4 ミャンマーの精米業について - maff.go.jp...basket はpyi の16 倍に880g...

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4 ミャンマーの精米業について 1)計量単位について 計量単位について、容量計量器と重量計量器の実測比較を行った。市場で購入した 1 lone の精米を重量計量すると、234g262g に分布し、最大と最小の差は 12%であった。また、 籾の計量については、1 basket 21 kg の情報もあったが、この実測確認では 1 basket = 22.354 kg であった。 精米は品種・精米の程度・研米の程度によって容積重が変化する。また、籾は品種によ って変化するのに加え、循環式乾燥機を使用して乾燥すると、その稃毛や芒がすり取られ るので、容積重が大きくなると考えられる。 国際取引は重量で行われている中で、このように重量が変化する容量計量には問題があ るので、重量計量に変える必要があると考えられる。 なお、下記に簡易換算値を示す。 4-1 計量単位の実測確認 精米工場において精米を実測した結果、 1 pyi (2,020g) × 16 1 basket (31,440g) = 880g となり、basket pyi 16 倍に 880g 足らなかった。この結果から、容積が大きい単位で ・籾の計量 1 basket = 22 kg ・精米の計量 1 lone = 250 g 1 pyi = 8 lone = 2 kg 1 = = 24 pyi 1 = cm 3 = 16 pyi 1 = cm 3 = 8 Lone (英語Tin) 1 = cm 3 1 = = 24 pyi 1 = cm 3 = 16 pyi 1 = cm 3 = 8 Lone (英Tin) 1 = cm 3 1 = = 24 pyi 1 = cm 3 = 16 pyi 1 = cm 3 = 8 Lone (英Tin) 1 = cm 3 注: は実測値 は計算値 28.5 13.7 Lone 320 pyi 2,556 1,397 1,946 33,531 2014/11/11 (1) R/Mにて,実測した。 米の品種は,Manawthukha basket 40,900 22,354 49.4 31,141 2014/11/21 (8) R/Mにて,実測した。 米の品種は,Palethwes (Hybrid Rice) 備考 bag 46,712 10,314.9 vis 19.2 容積単位 vis g pound g pound 砕粒 23,280 15,520 970 121 49,680 33,120 2,070 259 g pound 257 31,440 2,020 253 69.3 bag g pound 47,160 40,900 2,556 320 basket pyi Lone bag 48,121 製品精米 175 243 pyi 2,556 48,986 basket 40,900 32,080 32,657 2,005 Lone 320 243 262 2,041 252 2014/11/08 市場にて,採取・実測した。 米の品種は,下記の通り Paw San (Shwebo) Paw San (Phyar) Manawthukha Sinthwe Latt Big Broken (Paw San) Ayarmin Small Broken (Non-Glutinous) Small Broken (Glutinous) 255 254 Thuka (included Yellow) 251 248 239 259 Thuka Tun 31

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Page 1: 4 ミャンマーの精米業について - maff.go.jp...basket はpyi の16 倍に880g 足らなかった。この結果から、容積が大きい単位で ・籾の計量 1 basket

4 ミャンマーの精米業について

1)計量単位について 計量単位について、容量計量器と重量計量器の実測比較を行った。市場で購入した 1 lone

の精米を重量計量すると、234g~262g に分布し、最大と最小の差は 12%であった。また、

籾の計量については、1 basket ≑ 21 kg の情報もあったが、この実測確認では 1 basket = 22.354 kg であった。

精米は品種・精米の程度・研米の程度によって容積重が変化する。また、籾は品種によ

って変化するのに加え、循環式乾燥機を使用して乾燥すると、その稃毛や芒がすり取られ

るので、容積重が大きくなると考えられる。 国際取引は重量で行われている中で、このように重量が変化する容量計量には問題があ

るので、重量計量に変える必要があると考えられる。 なお、下記に簡易換算値を示す。

表 4-1 計量単位の実測確認

精米工場において精米を実測した結果、

1 pyi (2,020g) × 16 - 1 basket (31,440g) = 880g

となり、basket は pyi の 16 倍に 880g 足らなかった。この結果から、容積が大きい単位で

・籾の計量 1 basket = 22 kg

・精米の計量 1 lone = 250 g 1 pyi = 8 lone = 2 kg

1 = = 24 pyi

1 = cm3 = 16 pyi

1 = cm3 = 8 Lone (英語Tin)

1 = cm3

1 = = 24 pyi

1 = cm3 = 16 pyi

1 = cm3 = 8 Lone (英Tin)

1 = cm3

1 = = 24 pyi

1 = cm3 = 16 pyi

1 = cm3 = 8 Lone (英Tin)

1 = cm3

注: は実測値 は計算値

28.5

13.7

Lone 320

pyi 2,556 1,397 1,946

33,531

2014/11/11(1) R/Mにて,実測した。米の品種は,Manawthukha

basket 40,900 22,354 49.4 31,141

2014/11/21(8) R/Mにて,実測した。米の品種は,Palethwes (HybridRice)

備考

bag 46,712 10,314.9

vis

19.2

容積単位vis g pound g pound

砕粒 糠

23,280

15,520

970

121

49,680

33,120

2,070

259

g pound

257

31,440

2,020

253

69.3

bag

g pound

47,160

40,900

2,556

320

basket

pyi

Lone

bag 48,121

籾 製品精米

175 243

pyi 2,556

48,986

basket 40,900 32,080 32,657

2,005

Lone 320

243

262

2,041

252

2014/11/08市場にて,採取・実測した。米の品種は,下記の通り

Paw San (Shwebo)

Paw San (Phyar)

Manawthukha

Sinthwe Latt

Big Broken (Paw San)

Ayarmin

Small Broken (Non-Glutinous)

Small Broken (Glutinous)

255

254

Thuka (included Yellow)

251

248

239

259

Thuka Tun

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は、充填率が低くなると思われるので,簡易換算値を次の通りとした。

2)精米歩留および製品精米の性状について 全国統計の精米歩留は 50%位であるとされているが、容量計量が一般的である中で、こ

の全国統計には根拠が乏しいと思われる。

表 4-2 精米歩留の聞取り調査結果

T/S 訪問日 精米工場 単位 籾 製品精米 大砕粒 中砕粒 小砕粒 糠 籾摺糠 合計

Basket 100 48 3 1 8 4

kg 2,200 1,488 99 33 120 60

% 67.6% 4.5% 1.5% 5.5% 2.7% 81.8%

Basket 100 50 1 2 10 8

kg 2,200 1,550 33 50 150 120

% 70.5% 1.5% 2.3% 6.8% 5.5% 86.5%

Basket 100 45 4 10 5

kg 2,200 1,395 0 132 150 75

% 63.4% 0.0% 6.0% 6.8% 3.4% 79.6%

Basket 100 47 1.5 0.5 12 3

kg 2,200 1,442 50 17 180 45

% 65.5% 2.3% 0.8% 8.2% 2.0% 78.8%

Basket 100 45 2.3 0.5 4

kg 2,200 1,395 74 17 183 60

% 63.4% 3.4% 0.8% 8.3% 2.7% 78.6%

Basket 100 48 1.5

kg 2,200 1,488 50 166 25

% 67.6% 2.3% 7.5% 1.1% 78.6%

Basket 100 45 3.0 1.5 12 2

kg 2,200 1,395 99 50 180 30

% 63.4% 4.5% 2.3% 8.2% 1.4% 79.7%

Basket 100 45

kg 2,200 1,395 75 11 166 33

% 63.4% 3.4% 0.5% 7.5% 1.5% 76.4%

Basket 100 42 4.5

kg 2,200 1,302 149 8 166 75

% 59.2% 6.8% 0.4% 7.5% 3.4% 77.2%

単位 玄米 製品精米 大砕粒 中砕粒 小砕粒 糠 籾摺糠 合計

pyi 24 17 1 2 0.5

kg 48 34 2.1 4.1 1.0 9.1

% 70.8% 4.3% 8.5% 2.1% 19.0% 104.8%

籾 1 basket = 22 kg 砕粒 1 basket = 33 kg

玄米 1 pyi = 2 kg 1 pyi = 2.05 kg

精米 1 basket = 31 kg 糠 1 basket = 15 kg

1 pyi = 2 kg 1 viss= 1.66 kg

2014/11/26

Zeya Thiri

Leiway

Zebu Thiri

Pyinmana

Tatkone

2014/11/20

2014/11/21

2014/11/25

2014/11/14

2014/11/18

2014/11/19

2014/11/11

2014/11/11

2014/11/14

単位の定義

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

(7)

(8)

(9)

(10)

1 basket = 16 pyi = 31 kg 1 bag = 1.5 basket = 24 pyi = 46 kg

・砕粒の計量 1 pyi = 8 lone = 2.05 kg

・糠の計量 1 pyi = 8 lone = 0.97 kg

32

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表 4-2「精米歩留の聞取り調査結果」は、訪問した精米工場 11 ヵ所中 10 ヵ所で聞取りし

た品種 Manawthukha の容量計量値を、上述の簡易換算値で重量換算して歩留を表示してい

る。 この結果の中で、一般的に籾摺歩留は 75~80%であるので、籾殻を除いた合計歩留が 80%

を超える精米工場(1)(2)(10)については信頼性が低いが、その他の精米工場については合計

歩留が 76~79%であり、信頼性が高いと考えられる。 また、製品精米中の砕粒率は、精米工場(5)1.7%、(7)5.5%、(8)2.3%であり、これに選別し

た砕粒を加えると総砕粒率は 5~10%である。精米加工の度合が不明確であるので一概には

言えないが、品種 Manawthukha の精米加工における砕粒発生率は、長粒種を精米加工する

東南アジア諸国の中では低いと言える。

製品精米の性状については、4 ヵ所の精米工場のサンプルを分析した。分析結果から、同

一品種の Manawthuka であっても白度が 33.7~39.9%の幅に分布しており、白度から精米歩

留差は 3%位あると推定される。また、水分が高いとコメは軟らかくなるので、精米加工で

砕粒を発生しやすい。精米工場(2)において砕粒率が高い理由の一つであると考えられる。 このように、ネピドー近辺でも製品精米の性状に違いがある。ミャンマー全国のコメの

価値ロスを推定するためには、全国の製品精米を収集し、性状分析を行う必要があると考

えられる。

表 4-3 精米サンプル分析結果(精米工場 4 箇所からサンプリング)

3)精米事業について 調査した精米工場の中で、歩留情報に信頼性があり、必要なデータが揃っている精米工

場(5)(6)(7)(8)(9)の利益について検討した(P36 表 4-4 精米工場の年間の付加価値試算と推定

利益を参照)。 図 4-4 は自社精米による付加価値(=売上額-原料籾購入額)と受託精米料金の合計試算

金額を示している。合計試算金額は 1800 万 Ks~1 億 4000 万 Ks(約 180 万円~1400 万円)

に分布しており、精米設備能力が大きく、製品精米販売単価が高い精米工場の金額が高く

なっている。また、図中の受託とは精米量に占める受託精米量の割合を示しており、この

割合が高いと設備能力に比べて合計試算金額が低くなっている。 図 4-5 の 1basket 当りの付加価値と受託精米料金の比較に示すように、受託精米の料金が

付加価値の半分以下であることから、この理由を理解できる。また、双方ともに同じよう

に精米経費がかかるので、受託精米は割が合わない仕事であると思われる。

訪問日 精米工場 品種 水分 白度 砕粒 着色粒

(%) (%) (%) (%)

2014/11/11 (2) Manawthukha 15.6 33.7 12.5 13.0

2014/11/18 (5) Manawthukha 14.1 38.3 1.7 1.6

2014/11/20 (7) Manawthukha 14.2 39.9 5.5 1.0

2014/11/21 (8) HyBrid 14.8 47.7 2.3 0.8

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0

20

40

60

80

100

120

140

160

工場(5)0.55t/h受託14%

工場(6)0.33t/h受託10%

工場(7)0.44t/h受託60%

工場(8)1.76t/h受託30%

工場(9)1.32t/h受託80%

2 1 9 17 32 35

17

72

124

30

百万

Ks 付加価値

受託精米料

図 4-4 訪問精米工場における付加価値と受託精米料の合計

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

工場(5) 工場(6) 工場(7) 工場(8) 工場(9)

200 300 200 200 224

543 523

2,497

613 845

( Ks/

bask

et )

精米工場

1basket当りの受託精米料金

1basket当りの付加価値

図 4-5 訪問精米工場における 1basket 当たりの付加価値と受託精米料金の比較

一方、自社精米は、大量の籾を仕入れる必要があるので、多くの資金を要する。調査し

た精米工場は、籾仕入と精米販売を繰り返すことで運転資金を回していると思われ、資金

不足を補うために受託精米をしていると考えられる。

精米工場と農家が一体の組織になればこの原料籾調達資金は不要になり、農家と付加価

値を分かち合うこともできて、双方に利益があると考えられる。

なお、図 4-5 で精米工場(7)の付加価値が飛び抜けて高いのは、新米の 40%程度高値で取

引される古米であるためだと考えられる。

次に売上の内訳について検討した。図 4-6 は、総売上を 100%とした場合の製品精米と副

産物の売上および原料籾の購入額の割合を示している。図から、製品精米は原料籾に対し

て 2.4%の付加価値がある。副産物はそれに 12.4%の付加価値を加えており、副産物が利益

向上に大きく寄与していることがわかる。

34

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図 4-7 に示すように、副産物の単価を見ると、 精米糠の単価は 210Ks/kg であり、小砕粒

の 1.68 倍、籾摺糠の 4.56 倍である。このため、精米糠を増やすと利益が高くなるので、小

砕粒を精米糠に混ぜている精米工場がある。 また、籾摺糠はアンダーランナー式籾摺機の籾摺砥石で削られた玄米表皮であり、通常

のゴムロール式籾摺機では発生することなく精米糠になるものであるので、精米糠に混ぜ

ることができると思われる。

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

原料籾 総売上 製品精米 大砕粒 小砕粒 精米糠 籾摺糠

85.2%

100.0%

87.6%

3.6%0.9%

7.2%

0.6%

図 4-6 訪問精米工場における売上げの内訳

0

50

100

150

200

250

300

350

製品精米 大砕粒 小砕粒 精米糠 籾摺糠

307

220

125

210

46

単価

(ks/

kg)

図 4-7 訪問精米工場における製品と副産物の単価

以上から、小砕粒と籾摺糠を精米糠に混ぜるだけで、付加価値を 4.84%増加させることが

できる。

35

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表 4-4 訪問精米工場の年間の付加価値試算と推定利益

(㌧/時) 0.88 0.92 0.55 0.33 0.44 1.76 1.32

(時間/日) 11 10 10 8 12 12 10

(日/年) 300 300 300 300 300 300 300

原料籾量 対籾率 2,904 対籾率 2,772 対籾率 1,650 対籾率 792 対籾率 1,584 対籾率 6,336 対籾率 3,960

精米生産量 69.4% 2,015 68.6% 1,902 67.6% 1,115 69.9% 554 70.2% 1,112 67.3% 4,264 66.4% 2,629

製品精米 63.4% 1,841 65.5% 1,816 63.4% 1,046 67.6% 535 63.4% 1,004 63.4% 4,017 59.2% 2,344

大砕粒 0.0% 0 2.3% 64 3.4% 56 2.3% 18 4.5% 71 3.4% 215 6.8% 269

小砕粒 6.0% 174 0.8% 22 0.8% 13 0.0% 0 2.3% 36 0.5% 32 0.4% 16

副産物生産量 精米糠 6.8% 197 8.2% 227 8.3% 137 7.5% 59 8.2% 130 7.5% 475 7.5% 297

籾摺糠 3.4% 99 2.0% 55 2.7% 45 1.1% 9 1.4% 22 1.5% 95 3.4% 135

製品精米

大砕粒

小砕粒

精米糠

籾摺糠

製品精米

大砕粒

小砕粒

精米糠

籾摺糠

合計

率(=③/①)

D.全量自社精米した場合の推定利益額 (Ks/年) 《 経費率を全量自社精米した場合の売上の 5% と仮定して試算 》

率(=④/①)

⑤受託精米料金 (Ks/basket)

⑥受託精米割合

⑦受託精米料(=年間精米量(籾量)×⑤×⑥/22kg)

⑧付加価値 (=③×(1-⑥))

⑨利益 《 D.と同じ経費率 》 (=⑦+⑧-①×5%)

率(=⑨/①)

⑩利益率の差 =(④-⑨)/①

籾 1 basket = 22 kg 砕粒 1 basket = 33 kg

精米 1 basket = 31 kg 糠 1 basket = 15 kg

1 Lone = 0.25 kg 1 viss= 1.66 kg

2.5% 10.3%

2.2%5.2% 5.2% 11.7% 5.0%

18,902,422 9,158,100 56,432,243 70,149,491 19,067,518

34,919,747 16,939,164 71,899,706 123,619,452

80%

2,145,000 1,080,000 8,640,000

30,415,357

17,280,000 32,256,000

14% 10% 60% 30%

E.現状の受託精米と自社精米をした場合の年間の付加価値額 (Ks/年)

200 300 200 200 224

105,849,256 108,472,946

8.0% 13.2% 6.2% 5.6% 32.3% 7.5% 12.4%

④利益

=③-①×8%

51,072,730 81,096,946 22,584,171 9,960,229 155,641,801

152,076,785

13.0% 18.2% 11.2% 10.6% 37.3% 12.5% 17.4%

1,238,400,000 720,000,000

637,339,716

③付加価値

(=①-②)

82,939,716 111,891,523 40,746,495 18,821,294 179,749,265 176,599,217

②原料籾購入額 554,400,000 504,000,000 322,500,000 158,400,000 302,400,000

615,891,523 363,246,495 177,221,294 482,149,265 1,414,999,217

61,248,795

8,690,189

872,076,785

3,291,200 1,848,000 5,940,000 374,871 1,108,800 4,752,000

49,368,000 49,249,200 29,396,837 11,629,518 28,142,400 95,040,000

43,520,000

30,360,000 2,688,000 0 0 3,680,000 2,400,000 2,385,542

15,456,000 12,954,819 4,023,614 17,280,000 47,872,000

C.全量自社精米した場合の年間の付加価値額 (Ks/年)

①売上

554,320,516 546,650,323 314,954,839 161,193,290 431,938,065 1,264,935,217 756,232,258

65

191 182 195 200 191 195

174 121

182

33 33 133 43 50 50

315 323

151

250 217 196 196 217 200 196

222 162

101 76

301 301 430

242 231 221 242

1時間の籾処理能力

1日の稼動時間

年間の稼動日数

A.年間の原料籾量・生産物量 (㌧/年)

原料品種 Manawthukha Manawthukha Manawthukha Manawthukha Manawthukha

精米 場の年間の付加価値試算と推定利益

精米工場名 (3) (4) (8) (9)

Manawthukha

20.6%

Manawthukha

B.原料籾・生産物の単価 (Ks/kg)

301 301

計量単位の定義

(5) (6) (7)

1.0% 0.5%

5 事業上での残された課題 1)コンバインによる収穫について 収穫における収量ロスを低減させるため、コンバインの普及が必要である。このため、

農家が購入できる分割払い等の仕組み作りを検討する必要があると考えられる。

36

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2)水分管理について 今回の対象地域において、コメ取引時に水分計で水分を測定する仕組みを普及させるた

め、T/S 事務所に水分計を提供し、T/S 事務所から農家および精米工場に水分計を貸与する

ことを検討する必要があると考えられる。

3)機械設備の共同購入推進について 収穫後のロスを低減するとともに、農業を合理化するためには、コンバインや乾燥機等

の機械設備が必要になる。これらの機械導入には多額の投資が必要になるので、農業法人

等の組織を組成して購入する必要がある。

これら組織の組成を推進するために、組織に対して機械設備購入時に助成する仕組みを

検討する必要があると考えられる。

4)調査対象地域について 今回の活動で、収穫後のロスについて問題と対応策を提示できたが、ネピドー近辺に限

定したものであり、ミャンマー全国を代表するものではない。このため、北部および南部

についても同様の調査が必要であると考えられる。

5)調査時期について 今回は乾期における収穫後のロスを調査することができたが、夏作の収穫時期は雨期に

入っているためその様相が異なると思われる。このため、夏作の収穫についても同様の調

査が必要であると考えられる。

6)ミャンマー全国の価値ロスの実態把握について ミャンマー全国の価値ロスの実態を把握するため、全国の精米を分析することで品質を

数値化し、その結果から収穫後の価値ロスの実態を把握することが必要であると考えられ

る。

このため、研修で使用した分析機器の他、グレインスキャナー、容積重計、計量器、卓

上型電気抵抗式水分計、赤外線式水分計等の導入が必要であると考えられる。 また、客観的で再現性のある分析を行うために、日本の品質基準例を参考に、コメの写

真・図・表で示すミャンマーの品質基準を作成する必要がある。

7)籾貯蔵中の環境調査について 貯蔵中の籾の変質を防ぐためには,籾水分を 14%以下に保つ必要がある。籾の平衡含水

率(一定環境下において収束する水分)は、外気温 30℃・相対湿度 70%の場合は 13%、外

気温 20℃・相対湿度 70%の場合は 14%である。つまり、相対湿度が 70%を超えると、籾が

吸湿して水分が 14%以上になり、籾の呼吸作用によって変質する危険性が高まると考えら

れる。 このため、年間の気温と相対湿度のデータを入手し、できれば、年間を通じた貯蔵中の

籾の水分変化のデータを入手して籾貯蔵における問題を検討する必要がある。

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第 5 章 成果調査・フォローアップ報告

藤家梓/西山亜希代

1 調査概要

11 月の技術指導のモニタリング評価およびフォローアップのため、下記により調査を実

施した。 (1)調査団員 藤家 梓 検討委員(元千葉県農業総合研究センターセンター長) 西山 亜希代 JAICAF 業務グループ調査役 (2)調査目的

① 11 月技術指導活動のモニタリング・評価 ② 技術指導活動のフォローアップ-対象地域の貯蔵状況の把握と指導

(3)調査期間 2015 年 1 月 31 日(土)~2 月 7 日(土) 2 技術指導の成果 調査では、対象となった 4 地域の農家と精米所(近隣精米所含む)のうち、農家 5 軒 18人、精米業者 5 軒で聞き取りを行った(表 5-1)。

表 5-1 訪問した農家と精米所

T/S 名 訪問先 備考

農家 Zeya Thiri 農家 A 他 3 人 Pyinmana 農家 B 戸別訪問および WS 出席ともな

いが、精米ブローカーのため精

米所で指導に立会い Dekhina Thiri 農家 C 戸別訪問および WS 出席なし 農家 D Tatkon 農家 E 他 10 人 精米所 Zeya Thiri 精米所 A Pyinmana 精米所 B Leiway 精米所 C Tatkon 精米所 D 精米所 E

1)農家への指導とその評価

接触した 18 人のうち、専門家による戸別訪問あるいはワークショップでの指導を受けた

農家は 16 人であった。

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16 人全員が、専門家の指導は理解でき、有益であったと回答した。具体的には、①赤米

除去(異株)の除去、②水分管理の重要性、③種子量の見直し、④収穫適期の見分け方、

⑤健全苗の育成と適期の移植、⑥塩水選を挙げた(表 5-2)。 ただし、灌漑地では次期作が始まったところ、それ以外では 6 月が次期作の始まりであ

るため、結果は出ていない。採用の意欲の確認に留まった。

表 5-2 取り入れたいと回答した技術

実行したいとした技術 実行したいとした農家

赤米除去(異株)の除去 全農家

水分管理 全農家

適期収穫(改善) 農家 E とそのグループ

種子量の見直し 農家 A、農家 E とそのグループ

健全苗の育成と適期の移植 農家 E とそのグループ

塩水選 農家 E とそのグループ

(1)赤米の除去 赤米の混入は、コメの引渡し価格に直接影響する要因であるため、その防除には関心が

高く、異株の除去については積極的に取り組む姿勢が見えた。また、概ね、1~3 年に 1 度

種子更新を行うことで赤米の発生を抑えており、種子更新は赤米防除にとって重大な要因

になっている。 Tatkon T/S の農家 E グループによると、種子更新が赤米防除に効果があると知ったのは

7~8 年ほど前のことである。集落で一人の農家が種子更新をしたところ、赤米の発生が抑

えられたことから、種子更新が広く広まってきたとのことであった。このことから、赤米

の問題意識はあってもその発生の仕組みも有効な対策も不明で、農家自身も困っていたも

のと思われ、今回、発生の仕組みを農家に示したことは意義があるものと評価できる。 種子更新は重要な防除手段であるが、生産コストが増大するため毎回行われてはおらず、

異株除去は必須である。また、赤米の発生は、日本を含め広く世界的に問題となっており、

根絶は難しい。継続した働きかけが必要である。今回も、赤米は雑草イネであること、自

分の水田に出なければ良いというものではなく、近隣の水田から容易に混入するため、集

落全体で防除に取り組む必要があることを再度説明した。 (2)水分管理 黄変米の発生を避けるためには、乾燥が重要であることを農家全員が理解し、留意した

いとしているが、計測機器がないため、独自の方法(噛んでみる、触ってみる、割ってみ

る、音を聞く等)による水分管理に留まっている。数値管理ができないため、“何となく大

丈夫だろう”と考えているところがある。 十分に乾燥していること、過乾燥になっていないことは、精米業者がコメを購入すると

きの価格の目安になっていることもあって、農家自身、その重要性を認識しているものの、

限られた範囲での努力に任されているのが現状である。

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(3)適期収穫 収穫時期が遅いのではないかと指摘を受けたのが農家 E グループであり、次回の収穫期

には指導のとおり、5 日ほど早めに収穫したいとしていた。 適期収穫は、コメの品質にも影響を及ぼし、ひいては価格に反映される。労働力や機械

の確保等制約要因はあるが、その中でもできるだけ最適な時期に収穫しようとしている。 (4)種子量の見直し これについて言及したのは、農家 A と農家 E のグループであった。播種量を減らすこと

ができれば、生産費の削減につながる。 Palethwe(ハイブリッド品種)が 1acre 当たり 7~8kg の播種量であるのに対して、

Manawthukha といったそれ以外の品種は 1acre 当たり 40kg 前後の種子を使用している。 Palethwe については、MAPCO(Myanmar Agribusiness Public Corporation)による種子、

肥料および当座の生産費等が前渡しされ、収穫後に籾で返却するというシステムが入って

おり、MAPCO の指導により移植しなければならないとのことであるが、他の品種につい

ては、労働力や作付体系等の関係で、散播が採用されていることが多いようである。 (5)健全苗の育成と適期の移植 農家 E のグループは、播種量の見直しと併せて、健全な苗を育成すること、苗の移植を

20 日程度で行うことを採用したいとした。 (6)塩水選 訪問した農家の多くは、種子籾の水選を行っていた。塩水選の方がより正確に種子選別

ができるが、水選でも実行したほうが良いことは理解されている。 訪問農家のうち塩水選を取り入れてみたいとしたのは、農家 E のグループであり、健全

苗の育成や播種量の削減と併せて、栽培技術の改善に非常に意欲的であった。

2)精米所への指導とその評価

訪問した 5 社はすべて、戸別訪問、あるいは戸別訪問とワークショップにて専門家に指

導を受けていた。そのうち 3 社は、す

でに専門家の指導に従って、施設設備

等の改善を図っていた。また、資金が

できたら、今後導入したいとしたもの

もあった(表 5-3)。 夾雑物除去の金網を交換した精米所

C は、明らかに正常粒が砕米と混じっ

て出ることがなくなり、歩留まりが上

がったと評価していた。また、ダクト

の設置調整と金網交換を行った精米所

D では、その結果、自社製品の品質が

上がったことを実感していた。取引価

写真 5-1 カラーソーター工程導入のための敷地整備

40

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格の上昇にまではつながっていないものの、品質が向上したことで自社製品の評判が良く

なり、引き合いが増加したとしていた。また、カラーソーターおよび Polisher の導入を決

め、敷地内を工事中であった(写真 5-1)。 コメの水分管理についても、乾燥設備の導入を計画している精米所もある。水分計の導

入とそれによる数値管理の重要性について、再度確認した。

表 5-3 改善あるいは今後の改善を予定する技術

改善点 改善した/改善に着手

した精米所 今後改善を希望

する精米所 備考

十分な乾燥 精米所 C

乾燥設備の導入 精米所 C 精米所 D には既設 張込ホッパー内に夾雑

物除去網を設置 精米所 C

金網の交換・修理 精米所 B、精米所 C

ダクトの設置調整 精米所 D

カラーソーターの導入 精米所 D

Polisher の導入 精米所 D

精米工程の改善 精米所 E 砕米を避けるため 3 段階に

3)コメ価格について

専門家による技術指導の影響を確認するため、コメ取引についても聞き取りを行った。

農家、精米所、ブローカー、コメ卸商、コメ小売店において、取引、価格決定について調

査した。 まず、農家から精米所へのコメの販売では、農家の庭先までブローカーや精米業者がコ

メを買いに来るケースが多い。農家 E のグループでは、精米所に精米のみを委託し、卸商

に直接販売することもある。ただし、グループとしての販売ではなく個々の農家が委託精

米と販売を行うため、手間とコストがかかり、ブローカーへ販売する場合の利益とそれほ

ど大きくは変わらないとのことである。 訪問した 5 社の精米所は、玄米を調達して精米する 1 社を除き、籾を買い付けて精米し、

卸商やブローカーに販売している。また、その 4 社では、農家やブローカーからの依頼に

よる受託精米も行っている。収穫後処理専門家の報告で、買い付け・販売に対して受託精

米の利益率は良くないことが分かっているが、受託販売を続ける理由として、①農村社会

の中で依頼があれば断れない、②買い付け・販売にはそれなりの資金、人手が必要であり、

すべてを買い付け・販売にすることが困難、③少ないリスクで現金が手に入るので、経営

のベースになる、といったことが挙げられた。 農家から精米所への販売価格決定要因は、①品種、②新米か古米か、③乾燥度、④赤米

混入、⑤黄変米混入、⑥登熟度(未熟・過熟)が共通して上げられた。⑦米粒の長さ・形

状を上げた精米所もあった。 また、精米所が卸商にコメを販売する際の価格決定要因は、①品種、②新米か古米か、

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③コメの色(白濁、黄変がないか)、④砕米率、⑤ゴミ・石の混入であった。 卸にコメが移る段階では赤米が問題視されていないことから、精米の段階で赤米の処理

を引き受けていることが分かる(口絵 6)。精米業者は赤米を受け入れると、より多く研磨

する必要があるため、歩留まりが下がり、施設の磨耗が激しくなる。また、赤い表皮の大

部分は削れるものの、粒の中心に白濁が残るため、価格が下がるという精米所もあった。

そのため、精米所 5 社の赤米に対する警戒心は高く、より良いコメとして、赤米混入の少

ないコメを求めて、農家に働きかけを行う精米所もあった。例えば、精米所 A では、赤米

の混入が多いと判断した場合にはそのコメは受け付けないとして、赤米発生を抑制するた

めに農家に種子更新を強く薦めている。JICA 種子プロジェクトの支援を受けながら、農業

灌漑省でも種子生産に積極的に取り組み、種子生産量も増大しているため、当該地域では

種子更新が普及し、赤米の発生が大幅に減少したとのことであった。 品種については、以前より、売りやすい品種、そうでない品種の情報は農家がブローカ

ーや市場等から得ており、それに合わせた生産を行っている。 また、砕米や黄変米を出さないためには、適度な乾燥が必要であり、適切な水分管理が

求められていた。精米所 C および D は、農家に乾燥を任せず、乾燥工程を自らの加工工程

に取り込むことで、適切な水分管理を実現しようとしていた。 Pyinmana 市街の卸商での聞き取りでは、卸商はヤンゴンのコメ卸市場がメインの買い付

け先であり、近隣のコメを取り扱うものの、その量は少なく、中級品としての扱いであっ

た。ヤンゴンの卸市場では、エーヤーワディ管区のコメが扱われており、それらは安定的

に供給され、かつ、品質が良い。この店では取り扱うコメを上級品、中級品、下級品に分

け、主に上級品を販売している。近隣のコメは安定して量を確保することが難しく、また、

この卸で取り扱いたい高品質のコメがないという。ただし、近隣のコメであっても、選別

すれば十分に上級品として認められ、高く買い付けることもできるとのことであった。 4)コメの品質 それでは、実際に赤米や黄変米等がどの程度発生しているのか。各訪問先でサンプルを

取り、調査した。それぞれ 500 粒を対象とし、赤米、黄変米、乳白米、黒変米・斑点米、

緑米、砕米の混入数を調べ、さらに農家で入手した籾については水選を行った(口絵 7、写真 5-2)。その結果が表 5-4 である。品種としては「Manawthukha」が多かった。

写真 5-2 農家 A の籾の水選

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表 5-4 ネピドー地域における被害米粒数(2015 年 2 月)

サンプル入手先調査穀粒(形状)

赤米 横変米 乳白米黒変米斑点米

緑米 砕米 備考

(1) Nay Pyi Taw Supermarket (1) 500(白米) 6 4 9 1 0 5 "「Beautiful Myanmar」

basmati rice" Supermarket (2) 500(玄米) 51 0 6 13 3 13 "Certified organic rica"

(2) Zeya Thiri  精米所A 500(白米) 4 0 15 6 0 22 農家A 500(籾) 0 不明 不明 0 不明 不明 水選で浮いた籾率19.6%

(3) Pyinmana 精米所B 500(白米) 4 0 15 1 0 52 小売店A 500(白米) 6 2 3 6 0 24 古米

 小売店A 500(白米) 13 0 9 4 0 42 新米

 卸売店A 500(白米) 5 0 2 3 0 10 Yangon卸売市場で買付

 卸売店A 500(白米) 3 4 6 4 0 39 Pyinmana Township栽培米

(4) Dekhina Thiri 農家C 500(籾) 0 不明 不明 1 不明 不明 飯米、

水選で浮いた籾率3.6%

 農家D 500(籾) 0 不明 不明 8 不明 不明 種子米、水選で浮いた籾率9.2%

(5) Leiway  精米所C 500(白米) 3 0 16 6 0 17 貯蔵庫でゾウムシ類等

が多発

(6) Tatkon  精米所D 500(白米) 4 0 15 4 0 9 精米所E (玄米からの精米)

500(白米) 12 7 7 4 1 11 貯蔵庫でゾウムシ類等が多発、カラーソーターあり

 農家E 500(籾) 0 不明 不明 4 不明 不明 飯米、水選で浮いた籾率11.6%

(1) 黒変米・斑点米にはカメムシ類による被害がふくまれる。

(2) 貯穀害虫として、コクゾウムシ類とコクヌストモドキ類が観察された。

(3) これらの害虫類は極めて小さく(コクゾウムシ類:体長2~3mm、コクヌストモドキ類:体長3~4mm)見逃し

やすく、実害が過小評価されていると思われる。 Pyinmana の卸商で入手したエーヤーワディ産(Yangon 卸売市場での買付け)のコメと

近隣のコメを比較すると、明らかにエーヤーワディ産の品質が良い。 スーパーマーケットで入手したコメ②は、有機認証されたコメで、「健康に良い」とし

て販売されていたものである。赤米の混入は激しいが、健康志向を売りにすることで赤米

混入を不問にしている特殊な商品であると考えられる。 また、Tatkon の精米所 E は、カラーソーターを入れて、自分の会社名を明記した包装を

行って販売しているが、同じく Tatkon の精米所 D と比較して、成績が悪い。カラーソータ

ーの性能が良くない可能性が高いと思われる。競合相手である近隣の精米業者がカラーソ

ーター等を導入していくと、精米所 E もより性能の良い設備を導入していくことになるの

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ではないかと予想される。農業局(DOA)での聞き取りによれば、販売を視野に入れた精

米業参入には優先的に許可を与え、輸出の促進も図っている。大規模な精米機の導入も進

んでいるようであり、コメの品質を上げるべく、精米設備の導入と精米業者の淘汰が今後

かなりのスピードで進む可能性があると思われる。

3 現地でのフォローアップ

収穫後処理の工程である貯蔵状態を確認するとともに、コメの水分管理、赤米対策、害

虫・ネズミ・スズメ等の発生の実態を調査し、意見交換と助言を行った。

1)農家の貯蔵庫 農家の貯蔵庫(写真 5-3)はすべて同じような高床式構造で乾燥状態はよかったが、開

口部があり、ネズミ・スズメ・害虫等の侵入は容易であった。農家はネズミ等による被害

を認識していたが、それ程気にしていないようであった。また、屋根はトタン張りである

ため夏にはかなり高温になると予想され、品質劣化が心配されたが、上部のコメは過乾燥

となるものの、波型のトタンであるため大きな心配ないとのことであった。 竹製の伝統的な貯蔵カゴもあった(写真 5-4)。竹で編み、隙間を牛糞で埋めているもの

で、密閉性が高く、食害も防げるとのことであった。

写真 5-3 農家の貯蔵庫1

写真 5-4 農家の貯蔵庫 2(コメの貯蔵容

器:日陰にある小屋の中にあった)

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2)精米所の貯蔵庫 精米所の貯蔵庫にも開口部があり、ネズミ・スズメ・害虫等の侵入は容易であった。精

米業者もネズミ等による被害は確認していたが、それ程気にしていないようであった。ま

た、精米所 D の貯蔵庫は掃除され整理されていたが、他の貯蔵庫内は概して清掃されてい

なかった(口絵 8)。 貯蔵庫内のコメ袋を調査したところ、2 か所の精米所でコクゾウムシ類(Sitophilus oryzae

等) とコクヌストモドキ類(Triboliun castaneum 等)の多発生を確認した(口絵 9、口絵

10)。コクゾウムシ類による被害は、穀粒の摂食だけでなく、加害された穀物が発熱するた

め、貯蔵米の品質を低下させると思われる。また、コクヌストモドキ類は、顎が弱いため

食害能力はそれほどではないが、分泌液に発がん性物質(キノン類)が含まれており、品

質に影響を与える。コクヌストモドキ類は穀粒よりも、穀粉を好む。ナガシンクイ類も発

生するようであるが、今回は確認できなかった。なお、ゴキブリ類も発生していた。 3)害虫被害の認識

貯蔵米の貯穀害虫による被害は大きいと考えられたが、虫害によるロスに対する農家や

精米所等の認識は低かった。ただし、農業研究局(DAR)局長と同局 Plant Protection 部部

長(昆虫研究者)からは、貯穀害虫被害の重大性への言及があった。 今後、貯穀害虫に関しては、貯蔵米のロスと品質低下の観点から、害虫被害の実態を正

確に把握し、関係者の認識を高め、できるところから防除対策を講じる必要があると思わ

れる。開口部へのネット張り、貯蔵庫内の清掃、貯蔵庫内の害虫防除等が有効と考えられ

た。なお、被害米粒のサンプル調査(表 5-4)での、黒色米・斑点米には、栽培期間中の

カメムシ類の加害によると思われる被害米が含まれていた。 4)水田における病害虫発生状況

水田での調査を行っていないが、DARのPlant Protection部部長や担当者との意見交換で、

問題となっている病害虫が明らかになった。メイガ類(Cnaphalocrocis medinalis、Scirpophaga incertulus 等)が全国的に発生しており、一部の地域ではウンカ類(Nilaparvata lugens 等)が問題になっているとのことであった。病気としては白葉枯病等の細菌病が中

心であるが、いもち病等の糸状菌病も発生しているようである。 農薬による防除方法についても、DOA の植物防疫部職員と意見交換をした。農家の病害

虫防除に対する関心は高く、日本での使用農薬について説明した。また、農薬の使用に関

しては、ラベル表示の指示に従って適正に使用することを求めた。 4 期待される成果

聞き取り調査結果から、専門家の指導が、農家および精米所の生産・加工に直接影響を

与えている(あるいは、与える可能性がある)と評価できる。特に、改善策を導入した精

米所では効果を実感していた。 収穫後の量的ロスと価値ロスは、所得に直接影響することから、非常に重要である。農

家、精米所それぞれで改善できる点を示したことが改善策の導入意欲につながった。また、

適切な収穫後処理は、カビの抑制等食品安全上も重要である。これらの点が改善されれば、

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より良品質のコメが小売店(写真 5-5)にわたり、消費者の食生活の向上につながること

が期待される。 収穫後処理およびコメの品質向上は農業灌漑省でも注力する分野であるため、DOA 普及

部長からも本事業が高く評価された。

写真 5-5 町中の小売店のコメ:在庫は 1 品種 10 袋程度。

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第 6 章 今後の課題

現在、ネピドーでは基盤整備が行われており、未着の地域にも機械化や灌漑が徐々に進

んでいくことが期待される。農家にとっての大きな課題は労働力不足であって、適期収穫

や栽培管理等の障害になっており、収量のみならず品質にも大きな影響を与えている。基

盤整備、機械化はこの課題を解消するものであり、農業灌漑省でも推進している。農業局

(DOA)では、日本農機メーカーを誘致したいとの発言もあった。 コメの品質については、政策的にも輸出米の品質向上を進めていることから、国内米も

品質向上を図っていくことになるだろう。今年度の事業で明らかになったとおり、精米業

者の動きは活発化しており、コメの品質向上に影響力を及ぼす可能性が高い。卸商や小売

店等川下のグループと川上の農家を仲介する精米業者は、取り扱うコメの品質による価格

への影響を最も敏感に察知していると思われ、精米設備の投資のみならず生産現場への働

きかけも拡大していくと考えられる。こうした動きについていくことが農家にも求められ

ることになる。精米所 D では、資金力がないため現在のところ契約栽培等はできないが、

今後、資金ができれば契約栽培等も試みたいようであった。既にエーヤーワディ管区では、

精米所が農家と契約し、契約農家には価格の上乗せなしで優良種子を提供して自社用のコ

メを生産させているケースが出ているとのことで、今後、ネピドー地域でも同様のことが

起こってくるであろう。設備投資や契約栽培により、品質の良いコメを大量に加工するこ

とができれば、輸出も可能になるのではないか、というのは精米所 C も精米所 D も口にし

ている。精米業側が徐々にその勢力を川上、川下に広げていくことになるのではないかと

思われる。 こうした状況下では、農家が利益を確保するために、農家側も川下に向けてその勢力を

伸ばしていくことが望ましい。品質を維持できる貯蔵、精米業への参入を視野に入れてい

かなければ、付加価値はどんどん川下に持っていかれてしまう。農家組合が精米を行い、

精米業者と競合できるまでの力を付ける等、将来的には組織化と組織的な事業の実施が必

要になってくると思われる。 また、国全体のコメ品質の底上げには、品質基準を設け、それをチェックできる体制を

整えることが必要であろう。価格への影響が大きいいくつかの要因について、基準値を設

けてコメの規格化を図り、数値で管理していくことが、品質の具体的な向上につながる。

また、数値管理が定着すれば、生産・加工全体がその影響を受け、各段階での技術向上も

期待できると考えられる。11 月に DOA 職員を対象に実施した分析研修は、品質を数値化

する分析技術の移転を目指したものであり、研修を受けた DOA 職員は、将来、ミャンマ

ーにおいて白米のグレードを設定するときに役立つと高く評価した。 一方で、検査体制が整わない間は、品質を理由にコメの販売価格を下げられないために

も、精米業者あるいはブローカーだけでなく農家が自身で数値を測ることができるよう、

農家も資機材を所持して、品質を評価できることが必要になるであろう。当初は、収穫後

処理専門家が提言するように、T/S の事務所が水分計を持ち、事務所から農家や精米所に

それを貸与していくことが現実的ではないだろうか。

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生産から小売までのバリューチェーンを見たとき、価値を増大させるためには、まずは

前述したとおり、数値による品質管理が必要である。一方、農家や農村の精米所にコスト

増や大きな投資を求めることは極めて困難であり、手始めに 1 点あるいは 2 点に絞って、

品質を数字で見ることから始めることが望ましいと考えられる。例えば、11 月の派遣で、

小売されているコメにカビが認められたことから、適切な水分管理と、精米業者にとって

負担の大きい赤米の防除は、非常に重要かつ基礎的なものである。また、2 月の派遣で確

認された害虫による被害は相当のものがあると思われたが、農家や精米所の認識は甘かっ

た。こうした被害も数値化によって理解が深まるだろう。いくつかの重点項目を定め、そ

れをバリューチェーン全体で徹底することが、まずは求められる。

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