オタクのためのテニス入門(仮)

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Page 1: オタクのためのテニス入門(仮)

【プレゼンテーションバージョン 2015年版】

Page 2: オタクのためのテニス入門(仮)

■序文

日本人には 2種類の人間

しか存在しない。

1

Page 3: オタクのためのテニス入門(仮)

■序文

それは…

2

Page 4: オタクのためのテニス入門(仮)

■序文

である。

オタク 非オタク

Page 5: オタクのためのテニス入門(仮)

■序文

本提言においてオタクの諸氏に対して『運動を通じた健康増進を啓蒙する』ための持論を展開したい。 一般的には不健康で不衛生なイメージの あるオタクだが、私はここでオタクの諸氏 に対して、スポーツでさわやかな汗を流し、 健康な体を手に入れ、明るく積極的な人生 をなるべく永きにわたっておくるべきだ、

ということを“あえて”力説したい。

─────それはなぜか?

Page 6: オタクのためのテニス入門(仮)

■序文

それは、オタクこそが本来「健康」で「長生き」するべき存在だからだ。 本提言で述べている具体策を実践し、その結果健康な体と明るく積極的な人生を手に入れて欲しい。

健康な体 明るく

積極的な人生

Page 7: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタクとは何者か?

具体的な方策を提言する前に、「オタク」について簡単に定義しておきたい。 「Wikipedia」には以下のような記載が見られる。

おたく(オタク、ヲタク)とは、1970年代に日本で誕生したサブカルチャーのファンの総称。 独特の行動様式、文化を持つとされる。 元来はアニメ・SFのファンに限定した呼称であった が明確な定義があるわけではなく、現在はより広い領域のファンを包括しており、その実態は一様ではない。

Page 8: オタクのためのテニス入門(仮)

オタクの存在が一般に認知されるようになったのは1980年代前半のこと。 「おたく族」という総称を与えられ顕在化したことで、広く認知されるようになった。 2005年に野村総合研究所(以下、NRI)オタク市場予測チームが「オタク市場の研究」(※)というレポートの中でオタクの特性を分析し、その定義を発表した。

■オタクとは何者か?

主要12分野の オタク人口

172万人

市場規模

4,110億円

Page 9: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタクとは何者か?

※オタク市場の研究

野村総合研究所オタク市場予測チーム 東洋経済新報社 http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%AF%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6-%E9%87%8E%E6%9D%91%E7%B7%8F%E5%90%88%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%AF%E5%B8%82%E5%A0%B4%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0/dp/4492555412

Page 10: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタクの行動特性について

NRIの分析で評価すべきは、オタク層に共通する行動・心理特性を抽出したこと。 商品やサービスの収集度合い、情報交換や情報発信などを行なうコミュニティへの参加度合いなどについてのアンケートを実施し、その結果から…

の欲求という6つの因子が浮かび上がった。

共感

収集

顕示

自律

創作

帰属

Page 11: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタクの行動特性について

01)他人に良さを理解してほしいと思う「共感」の欲求 02)何でもそろえたいと感じる「収集」の欲求 03)自分の意見を広めたいという「顕示」の欲求 04)自分なりの考えを持ちたいという「自律」の欲求 05)オリジナル作品を作ったり、改造したりする「創作」の欲求 06)気の合った仲間にだけ分かってもらえばいいと考える「帰属」の欲求 上記の欲求から分かるのは、「オタク」としての活動が単なる消費や内に向かった精神活動ではなく、精力的に行動し、創造することに意欲的で、他者とも積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢が読み取れる。

Page 12: オタクのためのテニス入門(仮)

■長生き、それは活動限界を引き延ばすということ

なぜ「オタク」こそが「健康」で「長生き」しなければならないのか?

⇒ その方が「オタク活動の量と質が向上するから」 長生きするということは…

⇒ 言い換えればオタクとしての活動限界を引き延ばすということ。

Page 13: オタクのためのテニス入門(仮)

■長生き、それは活動限界を引き延ばすということ

長い時間をかけた方が、得られる知識の量が豊富になる。 また収集できるアイテムの数なども増えることになる。 その結果、新しい切り口のコンテンツを思いつく可能性も高まる。

つまり

の欲求が満たされる の欲求が満たされる

収集 自律

Page 14: オタクのためのテニス入門(仮)

顕示 創作

■長生き、それは活動限界を引き延ばすということ

時間があれば思いついたコンテンツを形にすることができる。 例えばそれらは「同人誌」という形にまとめられる。 形になった以上、発表したいという欲求が起こるのは当然のこと。

つまり

の欲求が満たされる の欲求が満たされる

Page 15: オタクのためのテニス入門(仮)

共感 帰属

発表された同人誌が流通することで、自分の意見が広まったという実感を得ることが出来る。 また仲間からの理解を得られたり新たな集団を形成することさえ可能になる。 そうした結果を得られることが、次なる活動の原動力となる。

つまり

の欲求が満たされる の欲求が満たされる

■長生き、それは活動限界を引き延ばすということ

Page 16: オタクのためのテニス入門(仮)

■健康、それは積極性を得るということ

オタク活動を行うためには単に「長生きをする」というだけでは不十分。

「健康である」ということも重要。

健康でなければ出歩くこともままならず、真っ先に行動量が落ちてしまう。

Page 17: オタクのためのテニス入門(仮)

■健康、それは積極性を得るということ

「健康」は「積極性の維持」についても重要な役割を果たす。

健康面に不安が ある場合

積極的な行動に移りにくい

Page 18: オタクのためのテニス入門(仮)

■健康、それは積極性を得るということ

積極的な行動を行わなければNRIの提唱する因子欲求を満たすことが出来ず、その結果、理想的なオタク活動からはどんどん乖離してしまう。 理想的なオタク活動とは6つの因子で構成される欲求を、さながらPDCAサイクル(※)を回すがごとく、高回転で実行することによって成長する。 オタクたるもの、全力を持って健康状態を良好に保ち、理想的なオタク活動に邁進しなければならない。

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■健康、それは積極性を得るということ

※PDCAサイクル PDCAサイクルは、事業活動における生産 管理や品質管理などの管理業務を円滑に進め る手法の一つ。 Plan(計画)→ Do(実行) → Check(評価)→ Act(改善)の4段階を 順次行って1周したら、最後のActを2週目の Planにつなげ、螺旋を描くがごとく1周ごと にサイクルを向上させて、継続的に業務改善を 行おうとするもの。 第二次世界大戦後、統計学を用いた品質管理手法を構築したウォルター・シューハートやエドワーズ・デミングらが提唱したため、シューハート・サイクルまたはデミング・ホイールとも呼ばれる。

Page 20: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動ノススメ

文明の発達によって現代人は肉体労働から解放された。その結果新たに成人病や生活習慣病といった疾病構造が生まれた。 骨・関節・筋肉など、運動器の機能が低下。要介護や寝たきりになる危険性も。

⇒「ロコモティブシンドローム」と呼ばれ、国民病として深刻な問題。 ストレスに起因した「心の病」が急増。

⇒厚生労働省では「4大疾病(※)」に新たに加えて「5大疾病」とした。 これらの諸問題に対する予防・改善については、まさに運動こそが有効。

Page 21: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動ノススメ

運動の有効性 (厚生労働省は公式サイトより) 身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められている。 http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/b2.html

※4大疾病 厚生労働省がその対策に重点的に取り組むべきとして指定していた、4つの病気・疾病のこと。 具体的には、ガン、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4種類の疾患を指す。

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■肥満と死亡リスク

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は内臓脂肪型肥満を共通の要因として、高血糖、脂質異常、高血圧などが引き起こされる状態。 それぞれが重複した場合は命にかかわる場合もある。 体型に不安を覚えるオタク諸氏は今すぐに生活習慣を改善し、脱メタボリックシンドロームを目指すべきだ。

Page 23: オタクのためのテニス入門(仮)

■肥満と死亡リスク

メタボリックシンドロームを放置することが死亡リスクを高めることに直結するため、厚生労働省では「内臓脂肪を減らすためには、日頃から体を動かす習慣を身につけておくことが大切です。」と運動習慣を身につけることを徹底するよう呼びかけ(※)ている。 ※厚生労働省ホームページ

「1に運動 運動習慣を徹底しよう」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/yobou/undo/index.html

Page 24: オタクのためのテニス入門(仮)

■身体活動量と死亡との関連について

独立行政法人国立がん研究センターの研究結果。 「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」の成果発表の中で、身体活動量とその後の全死亡及び主要死因別(がん、心疾患、脳血管疾患)にみた死亡との関連が明らかとなった。 「身体活動量」として、仕事や余暇の運動を含めた1日の平均的身体活動時間を、以下の4つに分類し調査。

筋肉労働や激しい スポーツをしている時間

歩いたり立ったり している時間

座っている時間 睡眠時間

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■身体活動量と死亡との関連について

各身体活動を運動強度指数MET(※)値に、活動時間をかけた「METs・時間」スコアに換算して合計することにより、対象者1人1人の平均的な身体活動量を求め、4群にグループ分けした上で調査を行った。 その結果、がん、心臓病、脳卒中、 いずれも男女とも1日の「身体活動量」が 多いほど、3~4割程度死亡リスクが低く なることが報告されている。 ※運動強度指数MET

METはMetabolic equivalentの略で身体活動の強度を表す単位。 安静時における1分あたりの酸素摂取量が体重1kgあたり3.5ℓであることから、この酸素消費量が1METsとして定義される。

Page 26: オタクのためのテニス入門(仮)

■身体活動量と死亡との関連について

厚生労働省では、

「スポーツなどの身体活動が健康に欠かせないものと考えられるようになっている。」 として多くの人が無理なく日常生活の中で運動を実施する方法の提供や環境

をつくることを「運動習慣者の増加」という形で提

唱している。

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■身体活動量と死亡との関連について

【運動習慣者の増加】 運動は、余暇時間に行なうものであり、疾病を予防し、活動的な生活を 送る基礎となる体力を増加させるための基本的な身体活動である。爽快感や楽しさを伴うものであり、積極的な行動として勧められる。 運動習慣は頻度、時間、強度、期間の4要素から定義されるものであるが、国民栄養調査では運動習慣者を「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている者」としており、男性の28.6%、女性の24.6%である(平成9年度国民栄養調査)。 最近の運動習慣者の増加傾向から、この頻度を10%増加を目指す。 強度としては、一般に中等度の運動が勧められる。自覚的には「息が少しはずむ」程度(具体的には「健康づくりのための運動所要量策定検討委員会報告(平成元年)」参照)である。

厚生労働省公式サイトより抜粋

Page 28: オタクのためのテニス入門(仮)

■【警告】健康で長生きしなければならない本当の理由とは?

さて、これまで「オタクこそが健康で長生きしなければならない理由」について一通り述べてきた。

でも、ごめんなさい。 それはすべて“表向き”の理由でした…。

私が本提言を書くことにした本当の理由は…

Page 29: オタクのためのテニス入門(仮)

■【警告】健康で長生きしなければならない本当の理由とは?

「オタクこそが健康で長生きしなければならない理由」には、実はもうひとつ「表向きの理由」とはベクトルが全く異なる

「裏の理由」 が存在する。 私自身、その理由に気が付いた時、生まれて初めて『死』に対する恐怖を感じたほどであった。

─────ではこれから、その真の理由について語ろう…。

Page 30: オタクのためのテニス入門(仮)

■【警告】健康で長生きしなければならない本当の理由とは?

【 ご注意!】

ここから先は有料になります。

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■増加する若者の突然死

もちろん有料というのは冗談なので、安心して読み進めて欲しい(笑)

Page 32: オタクのためのテニス入門(仮)

■増加する若者の突然死

「突然死は、誰の身にも降りかかってきます。

事故、災害、病死、特に 最近では都市部で若年層の

孤独死が増えていますね。」

その「記事」はこんな書き出しで始まっていた。

Page 33: オタクのためのテニス入門(仮)

■増加する若者の突然死

2012年9月に発売された週刊プレイボーイに掲載されたその記事のタイトルは『もし、突然死したとき残っているとヤバいもの、恥ずかしいものの隠し方教えます!!』というもの。 都市部における若年層の孤独死を 取り上げた記事であったが、そこで 問題視されていたのは…

“恥ずかしい遺品を 残してしまうこと” だった。

─────そうなのだ。

Page 34: オタクのためのテニス入門(仮)

■増加する若者の突然死

オタクを自認する人物であれば、多かれ少なかれ、他人に見られると非常に問題となるアイテムを密かに所持しているもの。 自分が死んだ後、それら秘密のアイテムは必ず整理人によって明るみにされてしまう! まさに

死にたくなる 状況そのもの!(笑) いかがだろう? それを思うと別の意味で 『死』に対する恐怖が沸き 起こってはこないだろうか…。

Page 35: オタクのためのテニス入門(仮)

■増加する若者の突然死

だから繰り返し言おう!

『オタクこそ、健康で長生きを しなければならない!』 と。 オタク諸氏は常に健康維持を心がけ、 長寿を手に入れよう。 突然死などはもってのほかである。

Page 36: オタクのためのテニス入門(仮)

■増加する若者の突然死

長寿という時間を手に入れたのならば、まず最初にやるべきことは、

“恥ずかしい遺品” を残さないための算段を つけること。 その準備のためには、それなりの期間と費用が必要になるはず。 オタクたるものは、人生をかけた最後の大仕事として恥ずかしい遺品を残さ

ないようにするため、その処分については万全を期さなければならない。

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■恥ずかしい遺品を見られるとどうなるか?

激務による過労やそれに伴う不規則な 生活と乱れた食生活。 突然死の要因となる心疾患や、脳血管 疾患のリスクは、なにも中年期以降の話 ではない。

若い社会人にとって も深刻な問題となっている。

Page 38: オタクのためのテニス入門(仮)

■恥ずかしい遺品を見られるとどうなるか?

前述した週刊プレイボーイの記事の中には以下のようなエピソードが掲載されていた。

「埼玉県で孤独死された30代の男性宅でした。スタッフふたりで仕事中、2階のほうから『ギャーッ』という悲鳴が聞こえ、慌てて上がっていくと、薄暗い部屋の奥でぱっくりと口を開け、壁にぶら下がったダッチワイフがあったんです(苦笑)。発見し忘れたご遺体かと思いました」

遺品整理特殊清掃会社A&Tコーポレーション:高江洲敦社長

「病死した30代後半の男性のご遺体ですが……、発見時、女性の下着をつけていました。さらに押入れやクリアケースの中からも女性ものの下着がいっぱい出てきて……。このときの第一発見者は大家さんで、亡くなった方のお姉さんが現場を見ていなかったのが不幸中の幸いでした」

遺品整理特殊清掃会社A&Tコーポレーション:高江洲敦社長

「いろいろなものがありました。裏モノのDVD、奥さんではないらしい女性との裸姿のツーショット写真、社内不倫をにおわせる写真、男性社員なのにブラジャーとパンティが出てきたり。あんな真面目で誠実な人の机から、なんでこんなものがと目を疑うものばかりで、正直、心が病んでいくんです。そんなにいかがわしいものが含まれた遺品を全部届けられる家族のことを考えると、ちょっと気の毒ではありましたが、全部送るのがうちの方針ですから……」 某大手建設会社:人事部長

Page 39: オタクのためのテニス入門(仮)

■恥ずかしい遺品を見られるとどうなるか?

これらのエピソードから、恥ずかしい遺品を見られるとどうなるかは容易に想像がつく。

オタク専門の遺品処分ビジネスに可能性を感じるならば…

⇒ビジネスプランの検討に入ることをお勧め。 ところで

「自分が死んだ後のことなんて考えてもしょうがない」あるいは「すでに自分は死んでいるのだからどんなに恥をかいたとしてもダメージは無い」と

おっしゃる向きもあるかもしれない。

Page 40: オタクのためのテニス入門(仮)

■恥ずかしい遺品を見られるとどうなるか?

しかしそれならば2013年の10月に発生した

「三鷹市女子高生刺殺事件(※)」を

振り返ってみてほしい。 あの事件とその後の一連の騒動について はどのように思われるだろうか?

あるいは「死にはしなかった けど、まったく身動きがで きない状態」になってしま うというリスクについては

どのようにお感じになるだろうか?

Page 41: オタクのためのテニス入門(仮)

■恥ずかしい遺品を見られるとどうなるか?

※三鷹市女子高生刺殺事件 2013年10月8日午後4時50分頃、東京都 三鷹市で女子高生が自宅前で刺殺され、 元交際相手の男が殺人未遂容疑で逮捕され た事件。 犯行直後に容疑者と思われる人物によっ て被害者のプライベートな写真・動画が海 外サイトに投稿されていたことが判明。 さらにこうした情報をまとめサイトが 紹介したことによって被害者のプライバ シーが拡散される事態となった。 このことが日本国内においても 「セカンドレイプ」や「リベンジポルノ」 と言った二次被害に関する議論が巻き起こ るきっかけともなった。

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■スポーツは戦争の代償行為なのか?

まれに「スポーツは戦争の代償行為だから私はやらない!」という意見の人に出くわす。 確かに例えばサッカーなど球技の起源としては、敵を掴まえてその首を落とし神の前で兵士たちが取り合いをする行為がそれだとする説もある。

現代においてさえも、スポーツが政治や外交、ひいては戦争に利用された歴史も確かにある。

⇒しかしそれはもう過去の古い考え方である。

Page 43: オタクのためのテニス入門(仮)

■スポーツは戦争の代償行為なのか?

スポーツとは

選手ひとりひとりが競技を通じて、身体能力や才能などを存分に表現する場。

スポーツの根本的なテーマは、人間が持つ無限の可能性に挑戦すること。 私はティモシー・ガルウェイが1974年に著した

「インナーゲーム理論」で提唱され

ている、対戦相手の捉え方に深く 同意する者である。

Page 44: オタクのためのテニス入門(仮)

■スポーツは戦争の代償行為なのか?

【インナーゲーム/Wikipedia】

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0

テニスでは、自分の能力の上限を体験するために必要な障害を与えてくれるのは、いったい誰だろうか。サーファーにとっては、それは波だった。テニスでは、むろん対戦相手である。では対戦相手は、敵なのだろうか味方なのだろうか。 彼は、あなたのテニスを困難にするように全力を尽くしてくれる限り、友人である。敵を演じてくれるほど、彼は真の友人になれる。テニスでは、競争が、協調なのだ。 待っていても、コートに波はやってこない。可能な限り、互いに対戦相手の「大きな波」(障害)となることが、プレーヤー同士の義務ですらある。それによって初めて、双方がそれぞれの能力の上限を発見する機会を与え合うことができる。

「インナーゲーム」より抜粋

Page 45: オタクのためのテニス入門(仮)

■スポーツは戦争の代償行為なのか?

すべての競技において自分の能力の上限を体験するために必要な障害を与えてくれるのは

「対戦相手」である。

プレイヤーが更に高いパフォーマンスを手に入れるためには、競技上の対戦を通じて対戦相手とお互いを高め合うこと以外に無い。

だから「スポーツは戦争の代償行為ではない!」と高らかに宣言したい。 それ故に安心してスポーツに勤しんで欲しいのだ、と表明したいのである。 努力することの本当の意味は人に勝つということではなく、天から与えられた能力をどこまで発揮させるかにある。

平澤 興(京都大学第16代総長/脳神経解剖学者)

Page 46: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタクにとって最適なスポーツとは?

オタクにとって最適なスポーツとはいったい何であろうか?

多くの競技種目の中から最適なスポーツをチョイスするのは非常に困難な作業であると思われるが、ここでは経営コンサルタントが頻繁に用いるフレームワークの基本的な考え方である

MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)(※)

を使って、最適なスポーツの選定を試みることにする。 ※MECEとは

MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは、「相互に排他的な項目」による「完全な全体集合」を意味する言葉。 要するに「重複なく、かつ漏れなく」という意味で、経営学、経営コンサルティングなどの領域でよく使われる言葉である。

Page 47: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタクにとって最適なスポーツとは?

厚生労働省が定める「運動習慣者」の定義を再確認。 オタク層にとって最適なスポーツのおおまかなイメージをつかむ。

【頻度】

週2回以上の頻度で 運動を行う

【時間】

1回あたり30分以上は運動を行う

【強度】

自覚的には「息が少し はずむ」程度の運動

【期間】

1年以上の期間にわたって継続的に運動を行う

Page 48: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタクにとって最適なスポーツとは?

オタクにとって最適なスポーツの検討の際しては、代表的なオタク層というものを以下のように想定する。 01)主に都市部に在勤在住している社会人である。 02)肉体労働には従事していないこと。 03)これまで部活動などの本格的なトレーニングの経験が無いか、経験後かなりの年数が経過していること。 この条件に当てはまらないケースを想定してしまうと著しく回答が異なってしまうので、今回の検討からは除外する。 従って前提条件が異なってしまうので、児童や学生などの若年層は除外する。

Page 49: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「頻度」について

厚生労働省では運動習慣者に必要な「頻度」の定義を

『週2回以上の頻度で運動を行う。』 と定めている。

運動経験の乏しいオタク層にとって、この頻度はいささかハードルが高い。 毎日のように行うことが出来る運動としては、自宅で行える筋トレやストレッチ系の運動、あるいはエアロビクスなどが考えられる。 施設の利用が必須のスポーツの場合、自宅の近所にそうした施設があることが必須条件となり、例えば都市部に住むオタク層にとっては長距離の移動を伴うようなゴルフや登山などは対象外ということになる。

⇐ あり なし ⇒

Page 50: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「頻度」について

オタクにとって最適なスポーツとは

阻害要因が少なく、かつ希望すれば比較的容易に行える種目である。

【頻度の維持が比較的容易な種目】 01)自宅や自宅の近所など移動に時間を要しないもの。 02)季節や天候の影響を受けにくいもの。 03)ある程度希望する時間帯に行うことができるもの。 04)施設、設備、あるいは一緒に楽しむメンバーの手配がつきやすいもの。

Page 51: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「時間」について

厚生労働省では運動習慣者に必要な「時間」の定義を

『1回あたり30分以上は運動を行う』 と定めている。 言い換えれば「30分程度は間がもつ」ということであろう。 すなわち比較的短時間で終了してしまう競技種目は対象外ということになる。 またこれまでに運動経験の乏しいオタク層でも30分程度は継続して行えるということを意味するので、例えば全力疾走が必須のようなスプリント系や自己の能力の限界にチャレンジするような運動強度の調節が難しい競技種目も対象外となる。

なし ⇒

Page 52: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「時間」について

オタクにとって最適なスポーツとは

体力のないオタクであっても、一定時間継続的に行える種目で

ある。 【時間の維持が比較的容易な種目】 01)競技自体の1ターンが極端に短くないもの。 02)途中に適度な休憩をはさんでも支障のないもの。 03)30分程度の時間であれば飽きずに行えるもの。 04)30分程度の時間、競技スペースを確保できるもの。

Page 53: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「強度」について

厚生労働省では運動習慣者に必要な「強度」の定義を

『一般に中等度の運動である。自覚的には「息が少しはずむ」程度である』

と定めている。 運動の強さは「運動強度」という数値で表されるというのは前述したとおりだが、酸素消費量の比較以外には心拍数を基準にする考え方もある。 とりわけ運動指導の現場では心拍数を用いることが多い。具体的な計算方法にはいくつかの種類があるが、概ね競技者の推測される最大心拍数と比較して50~60%程度(※)の心拍数になるような運動が望ましいとされている。 ※健康増進が目的の場合の数値であって、本格的なトレーニングを目的としたアスリートの場合は85%以上が目標となる。

Page 54: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「強度」について

オタクにとって最適なスポーツとは

競技者自身が、ある程度心拍数のコントロールを行える種目

である。 【強度の維持が比較的容易な種目】 01)適度な数値まで心拍数を引き上げることができるもの。 02)自発的な運動強度の調節が可能なもの。 03)本人の肉体的な限界に挑むこと自体が目的ではないもの。 04)肉体的な限界を引き出さないことが、即危険にはつながらないもの。

Page 55: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「期間」について

厚生労働省では運動習慣者に必要な「期間」の定義を

『1年以上の期間にわたって継続的に運動を行う。』と定めている。

ある程度の長期間にわたって継続的に行えるということは、「頻度」同様に阻害要因が少なく、その競技を行うためのモチベーションを維持することが比較的容易な種目と言える。 その競技種目自体に魅力を感じやすく、経済的な負担が少なく、お互いを高めあうような仲間の存在が出来やすい、と言ったところが主な要件であろうか。 また特定の季節にしか行えないというのは、1年を通して行うという定義からは外れてくるため、ウインタースポーツなど限られた季節にしか行えない競技は対象外となる。

Page 56: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動習慣者に必要な「期間」について

オタクにとって最適なスポーツとは

一年を通じて継続的に行える種目である。

【期間の維持が比較的容易な種目】 01)習熟や上達を常に感じられ、魅力を持続できるようなもの。 02)経済的な負担が少なく、長期にわたって行っても支障の無いもの。 03)競技上の仲間が出来やすく、周囲からのアプローチが期待できるもの。 04)特定の時期や季節にしか行えないような制限が無いもの。

Page 57: オタクのためのテニス入門(仮)

■SWOT分析による洗い出し

MECEを使ってオタク層にとって最適なスポーツの、おおまかなイメージをつかむことは出来た。 今度は

「SWOT(※)」

というフレームワークを使って、より具体的なイメージをつかむことにする。 ※SWOT分析

SWOT分析(SWOT analysis)とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人の、プロジェクトやベンチャービジネスなどにおける、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) を評価するのに用いられる戦略計画ツールの一つ。 フォーチュン500のデータを用いて1960年代から70年代にスタンフォード大学で研究プロジェクトを導いた、アルバート・ハンフリーにより構築された。

Page 58: オタクのためのテニス入門(仮)

■SWOT分析による洗い出し

SWOTを使った分析では、まず達成したい目的を明確にし、次にその目的を

達成する上での要因を後述の4要素について洗い出す。

まず最初に目的の設定だが、基本的には「オタク層にとって最適なスポーツが何かを見出す。」ことにある。 もう少し噛み砕くと、厚生労働省が定める「運動習慣者」の4つ定義をクリアできるもの、あるいはクリアする可能性の高い競技種目を選び出すこと、と言えるだろう。

Page 59: オタクのためのテニス入門(仮)

■SWOT分析による洗い出し

【SWOT分析する4つの要素】 01)Strengths(強み) 目標達成に貢献する一般的オタク層の特質 02)Weaknesses(弱み) 目標達成の障害となる一般的オタク層の特質 03)Opportunities(機会) 目標達成に貢献する外部環境要因の特質 04)Threats(脅威) 目標達成の障害となる外部環境要因の特質 上記の「01」と「02」は自らの努力で改善可能な要素であるため「内部要因」と呼ばれ、「03」と「04」は自らの努力では変えられないため「外部環境要因」と呼ばれる。 SWOT分析ではこの「内部要因」と「外部環境要因」とを区別して考えることがポイント。

Page 60: オタクのためのテニス入門(仮)

■STRENGTHS(強み)について

Strengths(強み)は内部要因であり、かつポジティブな材料のことである。

その競技種目を行う上で、一般的オタク層の特質がプラスに作用するものを挙げたい。

その上で「どのように強みを活かすか?」を検討する。

Page 61: オタクのためのテニス入門(仮)

■STRENGTHS(強み)について

【目標達成に貢献する一般的オタク層の特質】 01)興味の対象に注ぐ情熱が一般人よりケタはずれに高い 02)情報収集に余念が無く、行動も慎重に行われることが多い 03)「板野サーカス(※)」あるいはシューティングゲームで鍛えられた動体 視力と高い反射神経 04)アドベンチャーゲームなどのトレーニングによって、「物語」の構築能力 や予測能力が高い 05)細かな違いに気がつく観察力(※) ※アニメーター板野一郎氏によって確立された映像表現技法。 「高速で動く物体とそれを追う高速で動く物体をさらに高速 で動くカメラが捕らえた映像」のこと。 ※岡田斗司夫氏が著書『オタク学入門』で、これをオタクが 映像の時代に鍛えられた視力を持つと説明した。

Page 62: オタクのためのテニス入門(仮)

■STRENGTHS(強み)について

【どのように強みを活かすか?】 01)観察によって情報収集し、対策を立てて実行する、そうした一連のサイク ルが構築しやすい競技を選択する。 02)感覚的な競技種目よりも、ある程度理論的に説明がつきやすい競技を選択 する。 03)動体視力と反射神経を鍛えることが成果につながりやすい競技を選択する。 04)知識や情報量が成果につながりやすい競技を選択する。 05)ある程度情報量が流通している必要があるため、それなりにメジャーな競 技を選択する。

Page 63: オタクのためのテニス入門(仮)

■WEAKNESSES(弱み)について

Weaknesses(弱み)は内部要因であり、かつネガティブな材料のことである。

その競技種目を行う上で、一般的オタク層の特質がマイナスに作用するものを挙げたい。

その上で「どのように弱みを克服するか?」を検討する。

Page 64: オタクのためのテニス入門(仮)

■WEAKNESSES(弱み)について

【目標達成の障害となる一般的オタク層の特質】 01)筋力や持久力などのフィジカルが著しく劣っている。 02)コミュニケーションの取り方が独特で、一般人の感覚と乖離がある。 03)本業(?)であるオタクイベントのへの参加があるため、スケジュールに 制限がある。 04)本業であるオタク活動に制限が生じるほど経済的な負担は負いきれない。 05)選民主義的傾向が強く、興味の対象がマイナーであることを良しとするす る傾向がある。

Page 65: オタクのためのテニス入門(仮)

■WEAKNESSES(弱み)について

【どのように弱みを克服するか?】 01)フィジカルの強さが結果に直結するような競技は避ける。 02)集団で行うような競技は避ける。 03)自分が参加しないことで迷惑をかける可能性の高い競技は避ける。 04)経済的な負担が大きいことが予想される競技は避ける。 05)「機会」に影響が出かねないほどマイナーな競技は避ける。

Page 66: オタクのためのテニス入門(仮)

■OPPORTUNITIES(機会)について

Opportunities(機会)は外部環境要因であり、かつ

ポジティブな材料のことである。

その競技種目を行う上で、なんらかの外部環境の特質がプラスに作用するものを挙げたい。

その上で「どのように機会を利用するか?」を検討する。

Page 67: オタクのためのテニス入門(仮)

■OPPORTUNITIES(機会)について

【目標達成に貢献する外部環境要因の特質】 01)少子化等による競技人口の減少によって未経験者を歓迎する状況がある。 02)未経験者に対しても、その競技を上達させるためのメソッドが確立されて いる。 03)自宅の近所にその競技を行うための設備が整っている。 04)雑誌やインターネットなどを通じて、競技に関する情報収集が容易になっ ている。 05)一般受けの良い競技であれば、周囲の理解や後押しを得られやすい。

Page 68: オタクのためのテニス入門(仮)

■OPPORTUNITIES(機会)について

【どのように機会を利用するか?】 01)競技人口の減少に危機感を持っている競技を選択する。 02)未経験者にも適切な指導ができる指導者や教育機関を訪ねる。 03)自宅から移動に無理が無い範囲で競技環境を探す。 04)自分に合ったニュースソースを探す。 05)一般的にイメージが良いとされる競技を選択する。

Page 69: オタクのためのテニス入門(仮)

■THREATS(脅威)について

Threats(脅威)は外部環境要因であり、かつネガティブな材料のことである。

その競技種目を行う上で、なんらかの外部環境の特質がマイナスに作用するものを挙げたい。

その上で「どのように脅威を取り除くか?」あるいは

「どのように脅威から身を守るか?」を検討する。

Page 70: オタクのためのテニス入門(仮)

■THREATS(脅威)について

【目標達成の障害となる外部環境要因の特質】 01)社会人は就業時間が占めるウエイトが大きく、運動を行う時間への制約が 大きい。 02)悪天候などによっては競技を行えなくなる可能性がある。 03)未経験なので、その競技を行う上での教育係や仲間の存在がいない。 04)オタク層の受け入れに抵抗を示すメンバーがいる可能性がある。 05)苦痛を伴ったり、変化に乏しい競技は飽きが来る可能性がある。

Page 71: オタクのためのテニス入門(仮)

■THREATS(脅威)について

【どのように脅威を取り除き、脅威から身を守るか?】 01)ある程度希望する時間帯に行うことができる競技を選択する。 02)天候や季節の影響を受けにくい競技を選択する。 03)指導者を見つけやすく、かつ仲間を作りやすい競技を選択する。 04)一般的に「その競技の愛好家はフレンドリーで紳士的」と言われている競 技を探す。 05)常に上達している実感が湧きやすく、比較的苦痛も伴わない競技を選択す る。

Page 72: オタクのためのテニス入門(仮)

■SWOT分析による意味合いの整理

①SWOT分析によって洗い出された4要素の意味合い整理 ②オタク層が運動を行う目的は、健康な体と長寿を手に入れるため ③適度な運動強度がある競技種目を一定の時間、一定の頻度でなおかつ長期間にわたって行うことが必要 ④オタク層の特質および外部環境を考慮した上で、最適なスポーツを選定

オタク層との『シンクロ率』が 最も高い競技種目を選択

Page 73: オタクのためのテニス入門(仮)

■SWOT分析による意味合いの整理

改めてオタク層とのシンクロ率が高い競技種目のイメージを列挙してみる。

◆一定条件に合致する運動量を確保できるもの。低すぎても意味が無いし、高すぎてはかえって健康を害する恐れがある。 ◆本来行うべきオタク活動に障害が出るようならば本末転倒。時間的な拘束、あるいは経済的な負担が一定の範囲内に収まっていること。 ◆思い立ったときに、比較的簡便に行えるもの。長距離の移動を伴うものや、季節や時間帯などの制約があるものは不適切。 ◆仲間を作りやすい競技種目の方が長続きする可能性が高い。「誘ってもらえる」というのは内弁慶なオタク層にとってはありがたい。 ◆少人数でも行える種目であること。社会人になると大人数を集めるのは難しい。コミュニケーションが障害となる可能性もあるため。

◆その競技種目が魅力的であるほど長続きする可能性が高い。習熟や上達を常に感じられ、かつ上達するために必要とされる苦痛が比較的少ないもの。 ◆努力や工夫次第では経験者にも勝つ可能性があるもの。フィジカルの強さが勝敗の結果に直結するような競技は避ける。 ◆社会人に対しても基礎から指導してくれる場所やメソッドが確立されているもの。我流ではなかなか上達できないし、怪我や事故の可能性すらあるため非常に危険。 ◆ある程度メジャーなスポーツであること。マイナー競技は情報を集められないし、それ自体奇異な目で見られてしまう。

Page 74: オタクのためのテニス入門(仮)

■改めて問う。オタクにとって最適なスポーツとは?

前頁ではSWOT分析による意味合いの整理を行い、イメージを列挙してみたが、逆に混迷を深めてしまった感がある。 オタク層とのシンクロ率が高い競技種目に要求される条件が多岐にわたりすぎているからだ。

はたして本当にこれらの条件に合致する競技種目など見つかるのだろうか…?

Page 75: オタクのためのテニス入門(仮)

■改めて問う。オタクにとって最適なスポーツとは?

いやしかし安心して欲しい。 実は私の頭の中には、すでにある競技種目の名前が浮かんでいるのだ。 多角的、多面的に考慮した結果、このスポーツ以外にありえないと思える競技種目がたったひとつだけある…。 この続きはWEBで オタクにとって最適なスポーツ 検索

Page 76: オタクのためのテニス入門(仮)

■改めて問う。オタクにとって最適なスポーツとは?

…と、いうのはもちろん冗談である。 私が考える最もオタク層とのシンクロ率が高い競技種目とは、あの

次の国民的 みんなのスポーツ

にも選ばれた…。

https://www.youtube.com/watch?v=LzpZWdTzWLs

Page 77: オタクのためのテニス入門(仮)

■オタク層とのシンクロ率が最も高い競技種目

それはズバリ

『テニス』

と断言する。

Page 78: オタクのためのテニス入門(仮)

■改めて問う。オタクにとって最適なスポーツとは?

普通すぎていささか拍子抜けだっただろうか? それとも意外な印象を受けただろうか? あるいは我が意を得たり、と膝を叩いたりしただろうか…? 私自身、子供の頃からスポーツが得意で、いくつかの競技種目に触れてきた経験がある。 その経験から言ってもやはり結論はテニスであると断言できる。 ではこれから、テニスがいかにオタク層にとって最適なスポーツか、どれ程シンクロ率が高い競技種目なのか、について自説を展開したい。

Page 79: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技人口から見たテニス

体育の授業を受けられる学生らとは異なり、社会人の場合は自ら進んで情報収集を行わないと、その競技に対する正しい知識や最新の情報を得ることは困難である。 従ってそれらの情報がふんだんに流通している必要があるため、必然的にメジャーなスポーツを選ばざるを得ない。 メジャースポーツであれば競技人口が多いので、雑誌や書籍の刊行やインターネットなどを通じてそれらの情報を容易に入手することが可能になる。

Page 80: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技人口から見たテニス

また副産物として、メジャースポーツであれば人に話しても差支えが無いということも重要なポイントかと思われる。 普段、他者からなかなか理解を得られにくいオタク趣味以外に「趣味はテニスです」と言える恩恵はきっと多いはずだ。 これが「週末はセパタクローで汗を流しています」や「最近インディアカにどっぷりハマっています」という告白とは、相手に与える印象がかなり異なることは想像に難くないであろう。(※) (※)あくまで一般論として申し上げただけで、マイナー競技を否定する意図はありません。

Page 81: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技人口から見たテニス

まず最初に競技人口の多いスポーツを挙げてみる。 笹川スポーツ財団が2006年に刊行した「スポーツ白書」によれば日本における競技人口TOP30は以下の通りである。 ちなみにテニスは全体の13位と、悪くないポジションにいると言えよう。 競技人口の多いメジャースポーツであり、なおかつ他人からは品の良い趣味と受け取ってもらえる。 テニスとはまさにそういう競技なのである。

【日本における競技人口TOP30】数字は推計実施人口(万人)

笹川スポーツ財団調べ「スポーツ白書2006」 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3976.html

順位 競技種目 実施人口

01位 ウォーキング 2,388

02位 ボウリング 1,971

03位 水泳 1,254

04位 ゴルフ 1,164

05位 バドミントン 939

06位 卓球 889

07位 サッカー 749

08位 野球(軟式を含む) 726

09位 スキー 691

10位 バレーボール 646

11位 バスケットボール 571

12位 ソフトボール 562

13位 テニス(硬式テニス) 501

14位 登山 489

15位 スノーボード 393

16位 ソフトバレーボール 375

17位 グラウンドゴルフ 366

18位 アイススケート(スケート) 308

19位 綱引 298

20位 ソフトテニス(軟式テニス) 263

Page 82: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技実施率から見たテニス

「悪くないポジションにいる、とは言え13位でしょ?」 と、微妙だなと感じた方もいるかもしれないので、別の角度からこのランキングを見てみたい。 実はこのランキングでは、「実施率」という数字も同時に発表されている。 しかも10代の実施率と成人の実施率が個別に集計されているのだ。

Page 83: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技実施率から見たテニス

10代の実施率が高いものは基本的に肉体的にハードな競技種目が多く、大人が余暇として楽しむための候補から外れてしまう。 逆に成人の実施率が高いものは、運動強度が小さいために10代では退屈してしまうか、あるいは経済的な負担が大きいため社会人でないと手が出しにくいものなどが挙がった。 【10代の実施率TOP3】 【成人の実施率TOP3】

サッカー 29.0%

バスケットボール 28.6%

バドミントン 24.8%

ウォーキング 21.6%

ボウリング 16.4%

ゴルフ 11.1%

Page 84: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技実施率から見たテニス

次に双方の実施率を比較して、そのギャップを検証してみる。 成人の実施率から10代の実施率を差し引き、その数字を「世代間ギャップ率」とする。 マイナス方向に数字が大きければ10代には人気だが、成人には不人気という競技種目が浮かび上がる。 理由は様々考えられるが、基本的にオタク層とのシンクロ率が高いとは言えず、除外対象と考えられる。 【世代間ギャップがマイナス10%以上の競技種目】

競技種目 実施人口 10代実施率 成人実施率

世代間ギャップ率

バスケットボール 571 28.6% 2.0% -26.6%

サッカー 749 29.0% 3.7% -25.3%

バドミントン 939 24.8% 6.1% -18.7%

バレーボール 646 21.0% 3.7% -17.3%

野球(軟式を含む) 726 20.9% 4.5% -16.4%

卓球 889 21.7% 6.0% -15.7%

水泳 1,254 24.0% 9.3% -14.7%

陸上競技 215 12.0% 0.6% -11.4%

Page 85: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技実施率から見たテニス

前述の日本における競技人口TOP30において、世代間ギャップがマイナス10%以上の競技種目を対象外にした場合、なんとテニスは一気に6番手に浮上するのだ。 ちなみにテニスの実施率は10代が9.7%。成人は3.7%で、世代間ギャップは-6.0%という結果である。 いささか世代間ギャップは認められるものの、これは調査が実施された当時「テニスの王子様」が中高生のテニスブームを牽引していたため10代の実施率が高い数字になってしまったためと思われる。 また成人実施率の低さについては、錦織圭の活躍やクルム伊達の復活などによってテニス人気に復調の兆しがあるため、今後改善の方向に向かうと予想される。

Page 86: オタクのためのテニス入門(仮)

■競技実施率から見たテニス

いずれにせよ10代だけが極端にはしゃぐような子供向けのスポーツでは無い、

洗練された大人のためのスポーツ。(※)

テニスとはまさにそういう競技なのである。 (※)あくまで分析結果からテニスの親和性を述べただけで、特定の競技を揶揄する意図はありません。

Page 87: オタクのためのテニス入門(仮)

■始めやすさから見たテニス

情報を入手するために、ある程度メジャーなスポーツを選択するべきと述べたが、それよりも更に重要なファクターが存在する。

それは「どうやってそれを習うか?」という問題である。

学生であれば体育の授業があるため、たとえ初心者であってもそのスポーツの基礎的なルールや体の動かし方、あるいは初歩的なセオリーを体系立てて学ぶことが可能だ。 つまりそこにはコーチの存在があり、初心者を指導するためのメソッドが確立されているのである。

Page 88: オタクのためのテニス入門(仮)

■始めやすさから見たテニス

翻って社会人がスポーツを始めようと思った際に、そうした環境を手に入れることが簡単に出来るだろうか? また素人が何らかの競技種目へ挑戦する場合、我流ではなかなか上達できないし、怪我や事故につながる可能性すらあるため非常に危険である。 そこで運動初心者の社会人に対しても、基礎から指導してくれる環境やメソッドが確立されているものを選択する必要があると言えるだろう。 前述の「日本における競技人口TOP30」の中で、そうした条件を備えている競技種目はかなり限られてくると思われる。 ほとんどの競技は子ども向けや、あるいは逆にトップアスリート向けのスクールはあっても、初心者社会人を対象にしているスクールは少ないのが実態だ。

Page 89: オタクのためのテニス入門(仮)

■始めやすさから見たテニス

ちなみにタウンページに登録されているテニス教室数は全国で1,448軒で、人口10万人あたり教室数は平均で1.14軒となっている。 これは驚くべきことにボウリング場の1,339軒を凌ぐ数字である。 初心者社会人を対象にした育成のための施設とスタッフ、そしてメソッドが産業としてきちんと確立されているスポーツ。 テニスとはまさにそういう競技なのである。 【参考サイト】 都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン] http://todo-ran.com/ts/kiji/13475

Page 90: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動強度から見たテニス

一般的にシルバー世代に人気のスポーツとしてまず頭に思い浮かぶのはゴルフ、ゲートボール、そしてテニスあたりではないだろうか? シルバー世代でも行えるということは、それだけハードなスポーツでは無いという証明とも言える。 しかし逆に世界最強のテニスプレーヤーを決定するウインブルドン大会の出場選手にフィジカルは不要かと問われれば、その答えはもちろんノーであろう。 つまりテニスという競技には、本格的なトップアスリートからシルバー世代のウィークエンドプレイヤーまで、幅広い年代のプレイヤーが存在するのだ。 それはすなわち自分自身のレベルに応じた運動強度を、プレイヤー自身が選択できるということに他ならない。

Page 91: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動強度から見たテニス

言い換えれば、厚生労働省が推奨する『自覚的には「息が少しはずむ」程度』すなわち競技者の推測される最大心拍数と比較して50~60%程度の心拍数になるようなコントロールが可能な競技種目と言えるだろう。 これがテニスという競技の持つ特性である。 プレイヤーは自身の最大心拍数に到達するようなパフォーマンスを発揮しなくともテニスは試合が成立するのだ。 【参考データ】 (独)国立健康・栄養研究所サイト掲載の「身体活動と運動の強度-メッツ(METs)表-」 http://www0.nih.go.jp/eiken/programs/2011mets.pdf

Page 92: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動強度から見たテニス

例えば、テニスはラケットという道具を使う競技である。 プレイヤーの個性に応じて、性能をチョイスする訳だが、スイングスピードの遅いシルバー世代や、非力な女性であってもラケットとガット(※)のチューニングによっては、成人男性と遜色のないボールを飛ばすことは可能だ。 また全力疾走をしなくても読みや配球によって相手からポイントを奪うことも可能だ。実際にプロの試合であっても、機動力の無い選手が勝利を収める実例は枚挙に暇がない。 1988年の全仏オープン4回戦 マイケルチャン vs イワン・レンドルの伝説の 一戦もまさにそうした実例の最たるものだ。 (※)ラケット面に格子状に張ってあるワイヤーストリングのこと。

© pds.exblog.jp

Page 93: オタクのためのテニス入門(仮)

■運動強度から見たテニス

1988年の全仏オープン4回戦。当時世界ランキング1位のイワン・レンドルに挑んだ17才のマイケルチャン。 粘りに粘ってフルセットに持ち込んだものの、足が痙攣し動けなかったマイケルチャンは、アンダーサーブ(※)など様々な奇襲を敢行し、ついにレンドルから勝利をもぎ取る。そしてその年の全仏オープンを征し17才3ヶ月という若さで史上最年少のチャンピオンとなったのだ。 動こうと思えば全身痙攣で動けなくなるまでプレイできる。 動くまいと思えば動かずに世界チャンピオンにだってなれる。 テニスとはまさにそういう競技なのである。 (※)テニスにおけるアンダーサーブは一般的なサーブの技術が備わっていない初心者や、ラケットをまともにスイング出来ないようなキッズが行うもので、プロの選手が行うことはまずありえない。(テニス上級者へ:あなたの反論は分かっています。ここではそういうことにしておいてください)

Page 94: オタクのためのテニス入門(仮)

■阻害要因から見たテニス

運動初心者の社会人がスポーツを楽しむ際の代表的阻害要因 その1

◆時間帯に起因する制約:就業時間中にそのスポーツを行うことは出来ない。テニスは曜日や時間帯にかかわらず、比較的行いやすい競技種目である。 実際に私が通っているテニススクールのレッスン時間は09:10~23:00と、幅の広い選択肢が用意されている。 ◆時間の長さに起因する制約:忙しい社会人に、長時間拘束される競技種目は向かない。 テニスの場合、本格的な競技系の試合でもない限り、数分から数十分単位で一区切りつけることができる。 ◆天候に起因する制約:雨天や強風時にはテニスを行うことは出来ない。しかしインドアのコートであれば、天候不順によるレッスンの中止というものはほぼ存在しない。

◆季節に起因する制約:スキーやスノーボードに代表されるウインタースポーツは当然だが冬でないと行えない。また屋外で水の中に入る競技種目は真冬に行うことは命の危険すらも伴う。 その点、テニスは比較的季節に関する制約を受けにくい競技種目である。 ◆移動距離に起因する制約:いざその競技種目をプレイしたいと思い立っても、長距離の移動を余儀なくされるようでは「やっぱりやめておこう」という判断に至る可能性は高い。 特に都心部から雪山やゴルフ場への移動は、高速道路を使った移動を伴うため、経済的な負担も発生する上に、渋滞などのネガティブなイメージを持ちやすいと言えるだろう。 テニスの場合には極端な過疎地以外はどの県にもテニスコートは点在しており、比較的短時間で自宅との往復が可能と言えるだろう

Page 95: オタクのためのテニス入門(仮)

■阻害要因から見たテニス

運動初心者の社会人がスポーツを楽しむ際の代表的阻害要因 その2

◆経済的な負担に起因する制約:そのスポーツを継続的に楽しむことが、本人にとって過度な経済的負担となってしまってはもちろん長く続けることは出来ない。それだけに、なるべく経済的な負担の少ない競技種目を選択したい。 しかし残念ながらどのような競技種目を選択したとしても、一定の経済的負担は発生してしまう。その点についてはテニスも例外ではない。 後は「どこにお金をかけるか?」という選択肢は残されている。 その部分については努力と工夫によって、負担を限りなく減らすことは可能と思われるがいかがだろうか。

さて、こうして阻害要因を書き出してみると、改めてテニスの優位性が浮き彫りになる気がする。 致命的な阻害要因がなく、非常にバランスのとれた競技種目…。 テニスとはまさにそういう競技なのである。

Page 96: オタクのためのテニス入門(仮)

■節約できること

「経済的な負担」という要素についてはテニスを語る上で避けては通れない話題であると思う。テニスはお金のかかるスポーツと感じている人が多いと思われるからだ。 事実タウンページの調査(※)でテニス教室の地域分布を見ると、いわゆる「太平洋ベルト地帯にテニス教室が多い」となっている。これを細かく分析し、その他のランキングデータを重ね合わせてみると、「1世帯あたり貯蓄額」や「県民所得」と正の相関関係があり、豊かな家庭が多い地域ほどテニス教室が多いという結論になるのだそうだ。 一般的に何かのスポーツを行う場合に発生する費用としては以下のようなものが考えられる。 「施設や設備」「ユニフォーム」「装備」「育成・トレーニング」「遠征費」「ドリンクやサプリメント」 ではテニスの場合はどうだろう。 私が知る範囲で発生するコストと節約術について所見を述べたい。

Page 97: オタクのためのテニス入門(仮)

■節約できること

「経済的な負担」という要素についてはテニスを語る上で避けては通れない話題であると思う。テニスはお金のかかるスポーツと感じている人が多いと思われるからだ。 事実タウンページの調査(※)でテニス教室の地域分布を見ると、いわゆる「太平洋ベルト地帯にテニス教室が多い」となっている。これを細かく分析し、その他のランキングデータを重ね合わせてみると、「1世帯あたり貯蓄額」や「県民所得」と正の相関関係があり、豊かな家庭が多い地域ほどテニス教室が多いという結論になるのだそうだ。 (※)タウンページの調査 参考サイト:都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン] ver 1.0 http://todo-ran.com/t/kiji/13475

Page 98: オタクのためのテニス入門(仮)

■節約できること

一般的に何かのスポーツを行う場合に発生する費用としては以下のようなものが考えられる。 01)施設や設備 02)ユニフォーム 03)装備 04)育成・トレーニング 05)遠征費 06)ドリンク ではテニスの場合はどうだろう。 私が知る範囲で発生するコストと節約術について所見を述べたい。

Page 99: オタクのためのテニス入門(仮)

■節約できること

テニスを楽しむための節約法 その1

◆施設や設備:公営や保険組合などの非営利団体が管理しているテニスコートであればレンタル料金は、概ね1時間当たり500円~1,500円程度が相場。通常はコート1面を2~8人程度で使用するので、頭数で割れば問題になるような金額にはならない。 ◆ユニフォーム:週末に仲間内と楽しむ程度であれば特にこれといった決まりはない。安価なカジュアルブランドなら、一式2,000円程度で揃うだろう。 後はシューズだが、テニスの場合コートの表面の素材(サーフェースと呼ばれる)によってソールの特性が変わってくるため、個別にシューズを用意しなければならない。 ちなみにシューズはデザイン性を追求しなければ2,000円程度の予算でも購入可能だ。

◆装備:テニスにおける主な装備(道具)はラケットのみ。とにかく安く済ませる方法は「借りること」だ。 しかしラケットはそれぞれの競技スタイルを反映するため、出来れば自分に合ったラケットを購入することをお勧めしたい。 お勧めしたいのは中古ラケットという選択肢だ。それなりに状態の良いものが、定価の半額以下で購入することが可能であろう。 蛇足だがド●・キ●ーテなどのディスカウントストアで格安のラケットを販売しているケースがある。 しかしそうしたラケットのほとんどは素材がアルミ合金製で、衝撃が吸収されず振動が体に伝わってしまうため怪我につながりやすいと聞いたことがある。 そういう意味で個人的にはあまりお勧めできない。

Page 100: オタクのためのテニス入門(仮)

■節約できること

テニスを楽しむための節約法 その2

◆育成・トレーニング:本提言は、本格的なアスリート養成にかかるような費用は発生しないことを前提としているが、最初に少しだけ初期投資することをお勧めしたい。 まず最初は街のテニススクールへ入会して欲しいのだ。 最初にそうしたテニススクールに入会し、テニスの基礎的な知識や技術を身につけて欲しいと思う。 ここをはしょって我流で済ませてしまうと、その後のテニス人生でかなりの回り道を強いられることになる。 どうしても経済的な面が気になるのであれば「最初の1年だけ」など、あらかじめ期間を決めても良いだろう。 1年もすればおおよそテニスの概要は理解できる。 それらを身につけてから退会しても遅くは無いと思うのだ。

◆遠征費:初心者ウイークエンドプレーヤーには「遠征費」のような費用は発生しないので安心して欲しい。 しかしテニスコートまでの移動費については当然コストがかかるので、極力自宅から近いテニスコートをホームコートにしたいものだ。 ◆ドリンク:ドリンクについては極端な話、水道水で十分だ。多少なりとも味が欲しいということであれば、各種スポーツドリンクを飲めばよろしい。 ちなみに私のお勧めは「麦茶」である。ミネラル成分もあって、抗酸化作用もあるようなので、運動時には最適な飲み物と言えるだろう。 しかも安い。 もちろん上を見ればきりがないが、工夫次第で低コストを実現することは可能だ。 テニスとはまさにそういう競技なのである。

Page 101: オタクのためのテニス入門(仮)

■ジャンプ三大原則から見たテニス

オタクの諸氏にとってはもはや常識とも言える

『ジャンプ三大原則』

というものがある。 マンガ雑誌「週刊少年ジャンプ」では、すべての 掲載作品のテーマに「友情」「努力」「勝利」という 3つの要素、またはそれらに繋がるものを最低1つ、 必ず入れることが編集方針になっている、というもの。 実はスポーツを行う上でも、私は上記3要素が果たす役割はかなり大きい。 テニスを行う上でもこれらの要素が欠けた場合、恐らく長続きさせることは出来ないのではないだろうか?

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Page 102: オタクのためのテニス入門(仮)

■ジャンプ三大原則から見たテニス

まず「友情」という側面から見てみよう。 一般的にテニスは「シングルス」と呼ばれる1対1で対戦する個人競技だというイメージが強い。 しかしそれはあくまで試合に限った話だという盲点にお気づきだろうか? ありとあらゆる競技種目は試合時間より練習をしている時間の方が圧倒的に多いと断言できる。 つまり「テニスをする」ということはイコール「テニスの練習をする」とほぼ同義語なのだ。 では練習というものはたった一人で行うものだろうか?

Page 103: オタクのためのテニス入門(仮)

■ジャンプ三大原則から見たテニス

否。

練習は仲間や指導者の存在無しには成立しない。 もちろん壁打ちや素振りといった一人で行う練習も存在するのは事実だが、それはある程度自分で練習メニューを考案したり、改善点を正しく理解しているレベルのプレーヤーが行うことで、初心者がただやみくもに行っても効果は薄いと言わざるを得ない。 そして一人で黙々と行う練習よりも、仲間がいて自分を練習に誘ってもらえる状況にあることが、どれほど長続きに直結することか。 「誘ってもらえる」というのは内弁慶なオタク層にとっては本当にありがたいことなのだ。

Page 104: オタクのためのテニス入門(仮)

■ジャンプ三大原則から見たテニス

私はまず最初に街のテニススクールへの入会を勧めたい。 効率的にその競技の基礎を学ぶためには、やはりきちんとした育成メソッドが確立されているところへ行くべきと考えているからに他ならない。 テニススクールに通い始めると同じレッスンを受ける仲間が出来る。頻繁に顔を合わせるので、やがて気心が知れて仲良くなり始める。そうこうしているうちに、メンバーの中で積極的な誰かが、「街のコートを借りて練習しようぜ!」と言い始めるものだ。 そうして自然と「友情」で結ばれたコミュニティーが誕生するのだ。 芽生えた友情をどのように育むかについては、個人個人の考え方に寄るものだろう。 自分の考え方やライフスタイルに合った友情の形を模索して頂ければ幸いだ。

Page 105: オタクのためのテニス入門(仮)

■ジャンプ三大原則から見たテニス その2

次に「努力」という側面を見てみよう。 しかし私が本提言で申し上げたいのは、テニスで頂点を目指すことではない。 あくまで健康で長生きをするための方法論として運動を勧めているのであり、運動の中でもとりわけテニスが最適であると結論付けているに過ぎない。 テニスプレーヤーとして頂点を目指して頂くのはもちろん結構なことではあるのだが、本来行うべきオタク活動に支障をきたすほどのめりこんでしまっては、それは本末転倒というものであろう。 テニスはおかず。 主食はあくまでオタク活動にあるというのが、本提言の中における私のスタンスである。

Page 106: オタクのためのテニス入門(仮)

■ジャンプ三大原則から見たテニス その2

では努力は一切不要なのか? 逆に私はそうとも言っていない。もちろん努力は必要だ。だがその努力は非常に効率的なものであって欲しいのだ。本来の活動で忙しいオタク層にとって、最速で最短で一直線に(※)上達するための努力が望ましい。 また努力をした結果、何らかの成果が欲しいと感じるのは自然な感情だと思う。 最終的な成果は「勝利」というのが一般的だが、その手前で習熟や上達を常に感じられるということも重要だ。 /////////////////////////////////////////// (※)最速で最短で一直線に 「戦姫絶唱シンフォギアG」のイメージソング『Rainbow Flower』より引用。 その精神は主人公(ヒロイン)である立花響の生き様そのものである。 ///////////////////////////////////////////

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■ジャンプ三大原則から見たテニス その3

最後に「勝利」という側面を見てみよう。 本提言では最終目的としての「勝利」にはあまり価値を見出していない。繰り返しになるが、テニスで頂点を目指すことが本提言の主旨ではない。 しかし同時に結果として得られる「勝利」には非常に大きな役割があるとも考えている。 いくら勝利を得ることが目的ではないと理性的に考えることが出来ても、やはり負け続けるという事はあまり気分の良いものでは無いし、頑張った自分への分かりやすいご褒美として勝利が得られた方が、テニスを続ける際の大きなモチベーションになることは間違いない。

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■ジャンプ三大原則から見たテニス その3

☆オタク活動を充実させるために、健康で長生きをする必要がある。 ☆健康で長生きをするためには運動習慣を持つことが重要だ。 ☆運動の中でもとりわけテニスが最適であると思われる。 ☆勝利はテニスというスポーツを長く続けるためには必要なエネルギー源になる。 ☆勝てば周囲があなたを称賛してくれる。皆に認めてもらえるというのはとても気持ちが良いものだ。(シンジ君もそう言っている)気持ちが良いから続けられる。

☆勝てる人は他のメンバーも一緒に練習したがるため、練習などに誘ってもらえる可能性が高まる。 ☆勝つためにどうすれば良いか考えることで、最適な努力の方法が分かる。 ☆勝つためには努力以外にも様々な工夫が必要になる。 ☆努力と工夫を重ねることで、より勝利に近づくことが出来る。 ☆しかし最終的にはテニスで勝利することが本来の目的ではないことを改めて認識する必要がある。

もう一度「勝利」に関する考え方を整理しておきたい。

【まとめ】勝つことを目的としない。でも勝ったら気持ちがイイ!

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■オタクでも勝てる競技とは何か?

特定の競技種目を長く続けるためには「勝利」というスパイスが必要であると説いた。 しかし、そもそも本格的なトレーニングとは無縁のオタク層がスポーツの分野で勝利を得るということは非常に困難なことだというのは想像に難くない。

だが、そんなオタク層でも勝つ確率を高められる競技種目は確かに存在する!

先に結論を申し上げるとそれが「テニス」だ。

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■オタクでも勝てる競技とは何か?

俗に『心・技・体』という言葉がある。武道やスポーツの分野で重要視される要素を言い表した言葉だ。 この『心・技・体』のそれぞれが高いレベルにあることが勝利への近道になる。それはテニスにおいても当てはまる。 しかしこれらの要素を細かく分析してゆくと、それぞれにはちゃんと抜け道が存在していることに気付く。その抜け道を上手に利用することさえ出来れば、オタク層が標準的なウィークエンドプレイヤーに勝つことは可能だ。

技 体

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■オタクでも勝てる競技とは何か?

もちろんそれを利用することで100戦100勝出来るなどと言うつもりは無い。 私が言いたいのはあらゆる競技種目の中で、テニスほどオタク層が勝利を得られる確率を高められるものは無いということなのだ。 それがテニスという種目の特性であり、私がテニスを勧めている最大の理由なのである。

【重要】 安心してください。

オタクでも勝てます。

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■『体』について

『心・技・体』の内、『体』について考察してみたい。 『体』という要素を考えた場合、オタク層にとってテニスにおける最大の利点は、彼我戦力差の無効化と言える。 つまり貧弱なオタク層とトレーニングを積んだ対戦者とは、普通に考えた場合フィジカルという要素において最初から圧倒的な戦力差が生じているのだが、テニスを選択した時点でそれをかなり無効化出来るという意味だ。 逆にその彼我戦力差を無効化することが難しい競技種目も存在する。 オタク層が何かスポーツを選択する場合には、そういった類の競技種目は真っ先に選択肢から除外しなければならない。

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■『体』について

SWOT分析による洗い出しの項で「どのように弱みを克服するか?」というものを考えたことを覚えているだろうか? 「フィジカルの強さが結果に直結するような競技は避ける。」というのがその答えだった。 ジャンプ三大原則に従えばもちろん「努力」は 必要不可欠だ。 しかし努力の方向性を間違ってはいけない。 オタク層が今からトレーニングを頑張って フィジカルを鍛え、経験者と拮抗できるように しよう!などというのは間違った考え方だ。

Do not be training !

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■『体』について

強さを求めるのではない。現在の戦力差でいかにすれば勝利を得られるのかを考え実践するというのが正しい努力の方向性だ。 オタク的にたとえるならば「いかにして半個艦隊でイゼルローン要塞を陥落させるか?」というヤン・ウェンリーが直面した課題(※)に近いと言えるだろう。(ちょっとたとえが古いけど) /////////////////////////////////////////// (※)イゼルローン要塞攻略戦 田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』に登場する、架空の戦役。 イゼルローン要塞は銀河帝国軍が誇る難攻不落の要塞。 その攻略に挑んだ自由惑星同盟軍の司令官ヤン・ウェンリーが 率いたのは、先の戦役で壊滅的な打撃を受けて瓦解した複数の 艦隊の寄せ集めからなる第13艦隊(別名「ヤン艦隊」)で、 その発足時の戦力は艦艇数約6,400隻、将兵約70万人と通常の 艦隊の半分程度しか与えられなかった。 ///////////////////////////////////////////

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■除外すべき競技種目について

ここで間違った選択をしないために、オタク層に向かない競技種目というものがどういう傾向を持つのかについて考察してみたい。 二つの対立軸を縦横で掛け合わせ、マトリックスを形成してみよう。 私が提唱したい最初の対立軸は 「レース系競技」と「ゲーム系競技」だ。 これを仮に横軸としよう。 もうひとつの対立軸は 「フィジカルコンタクト競技」 と 「ノンフィジカルコンタクト競技」で、 これを縦軸とする。

ノンフィジカルコンタクト競技

フィジカルコンタクト競技

レース系競技

ゲーム系競技

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■除外すべき競技種目について

およそスポーツというものは「レース系競技」と「ゲーム系競技」に大別出来るというのが私の持論だ。 「レース系競技」とは、文字通りレースを行いタイムを競う競技を指すのだが、器械体操やフィギュアスケートなど点数を競う競技もこれらに含まれる。 反対に「ゲーム系競技」というのは、対戦を通じて駆け引きなどが発生し、局面によってプレーヤーの選択肢が刻々と変化するような競技を指す。 もちろんどちらの要素も含まれる競技も多いのだが、どちらの要素がより強く影響するかという傾向はあるだろう。

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■除外すべき競技種目について

【レース系競技のイメージ】 ・記録(タイム、距離、高さなど)を競う競技(陸上競技全般、水泳など) ・演技などにに点数をつける競技(器械体操、フィギュアスケートなど) ・獲得する得点を競う競技(射撃、アーチェリー、ボーリングなど)

【ゲーム系競技のイメージ】 ・対戦系の球技全般(サッカー、バスケットボール、ラグビーなど) ・ターン制でゲームが進行する競技(野球、カーリングなど) ・お互いが一手づつ指し合う競技(テニス、バドミントン、バレーボールなど)

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■除外すべき競技種目について

もうお分かりだと思うが、消去法でレース系競技は真っ先に除外しよう。 どんなに頑張ってみても、例えばウサイン・ボルトに100メートル走で勝てる確率はほとんどゼロに等しい。 勝てるとしたら相手がコケたとか、足がつった などのアクシデント以外にはありえない。 そのような天文学的な確率を期待することは、 時間の無駄である。

出典 koisoku.ldblog.jp

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■除外すべき競技種目について その2

実際にはこのような言葉は無いのかもしれないが、 私はスポーツの分類として

「フィジカルコンタクト競技」

「ノンフィジカルコンタクト競技」

があると考えている。

これは文字通り肉体的接触の有無で分類されるものである。

対戦相手と直接肉体的な接触がある競技種目の場合、 フィジカルの強さが勝敗に直結してしまう。

ゆえに肉体的接触が発生する競技種目もまた、

真っ先に除外するべきなのである。

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■除外すべき競技種目について その2

何年か前にサントリーBOSSのCMでアーネスト・ホーストと佐竹雅昭の試合を観戦している一般人が「オイオイ、なんでそんな蹴りもらうかね、俺なら避けちゃうよ」と軽口を言った次の瞬間、リング上でホーストと対峙していた、というのがあった。 恐らくシロウトのどんな奇策も奇襲攻撃も ホーストには通用しないだろう。 いや、それどころかそうしたことを考えて いる時間すら与えてもらえないだろう。 あのリングから外へ出る唯一の方法は 『タンカで運ばれる』だと断言できる。 (まあ彼は紳士だから実際にはそうは ならないだろうが)

出典サントリー BOSS 7 CM (1998年) アーネスト・ホースト編

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■除外すべき競技種目について その2

【フィジカルコンタクト競技のイメージ】 ・相手の肉体に直接ダメージを与えることを目的とする競技(格闘技など) ・相手に接触することで有利な状況を作ろうとする競技(ラグビー、サッカー、アイスホッケーなど) ・勝つための手段として、結果的に肉体的接触が発生する競技(野球、陸上1500メートル走など)

【ノンフィジカルコンタクト競技のイメージ】 ・対戦相手と時間軸が重ならない競技(ゴルフ、ボブスレーなど) ・対戦相手と物理的に隔離されている競技(ドッチボール、綱引きなど) ・障害物を挟んで対峙する競技(テニス、バドミントン、バレーボールなど)

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■『技』について

それでは続いて『心・技・体』のうち、『技』について考察してみたい。 一般的な法則として、技術力は練習時間に比例する。 当然ながら初心者より上級者の方が技術力が高い。 仮に同じ技術を有しているとすれば、上級者の方がよりその精度が高い。 従って本提言のコンセプトからすれば非常に残念な結論ではあるが、基本技術の習得だけには時間をかけるしかない。

技 体

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■『技』について

し・か・し・な・が・ら…。 オタク層にとって、わずかながら希望の光を見出すことは出来る。 実はテニスには「上手/下手」と「強い/弱い」という対立軸がある。 つまりテニスは上手いのに試合に 勝てない選手(上手×弱い)だったり、 テニスが下手くそなくせになぜか試合 には勝ってしまう選手(下手×強い) がいたりするのだ。

下手(技術がない)

上手(技術がある)

試合に弱い

試合に強い

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■『技』について

例えば1980年代後半から1990年代前半にかけて活躍したブラッド・ギルバートという選手がいる。一時、錦織選手のコーチを務め、錦織がランキングを飛躍させた最初のきっかけを与えた人物としても知られている。 彼は当時アメリカを代表する選手の1人だったが、技術力は評価されていなかった。しかし高度な戦略や作戦立案能力を駆使して、世界ランキング4位をマークした。まさに「下手くそだけど強い」の代表例と言えるだろう。 彼には2冊の著書(※)がある。いずれも「下手くそが勝つには?」という視点でテニスのことを解説している。私がお伝えしたいニュアンスとはややアプローチが異なるが、気になる方は読んでおいて損はないと思う。 /////////////////////////////////////////// ※ブラッド ギルバートの著書 『ウイニング・アグリー 読めばテニスが強くなる / 日本文化出版』 『俺がついている ―ウイニング・アグリー2― / 日本文化出版』 ///////////////////////////////////////////

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■寓話に学ぶ『技』の磨き方について

正直に告白してしまうと、私自身は試合に勝てない弱いプレーヤーだ。 だからここで勝つためのセオリーやメソッドを偉そうに語ることは非常に気恥ずかしく感じる。 だがオタク層が目指すべき選手像というのは「下手くそだけど強い」というものであることは、胸を張って主張出来る。 なぜならばオタク層には時間が無いからだ。 基本技術の習得だけには時間をかけるしかない。しかし、そこへ膨大な時間をつぎ込むだけの余力は無いはずだ。 であるならば、なるべく効率的なやり方を学ばなければならない。 そこでこんな寓話を考えてみたので読んでみて欲しい。

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■寓話に学ぶ『技』の磨き方について

【鍵男】

街はずれの大きな館に男がひとりで暮していた。 その男は世界中から鍵を集めることに夢中だった。美しい鍵。珍しい形の鍵。過去に有名人の所有物だった鍵…。 男はまだ自分が手にしたことのない鍵をとにかく欲した。己が使える財力と時間のすべてを鍵のコレクションに費やした。 ある雪深い冬のこと。 その国はかつて経験したことのない大飢饉に襲われていた。街からは一斉に食料が消え、皆は恐怖に震えて過ごすこととなった。 しかし男は慌てなかった。

なぜならば彼の大きな屋敷には、そうした事態を見越して大量の食糧を備蓄するための倉庫があったからだ。 やがて春になり、街の人々は男の遺体を発見する。男は食糧庫の入り口の前で力尽きていたのだ。 そして男の周囲には数十万本はあろうかという鍵がうず高く積み上げられていた。 そう。 男は数十万本の鍵を 持ってはいたが、必要 なその1本を見つける ことが、ついに出来な かったのだ…。

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■勝利への扉

勝利を得るためには、必ず対戦相手という障害が立ちはだかる。 その障害となる“扉”は、こちらがこじ開けようとすることを全力で阻止してくる重たい扉だ。 そしてその扉にはかならず鍵がかかっている。 しかし我々はここで「鍵男」と同じ愚を犯してはならない。 錠前は鍵穴と、それに合致する鍵で一対になる。 いくら鍵をたくさん持っていようとも、ロックをはずせるのは合致する

「その」一本だけなのだ。

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■勝利への扉

寓話の教訓はつまりこういうことだ。 「自分はこんなショットが打ちたいのだ!」「あんなショットがあれば自分はもっと勝てるのだ!」そのような考えで一生懸命ショットの練習をするのは、使うあての無い鍵をただただコレクションしているようなものだ。どれだけ鍵をコレクションしようが、鍵穴に合致しなければ扉は開かない。 そういう意味で時間のないオタク層がやみくもにショットの練習、つまり技術の向上に時間を割くのは無駄な努力と言えよう。 「自分にとって最高のショットを打つ」という目的を持つことはきっぱり諦めよう。それよりも必要なことは「相手にとって最悪のショットを打つ」ということだ。 両者は一見同じようなことを意味しているように見えるが、その隔たりは想像以上に大きい。

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■技術に関する補足 その1

スポーツに必要な技術というものは、プレイヤーが置かれている状況によって2つに分類できると言われている。

それが

「クローズドスキル」

「オープンスキル」

だ。 例えば、高橋健夫他編著『最新 体育・スポーツ理論 改訂版』によれば、この二種類の運動技能は次ページのように説明されている。

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■技術に関する補足 その1

◆クローズドスキル 外的条件に左右されることのない状況下で発揮される運動技能。 ボウリング,射撃,弓道,体操,水泳などの個人スポーツが典型的。

◆オープンスキル つねに変化する状況(相手やボールの位置など)において発揮される運動技能。 ボクシング、武道などの格闘技や、プレイが途切れない球技などが典型的。

◆両者の組み合わせ サッカー,野球などの集団的球技や、お互いが静止した状態からプレイが開始されるテニスなどでは、オープンスキルとクローズドスキルの両方が含まれる。

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■技術に関する補足 その1

そしてこの両者は前述した『除外すべき競技種目について』という項目で説明した「レース系競技」と「ゲーム系競技」を行う際のスキルにそのまま当てはまるのではないかと考えられる。

つまり

「レース系競技」=「クローズドスキル」が必要

「ゲーム系競技」=「オープンスキル」が必要

という公式が成り立つ。

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■技術に関する補足 その1

テニスの場合、クローズドスキルと呼べるのは恐らくサービスだけであろう。 残りの他のショットはほぼオープンスキルと言って差し支えない。 従ってもし練習相手が見つからず単独で練習する際にはこの点を意識してメニューを組もう。極端に言えばサービスを延々と打つことは推奨するが、壁打ちを延々と行うことは推奨しない。 もちろん何も考えずに漫然と打つサービス練習は効果が薄いだろうし、反対に意図を持った壁打ちが出来るならば、それは効果が高いと言えるだろうが。

クローズド?

オープン?

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■技術に関する補足 その2

クローズドスキルについては単独練習でも十分身につけることが可能だ。しかしオープンスキルはそうではない。 オープンスキルを磨くには様々なシチュエーションのショットを体験するしかないのだが、それを効率よく練習で習得することは時間が限られているオタク層には難しいと言える。 一番確実な方法は練習をしないこと(笑)

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■技術に関する補足 その2

というと誤解が生じるので真意を書こう。これはつまり練習に時間を費やすのではなく、積極的に試合を経験しようという意味である。

ジャンプ三大原則の「友情」の項で説明した ことと若干矛盾してしまうが、可能な限り試合 に出よう。 それが最高の練習になることは間違いないの だから。

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■試合のススメ

テニスという競技を知るための最善の方法は試合に出ることだ。試合に出ると、テニスという競技のあらゆるものを経験出来る。そしてその経験の中から自分に足りないものが鮮明に見えてくるのだ。 最初のうちはまず勝利を手にすることは難しいと思う。『心・技・体』のすべてが足りないことを嫌というほど実感するだろう。しかし、そこで心まで打ちのめされる必要はない。 なぜならば試合なんて所詮は「健康診断」(※)のようなものだからである。

試合 = 健康診断

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■試合のススメ

練習に練習を重ねて、日ごろの成果を試合にぶつける…。そのように試合を「発表会」のように捉えることはナンセンスだ。 どれだけ練習したって完璧な自分なんて手に入れることはできっこないのだ。 その考え方ではいつまでたっても本番の舞台には立てないだろう。 練習の後に試合があるのではなく、その両者の関係を入れ替えるのだ。まず先に試合に出てしまう。そしてその結果から不足しているテーマを見つけ出し、練習を行った後に次の試合で試してみるのだ。 要するに「PDCAサイクルを回せ」ということだ。 そういう意味で試合はしょせん「健康診断」程度の意味合いと考えた方がプレッシャーがなくて良いだろう。

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■試合のススメ

ちなみに世の中には「草トーナメント(以下:草トー)」と呼ばれる私設の試合がある。そうした草トーに頻度を決めて出場することをお勧めする。 草トーは市区町村などのテニス協会が主催する、いわゆる“公式戦”とは異なり、協会への登録などの面倒な手続きも不要なのでオタク層にとっても参加しやすい大会だ。 その中でも「超初級クラス」などの初心者向けの大会を選んで出場すると良いだろう。 /////////////////////////////////////////// ※私はかねてより周囲の人間には「試合は発表会ではなく、健康診断と捉えよう」と提言してきました。が、2014年末にある有名なテニスブログに全く同じことが書かれてしまいました。 念のため一応そのブログのパクリではないことを宣言しておきます。 ///////////////////////////////////////////

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■『心』について

『心・技・体』の内、『心』について考察してみたい。 実はこの『心』という要素こそがオタク層がテニスを行う上で最も重要なファクターなのではないかと思うのだ。 ちなみに私は『心』という要素については、単に精神力というだけではなく、もう少し拡大解釈している。

技 体

Page 139: オタクのためのテニス入門(仮)

■『心』について

『心』の中には知識や経験、人格、思考の癖なども含まれ、さらに言えばその人の生まれもった体質や性格すらも範疇に加えるべきだろうと思うのだ。 この『心』というテーマについてはあまりにも遠大すぎるので、本提言の中では軽く触れる程度に止めておくことにしたいのだが、いずれにしてもテニスという競技の中に占める『心』という要素の比率はかなり大きいのだということだけは強調しておきたい。 さて、「オタクでも勝てる競技とは何か?」の項で、『心・技・体』のそれぞれが高いレベルにあることが勝利への近道になると述べた。 フィジカルの強さやテクニックのレベルに関してはある程度メジャラブル(※)なものと言えるだろう。 従ってどうすればそれらを高いレベルに押し上げるかについての方法論が分かりやすい。

しかし『心』はどうだろう?

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■『心』について

私はそもそもテニスで勝利を収めるために必要な『心』という要素についてはそれがいわゆる“心の強さ”なのかどうかも断定は出来ない。 どちらかと言えば発生した状況に対する捉え方がどうであるかといったことや、あるいは最善の対処法を知っているかどうかの方がよっぽど重要だと思うのだ。かなり抽象的な話になってしまったので、次回は具体例を挙げて説明したいと思う。 /////////////////////////////////////////// (※)メジャラブルとは 直訳すると「測定可能」という意味。元々は計画を立案する際に、測定可能なレベルに落とし込まないといけないよ、ということを説明するために生まれたことば。 例えば「痩せたい」というのは漠然としすぎていてメジャラブルとは言えない。「○月○日の正午までに、体脂肪率を10%以下にする。そのために1日あたりの摂取カロリーを****kcal以内とし、また1週間の平均運動時間を***分以上とする」といった測定が可能なレベルで設定することを指す。 ///////////////////////////////////////////

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■試合における心の在り方

この提言の中で何度も主張しているが、最終目標はテニスの試合における勝利ではない。 勝利はあくまでテニスというスポーツを飽きずに長く続けるためのスパイスであって、それ以上の意味は持たない。 ということで、まず試合に臨むにあたって真っ先に除外するのが「勝利を求めること」である。

では何を目的に試合を行えば良いのか…?

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■試合における心の在り方

実は勝利を求める心を捨て去ることが出来れば、プレイヤーは非常に穏やかな精神状態を手にすることが出来るのだ。 自分が置かれている状況を客観視できる心の状態と言い換えても良いかもしれない。 その境地に至ることさえ出来れば、目的を「実験」に設定できるようになる。 実験とはどのような意味か、簡単に解説したい。 テニスとはネットを挟んで交互にボールを打ち合う競技である。こちらが打ったボールに対し、相手は数ある選択肢の中から、こちらが最も返球困難であろうショットをセレクトする。 ボールが返球されてくれば今度はこちらが、それに対し最適解を示す。その繰り返しだ。

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■試合における心の在り方

通常はそのラリーの間にどちらかのプレイヤーがミスを犯すか、あるいはエースを取られてプレイが終了する。 もしも心が勝利を求めてしまっていたならば、こちらの得点になれば喜び、相手の得点になれば落胆してしまうだろう。 しかしそのプレイを実験として観察し、客観的に状況を理解することが出来たなら、そこにはどちらかのプレイヤーが得点し、相手が失点したという「事実」が存在するだけだ。 その事実に勝手に意味を見出し、一喜一憂するのは勝利を欲するからだ。 そして恐らく一般的なオタク層がこちらも一般的なウイークエンドプレイヤーに勝つ確率は低い訳であるから、理屈から言えば常に落胆させられる結果になるはずである。

果たしてそれでも楽しいと言えるのだろうか?

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■試合における心の在り方

誤解の無いようにあえて言うが「勝利を求める心を捨て去ること」は試合を捨てることではない。 ワンプレイ、ワンプレイにおいて最善を尽くすことに重点を置き、勝利は結果的に得られれば良いとする考え方を持とうと提言しているのだ。 したがって勝利を求める心を捨て去ることは、最初から負けても良いと思って試合に臨むこととは根本的に異なる考え方である。 ここで述べた「心の在り方」については短文で終わらせることは難しい。『スポーツは戦争の代償行為なのか?』で紹介したティモシー・ガルウェイのインナーゲーム理論に詳しい解説があるので参照して欲しい。

Page 145: オタクのためのテニス入門(仮)

■テニスプレイヤーの紳士度とは?

オタクの諸氏にとって、『運動部の連中』とはどのような位置づけだっただろうか? 学生時代を思い返して欲しい。 オタク的趣味を馬鹿にして攻撃をしてきた急先鋒は運動部の連中ではなかっただろうか?

Page 146: オタクのためのテニス入門(仮)

■テニスプレイヤーの紳士度とは?

私はこれまで様々なスポーツを経験してきたが、やはり体育会系のノリを持っている者たちが紳士的に振る舞えないシーンを何度も目撃してきた。 もちろん他のスポーツを貶めることが目的ではないので、具体的な競技名などを挙げるつもりは毛頭ないが、試合中に乱闘が発生するような競技もあるのが現実だ。また選手だけでなく、国際大会の当日に観客のバカ騒ぎを鎮め、治安維持を行うために警官隊が出動するなんてことも十分に起こり得る話である。 逆に言えばそうした闘争本能を表現できなければ一流のプレイヤーにはなれないのだ、という仮説すら成り立つような気もするが…。

Page 147: オタクのためのテニス入門(仮)

■テニスプレイヤーの紳士度とは?

さて話をテニスに戻そう。 私がテニスを始めて一番驚いたことは、テニスプレイヤー達が一様に紳士的であるという事だった。もちろん例外はあるのだろうが、他のスポーツを経験してきた私は、その点にとても感じ入ったのだ。 テニス以外にも「紳士のスポーツ」と呼ばれるものはあるだろう。しかしテニスもなかなかに紳士的である。それは世界のトッププロの振る舞いを見ても明らかだ。 つまりオタク層がテニスを始める際に、テニスであ れば紳士的に対応してもらえる可能性が高いというこ とである。 そのような側面からもやはりテニスがオタク層との シンクロ率が最も高い競技種目のひとつということが 言えるだろう。

Page 148: オタクのためのテニス入門(仮)

■紳士の証明その1

「テニスプレイヤー達が一様に紳士的である」と書いたが、はたして本当だろうか? ではここで、テニスの試合中にわりと良く発生する2つの事象を紹介させて頂こう。

ひとつ目は「コードボール」だ。

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■紳士の証明その1

テニスはネットを挟んでボールを打ち合う競技だが、まれにボールがネットに当たってしまうことがある。 ラリー中のボールがネットに当たってしまうと、予想もつかないようなバウンドをしてしまうのだ。 例えばお互いにコートのベースライン上でラリーを行っていたとしよう。片方が打ったボールがネットに当たり、勢いが殺されてポタリと反対側のコートへ落ちたとしよう。 仮に打った側を「加害者」、打たれた方を「被害者」と呼ぼう。 この場合、ポイントはもちろん加害者側へ入ることになる訳だが、被害者としては釈然としないだろう。

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■紳士の証明その1

普通に飛んできさえすれば自分はボールに追いつけたし、次のボールで攻勢に転じようと企んでいたのに、などという場合などは本当に悔やみきれない。 一般的なスポーツの場合、こうしたシーンではガッツポーズする加害者と、うなだれる被害者という構図になるのではないだろうか? しかしながらテニスは違う。

なんと加害者が被害者に詫びるのだ。

あえて言葉に出さないが、自分のコントロールミスからボールをネットにぶつけてしまった。その結果ボールに思いもよらない変化が生じてしまった。そして得点は「ミスを犯した私」に入ってしまうことになってしまった。どうか許して欲しい。とね。 私は初めてこうしたシーンを目撃した際に少なからず衝撃を受けた。

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■紳士の証明その1

他の競技を持ちだして恐縮だが、バレーボールにおいてはあえてネットを狙って攻撃することすらある。もちろん意図的にイレギュラーを起こさせるためだ。 あるいは野球で内野ゴロがイレギュラーしてしまい、内野手がエラーしたとしよう。その内野手に謝るバッターを見たことがあるだろうか? いかがだろうか。 こうしたエピソードを聞くだけで、いかにテニスが 紳士のスポーツであることを実感できまいか。

Page 152: オタクのためのテニス入門(仮)

■紳士の証明その2

テニスプレイヤー達がいかに紳士的であるかを説明するために「コードボー

ル」という事象を例に挙げたが、今回は2例目として「フレームショット」を紹介しよう。

テニスラケットは握り部分である棒状のグリップの先端に、ガットを張るためのリング状のパーツがついている。これが通称フレームと呼ばれる部位である。 フレームには格子状に貼られたガット面があり、通常はその網目の部分を使ってボールを打ち返すのだ。 しかしまれにボールをガット面にヒットさせることが出来ず、フレーム部分へ当ててしまうことがある。 これが「フレームショット」である。

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■紳士の証明その2

この「フレームショット」もやはりボールの挙動が予測不能という点で、「コードボール」同様にやっかいな存在である。 そして「フレームショット」に起因して被害者側がミスを犯した場合、加害者が被害者に詫びるのが通例となっている。 加害者とて、意図的に「フレームショット」を行っている訳ではない。そういう意味で加害者もある意味被害者といえる。 しかしやはり自分にポイントが入ってしまった場合には、その非を相手に詫びるのだ。 いかがだろうか。 このような例を通じてテニスがいかに紳士のスポーツであるかという点をご理解いただけただろうか?

Page 154: オタクのためのテニス入門(仮)

■紳士の証明その3

テニスプレイヤー達がいかに紳士的であるかを説明するため、極めつけのエピソードをご紹介しよう。

それは「セルフジャッジ」だ。

テニスの場合、大きな大会でも無い限り審判員がついてくれることは稀なことだ。その場合、ジャッジをどうするかというと「セルフジャッジ」といって選手自身が行うのだ。 ではインかアウトか迷うような ボールはどのように判定するか?

アウト?

イン?

Page 155: オタクのためのテニス入門(仮)

■紳士の証明その3

プレイヤーの心情を考えれば当然自分に有利になる判定をしたいところではあるが、テニスの場合は相手に有利になるように判定するのが鉄則なのだ。 いかがだろうか。 多くのテニスプレイヤー達がまさに「紳士たれ」という精神で試合に臨んでいる。 このような例を通じてテニスがいかに紳士のスポーツであるかという点をご理解いただけただろうか?

アウト?

イン?

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■紳士の証明その4

ちょっとあいまいな記憶で恐縮なのだが、2014年のフレンチオープン(全仏大会)でフェデラーという選手が行った行為について言及しておきたい。 テニス四大大会のひとつ「フレンチオープン」は四大大会の中で唯一、土のコートで試合を行う大会だ。 (正確には土ではなく高温焼成したレンガなど粉砕してつくられるパウダーで、通称アンツーカー) このサーフェースの特徴はボールのバウンド 跡が残ること。 ある試合で相手選手が打ったボールがライン ズマンに「アウト」とコールされ、フェデラー のポイントとなった。

(c)AFP/MIGUEL MEDINA

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■紳士の証明その4

ところが次の瞬間、彼は主審に判定を依頼しボール跡を確認させたのだ。 その結果、判定は覆り、ポイントは相手選手の元へ移動したのだ。 いかがだろうか。 一般的に判定を不服として審判に喰ってかかるシーンというのは目にするが、相手に献上するために再考を促す競技がどれほどあるだろうか…? プロ、アマに限らず多くのテニスプレイヤー達が「紳士たれ」という精神で試合に臨んでいることが分かるエピソードではないだろうか。 これまでにテニスプレイヤー達がいかに紳士的であるかを説明するために4つのエピソードをお話したが、このような例を通じてテニスがいかに紳士のスポーツであるかという点をご理解いただけたのではないだろうか?

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■紳士の証明その5

錦織圭選手は残念ながらベスト8どまりとなってしまったが、2015年の全豪オープンにおいて非常に紳士的なプレーが発生したことを皆さんにお伝えしたい。 第3シードのラファエル・ナダル(スペイン)が、予選から勝ち上がってきたティム・スマイチェク(アメリカ)に大苦戦した試合での出来事だ。 最終セットを6―5として迎えたナダルのサービスゲーム。 ここをキープさえすればナダルの3回戦進出という場面での出来事だった。

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■紳士の証明その5

30―0とリードした後のファーストサービス。 ナダルがトスを上げた瞬間に1人の観客が大声を挙げた。 動揺したナダルはそのサービスをフォルトした。 当然ながらセカンドサービスであったなら、スマイチェクにも反撃のチャンスが広がったはずだ。 しかしスマイチェクはそれを良しとしなかった。 主審にプレーのやり直しを申し出たのである。

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■紳士の証明その5

結局このゲームをナダルがキープして辛勝したのだった。 試合後、激戦を制したナダルはスマイチェクが見せた素晴らしいスポーツマンシップに感謝の言葉を述べたのだった。 いかがだろうか。 これまでにもテニスプレイヤー達がいかに紳士的であるかを説明するためにいくつかのエピソードをお話ししてきたが、このような例を通じてテニスがいかに紳士のスポーツであるかという点をご理解いただけたのではないだろうか?

(c)Getty Images

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■オタクが一夜にしてファッションリーダーに!?

錦織圭選手の活躍によって、2014年の全米オープンが日本でも大きな話題となったことは記憶に新しい。 ところでこの大会の男子シングルス準決勝で、錦織選手は世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手と対戦した。 この二人にはある共通点があるのだが、お分かりになるだろうか?

(C)2016,Nikkan Sports News.

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■オタクが一夜にしてファッションリーダーに!?

その答えはテニスウェアの契約先が「ユニクロ」だという点だ。 テニスファンには広く知られている事実だが、オタク諸氏は果たしてご存じだっただろうか? そう、僕らの味方。あのユニクロだ。

(C)2016,Nikkan Sports News.

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ちなみに2015年9月8日現在のATPシングルスランキングのTOP10プレーヤーとそのウェア契約は以下の通りとなっている。 この事実はオタク層にとっては見逃せないのではないだろうか?

■オタクが一夜にしてファッションリーダーに!?

1位 ノバク・ジョコビッチ UNIQLO

2位 ラファエル・ナダル NIKE

3位 ロジャー・フェデラー NIKE

4位 スタン・バブリンカ YONEX

5位 ダビド・フェレール Lotto

6位 トマーシュ・ベルディヒ H&M

7位 ミロシュ・ラオニッチ NewBalance

8位 錦織圭 UNIQLO

9位 マリン・チリッチ LI-NING

10位 グリゴール・ディミトロフ NIKE

オタク諸氏が、唯一気軽に入店できるファッションブランドであると言われているあのユニクロだ。 そのユニクロが、今テニス界では最もクールなファッションブランドなのだ。 「ユニクロこそがカッコイイ!」 数年前なら「それ、何てエロゲー?」と小馬鹿にされていたことだろう。 だが、そんなパラレルワールドのような設定が、今や現実のものになっているのだ。

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■テニスをすれば恋人が出来る!?

テニスほど男女の出会いの場として機能している競技は無いのではないだろうか?最大の理由は男女がペアを組んで試合を行う“ミックスダブルス”という種目があるからだ。 一般的にあらゆる競技は男女別に実施される。 ところがテニスは同じコートで男女が 戦うという種目のある、大変珍しい競技 であると言えるだろう。 例えばオリンピックの競技種目の中で、 男女が同じ条件で戦う、あるいは競う種 目などほとんど存在しないのだ。 例外的にあるとすれば乗馬やアイスダン スなどほんの数種目に過ぎない。

© 2006 TAROSKY INC. & Tennis-Navi Co.,Ltd.

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■テニスをすれば恋人が出来る!?

しかしテニスの場合、競技の性質上テニススクールにおけるレッスンも(例外はあるが)当然のように男女一緒に行われるのだ。 大抵の場合、何度も顔を合わせるメンバー同士で仲良くなってコミュニティが形成される。中には週末に練習のため集まるだけでは物足りず、飲み会や合宿などに発展するケースも多い。 内弁慶なオタク層が一般人との飲み会に出席する機会を得られるだけでも、ちょっとした事件ではないかと思うのだが、いかがであろうか?

「ズバリ、テニスは男女の出会いの場として機能する!」 この事実はオタク層にとっても見逃せないはずだ。 そのような側面からもやはりテニスがオタク層とのシンクロ率が最も高い競技種目のひとつということが言えるだろう。

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■テニスとサバイバルゲームとの共通点

テニスとサバイバルゲームとの間には意外な共通点があるのではないだろうか?

それは「プレイスタイル」が存在するということ。

つまりテニスにおけるプレイスタイルとギアの関係はサバゲーのそれと同じである。 サバゲーの場合、例えばアタッカースタイルならミドルサイズの電動ガンで、取り回しが良いものを選ぶ、とか。 スナイパースタイルならばロングバレルで、スコープとバイポットは必須である、とか。 実はテニスにおいてもギアはその人のスタイルに大きく依存するのだ。 また体を使った競技なので、筋力や持久力によっても異なるギアが必要となってくる。

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■テニスとサバイバルゲームとの共通点

一例を挙げると高齢者は筋力とフットワークが弱い。したがって軽くて面の大きなラケットを選ぶ、とか。上級者のストローカースタイルは重くて反発の弱いラケットに、ポリエステル繊維のガットを選ぶ。サーブアンドボレーヤースタイルならば前後のフットワークに優れたシューズを選ぶ、というように。 テニスのスタイルについては、ここでは多くは言及しない。複数のスタイルが存在するので、それを見極め、自分に最適なギアを探す楽しみを見出して欲しいと願う。

プロパルションプレートが素早いターン&ダッシュをサポートし、 前後の動きに強いシューズ。 © 2015 ASICS CORPORATION

フェイス面積115インチと大きいが、 重量は255グラムと軽量なラケット © 2012 DUNLOP SPORTS CO. LTD. All Rights Reserved.

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■夏のコミケ対策としてのテニス

オタク層にとって最大のハレの日といえば、そう「コミケ」であろう。 東京ビッグサイトを3日間借り切り、サークル参加者数は約3万5000スペース、一般参加者数は59万人にも上るモンスターイベントである。 特に参加者にとって過酷なのが、夏に開催される通称「夏コミ」だ。2013年開催の夏コミでは累計で約2000人が熱中症で救護室に運ばれたとの情報もある。

©2016 The Huffington Post Japan, Ltd. All Rights Reserved.

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■夏のコミケ対策としてのテニス

そこで熱中症対策としてテニスをオススメしたい。 テニスは基本的に屋外で行われるスポーツである。当然ながら夏場は炎天下で走り回ることになる訳で、必然的に太陽光や暑さには耐性がつくのだ。

普段から太陽慣れしておけばコミケの整列も怖くない! このような側面からも、やはりテニスがオタク層とのシンクロ率が最も高い競技種目のひとつということが言えるだろう。

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■筋肉痛の予防としてのテニス

サイリウムやペンライトの振りすぎて腕や肩が筋肉痛というプロデューサーやドルオタも多いのではないだろうか? ズバリ、テニスをするとこの筋肉痛を予防できるのだ。

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■筋肉痛の予防としてのテニス

テニスでサービスを打つ動作は、まさにペン ライトを振るあの動作に酷似している。頭上で ひじ関節を曲げ伸ばしする動作だ。テニスの場 合、この動作にさらに「プロネーション」と呼 ばれるひねりの動作を加えることでラケットを 加速させるのだ。 サイリウムやペンライトの振りすぎによる筋 肉痛を予防したいのなら、サービスの練習を行 おう。ラケットの重量は300グラム前後あり、 ペンライトより遥かの重いのだから。 逆にライブの間中ペンライトを振っても筋肉 痛にならないツワモノは、テニスにおいてとん でもないビッグサーバーになれるかもしれない ということも言えるだろう。

© 2011 Fubic Corporation. All Rights Reserved.

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■ゲーマーなら迷わずテニスを!

あなたがゲーマーなら、今すぐテニスを始めて欲しい。なぜならば、テニスを始めるとゲームが上達するからだ。 テニスという競技はちょっと特殊な面がある。ひとたび試合が始まるとまったくの孤独と言ってよい状態になるのだ。プレイに関するすべての判断(戦略の立案、修正や戦術の選択など)をすべて自分自身で決定しなければならない。監督やコーチからの助言も得られないし(反則となる)、作戦タイムもない。 状況を読み、最適な作戦を立案し、修正を加えながら実行に移す。これほどストーリーの構築力が鍛えられる競技も珍しい。もともとオタク層は、このストーリー構築力に長けているが、そうした能力に磨きをかけることが出来るだろう。 フィードバック フィードバック

戦略 戦術 戦闘

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■ゲーマーなら迷わずテニスを!

またラリー中は常に相手との駆け引きがリアルタイムで発生し、どのコースへどのようなボールを返球することがベストなのか瞬時に決断しなければならないのだ。

その結果、反射神経が養われ、ワーキングメモリも鍛えられることになるのだ。

さらに言えば『試合における心の在り方』の 項でも触れたが、目の前で起こっていることを 単に「事実」としてだけで捉える境地に達すれ ば、あなたは常に心と体のバランスが取れるよ うになり、非常に穏やかな精神状態を手にする ことが出来るのだ。

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■ゲーマーなら迷わずテニスを!

・ゲーム制作者の意図を読み取れ。どのような仕掛けを仕込むか? ・相手の一手に対するあなたの最高の一手とはなんだろうか? ・反射神経は穏やかな精神状態の時が一番発揮されると知ろう。 ・勝敗にのみ心を奪われることから卒業しよう。状況を客観視するのだ。

ゲーマーの諸君、大事なことなので二度言おう。

テニスを始めるとゲームが上達するよ

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■テニス業界がオタクを待っている!

さて、これまでさんざんテニスの魅力について語ってきたが、少しはテニスの有用性や、オタクにとっての必要性を感じて頂けただろうか? 私の拙い文章を読んで、少しでも多くのオタクの諸氏がテニスに興味を持って頂ければ幸いだ。 ところでオタク層がテニスを始めるにあたり、 それがオタク側からの一方的なラブコールでは ないということについて言及しておこう。 そう。 テニス業界はオタクの皆さんを待っているのだ。

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■テニス業界がオタクを待っている!

実は今、テニス業界は不況である。錦織圭の活躍やクルム伊達の復活、あるいは車いすテニスの国枝慎吾などの頑張りによって話題性は増したが、ビジネスとしてとらえた場合には、収益性に悩むテニススクールも多いと聞く。 一般的にテニススクールの商圏は半径2~3キロ程度と言われている。彼らはその商圏に対してこれまで女性やキッズ、あるいは中高年を取り込むためありとあらゆる努力をしてきた過去がある。 しかしながら我が国は2004年をピークに 人口減少に転じている。人口減少とはすなわ ちマーケットの縮小を意味する。それはもう これ以上、どれだけ力を込めて絞っても水滴 の落ちない乾いた雑巾のような市場なのだ。 しかしそこにはたったひとつだけ残された 最後のオアシスがある。

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■テニス業界がオタクを待っている!

それは無論、オタク層である。 市場が縮小する状況において企業は、独自の戦略を立てなければやがてジリ貧となり、マーケットから退場せざるを得なくなる。その意味からも、テニス業界がオタク層の登場を待ち望んでいることは間違いない。 ただし、彼らはオタク層の存在に気が付いていないか、オタクはテニスをやらないと決めつけているか、あるいはアプローチのやり方が分からないだけなのだ。 だからこちらから歩み寄ろうではないか。苦境に立たされた者たちへ、愛の手を差し伸べよう。彼らもきっとこの救世主の登場を待ち望んでいることだろう。 オタクの諸氏に是非お願いしたい。テニス業界を救って欲しいと。

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■あとがき

私自身、かつてはオタクと評された時期があった。 幼少から思春期にかけて、世の中の理はすべてマンガが教えてくれた。 アニメーションの登場人物たちが紡ぎだす、痺れるような名言に歓喜した。 ゲーム世界にあっては遥かなる地平を目指し、己に無限の可能性を感じることが出来たのだ。 しかし現実世界で引き起こされる様々な事象におもねることを選んだ結果、私は徐々にオタクではなくなっていた。 卒業したのではない。捨てたと言われることも心外である。 私自身は「脱落」あるいは「落伍」したのだと感じている。だから私はオタクとして活動している人たちを羨ましく感じ、同時に敬慕するのだ。 彼らのことは羨望と敬意を込めて「オタクエリート」と呼ぶことにしたい。 この一連の提案は、オタクエリートの諸氏がこれからもトップランナーであり続けるための、私からのエールなのである。

2016年2月18日 和田馨

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■蛇足

皆さん大人なんで分かっていらっしゃるとは思いますが、このレポートは著者によるお遊びであって、どのように受け取るかは読者の手に委ねられます。 またこの提言を読んで実行したことによって、何らかの不利益を被ったとしても、著者としては責任の持ちようがありません。あくまで自己責任の範囲において参照して頂けると幸いです。 本提言はあくまで著者の主観による一方的な内容となっております。例え「そりゃ違うんじゃないか?」という見解に出くわしたとしても華麗にスルーしてください。反論されても困ります。 制作に際しては「いらすとや」様が提供しているフリー素材をふんだんに使用させて頂きました。もしもこのサービスがなければここまでの内容のドキュメントを作成することが出来なかったと思います。この場を借りまして、こっそりお礼申し上げます。 【かわいいフリー素材集 いらすとや】 http://www.irasutoya.com/ ※掲載している写真や画像類の著作権は各著作権者に帰属しています。 ※掲載している写真や画像類は「引用」の範囲と認識しておりますが、問題があるようでしたら著者までご一報ください。

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