大相撲の八百長問題

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大相撲の八百長問題. 拓殖大学「スポーツ文化論」 2012 年 講師澤井和彦. 週刊現代による朝青龍の八百長記事. 朝青龍が全勝優勝した 2006 年 11 月 12 日~ 26 日九州場所で、全 15 番中ガチンコは 4 番のみ 関脇・大関時代は自ら携帯電話で星のやり取りをしていた 横綱になってからは「中盆」(旭天山)を使用 幕内力士 42 人中(当時)ガチンコ力士は 8 人のみ. - PowerPoint PPT Presentation

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Page 1: 大相撲の八百長問題

大相撲の八百長問題

拓殖大学「スポーツ文化論」 2012 年講師澤井和彦

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 2: 大相撲の八百長問題

週刊現代による朝青龍の八百長記事 朝青龍が全勝優勝した 2006 年 11 月 12 日~ 26 日

九州場所で、全 15 番中ガチンコは 4 番のみ 関脇・大関時代は自ら携帯電話で星のやり取りをして

いた 横綱になってからは「中盆」(旭天山)を使用 幕内力士 42 人中(当時)ガチンコ力士は 8 人のみ

武田頼政 激震スクープ 外国人力士全盛の「国技」はここまで汚れていた 横綱・朝青龍の八百長を告発する !-- 全勝優勝した‘ 06 九州場所では 15 番中ガチンコは 4 番だけ 週刊現代 Vol.49, No.4( 通号 2412)  pp. 24 ~ 29  2007 年 2 月 3 日

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

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八百長メール事件 2011 年 2 月、野球賭博の問題で力士の携帯電話を押収して調べ

ていた警視庁により発覚。 13 人の力士が関与していたと発表。 警視庁幹部「公共性、公益性に照らし連絡すべきだと考えた」

放駒理事長は、「(八百長は)過去には一切なかった問題で、新たに出た問題」「協会存亡の危機である」と述べ謝罪。一部の力士も八百長を認める。

2011 年春場所中止。

3 月 9 日、相撲協会が「大相撲新生委員会」を設置

4 月、 19 人の力士に引退勧告、 2 人が解雇処分(引退勧告に従わなかったため)

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 4: 大相撲の八百長問題

八百長の仕組み 力士はおおよそ、八百長力士(注射力士ともい

う)と非八百長力士(ガチンコ力士ともいう)に判別される。

大相撲の八百長は大きく分けて星の「買取」と「貸し借り」の2つに分けられる。

力士個人同士だけでなく、部屋同士の星の貸し借りもある。

部屋の親方が所属力士のために八百長工作に動く場合もある。

板井 圭介 ( 著 ) 、中盆―私が見続けた国技・大相撲の“深奥”、小学館、 2000

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 5: 大相撲の八百長問題

八百長の仕組み 巡業が、力士同士がネットワークを築く場になって

いる。 八百長の代金の清算は場所後の巡業などで付け人が

関取の意をうけて行うのが通例。

板井 圭介 ( 著 ) 、中盆―私が見続けた国技・大相撲の“深奥”、小学館、 2000

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 6: 大相撲の八百長問題

八百長の仕組み エレベーター力士

横綱・大関陣との対戦が多い上位(三役~前頭 5 枚目)で星を売り・貸しする

→ 番付が下がった翌場所には貸している星を返してもらい、勝ち越して幕内力士としての地位を保つ

星の価格が高い上位で星を売り、安い下位で星を買うことで収支を黒字に。

板井 圭介 ( 著 ) 、中盆―私が見続けた国技・大相撲の“深奥”、小学館、 2000元大鳴戸親方 ( 著 ) 、八百長―相撲協会一刀両断、鹿砦社、 1996

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 7: 大相撲の八百長問題

八百長の仕組み ガチンコで勝てる(強い)ことが前提

上位で優勝争いに絡むためにしろ、中位、下位で幕内に残るにためしろ、八百長で星を回り合ってもガチンコ力士に勝たなければ勝ち越すことはできない

実力に裏付けされていなければ八百長力士のグループには組み入れてもらえず、真剣勝負(ガチンコ)で勝つ力が無ければ地位は保つことはできない

ガチンコで勝てなければ星の買い取り価格が高くつく板井 圭介 ( 著 ) 、中盆―私が見続けた国技・大相撲の“深奥”、小学館、 2000 、 p.137

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 8: 大相撲の八百長問題

力士の番付と給料

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

番付 年額給与 月額給与 年額賞与 特別手当 出張手当 力士補助金

力士褒賞金 年額報酬

2横綱() 33,840,000 2,820,000 5,640,000 1,200,000 1,155,000 75,000 600,000 42,510,0004大関() 28,164,000 2,347,000 4,694,000 900,000 997,000 75,000 400,000 35,230,0002関脇()2小結()

32前頭( )16筆頭~ 枚目 15,708,000 1,309,000 2,618,000 - 745,000 75,000 240,000 19,386,000

28十両( )14筆頭~ 枚目 12,432,000 1,036,000 2,072,000 - 682,000 75,000 160,000 15,421,000

場所手当× 6 場所手当 勝星奨励

金 勝越金

幕下1 60枚目~ 枚目 900,000 150,000 2,500 6,000

三段目1 100枚目 枚目 600,000 100,000 2,000 4,500

序二段1 123枚目~ 枚目 480,000 80,000 1,500 3,500

序ノ口1 33枚目~ 枚目 420,000 70,000 1,500 3,500

※ http:/ / ja.wikipedia.org/ wiki/ %E5%A4%A7%E7%9B%B8%E6%92%B2 出典; より※関取の力士報奨金は最低支給金額。

幕下以下631( )

関取70( )

75,000 240,000 25,125,00020,280,000 1,690,000 3,380,000 300,000 850,000

中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報社、 2003 、 p.26

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朝青龍の給与所得( 2008 年 5 月場所終了時) 褒賞金

勝ち越し点数 379×0.5 = 189.5円、金星 1×10 = 10円 幕内最高優勝 22×30 = 630円、全勝優勝 5×50 = 250円 最低額加算 幕下以下 3円、十両昇進 15円、幕内昇進 15円、大関昇進 9円 50銭

合計 1,152円 00銭 1,152円×4,000= 4,608,000 円( 1 場所あたり) 4,608,000円×6 場所= 27,648,000 円

給与( 282万円×12 か月) +特別賞与( 564万円)+褒賞金= 67,128,000 円

それでも他のプロスポーツに比べて決して多いとは言えない。大相撲 . (2008, 11 月 9). Wikipedia, . Retrieved 14:19, 11 月 9, 2008 from http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%A4%A7%E7%9B%B8%E6%92%B2&oldid=22807443.

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

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力士の給与の特徴1. 十両かそれ未満かで待遇に天と地ほどの差がある。2. 他のプロスポーツに比べて比較的低く抑えられている。3. 階級があまり細かく分かれていない。十両や前頭は基本給が同じ。4. 関取になってしまうと番付の多少の変動は給与に影響を与えず、

それ以上地位が上がっても給与はそれほど増えない。十両と横綱の基本給の差は 3倍以下。

5. 「能力給」(優勝賞金・懸賞金・月給)と「年功賃金」(褒賞金)の二階建て+「養老金」(退職金)

→ プロスポーツ選手というよりサラリーマン的な給与体系→  「能力給」としてのインセンティブは他のスポーツに比べて

低い。→  より長く現役を続けることにインセンティブがある。中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報

社、 2003 、 p.27専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤

井和彦

Page 11: 大相撲の八百長問題

年寄名跡(年寄株・親方株) (相撲協会は)力士を引退して年寄名跡を襲名継承したものがその運営にあたり、各相撲部屋は力士を養成する場として、協会に登録された力士を指導養成する。 力士による自治

年寄名跡 日本相撲協会の「年寄名跡目録」に記載された年寄の名称であり、俗に年寄株、親方株とも呼ばれる。

日本相撲協会の役員になったり、相撲部屋を作り弟子を養成するために必要な資格

定数105+一代年寄、準年寄

定年 65歳(終身雇用)年寄名跡 . (2007, 12 月 13). Wikipedia, . Retrieved 05:51, 1 月 2, 2008 from http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%B9%B4%E5%AF%84%E5%90%8D%E8%B7%A1&oldid=16689385.  専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤

井和彦

Page 12: 大相撲の八百長問題

力士の人件費番付 月額給与 年額給与 年額賞与 特別手当 出張手当 力士補助

金力士褒賞金 年額報酬

2横綱() 2,820,000 33,840,000 5,640,000 1,200,000 1,155,000 75,000 600,000 42,510,0004大関() 2,347,000 28,164,000 4,694,000 900,000 997,000 75,000 400,000 35,230,0002関脇()2小結()32前頭( )

16筆頭~ 枚目 1,309,000 15,708,000 2,618,000 - 745,000 75,000 240,000 19,386,000

28十両( )14筆頭~ 枚目 1,036,000 12,432,000 2,072,000 - 682,000 75,000 160,000 15,421,000

場所手当× 6

場所手当 勝星奨励金 勝越金

幕下1 60枚目~ 枚目 900,000 150,000 2,500 6,000

三段目1 100枚目 枚目 600,000 100,000 2,000 4,500

序二段1 123枚目~ 枚目 480,000 80,000 1,500 3,500

序ノ口1 33枚目~ 枚目 420,000 70,000 1,500 3,500

※ http:/ / ja.wikipedia.org/ wiki/ %E5%A4%A7%E7%9B%B8%E6%92%B2 出典; より※  力士褒賞金は、最低支給金額。

幕下以下631( )

関取70( )

75,000 240,000 25,125,00020,280,0001,690,000 3,380,000 300,000 850,000

番付 人数 人件費総額

横綱 2 85,020,000大関 4 140,920,000関脇 2 50,250,000小結 2 50,250,000

前頭 32 620,352,000

十両 28 431,788,000

※賞金 6場所 108,000,000

総計 1,486,580,000

※ 6幕内+十両の優勝・三賞 場所分の合計

力士の人件費(基本給)約 15億円

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

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協会の構成員  960 人 親方  107 人 若者頭  8 人 世話人  13 人 行事  43 人 呼び出し  39 人 床山  52 人 力士  698 人

幕内  42 人 十両  28 人 幕下 1 ~ 60 枚目  120 人、幕下三段目  200 人、序二段  244 人、序ノ口  64 人

平成 20 年 10 月 27 日更新

Goo 大相撲 http://sumo.goo.ne.jp/hon_basho/banzuke/index.html

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 14: 大相撲の八百長問題

年寄 定年 65歳(終身雇用) 定数 105

一代年寄 準年寄

役員理事 10名、幹事 3名評議員(すべての年寄、現役力士 4名、行事 3名)による選挙で選ばれる。これに役員待遇という役職を加えた 20数名の年寄で管理職を構成仕事・・・各部署(審判部、事業・指導普及部、巡業部、地方三場所部、広報・生活指導・警備本部)の部長ならびに副部長、監査委員長、相撲教習所長など。その下の委員と平年寄は各部署に配属される。中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報社、 2003 、 p.45

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 15: 大相撲の八百長問題

年寄の給与 年寄の平均的な年俸は 1,300 ― 1,500 万円程度と推定。 年寄数は多少変動するが 106 名とすると、年寄の給料・賞与・手当の総額はおそらく少なくとも年間 15 億円内外であろうと思われる。

武藤泰明「大相撲のファイナンス:その安定性と健全性について」スポーツマネジメント研究 第 3巻 1号、 2011.11 、 p.61-76

協会の最大のコスト部門は年寄

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 16: 大相撲の八百長問題

人的資本理論 労働者が有する生産に有用な能力を、物的資本と同等に扱ってい

う語。 教育や訓練など、この能力を高めるための支出を投資として扱う。 職場訓練,学校教育によって新たに労働者個人に付加される能力。 教育水準と賃金との正の相関について,教育水準の高い労働者は

その個人自体に体化した教育によって高い生産力をもつからだと考える。

資本の種類 知識、技術、体力、資格、お金、土地、設備・施設、人脈・コネ・・・

資本の特殊性と一般性専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤

井和彦

Page 17: 大相撲の八百長問題

力士の人的資本 体格、能力

極めて一般性の低い力士の人的資本

力士の学歴 平成 15 年に引退した幕内力士 150 人の 77% が中卒。高卒 11% 、大卒 12%

中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報社、 2003 、 p.63

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 18: 大相撲の八百長問題

力士のセカンドキャリア 平成 15 年以前に引退した幕内力士 150 人の引退後の仕事

相撲     57%

年寄りや若者頭といった協会員に加え、指導者として相撲部屋に雇われているケースも含んでいる。

料理店    21%

スポーツ 4%

タレント   3%

その他  4%  (実業家、家業継承、教員など) 不明  4%

死亡  7%

幕内を経験していない力士の引退後の情報はない。中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報社、 2003 、 p.66専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤

井和彦

Page 19: 大相撲の八百長問題

力士のキャリア戦略 年寄名跡を取得して相撲協会に残ることが最重要課

題となる 力士にとって自らの人的資本を生かすことのできる唯

一最高のセカンドキャリア 定年の 65歳まで安定した収入が期待できる。

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 20: 大相撲の八百長問題

大相撲の力士はサラリーマン 日本相撲協会は現役力士と年寄という「社員」を有する会社

幕内力士は現役のときに稼ぎだした所得の一部を協会に年金として

納め、引退して年寄として協会に残った後で受け取っているような

もの。 年寄名跡はいわば年金証書

現役時代の貢献度の高い上位力士、とくに横綱ほど年寄になってからの待遇が良い

力士への配分を、親方になるまでを含めてならして均等配分する賃

金システム

終身雇用、年功賃金といった日本的雇用慣行に近い雇用慣行中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報社、 2003 、 p.51 、 p.48-49

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 21: 大相撲の八百長問題

八百長の背景にある大相撲の組織と制度1. 力士の人的資本は極めて特殊なもので引退後他の職種への転職が難しい

2. 現役力士の給与を抑制し、引退後の力士(親方)に再分配することで力士のセカンドキャ

リアを保障する一方で、本場所最高優勝や番付昇進に対するインセンティブが相対的に抑

制されている

1. 番付上位と下位で給与格差がそれほど大きくない。

2. 番付によって細かい給与階級が設定されていない(十両と前頭は皆同じ給料)

3. 現役力士への配分額が少ないぶん、ケガをして休場ないし引退する場合のリスクが大きく

なる(細く長く)

4. 巡業を通じて力士間に仲間意識とネットワークが形成される

5. 競技運営が全て「身内」によってなされており八百長の監視(モニタリング)が機能しに

くい

6. 「元力士」である親方に経営者としての資質、人的資源は期待できない・・・経営改善・改革を

困難にしている専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤

井和彦

Page 22: 大相撲の八百長問題

八百長問題についての別の観点 はたして相撲はスポーツか? 日本相撲協会のミッション

第 2 章 目的および事業 (目 的)第 3 条 この法人は、わが国固有の国技である相撲道を研究し、相撲の技術を練磨し、その指導普及を図るとともに、これに必要な施設を経営し、もって相撲道の維持発展と国民の心身の向上に寄与することを目的とする。

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 23: 大相撲の八百長問題

八百長問題の観点 大相撲の 3 つの側面

1. スポーツとしての大相撲2. 興行としての大相撲3. 伝統芸能・文化としての大相撲

横綱は競技能力だけでなく人間性が問題にされる

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 24: 大相撲の八百長問題

大相撲の「伝統」 たとえば、

1. 力士や行司の独特のファッション、

2. 国技館のデザイン、3. 「仕切り」や「立ち会い」

のような特殊なルールなど、

「近代スポーツ」の合理性や公式性とは無関係の、独特の伝統、慣習、世界観は大相撲の重要な要素

とはいえ大相撲における「伝統」の多くは、近代になって「創造」されたもの

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 25: 大相撲の八百長問題

相撲における伝統の「創造」 そうした「伝統」は意図的に「創造」されたものでもある。

土俵の発明は 17世紀 現在の土俵の形・大きさになったのは昭和 6 ( 1931 )年

仕切線と仕切の制限時間が設けられたのは昭和 3 ( 1928 )年 ラジオによる相撲中継の開始に合わせて設けられたもの

神明造りの屋根が使われるようになったのは 1931 年から

行事の服装が現在のようになったのは 1909 年から

大銀杏マゲを結うようになったのは国技館ができてから( 1909 (明治42 )

年)

→  「興行としての大相撲」リー・トンプソン「スポーツ近代化論から見た相撲」(亀山佳明編、スポーツの社会学)、世界思想社、 1991 、 p.71-92

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 26: 大相撲の八百長問題

興行におけるブランド価値としての「伝統」 とはいえそうした伝統や世界観は、一朝一夕にできあがるものではない。

協会や部屋の閉鎖的な経営(年寄制度)、能力給を低く抑え褒賞金のような年功賃金雇用的な賃金制度、中立的な第三者による監視制度の欠如、力士同士の紐帯・・・近代スポーツの制度としては欠陥があるように見えるこれらの制度は、部外者や異文化を排除し、イノベーションを抑制する、大相撲の「伝統」や世界観を「保存」するためのもの

「変わらないこと」の興行的価値・・・力士と親方が生活様式も含めて「伝統」を身体化し、保全しているからこそのリアリティ 誰もが簡単にディズニーランドを創れるわけではない

大相撲ファンは何を観に来るのか? 何に価値を見いだしているのか?中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報

社、 2003専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦

Page 27: 大相撲の八百長問題

八百長は本当に悪か

角界の八百長を絶滅することが本当にファンにとって、社会にとってよいことなのだろうか?

中島隆信「大相撲の経済学」東洋経済新報社、 2003 、 p.100-102

専修大学「スポーツ文化論」 2012   澤井和彦