オープンガバメントの系譜学に向けて
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2014年11月19日に東京大学で行われたシンポジウムでの発表資料です。TRANSCRIPT
オープンガバメントの系譜学に向けて
庄司 昌彦 Masahiko Shoji国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 主任研究員
一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン 代表理事
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疑問
• オープンマインドになれないのは何故か?
• オープンガバメントで日本は遅れているのか?
• オープンガバメントのコンセプトは外来だから日本に根付かないのか?
• 日本でオープンガバメントはどのように取り組まれてきたか?
• 日本には自発的な統治の経験はなかったか?
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オープンデータの系譜学に向けて
• Jonathan Gray– Open Knowledge
政策・研究ディレクター
– ロンドン大学 ロイヤルホロウェイ
• 3つのアプローチ
– 歴史的:オープンデータの系譜学
– 経験的:オープンデータの社会学
– 理論的:オープンデータの規範分析
Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data”
http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data3
By Jonathan Gay, CC-BY-SA
Research Questions
• オープンデータのアイディアはどこから来たのか?
• どのように今日の多様な意味体系を形成したか?
• 誰がどう、何のためにコンセプトを用いているか?
• オープンデータのコンセプトは、透明性、説明責任、民主主義、正義、市民社会と国家について理論化する広範な試みにどんな役割を果たしているか?
• それが民主政治に何をもたらすのか?
Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data”
http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data4
いくつかのスレッドの提案
• 公共部門の情報、オープンデータと経済成長
– 1990年代-2000年代初頭のPSI政策議論、地理空間情報 等
• イノベーション、見えざる手、プラットフォームとしての政府
– 米国政府(2003)、O’Reily(2010)、Steinbergほか(2007) 等
• 透明性、効率性、公共部門改革とネオリベラリズム
– クリントン・ゴア政権”Reinventing Government”プログラム 等
• オープンソース、オープンアクセスとシビックハッキング
– 地理空間情報、オープンストリートマップ 等
• アドボカシーとジャーナリズムのためのオープンデータ
Gray, Jonathan. “Towards a Genealogy of Open Data”
http://www.slideshare.net/jwyg/towards-a-genealogy-of-open-data5
いくつかのスレッドの提案(庄司)
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日本の政治行政改革の背景
• 鉄の三角形
– 中央省庁がアジェンダ設定・利害調整で強い影響力
– 業界と密接に連携し許認可・行政指導で利害を調整
– 与党が承認し国会審議へ
– 開発主義期の産業政策では効率的・効果的
• 90年代以降の変化
– 特定非営利活動促進法(98年)
– 情報公開法(99年)
– 国家公務員倫理法(00年)
– 連立政権(93年~)常態化、与党間調整
– 内閣機能の強化
– 情報化による国民の知識生産や協力行動の活性化
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参考:チャルマーズ・ジョンソン『通産省と日本の奇跡 』(1982年)
行政
コミュニティ
日本の電子政府施策の展開
行政
政治
バックオフィス
フロントオフィス
選挙
世論形成
政府の取組み
行政
「eデモクラシー論」
• 「ミネソタeデモクラシー」(1994年中間選挙)
– スティーブン・クリフト
• 「ICTを活用してデモクラシーを再生・発展させていくこと、すな
わちICTによって市民の参画を促し、政治や行政の活動の質を高め
ていくこと」
• 期待
– 双方向性や公開性、多数参加などの情報技術の特性を生かす
– 政策形成過程の改善
• さまざまな立場の人々の政策形成への参加
• より多くの人々が納得する合意の形成
• 政策形成過程の透明化
– 討議民主主義(deliberative democracy)や公共圏(public sphere)
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政治
創発民主制Emergent Democracy
• 伊藤譲一(2003年)
– (ツールの進化に伴うインターネットの)覚醒は、企業や政府に権力が集中した結果として腐敗した民主制が、本来もっていた基本的属性を支援する(略)政治モデルの構築を促進することになるだろう。
– 新しい技術は、より高度の秩序をもたらし、その結果として、複雑な諸問題に対処しつつ現行の代表民主制を支援、変更、もしくは代替しうるような、新しい形の民主制が創発してくる可能性がある。
– 新しい技術はまた、テロリストや専制政治体制をエンパワーする可能性ももっている。これらのツールには、民主制を高度化する力もあれば劣化させる力もあるため(略)、よりよい民主制のためにこれらのツールが開発されるよう、できるだけ影響力を発揮しなくてはならない。
Version1.3公文俊平訳を参照(2003年3月) http://www.glocom.ac.jp/project/odp/library/75_02.pdf 10
政治
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社会関係資本 Social Capital
• R.パットナム
– 南北イタリア と米国の研究
– 協調行動(小集団活動)の創発がカギ
– 協調行動を活発にする社会的特徴
• 信頼
• 互酬性
• 市民参加のネットワーク
– 橋渡し型と結束型
社会
人のつながりと地域活性化のモデル
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内部の一体感や安心・信頼の醸成
外部のコミュニティや人との連携
(つながりを深める) + (つながりを作る)
地域にさまざまな中間集団・協力行動が生まれ、活動が活発化し、安心、楽しさ、発見が生まれる
生活利便性向上、イベント、安全・安心、まちづくり、顧客開拓・販売促進、観光客誘致等
社会
歴史の中の小集団
• 鎌倉~室町以降の(惣)村と都市
– 寄合から惣掟(インフラ管理等)、農業生産性向上、年中行事、芸能(田楽、茶の湯、連歌等)が発達
– 18世紀後半には、1500の村で常設舞台による歌舞伎
– 19世紀半ば、村は全国に64,000ヶ所存在
• 寺子屋・私塾から郷学(17c~19c)
– 教育、娯楽、生活と社会運営に必要な知識インフラ
– 地域の豪農を中心に、村の文明開化を目指して教師を招聘
– 民権への芽生え→地域で集団討議や共同学習を重ねる
– 1880年代、十‐数百人の結社・学習集団は全国2000以上
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社会
参考:国立歴史民俗博物館 展示池上英子『美と礼節の絆 日本における交際文化の政治的起源』 , NTT出版, 2005
掛川市の市民力と金融
• 地域SNS先進地、オープンデータにも着手
• 生涯学習都市→小集団活動
• 「市民総代会・地区集会」
– 各地区から役員などが集まり、地域が抱える課題などについて、市長・幹部職員等と意見交換
– 意見や要望は、重要度・緊急度に応じ翌年の施策や予算編成に反映。市の考え方を『市長・区長交流控帖(市民総代会の記録)』としてまとめ配布
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社会
掛川市の市民力と金融
• 地域金融の文化伝統
– 掛川信用金庫:
• 日本最古の信用金庫。尊徳の弟子、岡田良一郎が地域振興の
ため1879(M12)年に設立した勧業資金積立組合が前身
– 寄付による掛川城天守閣再建:
• 総額12億円中、個人が5億円、市民が5億円を寄付し賄う
– 寄付による新幹線駅建築:
• 総額110億円中、市民寄付30億円。38000世帯=1軒10万円
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報徳思想:「経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、
いずれ自らに還元される」
社会