5756 ――――――――Perfect BOAT FEB.2009

It IsaReal!RealOffshore Fisherman!!

12月の初旬。真冬とはいえ風もなく、穏やかな休日。「ちょっと昼飯でも食べに行かないか？」と携帯を手に取り仲間を

呼び出す。いつも休日を共に過ごす仲間は昼前にはマリーナに顔を揃え、すぐに出港準備に取り掛かる。3本あるイグニ

ッションキーを順に回せば、呆気なくそのエンジンは目覚めた。ポンツーンを離れスロットルレバーを思い切って倒し込

めば、爆発的な加速を見せあっという間に見慣れた小島に着いてしまった。ふと時計に目をやれば、まだ正午を少し過ぎ

たところ。「ゆっくり食事を取っても3時にはマリーナに戻れるな。」そんな事を実際に可能にしてしまうボートがここにある。

photo: Hiroyuki Kashiokatext: TAIZO

special thanks:シーブリーズボートサービスTEL: 045-771-1000

http://www.seabreeze.co.jp

湘南サニーサイドマリーナ

Wellcraft SCARAB 35 CCF

P.B.09FEB.P056_065 08.12.17 5:47 PM ページ56

5958 ――――――――Perfect BOAT FEB.2009

P.B.09FEB.P056_065 08.12.15 11:12 AM ページ58

61

が、アメリカでは環境性能を備えたハイパワー2サイクルアウトボードがまだ販売されているのだ。「35 CCF」は現在のSCARABシリーズの最大モデル。全長9.56m、ビーム幅2.90mはこのクラスとしては標準的なスペックだ。僅かなバウアップの後、合計900馬力の強大なパワーに蹴飛ばされるように加速を続けると、十数秒でトップスピードの60ノットに達してしまう。トリムを調整しそこから先の数ノットを稼ごうと試みたが、かえってスピードダウン。トリムを調整しない状態でトップスピードが出せるということは、走行姿勢や重量バランスが非常に優れている証拠だ。このあたりは「Wellcraft」社が長年パワーボート製造で培ってきたノウハウを持っているからかもしれない。さすがに60ノット

のスピードで走り続ける体力と勇気はなく、この種のボートのクルージングスピードと称される35から45ノット近辺で走りまわってみるが、非常にソフトライドで、軽い横Gを感じながら思わず「これは楽しい！」と叫びたくなってしまうほどの爽快感を感じられた。だが、「35 CCF」はただ早く走るだけのボートではない。この艇にはアウトリガーこそ装備されていないが、ライブウェルやフィッシュボックス、ロッドストレージなど、およそオフショアセンターコンソーラーに要求される全ての装備が施され、フィッシングボートとしても完璧な役目を果たしてくれるのだ。日本の海象やマリーナ事情等でなかなかマーケットが拡大しないオフショアセンターコンソーラーだが、リッチなビッグボートのオーナーのセカンドボートや、スポーツフィッシングを楽しむゲームフィッシャー達には是非一度味わっていただきたい。今後、注目されるカテゴリーのボートであることに間違いはないだろう。 P.B.

60 ――――――――Perfect BOAT FEB.2009

2基掛け、3基掛けは当たり前。今や4基掛けもチラホラ増え始めたオフショアセンターコンソーラー。今年のフォートローダーデールボートショーでは350馬力の五基掛けなどという、想像を絶するものまでデビューさせるビルダーも現れる始末。もちろんクリーン＆低燃費の最新アウトボードを装備してはいるのだが、兎角、環境問題やエコロジカルが取り沙汰されるご時世にも拘らず、そんな問題などどこ吹く風ぞ、と言った感じである。まだまだ日本では見掛ける機会も少なく、あまり知られていないビルダーが多いカテゴリーのボートだが、アメリカにはそれらを世に送り出すビルダーが数多く存在している。本誌でも、マイアミボートショー等で度々そんなマニア延髄のボートのインプレッションをお伝えしてきたが、我が日本の海にもそんなモンスターボートが走り回っていたのである。濃紺のハルを持つそれは、「Wellcraft SCARAB 35 CCF」。（以下、

35 CCF）数多くの輸入艇販売実績を誇り、横浜を拠点にセールス

からファクトリーサービス（メンテナンス・修理作業）までトータル的にケアしている「シーブリーズボートサービス」によって輸入されたものだ。日本で「Wellcraft」と言えば「46 CMY」、「SCARAB」と言えばアメリカの人気TVドラマ「マイアミバイス」に登場した「38 EXCEL」が有名だが、現在の「Wellcraft」はアメリカの巨大ボートグループ「Genmar」グループの一員となり、主にフィッシングボートなどの建造を手掛けている。この「35 CCF」のシルエットは見ているだけ美しい、低くまっすぐ

に伸びたシアーラインを持つ、センターコンソーラーのお手本とでも言うべきもの。バウのフレアーには独特な三次元の曲面が与えられ、ボトムにはスピードアップと燃費低減に威力を発揮するステップハルが採用されている。これにセットされるパワーソースは、YAMAHA製300馬力の2サイクルアウトボードが3基。日本国内では時代と共に既に4サイクルに移行しているアウトボードエンジンだ

P.B.09FEB.P056_065 08.12.17 5:47 PM ページ60

6362 ――――――――Perfect BOAT FEB.2009

センターコンソーラーボートのセオリー通りに整然と計器類が並ぶヘルム周り。全てのスイッチ操作をステアリングから手を離すことなく行えることはハイスピードクルージングには欠かせない。

「35CCF」がフィッシングユースだけでなくクルージングユースにもポイントを置いていることは、ソフトトップの大きさからも窺い知ることができる。美しいパイプワークを持つアルミ製のアーチはホワイトのパウダーコートが施されている。

ヘルムシートはボルスタータイプを採用。ステアリングとの位置関係は標準的な日本人の体型でも違和感がない。ただ、座面を跳ね上げた状態のスタンディングポジションがより一層ベスト。

一人掛けのシートはコンソール内部へのハッチを兼ねている。バウに備わるシートをアレンジするとサンベッドとしても使える。フィッシュボックスやストレージは豊富に備わる。

センターコンソーラーとしてのマストアイテムとなるヘッドとウォッシュボウルを備えるコンソール内部。スカイライトハッチとキャビンライトにより内部の採光は必要十分な明るさを確保している。

アフトのシートは跳ね上げて使うタイプ。収納すればデッキはフラットになりフィッシャビリティに長けたスペースとなる。トランサムのリギングステーションにはライブウェル、清水シャワー、カッティングボード等を装備。

P.B.09FEB.P056_065 08.12.15 11:13 AM ページ62

6564 ――――――――Perfect BOAT FEB.2009

SPECIFICATIONS. . . . .Wellcraft SCARAB 35CCF全長　9.56m全幅　2.90m喫水　1.75m燃料タンク容量　1,135L清水タンク容量　109Lエンジン　3×YAMAHA LX 300 TXRD最高出力　3×300HP問い合わせ先　シーブリーズボートサービス

TEL：045-771-1000http://www.seabreeze.co.jp

45ノット付近でクルージング中の航跡。900馬力の暴力的なパワーはさながらフラットアウトのような世界を与えてくれる。一度味わうと虜になってしまう。

ボトムデザインはパワーボートのそれを見ているよう。きつく折り返されたチャインは波を巧みに押し潰す。長きに渡りパワーボートを製造してきた「Wellcraft」社の経験の証だ。

エンジンカバーに記された「900」のサインが誇らしげ。ステンレス製のプロペラブレードのピッチは21インチを採用。バウから始まるボトムのストライプはトランサムエンドまで続いている。

P.B.09FEB.P056_065 08.12.15 11:13 AM ページ64