5第5回単孔式内視鏡前付 - convention.co.jp ·...

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抄  録 ◇ シンポジウム ◇

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Page 1: 5第5回単孔式内視鏡前付 - convention.co.jp · <症例1>大型子宮筋腫(>1,000g)に対する単孔式子 宮全摘術 習得すべき技術 正確な単孔式体腔内縫合、結紮法

抄  録

◇ シンポジウム ◇

Page 2: 5第5回単孔式内視鏡前付 - convention.co.jp · <症例1>大型子宮筋腫(>1,000g)に対する単孔式子 宮全摘術 習得すべき技術 正確な単孔式体腔内縫合、結紮法
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S-3 単孔式内視鏡手術におけるOLT(OrganLiftingwithThread)法の有用性長野市民病院 外科林   賢、宗像 康博、関  仁誌、高田  学、沖田 浩一、田上 創一、成本 壮一、竹本 香織、村中  太、松村 美穂、岡田 正夫、吉澤 一貴

【緒言】単孔式内視鏡手術は本邦に導入以来器具の開発と技術の進歩により様々な領域の手術に応用され始めている.本法では Conflict が多いのみならず, Triangulation が困難であり,これらは手術の質に関わる根幹的な内容となりうる.当院では過去 3 年間に行った単孔式内視鏡手術のうち主に外から挙上糸を誘導し,single-multi stitch の糸を組織に掛け面にて挙上する Organ Lifting with Thread (OLT)を考案し有効であるので,その方法と成績を紹介する.【対象】過去 3 年間に施行した単孔式内視鏡手術または Reduced Port Surgery (RPS)158 例のうち OLT 症例は 38 例であった.大腸切除術16 例,胃部分切除術 8 例,胃内手術,虫垂切除術各々 5 例,LADG-LATG4例,胆嚢摘出術1例であった.【方法】初期には 2-0Plorin40mm 直針を用いたが,多くの症例では 2-0 Polysorve 32mm を使用した.針を直針系に直し,腹壁を貫通させ腹腔内へ誘導し,目的臓器に single-multi stitches で掛け,さらに腹壁を貫通させ両側を対外的に鉗子で把持挙上した.胆嚢は頚部漿膜下に,虫垂は虫垂間膜に single stitch かけて挙上した.また胃粘膜下腫瘍では腫瘍の口側,肛門側の筋層レベルに針糸をかけ 2 点で把持挙上した.胃内手術では体内結紮にて2点 OLT とした.LADG などでは胃体部と幽門部に各々3 stitch ずつ V 字にかけ 2 針にて W 型として挙上した.左側大腸では病巣から 10cm 離した腸間側,根部側,腸間側と3-4 stitches を掛け挙上した.右側結腸では横行結腸に3-4stiches かけ OLT による Counter traction とした.

【結果】臓器の挙上による視野確保は全例で有効であったが,胆嚢では少量の胆汁漏出を認めた. 1 例で血腫を形成したが,糸の挙上により止血は可能であった.胃頭側部粘膜下腫瘍では本法により,腫瘍が手前側に牽引され手技を容易にした.大腸,胃における Multi –threads ,multi stiches の OLT は良好な面での組織挙上が可能で,大腸の D 3郭清,胃の D1+ β郭清時の視野確保に極めて有効であった.手術時間は大腸切除術で 193 ± 44.2 分,胃内手術 124.2 ± 44.3 分,胃部分切除術 98.7 ± 42.6 分 LADG で 363 分であった. 【結語】単孔式内視鏡手術における視野確保に有効な OLT を報告した.本法は廉価で,面での挙上が可能で,組織損傷も少なく,応用範囲の広い組織挙上方法と考えられた.本法は安全に組織展開が可能で応用範囲の広いTechnique と考えられた.

S-4 婦人科単孔式手術に未来はあるか~膣式手術にまさる単孔式手術を可能にするためには~倉敷成人病センター 婦人科金尾 祐之、安藤 正明、長瀬 瞳子、藤原 和子、羽田 智則、海老沢桂子、梅村 康太、太田 啓明

【目的】人科においても他科同様に単孔式手術は広がりを見せている。しかし審美性(秘匿性)、低侵襲といった観点からはむしろ膣式手術が勝っていると我々は考える。膣式手術を行うことが可能な環境にある婦人科において単孔式手術の未来がさらに開けるためには、膣式手術では施行困難な症例を単孔式で安全に施行することが必要不可欠であると考える。【対象、方法】膣式手術で行うことが困難な症例を提示し、それら困難症例を単孔式で施行するために行った工夫、また習得すべき技術を提示する。<症例1>大型子宮筋腫(>1,000g)に対する単孔式子宮全摘術 習得すべき技術 正確な単孔式体腔内縫合、結紮法 <症例2、症例3>悪性疾患に対する単孔式リンパ節郭清術 工夫点 経膣アプローチの有効利用 術野確保のためのつり上げ法 Energy device の有効利用 【結果】正確な単孔式体腔内縫合、結紮法を習得し、さまざまな工夫を行うことで、多くの症例に対し単孔式手術は適応可能である。また悪性疾患に単孔式手術を適応する場合、根治性が最大の到達目標であるが、今回提示した単孔式骨盤内リンパ節郭清術は摘出リンパ節 30個、手術時間 50 分、出血少量で施行可能であり、根治性においても問題ないと考えられた。【結論】婦人科単孔式手術は今後も発展すると考えられる。

S-1 腎細胞癌に対する LaparoendoscopicSingle-siteSurgery(LESS)における創の疼痛、満足度、整容性(美しさ)に関する患者アンケート調査広島大学大学院 腎泌尿器科学梶原  充

【目的】LESS は泌尿器科領域においても急速に普及、適応拡大中であるが、利点としてエビデンスレベルの高いものは少ない。今回、腎細胞癌に対する LESS における創の疼痛、満足度、整容性 ( 美しさ ) を検討した。 【対象と方法】対象は、腎細胞癌に対して LESS を施行し、術後 1 ヵ月以上経過した患者 10 例。創の疼痛、満足度、整容性を Visual Analogue Scale (VAS) により客観的に検討した。疼痛 (0; 痛みなし~ 10; これ以上ないほど痛い ) は術後 1 ~ 7 日目と本検討時に、創の満足度 (0; 大変不満~ 10; 大変満足 ) と整容性 (0; 大変きたない~ 10; 大変きれい )は本調査時に検討。なお、LESS 腎摘除術は腎下極レベル傍腹直筋部に50mm 長の皮切を加えた経腹膜式到達法で行った。 【結果】男性 5 例、女性 5 例で、年齢、術後観察期間は中央値 54 歳、4.5 ヵ月であった。疼痛の VAS は、術後 1 ~ 7 日目は中央値 2.5、2、1、1、1.5、1、0 で、本検討時 0 であった。創の満足度、整容性の VAS はそれぞれ中央値 9.5、10 であった。術後創部感染を男性 1 例に認めたが、速やかに治癒し、術後 5 ヵ月の検討時の満足度、整容性はそれぞれ 9、10 であった。 【結語】 LESS 腎摘除術後の創の疼痛、満足度、整容性に関する患者アンケート結果を報告した。LESS が標準術式となるためには、今後、本検討以外に術後回復、QOL、手術満足度、制癌性、医療経済性などについて従来法との prospective な比較試験を行い、 LESS の非劣勢を示すことが必要と考える。

S-2 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術(ReducedPortSurgery)におけるニードル型鉗子の必要性1福岡輝栄会病院 外科、 2佐田病院、 3福岡大学医学部 消化器外科山本 純也 1、二又 泰彦 1、中島 啓輔 1、 中村 吉孝 1、佐田 正之 2、山下 裕一 3

【はじめに】より整容性に優れた手術が求められるようになり、Reduced Port Surgery(RPS)は一つの流れとなっている。われわれは様々な方法(マルチトロッカー法、グローブ法、SILS、スポンジチューブ法、・・)を試み、現在はマルチチャンネルポート法(E・Z アクセス,OCTO)を主に行っている。そして 9 割の症例でニードル型鉗子(ミニループリトラクター II,ミニラップ)を使用している。【結果】単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を 400 例に試み、390 例(97.5%)に施行しえた。ニードル型鉗子は 362 例(90.5%)に使用した。平均手術時間は 55.5 分、平均在日数は2.8であった。20症例が急性胆嚢炎を合併していた。従来法(4ポート)に変更した症例は 8 例、開腹移行症例は 2 例であった。【考察】腹腔鏡下手術において RPS を目指すことは大切であるが、それ以上に安全に手術を完遂させることが重要である。ニードル型鉗子を使用すると鉗子操作性が増し術野展開しやすくなり、Critical view of safety(胆嚢管・胆嚢動脈・Rouviere 溝・右肝管・総肝管・総胆管・胆嚢管)の確認がしやすくなる。ニードル型鉗子は細径で整容性に優れており、単孔式手術をより安全に行い、手術適応を拡げるためにとても有効である。

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S-7 単孔式内視鏡手術の将来展望と FlexibleTrocarと屈曲鉗子を用いた新しい内視鏡手術日本大学 消化器外科山形 基夫、松田  年、萩原  謙、林  成興、杉山 順子、高山 忠利

単孔式腹腔鏡下手術は最小の腹膜損傷で施行可能な低侵襲手術であり、異時性の重複癌に対し複数回の手術を定形的術式で安全に施行できる方法である。当科では現在までに 100 例以上を経験し腹腔内臓器に対し本法が安全に施行できることを確認した。問題点としては標的臓器の距離と手術の難易度が反比例することであり、臍から近い虫垂、結腸等では施行が容易であり、臍からの距離が比較的長い胆嚢、胃、食道等に対する術式では手術の難易度が高くなることわかった。この問題点の解決には通常法と同様の器具可動域と操作ベクトルが必要であり、屈曲鉗子の使用が不可欠と考えられた。しかし現状で Energy device がストレートのため左側に屈曲型鉗子、右側に Energy device を挿入して手術操作を行うのが理想的であると考えられた。また屈曲鉗子は通常のトロカールやプラットホームから挿入困難であるため、我々は新しい Flexible trocar を開発した。Flexible trocar は Silicon 樹脂製でスプリング補強されており内腔に特殊な加工を施している。屈曲鉗子の使用が可能となることで術野の展開が容易となるため通常術式と同様の視野を容易に得ることができ有用であった。問題点としては鉗子の着脱にコツが必要なことまたストレート鉗子と比較して鉗子操作が大きく異なるため、特殊な Hand-Eye coordination が必要であり十分な Simulation によりその特性を理解することが重要であった。今後の単孔式手術の展望としては現在の内視鏡手術では操作鉗子は2本のみであり他は術野の展開を行っているため展開用のデバイスの開発により現在施行されているような補助鉗子の使用を省略できより低侵襲な内視鏡手術の施行が期待され、デバイスの開発が急務である。

S-8 単孔式腹腔鏡下手術による胃癌D2リンパ節郭清石川県立中央病院 消化器外科稲木 紀幸、野  宏成、松永  正、石山 泰寛、北村 祥貴、山本 道宏、小竹 優範、黒川  勝、伴登 宏行、山田 哲司

【目的】TANKO による胃癌手術は徐々に拡がっている.リンパ節郭清の精度は根治性の確保のために重要な課題である.単孔式腹腔鏡下手術

(SILAG)による胃癌 D2 郭清を供覧,考察し,今後の展望に言及する.【対象】2010 年 9 月より施行した SILAG 症例を検討する.【手術手技】 臍を約 3.5cm の切開創より EZ アクセスを挿入し気腹する. 12mm トラカール 2 本と 5mm トラカール 1 本を基本とする.補助鉗子が必要な場合左上腹部に,2㎜ポートを挿入する.経皮的なナイロン糸とシリコンディスクで肝左葉を挙上する.大・小のガーゼも駆使して視野展開を行い,剥離・郭清操作を行う.【結果】17 例に SILAG を行った.7 例にD2郭清を行った.D2郭清症例の平均リンパ節郭清個数は62個であった.術中・術後合併症は認めなかった.手術時間中央値は 325(270-390)分,出血量中央値は 10(7-40)ml であった.【考察】症例選択にバイアスはあるものの,SILAG の D2 リンパ節郭清は可能であり,その成績は良好である.【展望】郭清度における feasibility の先に,今後は手技の普及を念頭に置いた標準化・定型化が課題である.機器の開発,教育システムの構築が急務と思われる.

S-5 単孔脾臓手術:われわれの工夫と将来展望東京慈恵会医科大学 外科三澤 健之、北村 博顕、鈴木 文武、伊藤 隆介、柴  浩明、後町 武志、二川 康郎、脇山 茂樹、石田 祐一、矢永 勝彦

【目的】これまでに施行した単孔脾臓手術の経験に基づき、当科の工夫と困難症例への対処法を呈示し、将来展望についても触れたい。【対象】2009 年 12 月から 2011 年 11 月までに施行した単孔脾臓手術 14 例(脾摘 13、脾嚢胞開窓 1)。疾患は ITP:6、嚢胞:3、動脈瘤:2、肝硬変:2、良性腫瘍:1。【方法】全例とも臍部の SILS Port から 5mm フレキシブルスコープ下に、ストレート鉗子類と彎曲型把持鉗子で施行。視野展開のポイントは、頻繁な患者体位変換による重力の利用、バルーン付リトラクターによる組織の取り回し、血管テープを用いた脾門挙上法の応用。出血予防のポイントはリガシュアを用いた脾周囲間膜切離と脾動脈先行結紮による脾臓の虚脱。脾門はエンド GIA で一括切離(脾門の厚さに応じたカートリッジを選択)。さらに、ステイプラー誘導時の脾門損傷を防ぐ目的でステイプラーのアンビル部分にペンローズドレーンを被せてこれを誘導する、などの工夫を導入。【結果】手術時間:232 ± 81 分、術中出血量:157 ± 304g、摘出脾重量 292 ± 142g(最大:580g)、開腹移行 1 例(7.1%)、Trocar 追加(1 本):1 例(7.1%)、術後在院日数 6.2± 2.8 日、合併症なし。【結論】様々な工夫により、単孔脾適は安全に施行可能であり、将来的には脾腫(600g 程度)症例に対しても応用が可能と考える。また脾門挙上法により、膵尾部の展開も良好となるため、IPMN、MCN、pNET といった膵尾部の低悪性度病変患に対する膵尾側切除にも広く応用される可能性がある。

S-6 腎細胞癌に対する単孔式腹腔鏡下根治的腎摘除術の検討慶應義塾大学 泌尿器科香野 日高、中川  健、篠田 和伸、水野 隆一、菊地 栄次、長田 浩彦、浅沼  宏、宮嶋  哲、大家 基嗣

(はじめに)当院では 2009 年9月より腎細胞癌に対して単孔式腹腔鏡下根治的腎摘除術 (LESS-N) を導入している。一術者が施行した 20 例につき検討した。(対象)男性 17 例、女性 3 例、平均 60.5 歳であった。右 8例、左 12 例、平均 BMI24.3 であった。(結果)経腹膜アプローチ 14 例

(ポート位置は 8 例が臍近傍、6 例が患側上腹部)、後腹膜アプローチ 6例であり、平均手術時間は 197 分、平均気腹時間は 144 分であった。平均手術時間は各アプローチ、左右でそれぞれ有意差を認めなかったが、BMI が大きいと手術時間が延長する傾向にあった (p=0.0097)。出血量は19 例においては 50ml 以下であった。BMI27.2 で臍アプローチの 1 例のみは 450ml の出血をきたし、追加ポートを挿入した。全例硬膜外麻酔を行い、追加鎮痛剤を使用したものは 7 例であった。後腹膜アプローチで追加鎮痛剤を使用したものはなかった。全例翌日より開始とし、主な合併症は臍アプローチでの創感染 1 例であった。創感染とワーファリンコントロールの各 1 例を除くと、平均術後在院日数は 5.5 日であった。術後の平均フォロー期間は 15.3 ヶ月と短いが、転移、再発症例は認めていない。(考察)通常の腹腔鏡手術と比較して単孔式腹腔鏡下根治的腎摘除術ではポート数を減少させることができるものの腎摘出のための皮切は同等であり、疼痛等での有意性は明らかではない。腎摘除術における単孔式手術のポート選択には検討の余地を残すが、単一創であることの美容状のメリットは明らかであり、技術的に確立され安全性が保証されるのであれば、患者のニーズからも第一選択となる術式と考えられる。

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S-11 単孔式腹腔鏡下手術の展望~市中病院におけるTANKOの位置付け~国際親善総合病院 外科亀山 哲章、冨田 眞人、三橋 宏章、松本 伸明、大渕  徹、吉川 祐輔、佐々木妙子

単孔式腹腔鏡下手術(以下 TANKO)は,数年前より急速に広がりつつある手技であり、当院では 2009 年 5 月より導入,徐々に適応を広げ、現在までに胆嚢摘出術 167 例、鼠径 / 腹壁瘢痕ヘルニア根治術 58例,虫垂切除術 46 例,結腸切除術 23 例,胃切除術 11 例,その他 5 例に施行した.手術は,主に開腹法・グローブ法にて施行しているが、鼠径ヘルニア手術には SILS ポートを使用している。基本的には、補助鉗子などは用いず、pure-TANKO を施行している。必要に応じて、pure-TANKO →補助鉗子の追加→ポートの追加、としている。pure-TANKOの完遂率は、胆嚢摘出術では 88.0%(147/167)、結腸手術・胃切除術では 79.4%(27/34)であり、ヘルニア根治術、虫垂切除術およびその他の手術では 100%であった。手技の工夫としては、メリーランド型バイポーラ電気メスを多用することであり、これにより,術野の展開 , 切離 , 凝固が一本で可能となる.鉗子の入れ替え頻度を減らすことができることから臓器損傷のリスクを軽減し手術時間短縮に寄与する.またミストの発生も少ないため , 視野の確保に有用である.悪性疾患に対するTANKO の是非は不明だが、手技が習熟すれば従来の腹腔鏡手術と遜色のない成績となり、患者満足度が高いため、良性疾患に対する TANKOは標準術式になり得ると考えられる。

S-9 大腸癌に対する単孔式腹腔鏡下大腸切除術現状と展望~当科の適応・手術手技~順天堂大学浦安病院 外科・低侵襲外科勝野剛太郎、福永 正氣、李  慶文、菅野 雅彦、須田  健、吉川征一郎、伊藤 嘉智、大内 昌和、平崎 憲範

当科の手術適応・標準的な手術手技を中心に供覧する。【アプローチ】最近は SILS port, EZ access などのアクセスプラットフォームを用いることが多く直接穿刺法は最近使用していない。明確な使い分けはないが、右側病変の場合は、小切開創がやや広くなるのでポート間距離が確保しやすいEZ access を用いるほうが手技的には容易と考えている。【手技】原則として視野展開用補助器具の追加は行わない方針である。TANKO は如何に安全を担保するかも非常に重要であるため、ドレーンが必要な低位の直腸癌症例ではドレーン留置を想定してあらかじめ最初から右下腹部に +1アシストポートを追加することにより、より安全に手術を遂行できるようにこころがけている。エネルギーデバイスは主に止血効果の高い LCS を使用している。術者は操作領域の対側に立つ。鉗子操作としてパラレル法を行う場合、中央がスコープポートで、術者は左手に剥離鉗子、右手にエネルギーデバイス(USAD など)を把持する。クロス法の場合はスコープポートが中央、右手可変鉗子(スコープの上を反時計回りに11時方向で主に吊り上げ操作用)、左手鉗子(USAD などでストレート器具を反時計回りにスコープの下で操作用)を基本ポジションとして、この位置を大きく変えず、それぞれをそのままの関係を保ちつつ術野を移動する ( 左側結腸 )。但し、クロス法・パラレル法は手術の進行状況によって使い分ける。手術手順は原則的に conventional lap に準じている。【結論】これまでに90 例を経験し、良好な結果を得た。単孔式腹腔鏡下大腸切除術は安全に完遂可能で短期成績も良好であった。一方で +1port 法は pureTANKO に比べ操作性が改善された手技であった。現時点でこの手技は厳密な意味での TANKO とは呼べないかもしれない。しかし今後、TANKO という術式を発展させていくにあたりこの +1port 法をどのような位置づけにするべきなのかは議論しておかなければいけない。

S-10 ニードルアシストによる単孔式腹腔鏡下肝切除:その先に見えるReducedPortSurgery慶應義塾大学医学部 外科田邉  稔、河地 茂行、板野  理、篠田 昌宏、 北郷  実、八木  洋、和田 則仁、北川 雄光

【背景・目的】教室では臍部のマルチアクセスポートやニードルデバイスの工夫により 10 例の単孔式腹腔鏡下肝切除を行なった。TANKO の技術を応用した肝切除における reduced port surgery (RPS) の可能性について報告する。【ニードルデバイス】術野展開に使用する体内組立式ニードルリトラクターに、肝切離面のバイポーラ止血を補助するウォータードリップ / 吸引機能を付加した。【マルチアクセスポート】臍部のマルチアクセスポートからは、スコープや鉗子3本以外にも、さらに数本の細径デバイスを挿入可能である。これを利用して、肝臓の支持糸の牽引、プリングル法による肝門血行遮断を臍部から挿入した細径デバイスで行った。【結果】以上の方法により、助手が術野展開、吸引、ウォータードリップ(バイポーラー止血補助)などマルチタスクを担うことで、術者は肝切離・止血操作に専念することが可能となった。従来の腹腔鏡下肝切除では4~5本のトロカーを挿入して行って来たが、TANKO の技術を応用することで、より少ない腹壁破壊で肝切除が可能となる。

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