5歳児指導 集 - minato · 5歳児指導ポイント集の作成にあたって...

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「育ちと学びをつなぐ 小学校入学前教育カリキュラム」パンフレット 5歳児指導 5歳児指導ポイント集の作成にあたって 港区の幼児期の教育の推進理念である「幼児期の教育に豊かな学びを保障する」を実現するため に、各園においては、幼児期のふさわしい生活が展開されるよう、様々な工夫が求められます。 本パンフレットは、これまで蓄積された様々な研究と実践例の中から、幼児が自ら考え自分たち でつくり出す生活を基盤とした事例を精選しました。各園の実態や幼児の興味・関心に基づいた創 意工夫ある実践を、計画・実施・評価するとともに、幼児教育のさらなる質の向上を図ることを目 的として作成しました。 「三つの力」について 「小学校入学前教育カリキュラム」 では「生活する力」「発見・考え・表現 する力」「かかわる力」を、幼児期の教 育と小学校教育をつなぎ、貫く「三つ の力」(右図参照)を港区ならではの 「三つの力」として位置付け、それぞ れの力を育むための具体的な「身に付 けさせたい内容」を示しています。 事例や指導のポイントの読み取り方 【この期の特徴】 期の初めの姿として幼児の心情面を 示しました。 【指導のポイント】 「身に付けさせたい内容」と関連した事例を取り上げ、具体的な指導のポイントを導きました。 ◆この冊子に掲載している内容 1ページから6ページには、5歳児前期・中期・後期の事例及び指導のポイント、7ページから9 ページには5歳児各期における園生活の様子、指導のポイント、指導上の配慮点を示しました。 10 ページは、1年生の入学から5月頃までの指導において、有効と思われる指導事例を取り上げ、 指導のポイントを示しました。 平成28年(2016年)3 港区・港区教育委員会

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「育ちと学びをつなぐ 小学校入学前教育カリキュラム」パンフレット

5歳児指導 集

1 5歳児指導ポイント集の作成にあたって

港区の幼児期の教育の推進理念である「幼児期の教育に豊かな学びを保障する」を実現するため

に、各園においては、幼児期のふさわしい生活が展開されるよう、様々な工夫が求められます。

本パンフレットは、これまで蓄積された様々な研究と実践例の中から、幼児が自ら考え自分たち

でつくり出す生活を基盤とした事例を精選しました。各園の実態や幼児の興味・関心に基づいた創

意工夫ある実践を、計画・実施・評価するとともに、幼児教育のさらなる質の向上を図ることを目

的として作成しました。

2 「三つの力」について

「小学校入学前教育カリキュラム」

では「生活する力」「発見・考え・表現

する力」「かかわる力」を、幼児期の教

育と小学校教育をつなぎ、貫く「三つ

の力」(右図参照)を港区ならではの

「三つの力」として位置付け、それぞ

れの力を育むための具体的な「身に付

けさせたい内容」を示しています。

3 事例や指導のポイントの読み取り方

【この期の特徴】

期の初めの姿として幼児の心情面を

示しました。

【指導のポイント】

「身に付けさせたい内容」と関連した事例を取り上げ、具体的な指導のポイントを導きました。

◆この冊子に掲載している内容

1ページから6ページには、5歳児前期・中期・後期の事例及び指導のポイント、7ページから9

ページには5歳児各期における園生活の様子、指導のポイント、指導上の配慮点を示しました。

10 ページは、1年生の入学から5月頃までの指導において、有効と思われる指導事例を取り上げ、

指導のポイントを示しました。

平成28年(2016年)3 月

港 区 ・ 港 区 教 育 委 員 会

絵に描いた花を工夫して立体的にしたA児の作品を学

級全体に紹介したところ、友達から「とってもいいね!」

と賞賛の声が上がった。そこで、教員がA児の作品を、

誕生会で見せることを提案すると、一緒にやりたい幼児

が7人集まり、お話作りとペープサート作りに取り組む

ことになった。教員が話の展開を引き出すことで、幼児

同士「鬼ごっこにしようよ」「いいね」等、話のイメージ

のやりとりが生まれ

た。誕生会当日、一

緒に参加している4

歳児の前で自信を

もって演じることが

できた。

散歩先でハナミズキの花がたくさん落ちていた。「持って

帰ってお花屋さんをやろう」と2人の幼児が花を拾ってビニー

ル袋につめ、帰園後、タライに水を張って浸けた。昼食中も

どのように花屋をするかを話し合っていたので、保育士は幼児

の考えや思いを受け止めながら様子を見守った。食べ終えると

早速お花屋さんごっこを始め、ビニール袋の中に水と1~2個

の花を入れて店の前に

水がこぼれないように

工夫し商品として並べ

た。他学年の幼児を呼

んだり、目立つように

看板を作ったりして、

お花屋さんごっこを楽

しみ園内の多くの幼児

がかかわって楽しんだ。

園庭で見つけたアオムシを、よく見えるように 1 匹ずつ飼育ケース

に入れ、幼児の目に触れやすい場所で飼育した。成長が分かるよう写真

で記録を撮り掲示したところ、愛着や関心をもちアオムシをよく観察す

るようになった。「昨日より大きくなった」「やった!サナギになった」

「サナギはどこからもってきたのかな」等、気付いたことや不思議に

思ったことを伝え合うよう

にもなった。本で調べた通

り、10 日で羽化したこと

に驚いたり喜んだりし、命

の尊さや、羽化したチョウ

の美しさに感動していた。

2チームに分かれて相手チームの友達とジャンケンをし、勝ったら相手

から宝をもらうという遊びをした。1回戦後、チームごとに宝を数えるこ

とになった。A児の発案で、声を合わせて唱和し、宝を持った手を順に挙

げる方法で数えた。何度か試すが、同時に手を挙げる幼児がいてうまく数

えられない。教員が「相手チームの数え方(床に宝を並べて指を指して数

える)なら、すぐに数えられるみたいだよ」と別の方法を伝えるが、それ

でもなおA児は自分の考えた方法を通そうとした。さらに何度か繰り返す

がうまく行かなかった。A児は2回戦が始まる時には「やりたくない」

とつぶやいた。教員は自分で

気持ちを切り替えられるよう

つぶやきには答えず見守るよ

うにした。すると、相手チー

ムの友達に誘われてジャンケ

ンをするうちに、気持ちを立

て直し、再び遊びに参加する

ことができた。

事例8【気の合う友達と一緒に遊ぶ楽しさを味わう】

―お花屋さん―

事例9【自分の考えの受け止められ方に気付く】

―ジャンケン宝取り―

○生活の流れや準備・片付けの手順など

を意識して、一定の時間内に終えよう

とする

○着替えや持ち物の始末を自分でする

○遊んだあとの片付けを自分から気付

いて行う

○進んで戸外に出て多様な動きを楽し

○遊具や用具の使い方が分かり、安全に

気を付けて遊ぶ

○食べることの楽しさが分かり、食べ物

に関心をもつ

発見・考え・表現する力

○友達と一緒に遊ぶ楽しさを味わう

○自分の気持ちとは異なる友達の気持

ちに気付いたり、受け止めたりする

○友達と生活する中で、きまりの大切さ

に気付き守ろうとする

○思ったことや経験したことをいろ

いろな方法で表現する

○身近な自然に触れて遊び、日本の

自然の美しさや不思議さを感じる

○自然物や自然の事象を遊びや生活

の中に取り入れ、考えたり工夫し

たりして遊ぶ

○園の仕事(誕生会の係など)を受け

もち、大勢の前で発表する

○絵本や物語を通して、イメージを

膨らませて遊ぶ

○遊びや生活に使う簡単な標識や文字、

数量(大小、高低、長短、軽重等)に

興味をもったり、生活や遊びに取り入

れたりする

身に付けさせたい内容

5歳児前期(進級当初~)

この期の特徴

・5歳児としての自覚をもち、新しい生活に期待や意欲をもっている。

・担任や新しい物との出会いに喜びを感じている。

学年で育てているキヌサヤがたくさん収穫できた。4~5人の幼児が「これ

大きいよ」「いや、こっちの方が大きい」と、収穫したキヌサヤの大きさに興味

をもった。「こっちの方が重いかな」と教員が両手にキヌサヤを載せて重さを比

べて見せると、幼児も同じようにやってみた。そこで、教員と一緒に身近な物

を使って天秤を作り、天秤の仕組み(物を載せて手を放し、下がった方が重い)

を知らせると、幼児がキヌサヤの重さ比べを始めた。さらに、重かった方のキ

ヌサヤの中の豆の数を見てみると「きっと中の豆がたくさん入っているんだよ」

と予測した。実際にサヤを開いて豆の数を数え出した。重かった方の豆の数が

多かったので「思った通りだ!」と

喜んだ。その後、天秤を使い、身の

回りの遊具や用具を載せては試すこ

とを繰り返し、物を比べる楽しさを

味わうとともに、物には重さがある

ということに気付いた。

幼児が、園庭倉庫に砂があることや外階段に落ち葉が溜まることに気

付き、掃除することになった。1週間ほど、気付いた幼児に任せていた

ところ、「二人だとなかなか終わらない」「いろいろな仕事をやりたい」

等、幼児が実感し、当番活動

を仕事に位置付け、適した人

数や交代して当番を行う方法

について考えが出た。幼児の

気付きから当番活動へとつな

げたことで、必要感をもち意

欲的に取り組むようになった。

自分たちが使った遊具は進んで片付けをしたが、誰が使

用したか分からない遊具がまだ出ていた。どの幼児も「自

分ではない」と主張した。そこで教員が「みんなで過ごす

場所は、このままでいいかな」と問いかけたところ、少し

考えてから、落ちてい

る物を拾い、所定の位

置に戻し始めた。みん

なが生活する場という

意識をもてるようにし

たことで、自分たちで

片付けるようになった。

幼児が園庭のクワの木に実がたくさんなっていることに気付いた。クワの

実をどうするか学級で取り上げたところ、「昨年のゆり組さんみたいにジャム

にして食べよう」と決まった。「ジャムってどうやって作るのかな」と教員が

つぶやくと、家庭で保護者に聞いたり、調べてきたりする幼児が出てきた。

教員は衛生面や安全面に配慮しな

がらも「どんな味がするのかな」

「早く食べたい!」と食べるのを

楽しみにする幼児の思いを尊重し、

友達が調べてきた調理法を基に、

ジャム作りを進めた。クワの実を

集めて軸を取ったり、砂を洗い落

としたりして、自分たちで積極的

に準備していた。

○使える場や物が増えたことに気付かせ、遊びや生活に取り入れられるようにしましょう

○張り切る気持ちを大切にし、意欲を高め自己有用感をもたせましょう

○必要な約束や生活のルールに気付かせましょう

○教員・保育士と一緒に様々な試しや工夫ができる面白さを感じられるようにしましょう

○解決を急がずやりとりや考える様子を見守りましょう

○興味や関心をもった事象を取り上げ、遊びを広げるきっかけをつくりましょう

普段遊ぶことが少ない幼児同士にかかわりをもたせようと、教員

が意図的に組んだ3人組で、こいのぼり製作をした。相談する項目

や選択肢を示した相談シートを教員が作って渡し、全体の色、うろ

この形、うろこの色の3つを決めた。(各グループにより2対1に意

見が分かれる、3人とも同じ意見、異なる意見になるなど)友達の

意見に耳を傾けたり、考え

直したりしながら友達と相

談して取り組んだ。こいの

ぼりの作り方を簡単にした

ことで、友達同士で話し合

うことができ、力を合わせ

て作り上げることができた。

○話し合いや遊びが進めやすい人数にしましょう

○理解しやすく共通になるように視覚化しましょう

○新しく始めたことや自分なりに試して発見したことを全体へ周知する機会をつくりましょう

事例7【友達の気持ちに気付いたり受け止めたりする】

―こいのぼり製作―

事例4【好奇心や探究心をもってかかわる】

―アオムシの成長―

事例6【量に関心をもつ】―キヌサヤの収穫―

事例5【みんなの前で発表する】

―誕生会の出し物―

事例1【生活に必要なことに気付く】―当番活動―

事例2【自分たちの生活の場を整える】―片付け―

事例3【食べることの楽しさを味わう】

―クワの実とのかかわり―

この期の特徴

・5歳児としての自覚をもち、新しい生活に

期待や意欲をもっている。

・担任や新しい物との出会いに喜びを感じて

いる。

○幼児が活動や時間に見通しをもちやすいように、説明や提示の仕方を明確にしましょう

○個人・学級・園で使用する物の扱い方や始末の仕方を伝え、目的や遊び方に合った使用や収納ができるように

しましょう

○学級の興味に応じて遊びを提示し、様々な種類の遊びを楽しむ機会がもてるようにしましょう

○幼児の好奇心から始まった遊びが自分たちで進められるように用具・素材を用意しましょう

○幼児一人ひとりが考えた発言や工夫した表現ができる機会と場をつくるようにしましょう

○相手に考えを分かりやすく伝える手段や話を聞く時の正しい姿勢・態度等を知らせましょう

○互いの気持ちを伝え、認め合えるように仲介し、折り合いをつけようとする姿を見守りましょう

○力を合わせて共通の活動に取り組み、達成感や充実感を味わえるようにしましょう

○ルールやきまり、目的等を明確に伝え、学級で共通にできるようにしましょう

○一日の流れに大まかな見通しをもち、時間

を意識しながら友達と声をかけ合って生活

をする

○自分の所持品の整理や脱いだ服の始末を

丁寧に行う

○必要性を感じて、園や学級の共同・共有

の物を片付ける

○ルールのある遊び、集団での遊び、いろい

ろな運動遊び(マット、鉄棒等)を楽しむ

○危険な場所が分かり、安全に気を付けて

行動する

○様々な食べ物への興味や関心をもって、

進んで食べようとする

発見・考え・表現する力

○友達と互いに考えを出し合ったり、尊重

したり、折り合いをつけたりしながら遊

びや活動に取り組む

○グループの友達と役割分担をしたり、

協力したりして話し合いながら活動を

進める

○集団の中でのきまりやルールを守り、

生活する

○秋の自然物等、身近な環境に積極的にかか

わり、取り入れて遊ぶ

○物の仕組みに関心をもったり、試したり

確かめたりして遊ぶ

○友達と遊びや生活の中でイメージや目的

を共有し、思いや考えを言葉で伝えよう

とする

○感じたことや考えたことを言葉で表現し

ようとする

○先生や友達の話を注意して聞き、理解し

ようとする

○物語や話の続きに興味をもち、学級の

友達と楽しんで聞く

○絵本や物語の世界を楽しみ、感動を味わっ

たり、イメージを豊かにしたりする

○遊びや生活の中で、文字を読んだり、

使ったりする

○順番や勝敗のある遊びを通して人数、物の

数を数えたり、物の量を比較したりする

身に付けさせたい内容

興味をもった数人の幼児がドッジボールを始める。保育士も仲

間の一員となり、「ボールが当たったら外に出るんだったよね」

とルールを浸透させていった。ルールが定着すると以前よりも体

を動かすようになり、「Aさんのボールの投げ方いいね!」「Bさ

んのよけ方は素早い!」と具体的に言葉をかけながら、一緒に楽

しんだ。

遊び込むうちに

「ルールを変えて面

白くしよう」という

声が出たので見守る

と、友達同士で考え

を出し合い、試しな

がら遊びを進めて

いった。

事例 10 【集団での遊びを楽しむ】―ドッジボール―

数名の幼児がOHPシートに絵を描いてお話作りをしていた

ので、学級全体に発表する場を設け、みんなでお話や絵を楽し

んで見ていた。A児がOHP機器の前に手をかざし「手が映っ

ている、面白い」と影ができることに気付いたことがきっかけ

となり、影遊びが始まった。翌日、学級で影絵クイズを楽しむ

ことにし、2~3人の友達と一緒に何をしているところかを影

絵で表現する遊びを楽しんだ。「わぁ!大きくなっちゃった」と

光のそばで動くと影が大きく

なることや、「あれ?お箸が見

えないな」とクイズで分かり

やすくするためには、小道具

などの持っている物を他の影

と重ならないようにすること

など、光と影の面白さや不思

議さを感じていた。

事例 13【物の仕組みに関心をもったり、

試したり確かめたりして遊ぶ】―影絵で遊ぶ―

2チームに分かれて行う鬼ごっこを 10 人で楽しんでいた

が、保育士が見ていないうちに捕まった幼児が逃げる、捕まる

寸前で遊びから抜けるなど、ルールを守らない幼児が数名出て

きた。それに気付いたA児が不満を保育士に訴える。保育士は

以前からそのような様子が気になっていたので、学級全体で再

度、幼児とルールを確認し合う機会をもった。加えてルールを

守れていないとどのような

ことが困るか、守れている

幼児がどのような気持ちに

なるかなども話し合った。

それぞれの気持ちを確認し

たことをきっかけに、ルー

ルを守りながら、集中して

楽しんで遊ぶようになった。

事例 16【ルールのある遊びを楽しむ】―鬼ごっこ―

幼児が園庭に積もった落ち葉を拾い集める。「同じ形だけどこっちは少

し赤い」「この葉っぱはギザギザとがっているね」と、様々な種類がある

ことや種類が同じでも色・大きさに違いがあることを比べて面白がってい

る。違いに興味をもつ姿から遊びへと発展できるように、大きな模造紙を

用意する。すると、「この葉っぱの形を2つつなげると蝶になるよ」と同

じ形の葉を選び、「この形をつなげていくと、ライオンのたてがみになり

そうじゃない」と、友達同士でイメージを共有しながら、次々に作品を作

り始めた。できあがった作品を他児の興味・関心に広げていけるように、

気が付きやすい場所に掲示する。そし

て、数種類の落ち葉と一緒に製作コー

ナーに木の実や小枝、ビーズ、竹ひご

など準備しておくと興味をもった幼児

が葉の形や色を選び、他の材料と組み

合わせてアクセサリーを作り、お店屋

さんごっこを始めた。

「きらきらぼし」のハンドベルの合奏遊びをしている。「A

さんの順番だよ!」「間違えちゃった!」とベルが止まった。

保育士が「うまくいった時と何が違うのかな?」と、その違い

に気付くよう問いかけると、しばらく考え「並び方かな?ドレ

ミになってない!」と並び方に気が付いた。「前に出て、どの

音を鳴らすのか教える人もいた方がいいね」と新しい考えも出

てきた。「お客さんになって聴いているね」と保育士が見守る

と、自分たちで並び方や

音の順番を確かめながら

合奏した。自分たちで気

が付いたこと、それを伝

え合ったことを認めると

繰り返し役割を替えて表

現遊びを楽しんだ。

学級で「大きくて乗れる物」というテーマで4つの動物を作る

ことにした。あるグループはゾウを作ることにした。「グレーに

したい」「ピンクがいい」と2つの意見が出た。教員が互いの思

いやその理由を伝えるよう仲立ちした。A児は図鑑を持ってきて

「本物はグレーだよ」と言うが「ピンクの方がかわいくていいよ」

とB児は意見を主張する。するとC児が「ピンクだと、これゾウ

なのかなってお客さんに

思われちゃうかも」と言

うがB児は納得しない。

「本物みたいにした方が

いいよ」と灰色を選ぶ幼

児が増えるとB児も少し

考え「じゃ、いいよ」と

応じた。

運動会に向けてチーム対抗リレーを楽しんでいる。Aチームがなかな

かBチームに勝てずにいるので、保育士が「作戦会議をしよう!」とA

チームで集まって話し合いをする機会をつくった。「どうやったら勝てる

かな?」と目的を明確にし、考えを出し合えるようにした。「Bチームは

よそ見して走ってない」「Aチームはバトンを2回も落とした」と気が付

いたことを言い合う。「いいことに気が付いたね」と認めると「次はバト

ンの渡し方に気を付けて走ろう」「並ぶ順番は足の速いAさんが1番がい

いんじゃない?」「かけ声を

作ろう!」と、友達同士で

新しい考えを確認し合う。

自分たちでバトンの渡し

方を練習するなど、チーム

の気持ちが一つにまとまっ

ていった。

事例 15【秋の自然物等を取り入れて遊ぶ】―落ち葉拾い―

事例 14【友達と目的を共有し、

考えを出し合いながら遊ぶ】―ハンドベル―

事例 17【自分と異なる考えに折り合いを付けながら

活動に取り組む】―作品展に向けて―

事例 18【グループの友達と協力し、

話し合いながら活動を進める】―リレー―

当番活動に取り組んでいると、ある幼児が時計を見て

「12 時になったら弁当だからそろそろ片付けた方がいいん

じゃない?」と友達に声をかけ、弁当の時間に間に合うよう

に当番の仕事を終えた。その日の降園時に、教員は友達同士

で声をかけ合ったことを紹介し、認める声かけを行った。

次の日は、他

の幼児も友達

に弁当の時間

を知らせるよ

うになり、弁

当までの時間

を気にかける

ようになった。

昼食時、A児が隣で食べていたB児に「知ってる?野菜をちゃんと食べる

ことが大切なんだって」と自分の知っていることを得意気に話している。そ

れを聞いていたB児も「お肉食べると力が出るんだよ」等と話し、他児も興

味をもっていた。栽培活動を通して食べ物への関心が高まってきていること

を感じた保育士が、食べ物や栄養等に関する絵本・図鑑等を多く用意するこ

とにした。すると、多くの幼児がその絵本を手に取りながら詳しく知ろうと

し、「これってどういう意味?」

と保育士に尋ねるようになった。

その後、「たくさん食べるよ!」

「ピーマンは苦手だけど今日は

食べてみる」と食べる意欲が少

しずつ高まっていった。

事例 12【様々な食べ物への興味や関心をもって食べようとする】

―食べ物のはたらき―

事例 11【生活に見通しをもつ】―当番活動と弁当― 5歳児中期(秋の運動会頃~)

この期の特徴 ・集団の中で友達とのかかわりをより深め、楽しん

でいる。 ・様々な活動を通じて友達とかかわる中で、自己を

発揮している。

○教員・保育士も挑戦する姿を見せたり、自ら挑戦したくなる遊具を用意したりすることで意欲を引き出しましょう

○葛藤や悔しさを共感し、個々の自己課題への挑戦意欲につながるようにしましょう

○自分たちで生活を進める中で、充実感を味わったり、自己肯定感をもったりできるようにしましょう

○試行錯誤したり、最後まで粘り強く取り組んだりする時間や遊具・用具を確保しましょう

○幼児が自分たちで活動を進める中で、実現や解決に向けて必要なことに気付かせましょう

○先読みせず、幼児の話を引き出すような投げかけをしたり、状況に応じた言葉遣いを意識したりできるよう

にしましょう

○友達のよさを感じ、伝え合う喜びが感じられるようにしましょう

○目的を達成するために、幼児同士のやりとりを認め、共感しましょう

○就学への意識が高まるような異年齢(他学年)の幼児や小学生とかかわる機会をつくりましょう

5歳児後期(就学時健康診断~)

この期の特徴

・友達とのかかわりが深まり、自信をもって生活や遊びに

取り組んでいる。

・小学校との交流を通して、就学への期待が高まっている。

○活動の区切りや時間を意識しながら生活

する

○自分の所持品の準備や管理などに責任を

もって生活する

○少し難しいことにも繰り返し挑戦し、

できるようになった自信をもつ

○危険な遊び方や場所に気付き、自分で

判断して安全に行動しようとする

○食事に関するきまりやマナーを守り

ながら、楽しく食べる

発見・考え・表現する力

○自分から進んであいさつをする

○友達と互いのよさを生かし合い、共通の

目的に向かって取り組み、やり遂げた

充実感を味わう

○学年や園全体への指示や課題を自分のこと

として受け止め、自信をもって行動する

○みんなで一緒に活動する中で、学級の一員

としての力を発揮する

○就学することを喜び、自分の成長に自信と

自覚をもつとともに、お世話になった人へ

の感謝の気持ちをもつ

○よいことと悪いことの区別が分かり、

自分で考えて行動する

○冬の自然現象に関心をもってかかわり、

疑問をもったり発見したりする

○一つのことを繰り返し試したり確かめ

たりして、じっくりと取り組む

○自分が考えたことを自分の言葉で話す

○友達の話をよく聞き、相手に分かるよ

うに話す

○その場の雰囲気や状況に合わせた言葉の

使い方や表現の仕方(声の大きさ等)が

分かり、相手に分かるように筋道をたて

て話す

○遊びや生活の中で、数の必要性や便利さ

に気付き、比べたり、分けたり、数えたり、

読んだり、書いたりする

○文字を使うことの楽しさや意味に気付き、

生活の中で文字を使って伝える喜びを味

わう

身に付けさせたい内容

1月上旬、幼児から届いた年賀状を見せると、興味をもった4人

が集まって、郵便屋さんごっこが始まり、手紙を書こうとする。保

育士が見本に書いた年賀状をまねて、「おめでとうの『お』ってどう書くの?」「ロッカーの名前シールを見ればいいね」と互いにヒントを見つけ、書き始めた。それを見ていた他児も興味をもって参

加し、手紙を書いたり届けたりするというやりとりを楽しんだ。1月下旬、帰りの集まりで今後の行事や生活の予定を保育士がホワイトボードに書いて伝えた。話が終わるとA児が紙と鉛筆を出し、ホ

ワイトボードの内容を写し出した。保育士がその様子を見守っているとA児は「忘れないように書いて持っておくことにしたよ」と笑顔を見せる。保育士も「そうすれば忘れた時にすぐ分かるね」等と

やりとりを楽しんだ。すると その様子を見ていた3、4人 の幼児もまねてホワイトボー

ドの字を見たり、難しい部分 を保育士に聞いたりしながら 書き、文字に対する興味が増

した。

事例 22【文字や数量などの感覚を豊かにする】

―忘れないように…―

すねをさすりながら教員のところに来た幼

児に、「どうしたの?」と聞くと、「Aちゃんを呼びに行こうと思って、2階の部屋に行こうとしたら、階段でつまずいて足を打った」と言う。

教員は、「それは痛かったね」と受け止め、手当てをしながら、「今のお話とってもよく分かったよ」と怪我をした状況を、道筋を立てて分

かりやすく話した幼児を認める声かけをした。

事例 23【相手に分かるように話す】

―怪我の場面―

幼児が園内の池に氷が張ったことを発見し、驚きや不思議さを感じていた。教

員が「氷ってどうやってできるんだろう?」と問いかけたことをきっかけに、4

~5名が氷を作る実験を始めた。初日は、プラスチック容器に水を入れて置いた。ところが翌朝、凍っていなかったのでその場所が寒くなかったことが原因と考え、その日園内で、一番寒い場所を探し木や遊具の陰になる場所に置いた。しか

し、その翌日も氷が張っていなかった。今度は、砂場遊具の金属製のお皿や大きなたらいなど性質や形が異なる物で試すことにした。3日目の朝、登園するとすぐに「今日は寒いからきっと

凍っているはず」と予想を 立てて見に行くと、金属製 の皿と大きなたらいに薄く

氷が張っていることを発見 し喜んだ。試行錯誤しなが ら、予想を立て発見するこ

とを楽しんだ。

事例 24【冬の自然事象に疑問をもつ】―氷の実験―

幼児同士で「A さんのいい考えだね」や「B さんは縄跳びがいっ

ぱい跳べるんだね」と、友達を認めるような発言が出てきたので、降園前に友達のよいところを紹介する機会を設けた。全員に順番が回るようにして、教員が「C さんの素敵なところはどんなところ?」

と問いかけると、「優しい」「足が速い」などの発言があった。教員が「D さん、この間困っていた時に C さんはどうしてくれたのかな?」と具体的に場面を思い起こさせ、言葉を引き出していくと、

幼児は友達が自分に対してしてくれたことを話し始めた。すると、次の順番の幼児から「けがをしたら、『大丈夫?』って声をかけてくれた」や「できなかったのに、何回も頑張ったらフラフープを回

せるようになったんだよ」など、具体的な場面を思い出して友達 のよさを認める言葉が出てくるようになった。

事例 25【友達と互いのよさを認め合う】 ―友達のよいところを伝える―

2月に入り、4月からは一人で登下校することを意識できるように、警察の方から交通安全についての話を聞いたり、実際に横断歩道を一人で歩

いたりする機会を設けた。練習の後、「一人で歩けるよ」と保護者に伝えたり、「青信号になったら右左を見て渡るんだよ」

と下の学年の友達に 伝えたりする姿が見 られた。就学を意識

した言葉が聞かれ、 実践しようとして いた。

事例 26【規範意識を守り、自分で考えて

行動する】―交通安全指導―

生活発表会でサルカニ合戦の劇をしようと全員が張り切っていた。A 児が

「臼が落ちてくるところは高い方がいいから、巧技台で台を作らない?」、B児「いいね!そこから段ボールで作った臼を落としてもいいね」、A 児「力持ちの C さん、D さん、E さん、巧技台を運ぼう」と仲間を誘い、活発に進

めていく。教員が A 児に友達の得意なところに気付いたことを認める声かけをすると、B 児は嬉しそうに巧技台に上り「C さんは大きくて力があるから、一緒に臼役やろう」「私たちは踊り

が上手だからハチになろう」 と次々に声が上がった。それ ぞれの幼児が劇に向けて自分

の得意なことを生かしたり、 友達のよさを捉えて提案した りして取り組んだ。

事例 27【みんなで一緒に活動する中で、学級の一員としての 力を発揮する】―劇作り―

園庭でマラソンをしていると、3歳児が

マラソンコースを横切ろうとした。すると教員より先にA児が「もも組さん、危ないから向こうで遊んでいてね。終わったら呼

んであげるね」と、優しく教えてあげた。 教員は後から「よく気付いたね」と、A

児にそっと声をかけた。

正月遊びの一つとして投げごまを用意する。紐を巻きつけることが難しく、遊びを

やめていく幼児が多かった中で、A児は何度も繰り返し挑戦していた。こま回しが得意なB児に「教えて」と頼んだ。A児は「これで合ってる?」と紐の巻き方をB児に確認する。A児はこまに紐を巻けるようになったが、回せず悔しがった。A児はB児

に「頑張れ!」と励まされ、毎日繰り返し練習をしていた。保育士も難しい技に挑戦し、繰り返し練習する姿を見せるようにした。すると数日後、A児が初めてこまを一人で回せるようになった。「やった!」と二人は喜び合い、感覚を確かめるようにA児

はこまを繰り返し回していた。 その日の降園時の活動で、A児は「今日

は、こまを回せて嬉しかった。B児がいつ

も教えてくれた」と発表した。翌日「お母 さんに誉めてもらった!」と喜んで話した。 再度挑戦する他児に「ここはね…」と今度

はA児が見本を見せていた。

降園前、翌日の活動について話し合っていると、一日の中で当番活動をいつ行うかについて様々な意見が出た。そこで、教員は自分たちで決めてはどうかと提案し、タイムテーブルを図にして当番活

動ができる時間帯を明示した。幼児は「自分たちで決めていいの?やったぁ!」とすぐに集まり、多数決をとったり、じゃんけんをしたりしながら相談して決めた。翌朝、幼児は張り切った様子で、集

合時間や待ち合わせの場所をグループで確認していた。その中で、飼育物の世話を担当するグループは、「ウサギは、朝、お腹がすいているからすぐしよう」と言い、飼育物の世話に責任をもって取り組

む姿が見られた。約束 の時間になるとグルー プの仲間と声をかけ合

い、当番活動に意欲的 に取り組んだ。

事例 19【活動の区切りや時間を意識しながら生活する】

―当番活動―

事例 20【危険な遊び方に気付き、

安全に行動する】

事例 21【繰り返し挑戦する】―こままわし―

この期の特徴

・5歳児としての自覚をもち、新しい生活に期待や意欲をもっている。

・担任や新しい物との出会いに喜びを感じている。

クワの実の軸とり

(じっくりと継続できる空間)

アオムシの観察風景

(視覚化の工夫)

キヌサヤの重さ比べ

(様々な試しができる、教材作り)

5歳児前期 (進級当初~)

進級後、幼児は年長児としての自覚をもち、新しい生活に張り切って取り組もうとする姿が見ら

れます。新しい物や出来事に喜びを感じ、意欲的に行動しようとする反面、気持ちが空回りしうま

く生活を進めていくことができないこともあります。教員・保育士は、このような姿を受け止め、

年長児として自信をもって進めていくことができるようにするとともに、幼児が新しい生活をつく

りだしていく構えが育つようにしていきます。

そのため、進級したことによる環境の変化に応じ、5歳児にとってのふさわしい生活に向け、場

や物、生活の仕方について、幼児と共に考えて決めていくことを明確にしていくことが大切です。

また、幼児一人ひとりが、どのようなことに喜びを感じているかを具体的な姿として把握し、共感

することが幼児の自覚を促し、自信につながります。

○ 使える場や物が増えたことに気付かせ、遊びや生活に取り入れられるようにしましょう

○ 張り切る気持ちを大切にし、意欲を高め自己有用感をもたせましょう

○ 必要な約束や生活のルールに気付かせましょう

○ 教員・保育士と一緒に様々な試しや工夫ができる面白さを感じられるようにしましょう

○ 解決を急がずやりとりや考える様子を見守りましょう

○ 興味や関心をもった事象を取り上げ、遊びを広げるきっかけをつくりましょう

○ 話し合いや遊びが進めやすい人数にしましょう

○ 理解しやすく共通になるように視覚化しましょう

○ 新しく始めたことや自分なりに試して発見したことを全体へ周知する機会をつくりましょう

・ 進級当初は環境の変化から不安感を示す幼児もいます。個人の経験差や特性に配慮して、幼児一

人ひとりの気持ちに寄り添いながら、進級の喜びと自覚を感じさせていき、遊びや活動を進める

ようにします。

・ 幼児の「試してみたい」「やりたい」という思いを、すぐに行動に移したり形にしたりして実現

できるように遊具や用具を用意するとともに、繰り返し取り組むことができるように、教員・保

育士も一緒に「どうしてだろう」という気持ちに寄り添い、遊びそのものを支えるようにします。

この期の特徴

・5歳児としての自覚をもち、新しい生活に期待や意欲をもっている。

・担任や新しい物との出会いに喜びを感じている。

じっくりと継続できる空間 クワの実とのかかわり

視覚化の工夫 アオムシの観察風景

指導上の配慮点

指導のポイント

かかわる力

発見・考え・表現する力

生活する力

5歳児前期 (進級当初~)

様々な試しができる教材作り キヌサヤの重さ比べ

中期になると、自分たちの生活のリズムが定着し、幼児はいろいろな遊びに主体的に取り組み、

友達と互いの考えや発見を共有して、相談しながら遊びを進めるようになります。幼児の「こうし

たい」という思いの実現に向けて、試行錯誤しながら取り組めるようになる一方、友達との意見の

違いにより遊びが中断したりすることもあります。

さらに、運動会など園全体で取り組む活動では、5歳児年長組としてのリーダーシップを発揮し、

任された仕事を友達と一緒に積極的に行ったり、みんなで取り組んできたことを堂々と発表したり

します。このように好きな遊びや学級の課題活動などを通して、目的に向けてみんなで進めていく

面白さや難しさを感じながらも、やり遂げる達成感を経験できるようにします。

教員・保育士は、幼児同士がかかわり合いながら遊びを進める中で、自分たちで折り合いをつけ

ながら問題を解決したり、目的を達成したりする喜びを経験させていくことが大切です。そのため

には、活動の目的を明確にし、遊びの方法や過程を共有しながら協同する意識を高めていく環境や

指導が重要になります。

○ 幼児が活動や時間に見通しをもちやすいように、説明や提示の仕方を明確にしましょう

○ 個人・学級・園で使用する物の扱い方や始末の仕方を伝え、目的や遊び方に合った使用や収納が

できるようにしましょう

○ 学級の興味に応じて遊びを提示し、様々な種類の遊びを楽しむ機会がもてるようにしましょう

○ 幼児の好奇心から始まった遊びが自分たちで進められるように用具・素材を用意しましょう

○ 幼児一人ひとりが考えた発言や工夫した表現ができる機会と場をつくるようにしましょう

○ 相手に考えを分かりやすく伝える手段や話を聞く時の正しい姿勢・態度等を知らせましょう

○ 互いの気持ちを伝え、認め合えるように仲介し、折り合いをつけようとする姿を見守りましょう

○ 力を合わせて共通の活動に取り組み、達成感や充実感を味わえるようにしましょう

○ ルールやきまり、目的等を明確に伝え、学級で共通にできるようにしましょう

・ 目的に向けて友達と力を合わせて進める活動では、目的を共有し、目的や方法を明確に提示した

り必要感を感じさせたりしながら活動できるようにします。幼児の葛藤やつまずきも大事な場面

ととらえ、一人ひとりの幼児の気持ちに寄り添い、乗り越えられるよう心のよりどころとなるよ

うにします。

・ 教員・保育士も一緒に遊びや課題に取り組み、新しい発想や方法を提示し、「こうしたら、どう

なるかな」「違う方法もあるね」など、幼児からの考えを引き出す援助をします。

この期の特徴

・集団の中で友達とのかかわりをより深め、楽しんでいる。

・様々な活動を通じて友達とかかわる中で、自己を発揮している。

友達と協力して進める遊び リレー

興味や関心を深める用具 生け花

興味をかきたてられるような遊びの提示 影絵遊び

5歳児中期 (秋の運動会頃~)

指導上の配慮点

指導のポイント

かかわる力

発見・考え・表現する力

生活する力

楽しかったことの発表 (自分の言葉で相手に伝える機会)

氷の実験・看板作り (考えたことを行動に移す機会の保障)

自立・意欲・探究心・ 自己発揮・他者理解に

つながる *遊具、用具の準備 *時間、空間の確保 をしましょう

後期では、自分の目的や少し難しい課題に向かって粘り強く取り組む姿や、友達を思いやり、助け合

おうとする姿が見られます。そして、友達と協同して活動を進められるようになり、自分の感じたこと

や考えたことを友達に分かるように伝えたり、友達の話を聞いて受け入れたりすることができるように

なります。さらに、見通しをもった生活を送り、今は何をすべきかを自分なりに判断し、状況に応じた

行動をしようとするようにもなります。

就学を前に、園生活を振り返り、自分自身の成長を感じられる機会を設けたり、友達のよさを認め合

い、受け入れ合っている姿に共感したりすることが大切となります。改めて、身の回りの活動一つ一つ

について確認するとともに、着実に身に付くように指導を重ねていくようにします。

そして、学級・学年全体でこれまでの充実した園生活の一端を感じ取れる活動の機会や、就学への喜

びや期待をもてるような機会を設け、一人ひとりが自覚と自信をもって、自分たちの生活を意欲的に進

められるようにします。

○ 教員・保育士も挑戦する姿を見せたり、自ら挑戦したくなる遊具を用意したりすることで意欲を

引き出しましょう

○ 葛藤や悔しさを共感し、個々の自己課題への挑戦意欲につながるようにしましょう

○ 自分たちで生活を進める中で、充実感を味わったり、自己肯定感をもったりできるように

しましょう

○ 試行錯誤したり、最後まで粘り強く取り組んだりする時間や遊具・用具を確保しましょう

○ 幼児が自分たちで活動を進める中で、実現や解決に向けて必要ことに気付かせましょう

○ 先読みせず、幼児の話を引き出すような投げかけをしたり、状況に応じた言葉遣いを意識したり

できるようにしましょう

○ 友達のよさを感じ、伝え合う喜びが感じられるようにしましょう

○ 目的を達成するために、幼児同士のやりとりを認め、共感しましょう

○ 就学への意識が高まるよう、異年齢(他学年)の幼児や小学生とかかわる機会をつくりましょう

・ 自分たちで考えて行動に移す機会をもち、幼児同士が互いのよさを認め合い、学級全体の心のつな

がりをもった温かい集団をつくり出すことが大切です。

・ 小学校生活にかかわる話題が増えてくるので、小学校生活への期待や不安を受け止めるとともに、

長く過ごした園生活の締めくくりとして満足したものとなるよう、残り少ない日々に見通しをもた

せ、幼児とともに考え、つくり出す遊びや生活を大事にします。

この期の特徴

・友達とのかかわりが深まり、自信をもって生活や遊びに取り組んでいる。 ・小学校との交流を通して、就学への期待が高まっている。

自分の言葉で相手に伝える機会 楽しかったことの発表

考えたことを行動に移す機会 氷の実験・看板作り

5歳児後期 (就学時健康診断~)

指導上の配慮点

指導のポイント

かかわる力

発見・考え・表現する力

生活する力

就学に期待をもつ機会 小学生との交流

○安全な登下校の方法を知り、通学

する

(登校時刻、下校時刻、放課 GO

等)

○一日の流れを理解し、時間割に

沿って生活する

○授業に間に合うように、体育の着

替えをしたり、特別教室等(音楽

室、体育館)へ移動したりする。

○小学校の生活の場(教室、トイレ、

保健室、校庭等)に慣れ、安心し

て過ごす

○所持品(ランドセル、算数セット、

連絡帳等)や共同・共有の物(給

食の白衣)の片付けの仕方を知り、

丁寧に使う

○給食の配膳を自分たちで行う

○友達と一緒に、好き嫌いなく楽し

く給食をとる

発見・考え・表現する力

○学校にいる人たちや友達に親しみ

の気持ちをもってあいさつをする

○小学校の先生、学級や学年の友達、

縦割り班の上級生等、小学校のい

ろいろな人や、地域の方とかかわ

る中で、自分は○○小学校の一員

であることを自覚して行動する

○困っている友達がいたら、聞いて

あげたり教えてあげたりする

○安全の約束やきまりを守って行動

する

○学習に向かう規律を守ることで、

気持ちよい生活が送れるというこ

とを理解して行う

【例】・授業のはじめと終わりには

礼をする

・手を挙げて発言する

・相手が話しているときはよく

聞く など

○学習の中で発見する喜びや、でき

るようになった喜びを味わう

○授業中、先生や友達と対話する中

で、その言葉の意味を理解して、

自分にはなかった気付きや発見を

喜ぶ

○板書された書き言葉と補助的な

絵、写真等を見て、質問の意味を

よく聞いて理解する

○困った時や話したいことがある

時、自分の言葉で考えて自分から

伝える

○自分の名前を文字で書く

○問いに対して思ったこと、考えた

ことを文字で書く

○教室内、学校内にある表示や図、

文字等の意味を理解する

隣の席の人と2人組になり互いの机を合わせて、算数ブロックを使

い、数のクイズを出し合う。やり方を確認した後、児童同士のやりと

りの時間となる。教員が机間指導をしていると、ずっと黙ったまま、

硬い表情で会話のない2人組がいた。教員がそばで「『どうですか?』

って聞かないとね」と促すと、児童は「どうですか?」と相手に尋ね

た。教員は「なんて返すといいかな」と補足すると「あたりです」と

答えた。教員が「そう、A さんも B さんもいいね」と言うとホッとし

た表情になり、その後の会話が弾んでいった。

教員の後押しがある

ことで安心感がもて、

友達に主体的にかか

わる姿につながった。

⑤ 安心して友達との活動が進むようにする

色画用紙に「い」の付く言葉を思い付くだけ紙に書くという国語の

授業。各自で考えた後(7分)、書いた紙を隣の席の人と見合い、いく

つの言葉が見つけられたかを数えて確認する。二人で「『いちご』、同

じ!」「い・ん・ど、インド?」と言葉を見比べている。(10 分)そ

の後、発表する人とカードを黒板に貼る人という役割をもたせて、学

級全体に知らせた。発表時間をしっかり確保し、全員が発表できたこ

とで、各自の発見や喜びがもてた。

学級の中で、「いいですか」「いいですよ」という話型のルールが定

着し、教員と児童との間や児童同士で応答できるようになってきてい

る。2人組になって取り組む場面で、教員は自然に考えを話し合って

いる2人組の児童の様子を見て、「付け足したいことはありますか?」

と尋ねる。すると、「A さんの話を聞いたら、もう一つ考えが思いつい

たのでよかった」など、友達を認める言葉が聞かれた。互いのよいと

ころを認め合う雰囲気ができてきた。

③ 時間の配分を工夫する

学習の準備では、♪「おべんとうばこ」のリズムに合わせて「下敷

きさん、筆箱さん、ライオンさん(教科書のこと。表紙にライオンの

絵が描いてある)」など、教師が歌いながら、机上に出すよう指示をす

る。すると、児童は、♪「下敷きさん、筆箱さん、ライオンさん」な

ど口ずさみながら、机の中から自分の持ち物を確認しながら取り出し

た。児童が聞き慣れたリズムを教員が唱えて準備を促すことで、児童

は楽しそうに歌いながら机上に教科書を揃えていた。

教室から体育館の移動するとき、話し声はなかったが、数人の児童

の足音が大きく、階段をジャンプして飛び降りるなどの行動が見られ

た。教員がすぐに歩くのを止め、「音がするのは残念だったね。」「忍者

の歩き方、どうしたらできるかな」と尋ねる。すると足音をさせずに

静かに行動していた。行動を想起させるような言葉かけが自らの行動

を振り返ることにつながった。

① 幼稚園や保育園での経験を活用する

この期の特徴

・新しい生活に期待や意欲が大きいが、不安ももち合わせている。 ・新たな学級集団を意識し、知っている友達や担任の先生に支えられながら

自分を表現している。

② 発達に応じて分かりやすい言葉を使う

④ 言葉による様々な表現を認め、促す

1年生入門期 (入学当初~)

身に付けさせたい内容

10

港区保育園・幼稚園・小学校連絡協議会

委員長 益口 清美 (教育委員会事務局次長)

副委員長 山形 美津子(港区立白金台幼稚園長)

委員 村岡 恵美子(愛星保育園長) 田川 伸子(港区立西麻布保育園長)

深澤 美智子(愛育幼稚園長) 黒田 泰正(港区立本村小学校長)

横尾 恵理子(子ども家庭支援部保育担当課長) 渡辺 裕之(教育委員会事務局指導室長)

港区保幼小連携推進プロジェクト

委員長 新井 智子 (港区立にじのはし幼稚園長)

委員 廣松 麻実子(港区立高輪幼稚園主任教諭) 清水 佳那(港区立白金台幼稚園教諭)

小柳 茉莉 (港区立麻布幼稚園教諭) 山下 陽子(港区立にじのはし幼稚園教諭)

小堺 貴子 (港区立南青山保育園副園長) 山田 淳 (港区立麻布保育園保育士)

太和田 枝里(港区立赤坂保育園保育士)

事務局 小久保 篤子(教育委員会事務局指導室幼児教育担当専門官)

東城 良尚 (教育委員会事務局指導室指導主事)

園部 圭子 (子ども家庭支援部保育担当係長)

川田 優子 (子ども家庭支援部保育担当係長)

発行番号 27203-7551

5歳児指導ポイント集

平成28年(2016年)3月

港区保幼小連携推進プロジェクト

港区・港区教育委員会

〒105-8511

港区芝公園1-5-25