,β。,近傍
で
λo=oβ(β一βcr), 6β<O (87)
と近似できる.後は,γとλoの関係を求めたいわけだが,
それは内部層方程式の解と接続することによって決ま
る.
内部層方程式は物理モデルによって敏感に形を変える
が,理想MHDに限れば現在までに二つしか提案されて
いない.一つは圧縮性を無視したゼロ・ベータモデル
で,
蓋[(1+z・)糾Pψ一・
という比較的簡単な方程式である.
デルで,
(88)
もう一つは圧縮性モ
器[(1+z・)讐HP+(、+無釦・]ψ一・(89)
であり,β,は比熱比をいれた圧力と磁場の比である.ち
なみに,内部層方程式に現れる物理量はすべて有理面に
おける値(定数)を用いればよい.これらの解は一般的
に,
9(~)=6eψe(Z)+6()ψ,)(Z) (90)
のような,偶関数ψ,(一Z)=ψ。(~)と奇関数ψ。(一2)=
一ψ、、(Z)の線形結合で表せる.どちらのモデルを採用し
920
Lecture Note Singular Point ARalysis S.Tokuda
たにせよ,接続に関わるZ→・・の極限では,内部層方程
式はNewcomb方程式に近づくので,先程のFrobenius
解と同様な
ψe(2)~4nメー1/2一μ+2-1/2+μ
ψ()(2)~4監㍉()Z-1/2一μ+2-1/2+μ
(91)
(92)
という振舞いを示す(ズ1〆2+μは二乗非可積分,ズ1/2ツ
は二乗可積分).つまり,内部層間題とは内部領域の接続
データ4、,,.,4、,,。を求めることに帰着される.
それでは実際に接続を行なう[15].外部のNewcomb
方程式は左側の解と右側の解を用いて,
ψ(冗)=OLψL(劣)+ORψR(冗)
内部層方程式は偶関数解と奇関数解を用いて,
ψ(9)=6eψe(2)+6。ψ。(Z)
(93)
(94)
と解ける.手続きとしては,Z→一・・での内部の解と
冗→κo-0での外部の解を接続し,z→+・・での内部の
解と劣→κ〇+Oでの外部の解を接続すればよい.この結
果,係数CR,6L,Ce,C・に対する4つの一次方程式を得
る.この連立一次方程式が自明でない解をもつ条件か
ら,いわゆる分散関係式が得られる,結果だけ示すと,
γ一伝転) ) (95)
である.ここでλGは負なので,4.,,+4i,、,。<0が成立す
ることが必要である.実際に理想MHDの内部層方程式
を解くと,数値計算の結果はこの条件を常に満たしてい
る.しかし,解析的な証明は,まだ,できておらず,今
後の課題である.さて,これによってγとあの関係が求
まったので,かねてからの目的であった成長率γのβ
依存性は,
γ㏄(β一βc,)1/(2μ) (96)
は,加=Oの解を二乗可積分な関数X(z)と二乗可積分
でない関数Y(Z)の和として,
9(z)=X(9)+y(z) (99)
で表されるときに,}7(z)を解析的に与えて,X(2)に関
する境界値問題
五X=一Ly (100)
に変換する.これは二乗可積分な間題なので,有限要素
法なり差分法なりで数値的に解くことができる.境界条
件は,~→・・でX(~)~4、,z剛一1であることがわかって
いるので,これを満たすような条件を与えなければなら
ない.しかし,ここでは,数値計算の都合上,計算領域
を一2R<2く2Rに限定し,十分大きな2=娠において,
(L¥ レ+1一= Xd2 zR
(101)
という条件を課する.次に,内部層問題で我々が求めた
いのは接続データであるので,X(~)から』i,,を抽出しな
ければならない.その方法の一つは,X(之)の漸近形か
ら評価する方法で,もとの方程式は
澱一嬢μ一1(・+象+舞+…)(102)
という振る舞いをすることがわかっているので,数値計
算結果の比をとって
_X(~R)411
XR(103)
のように求める.これは2=娠という点だけにおけ
る,ゼロに近いもの同士の比をとるので,あまり精度の
よいものではない.そこで,もう一つの方法はGreen
の公式を用いたもので,全領域の積分が境界値によって
決まるという性質を利用して,
と求まる.
3.3 理想MHD内部層問題の数値解法 内部層問題
P[綱一五二[y(α)一x(酬dg
14、1=一 P[X,}/1 2(2レ+1)
(104)
Lψ一器[(1+22)糾Pψ一・
1Z)=レ(レ+1),レ>一一
2
(99)
(98)
(105〉
のように求める[16].どちらの方法が収束性が良いか
は,状況によって異なるが,2次元のNewcomb間題で
はGreenの公式の方法しか使えない.
の数値解法としては応答法[16,1]が用いられる.これ
921
Joumal ofP圭asma and Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002
3.4Newcomb問題の数値解法 Newcomb間題の方も同じく応答法が使われるが,若
干ややこしくなる[13,14].Newcomb方程式の解
ψL(κ)を,臨界安定から少しずれたλoに対応する固有関
数ξLO(κ)を用いて,
ハ ψL(x)一ξL。(冗)+λ。[ηL(κ)+ΩLξL(%)] (106)
へひのように表現する.ここで,ξム(%)は二乗可積分でない
Frobenius級数であり,すでに与えられているとする.
これによって,二乗可積分な部分死(κ)に対する方程式
は
へ 砺L=ρξLO一ΩL腰L
ηL(0)=η1.(1)=0
(107)
(108)
となり,これを数値解法で解く.具体的にはこれを変分
形式で表して,確定特異点を自然境界条件とした有限要
素法を用いる.
しかし,Fig.6のような現実に近いトーラス配位の安
定解析を行なうためには(7,θ)の二次元で解かなければ
ならない.ここではポロイダル角θをフーリエ展開に
よって
ぴξ(角θ)一Σξ、(7)exp(i1θ)
1=一ル1
のように離散化するが,互いに独立ではないので,
ξ(7)=[ξ一“(7),…,ξM(7)γ
(109)
(110)
として,すべての変数を同時に解かなければならな
い.2次元のNewcomb方程式は
腰一一諺(乙幕)一番(腔)+Mll+κξ一・
(111)
Q.4
0,3
0.2
O.1
Z O一〇。1
・0,2
一〇.3
一〇、4
(a)
’丁皆川響糟 ……醒劉ぎビ川γ雪へPワ傑「 i l
襟夢 華
0・60・7α80・9ポ」1・21・3t4
Fig.6 Toroidal configuration used in the MARG2D code.
のように表され,有理面筋(解=切(7,。))における境界
条件はξ,,,に対しては自然境界条件,ξ1(伊別)に対し
ては連続条件とする.このような拡張をすることで1次
元の場合と同様な方法が適用できる.
これらの手法を用いたMARG2Dの結果と従来のERATOJ(ERATOコード[11]の原研改良版)の結果を
Fig.7に示す.ERATOJでは不安定状態(λ<o)のみ同
定できるため,十分に不安定なβ」の値から固有値を求
め,順次,β」の低い値へ外挿して,β・・を推測していた。
一方,MARG2Dでは,不安定状態も安定状態(λ>0)も
同定できるので,β,,が綺麗に求まっている.また,ERA-
TOJで行っていたβ,,の推測も真の値に近かったことが,
初めて確認できた.
という形になるが,L,M,κといった行列はここには書
ききれない程,複雑な式になる.この方程式の特徴とし
ては,確定特異点となる有理面が複数存在しており,
2M+1個の一次独立な解のうち,「大きい解」と「小さい
解」が一つずつ存在し,残りはすべて正則解であること
が知られている.2次元Newcomb方程式に対する随伴
固有値問題は
Nξ=一λRξ
齢(響一%)2
(112)
(113)
3、5外部モード問題への応用 ここでは,トーラスの外部境界(7=α)において非同
次な境界条件が与えられた場合を考える.変分原理のあ
まり知られていない性質[17]として,Newcomb方程式
を満たす関数の集合をS={ξ瞬ξ=0}とすると,
ξ(7),η(7)∈Sならば作用積分は
w[ξηH購1衡>+音〈◎ILl讐>
+去く讐1乙の(・14)
922
Lecture Note
dξ。 ξξα=ξ(α)rr一薔(α)・etc・
1怖一喜(M+納
Singular Point Ana王ysis
(115)
(116)
のように境界値での値のみによって決まるという性質が
ある.
ポロイダルモード数(1=0,±1,…,±ハ4)に対して,
▽2(α)=0(1ヂ吻),ylll2(α)=1
という境界条件を与えたときの解
(117)
1.5
λ
0
一1.5
1『1【 し掴ARG2D
l l 三く ゆき
}
l l $
1
コ1 ”
ERATOJ
》
S.Toku(1a
61σ5λ
41σ5
210魑5
.0
一21σ5
一41α5
yln(粥)=1理転(7),…,瑠(7)γ(窺二〇,±1,…7±M)
(118)
は基底関数である.すなわち,任意の自由境界モードに
対する一般解は,ある係数物を用いて,
ξ(7)一Σ物y籾(7)
7n
(119)
という線形結合で表される.先程の変分原理の性質よ
り,変位ξによるポテンシャルエネルギーの変化W[ξ,ξ]は表面の変位ベクトル劣=(荒M,…,勘ソで表さ
れるため,
叫ξ,ξ1=倒川め (120)
であり,行列ハは基底関数{y刀2(7)}によって与えられ
る.そして,沌の最小固有値が負であれば,外部キンク
モードは不安定である.
このような基底関数の計算方法においても,やはり応
答法が使える.基底関数を
y刀~(7)=Xア72(7)+Hフ77(7) (121)
のように表し,π”~(7)に非同次境界条件を満たすベク
トル関数を与えれば,X’π(7)は通常の同次境界値問題
〈収177(り=一く四η7(γ),X刀~(α)=0 (122)
の解として解くことができる.
しかし,このような手法で外部キンクモードを解くζ
とにあまり利点はないが(非同次境界の安定性を解けば
それで済むため),抵抗性壁モードの安定性解析におい
てフィードバック制御を行なうような場合は,唯一の有
効な解析手法となる[18].
3.6 抵抗性MHD内部層問題 理想MHD的にプラズマが安定であるということは,
0 0.2 0.4 0.6 0、8 1
β」
一61α5
1.2
Fig.7 Graphsofλo by MARG2Dand ERATOJ.Thepointwhere ノしo crosses theβJ line isβcr。
スペクトルの複素平面の不安定側に固有値が存在しない
ことである.非理想MHD効果によって不安定固有値γ
が現れたとする.この時,理想MHDの安定スペクトル
であるアルヴェン周波数ωAに比べて,γの絶対値が十分
小さい(γ《のA)と仮定すれば,これまでと同様にプラズ
マを外部領域と内部層に分けることができる.つまり,
外部領域は理想MHD(Newcomb方程式)で記述され,内
部層では非理想効果が支配的になるので,要はこれらの
接続問題に帰着される.
抵抗性MHD内部層方程式で最も簡単な(圧縮性のな
い)モデルは
d2ψ _
γdz2=z二
d2 d2εγE=一評(~ψ)+d22
(123)
(124)
であり,ここでψは静電ポテンシャル,8は磁力線に平
行な電場である.無限遠(Z→・・)における境界条件は
Newcomb方程式の解から与えられ,
i(z)=0
ψ(2)㏄!+立
2
(125)
(126)
であり,ここでは6が接続データに相当する.これに対
しては応答法が適用できるが,解析的に固有値γに対す
る6(γ)は
ビ1(γ弓蕃1畿ll斜 (127)
923
Joumal ofPlasma an(l Fusion Research Vo1.78,No.9 September2002
と求めることができる.
また,γを時問微分∂/∂渉に戻し,境界条件を
卿)一ψ・・(オ)(1+妾)(128)
とおくことで,初期値問題を数値的に解くこともできる
[19].これは強制磁気再結合のように,外部境界が時間
的に変動する場合に有効な解析手法となる.
3.7 まとめ
磁場閉じ込めにおけるプラズマのMHD不安定性と
は,スペクトルの一部が,安定側にある連続スペクトル
から不安定側へ「こぼれ落ちる」ことと捉えることがで
きる.不安定側にこぼれ落ちたスペクトルは点スペクト
ル(固有値)として観測される.漸近接続法はこのよう
な観点からの安定性解析の理論的な技法であり,理想
MHDベータ値限界の解析を例にして,この手法を紹介
した.MHD安定性理論における漸近接続法では:New-
comb方程式と内部層方程式が活躍し,したがって,これ
らの方程式の数値計算法も議論した.
連続スペクトルに対する摂動として,方程式のエル
ミート性を壊さない摂動(ベータ値限界の場合)と壊す
摂動一特異摂動と呼ばれる一とがある.電気抵抗が重要
な役割を果す抵抗性壁モードや抵抗性MHDモードは後
者の場合である.これについては簡単に触れるにとど
まった.エルミート性を壊す摂動の他の例はプラズマ回
転である.このような場合にも漸近接続法は有効であろ
うと思われる.
この方法が関心をもたれるのは,数学的な面白さだけ
でなく,トカマクの安定性解析に役立つ実用的な方法と
なりえるからである.しかしながら,漸近接続法にもと
づく実際的な解析はまだまだ不十分であり,今後の一層
の発展が期待される.
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=} 心小=ンぶ/ぶ際記ひ=ひ號畷小P層ぶる心イ窟〉瞭く冶心ひ離卒繋小物、財ぶ箪
き1漁稔由罷 !1馨日本原子力研究所主任_大阪大学工1
縄論翻難毒論灘蕪鼎灘笛弩/の私.作.た,諜欝懲雛締幽輸1妓週末は,東海村村民から都民に変わつて・ひたすら者吋
懇鍵難璽黛懸___、____、_藩
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