都立高校防災体験学習マニュアル[公開対応]

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Kenya Miyazaki © 2014

都立***高等学校 御中

防災一斉体験学習 実施マニュアル

2014.03.04最終版 ~ 地域防災に貢献できる高校生を育てるために ~

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Kenya Miyazaki © 2014

防災体験学習実施の主旨

2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う甚大な被害(以下「東日本大

震災」)と、その後の様々な問題は防災教育の必要性を改めて認識させられるものでした。

東北地方の被害は無論のこと、関東圏でも都内では大量の帰宅困難者、千葉県では津波被害、

液状化被害が発生しました。これらの問題は、都立高校生・教職員、そしてその家族にとっ

ても改めて防災を考える大きな要因となったのではないでしょうか。

首都直下で発生する地震の危険性、そして東海地方で想定される巨大地震の影響を考え

ても、今後数十年間は防災対策、防災教育が極めて重要になります。東北地方の復興・再建

を待たずに巨大地震・津波が首都圏や東海地方を襲う可能性も否定できず、取り組みは一刻

の猶予もないという状況になっています。

本学習は、今まさに東日本大震災に直面し、またこれから日本の復興を支え、次の大規模

災害に立ち向かう人材となる都立高校生たちに、防災や地域貢献への知識・理解を体験学習

方式で学んでもらうことを目的としています。

併せて教職員の方々のご協力や地域の防災・ボランティア関係機関、地域住民等の協力を

得ることで高校の具体的な防災対策へとつながるような取り組みとさせていただきます。

2014 年 2 月

もくじ

1.奉仕における防災体験学習の位置付け

(1) 意識・知識・行動のバランス

(2) 自発的な取り組みへの一助として

2.体験学習のデザイン

3.プログラム

・事前学習(地域防災・都立高校の役割・ボランティア等について講義)

・体験学習(関係機関等の協力による防災体験学習)

・事後学習(防災グループワーク等)

4.体験学習当日の内容及びタイムテーブル

5.全体スケジュール

6.予算、関係機関(担当者)一覧

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1.防災体験学習の位置付け

なぜ、防災体験学習なのか?

防災体験学習を実施するにあたり、下記のような位置付けで実施させていただきます。

(1) 意識・知識・行動のバランス

「防災」には意識の段階、知識の段階、行動の段階それぞれでバランスよく学習すること

が必要という共通点があります。「なぜそれが必要なのか」を認識する意識の段階、「どうや

ってすればいいのか」という知識の段階、そして実際に作業する行動の段階です。奉仕と防

災はいずれも具体的なイメージが生徒からも掴みにくく、またその意義がしっかりと伝わ

らなければならいという点に注意する必要があります。

防災体験学習では「防災」を広く「地域・社会貢献」として捉え、生徒が高校で防災につ

いて学ぶこと、その結果災害による被害の予防や、応急対応に協力することが「地域・社会」

に大きく貢献できるということを具体的に例示しながら学習してもらいます。

Point

◆地域・社会貢献の中で、高校(高校生)の防災はどのように位置づけられるのか。

① 発災直後は、生徒・教職員の安心安全を速やかに確保する必要がある。

② 都の施設(帰宅困難者支援ステーション)としての役割がある。

③ 救助救出、避難支援等で地域住民(要援護者等含む)から若い力が期待されている。

(2) 自発的な取り組みへの一助として

もうひとつ、大事なポイントは今回の取り組みが「外部の全面的な協力による特殊な事例」

であってはいけない、という点です。専門的な知識・技能を持った関係機関やボランティア

だけで生徒を指導することは、一時的な学習効果は認められますが”高校生が地域防災に貢

献する”ための課題を解決することにはつながりません。

生徒自身が、自分たちが直面している災害時の困難な問題を正面から見据え、時に先生の

力も借りながら、解決に取り組む姿勢を持ってもらうことが理想的な到達点です。また、問

題(災害時にどのような被害が起きて、どのような対応が必要か)を具体的にイメージする

ことのできる『災害想像能力』も大変重要で、この点に気付いていただくことも大きなポイ

ントになります。関係機関だけでなく、教職員の皆さまにもご協力いただきながら、継続し

ていくことのできるプログラムとして作り上げていきたいと考えています。

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2.体験学習デザイン

体験学習の全体像とビジョンを描く

細かなプログラムに入る前に、体験学習の全体像をご説明します。

(1) プロセス・デザイン

プロセス・デザインは、体験学習の流れを整理したものです。

現状把握:本年度は初年度の取り組みでもあるため、過去に他校で実践したプログラムを

応用しつつ、かつ現在の状況に見合った内容で検討します。

企画立案:場所、時間、指導者等の制約条件を鑑み、学習プログラムを企画立案します。

連絡調整:消防、防災課、社会福祉協議会、NPO等、関係機関との調整を行います。

事前学習:生徒を対象とした自然災害、都立高校や高校生の役割、地域・社会貢献、ボラン

ティア等について事前講義を行います。

体験学習:ブースを通して、様々な災害時の状況・防災について体験的に理解します。

事後学習:防災グループワークや大学生ボランティアの体験談等で事後学習を行います。

成果確認:防災教育振り返りシートで学習成果を確認します。

現状把握

企画立案

連絡調整

事前学習

教員研修 体験学習 事後学習

成果確認

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3.プログラム

○ 事前学習

目的:防災講話を通じて、体験学習全体の流れをイメージできるようにする

根拠:災害時に想定される状況に即した体験学習であることを事前に伝えるため

設営:体育館

物品:スクリーン・プロジェクター・ノートパソコン

担当:指導員1名(ボランティア)

方法:□パワーポイントによる説明

□動画等による、防災・避難所等についての説明

□防災体験学習の流れ

□事後学習の方法

○ 体験学習(概ね3時間~4時間程度)

【A】応急救助・救出体験(実施例)

目的:近隣地域の負傷者救護等について、高校生が協力できることを理解する。

根拠:大規模災害における応急救助・救出には若い力が必要となるため。

機材:人形・机・イス・木材・ジャッキ・バール・ブルーシート等

会場:体育館 ※床面を傷つけないようブルーシート等を敷いて実施する

担当:消防署

方法:□負傷者(人形)の安全を確保しながら、バール・ジャッキ等で救出する

□机・イス・木材等は人力では持ち上げられないという想定の元で行う

□クラスから希望者数名のグループで行い時間があれば数グループ行う

指導:◆応急救助の必要性についての指導をお願いします。

◆可能な範囲で結構ですので、なるべく多くの生徒に体験をお願いします。

◆資器材の安全な取り扱いについて指導をお願いします。

確認:(1)負傷者の安全に十分配慮しているか。

< Y・該当なし・N >

(2)グループ内で協力し、声をかけあって救助作業を行っているか。

< Y・該当なし・N >

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【B】スタンドパイプ使用法体験(実施例)

目標:初期消火の必要性を理解し、スタンドパイプの設置・消火ができる

根拠:住宅密集地や多発火災において住民(生徒等)による初期消火が有効であるため

物品:スタンドパイプ訓練用品 一式

設営:体育館内

担当:消防署

方法:□初期消火の必要性について説明を行います。

□スタンドパイプの仕組み、設置方法、消火方法について説明・展示します。

指導:◆初期消火の重要性と共に、適切な避難行動についても指導してください。

◆誤った操作で事故等が起きないよう、指導してください。

確認:(1)指導員の説明を聞き、初期消火の必要性を理解したか。

< Y・該当なし・N>

(2)適切な方法、姿勢でスタンドパイプを設置・操作できるか。

< Y・該当なし・N>

【C】防災サバイバルグッズづくり体験

目標:ペットボトルや空き缶等を応用したサバイバルグッズを作ることができる

根拠:物資不足に際して、身近なものを使う応用力を身に付けることが重要であるため

物品:ペットボトル(展示用2本、体験用12本程度)、ろ過セット

空き缶(展示用2缶、体験用12缶程度)、はさみ、キャンドル、ライター

ブルーシート

※1クラス2人ずつ程度体験と想定

設営:体育館

担当:ボランティア(専修大学 SKV)

方法:□指導員から災害時の水、火の大切さについて説明します。

□ペットボトルろ過器、空き缶ランタン(作成済み)を展示します。

□各クラスから各 4名ずつ程度希望者を募り、作成体験を指導します。

指導:◆ペットボトルろ過器、空き缶ランタンが全員に見えるよう展示してください。

◆はさみやライターを扱う際は軍手を着用させ、床面にはシートを敷きます。

◆作成指導の際は時間に注意しながら、なるべく生徒に作業させてください。

確認:(1)災害時における、身近なものを活用する応用力の必要性を理解しているか。

< Y・該当なし・N >

(2)ペットボトルろ過器、空き缶ランタンを作ることができるか。

< Y・該当なし・N >

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【D】災害時のトイレについての体験学習

目標:災害時におけるトイレの大切さ、体調管理の重要性がわかる

根拠:被災後の健康維持のため、トイレ・排泄について正しい理解が必要であるため

物品:緊急トイレ(携帯型トイレ)、プロジェクター・スクリーン

設営:体育館入口側(またはステージ側、他の体験と調整)

担当:NPO法人 日本トイレ研究所

方法:□指導員から災害時のトイレについて説明します。

□簡単な展示・体験等で災害時のトイレについて指導します。

指導:◆災害時のトイレの必要性、体調管理の重要性についての指導をお願いします。

◆複数人で協力して作業することの大切さについての指導をお願いします。

確認:(1)災害時におけるトイレの重要性について理解できているか。

< Y・該当なし・N >

(2)健康維持との関係、よりよいトイレ環境について具体的にイメージできるか。

< Y・該当なし・N >

【E】非常食体験 ※アレルギーに注意!!

目標:ストレスでなくなる食欲をカバーできる、おいしい非常食について理解する。

根拠:食事を取る行為がリラックスにつながるため、食事の大切さを伝える必要がある。

物品:各種非常食、はし・皿・手指消毒液 等(分量は随時調整します)、ポット 2台

設営:①1クラスにつき必要量のお湯を用意します。※ポット1台程度

②1クラス1セットになっている非常食を取り出し、作ります。

③前のクラスが次のクラスの非常食を作り、自分たちで配食・試食します。

※ローテーションの都合上、最初のクラスは事前に作っておき、最後のクラス

は食べるのみとなります。

担当:教員

方法:□担当者から、非常食体験について説明を行います。

□希望者に「配食」「非常食作り」等を依頼し、残りは展示内容の見学、試食

□非常食の中にスプーンが入っていますので、それを使って取り分けます

□作られた非常食は可能な限り、食べきってください。また紙コップ等は可燃物、

その他のものは不燃物など、分別を徹底してください。

指導:◆災害時でも、しっかり食事をとることの大切さを伝えてください。

◆いろいろな種類があること、おいしいものもあることを伝えてください。

確認:(1)非常食を正しい手順で安全に作ることができるか。

< Y・該当なし・N>

(2)限られた量を適切に配分することができるか。

< Y・該当なし・N>

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【F】災害時における あかり の大切さ体験学習

目標:災害時における光(あかり)の大切さを理解する

根拠:災害による停電時等に備えた備蓄や、冷静な行動ができることが重要であるため

物品:ケミカルライト「防災用簡易ライト」、化学発光学習キット「ルミキット」ほか

長机×2、ホワイトボード×1、洗浄済みペットボトル×生徒数

設営:ホワイトボード、机、ライトのセッティング

担当:指導員(株式会社ルミカ)

方法:暗闇の怖さ、あかりの大切さについて説明を行います。

停電時(震災時)にあかりをとる方法について考えます。

ケミカルライトを実際に設置し、夜間に備えます(できれば生徒、または指導員)

指導:◆光源としてケミカルライトという選択肢があることと、その有効な活用方法を

伝えます。

確認:(1)あかりの大切さとそれぞれの光源の長所・短所を理解できているか。

< Y・該当なし・N >

(2)ケミカルライトを有効に活用できるか(実際の設置等)。

< Y・該当なし・N >

○ 事後学習

目標:防災体験学習、災害ボランティア体験談、グループワークを通じて「自分たちにも

できることがある」という気付きと、自信が持てる

根拠:積極的な行動(ボランティア活動等)のために気付きや自信が必要であるため

設営:大講義室

物品:専用ワークシート(説明用紙を含む)

担当:ボランティア等

方法:グループワーク等により、防災体験の学習内容を再確認します。

○ 振り返り

別紙「防災教育振り返りシート」に記入します。

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・4.体験学習当日の内容及びタイムテーブル

08:30 ~ 08:45 ( 15 分) 登校着がえ・挨拶

08:45 ~ 09:10 ( 25 分) ① 体験開始

09:10 ~ 09:15 ( 5 分) 移動

09:15 ~ 09:40 ( 25 分) ② 体験開始

09:40 ~ 09:45 ( 5 分) 移動

09:45 ~ 10:10 ( 25 分) ③ 体験開始

10:10 ~ 10:15 ( 5 分) 移動

10:15 ~ 10:40 ( 25 分) ④ 体験開始

10:40 ~ 10:45 ( 5 分) 移動

10:45 ~ 11:10 ( 25 分) ⑤ 体験開始

11:10 ~ 11:15 ( 5 分) 移動

11:15 ~ 11:40 ( 25 分) ⑥ 体験開始

11:40 ~ 12:00 ( 20 分) まとめ

※時間管理は「開始時刻」を基準に進める(早く終わっても指定時間までその場で待機)。

終了時刻になったら指導が途中であっても速やかにまとめを行い、切り上げて次の体験

へ移動させる。(全体管理 災害救援ボランティア推進委員会 宮崎)

・5.高校でご用意いただく物品

○長机 × 12(各ブース2)

○イス × 12(各ブース2)

○ポット(温水状態)× 2以上(非常食試食)

○ゴミ袋 × 適宜(非常食試食、分別が必要な場合は必要数)

○電源(コンセント)、可能であれば延長コード等(非常食試食、災害トイレ体験)

○プロジェクター、スクリーン × 1(災害トイレ体験)

○ホワイトボード × 1(あかり体験)

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・6.体験学習実施レイアウト

各体験を 1 クラス 25 分程度で体験し、5 分間で交代のローテーション。

お手洗い、体調不良等は担当教員に申し出て対応(指導員の許可を得る必要はございませ

ん)。

指導員側で写真を撮影する場合があります。顔や学校名が分からないよう配慮いたします

が、ご了承願います。

救助

スタンド

パイプ

サバイバ

ルグッズ

非常食

ステージ

トイレ

あかり

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・7.全体ケジュール

体験学習の実施スケジュール

2014年 2月 6日 作成

2014年 3月 4日 最終版

〒102-0073 東京都千代田区九段北 1-15-2九段坂パークビル 3階

(災害救援ボランティア推進委員会)

TEL:03-6822-9900 FAX:03-3566-8217

防災教育コンサルタント 宮﨑賢哉