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1 生物薬剤学講座 児玉庸夫 3年次後期 専門科目群Ⅰ (必修科目) 2単位 臨床薬理学 9回目

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生物薬剤学講座

児玉庸夫

3年次後期 専門科目群Ⅰ(必修科目) 2単位

臨床薬理学9回目

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臨床薬理学は薬物治療学を支える基礎として機能する

臨床薬理学

薬物治療学

臨床薬物動態学 医療薬学

例えば、TDMや薬物相互作用例えば、調剤、製剤、服薬指導、在宅医療における訪問薬剤管理指導

治療薬や用量などの薬物治療の個別化

臨薬

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臨床薬理学は医薬品開発や臨床薬効評価などを行う学問である

医薬品開発

厚生労働省は、薬事法に基づき医薬品としての承認の可否を判断する

臨床薬効評価 臨床試験(治験)例えば、臨床試験では、どのような方法で有効性(エンドポイント)を評価するか

例えば、どの種類の臨床試験をどの時期に行うか

例えば、治験の科学性、倫理性、信頼性をどのようにして確保するか

臨薬

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講義の内容(1)

• 第1回 臨床薬理学の役割、医薬品開発の歴史とコンセプト

• 第2回 医薬品市場と開発すべき医薬品(小テスト)

• 第3回 標的生体分子とリード化合物(小テスト)

• 第4回 医薬品の製造と品質管理(小テスト)

• 第5回 医薬品開発における非臨床試験 (小テスト)

• 第6回 医薬品の承認 (小テスト)

• 第7回 医薬品開発と生産のながれ、及びリード化合物のまとめと演習(中間テスト)

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講義の内容(2)

• 第8回 薬害(小テスト)

• 第9回 治験の意義と業務(1)(小テスト)

• 第10回 治験の意義と業務(2)(小テスト)

• 第11回 治験における薬剤師の役割(小テスト)

• 第12回 治験の意義と業務(3)(小テスト)

• 第13回 演習

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第9回 治験の意義と業務(1)• 治験とヘルシンキ宣言との関係、治験の

役割、公正な治験を確保するための制度、及び治験業務に携わる組織の役割と責任を説明できる。

• 薬剤師国家試験

医5C-a、臨床試験(治験の支援)

法1B-d、インフォームドコンセント

法2C-c、治験の取扱い

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臨床研究 基礎研究

GCPが適用されない臨床試験

GCPが適用される臨床試験(薬事法に治験として定義)

医学研究

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治験と臨床試験

臨床試験(広義の臨床試験)

・薬事法で定義、GCPが適用される・承認申請資料作成のため、製薬企業の依頼もしくは医師主導で実施される

治験(狭義の臨床試験)

・科学的プロトコルに基づく臨床研究(研究班等)・治験以外はGCPの適用を受けない

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臨床研究もしくは治験として臨床試験が実施されるときの倫理

• 世界医師会による「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則を遵守すること

• 「ヘルシンキ宣言」とは、ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則を定めたものである

• 臨床研究として臨床試験が実施される場合には、「ヘルシンキ宣言」を遵守すること

• 治験として臨床試験が実施される場合には、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則及びGCPを遵守して行わなければならない(GCP1条)

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子

• 倫理的正当性

• 科学的妥当性

• 医師の責務

安全性の確保、人権の保護

• 倫理審査委員会による審査

審査およびモニタリング

研究者による重篤な有害事象の報告

透明性の確保

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(1)ー倫理的正当性(1)ー

• ヒトを対象とする医学研究においては、被験者の健康福祉に対する配慮を科学的及び社会的利益よりも優先させなければならない(第5項)

• 新しい方法の利益、危険性、負担及び有効性は、現在最善とされている予防、診断及び治療方法と比較考量されなければならない。ただし、証明された予防、診断及び治療方法が存在しない場合の研究において、プラセボの使用または治療しないことの選択を排除するものではない(第29項)

• プラセボとは、有効成分を含まない製剤で、外見上は被験薬と見分けがつかないようにされたもの。被験薬の有効性・安全性を評価するため対照薬として使用される(プラセボ対照比較試験)

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(1)ー倫理的正当性(2)ー

• プラセボ対照試験は、たとえ証明された治療法が存在するときであっても、以下の条件のもとでは倫理的に行ってよいとされる(第29項注釈)

①それを行うことが、予防、診断または治療方法の有効性もしくは安全性を決定するために、どうしても必要である場合(治験はこれに該当すると考えれらる)

②予防、診断、または治療方法を軽い症状に対して調査しているときで、プラセボを投与される患者に深刻または非可逆的な危害というさらなるリスクが決して生じないであろうと考えられる場合

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(2)ー科学的妥当性ー

• ヒトを対象とする医学研究は、一般的に受け入れられた科学的原則に従い、科学的文献の十分な知識、他の関連した情報源及び十分な実験並びに適切な場合には動物実験に基づかなければならない(第11項)

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(3)ー医師の責務:安全性の確保、人権の保護、

インフォームドコンセント(1)ー

• 被験者の生命、健康、プライバシー及び尊厳を守ることは、医学研究に携わる医師の責務である(第10項)

• 医師は、内在する危険が十分に評価され、しかもその危険が適切に管理できることが確信できない場合には、ヒトを対象とする医学研究に従事することを控えるべきである(第17項)

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(3)ー医師の責務:安全性の確保、人権の保護、

インフォームドコンセント(2)ー

• ヒトを対象とする研究はすべて、それぞれの被験予定者に対して、目的、方法、期待される利益及び起こり得る危険等について十分な説明がなされなければならない。

• 対象者はボランティアであり、いつでも不利益なしに参加の同意を撤回する権利を有することを知らされなければならない。対象者がこの情報を理解したことを確認した上で、医師は対象者の自由意思によるインフォームドコンセントを、文書で得なければならない(第22項)

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(3)ー医師の責務:安全性の確保、人権の保護、

インフォームドコンセント(3)ー

• 弱い立場にあり特別な保護を必要とする人、経済的及び医学的に不利な立場の人、同意能力を欠く人、強制下で同意を求められるおそれのある人、及び個人的には利益の得られない人に対して、特別な注意が必要である(第8項)

• 被験者が同意能力を欠くことにより同意を得ることが困難な場合は、親権者や配偶者などの代諾者の同意でよい。但し、同意能力を欠く者を被験者とするのは、やむをえない場合に限られる

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(4)ー倫理審査委員会による審査:審査およびモニタリング、研究者による重篤な有害事象の報告、

透明性の確保(1)ー

• 計画書は、検討、批評、指導及び、そしてもし適切であると見なされるならば、承認を得るために倫理審査委員会に提出されなければならない。

• 委員会は、進行中の試験をモニターする権利を有する。研究者は委員会に対し、モニタリングのための情報、特にすべての重篤な有害事象について情報を提供する義務がある(第13項)

薬8

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ヘルシンキ宣言の骨子(4)ー倫理審査委員会による審査:審査およびモニタリング、研究者による重篤な有害事象の報告、

透明性の確保(2)ー

• 研究者は、提供資金、スポンサー、関係組織、その他起こり得る利害の衝突及び被験者に対する報奨についても、審査のために委員会に報告しなければならない(第13項)

薬8

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臨床試験(治験)での有効性・安全性評価

研究開発段階

非臨床試験

品質試験

初回治験届

30日

臨床試験(治験)

2~10年(平均 5年)

第Ⅰ相

第Ⅱ相

第 Ⅲ 相

新薬承認申請

(規格・安定性)

承認審査

治験薬概要書Investigator’s Brochure

CommonTechnicalDocument

国際共通化資料

(薬理・薬物動態・毒性)

承認

製造販売後

臨床試験(治験)で医薬品の効能・効果、用法・用量を決定(GCP遵守)

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憲法

薬事法

薬事法による臨床試験(治験)に対する規制(GCP)

薬事法施行令

薬事法施行規則

法律 政令 省令

GCP(Good Clinical Practice)医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令

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薬事法に規定されていること

・治験とは「医薬品の製造販売承認申請のための臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施」をいう。(2条第15項)・製造販売承認を取得するための承認審査資料は、厚生労働大臣の定める基準(GCP、GLP、信頼性基準)に従って収集・作成されなければならない。(14条第3項)・治験依頼者は、治験の計画を厚生労働大臣に届け出なければならない。治験の計画を届け出た治験依頼者は、治験を行う医療機関を追加した場合、治験計画の変更届けを提出しなければならない

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日本のGCPの仕組み(その1)

ーGCPはこれらの法律等による基準の体系ー(法令)

薬事法(法律)治験の定義、治験は基準(GCP)に従うこと等を

規定

薬事法施行令(政令)医薬品医療機器総合機構が行うGCP調査対象

の医薬品の範囲を規定

医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(省令) GCP

GCPの骨格を法律的に規定

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GCPの目指すもの(目的)

○治験の倫理性の確保

被験者の人権、安全及び福祉の保護

○治験の科学性の確保

科学的な質の確保

○治験の信頼性の確保

データの品質保証

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GCPの特徴は4つ

ー治験の科学的な質の向上を目指してー

1.役割・責任の明確化

2.管理システムの明確化

ーさらなる被験者の保護を目指してー

3.インフォームド・コンセントの厳格化

4.治験審査委員会(IRB)の強化

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治験の種類

• 治験は2種類ある

• 企業主導の治験は、製薬企業の依頼により医療機関で行われる(厚生労働省への届出は製薬企業が行う)

• 医師主導の治験は、医療機関に所属する医師が製薬企業からの依頼を受けず、自ら計画して行うものである(厚生労働省への届出は医師が行う)

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医師主導治験

• 医師主導治験は、製薬企業からの依頼でなく、医師自ら計画して実施する治験である

• 医師主導治験は、外国で医薬品として承認しているが、国内の患者数が少ないために製薬企業が臨床開発を行わないものや(抗悪性腫瘍薬など)、市販されている医薬品であっても適応外使用されているもの(小児用薬など)などの承認取得を目的とする

薬8

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企業主導の治験の仕組み(GCP)(2)

病院長

製薬企業

治験責任医師

治験分担医師

治験コーディネーター

被験者(患者)

治験審査委員会

治験参加

依頼

成果

説明同意

治験事務局

モニター

開発業務受託機関(CRO)

治験施設支援機関(SMO)

薬剤師

薬剤師

薬剤師

薬剤師

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医師主導の治験の仕組み(GCP)(2)

病院長

自ら治験を実施する者が

指定する者

自ら治験を実施する

者(治験責任医師)

治験コーディネーター

被験者(患者)

治験審査委員会

治験参加

説明同意

治験事務局

モニター

報告

治験施設支援機関(SMO)

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GCPで規定された開発業務受託機関(CRO)の役割

• CRO(Contract Research Organization)は開発業務受託機関のことである

• CROは、治験依頼者(製薬企業)から委託を受けて医薬品の開発にかかわる業務を製薬企業に代わって行う機関(会社)である

• CROは治験依頼者(製薬企業)から委託を受けて、モニタリング業務を行う

薬8

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GCPで規定された治験施設支援機関(SMO)の役割(1)

• SMO(Site Management Organization)は、治験の実施にかかわる医療機関の業務の一部を治験実施医療機関から受託または代行する機関(会社)をいう。治験コーディネーターなどを派遣する

• SMOで行う業務は、治験実施医療機関側に属する業務である

• SMOは、医療機関のスタッフの負担を軽減し、治験の品質とスピードをあげることに貢献することができる

薬8

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GCPで規定された治験依頼者の役割(1)

• 治験依頼者(製薬企業)は、治験薬に添付する文書やその容器などに、予定される販売名、予定される効能又は効果、予定される用法又は用量を記載してはならない

• 治験依頼者は、治験薬概要書、治験実施計画書(プロトコルとよばれる)、及び各種手順書を整備し、実施医療機関及び治験責任医師を選定し、治験を依頼する

• 治験依頼者は、医療機関での審査・承認の後、医療機関と治験に関する契約を締結し、治験薬を医療機関に交付する

薬8

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GCPで規定された治験依頼者の役割(2)

• 治験依頼者(製薬企業)は、実施医療機関に対するモニタリング(品質管理部門)及び監査(品質保証部門)を行い、治験の信頼性を確保する

• モニタリングとは、治験依頼者が実施医療機関に対して行う調査で、治験の進捗状況ならびに治験がGCPや治験実施計画書を遵守して行われていることを確認する

• 監査は、治験依頼者が治験依頼者自身や実施医療機関などに対して行う調査で、治験がGCPや治験実施計画書を遵守して行われていることを確認する

薬8

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GCPで規定された治験依頼者の役割(3)

• 治験依頼者(製薬企業)は、治験薬の副作用によるものと疑われる死亡につながるおそれのある症例を知ったときは、定められた期間内に厚生労働大臣に報告しなければならない

薬8

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医療機関

監査担当者

治験依頼者 モニター

指名・指示

監査

監査

モニタリング

監査

報告

報告

指名

治験依頼者によるモニタリング・監査

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治験の信頼性確保(3)ー医療機関(治験実施のための連携)(3)-

治験治験分担医師

治験協力者

治験薬管理者

記録保存責任者

治験事務局

治験審査委員会事務局

治験責任医師

薬剤師の治験コーディネーター

薬剤師

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GCPで規定された医療機関の長(病院長)の役割

• 治験の手続きを定める

• 治験審査委員会の委員を指名する

• 治験薬管理者を指名する

• 治験協力者を指名する

• 治験依頼者や治験責任医師から依頼や報告がなされた場合は、治験審査委員会(IRB、Institutional Review Board) )の意見を聴き、承認または指示を出す

薬8

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GCPで規定された治験審査委員会(IRB)の役割(1)

• 治験が倫理的、科学的に妥当であるか、治験を当該医療機関で実施することが適当であるか審査し、医療機関の長に意見を述べる

• 治験審査委員会は、倫理的、科学的観点から治験の実施および継続の適否についての審査を行う

薬8

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GCPで規定された治験審査委員会(IRB)の役割(2)

• IRBによる、治験実施計画書及び同意説明文書の承認は、治験実施の必須要件である

• 5人以上の委員で構成され、医学・歯学・薬学等の専門的知識を有する者(専門家委員)、少なくとも1人は医学・歯学・薬学等の自然科学以外の分野の者(非専門家委員)、さらに別の少なくとも1人は医療機関と利害関係を有していない者(外部委員)であること

薬8

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GCPで規定された治験事務局の役割

• 治験に関する申請や報告を受付ける

• 治験業務を行うための標準業務手順書(SOP、standard operating procedure)の作成に関する業務を行う

• 標準業務手順書(SOP)は、治験業務が適切に行われるように基本的な業務手順をまとめたものである

• 治験審査委員会の開催準備を行う

• 医療機関の長の指示・決定通知書の作成と送付、記録の保存などの業務を行う

• 治験コーディネーターが所属する場合がある

• 治験事務局は、治験審査委員会事務局を兼ねてもよい

薬8

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GCPで規定された治験薬管理者の役割

• 医療機関における治験薬管理者として、薬剤師が指名される

• 治験薬管理者は、治験依頼者が定めた手順書により治験薬を保管・管理する

薬8

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GCPで規定された治験責任医師・治験分担医師の役割(1)

• 治験責任医師の要件は、

○治験を適正に行うに十分な教育及び訓練を受け、十分な臨床経験を有すること

○治験薬の適切な使用法に精通していること

○治験を行うのに必要な時間的余裕を有すること

• 治験責任医師は、治験分担医師及び治験協力者に対し、治験を適正かつ円滑に行うために必要な情報を提供しなければならない

薬8

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GCPで規定された治験責任医師・治験分担医師の役割(2)

• 被験者を選定し、治験への参加の同意を求める場合は、治験審査委員会で承認された同意説明文書を用いて十分に説明し、自由意思に基づく文書による同意を取得しなければならない(インフォームドコンセントの取得)

• 被験者への治験内容の説明は平易な言葉で行い、被験者の同意は文書で得なければならない

• 治験責任医師等が被験者の同意を得るためにあらかじめ交付する説明文書には、被験者の秘密が保全されることを条件に、治験依頼者の監査担当者等が原資料を閲覧できる旨が記載されていなければならない

薬8

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GCPで規定された治験責任医師・治験分担医師の役割(3)

• 治験責任医師は、重篤な有害事象について、直ちに適切な処置を行うとともに、速やかに医療機関の長ならびに治験依頼者に報告する

• 治験責任医師から、実施医療機関の長および治験依頼者に伝えなければならない治験薬の「副作用によると疑われる」重篤な有害事象の発生には、因果関係が不明なものも含まれる

薬8

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GCPで規定された治験責任医師・治験分担医師の役割(4)

• 治験責任医師は、症例報告書を作成し、あるいは治験分担医師が作成した症例報告書の内容を確認し、治験依頼者に提出する

• 治験依頼者からモニタリングまたは監査を受ける場合には、それに協力し、カルテなどの原資料を直接閲覧に供する

薬8

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GCPで規定された治験協力者の役割

• 治験協力者とは、実施医療機関において治験責任医師又は治験分担医師の指導の下にこれらの者に治験に係る業務に協力する薬剤師、看護師その他の医療関係者をいう GCP2条(定義)

• 治験コーディネーター(CRC)は治験協力者であり、日本では薬剤師、看護師、臨床検査技師などがCRC業務を行っている

• 治験コーディネーター(CRC)は、治験を円滑に推進するため、治験関係者間および被験者との調整を行う

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GCPで規定された記録保存責任者の役割

• 記録保存責任者は、原資料、契約書、同意文書、治験実施計画書、治験薬の管理その他の治験に係わる業務の記録などを、定められた期間、保存しなければならない

• 記録保存責任者は、治験が中止された場合は、治験に関する記録を中止後3年を経過した日まで保存しなければならない

薬8

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ー役割・責任の明確化(1)ー

• 治験責任医師制度を採用した

• 治験依頼者は治験責任医師と協議の上、治験実施計画書(プロトコルとよばれる)を作成しなければならない

• 治験実施医療機関における治験協力者(治験コーディネーターとよばれる)を明確にした

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ー役割・責任の明確化(2)ー

• 治験依頼者は、治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合は、過失であるか否かを問わず、被験者の損失を適切に補償する責任があるため、保険その他の必要な措置を講じておくことが規定されている

薬8

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ー管理システムの明確化(1)ー• 治験実施医療機関は、業務手順書(SOP)に基づい

て治験を実施すること

• 治験実施医療機関には、治験事務局及び治験審査委員会事務局の設置義務がある

• 治験実施医療機関の長は、治験依頼者によるモニタリングや監査を受入れる義務がある

• モニタリングとは、治験依頼者のモニターが治験が適正に実施されていることを確認することである(治験の品質管理)

• 監査とは、治験依頼者の監査担当者がデータの信頼性を確認することである(治験の品質保証)

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ー管理システムの明確化(2)ー

• 治験実施医療機関における治験薬管理に関して、治験薬管理者の設置が規定された

• 治験責任医師は、すべての有害事象を因果関係の有無にかかわらず記録し、治験依頼者に報告する

• 治験責任医師は、重篤な有害事象について、直ちに適切な処置を行うとともに、速やかに医療機関の長ならびに治験依頼者に報告する

薬8

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ー管理システムの明確化(3)ー

• 治験依頼者は、安全性情報を治験責任医師及び医療機関の長に提供しなければならない

• 治験依頼者は、○因果関係が否定できない死亡、または死亡につながるおそれのある症例は7日以内に厚生労働大臣に報告すること○予測できない重篤な副作用(因果関係が否定できない有害事象)は15日以内に厚生労働大臣に報告すること○これらを、治験責任医師及び医療機関の長に速やかに通知すること

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ーインフォームド・コンセントの厳格化(1)ー• 治験責任医師は、被験者に説明文書を用いて説

明し、同意を示す署名を文書で得なければならない(インフォームド・コンセントの取得)

• インフォームド・コンセント(informed consent)とは、被験者の治験への参加の意思決定と関連する、治験に関するあらゆる角度からの説明が十分になされた後に、被験者がこれを理解し、自由意思によって治験への参加に同意し、書面によってそのことを確認すること

• 健常人を対象とした臨床試験の参加への同意は、文書で得なければならない

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ーインフォームド・コンセントの厳格化(2)ー

• 臨床試験(治験)の被験者は、いつでも自由に治験への参加を撤回できる

• 治験責任医師は、同意能力を欠く場合や未成年者の場合には、代諾者の同意を得る(可能であれば、被験者からも文書同意を取得する)

• 特別な治験におけるインフォームド・コンセントが規定された(緊急状況下における救命的治験の場合など)

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公正な治験の実施のためにGCPに規定されたこと

ー治験審査委員会(IRB)の強化ー

• 委員構成が多様化した

○専門家委員

○非専門家委員(外部委員とは別者)

○外部委員(実施医療機関と利害関係を有しない者)

• 委員の数、委員構成の割合を考慮した

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患者・国民の医薬品開発に対する理解の促進

• 日本での医薬品開発を促進するには、患者・国民から治験に対する理解を得られることが重要である

• 被験者として治験に参加した患者を「創薬ボランティア」、承認後に実施される製造販売後臨床試験に参加した患者を「育薬ボランティア」と呼んでいる(厚生労働省が定義したわけではない)。

• 医薬品開発促進のため、国民に対して臨床試験への理解(参加促進)のための啓蒙を行う必要がある

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All the players in good harmony

Investigator

RegulatoryAuthority

Sponsor

MedicalInstitutions

Citizen

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第9回講義の結論(1)

• 臨床研究として臨床試験が実施される場合には、「ヘルシンキ宣言」を遵守すること

• 「ヘルシンキ宣言」では、プラセボ対照試験は、たとえ証明された治療法が存在するときであっても、一定の条件のもとでは倫理的に行ってよいとされる(第29項注釈)

• 治験として臨床試験が実施される場合には、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則及びGCPを遵守して行わなければならない(GCP第1条)

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第9回講義の結論(2)

• 薬事法14条は、医薬品の承認申請に添付する臨床試験成績の収集・作成に関して、基準(GCP)を設定しており、GCPに適合することが、製造販売承認の条件である

• GCP(Good Clinical Practice)とは、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令である

• GCPの目指すものは、治験の倫理性・科学性・信頼性の確保である

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第9回講義の結論(3)

• 治験は2種類ある

• 企業主導の治験は、製薬企業の依頼により医療機関で行われる(厚生労働省への届出は製薬企業が行う)

• 医師主導の治験は、医療機関に所属する医師が製薬企業からの依頼を受けず、自ら計画して行うものである(厚生労働省への届出は医師が行う)

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第9回講義の結論(4)

• 医師主導治験は、外国で医薬品として承認しているが、国内の患者数が少ないために製薬企業が臨床開発を行わないものや(抗悪性腫瘍薬など)、市販されている医薬品であっても適応外使用されているもの(小児用薬など)などの承認取得を目的とする

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第9回講義の結論(5)• 医療機関の長は、治験の実施に関わる手続きを定め

• 治験責任医師は、被験者に説明文書を用いて説明し、同意を示す署名を文書で得なければならない(インフォームド・コンセントの取得)

• 治験責任医師は、同意能力を欠く場合や未成年者の場合には、代諾者の同意を得る(可能であれば、被験者からも文書同意を取得する)

• インフォームド・コンセント(informed consent)とは、被験者の治験への参加の意思決定と関連する、治験に関するあらゆる角度からの説明が十分になされた後に、被験者がこれを理解し、自由な意思によって治験への参加に同意し、書面によってそのことを確認すること

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第9回講義の結論(6)

• 治験審査委員会(IRB、Institutional Review Board)は、医療機関の長の諮問に基づき、治験が倫理的、科学的に妥当であるか、及び治験を当該医療機関で実施することが適当であるか審査し、医療機関の長に意見を述べる

• IRBは5人以上の委員で構成され、少なくとも1人は医学・歯学・薬学以外の分野の委員(非専門家委員)、さらに別の少なくとも1人は医療機関と利害関係を有していない委員(外部委員)であること

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第9回講義の結論(7)

• 治験依頼者は、実施医療機関に対するモニタリング及び監査を行い、治験の信頼性を確保する

• 治験依頼者は、安全性情報を収集、評価し、必要に応じて治験責任医師及び医療機関の長に提供しなければならない

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第9回講義の結論(8)

• 治験依頼者は、安全性情報を収集、評価し、必要に応じて治験責任医師及び医療機関の長に提供しなければならない

• 治験依頼者は、因果関係が否定できない死亡または死亡につながるおそれのある症例は、7日以内に厚生労働大臣に報告しなければならない

• 治験依頼者は、予測できない重篤な副作用(因果関係が否定できない有害事象)は、15日以内に厚生労働大臣に報告しなければならない

• 治験依頼者は、これらについて厚生労働大臣に報告するとともに、治験責任医師及び医療機関の長に速やかに通知しなければならない

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第9回講義の結論(9)

• 被験者として治験に参加した患者を「創薬ボランティア」、承認後に実施される製造販売後臨床試験に参加した患者を「育薬ボランティア」と呼んでいる(厚生労働省が定義したわけではない)。

• 医薬品開発促進のため、国民に対して臨床試験への理解(参加促進)のための啓蒙を行う必要がある