論文作成の基礎知識 看護研究編

30
論文作成の基礎知識 実践研究方法論 2012年4月 渡辺真希子 [email protected]

Upload: makiko-watanabe

Post on 07-Jul-2015

46.167 views

Category:

Education


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 論文作成の基礎知識 看護研究編

論文作成の基礎知識

実践研究方法論

2012年4月

渡辺真希子

[email protected]

Page 2: 論文作成の基礎知識 看護研究編

2

本日の内容

1. 研究倫理

2. 論文の生成サイクル

3. 引用の基礎知識

4. 投稿規程・チェックリスト

5. その他

Page 3: 論文作成の基礎知識 看護研究編

1. 研究倫理

Page 4: 論文作成の基礎知識 看護研究編

4

研究倫理

倫理的配慮

承認された倫理的配慮がその通りになされていることも必要条件であり,具体的に行われた倫理的行動と研究倫理審査承認番号を本文中に明記しなくてはならない.特に以下の行為に注意する.学会によって,以下の行為が疑われた場合会員資格のはく奪につながることがあるので十分に注意する. ■ ミスコンダクト 研究上の不正行為(剽窃,捏造,改ざん,盗用など) ■ 二重投稿 ■ 不合理な取り下げ

人及び動物が対象の研究は,投稿者所属の施設もしくは 研究参加者が所在する施設の研究倫理審査委員会で 承認された者でなければならない.

Page 5: 論文作成の基礎知識 看護研究編

5

研究倫理

重複発表

雑誌の読者は,国際的な著作権法や倫理的側面及び資源の経済的利用の観点から,明示が無い限り読者は初出の論文である前提で読みます. 著者は,論文を投稿する際,同一または同様の研究成績を重複発表しているとみなされる恐れのある投稿や過去の報告を必ず編集者に文書で伝える必要があります.この場合,編集者が対処しやすいように初出のコピーを添付します. こうした通知がないまま重複発表をしようとしたり,実際に重複発表を行った場合,著者は編集上の処置を受け,少なくとも投稿した論文は速やかに却下されることを覚悟する必要があります.

重複発表は原則として認められない. 重複発表とは,既発表の論文の内容と実質上重複する 論文を発表することです.

Page 6: 論文作成の基礎知識 看護研究編

6

研究倫理

患者のprivacy保護

患者の同意なしにプライバシーを侵害するような行為は禁じられています.科学上どうしても必要な情報で患者(またが親や保護者)が文書で発表に同意している場合を除き,患者を識別できるような文書・写真・家系などの情報を発表すべきではありません.もし発表する場合は,発表原稿を予め患者に見せ,同意を得る必要があります.しかし患者を分からなくさせるため,患者のデータを変更したり,偽造したりしてはいけません.患者の同意が得られた場合は,そのことを論文中に明記していください(informed cosent).

患者のイニシャルやカルテ番号に注意する.

Page 7: 論文作成の基礎知識 看護研究編

2. 論文の生成サイクル

Page 8: 論文作成の基礎知識 看護研究編

1.文献 調査

8

論文生成のサイクル

2.実態調査 3.調査データ

のまとめ

4.論文 執筆

5.論文投稿

6.査読

7.論文掲載

Page 9: 論文作成の基礎知識 看護研究編

1.文献 調査

9

2.実態調査 3.調査データ

のまとめ

4.論文 執筆

5.論文投稿

6.査読

7.論文掲載

査読制(referee system)とは, 学術雑誌に投稿された論文の内容を査読者が審査し,当該雑誌に掲載するか否かを判定するしくみ.

論文生成のサイクル

Page 10: 論文作成の基礎知識 看護研究編

YCU Medical Library 2011 10

査読制によって投稿論文の信頼性とインパクトを担保します. 但し, refereeの判断は誤ることもあります.

◆ 査読

査読制(referee system)とは, 学術雑誌に投稿された論文の内容を査読者が審査し,当該雑誌に掲載するか否かを判定するしくみ. accept

reject

Page 11: 論文作成の基礎知識 看護研究編

11

ピアレビューされた雑誌とは,出版される記事の大部分が 専門家(雑誌の編集スタッフとは異なる) の査読を受けて いる雑誌のことを言う.査読される原稿の数と種類,査読員 の人数,査読の手順,査読員の意見の仕方は,雑誌によって 異なるため,各雑誌は,投稿規程の中で読者と著者に 向けて雑誌の方針を明らかにする必要がある.

◆ ピアレビュー雑誌

Page 12: 論文作成の基礎知識 看護研究編

12

原著

論文

研究

報告

技術・

実践報告

総説 資料・

その他

独創性 ○ ○ ○ 萌芽性 ○ ○ 発展性 ○ ○ 技術的有用性 ○ ○ 学術的有用性 ○ ○ ○ 信頼性 ○ ○ 完成度 ○

論文の種類・基準

論文生成のサイクル

凡例: ○;評価の対象とする 空欄;評価するが過度に重視しない

Page 13: 論文作成の基礎知識 看護研究編

3. 引用の基礎知識

Page 14: 論文作成の基礎知識 看護研究編

14

Title

Authors Abstract

(Summary) Main Text

References

引用の基礎知識1

論文のスタイル

Page 15: 論文作成の基礎知識 看護研究編

15

文献記載とは… • 論文で参照した文献はすべて, 文の末尾の文献一覧に載せる. • 文献はそれぞれの項目の最初の単語(著者名など)のアルファベット

順に並べる. • 単行本,学術誌に掲載された論文,新聞,雑誌、視聴覚資料,オンライン

文献によって記載方法が異なるため注意する. • 記述スタイルは,投稿する雑誌によって異なりますので,事前に確認

する.

引用の基礎知識2

文献記載 記述スタイルによって,点の打ち方,項目の順番に違いがあります. また記述スタイルと論文を投稿するために必要なルールをまとめたものを投稿規定とと言います.

投稿規程

Page 16: 論文作成の基礎知識 看護研究編

16

Mugglestone, L. (2005). Lost for words: The hidden history of the Oxford English Dictionary. New Haven, CT: Yale University Press.

引用の基礎知識2

文献記載

1. 著者の姓 2. 本の出版年()部分 3. ピリオドを打ち,その後に1スペースあける. 4. 書名をイタリック体で書く. コロン(;)以降は副タイトル 5. ピリオドを打ち,その後に1スペースあける. 6. 本が出版された都市名 世界的によく知られた都市(ニューヨーク,東京,ロンドン,ラゴス)などの場合,州や国名は必要ありません. 7. コロンで区切る.コロンの前にはスペースを入れず,後に1スペースあけます. 8. 出版社名. 9. ピリオド.

1 2 3 4

5

4

6 7 8 9

Page 17: 論文作成の基礎知識 看護研究編

17

[1] 著者が一人の場合 [2] 著者が二人以上の場合 [3] 組織などによる出版物の場合 [4] 著者名がない場合 [5] 文献の特定の部分の出典表記 別添資料参照

引用の基礎知識3

出典表記 (APAマニュアルの例)

Page 18: 論文作成の基礎知識 看護研究編

4. 投稿規程・チェックリスト

Page 19: 論文作成の基礎知識 看護研究編

19

投稿規定・チェックリスト

投稿前の注意点と読み方

[1] 雑誌投稿規程(一般社団法人日本看護研究学会) [2] 投稿規程(横浜看護学雑誌) 別添資料参照

Page 20: 論文作成の基礎知識 看護研究編

5. その他

Page 21: 論文作成の基礎知識 看護研究編

21

Tips1:Authorship1

a. 研究の構想とデザインに携わったか、またはデータの解析と 解釈をした人 b. 論文の下書きを書いたか、または重要かつ知的な内容を指摘し 訂正を加えた人 c. 最終的に発表される内容に賛同している人

◆ 著者の条件

上記の3つすべて満たしていることが条件であり,研究費の獲得やデータの収集に携わっただけでは著者になることはできません.また研究班を統括しただけでは十分な資格があるとは言えません. さらに論文の主な結論を得るに至った重要な部分に対して責任をもつことができる著者が最低1人以上いなければならない.論文における著者は,研究を統括しただけでは著者になることはできない. また著者の序列は著者同士が決めるが,雑誌の目次に載る著者の数には限りがあることを考慮する.

Page 22: 論文作成の基礎知識 看護研究編

22

Tips1:Authorship2

編集者は,著者がそれぞれ何を担当したかをたずね, これを発表することがある. 共同研究班の名前で発表している多施設試験の場合, タイトルの下の著者欄か,または脚注に研究班全員の 名前を著者として載せるときは,メンバー全員が著者の 条件をすべて満たす必要がある.もし条件に合わない人 がいるときは,その人の許可を得て謝辞か付録に名前を 挙げるようにする.

◆ 謝辞の位置づけ

Page 23: 論文作成の基礎知識 看護研究編

23

Tips2:Copyrights1

著作物 =「思想又は感情を創作的に表現した ものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲 に属するもの」 なお,「映画の著作物」を除き,著作物として保護されて いるためには,「固定」(録音,録画,印刷など)されている 必要はありませんので,「原稿なしの講演」や「即興の歌」 なども保護の対象となります.

◆ 著作物の定義

Page 24: 論文作成の基礎知識 看護研究編

24

Tips2:Copyrights2

言語の著作物 講演,論文,レポート,作文,小説,脚本,詩歌,俳句など

音楽の著作物 楽曲,楽曲を伴う歌詞

舞踊,無言劇の著作物

日本舞踊,バレエ,ダンス,舞踊,パントマイムの振り付け

美術の著作物 絵画,版画,彫刻,マンガ,書,舞台装置など(美術工芸品含む)

建築の著作物 芸術的な建築物

地図,図形の著作物 地図,学術的な図面,図表,設計図,立体模型,地球儀など

映画の著作物 劇場用映画,アニメ,ビデオ,ゲームソフトの映像部分など

写真の著作物 写真,グラビアなど

プログラムの著作物 コンピュータ・プログラム

Page 25: 論文作成の基礎知識 看護研究編

25

Tips3:Academic Communications1

1. 未発表原稿のオリジナリティの保護 2. 査読者は投稿原稿を引用してはならない. 出版される前に言及してはならない. 3. 査読者は公平な態度を意識的にとらなければならない. 効果的で正確・科学的なコミュニケーション促進する目的で 著者の立場に立った査読を心がける. 4. 公平に審査することができないと判断したならば, 編集委員会に原稿をすぐ戻す. 5. 3~4週間以内に審査結果を作成するようにする. 6. 査読者は論文について著者と直接議論しなけれ ばならない.

◆ 査読指針1

Page 26: 論文作成の基礎知識 看護研究編

26

Tips3:Academic Communications2

7. 査読者は論文において投稿者が修正可能な部分に 関する指摘を行う. ①Scientific reliability ②Importance ③Originality④Adequacy ⑤Adequacy in research methods or designs ⑥結論と解釈の整合性 ⑦⑥とデータの整合性・メッセージ の明白性 ⑧文献との関連⑨最新文献の採用 ⑩図表・タイトルの書式設定の適切さ ⑪当該誌との関連性 ⑫倫理面への配慮 ⑬記述のわかりやすさ

◆ 査読指針2

Page 27: 論文作成の基礎知識 看護研究編

27

Tips3:Academic Communications3

8. 著者の立場に立った審査が冷静に提示されているか 9. 修正点は受理条件として妥当か 10.論文を受理しない場合であっても,著者の改善を助け る建設的なコメントをしたか 11.編集委員や投稿者が指摘事項の改善を助けるコメント を行ったか 12.投稿者の修正事項が査読者の審査内容に合致して いるか 13.査読者は文章の間違いを指摘しているか 14.編集者は,査読者複数人の評価に基づいて審査を 決定する.

◆ 査読指針3

Page 28: 論文作成の基礎知識 看護研究編

28

研究及び論文作成には公共性がある 研究における一連の行為は,倫理感に基づくものである 論文作成は形式をまなぶ側面もあり, 一定の形式に即したコミュニケーションを理解する

◆ おわりに

Page 29: 論文作成の基礎知識 看護研究編

29

◆ 参考・引用文献

International council of nurses.(1996).Ethical guidelines for nursing research. Geneva: International council of nurses. 本多なほみ.(2000).癌専門医のための生物学雑誌への投稿に関する統一規定. Tokyo:メディカルネットワーク株式会社. 文化庁著作権課.(2009).著作権テキスト:初めて学ぶ人のために. Tokyo:文化 庁著作権課. 東京大学教養学部.(2009).知識のうらづけ/情報のみなもと:出典表記と文献 記載の方法.Tokyo:東京大学教養学部英語部会/教養教育開発機構. International Committee of Medical Journal Editors. Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals: Overlapping Publications. Accessed July 16, 2010. 一般社団法人日本看護研究学会編集委員会.(2011).査読委員資料(2011年 12月改訂版).Tokyo:一般社団法人日本看護研究学会編集委員会.

Page 30: 論文作成の基礎知識 看護研究編

30

ご清聴ありがとうございます

文献検索の相談は 医学情報センターへ!