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Agilent 89600 ベクトル信号解析 ソフトウェア オプション BHD 3GPP LTE 変調解析 Technical Overview /デモ・ガイド

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Agilent89600ベクトル信号解析 ソフトウェアオプションBHD 3GPP LTE変調解析

Technical Overview/デモ・ガイド

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目次 LTE技術概要 ............................................................................................................................3 伝送帯域幅 .............................................................................................................................3 伝送方式 .................................................................................................................................3 デュプレックス技術 .............................................................................................................3 変調とコード化 .....................................................................................................................3 物理層チャネル .....................................................................................................................4 ダウンリンクの物理層チャネルと信号 ...............................................................................4 ダウンリンクのタイム・ドメイン・フレーム構造 ...........................................................5 アップリンクの物理層チャネルと信号 ...............................................................................6 アップリンクのタイム・ドメイン・フレーム構造 ...........................................................6 アップリンクとダウンリンクの物理リソース ...................................................................7測定とトラブルシューティングのシーケンス .......................................................................8 デモのセットアップ .............................................................................................................9スペクトラム/タイム・ドメイン測定 ................................................................................10 占有帯域幅とパワーの測定 ...............................................................................................11 スペクトログラム表示の使用 ...........................................................................................13基本的なデジタル復調 ...........................................................................................................15 Format タブのパラメータの概要 ....................................................................................16 Profile タブのパラメータの概要 .....................................................................................17高度なデジタル復調 ...............................................................................................................22 個々のチャネル・タイプの解析 .......................................................................................25 LTE のアップリンク信号の解析 ......................................................................................29まとめ ......................................................................................................................................32用語集 ......................................................................................................................................32関連カタログ ..........................................................................................................................33Webリソース ........................................................................................................................33

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W-CDMAに基づく第 3世代(3G)無線システムは、広く世界中で使用されています。W-CDMAは、ダウンリンクとアップリンクの両方のモードで高速パケット・アクセス(HSPA)を提供することにより、当分のあいだ十分な競争力を維持できると思われます。 そして、現在、将来にわたって 3Gシステムの競争力を確実にするため、LTE(Long-Term Evolution)と呼ばれる第 3世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)アクセス・テクノロジーの新しい規格が 3GPP規格のリリース 8で策定中です。LTE仕様は、現在のHSPA実装に比べて、容量の増加、スペクトラム効率の改善、サービスエリアの拡大、待ち時間の短縮を実現するための枠組みを提供します。さらに、MIMO(Multiple Input and Multiple Output)アンテナによる送信をサポートすることで、スループットの改善と、容量または範囲の拡大を実現します。

このセクションでは、LTE物理層に関する高レベルの解説を行います。

伝送帯域幅国際的な無線マーケットと地域のスペクトラム規制に対応するため、LTEにはさまざまなチャネル帯域幅が規定されており、1.4 ~ 20 MHz の範囲で選択可能です。サブキャリアの間隔は 15 kHz です。MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)の場合、7.5 kHz のサブキャリア間隔も可能です。サブキャリア間隔はチャネル帯域幅に関わらず一定です。異なるスペクトラム割り当て幅での動作を可能にするため、OFDMサブキャリアの数を変えることで伝送帯域幅が変更されます。

伝送方式LTEのダウンリンクの伝送方式としては、直交周波数分割多重方式(OFDM)が用いられます。LTEのアップリンクの伝送方式としては、単一搬送波周波数分割多元接続(SC-FDMA)が用いられます。この方式はまた DFT 拡散OFDM(DFTS-OFDM)とも呼ばれます。ダウンリンクのOFDMは、高いピーク・データ・レートを実現します。アップリンクの SC-FDMAは、OFDMよりもユーザ機器に適しています。それは、ピーク対アベレージ・パワー比(PAPR)が小さいため、パワー効率とバッテリ寿命の改善に効果があるからです。

デュプレックス技術ペアのスペクトラムとペアでないスペクトラムのどちらでも伝送を可能にするため、LTEのエア・インタフェースは周波数分割デュプレックス(FDD)と時分割デュプレックス(TDD)の両方のモードをサポートします。

変調とコード化HSDPA(High Speed Data Packet Access)と同様、LTEシステムもアダプティブ変調/コード化(AMC)を使ってデータ・スループットを改善しています。この手法は、各ユーザに対するチャネルの条件に基づいて、ダウンリンクの変調コード化方式を変化させるものです。リンク品質が良好な場合、LTEシステムはより高度な変調方式(1シンボルあたりのビット数が多いもの)を使用してシステム容量を増やすことができます。これに対して、信号フェージングなどの問題によりリンク条件がよくない場合、LTEシステムはより丈夫な単純な変調方式に切り替えて、無線リンクのマージンを確保します。ダウンリンクとアップリンクのペイロードに対してサポートされる変調方式としては、QPSK、16QAM、64QAMがあります。基準信号と同期信号には、CAZAC(Constant Amplitude Zero-Auto-Correlation)変調シーケンスが用いられます。

LTE FDDの伝送帯域幅 1.4 3 5 10 15 20

サブキャリアの数 72 180 300 600 900 1200

LTE技術概要

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LTE の TrCH では、2 種類のチャネル・コード化方式が用いられます。UL-SCH、DL-SCH、PCH、MCHに対するターボ・コーディングと、BCHに対するテイル・バイティング・コンボリューショナル・コーディングです。どちらの方式でも、コーディング・レートはR=1/3 です。制御情報は、テイル・バイティング・コンボリューショナル・コーディング、ブロック・コード、反復コードなど、さまざまな方式でコード化されます。

物理層チャネルLTE のダウンリンクとアップリンクは、物理層チャネルの 2つの組から構成されます。1つは物理チャネル、もう 1つは物理信号です。物理チャネルは上位レイヤからの情報を伝達するもので、ユーザ・データとユーザ制御情報の伝達に用いられます。物理信号は、システム同期、セル識別、無線チャネル予測に用いられ、上位レイヤから生じる情報は伝達しません。

ダウンリンクの物理層チャネルと信号ダウンリンクの物理チャネルには、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)、PDCCH(Physical Downlink Control Channel )、PBCH(Physical Broadcast Channel)があります。ダウンリンクの物理信号は、基準信号(RS)と同期信号です。下の表 1に、ダウンリンクのチャネルと信号のそれぞれの変調方式と目的を示します。

表1. LTEのダウンリンクのチャネルと信号

ダウンリンク・チャネル 正式名称 変調方式 目的

PBCH Physical Broadcast Channel QPSK セル固有の情報を伝達

PDCCH Physical Downlink Control Channel QPSK スケジューリング、ACK/NACK

PDSCH Physical Downlink Shared ChannelQPSK 16QAM64QAM

ペイロード

PMCH Physical Multicast ChannelQPSK 16QAM64QAM

MBMS(Multimedia Broadcast MulticastService)のペイロード

PCFICHPhysical Control Format IndicatorChannel

QPSKサブフレーム中で PDCCH の伝送に用いられる OFDM シンボル(1、2、3)の情報を伝達

PHICH Physical Hybrid ARQ Indicator Channel3GPP TS 36.211V8.1.0では未定義

ハイブリッド ARQ ACK/NAK を伝達

ダウンリンク信号 正式名称 変調

シーケンス 目的

P-SCH Primary Synchronization Channel3つの Zadoff-Chuシーケンスの 1つ

UE によるセル探索/識別に使用。セル ID の一部を伝達(3 つの直交シーケンスの 1 つ)

S-SCH Secondary Synchronization Channel

2つの 31ビットMシーケンス(バイナリ)-

170のセル IDの 1つおよびその他の情報

UE によるセル探索/識別に使用。セル ID の残りを伝達(170 のバイナリ・シーケンスの 1 つ)

RS Reference Signal(パイロット)

セル IDで定義される OS*PRS(P-SCH/

S-SCH)

ダウンリンク・チャネル予測に使用。正確なシーケンスはセル ID から導出(3 × 170 = 510 のうちの 1 つ)

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ダウンリンクのタイム・ドメイン・フレーム構造LTE には 2 種類の無線フレーム構造が定義されています。周波数分割デュプレックス(FDD)を使用するタイプ 1フレーム構造と、時分割デュプレックス(TDD)を使用するタイプ 2フレーム構造です。LTEは FDDと TDDの両方をサポートしますが、実用化されるシステムのほとんどは FDDとなる見込みです。このため、現在のAgilent の解析ソリューションは FDDをサポートしており、本デモ・ガイドでも LTE FDDシステムについてだけ説明します。

図 1は、ダウンリンクのタイプ 1 FDDフレーム構造を示します。無線フレームの長さは 10 ms であり、長さ 0.5 ms のスロット 20 個から構成されます。2個のスロットが 1 個のサブフレームとなります。サブフレームは TTI(Transmission Time Interval)とも呼ばれ、長さは 1 ms です。

図 1に示すように、ダウンリンク物理信号/チャネルの物理マッピングは次のようになります。

● 基準信号(パイロット)は、各スロットのOFDMAシンボル 0 と 4 の 6番目ごとのサブキャリアで送信されます。

● PDCCHは、サブフレームの最初のスロットのOFDMシンボル 0、1、2で送信されます。各サブフレームで複数の PDCCHを送信できます。

● P-SCH は、各無線フレームのスロット 0 と 10 の OFDMシンボル 6 のDCサブキャリアを中心とした 72 個の予約されたサブキャリアのうち 62個で送信されます。

● S-SCH は、各無線フレームのスロット 0 と 10 の OFDMシンボル 5 のDCサブキャリアを中心とした 72 個の予約されたサブキャリアのうち 62個で送信されます。

● PBCHは、スロット 0の OFDMAシンボル 3と 4およびスロット 1のシンボル 0と 1 の DCを中心とした 72 個のサブキャリアで送信されます。基準信号サブキャリアは除きます。

● PDSCHは、上記のチャネルと信号によって占められていないすべての割り当て済みOFDMサブキャリアで送信されます。

DLN 個のOFDMシンボル(ノーマルCPでは7個のOFDMシンボル)symb

Cyclic Prefix(CP)は、各シンボルの前にシンボルの終わりの部分をコピーすることによって作成されます。

P-SCH – Primary Synchronization ChannelS-SCH – Secondary Synchronization ChannelPBCH – Physical Broadcast ChannelPDCCH – Physical Downlink Control ChannelPDSCH – Physical Downlink Shared Channel基準信号 - (パイロット)

1サブフレーム= 2スロット= 1 ms

1スロット= 0.5 ms

1フレーム= 10サブフレーム= 10 ms

以下同様CP 0 CP 1 CP 2 CP 3 CP 4 CP 5 CP 6

0 1 2 3 4 5 6 0 1 2 3 4 5 6

#0 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #15 #16 #17 #18 #19

図1. ダウンリンクのタイプ1 FDDフレーム構造

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アップリンクの物理層チャネルと信号アップリンク(UL)の物理チャネルには、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel)、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)、PRACH(Physical Random Access Channel)があります。アップリンクの基準信号としては 2種類がサポートされています。1つは復調基準信号(DM-RS)で、PUSCHまたはPUCCHの伝送と関連付けられます。もう1つはサウンディング基準信号(S-RS)で、PUSCHまたは PUCCHの伝送と関連付けられません。下の表 2に、アップリンクのチャネルと信号のそれぞれの変調方式と目的を示します。

アップリンクのタイム・ドメイン・フレーム構造アップリンク(UL)の FDDフレーム構造は、フレーム、サブフレーム、スロットの長さに関してはダウンリンク(DL)のフレーム構造と共通です。アップリンクのフレーム構造を下の図 2に示します。

アップリンクの復調基準信号は、コヒーレント復調のためのチャネル予測に用いられるもので、各スロットの 4番目のシンボル(シンボル 3)で送信されます。

表2. LTEのアップリンクのチャネルと信号

アップリンク・チャネル 正式名称 変調方式 目的

PRACH Physical Random Access Channel QPSK 呼設定

PUCCH Physical Uplink Control Channel BPSK、QPSK スケジューリング、ACK/NACK

PUSCH Physical Uplink Shared ChannelQPSK 16QAM64QAM

ペイロード

アップリンク信号 正式名称 変調

シーケンス 目的

DM-RS Demodulation Reference Signalu乗根Zadoff-Chu

UE との同期および UL チャネル予測に使用

S-RS Sounding Reference Signal Zadoff-Chu UE に対する伝搬条件のモニタに使用

DLN 個のOFDMシンボル(ノーマルCPでは7個のOFDMシンボル)symb

Cyclic Prefix(CP)は、各シンボルの前にシンボルの終わりの部分をコピーすることによって作成されます。

PUSCH – Physical Uplink shared Channel基準信号-(復調)

1サブフレーム= 2スロット= 1 ms

1スロット= 0.5 ms

1フレーム= 10サブフレーム= 10 ms

以下同様CP 0 CP 1 CP 2 CP 3 CP 4 CP 5 CP 6

0 1 2 3 4 5 6 0 1 2 3 4 5 6

#0 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #15 #16 #17 #18 #19

図2. アップリンクのタイプ1 FDDフレーム構造

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アップリンクとダウンリンクの物理リソースアップリンク/ダウンリンク伝送の最小時間 - 周波数単位のことを、リソース・エレメントと呼びます。リソース・エレメントは、1つの OFDMシンボル・インターバルの間の 1つのOFDMサブキャリアに対応します。図 3に示すように、連続するサブキャリアとシンボルのグループが 1個のリソース・ブロック(RB)を構成します。データはRB単位で各ユーザに割り当てられます。

ノーマル巡回プレフィックス(CP)を使用するタイプ 1のフレーム構造の場合、RBは 15 kHz のサブキャリア間隔の 12 個の連続するサブキャリアと、0.5 msのスロット時間にわたる 7個の連続するシンボルを占めます。すなわち、RBには 84 個のリソース・エレメント(12 個のサブキャリア×7個のシンボル)が存在します。これはタイム・ドメインでは 1スロット、周波数ドメインでは180 kHz(12 個のサブキャリア× 15 kHz の間隔)に対応します。RBは 0.5 msのスロットの間の 12 個のサブキャリアと定義されていますが、スケジューリングはサブフレーム(1 ms)単位で実行されます。ノーマルCPを使用した場合、基地局がUEのスケジューリングに使用する最小割り当て単位は、1個のサブフレーム(14 個のシンボル)× 12 個のサブキャリアです。RBのサイズはすべての帯域幅で同一です。したがって、使用可能な物理 RBの数は、表 3のように伝送帯域幅に依存します。

1個のダウンリンク・スロットTslot

リソース・エレメント

Nsymb 個のOFDMシンボルDL

リソース・ブロック

Nsymb x NBW 個のリソース・エレメンDL RB

NB

W個のサブキャリア

DL

NB

W個のサブキャリア

RB

図3. ダウンリンクのリソース・グリッド(3GPP TS 36.211 V8.1.0(2007-11)参照)

表3. アップリンク/ダウンリンクの伝送帯域幅ごとのリソース・ブロック(RB)とサブキャリアの数

LTE FDDのチャネル帯域幅(MHz) 1.4 3 5 10 15 20

リソース・ブロック数 6 15 25 50 75 100

サブキャリア数 72 180 300 600 900 1200

以上のことを知っておけば、89600 VSAソフトウェアを使って LTE信号の試験を始めることができます。

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測定とトラブルシューティングのシーケンス

デジタル変調システムの測定とトラブルシューティングを行う場合、デジタル変調/測定用のツールをただちに使用したい誘惑に駆られます。しかし、通常は測定シーケンスに従う方がよい結果が得られます。このシーケンスでは、最初に基本的なスペクトラム測定を実行し、次に周波数軸および時間軸を組み合わせたベクトル測定を実行してから、基本的なデジタル変調解析に進み、最後に高度な解析や規格固有の解析を行います。本デモ・ガイドでも、このシーケンスを使用します。この測定シーケンスが特に優れている点は、重要な信号の問題を見逃すおそれが少ないことです。

ステップ1:スペクトラム/タイム・ドメイン測定この測定では、周波数/タイム・ドメインでの信号の基本的なパラメータが得られ、ステップ 2で正しい復調を行うための基礎となります。測定パラメータとしては、中心周波数、帯域幅、シンボル・タイミング、パワー、スペクトラム特性などがあります。

ステップ2:基本的なデジタル復調この測定では、コンスタレーションの品質を評価します。これには、コンスタレーションの表示に加えて、EVM、I/Qオフセット、周波数誤差、シンボル・クロック誤差などの静的パラメータがあります。

ステップ3:高度なデジタル復調この測定では、EMVを初めとする基本的な変調パラメータによって明らかにされた問題の原因を調査します。パラメータには、エラー・ベクトル周波数、エラー・ベクトル時間、選択的エラー解析などの動的パラメータが含まれます。

89600 VSAソフトウェアの利点として、保存したタイム・キャプチャ記録をリコールして、ハードウェアからのデータ収集と同様に信号を解析できることが挙げられます。以下の部分では、89600 VSAソフトウェア・デモCDに収録されている LTE信号をリコールして解析します。

スペクトラム/タイム・ドメイン測定基本を確認し、大きな問題を発見

基本的なデジタル復調信号品質、コンスタレーション、基本的なエラー・ベクトル測定

高度なデジタル復調具体的な問題と原因を発見

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デモのセットアップ表 4に、89600 VSA ソフトウェアを動作させるための最小ハードウェア要件を示します。

表 5に、本デモ・ガイドの使用に必要な 89600 VSAソフトウェアを示します。ソフトウェアのコピーをお持ちでない場合は、無料の試用版が www.agilent.co.jp/find/89600からダウンロードできます。

表4. システム要件

Microsoft® Windows® XP ProfessionalMicrosoft® Windows® Vista Business、Enterprise、Ultimate

CPU600 MHz の Pentium® またはAMD-K6 > 600 MHz(> 2 GHz を推奨)

1 GHz の 32-bit(x86)または64-bit(x64)(> 2 GHz を推奨)

空きスロット(デスクトップ)

1 × PCI スロット(2 を推奨 - VXI ハードウェアのみ)

1 × PCI スロット(2 を推奨 - VXI ハードウェアのみ)

空きスロット(ラップトップ)

1 × CardBus Type II スロット(VXI ハードウェアの場合のみ内蔵 FireWire® を推奨)

1 × CardBus Type II スロット(VXI ハードウェアの場合のみ内蔵 FireWire® を推奨)

RAM 512 MB(1 GB を推奨) 1 GB(2 GB を推奨)

ビデオ RAM 4 MB(16 MB を推奨) 128 MB(512 MB を推奨)

ハード・ディスク 空き容量 512 MB 空き容量 512 MB

その他のドライブ

ソフトウェアのロード用の CD-ROM。ライセンス転送には 3.5 インチのフロッピー・ドライブ、ネットワーク・アクセス、USB メモリのいずれかが必要。

ソフトウェアのロード用の CD-ROM。ライセンス転送には 3.5 インチのフロッピー・ドライブ、ネットワーク・アクセス、USB メモリのいずれかが必要。

インタフェース・サポート

LAN、USB、GPIB、またはFireWire1インタフェース(VXI ハードウェアのみ)

LAN、USB、GPIB、またはFireWire1インタフェース(VXI ハードウェアのみ)

表5. ソフトウェア要件

バージョン 89600 バージョン 8.00 以上(89601A、89601AN、89601N12)

オプション -200 -300 -BHD

(89601A、89601AN のみ)基本ベクトル信号解析ハードウェア・コネクティビティ(測定ハードウェアを使用する場合のみ必要)LTE 変調解析

1. サポートされる IEEE-1394(FireWire)インタフェースの一覧については、www.agilent.co.jp/find/89600 で、"What type of IEEE-1394 interface can I use in my computer to connect to the 89600S VXI hardware?" という FAQをご覧ください。

表6. 信号のリコール

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

ソフトウェアをプリセット

File > Preset > Preset All

注記:Preset Allを使用すると、保存されているユーザ・ステート情報がすべて失われます。これを避けるには、Preset Allを使用する前に現在のステートを保存してください。

File > Save > Setup をクリック

注記:メニュー/ツールバー、表示の外観、ユーザ・カラー・マップも同様の方法で保存できます。

5 MHz LTE ダウンリンク信号をリコール File > Recall > Recall Recording(c:\Program Files\Agilent\89600 VSA\Help\Signals)

ダウンリンク記録を選択 LTE_DL _5MHz_adv.sdf を選択Open をクリック

測定を開始   (ツールバーの左側)をクリック

トレース A をオートスケール トレース A を右クリックY Auto Scale を選択

トレース B をオートスケール トレース B を右クリックY Auto Scale を選択

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スペクトラム/タイム・ドメイン測定

トラブルシューティング・プロセスの最初のステップは、トリガ、レンジ、スケーリングなどの信号測定パラメータを設定し、復調を行う前に信号のスペクトラム/タイム・ドメイン上の振る舞いを検証することです。

この 5 MHz FDD LTE信号は、「バースト的」です。すなわち、一部のリソース・ブロック(RB)しかユーザ・データに割り当てられていません。この例では、すべての制御チャネルと RS(パイロット)がアクティブです。しかし、使用可能な 25 個の RBのうち、ユーザ・データに割り当てられているのは 15 個だけです。

このようなバースト信号に対して安定した再現性のあるスペクトラム/時間測定を行うには、トリガが不可欠です。表 7に信号でトリガする方法を示します。正しくトリガすれば、表示は図 4のようになります。

スペクトラム/タイム・ドメイン測定基本を確認し、大きな問題を発見

基本的なデジタル復調信号品質、コンスタレーション、基本的なエラー・ベクトル測定

高度なデジタル復調具体的な問題と原因を発見

表7. トリガの設定

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

分解能を改善するため、RBW フィルタを変更し、周波数ポイント数を増加。自動周波数ポイント選択は、与えられたタイム・キャプチャに対して最善の分解能を選択する。これは必要に応じて変更可能。

Meas Setup > ResBW > ResBW Mode > Arbitrary(プルダウン・メニュー)

Frequency Points >AutoTime(タブ)> Main Time Length > 900 usecClose をクリック

入力信号のトリガ・レベルを設定

Input > Playback Trigger で次を設定:Type = Magnitude(プルダウン・メニュー)Mag Level = 3 mVDelay = -50 usHold-off = 200 usClose をクリック

トレース A とトレース B をオートスケール トレース A を右クリック。Y Auto Scale をクリックトレース B を右クリック。Y Auto Scale をクリック

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表8. OBWの測定

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

OBW トレースを表示 トレース A を右クリックShow OBW を選択

OBW Summary Data テーブルをアクティブ化

トレース B のタイトル(B: Ch1 Main Time)をダブルクリックボックスの左側の Type メニューから Marker を選択ボックスの右側の Data メニューから Obw Summary TrcA を選択OK をクリック

表示は図 5のようになるはずです。

図4. 正しくトリガされた時間/スペクトラム表示

占有帯域幅とパワーの測定占有帯域幅(OBW)測定と OBW Summary Dataテーブルと組み合わせることにより、さまざまな有用な結果を短時間で正確に得ることができます。表 8に示す方法により、OBWと対応する結果の表を表示できます。図 5のトレースBからは、占有帯域幅、バンド・パワー、パワー比などのいくつかの重要な測定をすばやく読み取ることができます。この信号の観測帯域幅は、信号全体を表示できるように約 7 MHz になっていますが、実際の帯域幅は約 4.4 MHz と測定されています。パワー比が表示されていますが、これはユーザ設定可能な機能です。Markers > OBWをクリックすると、OBWパワーと全パワーの比を示すようにボックス内の値を変更できます。

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表9. OBW測定のクリア

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

OBW 表示をクリア

トレース B のタイトル(B: TrcA OBW Summary Data)をダブルクリック表示されるボックスの左側の Type メニューから Channel 1 を選択ボックスの右側の Data メニューから Main Time を選択OK をクリックトレース A を右クリックShow OBW を選択解除

図5. 占有帯域幅測定とOWB Summary Data テーブル

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スペクトログラム表示の使用スペクトログラムとは、信号スペクトラムの時間変化を示す 3次元表示です。これは特にバースト信号の解析に有効です。この表示からは、信号の過渡現象、OFDM信号構造、スペクトラム・スプラッタの特徴を捉えることができます。オーバラップ処理を使うことで、この機能の有効性はさらに高まります。オーバラップ処理とは、各時間レコードに使用する新しいデータの量をアナライザが調整することによって、信号が「スロー・モーション」で再生されるような効果を実現するものです。これは特に、過渡現象の発見と調査に有効です。

表10. スペクトログラム表示の設定

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

トリガをフリー・ランに変更Input > Playback TriggerType = Free Run(プルダウン・メニュー)Close をクリック

時間長を 100 μ s に設定。オーバラップ処理を 95% に設定(後でこれをさらに大きい値に調整して、オーバラップ処理の効果を確認してみてください)

MeasSetup > Time をクリックMain Time Length を 100 usec に設定Max Overlap (Avg Off) を 95% に設定Close をクリック

トレース B のスペクトラム表示を有効化 トレース B のタイトル(B: Ch1 Main Time)をダブルクリックData: 列で Spectrum を選択

トレース A のスペクトログラム表示を有効化

トレース A を右クリックShow Spectrogram を選択

測定を休止して再生を一時停止 ツールバーの休止ボタン    をクリック

スペクトログラム・マーカを有効化(トレース A がアクティブであることを確認)

Markers > SpectrogramTrace Select ボックスをチェックTrace 番号入力ボックスを強調表示し、キーボードの下矢印を使ってスペクトログラム・マーカを移動します。このマーカは最初はトレースのいちばん下に白い横線で表示されます。

下のような RS(パイロット)にマーカを配置します。

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図 6のような表示が得られるはずです。白い横線はスペクトログラム・マーカです。スペクトログラム表示には、6番目ごとのサブキャリアで送信されるRS(パイロット)と、他の制御チャネルおよびユーザ割り当てが明確に示されています。

トレース Bは、5 MHz LTE 信号に存在する 50 個の RS(パイロット)を示します。5 MHzプロファイルには300個のサブキャリアがあります。RS(パイロット)は 6番目ごとのサブキャリアで送信されます。したがって、トレース Bには 50 個の RSトーンが示されています(300/6 = 50)。

トレース Aを右クリックし、Show Spectrogramのチェックを外して、スペクトログラム表示をオフにします。

図6. LTE信号の構造を示すスペクトログラム表示

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基本的なデジタル復調

信号を観察し、スペクトラムや時間に関する大きな問題がないことを確認したら、次のステップは信号を復調することです。表11に示すように、コンスタレーション表示を設定し、LTE復調器を使って基本的な I/Q パラメータを測定します。この記録には、すべての制御チャネルと、変調方式にQPSK、16 QAM、64 QAMを使用した 3つの異なるデータ・チャネルがあります。

表11. LTE復調器の設定

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

2 × 2 のグリッドに 4 つのトレースを表示するように表示を変更 Display > Layout > Grid 2x2

LTE 復調器を選択 MeasSetup > Demodulator > 3G Cellular > LTE

ダウンリンク解析用に復調器を設定

各タブとパラメータの説明については下を参照

MeasSetup > Demod Properties > Format(タブ)Downlink ラジオ・ボタンをクリックPreset to Standard... ボックスをクリックし、ドロップダウン・メニューから 5 MHz (25 RB) を選択各サブフレーム(Sf)Sf0 ~ Sf9 に対して PDCCH Allocation フィールドが 3 に設定されていることを確認

Cell ID 0 が選択されていることを確認

リソース・ブロック(RB)の自動検出を選択

Profile(タブ)を選択RB Auto Detect をチェックClose をクリック

復調を開始 Restart > を押す

次のセクションでは、MeasSetup > Demod Propertiesメニューの Formatタブと Profileタブにあるさまざまなパラメータについて説明します。この情報は、信号を復調するためにアナライザを設定する際の指針となります。この情報はヘルプ・テキストに記載されています。89600 VSAソフトウェアでは、多くのパラメータを手動で設定できます。また、信号作成用にAgilent Signal Studioを使用している場合は、この製品で作成したセットアップ・ファイルも使用できます。復調を正しく行うには、解析セットアップが送信信号に一致する必要があります。

スペクトラム/タイム・ドメイン測定基本を確認し、大きな問題を発見

基本的なデジタル復調信号品質、コンスタレーション、基本的なエラー・ベクトル測定

高度なデジタル復調具体的な問題と原因を発見

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Format タブのパラメータの概要

BW:ドロップダウン・リストから LTE の帯域幅を選択します。範囲は 1.4 MHz ~ 20 MHz です。

Preset to Standard:このボタンは、すべての復調パラメータをデフォルト値にプリセットし、測定器のスパンを測定に適したスパンにプリセットします。

CP Length:送信信号に使用する巡回プレフィックスを選択します。"Normal"と "Extended" のどちらかを選択できます。ソフトウェアに自動的に選択させることも、ユーザが手動で指定することもできます。

Downlink:解析の方向を選択します。ダウンリンクはBTS送信、UE受信です。

RS-OS:基準信号(RS)に使用する直交シーケンス(OS)を選択します。ソフトウェアに自動的に選択させることも、ユーザが手動で指定することもできます。

PRS:基準信号(RS)に使用する疑似ランダム・シーケンス(PRB)を選択します。ソフトウェアに自動的に選択させることも、ユーザが手動で指定することもできます。

RS Cell Specific Frequency Shift:どのサブキャリアがRSを含むかを決定します。このパラメータを使うと、バースト中の各サブフレームのサブキャリア・オフセットを指定できます。

PDCCH Allocation:サブフレームごとに PDCCHに割り当てられるOFDMシンボルの数を決定します。サブフレームごとの PDCCH割り当ての有効範囲は0~ 3で、0はそのサブフレームに PDCCHが割り当てられないことを示し、1つのサブフレームに割り当てられる最大シンボル数は 3です。

TX Antenna:ダウンリンク・トランスミッタは最大 4個の異なるアンテナ・ポートを持つことができます。各アンテナ・ポートの RSシーケンスを復調することで、各アンテナ・ポートにおいて解析を行うことができます。

Cell ID:セル IDは、プライマリ同期信号の発生に用いられる Zadoff-Chu シーケンスを決定します。

Uplink:解析の方向を選択します。アップリンクはUE送信、BTS受信です。

Zadoff-Chu Index:アップリンク復調基準信号(DM-RS)に使用される Zadoff-Chu シーケンスを決定します。DM-RS はアップリンク同期に用いられるので、復調を正しく行うには入力信号に合わせて Zadoff-Chu インデックスを正しく設定する必要があります。

図7. LTE復調の Format タブ

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Profile タブのパラメータの概要

RB Auto Detect:各ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)に使用される変調方式に基づいて、各バーストのリソース・ブロック(RB)とスロット割り当てを自動検出します。

Burst:ダウンリンクでは最大 6個のユーザ・データ・チャネル(PDSCH)がサポートされます。

Mod Type:データ・チャネルに用いられる変調方式を指定します(QPSK、16 QAM、64 QAM)。

RB Start/RB End:特定のデータ・チャネルのRB割り当て(周波数ドメイン)を指定します。

Slot Start/End:特定のデータ・チャネルのタイム・スロット割り当て(タイム・ドメイン)を指定します。

EVM and Power Composite Result Definition:どの制御チャネルを解析して結果に含めるかを選択できます。チェックを外したチャネルはすべての結果から除外されます。ただし、Frame Summary トレースからは除外されません。

図8. LTE復調のProfile タブ

表12. フレーム・サマリ情報の表示

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

トレース C をフレーム・サマリ表示に変更

トレース C のトレース・タイトル(C: Ch1 OFDM Err Vect Spectrum)をダブルクリックData: 列で Frame Summary を選択OK をクリック

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下の図 9のような画面が表示されるはずです。トレースのいくつかを見てみましょう。

トレース A:複合コンスタレーション・ダイアグラムで、トレースCに示すようにチャネル・タイプによって色分けされています。RS(パイロット)は、直交シーケンス(OS)と疑似ランダム・シーケンス(PRS)を変調に使用しており、コンスタレーション・ダイアグラムではシアン(明るい青)で示されています。PSCHは Zadoff-Chu シーケンスで送信され、円上の不規則な間隔のポイントで表されます(ピンク)。

トレース C:すべてのアクティブなチャネルのサマリで、各チャネルのEVM、相対パワー、変調方式が示されています。チャネルの色は、コンスタレーション・ダイアグラムなどの他の表示で用いられている色分けに対応しています。

89600 VSA の最大の特長の 1つはエラー解析です。使用可能なさまざまなエラー・トレースについてこれから見ていきます。

図9. LTEのコンスタレーションおよびフレーム・サマリ情報

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表示は図 10 のようになるはずです。

図10. LTEのエラー・トレース

表13. サポートされる複数のEVMトレースの表示

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

6 つのトレースを表示するように表示を変更 Display > Layout > Grid 3x2

リソース・ブロック(RB)ごとの EVMを表示するようにトレース B を変更

トレース B のタイトル(B: Ch1 Spectrum)をダブルクリックData: 列で RB Error Mag Spectrum を選択OK をクリック

サブキャリアごとの EVM を表示するようにトレース C を変更

トレース C のタイトル(C: Ch1 Frame Summary)をダブルクリックData: 列で Error Vector Spectrum を選択OK をクリック

フレーム・サマリを表示するようにトレース D を変更

トレース D のタイトル(D: Ch1 Error Summary)をダブルクリックData: 列で Frame Summary を選択OK をクリック

タイム・スロットごとの EVM を表示するようにトレース E を変更

トレース E のタイトル(E: Ch1 OFDM Err Vect Time)をダブルクリックData: 列で RB Error Mag Time を選択OK をクリック

シンボルごとの EVM を表示するようにトレース F を変更

トレース F のタイトル(F: Ch1 Frame Summary)をダブルクリックData: 列で Error Vector Time を選択OK をクリック

すべてのトレース(トレース D 以外)をオートスケール 各トレースを右クリックして Y Auto Scale をクリック

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トレース B:OFDM RB Error Magnitude Spectrum - 各 RBの EVMを周波数ドメインで示し、そのRB中の各スロットのEVMを表示します。X軸は RB、Y軸は EVM、Z軸はスロットです。この例では 5 MHz の LTEプロファイルを使用しています。X軸に示されているように、これには 25 個の RBがあります。これは、ユーザ割り当てごとのEVM範囲を調べるのに有効な表示です。

トレース C:OFDM Error Vector Spectrum - 各サブキャリアのEVMを示し、測定されたシンボルと基準シンボルとの差をサブキャリアごとに表示します。X軸はサブキャリア、Y軸は EVM、Z軸はシンボルです。5 MHz の LTE信号の場合、300 個のサブキャリア(25 個の RB×12 個のサブキャリア /RB)があります。

トレース E:OFDM RB Error Magnitude Time - 各RBのEVMを測定インターバル中の時間で示し、そのスロットの間の各 RBの EVMを表示します。X軸はスロット、Y軸は EVM、Z軸は RBです。LTEアプリケーションのデフォルトの捕捉インターバルは 1フレーム(20 スロット)です。このトレースは、X軸に示すように 20 スロット分のEVMを示します。

トレース F:OFDM Error Vector Time - 各シンボルのEVMを示し、測定インターバル中の各シンボルに対して、測定されたシンボルと基準シンボルとの差を表示します。X軸はシンボル、Y軸は EVM、Z軸はサブキャリアです。LTEアプリケーションのデフォルトの捕捉インターバルは 20 スロットです。ノーマル巡回プレフィックスを使用した信号の場合、1スロットあたり 7個のシンボルがあります。すなわち、X軸に示されているように、20 スロットには140 個のシンボルがあります。このトレースには、さまざまな制御チャネルが明確に示されています。例えば、PDCCHチャネル(黄色で表示)が各サブフレームの最初の 3個のシンボルを占めていることがはっきりとわかります。

LTEアプリケーションには、各RBと各スロットのパワーを測定する機能もあります。各RB/ スロットのEVMとパワーを両方とも表示してみましょう。

表14. 各 RB/ スロットのパワー

RB ごとのパワーを表示するようにトレース C を変更

トレース C のタイトル(C: Ch1 OFDM Err Vect Spectrum)をダブルクリックData: 列で RB Power Spectrum を選択OK をクリック

トレース C の Y 軸スケールを dB に変更トレース C の Y 軸で Lin Mag をダブルクリックして、Format ドロップダウン・メニューで Log Mag (dB) を選択OK をクリック

スロットごとのパワーを表示するようにトレース F を変更

トレース F のタイトル(F: Ch1 OFDM Err Vect Time)をダブルクリックData: 列で RB Power Time を選択OK をクリック

トレース F の Y 軸スケールを dB に変更トレース F の Y 軸で Lin Mag をダブルクリックして、Format ドロップダウン・メニューで Log Mag (dB) を選択OK をクリック

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完了すると、表示は図 11 のようになるはずです。

トレースBは各 RBの EVM、トレースCは各 RBのパワーを表示しています。同様に、トレース Eは各タイム・スロットの EVM、トレース Fは各タイム・スロットのパワーを表示しています。

図11. RB/ スロットごとのパワー

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高度なデジタル復調

高度な復調技法を使うと、信号のエラーに注目したり、より詳細なトラブルシューティングが可能になるようにアナライザを設定したりできます。

最初に、OFDMエラー・ベクトル時間表示のスロット 0に注目して、信号とそのエラーをさらに注意深く解析してみます。

表15. 選択的スロット解析

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

サブキャリアごとの EVM を表示するようにトレース C を変更

トレース C のタイトル(C: Ch1 OFDM RB Power Spectrum)をダブルクリックData: 列で Error Vector Spectrum を選択OK をクリック

シンボルごとの EVM を表示するようにトレース F を変更

トレース F のタイトル(F: Ch1 OFDM RB Power Time)をダブルクリックData: 列で Error Vector Time を選択OK をクリック

トレース F(シンボルごとの EVM トレース)でスロット 0 にズーム・オン

Markers > Tools > Select area またはツールバーのエリア選択ボックスを使用

クリックしてボタンを押したままドラッグし、最初のタイム・スロットの周りに、最初の X 軸グリッドの半分くらいのボックスを作成Scale X & Y を選択OK をクリックX 軸にシンボル 0 ~ 6 が表示される。そうならない場合は、Trace >X Scale > を選択し、Left Reference を 0 Sym に、Right Reference を6 Sym に設定Close をクリック

トレースFの表示は図 12 のようになるはずです。

スペクトラム/タイム・ドメイン測定基本を確認し、大きな問題を発見

基本的なデジタル復調信号品質、コンスタレーション、基本的なエラー・ベクトル測定

高度なデジタル復調具体的な問題と原因を発見

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スロット 0を見ると、さまざまな情報が得られます。1個のスロットには 7個のシンボルがあることを思い出してください。チャネルのタイプは色分けされており、フレーム・サマリ・トレースで使用される色分けに対応しています。

シンボル 0:RS(シアン)が 6番目ごとのサブキャリアで送信され、PDCCHチャネル(黄色)が残りのサブキャリアで送信されます。

シンボル 1と 2:PDCCHチャネル(黄色)。

シンボル 3:PBCH(明るい緑)が中央の 72 個のサブキャリアで送信されます。残りのサブキャリアは、他の色で示されるユーザ・データ(PDSCH)の送信に用いられます。

シンボル 4:PBCH(明るい緑)が中央の 72 個のサブキャリアで送信されます。RS(シアン)が 6番目ごとのサブキャリアで送信されます。残りのサブキャリアは、他の色で示されるユーザ・データ(PDSCH)の送信に用いられます。

シンボル 5:SSCH(青)が中央の 72 個のサブキャリアで送信されます(予約された 72 個のサブキャリアのうち 62 個だけが使用されます。残りの 10 個のサブキャリアは使用されません)。残りのサブキャリアは、他の色で示されるユーザ・データ(PDSCH)の送信に用いられます。

シンボル 6:PSCH(ピンク)が中央の 72 個のサブキャリアで送信されます(予約された 72 個のサブキャリアのうち 62 個だけが使用されます。残りの 10 個のサブキャリアは使用されません)。残りのサブキャリアは、他の色で示されるユーザ・データ(PDSCH)の送信に用いられます。

フル・スケールに戻すには、Edit > Undo Scaleまたは Trace> X Scale > FullScaleを選択します。

図12. スロット0のみのOFDM EVM。表示される色はチャネル・タイプに対応。

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もう 1つの有用な機能として、マーカ連動があります。この機能を使うと、複数の測定からエラー・ソースを表示できます。例えば、エラーを見つけてそれにマーカを置くと、信号の同じポイントを別のエラー表示で追跡できるようになります。

図13. トレース間で連動するマーカ

表16. マーカ連動

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

RMS トレース(トレース B、C、E、F を通る白い線)をオフにする

トレース B をクリック。Trace > Digital Demod > の下で Show 2DAvg Line のチェックを外すClose をクリック同じことをトレース C、E、Fに対して実行

すべてのトレース(トレース D 以外)をオートスケール 各トレースを右クリックして Y Auto Scale をクリック

表示の間でマーカを連動

トレースを右クリックして Show Marker を選択。これをすべてのトレース(トレース D 以外)に対して実行マーカがすべてのトレース(トレース D 以外)に配置されたら、Markers > Couple Markers を選択してマーカを連動トレース C を右クリックして Peakを選択他のすべての表示のマーカに同じ時間のポイントが異なるエラー表示で示される

表示は図 13 に示すようになるはずです。

マーカは、同じ時間のポイントのデータを、異なるエラー・ドメインで示しています。マーカからはチャネル・タイプに関する情報も得られます。トレースBと Eのマーカ読み値にはチャネル名が表示されず、Composite(複合)と示されています。これは、与えられたRBまたはタイム・スロットに、制御信号とユーザ・データ・チャネルを含む複数のチャネルや信号が存在する可能性があるからです。このため、マーカは 1 つのチャネル名を示すことができず、Composite と表示します。

表17. 連動マーカをオフにする

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

各表示のマーカをオフにする 各トレースを右クリックして Show Marker のチェックを外す

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個々のチャネル・タイプの解析この記録信号には、変調方式としてQPSK、16 QAM、64 QAMを使用した 3つのダウンリンク共有チャネル(PDSCH)があります。QPSKチャネルは最初の5個のRB(サブキャリア-150~サブキャリア-91)を占め、16 QAMのユーザは中央の 5個の RB(サブキャリア- 30 ~サブキャリア 30、DCを除く)を占め、64 QAMのユーザは最後の 5個の RB(サブキャリア 91 ~サブキャリア150)占めます。1個の RBは 12 個のサブキャリアからなりますので、5個のRBには 60 個のサブキャリアがあります。

データ・チャネルだけを対象に測定を行うことによって、上記の割り当てを明確に見ることができます。

解析ソフトウェアでは、選択したチャネルだけを対象にEVM測定を実行できます。データ・チャネルだけに対してEVMを測定し、制御チャネルと制御信号は対象としないようにアナライザを設定してみましょう。

図14. データ・チャネルのみのEVM解析

表18. 解析対象のチャネルの選択

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

制御チャネルと制御信号を解析対象から除外

MeasSetup > Demod Properties > Profile(タブ)P-SCH、S-SCH、PBCH、PDCCH、RS のチェックを外すClose をクリック

画面は図 14 に示すようになるはずです。

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これで、すべてのトレースと EVM結果に、データ・チャネルだけが含まれ、制御チャネルと制御信号は含まれなくなります。各ユーザへの割り当てが、RB、スロット、サブキャリア、シンボルに関してはっきりとわかります。異なるユーザを色分けによって簡単に識別できます。

制御チャネルの解析をオンに戻しましょう。

図15. 解析領域の調整に用いられる復調のTimeタブ

各パラメータの詳細については、89600 ヘルプ・テキストを参照してください。

測定オフセット

測定インターバル

結果の長さ

解析開始境界

0 ms = トリガ

DL:フレーム開始0 ms = UL:最初のスロットの先頭

時間

生メイン時間

サーチ時間

図16. LTE解析領域

表19. 制御チャネルの解析をオンに戻す

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

制御チャネルと制御信号の解析をオンに戻す

MeasSetup > Demod Properties > Profile(タブ)P-SCH、S-SCH、PBCH、PDCCH、RS を選択Close をクリック

解析ソフトウェアでは、詳細なトラブルシューティングのために、信号内の特定のシンボル、スロット、サブフレーム、フレームを選択的に測定できます。シンボル単位の測定を実行する前に、MeasSetup > Demod Propertiesの下のTimeタブを簡単に見てみましょう。ここには、信号の時間長、アライメント、測定領域を示すパラメータが表示されています。

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解析ソフトウェアでは、次のパラメータを変更できます。

Result Length:信号の捕捉長を決定します。これはアナライザが復調と信号解析に使用するデータです。

Analysis Start Boundary:Result Lengthが始まる境界を指定します。ダウンリンク信号の場合、フレーム、半フレーム、サブフレーム、スロット境界からの開始を選択できます。アップリンク信号の場合、スロット境界だけが開始位置として使用できます。これは、アップリンク信号には同期チャネルがないので、フレームとサブフレームの境界を自動的に決定することが困難だからです。

Measurement Interval:トレース・データ結果の計算と表示に用いられるResult Lengthデータの時間長を決定します。

Measurement Offset:Result Length内部でのMeasurement Intervalの開始位置を決定します。

特定のシンボルを個別に観察できることにより、そのシンボルだけを対象にすべての測定を実行できます。すなわち、シンボルNだけを観察するように測定ウィンドウを設定できます。次の例では、スロット 0の 7番目のシンボルだけを観察するようにアナライザを設定し、このシンボルに対してEVM測定を実行します。

表20. 特定のシンボルに対するEVM測定

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

シンボル 0(基準信号と PDCCH)を測定するように測定インターバルと測定オフセットを変更

Meas Setup > Demod Properties > Time(タブ)Measurement Interval を 0 Slots に変更。これにより、測定インターバルが 1 シンボル時間に自動的に設定される。したがって、解析は 1番目のシンボル(シンボル 0)に対して実行される。Close をクリック下の図 17 を参照

PSCH と PDSCH を含む 7 番目のシンボル(シンボル 6)を測定するように測定インターバルと測定オフセットを変更

Meas Setup > Demod Properties > Time(タブ)Measurement Offset を 6 symbol-times に設定。これにより、7 番目のシンボル(シンボル 6)を測定するように測定ウィンドウが移動する。このシンボルは PSCH とユーザ・データを含む。

Close をクリック

スペクトラムを表示するようにトレース B を変更

トレース B のタイトル(B: Ch1 OFDM RB Error Mag Spectrum)をダブルクリックData: 列で Spectrum を選択OK をクリック

CCDF を表示するようにトレース E を変更

トレース E のタイトル(E: Ch1 OFDM RB Error Mag Time)をダブルクリックData: 列で CCDF を選択OK をクリック下の図 18 を参照

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シンボル 0の解析の表示は、図 17 のようになるはずです。表示されたすべての測定が、シンボル 0だけを対象としています。このシンボルには、OSxPRSを使用した基準信号(シアン)と、QPSK変調を使用した PDCCH(黄色)が含まれています。

図17. シンボル0の EVMを表示した単一シンボル測定

図 18 は、1番目のタイム・スロットの最後のシンボルであるシンボル 6の解析を示します。

図18. シンボル6の EVMおよびCCDF解析を示す単一シンボル測定

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ここでは、すべての測定が、P-SCHとデータ・チャネル PDSCHを含むシンボル6に対して行われています。P-SCHは、コンスタレーション表示の円(ピンク)で示される Zadoff-Chu シーケンスを使用しています。この例の PDSCHチャネルは、QPSK変調方式を使用しています。トレースBのスペクトラム表示に注目してください。これには、P-SCHチャネル(使用可能な中央の72個のサブキャリアのうち 62 個を占める)と PDCCHチャネル(この例ではQPSKを使用し、最初の 5個の RBすなわち 60 個のサブキャリアを占める)だけのスペクトラムが示されています。

相補累積密度関数(CCDF)は、Measurement Interval内の信号のRMS平均より指定された大きさ(dB単位)だけ上にある信号のパーセンテージを表します。

トレース Eはゲーテッド CCDF測定を示します。すなわち、これは PSCHとPDSCHを含むシンボル 6だけの CCDFです。この例ではシンボル 6の CCDFだけを表示していますが、1つのタイム・スロットまたはサブフレームに対する CCDF測定も容易に実行できます。これにより、LTEフレーム内の歪みを評価できます。LTEのタイムスロットやサブフレームの中には、他のものよりも多くのチャネルや信号を含むものがあります。例えば、LTEフレームのサブフレーム 1には、すべての制御チャネルと制御信号に加えてペイロード・データが含まれます。これに対して、サブフレーム2はほとんどペイロード・データだけです。シンボル、スロット、サブフレーム単位で CCDF測定を行うことにより、どのシンボル、スロット、サブフレームで最も多くの歪みが生じているかを判定できます。

CCDF測定の詳細については、89600 ヘルプ・テキストを参照してください。

ダウンリンク測定に慣れたところで、今度は LTEのアップリンク信号を観察してみましょう。

LTEのアップリンク信号の解析89600 LTE 解析ソフトウェアは、1つのオプション(オプション BHD)でアップリンクとダウンリンクの両方のLTE信号の解析を提供しています。したがって、アップリンク解析にもダウンリンク解析と同様の機能があります。このため、ここではアップリンク測定に固有の機能に絞って説明します。

主な違いを以下に示します。

1) アップリンクではコンスタレーション・ダイアグラムの表示に I/Q CompMeasトレースを使用しますが、ダウンリンクでは IQ Measトレースを使用します。

2) アップリンクではサポートされるデータ・チャネルは 1個だけですが、ダウンリンクでは最大 6個です。

3) DM-RS に使用される Zadoff-Chu インデックスとアップリンク割り当てを、手動またはAgilent Signal Studio セットアップ・ファイルのリコールによって入力する必要があります。アップリンクの自動検出は現時点では使用できません。

これらの違いを理解するため、アップリンク信号と測定/表示を簡単に見てみましょう。

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表21. アップリンク信号の解析

手順:89600 VSAソフトウェア ツールバー・メニュー

ソフトウェアをプリセット

File > Preset > Preset All

注記:Preset Allを使用すると、保存されているユーザ・ステート情報がすべて失われます。これを避けるには、Preset Allを使用する前に現在のステートを保存してください。

File > Save > Setup をクリック

注記:メニュー/ツールバー、表示の外観、ユーザ・カラー・マップも同様の方法で保存できます。

デフォルト信号ディレクトリに移動 File > Recall > Recall Recording(c:\Program Files\Agilent\89600 VSA\Help\Signals)

5 MHz LTE アップリンク記録を選択 LTE_UL _5MHz.sdf を選択Open をクリック

測定を開始   (ツールバーの左側)をクリック

LTE 復調器を選択 MeasSetup > Demodulator > 3G Cellular > LTE

復調器を設定し、アップリンク解析を選択

MeasSetup > Demod Properties > Format(タブ)Preset to Standard ドロップダウン・メニューをクリックして 5 MHz(25 RB) を選択

Uplink ラジオ・ボタンをクリック

DM-RS で使用される Zadoff-Chu インデックスを手動で入力

MeasSetup > Demod Properties > Format(タブ)Zadoff-Chuインデックスが 7 に設定されていることを確認

注記:復調には正しい Zadoff-Chuインデックス値が必要です。

データ・チャネルの RB 割り当てを手動で入力

MeasSetup > Demod Properties > Profile(タブ)Mod Type の下で 16QAM を選択(ドロップダウン・メニュー)RB Start - 3 を入力RB End - 15 を入力

Close をクリック

6 個のトレースを表示するように表示を変更 Display > Layout > Grid 3x2

トレース A、B、C、E をオートスケール 各トレースを右クリックして Y Auto Scale をクリック

完了すると、表示は図 19 のようになるはずです。

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図19. アップリンク信号解析。タイム・ドメイン/周波数ドメインの複合コンスタレーションを示す

トレース A:トレースAのラベルは、ダウンリンクが I/Q Measだったのに対して、アップリンクでは I/Q Composite Measureになっています。アップリンク信号の場合、復調 RS(パイロット)は周波数ドメインにありますが、アップリンク・データ・チャネル(PUSCH)は SC-FDMA方式を使用するためタイム・ドメインにあります。このため、I/Q Composite Measureトレースは、タイム・ドメインと周波数ドメインの表示を重ね合わせて、データ・チャネルとDM-RS(パイロット)のコンスタレーション・ダイアグラムの両方を表示しています。DM-RS(パイロット)は Zadoff-Chu シーケンスを使用しており、円(シアン)で示されます。この例の PUSCHチャネルは、4×4のコンスタレーションが示すように、16 QAM変調を使用しています。

トレース Bとトレース Cは、5 MHz スペクトラムの一部だけを示しています。これは、この例のアップリンク・ユーザが、5 MHz の LTE帯域幅で使用可能な 25 個の RBのうち 13 個(RB 3 ~ 15)を占めているからです。このため、表示に示されているようにスペクトラムの一部だけが使用されています。

トレース E:このトレースは、シアン色のDM-RS(パイロット)が各タイムスロットのシンボル 3を占めていることを明確に示しています。

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まとめ

用語集

89600 VSAソフトウェアとオプションBHD LTE変調解析の組合わせは、3GPP LTE のアップリンク/ダウンリンク信号の測定とトラブルシューティングに必要なツールを提供します。豊富なエラー測定により、サブキャリア、シンボル、リソース・ブロック、スロットごとのエラーを観察できます。高度な解析を使って、個々のチャネル、シンボル、時間に注目することもできます。基本的な信号捕捉とトリガから、基本的な時間/スペクトラム測定、さらに高度なデジタル復調技法に至るまで、89600 VSAソフトウェアはトラブルシューティングのあらゆるニーズに応えます。

3GPP 3rd Generation Partnership Project (第 3世代パートナーシップ・プロジェクト)3G 3rd Generation(第 3世代)AMC Adaptive Modulation and Coding(適応変調/コード化)ACK Acknowledgement(肯定応答)CAZAC Constant Amplitude Zero Auto Correlation(定振幅ゼロ自己相関)CCDF Complementary Cumulative Distribution Function(相補累積分布関数)CP Cyclic Prefix(巡回プレフィックス)DL Downlink(ダウンリンク)(基地局から加入者への伝送)DM RS Demodulation Reference Signal(復調基準信号)DFTS-OFDM Discrete Fourier Transform Spread - Orthogonal Frequency Division Multiplexing(離散フーリエ変換拡散 - 直交周波数分割多重)EVM Error Vector Magnitude(エラー・ベクトルの大きさ)FDD Frequency Division Duplex(周波数分割デュプレックス)HSDPA High Speed Downlink Packet Access (高速ダウンリンク・パケット・アクセス)HSPA High Speed Packet Access(高速パケット・アクセス)LTE Long Term Evolution(長期的進化)MBMS Multimedia Broadcast Multicast Service (マルチメディア一斉送信サービス)MIMO Multiple Input Multiple Output(複数入力複数出力)NACK Negative Acknowledgement(否定応答)OFDM Orthogonal Frequency Division Multiplexing(直交周波数分割多重)OFDMA Orthogonal Frequency Division Multiple Access (直交周波数分割多元接続)OS Orthogonal Sequence(直交シーケンス)PAPR Peak-to-Average Power Ratio(ピーク対アベレージ・パワー比)P-BCH Physical Broadcast Channel(物理ブロードキャスト・チャネル)PCFICH Physical Control Format Indicator Channel (物理制御フォーマット・インジケータ・チャネル)PDCCH Physical Downlink Control Channel(物理ダウンリンク制御チャネル)PDSCH Physical Downlink Shared Channel(物理ダウンリンク共有チャネル)PHICH Physical Hybrid ARQ Indicator Channel (物理ハイブリッドARQインジケータ・チャネル)PMCH Physical Multicast Channel(物理マルチキャスト・チャネル)PRACH Physical Random Access Channel(物理ランダム・アクセス・チャネル)PRS Pseudo Random Sequence(疑似ランダム・シーケンス)P-SCH Primary - Synchronization Channel(プライマリ - 同期チャネル)PUCCH Physical Uplink Control Channel(物理アップリンク制御チャネル)PUSCH Physical Uplink Shared Channel(物理アップリンク共有チャネル)QAM Quadrature Amplitude Modulation(直交振幅変調)QPSK Quadrature Phase Shift Keying(4相位相偏移変調方式)RB Resource Block(リソース・ブロック)RS Reference Signal(基準信号)(パイロット)SC-FDMA Single Carrier - Frequency Division Multiple Access (単一搬送波 - 周波数分割多元接続)S-SCH Secondary - Synchronization Channel(セカンダリ - 同期チャネル)TDD Time Division Duplex(時分割デュプレックス)TrCH Transport Channel(トランスポート・チャネル)TTI Transmission Time Interval(伝送時間間隔)UL アップリンク(加入者から基地局への伝送)W-CDMA Wideband - Code Division Multiple Access(広帯域 - 符号分割多元接続)

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関連カタログ

Webリソース

『89600 シリーズ・ベクトル信号解析ソフトウェア』、Technical Overview、5989-1679JAJP

『89600 Series Vector Signal Analysis 89601A/89601AN/89601N12 Software』、Data Sheet、5989-1786EN

『89600S Vector Signal Analyzer demo software』、CD、5980-1989E

『3GPP LTEソリューション』、Technical Overview、5989-6331JAJP

『Understanding the Intricacies of LTE』、LTEポスター、5989-7646EN

『Move Forward to What's Possible in LTE』、Agilent's LTE Solutions Guide、5989-7817EN

『89600 シリーズ・ベクトル信号解析ソフトウェア用ハードウェア・プラットフォーム』、Data Sheet、5989-1753JAJP

『89600S Series VXI-based Vector Signal Analyzers』、Configuration Guide、5989-9350E

詳細については、以下を参照してください。

www.agilent.co.jp/find/89600www.agilent.co.jp/find/LTE

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