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4062
沖縄における環境共生型高齢者施設の居住環境に関する研究
その 2 個室止共用部分の温熱環境の評価
4 環境工学ー21 環境設計・地球環境
自然通風設計者実測
主観申告調査垂直温度分布快適性
1 はじめに
本研究で対象とする施設は,亜熱帯気候下でパッシブ
な環境調整手法を取り入れ,機械空調を用いない共用空
間が計画された高齢者施設である。設計者は,共用部分
と個室聞の間仕切りにあえてがらりを設けるなどして,
ともすると個室にこもりがちな高齢者の日常生活を改善
しようと計画した。環境工学の視点からは建物全体とし
て通風を利用し易い計画とするなど,空間と環境計画の
融合が図られている。
本研究は,設計者の意図と実際の運用,さらに実現さ
れている温熱環境止の対応を検討することで,亜熱帯気
候下での環境共生型高齢者施設の今後のあり方を探ろう
とするものである。
「その 1 J J)では,対象施設に取り入れられたパッシ
プな環境調整手法の効果を検討した。本稿では,それに
引き続き,施設内部の温熱環境の評価を行う。
2 施設の概要
対象施設は,沖縄県うるま市平安座島に位置する。図
1 に示すように南側に開けた「コの字型J をした RC 造 2
階建て(延べ床面積 1244仙の建物 (2006 年 3 月竣工)
である。施設の南方に海が広がり,北方は山である。東
西には住宅が立ち並んでいる。 1F は高齢者福祉施設デイ
サービスセンターとして, 2F は 1F のデイサービスセン
タ一利用者と一般の宿泊客向けの宿泊施設として運営さ
れている。 1F には中庭を取り囲む全面開放できる窓(写
真, )が, 2F には屋上庭園を取り閤む窓(写真 2 )があ
る。屋根は緑化されており, 2F デッキ部は屋上庭園とな
っている。
3 測定の概要
測定項目と測定機器ならびに測定場所を表 1 に,施設
平面図と測定位置を図 1 に,断面図を図 2 に示す。
夏季の測定は 2007 年 9 月 6 日夕方から 21 日に行い,
続いて 11 月 13 日夕方まで中間期の測定を行った。なお,
夏季の測定期間中は雨天が多く, 日を通してほぼ晴天
であったのは 9 月 8 , 12 , 13 日の 3 日聞のみであった。
測定場所は,施設内でよく利用されている 1F 食堂, 2F
北側廊下,東側の個室(夏季のみ)と西側の個室,屋外
の気象(図 1 中の MAWS) などである。
刻項目
量直逼庫分布
11<射温度室内温調度
重肉風速
水平面全実目射量
外気温
舛賞理直
外観風速
F
平成 20 年度日本建築学会近畿主部研究報告集
正会員
正会員
。河井敏明.,同辻原万規彦叫
細井昭憲・3 同安浪タ{圭"
F
ー垂直温度分布
。グローブ温虚肘
温墨度センサ
且遷!t
1 F 平面図
⑥
図 1 施設平面図と測定位置
表 1 測定項目と測定場所一覧劃定梱器 調定場所 調定置さ
"電対東側・面倒個室 2FL+O-45∞計12点
問ロフト (2FL+23851 ロコ卜Fl+{l-2115 計3 点
ゲロブ~度計 IF食堂 lFL+ !1∞
温調度センサ 2F北側共用廊下 2FL+11 00
熱量且遺骨十 裏側・西側個室 ZFL+ 11∞
凪AIS デッキ部分
A study on Living Environment of Environmentally Symb�tic Housing for Elderly People in Okinawa
Part 2 Evaluation of the Thermal Environment
KAWAI Toshiaki , HOSOI Akinori , TSU]IHARA Makihiko and YAS開AMI Yuka
245
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ー-IF気温
"1 一山 即日い-_._._--_._-.--. .-."' 里町± 圃・・証T' …1 0 ・ーーー 1 1"..
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初
1F風車
E 空 ~~ê~!!~~~~~~~~~~~~~~~~9 月 12 日の IF 食堂の温熱環境図 3
2F の窓写真 2IF の窓と中庭写真 1
[・\巨】
2
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4 共同部分の温熱環境の評価
( 1) SEl*の計算結果
夏季に軽作業を行っている状態を想定して, 着衣量
0.3clo,代謝量1. 1 met として, SET*を計算した。また参
考のために,屋外の SET*についても,日射を考慮した平
均放射温度 21 を用いて計算した。ただし,全天日射量し
か測定できていないので,アノレベドを芝生相当の O. 22
として,水平面より 下半球仰lの日 射量を推定して用いた。
また,中間期では着衣量 0.7clo とした。
図 3 と図 4 に,夏季の温熱環境として晴天であった 9
月 12 日の lF 食堂, 2F 共用廊下ならびに外部の結果を示
す。また,中間期の温熱環境として図 5 と図 6 に,閉じ
く晴天であった 11 月 1 2 日の結果を示す。 なお , lF の風
速は 10 月 9 日以降欠測であったので,それ以前のデータ
から風速比を計算し, 11 月 12 日の屋外の風速から推定
した。
9 月 12 日の lF では, 10 守 00 頃ー 16:00 頃までは南側の
窓を閉鎖して冷房を使用し,その後 20:00 頃まで窓を全
面開放した@窓を全面開放した際に,通風が得られれば,
冷房を用いず t も, SET*は 28"(;程度であった。一方, 2F
については窓の開閉は成り行きとしたが,風速が 0.4m/s
程度以上観測された 12:00 頃から 17:00 頃までは SET*I;!:
28"(;程度であった。この時,屋外の SET*は 35"(; を超える
こともある止推定された。ただし,屋外の SET*は,室内
のグロープ温度を用いて推定したため,注意を要する。
なお,夜間については,屋外の SET*の方が 5"(;程度低い
と推定された。
lF 食堂はデイサービス時に主に利用される室であ る
ため,室内としての温熱環境を実現する必要があり,窓
開閉による通風だけでは不十分なことも考えられる。一
方, 2F 北側共用廊下は, 種の半屋外空間として促えれ
ば,昼間は日射の遮蔽と通風の確保などによって屋外の
気候を良〈緩和し,機械空調を用いずとも,ある程度の
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外・SET'吻
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施設の断面図図 2
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9 月 12 日 の 2F 共用廊下止外部の温熱環境
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図 4
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*~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 11 月 12 日の 2F 共用廊下と外部の温熱環境
246
図 5
図 6
外陣SET.
2F SEto 匂周回-
一-2F気温
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ーーー外".. ーー一外陣SET
ーー-2F鳳逮
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f決議な温熱望室漆をヲ客機オずきていると震えよう窃ただし,
夜間については淳一外的方がより倹遂な潔裁と宇設定された。
11 月 12 日の lF の SET*I立, 23-27"(:(!) 燃であり,一日
を過して比較的快滋な護費草壁であったと数える。…プJ , 2F
Oコ塁塁間の 3主T*I立 3守℃を産量えることもあったがヲこれには
務次塗を O.7c1 o として計事事したことも議長後しており,建
設緩祭の言霊祭双差芝若手iこ尊重とる霊長主主て'ふったのぞ, 実際iこ
はよ号低い意義となるをす書主役も主ちる。このようなことから歩
中間期については, ~者E警などを{使総せずとも比較的快適
な撮熱環境が災害誌できると考えられる匂
(2 ) ま根底告をき言捕ま差。う車善悪
事月 12 おに, lF 0コ綴長 11 名,デイサーどス利用者 10
名を対象に,また絞め総長 S 名を対議長;こ I 1議冷塁塁と狭議
護主(ともに?長全然}などの玉緩や祭事毒液会fすった。さら
に, 中間務的袈終てí[査後;こも IF 車護霊堂 9~ , 2F 軍基主義 5
名を対象に問機(!)Ì緩申告調査を干すっ
表 21こ調査を総長長をアドす。。が f どちらでもない j , +{闘
が{暑い i も L くは f快適J であるの
夏季については, IF , 2F ともに幾鰯め SET*がお℃を
ま室えることが多いにもかかわらず含 IF 0ヲ;夜を徐いて,三主
義毒患を苦言建去をゆぞは, ì議冷護主では fどちらでもなし 'J 1こ近く,
快適惑では fやや倹i遭j 以上0) 3宰絡が与えられていた。
主観申告総還をからもある程度(!)快i議な重量挙立を実境できて
いると苦言えるが,施設職員のi読書寝殿場誌に対する挺え方 iと
熔がある湾総絞もあるc
中摺lJl壊についてはき混冷J惑と?長i欝葬祭ともほぼ中主主主義で
ある。絞め殺冷擦については雀 lF , 2F ともに fややt哀し
いj よさ}ぬま議長長でふるが, IF (!)獲についてはやや緩
かい.長時で l'ややフ引先J f剣(!)悲喜男堅守あった窃夜夜 iこ冷気i
された外絞め影響を受けにくかった官?能性が考えられるむ
淡立 三三重量Eþきま露ままの革委漆 {王手主語鐙}
織:尖径?と偽殺総かg織a に 自白食事"農の 3霊祭 自倖鱗鍛
lF 2f " !f
革命毒事 O. 58 (3, -~~ -{}, 25 (j.-2, 値 1 臨時, ~2; 山悲喜む (告,蝋"帝時(岳山!o崎}
快適感 0.42 (:1. -2:1 L 67 (2, t) 0.44 0 ,・" 8 帥 (L -1}
温冷車寄 -0.38 (3,引 0.50 (2, -2) 。 11 (1 ,ー1) 0,20 (l寸〉緩{Il叩 13椅}
快適懇 号 1� (2, ~2; L 50 (2 , 1) O. Jl (1.0) 府立 40 (1 ,糊1)
選J令書Z 1.20 Cl 昔} 骨量。 O. 幽-2) 0.33 (1,ベ: いな悌怜-))議 (1草帥21 善寺}
快適惑 ー企部(1,-1) 1樹 íZ,1ì l-�.33 (1 官1) な 40 Ii告, -0
5 , i幾3撃の;皐熱E置宅建Q)喜平織
(1)重量獲温度分1'fï
終悶冷厳 OFP であった 9 Jl 8 日の西側め繍釜(!)室長議室撮
i案分布を 3 時間おきに隠?にがす2 また, I理じく終日冷
QFF -r:あった 11 Jl 12 認め滋章者 (!)f調室互の雲監 i葱綴控室分を
護霊蔀に示す。選定数段5家 J仁詩整さ {糊]であり, ~静 f寺11主主整中
心付近{上下;こ 12 点L .接待11ま P アト'1'心付近{上下 iこ
3 是正)のi量産である G
事 j守 8 臼西側め綴き較では,夜潤から午前中にかけて混
波勾統がみられるが,午後にはほとんどみられなくなっ
夜罪号 iこは昼間 iこ上ヒペて外部風速がfj、さくなるため,
(!)j重態最も少なくえよ号を案内の裂き廷が生業持されにく
かったためと考えられる。
II 月 12 ß(!)思議選からタコちにかけての言霊祭ぎの総漢の混
合ヨ叡 1;1 , 事Jl (!) I麓淡勾高è'こはベ,綴然主主義豪かった。夕
方から夜にかけては,慾な盗度勾哲己が免られたが, ft還
と天井面での蓄熱と意義内の気流性状との関係による影響
も考えられる。
(.2) SEh,の訴事車線然
若草{長ij(!)綴 2藍を女守護裂として 4 (!) (1)
を雪十饗したま事主義を z 塁塁 9-~ 12
であった 9 J.1 8ß の疑問の SET叫立 2
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30 'C近くであり,夜間は逆に外気泡よりも高く , 27-28"(;
程度である。また,終 日冷房 ON であった 12 日でも 17:00
-18: 00 の SET*が高くなっており, 12 時から 18 時まで
冷房 ON であった 13 日では,冷房を OFF にした後,急激
に SET*が上昇した。いわゆる 「西日 J の影響が考えられ,
個室の利用開始時間に応じた冷房の利用を考えるべきで
あろう 。
一方 , 11 月 1 2 日は終日冷房 OFF であったが,風速が
O.3m/s を超えることも多かったためもあり,昼間でも
SET*は 2 5"(;前後と,快適な環境を実現できていた。
宿泊客は昼間に利用す る ことは少ないと考えられるの
で,夏季における昼間の冷房は必ずしも必要とまでは言
えない。しかし,この宿泊施設では,昼間にデイサー ビ
スを使用している高齢者も宿泊するこ とを考えれば,夜
間には冷房の使用を考える必要があろう九一方,中間
期については,窓な どを開放して通風を得ることで,快
適な温熱環境が実現できていると言える。
まとめ
沖縄に位置する環境共生型高齢者施設の室内の温熱環
境を検討した。得られた知見は以下の通りである 。
①2F の共用部分を一種の半屋外空間として捉えれば,夏
季の昼間であっても,空調を用いずに,ある程度の快
適な温勲環境が実現されていた。
②主観申告調査からみても,概ね快適な温熱環境を実現
できていると 言えるが,夏季については温熱環境の捉
え方に幅があることが考えられた。
③2F 個室では高齢者も宿泊することを考えると,利用者
が少ない昼間はともかく,夜間については冷房の利用
を考える必要がある。
今回の長期測定では , 実際に運営されている施設を対
象としたため,施般にある数多くの開 口部の開閉や冷房
の ON/OFF の運用状況を詳細に杷復することが厳しく,デ
ークの分析の際に問題となった。今後の課題である。
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酎辞
本研究!ま , 2007 年度住宅総合研究財団研究助成 (No. 01 22) による成果で
ある.また. (有)へしき且取締役宮里恵郡美鎌,間宮墨書一僚会はじめ!
鑑恕胆目的皆傑 デイサー ピスセンタ 利用者白方々にご協力金匝いた.
記して謝意を表す.
なお,本研究は 当時熊本県立大学環境共生学部 4 年生町黒木夢予さん
の卒業研究として行われた. また,調査の障には,問じく縮図裕也君の協
力を得た.
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.考文鰍\)黒木夢予,師弁昭恵,問弁敏明 1 辻原万幾彦,安汲夕佳}沖縄における
E環境共生聖高齢者施置の居住環績に聞する研究 その 1 パァシプ環
揖同盟手法的効果p 日 本樋畢学会九州支師研究報告!第".号 2 [環!I!系1. pp. 429- 422 , 2008.3
2) 辻原万縦jf . 中村泰人ほか 3 名 温睡多用絶角度における圭置型アーケード内部の温熱環境的評箇. 日 本題築学会計画系ci女象. 11 5! 4 号. pp. 43 -50. 1998. 12
3) 日 本健築学会園 高齢者が気併もよく 暮らすには, 筏鳳量出血 2005.8
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AS50C. Prof., Prefectural University of ku阻嗣to, Ot. Eng Senior Lecturer , Prefecturel Universi ty of Kur凶回凶, Dr. Eng
Assistsnt , Prefectural Un茁ersity of K畑~則。, J,I. ES5.
-248-
准教綬樽士 (工学)
講師・何事士{工学)
助手修士(環筑共生学)
叫 京都大学大学院地球殿境学舎 大学院生 e 修士(工学}
級建察土専務所問弁移務所熊本県立大学環境共生虫学部居住環境学専攻
熊本県立大学環境共生学鶴居住環境学専攻熊本県立大学環境共生掌郎居住環境学専攻
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