素材写真利用における著作権法上の留意点
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16/03/03 2
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代表 栗原潔のプロフィール
日本 IBM 、ガートナージャパン等を経て 2005 年 6 月に株式会社テックバイザージェイピーを設立
日本国内の大手企業を中心にコンサルティング、リサーチ、講演・執筆サービスを提供
スタートアップ企業を中心にソフトウェア特許出願代理業務を提供
現在の中心的専門分野はウェアラブル・コンピューティング、 IoT 、ビッグデータ、ソフトウェア特許など
弁理士、技術士(情報工学)
金沢工業大学 客員教授
東京大学工学部卒、米 MIT 計算機科学科修士課程修了
Yahoo! ニュース個人、ハフィントンポスト、 BLOGOS 、公式ブログ「栗原潔の IT 弁理士日記」等で情報発信中
316/03/03
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アジェンダ
写真利用に関する著作権法上のポイント
事例1:「五輪エンブレム」
事例2:ストックフォト無断利用裁判
推奨事項
416/03/03
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著作権法をひとことでいうと ... 著作物(創作的表現)の利用について、一定期間の独
占権を与えることで、社会全体における著作物の利用とのバランスを取りながら、著作者を保護するための法律
5
著作物の保護 著作物の利用
16/03/03
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著作権侵害をするとどうなるか
差止め侵害行使の停止(および、侵害行為を組成する物の廃棄等)
過失・故意を要件としない
損害賠償過失又は故意が要件
著作権法独自の損害推定規定により損害額が高額になる場合がある
刑事罰10 年以下の懲役 and/or1000 万円以下の罰金(法人の場合は3 億円以下の罰金)
故意が要件
616/03/03
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日米における権利制限規定の考え方
716/03/03
日本 米国
柔軟なルールグレーゾーンは裁判で
大原則
例外(無断で使える)
法文の規定+公正な利用(フェアユース)かどうか
法文に規定されているかどうか
予見可能性は高いが世の中の変化に追随しにくい
著作物の利用(複製、公衆送信、譲渡等)には著作権者の許諾が必要
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写真は著作物か?
著作権法では「写真」を著作物のひとつとして例示
すべての写真が著作物となるわけではない
機械的に複写しただけの写真であれば著作物にはならない(例:防犯カメラの映像、自動撮影の証明写真)
いわゆる芸術写真ではない、素人のスナップ写真や「ブツ撮り」写真も裁判では著作物とされることが多い
構図・照明等の決定、シャッターのタイミング等に、撮影者の個性が発揮され得るため
日本の裁判上では、写真が著作物とされないケースの方がむしろ例外的
816/03/03
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写真の著作物を自由に使えるケース(抜粋)
私的使用目的複製( 30条)個人的に又は家庭内に準じる限られた範囲内で使用すること
を目的とする場合には使用をする者自身が複製可能
引用( 32条)公正的な慣行に合致していれば、報道・批評・研究等のため
に正当な範囲で引用可能
検討の過程( 30条の 3 )ライセンス検討の過程において、必要と認められる限度にお
いて利用可能
報道目的( 41条)時事の事件を報道する場合には、当該事件の過程で見聞され
る著作物を報道目的上正当な範囲で利用可能
916/03/03
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事例1:「五輪エンブレム事件」
佐野研二郎氏デザインの五輪エンブレムのコンペ資料において、海外ブログの写真の無断利用が発覚
佐野研二郎氏サイドに対する信用を失墜させ、五輪エンブレム採用の取消につながった
「社内限定使用の資料だった」は通じるか?業務上の複製は「私的使用目的」ではないとするのが多数派したがって、業務上であれば、仮に社内限定であっても、複製権を侵害することになる(もちろん、社外に公開すれば、私的使用か否かを問わず複製権・公衆送信権等を侵害することになる)
※ 現実問題として社内のみ利用において著作物利用の許諾を取るケースが一般的かどうかは別として、法律的には違法
1016/03/03
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事例2:素材写真裁判事件
某ストックフォト販売会社が著作権を有する Web 素材を許諾なく利用していた法律事務所を提訴東京地裁( 2015 年 4 月 15 日、平成 26 年 (ワ )24391号)
で判決確定 著作権侵害による差止めに加えて、損害賠償請求も認容法律事務所側による「未必の故意」を認定(原告側の過失・故
意の立証責任のハードルを大幅に低下)「無料素材としてアップされていたので許諾は不要と思っ
た」という "言い訳 " は失当とされた被告が法律事務所であることは判決文中では問題とされてお
らず、ある程度の経験を持つウェブ制作者であれば、利用する素材が著作権許諾を得たものであるかのどうかの一定の注意義務を負うとの判断が示された
1116/03/03
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推奨事項
権利処理を行なわない素材写真の利用はリスクが高い
社内限定使用であっても(現実に問題とされるかどうかは別として)違法の可能性が高い
「違法ではあっても、今までは問題とされなかったので、これからも大丈夫であろう」という発想は危険
ストックフォトサービスの活用を積極的に推進すべき
素性の怪しい「無料素材サイト」の利用は危険
Web 上で発見した個人の写真であれば撮影者に了解を得ることが必要
その場合でも、その写真の著作権者が本当にその個人であるかの注意義務は果たす必要がある
1216/03/03