アセット・マネジメントの世界・総括

52
アアアア アアアアアアアアア 2016.1.28 アアアアアア アア アアアアアアア アアアアアアアアア アアアア

Upload: shinichi-watanabe

Post on 12-Apr-2017

49 views

Category:

Education


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: アセット・マネジメントの世界・総括

アセット・マネジメントの将来2016.1.28  東京国際大学 教授

渡辺信一

投信協会・日本投資顧問業協会 提携講座

Page 2: アセット・マネジメントの世界・総括

概要

2

① 多様化する投資手法 ② 投資家にとっての投資スタイル ③ リスクとリターン ④ 最近の話題 ⑤ROE は絶対か? ⑥ 日本版スチュワードシップコード、コーポレートガバナンス・コードが出された背景 ⑦ 長期投資は儲かるか ⑧ アメリカ市場の問題 ⑨ 日本市場の問題点 ⑩ 資産運用業の将来

Page 3: アセット・マネジメントの世界・総括

① 多様化する投資手法 【投資対象】 バリュー               グロース 大型                小型 国内                    海外 為替ヘッジ有り              為替ヘッジなし 伝統的資産                オールターナティブ                        デリバティブ  【運用スタイル】 クオンツ(定量)             個別リサーチ(定性) アクティブ                パッシブ 伝統的                   SRI (社会的責任投資) トップダウン               ボトムアップ  【運用主体】 機関投資家                ヘッジファンド 機関投資家                 PE 機関投資家                個人      

3

投資手法が多様化し、投資家は過剰選択に悩まされる

Page 4: アセット・マネジメントの世界・総括

① 多様化する投資手法

4

2つのパラドックス 【第一のパラドックス】 情報が瞬時に伝わるようになると、資産価格にすべての情報が反映される。 その情報にはインサイダー情報や将来予想も含まれる その結果、マクロ用予想や個別銘柄の予想は価値がなくなる さらに、市場が効率化すると、それにフリーライドした方が特になる その結果、市場を効率化するインセンティブがなくなり、市場は非効率化する 市場ではインデックスファンドが主流となる

Page 5: アセット・マネジメントの世界・総括

① 多様化する投資手法

5

【第二のパラドックス】 市場が効率的で、予想に意味がないと分かれば、最もリスクの少ない投資手法が主流となるはずである それは、市場の効率性を前提としたインデックス運用である さらに、インデックス運用は銘柄入れ替えが不要で、取引コストの面でも優位性はアティ部運用を上回る ところが、実際はインデックス運用は少数派でアクティブ運用の方が優勢である この現実は、投資家の何らかの不合理性を前提としなければ説明できない

Page 6: アセット・マネジメントの世界・総括

① 多様化する投資手法 理論と実際 【理論】 → 理論的には、市場が効率的(一切の情報が株価に反映される)であれば、資産価格がランダムウォークするので、将来予測は不可能 → それを前提とすれば、パッシブ運用が最良の方法である → しかし、現実には、アクティブ運用が大半を占める → 資産運用業界最大のパラドックス 【実際】 → アクティブ運用が多い方が、市場が効率化する → さまざまな投資手法が開発され運用手法がレベルアップする → しかしそれを支えるためのコストが増加する

6

Page 7: アセット・マネジメントの世界・総括

① 多様化する投資手法

7

リサーチコストを誰が負担するか → かつては、固定手数料制のもと、証券会社のアナリストがリサーチ活動を実施 →証券自由化、ファイアウォール強化の中で、コスト負担できなくなった → インデックス運用の増加とインサイドアナリストの活用 → 市場全体の効率性が落ちている可能性 → リーマンショックの遠因? → アクティビスト投資、スチュワードシップ投資、

ESG 投資によるエンゲージメント

Page 8: アセット・マネジメントの世界・総括

① 多様化する投資手法

(出典:須藤時仁、 2003、「アナリスト問題について−イギリスを 中心に」、日本証券経済研究所( www.jsri.or.jp/lecture/data/030519.pdf))

Page 9: アセット・マネジメントの世界・総括

① 多様化する投資手法

9

世界金融危機と金融工学 : 効率的市場仮説の蹉跌 単行本 – 2013/3/8 渡辺信一 (著 )

金融工学理論と現実―効率市場パラドックスへの挑戦 単行本 – 2001/7 渡辺 信一 (著 )

Page 10: アセット・マネジメントの世界・総括

② 投資家にとっての投資スタイル

10

運用スタイル、投資対象、投資主体は多様化しており、どれがベストである、という決め手はない → その場合、投資の現実的なコストである手数料の水準がリターンを決める可能性が高い → アクティブ運用に対するパッシブ運用の優位性 また、ファンドの規模が大きくなるにつれて運用そのものよりも物理的制約がリターンを制限するようになる → 伝統的運用スタイルに対するヘッジファンドの優位性 すべてに言えることは、リターンの源泉は何かということである → リスクの取り方の違いであり、運用機関の投資哲学と表現される

Page 11: アセット・マネジメントの世界・総括

③ リスクとリターン

11

リスク=不確実性 → リスクを取った結果としてリターンがもたらされる リターン最大化とリスク最小化 → リスク最小化の方が大事である。 時間分散=長期投資 →単位時間あたりリスクは√時間で減少 銘柄分散=アセット・アロケーション → ポートフォリオのリスクは√銘柄数、√資産数で減少

Page 12: アセット・マネジメントの世界・総括

③ リスクとリターン

12

期待リターン t t 時間

単位時間あたりリスクは√時間で減少

Page 13: アセット・マネジメントの世界・総括

③ リスクとリターン

13

リターン インデックス・ファンド ・C 株 ・ ・B 株 国債利回り

r ・A 株

0 リスク

ポートフォリオのリスクは√銘柄数で減少

Page 14: アセット・マネジメントの世界・総括

③ リスクとリターン

14

リターン ・外国株式 ・ ・ 外国債券 ・日本株 ・ 社債 リスク

ポートフォリオのリスクは√資産数で減少

Page 15: アセット・マネジメントの世界・総括

④ 最近の話題

15

日本では、受託者責任が重視されて来なかった。 →欧米の受託者責任は、 fiduciary duty に起源を持つ。 →契約上の責任よりも、信託法上の責任。 日本版スチュワードシップコード、コーポレートガバナンス・コード →受託者責任を明文化したもの → 統一言語として、 ROE を採用している

Page 16: アセット・マネジメントの世界・総括

④ 最近の話題

16

(出典:堀江貞之、 2014 、「日本版コーポレートガバナンス・コードへの期待」、アセットマネジメント)  

日本はリスク過小、海外はリスク過大

Page 17: アセット・マネジメントの世界・総括

④ 最近の話題

17

野村インベスター・リレーションズ、「 IR×Web通信」企業と投資家の建設的な対話 4 ) ROE向上に向けた、投資家との対話の変化(http://www.nomura-ir.co.jp/irweb/column/dialogue04.html)

2つのコードは、 ROE を共通言語に位置づけている

Page 18: アセット・マネジメントの世界・総括

機関投資家Stewardship Codes

企業Corporate Government Codes

株主・一般投資家・社会 (ステークホルダー)最終的リスク負担者利益享受者

企業目的・企業の長期的成功・持続的成長・企業価値の向上

 

 エンゲージメント(事前的情報共有)

経営努力 成果の配分

アカウンタビリティ       (説明責任)

忠実義務(会社法355条)                    注意義務(民法644条)

フィデュシャリー・デューティ(受託者責任)

モニタリング

④ 最近の話題

18

信任/委任(任意代理) 

Page 19: アセット・マネジメントの世界・総括

⑤ROE は絶対か?

19

ROE ( Return on Equity ) → 株価収益率とは、投資家が投資した(=リスクテイクした)資金(=株式)が生み出した利益 →ROE が資本コストを下回れば、企業は価値を産まなかったことになり、株価は下がる ROE の問題点 → 海外では、株主が経営者を評価する尺度 → しかし、問題がある

Page 20: アセット・マネジメントの世界・総括

⑤ROE は絶対か?

20

ROE の問題点 →ROE は、短期的な指標である →ROE は、レバレッジの影響を受ける → 株価=配当(=利益+減価償却-設備投資)/(1+r)∞      =純資産 ×ROE×配当性向/(割引率-成長率)      =純資産 ×ROE× (1-内部留保率)        /(割引率-成長率)      =純資産 ×ROE× (1-成長率/ROE )        /(割引率-成長率)    =純資産 × ( ROE-成長率)/(割引率―成長率)

Page 21: アセット・マネジメントの世界・総括

⑤ROE は絶対か?

21

→ したがって、 ROE<割引率の場合、成長率にかかわらず株価は純資産価格を下回る → また、株価が純資産価格を上回るには、 ROE>割引率であることが必要 → さらに、株価が純資産価格を大きく上回るには、

ROE>割引率に加えてg>0が必要

Page 22: アセット・マネジメントの世界・総括

⑤ROE は絶対か?

22

  ROE 成長率 配当性向(=1-g/ROE)

CF( =100×(ROE-g) )

株価(=100×CF/’(r-g))

P/E(=100×ROE/P)

コメント

A社    6% 4% 1-2/3=1/30.333

2 100 16.6 ROE が割引率以下

B社    6% 0% 1-0=11

6 100 16.6 同上D社 10% 0% 1-0=1

1 10 133 16.6 ROE が割引

率 以 上 でg=0

E社 10% 5% 1-1/2=1/20.5

5 500 50 ROE が割引率 以 上 でg>0

割引率を 6%とし、純資産 100円の会社を想定する。

株価が純資産価格を大きく上回る条件は、 ROE>割引率、かつ、g>0

Page 23: アセット・マネジメントの世界・総括

⑤ROE は絶対か?

23

MM 定理 → 資本政策は企業価値に無関係 → バランスシートの左=バランスシートの右   ROA= E/( E+D ) ×ROE+ D/( E+ D )

×r   ROE=ROA+ D/ E× ( ROA-r) →ROE を上げるには、以下の方法がある →ROA (総資産利益率)を上げる →D/ E (財務レバレッジ)を上げる →rを下げる(借り入れコストを下げる)

Page 24: アセット・マネジメントの世界・総括

⑤ROE は絶対か?

24

MM の結論 →ROE を上げようとして、 ROA (総資産利益率)を上げるのが一番 →D/ E を上げると、短期的に ROE は上がるが、それを打ち消すように、rが上がる →ROE を上げるには、財務基盤をしっかりさせて、rを下げる方法もある 私の結論 →ROE は、経営者に対する評価の尺度としては良いが、 ROE上昇は経営目的ではない →ROE の上昇は、必ずしも長期投資とは関係しない →成長戦略に使うのであれば、 ROE は不適当である

Page 25: アセット・マネジメントの世界・総括

⑥ 日本版スチュワードシップコード、コーポレートガバナンス・コードが出された背景

25

なぜ、矢継ぎ早に出されたのか → 株価の低迷 → 海外投資家、機関投資家の責任 → 日本株の低 ROE →持ち合い構造の変化 処方箋として正しいか →ROE重視の妥当性 →目的を持った対話の意味 → 長期投資の意味

Page 26: アセット・マネジメントの世界・総括

⑥ 日本版スチュワードシップコード、コーポレートガバナンス・コードが出された背景

26

日本の株式の過去20年間は失われた20年

Page 27: アセット・マネジメントの世界・総括

⑥ 日本版スチュワードシップコード、コーポレートガバナンス・コードが出された背景

27

日本の過去20年間は失われた20年

(出典:World Economic Outlook Database October 2010 (IMF)  (http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2010/02/weodata/index.aspx))

Page 28: アセット・マネジメントの世界・総括

⑥ 日本版スチュワードシップコード、コーポレートガバナンス・コードが出された背景

28

1949

1952

1955

1958

1961

1964

1967

1970

1973

1976

1979

1982

1985

1988

1991

1994

1997

2000

2003

2006

2009

2012

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

政府・地方公共団体 金融機関 証券会社 事業法人等 外国法人等 個人・その他

(出典:日本取引所 HP (http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/01.html) )

金融機関、事業法人等、外国人等、個人・その他のシェアが拮抗している

Page 29: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

29

長期投資は正しい戦略か →単位時間当たりリスクは減少 → リターンのぶれも減少(アセットアロケーションが容易) →総リスクは増大する ランダムウォークとの関係 → 資産価格がランダムウォークするのであれば、長期投資は儲かる →物価との関係 → 時間を味方に付ける

Page 30: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

30

Page 31: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

31

資産ごとの名目リターンの累積値

Page 32: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

32

資産ごとの実質リターンの累積値

Page 33: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

33

過去150年間のアメリカの株式の実質リターンの平均は7.0%

Page 34: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

34

保有期間が長くなるとリターンのバラつきが減少する

Page 35: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

35

長期的には各国の実質株式リターンは収斂する

Page 36: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

36

世界の株式の実質リターンは安定的

Page 37: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

37

長期保有のメリットはローリスク=ハイリターン

Page 38: アセット・マネジメントの世界・総括

⑦ 長期投資は儲かるか

38

配当利回りと1株あたり利益の伸びの合計は株のトータルリターンに等しい

Page 39: アセット・マネジメントの世界・総括

⑧ アメリカ市場の問題

39

アメリカ市場 → 一部の高額所得者が支えている → 個人はそんなに投資していない → アメリカ人=アクティブは誤り 実態調査 → 個人投資家を対象に実施 → 個人は小型株の回転売買を繰り返している → リスクが高く、リターンは高くない

Page 40: アセット・マネジメントの世界・総括

⑧ アメリカ市場の問題

40

(出典: Barber, Brad.M and Terrance Odean ,2000,“Too Many Cooks Spoilthe Profits : Investment Club Performance”, Financial AnalystsJournal, Jsn/Feb,P.21 )

個人、投資クラブともに、ネットリターンはインデックスファンドに劣る

Page 41: アセット・マネジメントの世界・総括

⑧ アメリカ市場の問題

41

(出典: Barber Brad M. and Terrance Odean, 2000, “Trading Is Hazardous to Your Wealth:The Common Stock Investment Performance of Individual Investors”,Journal of Finance, Vol.55, pp773-806 )

回転率の上昇とともにネットリターンは減少し、個人投資家の平均ネットリターンはインデックスファンドを下回る

Page 42: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

42

本来の姿 →企業への資金提供の場 → 実際は、資金回収の場になっている →世界の先進国共通の悩み

Page 43: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

43

(出典:堀江貞之、 2013 、「日本株式市場活性化への課題:パッシブマネジャーの責任強化 」、アセットマネジメント)

日本の株式市場の資金調達額はマイナス

Page 44: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

44

富の偏在 →60歳以上の層が資産の大半を占める →若者世代 → 少子化問題

Page 45: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

45

(出典:小池拓自、 2005 、「家計金融資産  1,400兆円の分析www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0491.pdf)

中間値<平均値であることに注意

Page 46: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

46

(出典:小池拓自、 2005 、「家計金融資産  1,400兆円の分析www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0491.pdf)

60歳代以上が全体の74%を占める

Page 47: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

47

(出典:小池拓自、 2009 、「家計の保有するリスク資産」 www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200909.../070404.pdf)

日本の家計の現金・預金保有割合は 50%を越える

Page 48: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

48

(出典:小池拓自、 2009 、「家計の保有するリスク資産」 www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200909.../070404.pdf) 

日本の株式・投信に占める上位25%階層のシェアは80%、アメリカの上位20%階層のシェアは97%

Page 49: アセット・マネジメントの世界・総括

⑨ 日本市場の問題点

49

株式投資を奨励する理由 →銀行の株式売却の受け皿 → フィナンシャル・リテラシー → 主体的に生きるスタンス

Page 50: アセット・マネジメントの世界・総括

⑩ 資産運用業の将来

50

フィナンシャル・リテラシー →英語、金融、 IT → 投資理論は難しくない → 投資は難しい 最大のパラドックス → 市場が効率化すると、誰がやっても同じ運用結果になる → しかし、プロと素人との力の差は歴然としてある →へたに手を出すと火傷する

Page 51: アセット・マネジメントの世界・総括

⑩ 資産運用業の将来

51

まとめ →世の中のすべての情報が反映されるのが証券市場 → その中で生き残ることの困難さとすばらしさ → これほど面白い世界は他にない

Page 52: アセット・マネジメントの世界・総括

⑩ 資産運用業の将来

52

(出典: The Capital Tribune Japan HP 、 130年間の超長期株価チャートから分かること( http://www.capital-tribune.com/archives/77)) 

過去130年間のリターンの平均は6.7%