【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

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がん患者さんとのコミュニケーションスキル Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 1

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Page 1: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

がん患者さんとのコミュニケーションスキル

Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

1

Page 2: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

本日のトピック

• 誤ったインフォームドコンセント

• がん患者さんとのコミュニケーション・スキル

Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital

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Page 3: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

日常よくある会話

• 患者に「ムンテラ」する。

• 患者に「ICする」

→ドイツ語の「ムント」とフランス語の「テラピー」を組み合わせた和製語。 なぜ、わざわざ隠語を使うのか?患者を口先だけでごまかす意味?

→インフォームド・コンセントとは、患者が受けるものだが、

「説明する」「面談する」でよいのではないのか?

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Page 4: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

インフォームドコンセントの誤った考え

"   裁判で訴えられないようにするため、医療者の防

衛の手段として使われる。

"   医療者は情報提供のみを行い、後は患者が決め

る(パターナリズム化)。

→誰のためのインフォームドコンセントなのか?

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Page 5: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

本来、インフォームド・コンセントとは、

「患者のためのもの」

"   患者本人が医療行為について、

正しく適切な説明を受け、十分理

解した上で、納得して治療を受け

るために存在する患者の権利

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Page 6: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

インフォームドコンセントにおける医療者の義務とは?

"   「医療関係者の責務: 医療の担い手は,医療を提供す

るに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理

解を得るよう努めなければならない。」

医療法(第1条の4第2項 平成12年第4次医療法改正)

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Page 7: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

インフォームド・コンセントの理念

"   医療者と患者の相互の尊重と参加に基づいた意思決

定を協力して行う過程

→医療者と患者の意思決定の共有

"   意思決定を行う患者個人が、自らの価値観に基づき、

また個人の目標を達成するためにヘルス・ケアの決定

を行う権利を持つという原則に基づく

→患者の自己決定権の尊重

1982 米国大統領委員会報告書 (A report on ethical and legal

implications of informed consent in the patient-practitioner

relationship 1-3.1982)より

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Page 8: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

適切なインフォームド・コンセント とは?

医師が情報を持ち、医師が決める

オレが決める型

医師と患者が情報を共有し、決定も

共有する

共有型

患者が情報をもらい、患者が決定す

患者が決めな型

Shared Decision Making (意思決定の共有) に基づく インフォームド・コンセント

1982 米国大統領委員会報告書 (A report on ethical and legal implications of informed consent in the patient-practitioner relationship 1-3.1982)より

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Page 9: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

情報を提供する 目的・内容・リスク・利益他治療との比較

質問・自分の希望を 伝える

提案する、意見を調整する

Shared Decision Makingの実際

双方向のコミュニケーション

納得する →満足する

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Page 10: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

医師-患者関係の4つのモデル

Informative Interpretive Deliberative Paternalistic

医師の態度 事実に基づく情報の提示の

み。

患者の価値観を尊重し、適切に情報を提示・実行。

患者を教え導き説得し、実行する。

患者の要望に答える。

医師の役割 有能な専門家 カウンセラー 友人・教師 保護者

Emanuel EJ et al. JAMA 1992; 267: 2221 10

Page 11: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

適切なインフォームドコンセントをする際

に必要とされる要件

1.   正しい知識

2.   適切なコミュニケーション

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Page 12: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

正しい知識とは?

•  標準治療を知ること

→各種ガイドラインの利用

日本婦人科腫瘍学会

ASCO, ESMOのガイドライン

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Page 13: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

適切なコミュニケーションの必要性

"   謝罪することが医療訴訟を減らす –  Lazare A. On Apology, 2004.

"   医療過誤訴訟の3分の2は、責任を取り、謝罪し

、隠し立てしないで意見交換するのを怠ったこと

に由来 –  Kachalia A, et al. Does full disclosure of medical errors affect

malpractice liability? Joint Commission Journal on Quality &

Safety 2003; 29:503–511.

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Page 14: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

ハーバード大学病院医療事故:真実説明・謝罪マニュアル

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Page 15: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

善の医療を受けるには?

患者の 希望・価値観

医療者の専門性 科学的データ (エビデンス)

EBM:Evidence-based Medicine:

エビデンス・ベースド・メディシン(根拠に基づく医療)の3要素�

手術 診察法

コミュニケーション能力 チーム医療

科学文献のデータ 学会発表

個人の尊重 価値観・生活の質

善の医療 Division of Medical Oncology, Nippon Medical

School Musashikosugi Hospital 15

Page 16: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

科学的データ 医療者の専門性

患者の希望・価値観

確立したエビデンスと選択肢

治癒を目指す点で 比較的均一

パターン化しやすい

EBMの3要素 ~早期がんの場合~

再発を減らし 治癒を目指す Division of Medical Oncology, Nippon Medical

School Musashikosugi Hospital 16

Page 17: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

科学的データ

医療者の専門性

患者の希望・価値観

EBMの3要素 ~進行・再発がんの場合~

限定されている

適切なコミュニケーション 全身状態・予後の評価

個人個人異なる。 時間・環境・

情報などにより変化

がんとより良い共存を目指す

Narrative-based Medicineの要素

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Page 18: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

クリニカルシナリオ

•  48才 女性

2009年12月 卵巣癌手術 Stage IIIC (漿液性腺癌)、TC6コース施行。

2010年6月 CA125 531と上昇、CTで腹膜播種あり、再発と診断。プラチナ

抵抗性と判断し、CPT-11開始。

2010年8月 CPT-11 2コース施行、CA125上昇、効果なし(PD)と判断。ドキ

シル開始

2010年12月 ドキシル3コース施行、CA125上昇、CTで肝転移(単発)出現、

PDと判断。

現在、腹膜播種、肝転移はあるが、腹水貯留などなし、食欲良好、排便も

良好。PS0の状態である。

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18 18

Page 19: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

あと使える抗がん剤は、ドセタキセル、

ゲムシタビン、トポテカンがあります。

どれにするか次までに決めてきてくだ

さいと言われました。治療はそれで終

わりですと言われ、その先が不安です。

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Page 20: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

このような患者さんにはどのように対応したら よいのでしょうか? (複数選択可)

1.  あと使える抗がん剤は、ドセタキセル、ゲムシタビン、トポテカンがあります。効果は20%くらいであり、それぞれの副作用は○○です。どの治療がよいか次の外来までに決めてきてください。

2.  あなたの余命は○ヶ月で、効果の期待できる治療はない、旅行にでも行った方がよいと思う。

3.  当科の方針で、これ以上は治療はやらない方針です。緩和ケアをすすめます。

4.  本当のことをいうのは、はばかれるので、ごまかしてUFTなどの経口抗がん剤でも使い続ける

5.  免疫療法はどうかと聞かれ、やらないように説得するのも疲れるので、○○クリニックへ紹介する

6.  国立がんセンターに紹介して何か治験でもやってもらうように話す

7.  その他

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Page 21: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

日本イーライリリー株式会社にて集計

使える抗癌剤はDOC,GEM,Topoがあります。

効果は約20%であり、其々副作用は○○です。どの治療がよいか次の外来までに決めてきてください。

60%

あなたの余命は○カ月で、効果の期待できる治療はない、旅行にでも行った方

がよいと思う 9%  

当科の方針で、これ以上は治療はやらない方針です。関分けをお薦め致しま

す 8%  

国立がんセンターに紹介して何か治験でもやってもら

うように話す 7%  

その他 16%  

 【以下は回答が0となってます】  ・本当のことを言うのは、はばかれるので、  ごまかしてUFTなどの経口抗がん剤でも  使い続ける    ・免疫療法はどうかと聞かれ、  やらないように説得するのも疲れるので  ○○クリニックへ紹介する

NO! 患者さんは先生から”あと使える抗がん剤は、ドセタキセル、ゲムシタビン、トポテカンがあります。 どれにするか次までに決めてきてください、治療はそれで終わりです。”と言われ、その先の事を不安に感じています。このような患者さんにはどのように対応したらよいのでしょうか? (複数選択可) N=87

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Page 22: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

再発卵巣がん

• 予後 •  MST: 約1.5年 (プラチナ感受性約30ヶ月、プラチナ耐性約12ヶ月) •  治癒はまれ (長期生存例 数%)

• 標準治療 •  手術は限られた患者に適応になるが標準治療にはなっていない •  化学療法

•  標準: プラチナ感受性患者に対するプラチナ再投与 •  標準でない: プラチナ耐性、3rd line 以降の化学療法

• 治療の目標  •  延命 、症状緩和、QOL •  「がん」とのより良い「共存」

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Page 23: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

緩和ケアという「第4の治療」

化学療法 + 緩和ケアチーム(緩和ケア医、専門看護師)による月1度以上のサポート

化学療法のみ

手術適応のない肺がん患者 n=151

NEJM 2010;363:8

結果: •  QOL (FACT-L)の向上 (P=0.03) •  うつ症状の軽減 (38% vs. 16%, P=0.01) •  末期状態での積極治療(死亡の4日以内の化学療法、ホスピスケアなし、3日以内のホスピス入院)の減少(54%vs.33%, P=0.05)

•  生存期間の向上(8.9 vs. 11.6 mos. P=0.02)

Early Palliative Care

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Page 24: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

A new statement for advanced cancer care

1.  進行・再発がん患者のケアで も大切なものは、患者の生活の質である。医師は、生活の質を考慮した上で、積極的治療の利点、欠点を提案するべきである。患者によっては、延命を希望しない場合がある。緩和療法は、同時にまたは、代替治療として提案され、話し合われるべきである。

2.  医師は、進行がん患者に対して、その予後について、率直な話し合いをすべきである(実際にそのような話し合いがあるのは、40%未満である)。

3.  臨床試験(治験)というオプションを増やすべきである。現実には、候補となる患者は限られているし、生活の質が考慮されていないことが多い。

J Clin Oncol. 2011,10;29(20):2837

米国臨床腫瘍学会(ASCO) 2011

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Page 25: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

Patient Values (患者の希望・価値観・生活の質)は何か?

• 適切な患者とのコミュニケーションの上に成り立つ

•  治癒が目標ではないこと

•  がんといかに「うまくつき合っていくか?」→目標の共有

• 患者の本当の希望 (hope, values, QOL) とは?

•  化学療法する、しないは、患者の希望ではない

•  大切にしたいことは何ですか?楽しみにしていることは? 

•  病気以外のことで気がかりなことは?

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Page 26: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

ホスピスケア(緩和ケア)に関する対話の重要性

• 進行がん患者332名を対象に、終末期に関するケアについて、医師と話し合いをしたかどうかアンケート調査をした。

• 話し合いをしなかった患者は、した患者と比べて、ホスピスに入院する期間が短く、精神的苦痛が多く、生前の 後の週に積極的治療(蘇生術など)が行われる傾向があり、QOLも低かった。

JAMA2008;300:1665

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Page 27: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

• 国立がんセンター中央病院 乳腺・腫瘍内科で2002-2006年に治療を受け亡くなった244名の患者さんの解析結果

• 患者さんへ緩和ケアについての話し合いをしなかった医師が、患者さんが亡くなる直前( 後の3ヶ月以内)まで抗がん剤を続ける傾向があった (P <0.0001)。

Hashimoto, Katsumata et al. The Oncologist 2009;14:752–759

ホスピスケア(緩和ケア)に関する対話の重要性2

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Page 28: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

Patient Values (患者の希望・価値観・生活の質)は何か?

• 来年4月には、一人娘が高校生になるんです。それまでは親

として何としてもしっかりと見届けたいんです

• 婚約者と結婚式をあげたい

• 治らないんだったら、世界一周旅行に行きたい

• 髪の毛が抜けたままで死ぬのは嫌なんです。 後はきれいな

体でいたいんです。

• 海の見えるホスピスに行きたい

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Page 29: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

臨床医が も難しいコミュニケーションは? 米国臨床腫瘍学会Breaking  Bad  News  シンポジウム1998

再発を伝える

がんの診断を伝える

積極的治療中止、緩和ケアへの移行

終末期ケア(蘇生の有無)の相談

その他

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Page 30: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

患者とのコミュニケーション技術

悪いニュースを伝える方法 -SPIKES- Setting (場の設定) ‏ Perception (認識度を知る) ‏ Invitation (希望を確認する) ‏ Knowledge (情報提供) ‏ Empathy & exploration (共感と探索) ‏ Strategy & summary (戦略と要約) ‏

米国臨床腫瘍学会公式カリキュラム2003より Optimizing Cancer Care, ASCO publication

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Page 31: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

患者とのコミュニケーション技術 (わが国における患者の意向を基に作成)

悪いニュースを伝える方法 -SHARE- Supportive environment (支持的な場の設定)

How to deliver the bad news (悪い知らせの伝え方)

Additional information (付加的な情報)

Reassurance and Emotional support (安心感と情緒的サポート)

Fujimori et al. (2007) Psychoncology 16:573-81

内富庸介, がん医療におけるコミュニケーション・スキル 悪い知らせをどう伝えるか. 医学書院, 2007

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Page 32: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

準備:重要な面談であることを伝える

プライバシーが保たれる場所(直接会って

伝える),十分な時間を確保する(電話が

鳴らないようにする)

大部屋のベッド・サイドやカーテンでしきられ

ているだけの外来は避け,面談室を使う

忙しい外来時間を避ける

予め電話を他の人に預ける

面談の始めに患者にことわる.電話がなった

場合,患者にことわってから,電話にでる

S

次回の面談は重要なので,家族など他の

人が同席できることを伝える

「次回は検査結果をお伝えする重要な面談ですので,ご家族の方などどなたかご一緒にいらっしゃっていただく こともできます」

「ご家族に来ていただいた方がよいと思います」

など

H

S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート

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Page 33: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

基本:面談中常に気をつけること

礼儀正しく患者に接する 初対面の時には自己紹介する面談室に患者が入ってきたら挨拶をする

S

患者の目や顔を見て接する S

患者に質問を促し,その質問に十分答える

「ご質問はありますか?」 H

患者の質問にいらいらした様子で対応しない

患者の言葉を途中で遮ること貧乏ゆすりペンを廻すマウスをいじる,など

S

S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート

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Page 34: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

大事な話の前には患者は緊張しているので,患者の気持ちをやわらげる言葉をかける

身近なことや時節の挨拶,患者の個人的な関心事などに ついて一言触れる表情(微笑む)などのノンバーバル・コミュニケーション「 近寒いですが風邪を引いたりしていませんか?」

RE

症状,これまでの経過,面接の目的について振り返り,患者の病気に対する認識を確認する

「ご自分の病状をどの様にお考えですか?」 「治療効果について,ご自分ではどのように感じていますか?」など

H

家族に対しても患者と同じように配慮する 「ご家族はどうでしょうか?」 RE

他の医療者(たとえば,他の医師や看護師)を同席させる場合は患者の了承を得る

「看護師の○○を同席させてもよろしいでしょうか?」 

S

S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート

STEP1:面談を開始する(患者が面談室に入ってから悪い知らせを伝えるまで)

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Page 35: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

悪い知らせを伝える前に,患者が心の準備をできるような言葉をかける

「大切なお話です」「予想されていた結果かもしれませんが・・・」「お時間は十分ありますか」「少し残念なお話をしなければならないのですが」

RE

患者が感情を表に出しても受け止める 沈黙の時間をとる 患者の言葉を待つ

RE

悪い知らせによって生じた気持ちをいたわる言葉をかける

「つらいでしょうね」「驚かれたことでしょう」「ショックだったでしょうか」 「お気持ちはわかります」など

RE

患者に理解度を確認しながら伝える

オープンクエスチョンを使う 一気に話さず、小出しに伝える 「ここまでいかがでしょうか?」  「話をすすめても良いでしょうか?」

H

質問や相談があるかどうか尋ねる 「何かご質問はありますか?」 H

S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート

STEP2:悪い知らせを伝える

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Page 36: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

がんの治る見込みを伝える

「治ることは非常に困難です。今の生活の質を如何に保つかが今後の目標です」

「うまく共存を目指していきましょう」

A

患者が希望を持てるように,「できないこと」だけでなく「できること」を伝える

「治療はもうありません」 × 「積極的な治療は、効果の期待も少なく、副作用で苦しむだけになります。緩和的治療といって苦しみを抑えていく治療も大切な治療です。」

「あきらめることなく、一緒に考えていきましょう」

RE

患者のこれからの日常生活や仕事についても話し合う

「たとえば,日常生活やお仕事のことなど,病気以外のことも含めて気がかりなことはありますか?」 「今後大切にしたいことは何でしょうか?」

RE

S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート

STEP3:治療を含め今後のことについて話し合う

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Page 37: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

説明に用いた紙を患者に渡す H

今後も責任を持って診療にあたること,見捨てないことを伝える

「今後も 善を尽くして行きたいと思います」

「今後も責任を持って診療していきます」

「決して見捨てることはしません」

など

RE

患者の気持ちを支える言葉をかける

「「大丈夫ですよ」

「一緒に頑張っていきましょうね」

など

RE

S:場の設定 H:悪い知らせの伝え方 A:付加的情報 RE:情緒的サポート

STEP4:面談をまとめる

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Page 38: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

先生、私の余命は

どれくらいなんですか?

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Page 39: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

このような患者さんにはどのように対応したら よいのでしょうか?

1.  「あなたの余命は○ヶ月」です、と本当のことを言ってあげる

2.  「そんなことは考えない方がよいですよ」とごまかす

3.  「誰にもわからないんですよ」と言う

4.  何とも答えられないので、その場から逃げる

5.  その他??

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Page 40: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

患者さんから”先生、私の余命はどれくらいなんですか?”と質問されました。このような患者さんには  どのように対応したらよいのでしょうか?(複数選択可)    N=82  

日本イーライリリー株式会社にて集計

「誰にもわからないんですよ」と言う

39%  

「あなたの余命は○カ月です」と本当の事を

言ってあげる 34%  

「そんな事は考えない方がよいですよ」とごま

かす 6%  

何とも答えられないので、その場から逃げる

0%

その他 21%   NO!

Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 40

Page 41: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

言ってはいけない言葉

「あなたの余命は○○ヶ月です」

SHAREプログラムより

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Page 42: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

SHAREプログラムがすすめるコミュニケーション

「もう死んでしまうのですか?」

「あとどのくらい生きられますか?」

などの言葉への対処方法

Reassurance and Emotional support (安心感と情緒的サポート)

言葉の背景にある感情を探索し、共感すること

ほとんどの場合、不安な気持ちの表れであることが多い。

•  「今後のことで、何か気がかりなことがありますか?」

•  「どなたでも不安な気持ちになると思います」

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42 42

Page 43: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

がん患者が医師から言われる も傷つく言葉

• もう何も治療法がない

• 可能性・確率を言わない余命告知

• 感情への配慮がない

全国19施設ホスピスへ入院した630名の家族へのアンケート調査より

Morita et al. Ann Oncol 15:1551, 2004

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43 43

Page 44: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

国立がん研究センターで治療を受けた再発卵巣がん112名の予後 平均  1.9年 中央値  1.5年 (範囲 0ヶ月~10.5年)

「あなたの余命は1年です」と言ってはいけない ~生存期間中央値をどうやって患者に説明するか?~

0

.2

.4

.6

.8

1

0 2 4 6 8 10 12

生存期間(年)

累積生存率

0

2

4

6

8

10

12

0 20 40 60 80 100 120

患者番号

生存期間(年)

1.5年

生存期間(年)

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44 44

Page 45: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

予後(残された時間の過ごし方)について話し合う際に注意すべき点

• 一方通行にならないこと(患者の声をなるべく聞く) 予後(余命)告知

• 数字での説明はなるべく避ける(最善を期待し、最悪に備えましょう)

• 「大切にしたいことは何ですか?」

• 「患者の立場」に立って考えること

• どんなことがあっても「見放さない」というメッセージ

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45 45

Page 46: 【医療従事者向け】がん患者さんとのコミュニケーションスキル

Hope the Best, and Prepare the Worst ( 善を期待し、 悪に備えましょう)

患者 l 私は少しでも長く生きたいんです。

l 治療がうまくいってほしいんです。

l  悪を考えるということは、あきらめて

しまうような気がするのです。

l 今後は、妻や子供のことが心配なのです。

Ann Intern Med. 2003;138:439-443.

医師 l 私もそう期待したいです。○○さんにとって一番大切なことは何でしょうか?

l 私も治療がうまくいってほしいと思います。もし治療がうまくいったら何を大切にしたいですか?また、治療がうまくいかなかったらどうするかということについて話したいのです。

l  ○○さんの心配するお気持ちは理解できます。準備をする、ということはあきらめてしまう、ということではありませんよ。

l 大切なことを話してくださってありがとうございます。奥様や子供さんのことについて、一緒に考えていきましょう。

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