3.ドライエッチング表面解析:原子スケールアプローチ...atomic scale...

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3.1 はじめに 半導体デバイスの超微細化の進展は現在もとどまること がない.例えばゲート絶縁膜の厚さ方向の構造のように, デバイスの構造の一部においては,すでに原子の大きさと 同程度のものが用いられている[1].デバイスの横方向の 大きさについても,近い将来,10ナノメートル(nm)程度 の大きさの構造が導入されることは間違いなく,このよう なデバイスの構造を製造するプロセスでは,原子スケール の加工精度が要求される.また,デバイスの微細化に伴い, 製造過程で多用されるプラズマプロセスにおいてイオン衝 撃により導入される基板表面のダメージが大きな問題とし て取り上げられている[2].以前は問題にならなかったナ ノメートル程度の深さ方向のダメージでも,デバイス構造 そのものが非常に小さいため,デバイスの性能に直接的に 影響するようになってきたのである.このため,最近のプ ラズマプロセスには,原子レベルで制御可能な高い加工精 度とともに,イオン入射ダメージの低さが強く求められて いる. こうした背景から,プラズマプロセス,特にエッチング プロセス(反応性イオンエッチングプロセス:RIE)におい て,プラズマから入射する各種粒子と基板表面の原子・分 子との間でどのような化学反応が進行しているかを,原子 レベルで理解し,その理解に基づいて,原子レベルの制御 が可能なプロセスの開発を行おうという機運が高まってい る. さて,このような基板表面の化学反応は,入射イオンの 運動エネルギーからエネルギーを得て進行するものが多 い.そのため,これら非熱平衡状態の反応は,通常の熱平 衡状態における化学反応とはきわめて異なる.このような 反応を解析する手法として,本章では,分子動力学(MD) 法による数値シミュレーション[3,4]と,質量分離イオン ビームを用いた低エネルギーイオンの基板表面への照射実 験[5]について,その概要を論じる.特に筆者らの研究を 実例として挙げ,MD シミュレーションによるビーム表面 相互作用の研究はどのようなものであるか,また,イオン ビーム照射実験でどのようなことが解明できるかなど,基 礎的な内容に話を絞って,この分野の最近の動向について 紹介する. 3.2 分子動力学(MD)シミュレーションの概要 MDシミュレーション[6‐8]では,個々の粒子(原子)の 運動の時間発展を追うことによって,系の様々な性質を解 析する.例えばプラズマ表面相互作用に関する応用であれ ば,多数の原子を用いて現実的なターゲット物質(基板)を 構成し,あるエネルギーと入射角を持った粒子(イオン,中 性原子,分子,クラスターなど)をその表面に衝突させ,そ の後のすべての粒子の運動を観測することによって,入射 粒子の進入の深さや表面から飛び出す粒子の数や種類,そ れらの持つエネルギー,飛散する方向等を測定する.また, 粒子の入射位置をランダムに選んでこのシミュレーション を繰り返して統計平均を取れば,スパッタリングイール ド,付着率など実験で観測される物理量が決定できる. 本章では,古典的 MD シミュレーションと呼ばれるもの だけを議論する.古典的 MD シミュレーションとは,原子 間の力を原子の位置の関数として決めてしまい(モデル化 し),それをもとに,すべての原子の運動方程式を解くシ ミュレーションである.原子間の力は保存力で与えられる として,原子間ポテンシャルモデルを導入する.(実際の 小特集 ドライエッチングの科学と技術の新局面 3.ドライエッチング表面解析:原子スケールアプローチ 浜口智志 大阪大学大学院工学研究科原子分子イオン制御理工学センター (原稿受付:2009年2月19日) 半導体デバイスの超微細化が極限まで進みつつある現在,半導体デバイスのパフォーマンスを最適化するた めには,製造プロセスにおいて,デバイスおよび周辺回路の原子レベルでの構造制御が必要である.特に,プラ ズマプロセスに関しては,プラズマから入射する各種粒子(イオン,中性ラジカル,電子,光子)と基板物質表 面の相互作用を原子レベルで解析することによって,こうした構造制御の技術を系統的に確立することが可能と なると考えられる.本章では,そのような解析手法として,古典的分子動力学(MD)法による数値シミュレーショ ンと質量分離イオンビーム照射実験について概説する. Keywords: reactive ion etching (RIE), plasma enhanced chemical vapor deposition (PECVD), molecular dynamics (MD) simulation, sputtering yield, ion beam, plasma-surface interaction 3. Atomic Scale Assessment of Surface Reactions in Dry Etching Processing HAMAGUCHI Satoshi author’s e-mail: [email protected] J.PlasmaFusionRes.Vol.85,No.4(2009)177‐184 !2009 The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research 177

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Page 1: 3.ドライエッチング表面解析:原子スケールアプローチ...Atomic Scale Assessment of Surface Reactions in Dry Etching Processing HAMAGUCHI Satoshi author’s e-mail:

3.1 はじめに半導体デバイスの超微細化の進展は現在もとどまること

がない.例えばゲート絶縁膜の厚さ方向の構造のように,

デバイスの構造の一部においては,すでに原子の大きさと

同程度のものが用いられている[1].デバイスの横方向の

大きさについても,近い将来,10ナノメートル(nm)程度

の大きさの構造が導入されることは間違いなく,このよう

なデバイスの構造を製造するプロセスでは,原子スケール

の加工精度が要求される.また,デバイスの微細化に伴い,

製造過程で多用されるプラズマプロセスにおいてイオン衝

撃により導入される基板表面のダメージが大きな問題とし

て取り上げられている[2].以前は問題にならなかったナ

ノメートル程度の深さ方向のダメージでも,デバイス構造

そのものが非常に小さいため,デバイスの性能に直接的に

影響するようになってきたのである.このため,最近のプ

ラズマプロセスには,原子レベルで制御可能な高い加工精

度とともに,イオン入射ダメージの低さが強く求められて

いる.

こうした背景から,プラズマプロセス,特にエッチング

プロセス(反応性イオンエッチングプロセス:RIE)におい

て,プラズマから入射する各種粒子と基板表面の原子・分

子との間でどのような化学反応が進行しているかを,原子

レベルで理解し,その理解に基づいて,原子レベルの制御

が可能なプロセスの開発を行おうという機運が高まってい

る.

さて,このような基板表面の化学反応は,入射イオンの

運動エネルギーからエネルギーを得て進行するものが多

い.そのため,これら非熱平衡状態の反応は,通常の熱平

衡状態における化学反応とはきわめて異なる.このような

反応を解析する手法として,本章では,分子動力学(MD)

法による数値シミュレーション[3,4]と,質量分離イオン

ビームを用いた低エネルギーイオンの基板表面への照射実

験[5]について,その概要を論じる.特に筆者らの研究を

実例として挙げ,MDシミュレーションによるビーム表面

相互作用の研究はどのようなものであるか,また,イオン

ビーム照射実験でどのようなことが解明できるかなど,基

礎的な内容に話を絞って,この分野の最近の動向について

紹介する.

3.2 分子動力学(MD)シミュレーションの概要MDシミュレーション[6‐8]では,個々の粒子(原子)の

運動の時間発展を追うことによって,系の様々な性質を解

析する.例えばプラズマ表面相互作用に関する応用であれ

ば,多数の原子を用いて現実的なターゲット物質(基板)を

構成し,あるエネルギーと入射角を持った粒子(イオン,中

性原子,分子,クラスターなど)をその表面に衝突させ,そ

の後のすべての粒子の運動を観測することによって,入射

粒子の進入の深さや表面から飛び出す粒子の数や種類,そ

れらの持つエネルギー,飛散する方向等を測定する.また,

粒子の入射位置をランダムに選んでこのシミュレーション

を繰り返して統計平均を取れば,スパッタリングイール

ド,付着率など実験で観測される物理量が決定できる.

本章では,古典的MDシミュレーションと呼ばれるもの

だけを議論する.古典的MDシミュレーションとは,原子

間の力を原子の位置の関数として決めてしまい(モデル化

し),それをもとに,すべての原子の運動方程式を解くシ

ミュレーションである.原子間の力は保存力で与えられる

として,原子間ポテンシャルモデルを導入する.(実際の

小特集 ドライエッチングの科学と技術の新局面

3.ドライエッチング表面解析:原子スケールアプローチ

浜口智志大阪大学大学院工学研究科原子分子イオン制御理工学センター

(原稿受付:2009年2月19日)

半導体デバイスの超微細化が極限まで進みつつある現在,半導体デバイスのパフォーマンスを最適化するためには,製造プロセスにおいて,デバイスおよび周辺回路の原子レベルでの構造制御が必要である.特に,プラズマプロセスに関しては,プラズマから入射する各種粒子(イオン,中性ラジカル,電子,光子)と基板物質表面の相互作用を原子レベルで解析することによって,こうした構造制御の技術を系統的に確立することが可能となると考えられる.本章では,そのような解析手法として,古典的分子動力学(MD)法による数値シミュレーションと質量分離イオンビーム照射実験について概説する.

Keywords:reactive ion etching (RIE), plasma enhanced chemical vapor deposition (PECVD), molecular dynamics (MD) simulation,

sputtering yield, ion beam, plasma-surface interaction

3. Atomic Scale Assessment of Surface Reactions in Dry Etching Processing

HAMAGUCHI Satoshi author’s e-mail: [email protected]

J. Plasma Fusion Res. Vol.85, No.4 (2009)177‐184

�2009 The Japan Society of PlasmaScience and Nuclear Fusion Research

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シミュレーションコード内では,力を高精度で計算するた

めに,ポテンシャル関数を数値微分するのではなく,力の

モデル関数形を直接導入する.)

一般に�個の原子があり,�番目の原子の位置座標が

��で与えられるとすると,その系の全ポテンシャルエネル

ギー������������は次のようなクラスター展開で記述で

きる.

������������������

����

�����������

������

������

������������������������

���������������

ここで,����

����������を二体ポテンシャル,������

�������������

を三体ポテンシャル等とよぶ.また下き付添え字は,関数

形が�,�等で指定された原子の種類に依存することを表す.

よく知られている Lennard-Jones ポテンシャルなどは,上

述の第一項(二体ポテンシャル)に対応するポテンシャル

である.一般にすべての多体相互作用を正確に取り入れて

古典的な原子間ポテンシャルを構成することはきわめて難

しい.そこで,通常は,目的に応じて様々な近似関数を用

いて多体相互作用を表す.

具体的な原子間力モデルの説明は,紙面が少ないので,

ここではふれない.古典的MDシミュレーションで用いら

れる原子間力モデルに関する基本的な解説は,例えば,文

献[8]など,いくつかのMDシミュレーションの教科書に

ある.ただし,現状では,多くの原子に関して原子間力モ

デルが作られているわけではない.したがって,興味のあ

る物質に対してプラズマ表面相互作用を古典的MDシミュ

レーションで調べようとすると,まずは原子間力モデルの

構築から始める必要がある場合が多い.

3.3 MDシミュレーション研究の歴史個体への原子やイオンの入射に関してMD法を用いた数

値シミュレーションが行われるようになったのは,計算機

そのものの能力がかなり低かった1960年代からである.お

そらく放射線損傷(radiation damage)に関する最初のMD

シミュレーションは,1960年のGibson,Goland,Milgram,

Vineyard による銅の結晶損傷に関するものであろう[9].

このシミュレーションでは,銅(Cu)原子間の相互作用ポ

テンシャルは,簡単な二体相互作用関数が用いられ,入射

原子の衝撃により,どのように結晶格子上にある原子が移

動するかが調べられた.

入射粒子の衝撃によるスパッタリング(表面から固体内

の原子がはじき出される現象)に関してMDシミュレー

ションを用いて調べたのは,1968年のHarrison,Levy,

Johnson,Effron の,アルゴン(Ar)による Cuのスパッタ

リングイールドを計算したものが最初のようである[10].

Harrison らは,このような物理的スパッタリング(入射原

子が基板の原子と結合しないスパッタリング)現象を,そ

の後もMDシミュレーションを用いて精力的に研究した.

(たとえば,文献[11,12]等)

一方,入射原子が基板原子と結合する化学反応をも取り

扱った古典的MDシミュレーションは,1980年の,Wi-

nograd,Garrison,Harrison によるニッケル(Ni)基板に

対する一酸化炭素分子(CO)入射のシミュレーションが最

初であろう[13].この論文で用いられた原子間ポテンシャ

ルは,やはり単純な二体の関数であるが,この頃よりよう

やく,表面吸着や化学的スパッタリング(反応性イオン

エッチング)などの表面における非平衡化学反応を古典

MDシミュレーションにより解析することが,一つの有効

な解析手法であると認識されるようになった.

面心立方格子や体心立方格子など,金属の取りやすい結

晶構造は二体の原子間力ポテンシャルで比較的よく再現で

きるが,ダイヤモンド構造を取るシリコンや,有機ポリ

マーなど,特定の共有結合に基づく基板原子・分子の構造

を再現するためには,多体相互作用を含む,より複雑な原

子間ポテンシャルが必要である.このような多体相互作用

をもつ古典的な原子間相互作用の最初のモデルは,1984年

にDawと Baskes が開発した原子挿入法(EAM)によるポ

テンシャルモデルである[14].EAMによるモデルポテン

シャルは,最初は金属原子間の相互作用として開発され,

現在も,金属原子の相互作用を表すのに広く使われている

が,1990年代初めには,非金属の原子間相互作用を記述で

きるように改良された[15].同じ頃,Stillinger とWeber

は,原子間相互作用をクラスター展開で表し,その三体ま

でのポテンシャルで近似する手法で,いわゆる Stillinger-

Weber ポテンシャルと今日呼ばれるポテンシャルモデル

を提案した[16‐18].また,1988年には,Tersoff が異なる

関数形で多体相互作用を表すポテンシャル関数を提案した

[19‐21].

このように1980年代中ごろに様々な簡便な原子間ポテン

シャル関数モデルが提案された.一方,1990年代に入って

コンピュータの能力向上と低価格化が急速に進んだため,

計算コストが急速に下がった.こうした事情が重なったた

め,1990年代から,様々な基板に対するエッチングや堆積

のMDシミュレーションが広く行われるようになった.も

ちろん,現在でも半導体やその他のプロセスで用いられる

すべての材料に対するモデルポテンシャルがそろっている

わけではない.しかしながら,1980年代までに開発された

原子間ポテンシャル関数だけを用いても,半導体やその他

の分野で重要視される様々な基板材料にするエッチングや

堆積プロセスに関する表面反応に関してMDシミュレー

ションを用いて調べるべき研究課題は非常に多く,1980年

代後半から様々なMDシミュレーションが行われた.

半導体のエッチングシミュレーションに話を限ると,1989年

に,Stansfield,Broomfield,Clary[22]が Stillinger-Weber

ポテンシャルを用いてArによるシリコン(Si)基板のス

パッタリングのシミュレーションを行ったのが,多体ポテ

ンシャルを用いた最初のスパッタリングシミュレーション

だと思われる.同じ年に,Smith,Harrison,Garrison が

Tersoff ポテンシャルを用いて同様のシミュレーションを

行っている[23].また,反応性イオンスパッタリング(す

なわちRIE)のMDシミュレーションとしては,1990年の

Schoolcraft と Garrsion[24]の低エネルギーフッ素(F)原

子と Si の反応,Feil,Dielmeman,Garrison[25]による 200

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eV Ar ビームによる,塩素(Cl)終端された Si 表面のエッ

チングのシミュレーションが,最も初期のものである.

ところで,1980年代から1990年初頭にかけて,ビーム表

面相互作用を調べるための数々のビーム照射実験が行われ

た.当時の実験の大半は,塩素ガスに暴露された基板表面

に対するArビーム照射実験[26‐31]であるが,一方,質量

分離型のイオンビーム装置を用いた Zalm[32]の希ガスイ

オン(Ne+,Ar+,Kr+,Xe+)ビーム照射実験や,Tachi と

Okudaira[33]によるハロゲンイオン(F+,Cl+,Br+)ビー

ムによる照射実験もある.エネルギーが既知のビーム表面

相互作用の実験結果は,MDシミュレーションによるエッ

チングシミュレーションの結果と直接比較することがで

き,また,プラズマと表面の複雑な相互作用を,いくつか

の重要な要素反応にわけて議論・理解できる.そのため,

MDシミュレーションとビーム照射実験それぞれの重要性

が90年代に入って,より高まった.

SiのClやFによるエッチングのMDシミュレーション研究

は,1995年ごろから,Barone と Graves[34,35],Feil[36],

Athavale と Economou[37],Hanson,Votor,Kress[38],

Helmer と Graves[39,40],Kubota,Economou,Plimpton

[41]らによって精力的に進められた.一方,Cl や Fによる

Si と SiO2の選択性エッチングに関しては,Ohta と Hama-

guchi[42,43]が,Si-O-F(Cl)系の新たなポテンシャルモデ

ルを作ってMDシミュレーションを行い,選択性(selectiv-

ity)を評価した.その後,新しいポテンシャルの開発に伴

い,Si および SiO2,SiOCHのフロロカーボン系ビームによ

るMDシミュレーションも行われている[2,44‐56].

一方,有機ポリマー系材料に対するエッチングや堆積の

MDシミュレーションも,1990年代から様々な研究が行わ

れているが,ここでは,その詳細は省略する.たとえば,炭

化水素系材料に関する90年代半ばまでの成果については,

解説[57]等に紹介されている.

3.4 MDシミュレーションの実例この後の章では,筆者とその共同研究者が行った有機ポ

リマーのエッチングシミュレーションの例を用いて,MD

シミュレーションをドライエッチングプロセスに応用する

方法を紹介する.

まず基板材料を構成するために,適当な数(通常数千個

程度)のシミュレーション粒子(原子)を適当な形状に並

べる.図1は,フェニル環が直線状につながった有機ポリ

マーであるポリパラフェニレン(PPP)の結晶薄膜の例であ

る[58].このシミュレーションでは,原子間ポテンシャル

関数として,共有結合に関してはBrenner ポテンシャル

[59]を用い,また,弱いが比較的長距離まで及ぶVan der

Waals 力に関しては,Lennard-Jones 型のポテンシャルを

用いた.これら原子間ポテンシャルモデルの詳細は,文献

[58]を参照のこと.モデル基板に対しては,水平方向に周

期境界条件を課すことにより,無限に広い基板表面近傍の

一部をモデル化している.適当な温度(例えば室温)でこ

の基板を熱平衡状態に導き,そこに,ある指定した運動エ

ネルギーを持つ原子やラジカル(原子クラスター)などを

上部から表面に向けて,ある指定した角度で入射する.入

射粒子が表面と衝突する位置は,数値計算上は,乱数を用

いてランダムに決める.

原子あるいは原子クラスターを入射後,全粒子の全エネ

ルギーは保存するとして(システムが孤立系であるとみな

して)各粒子の運動の時間発展を約1ピコ秒(ps)から数

ps 程度の間計算する.その間,入射粒子の運動エネルギー

の大半が,系の熱エネルギーとなるため,大半の粒子の運

動エネルギーは大きく増大する.このため,全エネルギー

一定の条件での計算を1数ps行った後,比較的短時間で系

の温度を最初の基板温度まで下げて,基板が再びその温度

で熱平衡となるよう導く.このように熱平衡になった基板

に対して,次の粒子を入射するというプロセスを繰り返

す.入射原子と基板原子の衝突により,表面から飛び出す

粒子の数,種類,エネルギー,角度などの情報を集め,数

多くの衝突を繰り返してそれらの平均を取る.全体とし

て,入射した粒子より多くの粒子が基板から放出されれば

エッチングとなり,少なければ堆積となる.

ところで,本章において紹介するMDシミュレーション

では,高い運動エネルギーをもつ原子(原子クラスター)に

対しても,原子間相互作用に関しては,上述のポテンシャ

ル関数を用いる.したがって,正確にいうと,それらの原

子(原子クラスター)は中性原子(中世の原子クラスター)

であるが,実際のプラズマでは,そのように高いエネル

ギーをもつものはシース電場で加速されるイオンだけなの

で,ここでは,便宜上,これらの高いエネルギーをもつ粒

子を「イオン」とみなす.しかし,当然ながら,電荷もな

く,また,イオンと基板原子の相互作用は,気相中の中性

原子と基板原子との相互作用とは一般に異なるので,この

ように,本来イオンでないものをイオンと同じふるまいを

するとみなすことができるかどうかは,実は,もっと厳密

図1 300Kで熱平衡状態にあるポリパラフェニレン(PPP)の結晶薄膜モデル.MDシミュレーションの基板として用いた.炭素原子,水素原子は白と黒の球で,二つの炭素原子間の結合は白い棒,炭素水素間の結合は黒い棒で表されている[58,61,62].

Special Topic Article 3. Atomic Scale Assessment of Surface Reactions in Dry Etching Processing S. Hamaguchi

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に調べる必要がある.しかしながら,簡単のため,ここで

は,入射イオンも入射の直前あるは直後に中性化すると仮

定して,イオンも中性原子も,高速で入射する場合の効果

はほぼ同じと仮定する.

図2は,図1のようなPPPの基板に,50 eVの(a)炭素原

子C,(b)水素分子H2,(c)メタン分子CH4を,十分な

量,垂直入射したあとの表面状態を表している[58].C原

子入射の場合は,入射されたC原子の大半がそのまま堆積

しているが,水素分子入射の場合は,入射の際に水素分子

が壊れて水素原子(H)となり,フェニル環の π結合などを切って,表面をきわめて「粗く」する.水素は,このよう

に化学的作用で基板物質の性質を変化させるが,質量が小

さいため衝突の運動量が小さく,したがって,この入射エ

ネルギー程度では,ポリマー鎖を切る(エッチングする)ま

でには至らない.一方,メタン入射の場合は,入射の瞬間

にメタンの水素の結合が切れ,基板の炭素と結合して,水

素入射と同様な表面反応が起こると同時に,重い炭素の入

射による運動量移行が起こり,そのため,表面のエッチン

グが進む.まさにこれがRIE である.このような現象

が,MDシミュレーションを用いると直接可視化できる.

通常,(ある原子種Aに関する)スパッタリングイールド

とは,1回の入射原子あるいは原子クラスターあたり,そ

の原子種Aが表面から出てくる平均的数のことである.た

とえば,原子クラスター(分子)であるCH4が一つ表面に

入射して,そのなかの炭素原子Cが表面で跳ね返されるだ

けで,基板の炭素原子Cが脱離しなければ,炭素原子C

に関するスパッタリングイールドは1であり,このとき,

炭素に関して言えば,エッチングも堆積も起こらない.こ

こでは,このように定義した原子種Aに関するスパッタリ

ングイールドから,一回の入射で基板に供給される原子種

Aの数を引いたものを「正味侵食率(net erosion yield)」と

呼ぶことにする.正味侵食率が正であれば,Aはエッチン

グされたことになり,逆に負であれば,堆積したことなる.

図3は,CH4ビームを PPP基板に照射するMDシミュ

レーションから得られた,C原子とH原子に対する正味侵

食率を,CH4の注入量(単位面積あたりに入射されたCH4分

子の数)の関数としてプロットしたものである.(a)(b)

(c)いずれも,基板温度 300 K,CH4分子の入射エネルギー

を 50 eVと設定し,計算上のパラメータ(入射間隔,冷却

時間等)も基本的にまったく同じものを用いたが,唯一異

なる条件が,入射粒子が基板表面と衝突するxy面上の位置

を決定する乱数列である.この計算上のパラメータのわず

かな違いによって,正味侵食率(ひいてはイールド)の時

間発展(注入量依存性)は大きく異なることがわかる

[60,61].シリコンのような比較的「固い」構造をもつ基板

のエッチングでは,通常,このようなばらつきはほとんど

起こらない.PPPのような有機ポリマーの場合,表面の構

造変化がきわめて多様であるため,最表面のポリマーのど

の結合が最初に切れるかで,その後に続く表面の構造が大

きく変わり,このような,強い入射位置依存性があると思

われる.

図4は,図3のようなシミュレーションを9つの異なる

乱数列を用いて,図3と同じ物理条件下で行ったMDシ

ミュレーションから得た正味侵食率の平均値をとったもの

である[61].多くのイベントの平均をとることにより,正

味侵食率(イールド)と注入量の関係が比較的滑らかな線

で表現できることがわかる.

半導体の層間絶縁膜で用いられる低誘電率有機ポリマー

のエッチングプロセスでは,実際には,水素と窒素の混合

気体,あるいは,アンモニアから生成したプラズマを用い

図2 MDシミュレーションにより得られた,入射エネルギー50 eVで(a)炭素原子C,(b)水素分子H2(c)メタン分子CH4を注入量2.4×1016

cm-2だけ PPP基板に入射した後の基板の表面状態.基板温度は300Kに保ち,入射角は基板表面に対して垂直.なお,図で z座標は高さ方向を表し,z = 0はシミュレーションに用いた基板モデルの最初の底の位置.(b)と(c)では,シミュレーションの途中で,基板を突き抜ける粒子があったため,シミュレーションの途中で,下から同じ材料の基板を自動的に追加して,シミュレーション中に粒子が下から突きぬけないように,十分な厚さを保ちつつシミュレーションを行った.図中の「ordered PPP」と示された部分は,表面から十分深い位置にあるため,粒子入射によってもこのあたりは影響がほとんどないと仮定して,原子の運動を計算しなかった部分を表す(参考文献[58]より許可を得て転載).

Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.4 April 2009

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る.このようなプロセスでは,水素原子・分子の入射のほ

か,窒化水素系ラジカル(NxHy)が主として基板ポリマー

に入射される.このようなプロセスを想定してNxHyを有

機ポリマーへ入射するMDシミュレーションの結果は文献

[62]に紹介されている.

3.5 質量分離イオンビーム照射実験前節までに述べたMDシミュレーションの結果が正しい

かどうかは,最終的には実験結果と比較して決められるべ

きである.ただし,プラズマを用いてエッチングプロセス

を行うと,様々な種類のイオンや中性ラジカルが基板表面

に同時照射されるので,その結果は,上述のような個別の

ビーム表面相互作用を仮定したシミュレーション結果と直

接比較できない.一方,ほとんど同じような物理的条件下

でのビーム表面相互作用を実験的に調べることのできる質

量分離イオンビーム照射実験は,比較対象の実験として理

想的である.

Tachi らの実験[33]にあるように,反応性イオンを用い

た質量分離ビームの実験は,数は少ないが,1980年代から

行われている.しかし,最近は,半導体の微細化に伴い,低

ダメージのプロセスを行う必要性[2]から,低エネルギー

イオン入射時のビーム表面相互作用の解析に関心が集まっ

ている.図5は筆者らのグループで用いている低エネル

ギー質量分離イオン入射システムの概念図である[5,63].

このシステムでは,フリーマン型イオン源で生成した正イ

オンを約-25 kVで加速し,磁場による質量分離を行った

後に,逆電圧を印加して所要の入射エネルギーになるまで

減速して,基板にビームを照射する(負イオンの場合は,電

場・磁場の極性を逆にする).ビームライン中で荷電交換

反応により生成された高速中性粒子をビーム中から除去す

るため,途中で電場による偏向板(deflector)が設けられて

いる.基板および基板ホルダーをビームラインから外す

と,ビームをその背後にある質量エネルギー分析機に導入

できるため,入射ビームの質量・エネルギー分布が計測で

図3 炭素原子 Cおよび水素原子 Hに対して,スパッタリングイールドからその原子の入射分を引いた正味のイールド(正味侵食率)YC

および YHを注入量の関数として表したもの.MDシミュレーションの結果.各注入量におけるイールドの値は,その前後 4.8×1015

cm-2に対応する注入量での平均をとったもの.ここにある(a)(b)(c)いずれも,まったく同じ物理条件で,図2(c)と同じく,50

eVのメタン分子 CH4を 300 Kの PPPに垂直入射したもの.数値シミュレーションに用いた各種数値パラメータも基本的すべて同じで,唯一の違いは,入射分子の衝突位置を決定する乱数列のみ[61].

図5 質量分離イオンビーム装置の概念図(鳥瞰図)(文献[63]より許可を得て転載).

図4 図3と同様なMDシミュレーションを9つの異なる乱数列でおこなった結果の平均値.正味のイールドYCとYHを注入量の関数としてプロットしたもの(文献[61]より許可を得て転載).

Special Topic Article 3. Atomic Scale Assessment of Surface Reactions in Dry Etching Processing S. Hamaguchi

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きる.このようにして,質の高いビーム(単一種でエネル

ギー分散が小さいビーム)が得られるよう,ビームシステ

ム全体を調整することができる.図5には記入していない

が,筆者らのグループの装置では,イオンビームの他,二

種類の低エネルギー中性分子・ラジカル照射源,紫外線光

源が設置可能で,また,XPSおよび FTIR によるビーム照

射中の膜表面のその場観測,および,表面から脱離する各

種粒子の質量・エネルギー分析が可能なシステムとなって

いる[5].

このようなイオンビーム照射装置を用いて Si,SiO2,Si3N4等の基板のスパッタリングイールドなどを計測した実

験結果は,文献[64‐66]に紹介されている.一方,有機ポリ

マーに対する質量分離イオンビーム照射実験はまだほとん

ど行われていないため,前節までに紹介したMDシミュ

レーションの結果を実験結果と比較するのは将来の課題で

あり,残念ながら,本章では議論できない.金属イオン

ビームに関する実験は,文献[68,69]にある.以下では,反

応性イオンではないが,最近,筆者らのグループが行った

低エネルギーイオンビームによるMgOスパッタリング実

験[63]を,ビーム実験の一例として紹介する.

酸化マグネシウム(MgO)膜は,耐エッチング特性が高

く(エッチングされにくく),また,二次電子放出係数がき

わめて高いため,プラズマディスプレイの放電セル内の保

護膜として広く用いられている.放電セル中には,通常,

NeおよびXeガスが封入されており,これらがプラズマ化

してMgOにイオン衝撃を与えると考えられるが,低エネ

ルギー領域におけるMgOの希ガスイオンに対するスパッ

タリングイールドはほとんど知られていなかった.低エネ

ルギーのイオン照射は,イオンビームが空間電荷により発

散するために,ビーム束(フラックス)を上げるのが難し

い.また,そもそもエッチングイールドがきわめて小さい

ため計測可能な量の物質が基板表面から脱離するまで長時

間ビームを安定して照射することも難しい.こうした理由

により,一般に,低エネルギー領域でのイールド計測はほ

とんど行われていない.

図6は,スパッタ成膜した微結晶状のMgOのNe,Ar,Kr,

Xe ビーム照射によるスパッタリングイールドのエネル

ギー依存性をまとめたものである[63].Heビーム照射の

結果は,ここには掲載していないが文献[70]にあり,これ

らのイールドよりもはるかに小さい.このような物理的ス

パッタリング現象は,少なくとも,高エネルギー照射の条

件下では,二体衝突(binary collision)/カスケード衝突

(collision cascade)の理論[71]に従うと考えられていたが,

その場合,スパッタリングイールドは,入射粒子の質量に

依存することが期待される.しかしながら,ここの実験結

果に示されたように,少なくともNeおよびそれより重い

希ガスイオン入射に関しては,この入射エネルギー領域で

は,顕著な入射粒子質量依存性はないことが示された.同

様のことは,結晶Si基板の低エネルギー希ガスイオン照射

によるスパッタリングイールド計測でも示されており

[65],低エネルギーイオン入射に関する理論的枠組みを再

考察する必要があることを示している.

3.6 おわりに本章では,プラズマエッチングプロセスにおける表面反

応を原子レベルで理解するための手法として,MDシミュ

レーションと質量分離イオンビーム照射実験という二種類

の研究手法に関して,筆者とその共同研究者が行っている

研究成果を実例として挙げながら概説した.実際のプラズ

マプロセスでは,プラズマ中の様々な種類のイオンが基板

に入射し,また,同時に,大量の低エネルギー中性ラジカ

ルが基板表面に衝突し,場合によっては,それらが基板を

被覆しつつ,イオン衝撃を受けている.MDシミュレー

ションおよびイオンビーム照射実験を行う意義は,プラズ

マ中で起こっているこうした複雑なプロセス反応を,個別

の要素反応に分け,それぞれの要素反応について詳細を知

ることにより,それら要素反応の組み合わせとして,プラ

ズマ中の反応全体を理解することにある.もちろん,各要

素反応が仮に完全に理解できたとしても,二つの要素反応

を組み合わせた場合(たとえば,二種類のビームを基板材

料に同時照射した場合)は,必ずしも,要素反応の線形結

図6 MgOの Ne,Ar,Kr,および Xe イオンビーム入射によるスパッタリングイールドの入射エネルギー依存性.各曲線はフィッティング曲線.(a)と(b)は同じデータを,線形および半対数表示したもの.ただし,(b)では低エネルギー領域(200 eV以下)のみを表示した(文献[63]より許可を得て転載).

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合で結果が理解できるわけではない(たとえば,二つビー

ムの同時照射によるスパッタリングイールドは,必ずし

も,個別のビーム照射によるイールドの和ではない)が,こ

うした個別要素を十分に理解することで,そのような非線

形効果の意味も明らかになる.

本章では紙面の都合で紹介できなかったが,そのような

非線形効果(相乗効果)は,イオンビームの同時照射ばか

りでなく,異なる入射種の同時照射でもあり得る.たとえ

ば,反応性の高い低エネルギー中性ラジカルと高エネル

ギーの希ガスイオンの同時入射によるスパッタリングイー

ルドの向上もそのひとつである.また,筆者らの研究グ

ループでは,プラズマから照射される紫外線とイオンの同

時照射効果(相乗効果)を調べている.有機ポリマーの一

種である PMMA(ポリメチルメタクリレート)のCF3ビー

ムに照射によるエッチングプロセスにおいて,ある程度の

強さの紫外線を同時照射すると,エッチングイールドが上

昇することが確認されている[72].今後の研究で,個別の

要素反応を十分理解したうえで,このような各種ビームの

同時照射効果(相乗効果)の物理的機構の詳細が解明され

ることが期待される.

謝 辞本章でご紹介した研究例は多くの方々との共同研究であ

る.特に本章の執筆にあたり,産業技術総合研究所の山田

英明,日本大学の山城昌志,パナソニック株式会社の西谷

幹彦,産業技術総合研究所/大阪大学の木内正人,大阪大

学の吉村 智,唐橋一浩,礒部倫朗,同卒業生の日根清裕

の各氏に,ここに謹んで謝意を表する.

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Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.4 April 2009

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