6 有機hd 電解合成 横浜国大 - jst図3.4.13 10%...

66
公開用 終 了 報 告 書 SIP(戦略的イノベーション創造プログラム) 課題名「エネルギーキャリア」 研究開発テーマ名「有機ハイドライドを用いた水素供給技術の開発」 (有機ハイドライド電解合成) 研究題目「トルエンの水素化電解槽と高耐久性酸素発生電極の開発」 研究開発期間:平成26年7月1日~平成30年3月31日 研究担当者:光島 重徳 所属研究機関:横浜国立大学

Upload: others

Post on 23-Sep-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

公開用

終 了 報 告 書

SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)

課題名「エネルギーキャリア」

研究開発テーマ名「有機ハイドライドを用いた水素供給技術の開発」

(有機ハイドライド電解合成)

研究題目「トルエンの水素化電解槽と高耐久性酸素発生電極の開発」

研究開発期間:平成26年7月1日~平成30年3月31日 研究担当者:光島 重徳 所属研究機関:横浜国立大学

Page 2: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

目次

1.本研究の目的 .............................................................. 6

2.研究開発目標とマイルストーン ............................................. 12

3.研究実施内容 ............................................................. 13

3-1.電解水素化触媒上の物質移動の解析 ..................................... 13

3-1-1 はじめに ......................................................... 13

3-1-2 実験方法 ......................................................... 13

3-1-3 結果及び考察 ..................................................... 13

3-1-4 まとめ ........................................................... 18

3-2.カソード膜接合体の開発 ............................................... 19

3-2-1 はじめに ......................................................... 19

3-2-2 実験方法 ......................................................... 20

3-2-3 結果及び考察 ..................................................... 26

3-2-4 まとめ ........................................................... 31

3-2-5 今後の課題 ....................................................... 31

3-3.酸素発生電極の開発 ................................................... 32

3-3-1 はじめに ......................................................... 32

3-3-2 実験方法 ......................................................... 33

3-3-3 結果及び考察 ..................................................... 34

3-3-4 まとめ ........................................................... 37

3-3-5 今後の課題 ....................................................... 37

3-4.小型電解槽の開発 ..................................................... 38

3-4-1 はじめに ......................................................... 38

3-4-2 実験方法 ......................................................... 38

3-4-3 結果及び考察 ..................................................... 42

3-4-4 まとめ ........................................................... 47

3-4-5 今後の課題 ....................................................... 47

Page 3: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

3-5.電解槽の副生成物の解析 ............................................... 48

3-5-1 はじめに ......................................................... 48

3-5-2 実験方法 ......................................................... 48

3-5-3 結果及び考察 ..................................................... 49

3-5-4.まとめ ........................................................... 53

3-5-5.今後の課題 ....................................................... 54

4.外部発表実績 ............................................................. 55

5.特許出願実績 ............................................................. 64

6.参考文献 ................................................................. 66

図表一覧

図 1.1 エネルギーキャリアを用いた水素エネルギーシステム

図 1.2 実効電力 1GW を得るためのトルエン-メチルシクロヘキサン系有機ハイドライドに

よるエネルギーシステムフロー

図 1.3 直接電解水素化システムとアルカリ水電解と水素化反応プロセスの設備コスト試算

図 1.4 トルエン-メチルシクロヘキサン系での電解合成法の熱力学的な利点

図 3.1.1 二相界面に対する電極高さ(h mm)の定義.hは二相界面と触媒塗布部上端との

間で規定.

図 3.1.2 トルエン水素化反応におけるクロノアンぺログラム

図 3.1.3 ファラデー電流と非ファラデー電流の分離

図 3.1.4 時間の平方根でスケールされたクロノアンぺログラム.点線で囲まれた電流を直

線で外挿した値を触媒の電荷輸送電流と定義.

図 3.1.5 電荷移動電流-トルエン吸着時間の電極高さ依存性

図 3.1.6 電極高さと電荷移動電流の関係

図 3.1.7 トルエン電解水素化反応の異なった電位に対するクロノアンぺログラム

図 3.1.8 時間の平方根でスケールされたクロノアンぺログラムの電位依存性.

図 3.1.9 温度変化に対する電荷移動電流とステップ電位の関係

図 3.2.1 膜型ハーフセル構造

図 3.2.2 膜型ハーフセル実験システム

図 3.2.3 電解時の膜電極接合体および周辺の構造、機能

図 3.2.4 電流効率測定の実験システム

図 3.2.5 電極面積 10 cm2級セル、100 cm2級バイポーラー模式図

図 3.2.6 使用したプロトン交換膜の構造

Page 4: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

図 3.2.7 Pt/Cと PtRu/C のトルエンの電解還元の LSV

図 3.2.8 Pt/Cと PtRu/C の加湿窒素雰囲気でのサイクリックボルタモグラム

図 3.2.9 Pt/C及び PtRu/C を用いたセルの還元電流の温度依存性

図 3.2.10 電解質膜を親水化処理したときのトルエン電解水素化電解槽の分極曲線と内部

抵抗

図 3.2.11 拡散層への白金担持量を変化させた電解膜の 10%TLにおける LSVカーブ

図 3.2.12 拡散層への白金担持量を変化させた電解膜の 10%TLにおける電流効率

図 3.2.13 各膜の 60oCにおける硫酸内トルエン濃度の時間変化

図 3.2.14 各膜のトルエンの見かけの拡散係数の温度依存性

図 3.3.1 トルエン飽和 H2SO4(実線)並びに H2SO4(破線)中における Ir 酸化物触媒電極の

60℃での分極曲線

図 3.3.2 トルエン飽和 H2SO4(実線)並びに H2SO4(破線)中における Zr 成分比と 1.6V(□)

および 1.7 V(○)における電流密度の関係

図 3.3.3 Ir50Ta10Zr40-oxide/Ti(a), Ir50Ta20Zr30-oxide/Ti(b), Ir50Ta30Zr20-oxide/Ti(c),

Ir50Ta40Zr10-oxide/Ti(d), Ir50Ta50-oxide/Ti(e)のセル電圧の経時変化

図 3.3.4 Ir50Ta20Zr30-oxide/Ti および Ir50Ta50-oxide/Ti の触媒層中の Ir(□),Ta(○),

Zr(△)成分の重量の経時変化

図 3.3.5 Zr仕込組成比(IrXTaYZrZ-oxide/Ti)に対する Ir(□),Ta(○), Zr(△)成分の通電

電気量あたりの消耗量

図 3.3.6 Ir50Ta10Zr40-oxide/Ti(○), Ir50Ta20Zr30-oxide/Ti(□), Ir50Ta30Zr20-oxide/Ti(△),

Ir50Ta40Zr10-oxide/Ti(◇), Ir50Ta50-oxide/Ti(●)の被膜抵抗の経時変化

図 3.4.1 三極式小型電解槽のシステム

図 3.4.2 電解槽構造(a)と基本カソード流路構造(b)

図 3.4.3 ファインアノード(a)および熱圧縮 Ti web集電体(b)の効果

図 3.4.4 従来型メッシュ(a)およびファインメッシュ(b)アノード

図 3.4.5 非熱圧縮(a)および熱圧縮(b)Ti web

図 3.4.6 トルエン電解水素化電解槽の電流密度と電極電位の関係

図 3.4.7 各運転温度における電流密度と電極電位の関係

図 3.4.8 各運転温度におけるターフェルプロット

図 3.4.9 各運転温度と電流効率

図 3.4.10 100、50、10%TL における各流路の LSV カーブ

図 3.4.11 100、50、10%TL における各流路の電流効率

図 3.4.12 アノードおよびアノード支持体構造の変化に対する LSVカーブ

図 3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率

図 3.4.14 100%TL 供給、0.4 A cm-2印加時の連続単流操作運転時の流量と転化率およびセ

ル電圧の関係

図 3.5.1 ワンパス方式膜型ハーフセル電解システム

図 3.5.2 循環方式膜型ハーフセル電解システム

Page 5: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

表 3.2.1 MEA調製条件

表 3.2.2 標準条件

表 3.2.3 電気化学測定条件

表 3.2.4 小型電解槽の標準仕様

表 3.2.5 小型電解槽の標準運転条件

表 3.2.6 小型電解槽の電気化学測定条件

表 3.2.7 使用したプロトン交換膜の物性

表 3.3.1 白金族元素のアノード特性

表 3.3.2 酸素発生アノードとしての白金電極の損耗に及ぼす有機物質の影響

表 3.4.1 各流路の流路パラメーターと圧損

表 3.5.1 トルエンの電解水素化に及ぼす各種電極触媒と電流密度の影響

表 3.5.2 o-キシレンの電解水素化に及ぼす電流密度の影響

表 3.5.3 o-キシレンの電解水素化に及ぼすセル温度の影響

表 3.5.4 トルエン電解水素化における Pt触媒担持量依存性

表 3.5.5 トルエン電解水素化における Ru触媒担持量依存性

表 3.5.6 トルエン電解水素化における Pt-Ru触媒担持量依存性

表 3.5.7 各種電極触媒を用いた電解結果

Page 6: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

6

1.本研究の目的

日本の電力消費量は年間 1,000 TWh 程度で、東日本大震災前はその 30%の 300 TWh 程度を原子力発

電、600 TWh程度が火力発電であった。現在は火力発電が原子力発電の分も担っており、2012年は 900

TWh 程度に達している。日本でも再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を充実し、二酸化炭素排

出量を抑制するための新エネルギーとしての太陽光、風力、水力、地熱発電の普及に務めている。設備

容量としては太陽光、風力、および地熱でそれぞれ 3.62GW、2.24GW、および 0.54GW であった。これら

の所謂新エネルギーによる発電電力量は全体の 1%程度である。ここで、現状の太陽光発電および風力

発電の設備容量と時間の積で求まる電力量に対する実際の発電電力量は 10%台半ばである 1)。

国内の再生可能エネルギー導入のポテンシャルについての報告は必ずしも十分とは言えないが、太陽

光発電では 5~10 TWh、小水力発電では 8~70 TWh、風力発電では 6~数 100 TWh 程度と考えられる。風

力発電については洋上風力の設備容量と稼働率をどのように考えるかによって非常に大きな幅になる。

国内での風力発電のポテンシャルは北海道および北東北に偏っており、これらの開発は電力の貯蔵や輸

送も問題となる 2-4)。

再生可能エネルギーの分布を国際的に見ると、日本は水資源には恵まれているものの、太陽光や風力

に関しては適地とは言い難い。太陽光については日本の 180 W/m2 と比較してアフリカの砂漠地帯でも

200W/m2程度で数 10%程度の差であるが、風力は首都圏の 5 m/sに対して南アメリカのパタゴニア地方、

オセアニアの南部、西ヨーロッパの北部、西サハラ、ソマリアなどでは 9 m/s 程度の風力が得られる。

ここで、風力エネルギーは風速の 3乗に比例するので、5 m/sと 9 m/sの風速は、エネルギーとしては

約 6倍であり非常に大きな差である。風力発電の稼働率も立地条件に大きく影響される 5,6)。

実用化されている大規模なエネルギー貯蔵システムとして揚水発電が挙げられるが、この方法は輸送

には適さない。エネルギーの輸送と貯蔵を効率よく行うためには化学エネルギーに変換することが有効

と考えられる。電力を直接化学エネルギーに変換するプロセスが電気化学システムである。例えば、二

次電池、いわゆる蓄電池は電力を化学エネルギーに変換して貯蔵するデバイスであり、携帯機器から電

気自動車まで広く用いられている。この流れは、現状のリチウムイオン電池を基準と考え、リチウムイ

オン電池の応用から新型二次電池の開発を目指すものであり、風力発電および大規模太陽光発電による

短周期の出力変動の緩和は考慮されているが、中長周期の出力変動の緩和や大規模エネルギー輸送には

適用が困難である 7)。

以上のように、国内の再生可能エネルギーは絶対量の不足の他、世界的な適地と比較して稼働率でも

劣ると考えられるので、再生可能エネルギーの大規模導入を考える上ではエネルギー貯蔵や輸送と併せ

て適地を選定する必要がある。

再生可能エネルギーを基盤とするエネルギーシステムの全体像を図 1.1に示す。世界的な適地に大規

模な太陽光発電や風力発電システムを設置し、エネルギーキャリアに変換して輸送して国内でエネルギ

ーを消費するシステムである。エネルギーキャリアとしては液体水素、アンモニア、有機ハイドライド

などが考えられている。有機ハイドライドは石油と似た性状の液体であり、エネルギー備蓄等の比較的

Page 7: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

7

大規模システムとの親和性にも優れているが、エネルギーシステムの末端までの配送も容易である。

詳細は後述するが、本提案の電解有機ハイドライド法は規模にかかわらず効率損失が少なく、起動停

止の追従性に優れている。高温プロセスを含むシステムでは効率が低下しやすい比較的小規模の再生可

能エネルギーの拠点ではとくに効率面で優位にエネルギー変換して有機ハイドライドのエネルギー貯

蔵・輸送網に乗せることができる。

有機ハイドライドのエネルギー貯蔵・輸送網として、千代田化工建設は産ガス国等で発生する副生水

素を化学的に水素化して輸入、国内で脱水素して発電、自動車燃料などで利用するプロセスを、JXTGエ

ネルギーは「脱水素システムの開発及び実用化(水素ステーション)」にて分散型の脱水素システムを開

発中である。本提案の電解有機ハイドライド法をこれらのシステムと連携してエネルギーシステムの上

流から末端まで効率のエネルギー輸送ネットワークの構築が可能となる。需要地側で実効電力 1GW規模

のトルエン-メチルシクロヘキサン系有機ハイドライドを用いたエネルギーシステムのフローを図 1.2

に示す。実線の矢印がエネルギーの動脈の流れ、破線がトルエンによる静脈の流れである。海外や洋上

風力等の再生可能エネルギーをエネルギーキャリアの形でエネルギーネットワーク上を輸送し、消費地

で脱水素してエネルギーを利用する。さらに、エネルギーキャリアは循環する。需要側で 1GW程度のベ

ースロード、即ち、原子炉 1基の発電量に相当する電力を考える。水を分解してエネルギーキャリアの

水素化を行う過程での変換効率は 60~70%、貯蔵・輸送では 90~95%、脱水素から発電で電力を得る過程

では 40~55%と考えられる。システム全体で見ると、エネルギーの輸送と比較して、エネルギー変換に

関わる損失が大きい。逆算すると有機ハイドライドとして運搬するエネルギーが 2GW、再生可能エネル

ギーの実効電力が 3GWとなる。この量は ULCC(Ultra Large Crude Carrier)級の超大型タンカーで有機

ハイドライドを運搬すると仮定すると、年間約 20隻分となる。

なお、国内の平均的な立地条件では、1GWとはメガソーラー(1MW級)で設備稼働率が 15%であるとする

図 1.1 エネルギーキャリアを用いた水素エネルギーシステム

Page 8: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

8

と 6,700 箇所分、世界最大級の風車(5MW 級)で設備稼働率が 15%であるとすると風車約 1,300 台に相当

する。なお、風力発電量が上位の国々の平均設備稼働率は約 25%であり、必ずしも地産地消が好ましい

訳ではなく、立地条件によっては利用率の差がエネルギーの輸送による損失を補える可能性がある。

以上のことから、エネルギーキャリアの製造工程では、

a) 再生可能エネルギーの変動を吸収できること

b) 水の分解工程を含めてエネルギー変換効率が高いこと

が必要条件である。太陽光や太陽熱では日々起動停止があり、15%程度の稼働率、風力発電でも平均稼

働率が約 25%であるので起動停止や負荷変動に時間を要する高温プロセスは含まないことが望ましい。

また、システム全体で見るとエネルギー変換に関わる損失が大きいので、平衡論的なエネルギーキャリ

ア自体のエネルギー密度よりもエネルギー変換効率が高いことがエネルギーキャリアの選択には重要

である。

トルエンの水素化について従来プロセスをベースとすると、風力発電や太陽光発電の電力を電力貯蔵

用蓄電池システムで調整した後、大規模なアルカリ水電解にて水素製造し、水素を圧縮して蓄圧器に貯

蔵して水素化反応器に供給するシステムとなる。今後は、再生可能エネルギーの電力変動を直接アルカ

リ水電解が受け止める方向で、最新鋭の食塩電解工業技術を応用した大規模な電解槽が開発され、水素

化反応器との組み合わせのシステムとなると思われる。一方、エネルギーキャリアによる水素の大規模

輸送自体は産油国や産ガス国で未利用の湿性天然ガスから水蒸気改質により水素を製造し、副生する二

酸化炭素を石油増進回収法に使用するプロセスが先行し、再生可能エネルギー主体の水素の大規模輸送

はその後になると考えられる。

図 1.2 実効電力 1GW を得るためのトルエン-メチルシクロヘキサン系有機ハイドライドに

よるエネルギーシステムフロー

Page 9: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

9

図 1.3 には直接電解水素化システムとアルカリ水電解と水素化反応プロセスの設備コスト試算を示

す。なお、概略で 1 MW程度の有効電力で水素ステーション一箇所、300 Nm3/h程度の規模感であり、商

用化されている最大級のアルカリ水電解槽(500~750 Nm3/h)とほぼ同じである。直接電解水素化プロセ

スでは、酸性電解質や貴金属触媒を使用すると考えられるので、電解槽自体のコストはアルカリ水電解

より高くなるが、水素の蓄圧設備は不要である。水素化反応器の半日分の水素を圧縮ガスとして貯蔵す

ると考える。蓄圧設備もスケールメリットが無く、直接電解水素化電解槽とアルカリ水電解の電解槽の

差に相当する設備コストであることから、大規模システムでは両者の設備コストはほぼ同じであり、比

較的小型のシステムになるとスケールメリットのある圧縮機や水素化反応器の影響を受け、直接電解水

素化システムのほうがコストは低くなる。当面の目標としている 0.4 A/cm2で白金系カソード触媒を用

いた電解槽では 100 MW 以下の中小規模で設備費で優位に立つ。このため、電解槽の低コスト化技術も

重要である。たとえば、食塩電解用の電解槽では電極の部品費は電解槽の約 1/10程度であり、現在の直

接電解水素化電解槽の白金系電極触媒の貴金属を少量の安価な Ru のみの使用に抑えると 10%近いコス

ト低減が見込める。一方、天然ガスベースのシステムに再生可能エネルギーが併設する場合には水電解

設備のみの追加となるため、組み合わせシステムの方が設備コストは低くなる。ランニングコストはシ

ステムのエネルギー変換効率で決まるので、高効率で負荷変動に対応しやすい技術が主流になると考え

られる。

図 1.3 直接電解水素化システムとアルカリ水電解と水素化反応プロセスの設備コスト試算

Page 10: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

10

本研究開発では、更に高効率で負荷変動に対応しやすいシステムを目指し、図 1.2の中の太枠で囲ん

だ再生可能エネルギーによる電力によりトルエンをメチルシクロヘキサンに電解水素化する高効率大

規模電解槽を開発する。直接水素化電解槽は従来プロセスの水電解、蓄圧器による水素貯蔵、水素化反

応器の 3 つの機能を高効率で達成できる。図 1.4 にトルエン-メチルシクロヘキサン系の有機ハイドラ

イドを水素化するプロセスの標準ギブズエネルギー変化及び標準エンタルピー変化を示す。本法はアン

モニアなどの他のエネルギーキャリアと比較しても水素との反応での水素化反応では比較的発熱量の

大きい反応であり、熱損失が大きい。具体的にはギブズエネルギーベースで水素製造に必要なエネルギ

ーの 13%、エンタルピーベースで 24%発熱する。電解合成法では水素を経由しないため、理論分解電圧が

1.08 V と水の電気分解の 1.23 V と比較して約 0.15 V 理論電圧が低い。したがって、本提案の電解法で

は水電解よりも低い電圧でトルエンを電解水素化できる可能性があり、エネルギー変換効率からは他の

キャリアを上回る可能性があると考えている。また、基本的に高温プロセスを用いないため、再生可能

エネルギーの変動に対応するための水素の蓄圧器などが不要で機器点数が少ない特長を有し、とくに数

十 MW以下の再生可能エネルギーを対象としたシステムのコスト削減が可能である。

液相のトルエンを電気化学的に直接水素化する先行研究として日立製作所の特許 8, 9)及び本グループ

の学会発表 10, 11)があるが、海外からの報告事例は認められていない。両者とも固体高分子形燃料電池の

電極膜接合体の作製技術を応用した貴金属系触媒担持炭素触媒上での還元反応を利用している。このよ

うな関連研究の例は非常に少ないため、触媒材料、担体材料や、これらで構成される触媒層の構造制御、

電解質として用いる陽イオン交換膜の材料や構造、ならびに電解槽の構造設計等に関わる検討を系統的

に推進することが必要である。

そこで、本提案ではトルエン-メチルシクロヘキサン系の有機ハイドライドによる高効率次世代エネ

ルギーシステムの構築を目指し、トルエンをメチルシクロヘキサンに電解水素化する高効率大規模電解

システム開発の要素技術開発を行うことを目的とした。これらの材料技術を使用して開発する電解槽に

は、最新鋭の食塩電解工業の技術を取り入れ、最終的には数 m2級の電極面積、電流密度 0.4 A/cm2の電

解槽並びにメチルシクロヘキサンへの転化率 95%以上の電解槽システムを開発することを目指し、大型

化のための基礎技術を開発することとした。電流密度 0.4 A/cm2は現状の商用アルカリ水電解と比較す

図 1.4 トルエン-メチルシクロヘキサン系での電解合成法の熱力学的な利点

Page 11: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

11

ると 2 倍程度、食塩電解の塩素発生電極で工業化されているレベルの高い値である 12, 13)。トルエンの

電解水素化を行うカソード側は固体高分子形燃料電池の技術を、酸性電解質中で酸素発生するアノード

には食塩電解技術を応用した構造で大規模化が可能な電解槽を開発することとした。

Page 12: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

12

2.研究開発目標とマイルストーン

従来のアルカリ水電解は 0.2 A/cm2程度の電流密度で運転されていたが、最新鋭の食塩電解では 0.4

~0.6 A/cm2での運転が始まっている。わが国のアルカリ水電解の開発目標は電流密度 0.6 A/cm2、電解

槽電圧 1.8 Vとされている。大規模化が可能なトルエンの直接電解水素化はこれまでに例の無い電解技

術であることから、本研究開発終了時に大型化可能な構造で 0.4 A/cm2で運転可能な電解槽技術を確立

することを目標とし、100 cm2 級のバイポーラー型電解槽で以下の要素技術を検証する。本電解槽で水

素化可能な量は 34 L-H2相当/h程度で、食塩電解用の電解槽の要素技術の検証に用いられる規模である。

a) 基盤技術として三電極式電気化学セルによる電極触媒能の評価法を確立する。

b) カソード膜接合体で 0.4 A/cm2 でトルエンの電解水素化が可能な物質移動を改善した貴金属系電極

触媒層を開発しカソード膜接合体で実証する。信頼性確保の触媒層基礎データとして、電解質膜の

透過水及びトルエン/メチルシクロヘキサン透過速度の定量化を行う。

c) 0.4 A/cm-2にて溶存トルエンによる過電圧上昇を 10%以下の高耐久酸素発生電極触媒を開発する。

d) トルエンの電解水素化で 0.4 A/cm2、ファラデー効率 95%を達成できる大型化可能な電解槽の要素技

術として物質移動促進カソード流路構造ならびにバイポーラーセル用アノード保持構造を開発し、

検証セルで 1,000hの耐久性を実証する。転化率 95%を実現するためのシステムの検討を行う。

e) 電解槽の性能解析、基盤技術である反応解析のためにフローセルを用いて副生成物の定量解析を行

う。

以上の研究開発により、トルエン/メチルシクロヘキサン=1/1組成にてファラデー効率 95%を達成し、

大型セル構造及び転化率 95%を達成するシステムを提案する。

Page 13: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

13

3.研究実施内容

3-1.電解水素化触媒上の物質移動の解析

3-1-1 はじめに

本研究はトルエン―硫酸二相系におけるトルエン電解水素化反応に対し、電位ステップ法に基づいた

基礎的評価法、手法を確立、新規材料開発の指針を得ることを目的としている。この方法は、触媒上へ

のトルエンの吸着時間、温度、及び二相界面に対する電極高さのパラメーターによって評価される。正

確な測定を行う過程においてファラデー電流と非ファラデー電流が関係し、評価が複雑化する。本実験

ではトルエン水素化反応においてトルエン還元反応の電子輸送に対する正確な電流値を測定、評価し、

電極触媒と担体の役割を理解し、新規材料開発の指針を得ることを試みた。

3-1-2 実験方法

実験は白金-カーボン触媒(TEC10E50E, TKK)が 20 µl cm-2の担持量で塗布されたグラッシーカーボ

ン電極(3 cm×10 cm×0.5 cm)と白金ワイヤ(99.9%, 0.5 mm, TKK)を三電極セルの作用極として使

用した。初めに電極触媒層をセル内の 0.5 mol l-1硫酸溶液(95%, Wako)に入れ、その後トルエン(99.8%,

Sigma-Aldrich)を投入し、電極はその二相界面に設置された。電極位置 h は図 3.1.1 に示すように 10

mm 幅の触媒層に対して二相界面から上部の高さとして定義された。トルエンの触媒上への吸着時間は、

二つの独立したクロノアンぺロメトリの間のインターバル時間 tadsorptionとして定義した。また、同様に

セッティングされた白金-カーボン触媒電極に対し、クロノアンぺロメトリの電位を 0.01 V vs. RHE

から 0.1 V vs. RHEの間の値で固定し、温度を 25、38、50および 60oCに設定して測定を行った。

実験における反応電流は、時間の平行根の関数としたグラフにおいて、60oC、0.05 V vs. RHEでクロ

ノアンぺログラムを時間 0 へ外挿する事で決定した。本実験系ではインターバル時間はレストポテンシ

ャルでの吸着時間として定義される。

図 3.1.1 二相界面に対する電極高さ(h mm)の定義.hは二相界面と触媒塗布部上端との間で規定.

3-1-3 結果及び考察

図 3.1.2に電位を 0.05 V vs RHE に固定したトルエン水素化反応のクロノアンペログラムの典型例を

示す。横軸はトルエンの電解時間、縦軸は電流密度を表す。挿入図は横軸を時間、縦軸を電位とし、E1

Page 14: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

14

t / s

t / s

が電極のレストポテンシャル、E2が時間t0からスタートしたステップ電位(0.05V)を示す(t0は t =

0 の時間を示す)。初期の時間は指数関数的挙動を示すが、後半では一定値に収束して指数関数挙動から

外れる。電流は初期時間で主に電気二重層への充電、その後触媒の反応電流、最終的には物質移動電流

に支配される経過を辿ると考えられる。電気二重層への充電に関しては次に示す式 3.1.1

で数学的に計算可能である事が分かっている。ichargingは電解中の電流、ΔEはレストポテンシャルとス

テップ電位の電位差、Rsは電解時における全抵抗、Cdは二重層容量、tは電解時間を示し、この式によ

って電気二重層への充電電流をシミュレートする事が可能である。

図 3.1.2 トルエン水素化反応におけるクロノアンぺログラム

a) ファラデー電流と非ファラデー電流の分離

図 3.1.3に実験データより計算された二重層容量電流のシミュレート結果を示す。imは実測電流、inf

はシミュレーションされた二重層容量電流を示し、ifはファラデー電流として imと infの差から求めら

れる。つまり、測定電流は二重層容量電流とファラデー電流に分離する事が可能であり、言い換えると

トルエンの水素化反応のファラデー電流成分を調べる事が可能であることを意味する。

図 3.1.3 ファラデー電流と非ファラデー電流の分離

𝑖𝑐ℎ𝑎𝑟𝑔𝑖𝑛𝑔 =𝛥𝐸

𝑅𝑠𝑒

−𝑡𝑅

𝑠𝐶

𝑑⁄ (式 3.1.1)

Page 15: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

15

ξ𝑡 / s

b) 触媒の電荷輸送の解析

分離されたファラデー電流は触媒の電荷移動特性として評価する事ができる。トルエン直接電解水素

化の時間経過に対する電流変化は図 3.1.2に示した様に三つの異なった領域として考える事ができ、後

半の領域は物質移動支配のファラデー電流域である。本実験では、図 3.1.4に示すように以下の方法で

電荷移動電流を調べた。

1. クロノアンペメトリにおいて横軸を時間の平方根のスケールに変換。

2. ファラデー電流域での直線範囲を用い、t=0の電流値を外挿によって求める。

3. その外挿値をトルエン電解水素化において使われる触媒の電荷輸送電流として定義する。

図 3.1.4 横軸を時間の平方根としたクロノアンぺログラム.点線で囲まれた電流を直線で外挿した値

を触媒の電荷輸送電流と定義.

c) 電荷輸送電流-吸着時間と電極高さの関係

電荷移動電流と触媒層への溶解トルエンの吸着時間の関係を電極高さのパラメーターに対し調べら

れた結果を図 3.1.5に示す。全体傾向として電荷移動電流は吸着時間の増加に伴い増加する。電極触媒

層が二相境界線以下(トルエン溶解硫酸相)に浸された電極高さ(h immersedで定義)の 10分から 120

分の間においては、電荷移動電流は直線的に増加し、その後飽和状態に転じる。h immersedにおいて電

荷移動電流は吸着時間 150 分以降で飽和する。この飽和電流は最大の電荷移動電流であり、h immersed

が最も速く触媒表面を反応物質が覆うことを意味している。二相境界上の電極高さに注目すると h = 10

mm において飽和電荷移動電流はほとんど MEA(membrane electrode assembly)のデータと同等であり、

この方法が MEAと比較可能な測定であることを証明している。

Page 16: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

16

図 3.1.5 電荷移動電流-トルエン吸着時間の電極高さ依存性

図 3.1.6に電荷移動電流と電極高さの関係を示す。全体傾向として電極位置が高いほど電荷移動電流

が小さくなる。これは吸着トルエンが電流阻害要因として働いていると考えられる。トルエン層内の大

部分は触媒表面の伝導性を小さくし電荷移動電流の低減をもたらす。 h immersed、h = 0および h = 3

の関係を見ると 180 min以降で直線関係を示している事から、トルエン直接電解水素化における最適な

測定条件は、電極に対して少なくとも 180分以上の吸着時間を与える事であると考えられる。

図 3.1.6 電極高さと電荷移動電流の関係

d) 電荷移動電流とステップ電位、温度の関係

本項では電荷移動電流とステップ電位、および温度の関係が調べられた。クロノアンペロメトリにお

けるステップ電位は 0.01 V から 0.1 V vs. RHEまで設定され、温度は 25、38、50、および 60oCで調べ

られた。

図 3.1.7に 25oCにおけるそれぞれのステップ電位でのクロノアンペロメトリを示す。結果、ステップ

電位は大きい程、還元電流は小さくなる傾向を示した。

h / mm

Page 17: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

17

図 3.1.7 トルエン電解水素化反応の異なった電位に対するクロノアンぺログラム

図 3.1.8 に 25oC におけるファラデー電流と時間の平方根の関係を異なる電位に対してプロットした

図を示す。この結果においてもファラデー電流は、電位が低い方が大きい還元電流を与える傾向であっ

た。直線領域の外挿はグラフにおいて示した2点を用いて行った。この領域においてグラフは直線性を

示しており、信頼度の高い電荷移動電流が計算されると考えられる。例として 0.07 V vs RHE での直線

を図中に示す。この直線はファラデー電流を表しており時間経過に対し最初に現れた直線領域である。

図 3.1.8 時間の平方根でスケールされたクロノアンぺログラムの電位依存性.

図 3.1.9に異なった温度に対する電荷移動電流とステップ電位の関係を示す。硫酸(トルエン無)に

おける電荷移動電流は 25oC のみ図中にプロットされている。結果としてトルエン溶解硫酸中での電荷

移動電流は、電位が小さくなる程、また温度が高くなる程、増大する傾向が観察された。この結果に対

し 25oC硫酸中での電荷移動電流は電位を高くする事に伴う電流低下は弱い傾向であった。

0.01 V 0.02 V 0.03 V 0.04 V 0.05 V 0.06 V 0.07 V 0.08 V 0.09 V 0.10 V

t / s

i / m

A

i / m

A

ξ𝑡 / s

Page 18: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

18

図 3.1.9 温度変化に対する電荷移動電流とステップ電位の関係

3-1-4 まとめ

トルエン水素化反応においてトルエン還元反応の電子輸送に対する正確な電流値を測定評価した。結

果、測定電流は二重層容量電流とファラデー電流に分離する事が可能であり、言い換えるとトルエンの

水素化反応のファラデー電流成分を調べる事が可能であることが分かった。二相境界上の電極高さに注

目すると h = 10 mmにおいて飽和電荷移動電流はほとんど MEAのデータと同等で、この方法が MEAと比

較可能な測定であること等が分かった。トルエン直接電解水素化における最適な測定条件は電極に対し

て少なくとも 180分以上の吸着時間を与える事も分かった。

i / m

A c

m-2

-Pt E

CS

A

E / V vs. RHE

Page 19: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

19

3-2.カソード膜接合体の開発

3-2-1 はじめに

先行研究として、基本構成もしくは要素レベルの研究において、これまで固体高分子形燃料電池の構

造を用いる事で、液相のトルエンを電気化学的に還元する事が可能であることが報告されているが、触

媒層の構造や大型化を見据えた系統的な研究開発は行われていない 8)。本プロジェクトで、我々は将来

的に電極面積を数 m2級レベルに大型化する目標を見据え、カソード側には固体高分子形燃料電池の電極

膜接合体の作製技術、アノード側には工業電解等の大型電解槽を応用することで電解技術の開発を目指

している。本項ではカソード膜接合体の開発において 25 cm2級膜型ハーフセル、電極面積 10 cm2級お

よび 100 cm2級電解槽を用いて実験を行った。

一般的に電解液に有機物が混入することにより、アノード電極では酸素発生電極の過電圧が上昇し、

耐久性が低下することが報告されている 14)。トルエン電解用の電解槽では、その構造上カソード側のト

ルエンをはじめとする有機物がアノード側へプロトン交換膜(PEM)を介して透過する可能性があり、ト

ルエンの PEM透過に関する研究が重要になる。PEMの基礎物性評価は二室型ガラスセルを使用した。尚、

本研究では PEMを用いたトルエン透過度に関する研究を行っているが、本実験で得られる結果は、カソ

ード触媒層内のイオノマー開発も包含しており、触媒層内の物質輸送の最適化も視野に入れている。

本項では、カソード膜接合体の電荷・物質移動改善を目的として具体的に以下の評価を報告する。

a) 25 cm2級膜型ハーフセル

・カソードの基本特性評価

Pt/Cと PtRu/C触媒の比較について温度特性の評価と共に検討した。

b) 10 cm2級電解槽

・電解質膜の親水化の影響評価

ナフィオン®系の電解質膜の基材はフッ素樹脂系であるため本来は疎水性である。アノードで発生し

た酸素ガスが電解質膜に付着すると内部抵抗の増加と電流分布の乱れが生じてしまうため、親水化し

酸素ガスの付着を抑制することで電流分布の乱れを抑制し、分極を低減する事を目的として評価を行

った。

c) 100 cm2級電解槽

・白金触媒担持ガス拡散層(間接水素化触媒)

低トルエン濃度電解時(大型電極におけるカソード出口付近を模擬)にカソード副反応として発生す

る水素の発生量を低減する為、カーボンペーパー拡散層に白金を担持し発生水素をトルエンと反応させ

メチルシクロヘキサンへ変換させる間接水素化触媒として機能させることを目的とし、白金触媒担持ガ

ス拡散層の作製と評価を行った。100 cm2級電解槽を用いて間接水素化効果の確認および Pt担持量の変

化に対する影響を調査した。

Page 20: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

20

d) 二室型ガラスセル

・プロトン交換膜の基礎評価

トルエン電解水素化に対する機能最適化の為のプロトン交換膜およびイオノマーの性能制御の基礎

データとするためプロトン交換膜のトルエン透過度の温度、EW(等価質量)およびポリマー側鎖長依存

性の評価を行った。

3-2-2 実験方法

a) 膜型ハーフセルを用いた実験評価

カソードに Pt/C または PtRu/C、アノードに Pt/C を用いた膜電極接合体(MEA)を用い、カソードにト

ルエン(TL)または TL-メチルシクロヘキサン(MCH)、アノードに加湿水素を供給して電気化学的に評価し

た。アノードの水素酸化反応は非常に速いので、カソード触媒層の特性が評価できることから膜型ハー

フセルと称する。膜型ハーフセルの構造を図 3.2.1に示す。

固体高分子形燃料電池の MEAと同じでパーフルオロカーボンスルホン酸系膜の両面に貴金属担持カー

ボン触媒層を接合した構造であり、触媒層内はアイオノマーによりプロトン伝導を確保する。また、膜

型ハーフセルの実験システムを図 3.2.2に示す。

図 3.2.1 膜型ハーフセル構造

図 3.2.2 膜型ハーフセル実験システム

Page 21: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

21

燃料電池評価システムに TL-MCH 循環系を追加したシステムで、燃料電池評価システムから加湿水素

を供給した。燃料電池評価システムは単セルの二つの電極にあわせて二系統からなり、系統のそれぞれ

は、ガス供給系、バブラー、単セル、セル出口ガスの冷却器と気液分離トラップからなる。ガスライン

は酸素または窒素ガス供給系と水素ガス供給系の二系統がありそれぞれの系統の流量は FICにて流量制

御する。それぞれの系統のセルの出口ガスはベントガスラインから系外に排出する。水の給排水系統も

二系統あり、それぞれの系統は、バブラーへの純水供給と気液分離トラップからの排水の系外への排出

からなっている。また、二系統のセル出口ガスの冷却器での 10℃程度への冷却のための冷却水はチラー

により供給される。

MEA は触媒層をカーボンペーパー上にバーコーター法で調製したものを用いた。調製条件を表 3.2.1

に示す。触媒は PtRu/C(田中貴金属工業製 TEC61E54)もしくは Pt/C(田中貴金属工業製 TEC10E50E)を使

用した。

作製した MEA をセルホルダーに組み込みアノードを作用極、カソードを対極兼参照極として、サイク

リックボルタンメトリー(CV)測定、電気化学的インピーダンス(EIS)、及び電流掃引ボルタンメト

リー(LSV)で評価した。標準実験条件を表 3.2.2、電気化学測定条件を表 3.2.3に示す。

表 3.2.1 MEA 調製条件

Page 22: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

22

b) 小型電解槽を用いた実験評価(標準条件)

小型電解槽を用いた膜電極(カソード)電極接合体評価は、アノードにデノラ・ペルメレック(株)よ

り提供されたエキスパンドメタル基材の酸素発生用アノード DSAⓇを用いて行った。アノード側に1M硫

酸水溶液を供給、カソード側に 100%トルエンまたはメチルシクロヘキサンにより希釈した 50、10%ト

ルエン溶液を供給して電気化学評価を行った。電気化学測定は電流掃引ボルタンメトリー(LSV)、電気

化学的インピーダンス(EIS)、定電圧電流測定(CA)を行った。

電解時の膜電極接合体内の構造、機能を図 3.2.3に示す。固体高分子形燃料電池の MEAと同様、パー

フルオロカーボンスルホン酸系膜の片面に貴金属担持カーボン触媒層を接合した構造であり、触媒層内

はアイオノマーによりプロトン伝導を確保している。

小型電解槽の標準仕様を表 3.2.4、標準実験条件を表 3.2.5、電気化学測定条件を表 3.2.6 に示す。

また、カソード出口ラインを二系統設け、電解水素化中にカソードから排出されたトルエン/メチルシ

クロヘキサンを取り出し混入している水素ガスの発生量を測定し電流効率を求めた。図 3.2.4 に電流

効率測定時の実験システムを示す。

表 3.2.2 標準条件

Measurement Electrode Gass FlowNml/min Cell Bubbler Upper bubbler Entrance Line1 Entrance Line2 Entrance cell Cell outlet

Cathode Nitrogen 100 120 120 120Anode Hydrogen 100 120 120 120

Cathode Nitrogen 100 120 120 120Anode Hydrogen 100 120 120 120

Cathode Toluene 5*2) - - - - - -

Anode Hydrogen 100 cell +20*1) cell +20*1) 120 120 cell +20*1) 120

Cathode Nitrogen 100 120 120 120Anode Hydrogen 100 120 120 120

Cathode Toluene 5*2) - - - - - -

Anode Hydrogen 100 cell +20*1) cell +20*1) 120 120 cell +20*1) 120

*1) セル温度80℃の時のみ+15℃*2) 液循環ポンプ(プランジャーポンプ)循環量

cell +20*1)

40,50,60,70,80

cell +20*1) cell +20*1)

cell +20*1) cell +20*1) cell +20*1)

cell +20*1) cell +20*1)

LSV

40,50,60,70,80

40,50,60,70,80

cell +20*1)

Temperature condition ℃

CV40,50,60,

70,80

EIS

40,50,60,70,80

表 3.2.3 電気化学測定条件

Measurement Electrode GassLower limit Upper limit Sweep rate Start voltage Sumpling rate Averaging cycle

V V mv/sec V sumple/sec

Cathode NitrogenAnode Hydrogen

AC voltage Averaging

V 105~0.1HZCathode NitrogenAnode Hydrogen

Lower limit*2) Upper limit Sweep rate Start voltage Sumpling rate Averaging

V V mv/sec V sumple/sec

Cathode NitrogenAnode Hydrogen

Cathode TolueneAnode Hydrogen

*3)電圧が下限値に達する前に電流値が-5Aの

  下限電流値になり、測定停止になる。

EIS

3

-0.20 *3) 0.20 1 0.2(down) 10 3

LSV -0.20 *3) 0.20 1 0.2(down) 10

3 5

0.005 4

CV0.05 0.8 50 0.5(up) 10

Electrochemical condition

Page 23: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

23

図 3.2.3 電解時の膜電極接合体および周辺の構造、機能

表 3.2.5 小型電解槽の標準運転条件

Measurement Electrode Liquid Flow rate / ml min-1

Temperature / oC 10 cm2 100 cm2

EIS Cathode TL/MCH 5 10

60 Anode H2SO4 10 10

LSV Cathode TL/MCH 5 10

60 Anode H2SO4 10 10

表 3.2.4 小型電解槽の標準仕様

Electrolyte Nafion® 117, 1M(= mol dm-3)H2SO4

Anode

Catalyst IrO2-Ta2O5系 DSA®

Loading amount 1.2 mg cm-2

Substrate Titanium

Cathode

Catalyst PtRu/C(TEC61E54) (Pt 1mol:Ru 1.5 mol)

Loading amount 0.5 mg/cm2

N/C 0.8

GDL SGL 10BC

COATING

METHOD Barcoater

Electrode surface area 11.3 cm2, 100 cm2

Page 24: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

24

図 3.2.4 電流効率測定の実験システム

c) 電解質膜の親水化の影響評価

以下の二種類の親水化法

i) エメリーペーパー2000番を使用して膜アノード側を研磨

ii) 酸化ジルコニウム(TECNAN ZrO2)の膜アノード側への被覆

を電解質膜のアノード側に施し、影響を評価した。

d) 白金触媒担持ガス拡散層の作製と評価

白金の拡散層への担持方法を以下に示す。はじめに適量の 1-プロパノール、塩化白金酸を混合し、前

駆体溶液を作製した。塩化白金酸は全ての白金イオンが還元され、拡散層へ担持された場合の担持量が

0.5、0.1、0.02 mg cm-1となるよう仕込み量を決定した。作製した前駆体溶液にカーボンペーパー(10BC,

表 3.2.6 小型電解槽の電気化学測定条件

Measurement

Electrode Liquid

Electrochemical condition

EIS

AC amplitude / V Averaging

105~0.1 / HZ

Cathode TL/MCH 0.01 5

Anode H2SO4

LSV

Initial

Voltage /

V

Final

voltage /

V

Sweep

rate /

mV s-1

Sampling

rate /

Sample s-1

Averaging

Cathode TL/MCH 0.6 2.5*1) 4 10 3

Anode H2SO4

CA

Voltage / V Sampling rate /

Sample s-1 Averaging

Cathode TL/MCH 0.6, 1.0, 1.3, 1.5, 1.6,

… 2.4, 2.5*1) 1 3

Anode H2SO4

*1)電圧が上限値に達する前に電流密度が 0.5 A cm-2になった場合測定停止

Page 25: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

25

SGL Carbon)を浸し、60℃で 10 min 窒素雰囲気下で乾燥を行った。その後、NaBH4水溶液にガス拡散層

を 2 時間浸漬し、還元により白金担持した。最後に超純水に一晩浸漬洗浄し、大気中で自然乾燥させた。

e) 電極面積 10および 100 cm2級電解槽

図 3.2.5に電極面積 10 cm2級電解槽および 100 cm2級電解槽の模式図を示す。電極面積 10 cm2級電解

槽に対し 100 cm2電極面積ではバイポーラー型、アノード側 Tiフェルトによる加圧構造の特徴を持つ電

解槽となっている。

図 3.2.5 電極面積 10 cm2級セル、100 cm2級バイポーラー模式図

f) 二室型ガラスセルを用いたプロトン交換膜の基礎評価

実験には電解膜(PEM)を挟むことができる二室型セルを用いた。前処理として 1.0 M (=mol dm-

3)硫酸(WAKO)に室温で 2 時間浸漬し、膜中のイオンがすべてプロトンに置き換わっている状態にした

Nafion®膜(DuPont)およびAquivion®膜(Solvay)をPEMとして用いた。セルの片方にはトルエン(Aldrich、

99.8%)を、もう一方には 1.0 M硫酸をそれぞれ 150 mlずつ入れ、セル内の濃度が均一になるようにマ

グネチックスターラーを用いて撹拌を行った。所定の時間ごとに硫酸側の溶液を採取し、水系と有機系

の両者に親和性のある N,N-ジメチルホルムアミド(DMF, WAKO)を溶媒として採取した溶液に対し体積

比で 1/5の量を混合、振とうすることで溶解度の影響を排除したものをサンプルとした。このサンプル

より、PEMを介して硫酸側に透過したトルエンの濃度を

高速液体クロマトグラフィー(島津製作所(株))を用

いて定量した。トルエンの PEMの透過度は、フィックの

法則より導かれる式(式 3.2.1)ならびに物質輸送式(式

3.2.2)から導かれる式(式 3.2.3)中の拡散係数と分

配係数の積𝐷𝐻を見かけの拡散係数として評価を行っ

た。

𝐶(𝑡) : 硫酸中のトルエン濃度

𝐶𝑇𝐿 : 硫酸中のトルエン溶解度

𝐽 : 流束 𝑆 : 膜の透過面積

𝐷 : 膜中のトルエンの拡散係数

𝐻 : 硫酸中と膜中のトルエンの分配係数

𝑉 : 硫酸の体積 𝑑: 膜厚 𝑡 : 時間

𝐶max : 硫酸中のトルエンの飽和溶解度

Page 26: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

26

𝐽 = −𝐷𝐻𝐶(𝑡) − 𝐶𝑇𝐿

𝑑 式 3.2.1

𝑉𝜕𝐶(𝑡)

𝜕𝑡= 𝐽𝑆 式 3.2.2

𝐶(𝑡) = 𝐶𝑚𝑎𝑥 {1 − exp (𝑆𝐷𝐻

𝑉𝑑𝑡)} 式 3.2.3

実験温度はウォーターバスにより 25℃から 70℃に制御した。また、Nafion®膜として N117(厚さ: 183

μm、EW: 1100)、NRE212(厚さ: 50 μm、EW: 1100)、Aquivion®膜として E87-05S(厚さ: 54μm、EW:

870)、E98-05S(厚さ: 53μm、EW: 980)を用い、膜種ならびに EWの違いによるトルエンの透過度を評

価した。Nafion®膜と Aquivion®膜の主な違いとして、ポリマーの側鎖構造の長さが挙げられる。その構

造を図 3.2.6 に示す。また、各膜の物性をまとめたものを表 3.2.7 に示す。Nafion®膜は側鎖が長い構

造(Long Side Chain: LSC)であるのに対し、Aquivion®膜は側鎖が短い構造(Short Side Chain: SSC)

である。具体的には、側鎖構造のフルオロエーテル基の有無が側鎖の長さに関係している。

図 3.2.6 使用したプロトン交換膜の構造

表 3.2.7 使用したプロトン交換膜の物性

3-2-3 結果及び考察

a) Pt/Cと PtRu/Cの比較

Pt/Cと PtRu/C触媒の LSV を図 3.2.7に示す。PtRu/C は低電流密度領域から高電流密度領域まで Pt/C

より還元電流密度が高く、高活性であった。図 3.2.8 にトルエン未導入の Pt/Cと PtRu/C触媒の加湿窒

素雰囲気でのサイクリックボルタモグラムを示す。サイクリックボルタモグラムの水素脱離波の電気量

から求めた電気化学的表面積(ECSA)は Pt/Cが 13432 cm2 mg-1、PtRu/Cが 5146 cm2 mg-1で Pt/Cの方が約

2.6 倍であり PtRu/Cの方が単位面積当たりの活性も高い。

Page 27: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

27

図 3.2.9に Pt/Cと PtRu/C のセルの 0 V vs. RHEでの還元電流の温度依存性を示す。Pt/Cを用いたセ

ルは温度が高くなるに従って電流密度が高くなった。一方、PtRu/Cを用いたセルは比較的温度依存性が

小さく、約 60℃で還元電流が最大になった。PtRu/C の方がトルエンの吸着が弱いことが高活性の原因

であり、高温側では十分にトルエンが吸着しないため、比較的低い温度で最大の活性を示すと考えられ

る。

図 3.2.8 Pt/Cと PtRu/Cの加湿窒素雰囲気でのサイクリックボルタモグラム

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

i/ m

A c

m-2

E / V vs. RHE.

Pt-Ru/C

Pt/C

cell:60℃

図 3.2.7 Pt/Cと PtRu/Cのトルエンの電解還元の LSV

-200

-160

-120

-80

-40

0

-0.04 0 0.04 0.08

i/ m

A c

m-2

E / V vs. RHE.

Pt-Ru/C

TL100%

cell:60℃iR-Free

Pt/C

Page 28: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

28

b) 電解質膜の親水化の影響評価

図 3.2.10に電解質膜の親水化による内部抵抗と分極曲線を示す。未処理の膜は 350 mA cm-2付近か

ら槽電圧の乱れが発生した。エミリーペーパーで親水化したものは高電流まで槽電圧は安定しており

低電流域から槽電圧は低下した。エミリーペーパー処理にさらに酸化ジルコニウムを被覆したもの

は、エミリーペーパーのみの処理よりもさらに槽電圧は低下した。親水化膜は酸素ガスの付着抑制と

気泡による反応集中の抑制による効果だと考えられる。

図 3.2.10 電解質膜を親水化処理したときのトルエン電解水素化電解槽の分極曲線と

内部抵抗

0.6

1.0

1.4

1.8

2.2

2.6

3.0

3.4

0 100 200 300 400

U /

V

i / mA cm-2

1.0

2.0

3.0

Rs

/ Ω

cm

2

エミリーペーパー+ZrO2

TL100Nafion212Spacer thickness: 25 μmTemperature 60℃a)セル電圧

b)内部抵抗

エミリーペーパー

未処理

図 3.2.9 Pt/C及び PtRu/Cを用いたセルの還元電流の温度依存性

1.6

1.7

1.8

1.9

2.0

2.1

2.2

2.8 2.9 3.0 3.1 3.2 3.3

log(

i@

0v

/ m

A c

m-2)

1000T-1/K-1

θ /℃80 70 60 50 40

PtRu/C

Pt/C

Page 29: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

29

c) 白金触媒担持ガス拡散層の作製と評価

図 3.2.11 に拡散層への白金担持量を変化させた電解膜の 10%TL における LSV カーブを示す。0.4 A

cm-2におけるセル電圧は、非担持の拡散層に対し 0.5 mg cm-2ではわずかに低減、0.1および 0.02 mg cm-

2では増加し、白金担持量に対して系統的な結果は得られず、ばらつきの多い傾向となった。このばらつ

きは他の測定条件膜での測定誤差より大きく、原因の解明が必要であると考えられる。しかし、本結果

は少なくとも、白金担持の有無、白金担持量増加とセル電圧増加の相関関係は認められなかった。

図 3.2.12 に拡散層への白金担持量を変化させた電解膜の 10%TL における電流効率を示す。結果、非

白金担持拡散層と比較して、白金担持量 0.5、0.1および 0.02 mg cm-2の試料において明確な電流効率

向上効果が確認された。また白金担持量を 0.02 mg cm-2まで減少させても電流効率向上効果は持続され

ている結果となった。これは、白金の担持量は少なくとも 0.02 mg cm-2までは低減可能であり、効果は

十分機能するとともに、それ以上担持量を増加させても間接水素化触媒として Pt が有効利用されてい

ないと考えられる。

図 3.2.11 拡散層への白金担持量を変化させた電解膜の 10%TLにおける LSVカーブ

図 3.2.12 拡散層への白金担持量を変化させた電解膜の 10%TLにおける電流効率

Page 30: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

30

d) 二室型ガラスセルを用いた実験評価

図 3.2.13 に各膜を用いたときの 60℃における硫酸内トルエン濃度の時間変化を示した。硫酸中のト

ルエンの濃度に関して、NRE212 と E98-05S が同程度で高く、次に E87-05S、N117 の順に小さくなった。

N117の濃度が小さいのは膜厚が大きくなった影響であると考えられる。その他の膜の結果から、トルエ

ンの透過と EWの値との間に相関があることが示唆された。図 3.2.14に各膜を用いた時のトルエンの見

かけの拡散係数の温度依存性を示した。この結果から、どの膜に関しても同様の正の温度依存性がある

事が分かった。近似直線の傾きから算出したトルエンの透過の活性化エネルギーは、三種の膜いずれで

もおよそ 23 kJ mol-1であった。また、トルエンの透過現象に関して、Nafion®膜と Aquivion®膜との間

に違いがあり、Aquivion®膜の方がトルエンの見かけの拡散係数が小さくなることが明らかとなった。

以上の結果から膜構造において側鎖が短いことは、膜の Water Uptakeの低下を導き、膜内の親水領域

の拡大につながると考えられる。文献値より、今回使用した N117、E87-05S、E98-05Sの Water Uptake

は、それぞれ 35%、42%、34%であった 15-17)。また、EWの値が小さいことは、膜の親水部の酸性度の

上昇につながる。つまり、図 3.2.13において、E98-05Sと N117を比較した際、Water Uptakeはほぼ同

じであり EW が小さいことが、EW の違いがトルエンの見かけの拡散係数、つまり透過度の減少に関連す

ると言える。また、E98-05S と E87-05Sを比較した際、Water Uptakeに起因する親水領域の大きさも EW

に起因する酸性度も E87-05S が大きくなり、相殺されたことが示唆される。そのため、トルエンの見か

けの拡散係数に大きな違いは見られなかったと言える。

以上より、トルエンの透過を抑制する PEMには、EWの値が小さく、側鎖が短い SSC構造を持った膜が

優位であると言える。

図 3.2.13 各膜の 60oCにおける硫酸内トルエン濃度の時間変化

Page 31: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

31

図 3.2.14 各膜のトルエンの見かけの拡散係数の温度依存性

3-2-4 まとめ

カソード膜接合体のアノード側を親水化することで酸素の気泡が付着を抑制でき、高電流密度まで

安定した電解が可能となった。ガス拡散層に白金を担持する事で、カソードで副生成する水素気泡と

トルエンの化学反応を促進し、水素ガスを低減させる効果を確認するとともに少なくとも 0.02 mg cm-

2までは Pt量は低減可能であった。電解膜のトルエン透過試験により、トルエンの透過を抑制する為

には、EWの値が小さく、側鎖が短い SSC構造を持った膜が優位である事が分かった。

3-2-5 今後の課題

白金担持ガス拡散層による間接水素化触媒は直接水素化触媒と組み合わせて、更に構造最適化が可

能であると考えられる為、試料作製と効果検証を行う。電解膜評価は電解槽設計および触媒層設計の

基礎データとして活用して効果の検証を行う。

Page 32: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

32

3-3.酸素発生電極の開発

3-3-1 はじめに

トルエンの電解水素化の対極は水系電解質の酸素発生反応である。工業電解の気体発生用電極では、

電子伝導性、触媒活性、耐久性のほか、気泡の脱離が容易で、発生気泡が電流や物質移動の抵抗となら

ないように工夫される。電極構造はそれぞれの用途に応じて物質移動抵抗の減少、構造体としての強度

の確保、電極内のオーム降下の減少、電流分布を均一にさせる構造などを配慮して設計される 18)。

工業電解の気体発生用電極の要件をある程度満たす電極として、チタンのような電極基体の上に白金

族金属、導電性酸化物などの触媒となる材料をコーティングした複合材料電極が用いられる。

表 3.3.1に、硫酸中での白金族元素を酸素発生用アノードとして用いた時の単位通電量あたりの触媒

の消耗量である損耗原単位および酸素発生触媒能の指標である交換電流密度を示す。交換電流密度 iO2o

は大きい方が触媒活性は高く、過電圧が低いことを意味する。酸素発生の過電圧は Ru<Ir<Rh<Pd<Pt の

順に大きく、損耗量が小さく触媒能が高い IrO2が候補材料になる 19)。

電極の耐久性は、共存物質や反応条件の変化によって大きく影響を受ける。表 3.3.2は 1 Mの硫酸と

1 M の有機物との混合溶媒における白金の消耗原単位を求めた例である 19)。酸素発生電極は電解メッキ

の対極としても用いられており、この分野でもメッキの平滑剤として添加される有機物が電極の活性低

下並びに劣化加速の原因となることが知られている。本開発のトルエンの電解水素化では陽イオン交換

膜を隔膜としてカソード側にトルエン-メチルシクロヘキサン、アノード側に硫酸を供給するため、ア

ノード側のトルエン-メチルシクロヘキサンがカソード側に透過すると考えられる。したがって、本開

発の酸素発生電極は、トルエン-メチルシクロヘキサンならびにこれらの反応副生成物が共存する条件

で活性及び耐久性を満足しなければならない。

現在、高耐久性アノードとして IrO2-Ta2O5系の電極触媒が実用化されている。本研究は酸素発生電極

の活性及び耐久性に関して、IrO2-Ta2O5系アノードの Ta 成分を Zr で置換した電極の活性および耐久性

を検討した。

表 3.3.1 白金族元素のアノード特性 19)

アノード損耗量

(40℃, 1 M H2SO4, 1 A cm-2) 電極触媒能

酸化物 損耗原単位/mg Ah-1

酸素発生反応

(50℃, 1 M H2SO4)

log(iO2o/A cm-2)

RuO2 10000 -4.2

Rh2O3 6 -6.6

PdO 10000 -7.7

IrO2 0.1 -5.2

PtO 3 -8.1

Page 33: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

33

表 3.3.2 酸素発生アノードとしての白金電極の損耗に及ぼす有機物質の影響 19)

(硫酸 1 M + 有機物 1 M, 40℃, 1 A cm-2)

添加有機物 損耗原単位/mg Ah-1 損耗倍率

純硫酸(基準物質とする) 5 1

アセトニトリル 900 180

メタノール 150 30

ホルムアルデヒド 140 28

ギ酸 110 22

アセトン 250 50

ジメチルホルムアミド 120 24

ジメチルスルホキシド 40 8

アンモニア 35 7

ピリジン 250 50

テトラヒドロフラン 100 20

ジオキサン 35 7

3-3-2 実験方法

a) 電極作製法

H2IrCl6・6H2O、Ta(C4H9O)5、Zr(C4H9O)4の n-ブタノール溶液を前駆体溶液とした。表面研磨及び 20 wt%

HCl 中で 20 分間のエッチング処理により前処理を施した Ti 板に前駆体溶液を塗布し、100℃で 10 分間

乾燥し、空気中 500~700 ℃で 10分間熱分解処理をした。この操作を 20回繰り返し、最後に熱分解温

度と同じ温度で熱処理を 1 時間行った。

b) 活性評価

作用極に作製した電極、参照極に可逆水素電極(RHE)、対極には Ptコイルを用いた三電極式セルで、1

M H2SO4溶液及び TL飽和の 1 M H2SO4溶液を電解質として電気化学測定を行った。実験温度は 60 ℃とし

た。前処理として 0.3~1.1 V vs. RHE、200 mV s-1で Cyclic Voltammetry(CV)を行った後、1.2~2.0 V

vs. RHE、5 mV s-1で Slow Scan Voltammetry(SSV)を行い、酸素発生過電圧を評価した。また、保持電

位を 1.5~1.8 V vs. RHE、AC振幅を 10 mV、0.1~20 kHzの周波数域で交流インピーダンス測定を行

い、電荷移動抵抗 Rct、半円(Rct)の虚軸頂点における周波数を fbとし、以下の式 3.3.1 により電気二

重層容量 Cdlを算出した。

𝐶𝑑𝑙 = 1 2𝜋𝑅𝑐𝑡𝑓𝑏⁄ 式 3.3.1

またインピーダンス測定における実軸高周波切片を溶液抵抗 Rsolとすると、酸素発生反応では発生す

る気泡によりRsolが増加するため、Rsolが電流に対して一次であるとして酸素発生過電圧をIR補正した。

Page 34: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

34

c) 寿命評価

電極の寿命は 400 mA cm-2の定電流電解試験を、作用極に作製した電極、対極に白金を用いた二電極

式セルで行い、二電極間の電圧の時間変化を測定し評価した。電解質は飽和量のトルエン及びトルエン

の酸化体であるベンジルアルコール飽和の 1 mol l-1 H2SO4、実験温度は 60℃とした。尚、電極の寿命は

二電極間の電圧が 4 Vに達した時間として定義した。耐久試験の途中で一定時間毎に作用極を取り出し、

蛍光 X線膜厚計による触媒層中の Ir量の測定および電気化学測定を行った。

3-3-3 結果及び考察

a) 構成元素の検討

図 3.3.1に 500℃で熱分解被覆した IR補正後の IrxTayZrz-oxide/Tiの 1 mol l-1 H2SO4及びトルエン

飽和 1.0 mol l-1 H2SO4中での分極曲線を Ir50Ta50-oxide/Ti と比較して示す。実験温度は 60℃とした。

トルエンの有無に関わらず、Zr 成分を添加することで電流密度が大きくなった。図 3.3.2 に Zr 成分比

に対する 1.6 V vs. RHEおよび 1.7 V vs. RHEにおける電流密度の関係を示した。図より、触媒中の Zr

成分が増えるにしたがって電流密度は増加し、Zr濃度が 30 mol%のとき最大値になった。また、トルエ

ンの添加による電流密度の減少は Zr 成分比が高いときの方が顕著であった。また、インピーダンス測

定より求めた電気二重層容量は Zr成分に増加に伴い大きくなり、20 mol%以降はほぼ一定の値を取った。

これらの結果から、Zr成分の添加は電極の実表面積を増加に寄与し、添加量が多くなるとトルエンの吸

着による性能低下を促進させてしまうことが考えられる。

図 3.3.1 トルエン飽和 H2SO4(実線)並びに H2SO4(破線)中における Ir酸化物触媒電極の 60℃での

分極曲線

Page 35: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

35

図 3.3.2 トルエン飽和 H2SO4(実線)並びに H2SO4(破線)中における Zr成分比と 1.6V(□)および

1.7 V(○)における電流密度の関係

図 3.3.3 に IrxTayZrz-oxide/Ti の耐久性評価試験の結果として作用極-対極間の二電極間電圧の経時

変化を示した。実験温度は 60℃とした。図より Zr 成分を添加することで電極の寿命は短くなった。ま

た Zr 添加電極の中でも、Zr 成分比が高い電極の方が 3 V 到達時間は短い結果であった。図 3.3.4 に

Ir50Ta50-oxide/Ti と Ir50Ta20Zr30-oxide/Tiの寿命評価試験中の各成分の初期量に対して残存している割

合の経時変化を示した。図より、Zr 添加電極は Zr 無添加電極と比較して各触媒成分の消耗が大きかっ

た。

図 3.3.3 Ir50Ta10Zr40-oxide/Ti(a), Ir50Ta20Zr30-oxide/Ti(b), Ir50Ta30Zr20-oxide/Ti(c), Ir50Ta40Zr10-

oxide/Ti(d), Ir50Ta50-oxide/Ti(e)のセル電圧の経時変化

Page 36: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

36

図 3.3.4 Ir50Ta20Zr30-oxide/Ti および Ir50Ta50-oxide/Tiの触媒層中の Ir(□),Ta(○), Zr(△)成分の

重量の経時変化

図 3.3.5 に Zr 仕込組成比(IrXTaYZrZ-oxide/Ti)に対する Ir,Ta, Zr 成分の通電電気量あたりの消

耗量を示した。図より、Zr 成分比の高い電極の方が触媒の消耗速度が大きかった。また、溶解による消

耗だけではなく、物理的な剥離が生じた。図 3.3.6にインピーダンス測定より算出した各電極の被膜抵

抗の経時変化を示した。Ir50Ta50-oxide/Ti に比べて Zr 成分を添加した電極の被膜抵抗は上昇速度が大

きく、また Zr成分比が高いほど被膜抵抗が短時間で上昇した。この被膜抵抗の増大は Ti基板が腐食し、

基板と触媒層の中間に絶縁性の Ti 酸化物が形成されたためと考えられる。この腐植層の形成により、

触媒の剥離が起こったと考えられる。

以上の結果より、Ta 成分を Zr 成分に置換することで電極の実表面積を向上させ、活性が上がり、Zr

成分が 30 mol%で最も高活性である事が分かった。一方で電極の寿命は Zr成分を加えることで低下し、

Zr 成分比が高いほど寿命は短くなった。また、Zr 添加電極は触媒消耗が大きく、触媒層の剥離が見ら

れた。これは、Zrの添加により、電解液が多孔質な触媒層を透過して基板を腐食させ、触媒層と基板の

密着性が低下してためと考えられる。これらのことから、Zr添加電極は基板の腐食を抑える処理を施す

ことで、高活性かつ高耐久な電極となる可能性が示唆された。

図 3.3.5 Zr仕込組成比(IrXTaYZrZ-oxide/Ti)に対する Ir(□),Ta(○), Zr(△)成分の通電電気量あ

たりの消耗量

Page 37: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

37

図 3.3.6 Ir50Ta10Zr40-oxide/Ti(○), Ir50Ta20Zr30-oxide/Ti(□), Ir50Ta30Zr20-oxide/Ti(△),

Ir50Ta40Zr10-oxide/Ti(◇), Ir50Ta50-oxide/Ti(●)の被膜抵抗の経時変化

3-3-4 まとめ

IrxTay-oxide/Ti電極において Ta成分を Zr成分に置換することで電極の実表面積を向上させ、活性

が上がり、Zr成分が 30 mol%で最も高活性である事が分かった。Zr添加電極は触媒消耗が大きく、触媒

層の剥離が見られた。

3-3-5 今後の課題

IrxTay-oxide/Ti電極において Zrとは別の第三成分の元素の検討を行うとともに活性、耐久性試験を

行う必要がある。中間層(IL)を導入した熱分解被覆電極に関しても引き続き耐久性試験の評価を行う必

要がある。

Page 38: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

38

3-4.小型電解槽の開発

3-4-1 はじめに

工業電解の分野においてこれまで隔膜を介して有機電解と水溶液系の電解を同時に行った例は無い。

また、従来のトルエン-メチルシクロヘキサン系などの有機ハイドライドの水素化プロセスは、水蒸気

改質などの化学プロセスや水電解で水素製造し、水素化反応器でトルエンを水素化してメチルシクロヘ

キサンにする二段階工程であるが、直接電解水素化では水の電気分解により発生したプロトンをトルエ

ンに直接付加することでプロセスの省エネルギー化および簡略化が期待できる。本項では電極面積 10

cm2および 100cm2の小型電解槽を用いた以下の性能評価を報告する。

a) 電極面積 10 cm2級電解槽

・トルエン濃度の影響

・運転温度を変化させた際の電流効率と分極特性の評価

b) 電極面積 100 cm2級電解槽

・カソード流路構造の違いによる電解性能への影響評価(および圧損評価)

・アノードおよびアノード支持体構造の最適化

・連続単流操作運転における流量と転化率の関係の評価

3-4-2 実験方法

以降、各電解槽を用いた各種性能評価に関して実験方法を記述するが、特に断らない限り実験条件は

「3-2-2 実験方法」において示した方法と同様とした。

a) 三極式小型電解槽

図 3.4.1に三極式小型電解槽のシステムを示す。Pt 線(田中貴金属工業)を可逆水素電極として参照

極とした。この電極を電解槽外のガラスセルに収め、ルギン管で電解槽と接続した。電解槽のアノー

ド極近傍のルギン管の先端とガラスセルの間はテフロンチューブで接続し途中にニードルバルブを配

置し、ガラスセルと電解槽間の液絡とした。電解槽、参照電極とも電解質は 1.0 mol L-1硫酸とした。

ルギン管の先端は液抵抗を小さくするためにアノードに近づけた。ルギン管の先端はテフロンチュー

ブまたは先端を絞ったガラス管とした。

Page 39: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

39

セル電圧 1.0, 1.3, 1.5~2.5 V で 5 min の定電圧測定でアノードおよびカソードの電極電位と電流を測定

し、定常となった最後の 2min の値を用いた。IR 補正には周波数域 0.1~100 kHz 交流インピーダンス測

定を用いた。ルギン管の先端をアノード近傍に設置したので、アノード電位は抵抗分極の影響をほと

んど受けず、カソード電位の測定値には抵抗分極が含まれると考え、電解槽の内部抵抗を用いてカソ

ード電位を補正した。

b) 運転温度を変化させた際の電流効率と分極特性の評価(10 cm2級電解槽)

電気化学測定はカソードに 10 mol%のトルエン、アノードに 1 mol dm-3の H2SO4を循環させた。10 mol%

のトルエンはワンパスでトルエン水素化電解を行う電解槽における出口付近を想定している。電解槽に

それぞれの溶液は供給する前にオイルバスを用い所定の運転温度まで加温した。運転温度条件は 40~

80℃まで 10℃刻みで測定を行った。

c) カソード流路構造の違いによる電解性能への影響評価(および圧損評価)(100 cm2級電解槽)

図 3.4.2に示す基本カソード流路構造である平行型、インターディジット型、サーペンタイン型およ

び多孔質体型の四種に関して、電気化学特性を評価した。多孔質体型流路は拡散層厚さ 420 µm(10BC)

のカーボンペーパーによって流路および拡散層の機能を果たす構成とし比較評価を行った。流路構造以

外の電解槽の仕様、運転条件、電気化学測定条件は表 3.2.4、表 3.2.5および表 3.2.6と同様とした。

図 3.4.1 三極式小型電解槽のシステム

Page 40: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

40

図 3.4.2 電解槽構造(a)と基本カソード流路構造(b)

d) アノードおよびアノード支持体構造の最適化(100 cm2級電解槽)

これまでの実験において電解槽運転時、電解質膜が膨潤する事で、図 3.4.3(a)左に示すようにアノー

ドの開孔部内に電解質膜が湾曲することによってカソード触媒の有効利用率が低下する事が懸念され

ていた。この課題を解決する為、本報告では図 3.4.4(b)に示すようなファインサイズのメッシュを採用

することにより図 3.4.3(a)右に示すように電解質膜の湾曲を抑制する事が有効であると考え、評価を行

った。一方アノード支持体においては図 3.4.5(a)に示すような旧来の Ti webにおいては図 3.4.3(b)左

に示すように膜に対しての応力分布が不均一である事が懸念されていた。この問題を解決する為、全面

を熱圧縮して Ti web支持体(図 3.4.5(b))を採用することにより図 3.4.3(b)右に示すように膜への圧縮

応力を均一化させ、評価を行った。この熱圧縮 Ti web は電気伝導パスとなる内部 Ti繊維間の接触部が

融着されており、電気抵抗低減の効果も期待できる。尚、本実験はアノードおよびアノード支持体の構

造による効果以外の誤差要因を排除する為、膜‐カソード接合体は各条件間で交換せず、同一の試料を

使用し評価している。また、全ての測定条件でカソード拡散層は 3.2.2 d)の方法で作製した間接水素化

白金触媒を 0.02 mg cm-2担持した。

Page 41: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

41

図 3.4.3 ファインアノード(a)および熱圧縮 Ti web集電体(b)の効果

図 3.4.4 従来型メッシュ(a)およびファインメッシュ(b)アノード

図 3.4.5 非熱圧縮(a)および熱圧縮(b)Ti web

e) 連続単流操作運転における流量と転化率の関係の評価(100 cm2級電解槽)

本プロジェクトの将来的な最終開発目標である数 m2級電解槽は、コスト削減の面から分離や多段階設

Page 42: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

42

備が不要な単流操作が理想形態である。本実験では 100 cm2級電解槽において 0.4 A cm-2印加時に電解

槽入口から 100% TLを供給し、出口側で溶液を採取しガスクロマトグラフィーを用いて MCHへの転化率

を測定した。測定は流量を 10、5、2.5、1.0、0.5(もしくは 0.53)の五点を測定した。電流印加開始時

以降、電解槽内カソード室の溶液が入れ替わる時間を考慮して溶液採取の開始時間を前記流量に対しそ

れぞれ 10、20、40、120、240 minとした。

3-4-3 結果及び考察

a) トルエン濃度の影響(10 cm2級電解槽)

図 3.4.6は定電位試験時の電流密度と電極電位の関係を示す。なお電流密度は幾何面積当たり基準と

している。プロットは、丸形はトルエン濃度 100%を、三角形は 50%を、四角形は 10%を、菱形は 5%を示

す。IR補正はインピーダンス測定における高周波切片を用いた。トルエン濃度が変化してもアノード電

位にはほとんど影響は見られなかった。しかし、100 mA cm-2以上の高電流密度域ではカソード電位は濃

度が低くなるとともに電位下降が激しくなった。トルエン濃度が低くなるほど電極厚さ方向のトルエン

の濃度勾配が小さくなり拡散するトルエンが減る。そのため電極表面のトルエン濃度が低下して電位下

降が生じたのではないかと考えられる。

b) 運転温度を変化させた際の電流効率と分極特性の評価(10 cm2級電解槽)

図 3.4.7に横軸が幾何面積基準の電流密度、縦軸が電極電位の分極曲線を示す。なお、上部がアノー

ド、下部がカソードを示し、カソードは IR補正を行っている。点線で 60℃のアノードの理論電位(1.20

V vs. RHE)、およびカソードの理論電位(0.15 V vs. RHE)を示す。アノードの分極曲線は、運転温度が

高いほど過電圧が低下した。カソードの分極曲線は温度が低いほど急激な電位降下を生じ、拡散限界の

挙動を示した。これは温度が低くなるほど、電極厚さ方向に対してのトルエンの物質移動が減少し、物

質移動抵抗が増大したため、反応場にトルエンが供給できず拡散限界の挙動を示したと考えられる。

図 3.4.6 トルエン電解水素化電解槽の電流密度と電極電位の関係

Page 43: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

43

図 3.4.7 各運転温度における電流密度と電極電位の関係

図 3.4.8(a)(b)に横軸を幾何面積基準の電流密度の対数、縦軸が過電圧のターフェルプロットを示す。

ターフェル領域から外れた後の過電圧上昇を比較するとカソードの方が大きい挙動を示している。この

結果からアノードは活性化支配、カソードは物質移動支配の傾向があると考えられる。

図 3.4.8 各運転温度におけるターフェルプロット

図 3.4.9 は横軸が幾何面積基準の電流密度、縦軸が電流効率を示す。電流効率 95%及び 98%での各温

度での電流密度を比較すると、温度が高いほど電流密度が増加し 70℃で最大電流密度を示した。これは、

温度上昇することで、トルエンの粘性が減少しトルエンの物質移動が改善されたことが原因と考えられ

る。しかし、80℃は 70℃と比べて電流効率が減少した。この原因としてアノードからプロトンが透過す

る際に付随してくる随伴水がトルエンの拡散を阻害し、物質移動抵抗が増大した事が考えられる。

Page 44: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

44

図 3.4.9 各運転温度と電流効率

c) カソード流路構造の違いによる電解性能への影響評価(および圧損評価)(100 cm2級電解槽)

図 3.4.10に 100、50、10%TLにおける各流路の LSV カーブを示す。全てのトルエン濃度において多孔

質体流路が最も低いセル電圧の結果を示し、それ以降は平行≦インターディジット<サーペンタインの

順に上昇する結果であった。

図 3.4.11に 100、50、10%TLにおける各流路の電流効率を示す。100% TL では平行<インターディジ

ット<サーペンタイン<多孔質体の順に電流効率が向上し、特に多孔質体では電流密度 0.5 A cm-2まで

電流効率 100%を維持した。即ち、電流密度 0.5 A cm-2まで印加してもカソード出口から水素発生しなか

った。50%TL では平行、インターディジットおよびサーペンタインが大きく電流効率が低下した一方、

多孔質体では高効率を維持し 0.4 A cm-2においても電流効率 98%であった。TL10%でおいても多孔質体に

おけるこの優位性は維持されており、前年度報告で拡散層を三枚重ねた構成の多孔質体流路では他の流

路と比較し、低 TL 濃度における優位性はあまり顕著ではなかったのに対し、本実験で拡散層かつ流路

としてカーボンペーパー一を一枚構成にすることで多孔質体流路の性能が発現し、その効果を確認した。

表 3.4.1に各流路の流路パラメーターと圧損を測定した結果を示す。本実験で最も電気化学特性の優

れていた多孔質体は 78 kPa であり、極めて圧損値の高いサーペンタインを考慮しても比較的高い数値

であった。しかし本測定は 10 ml min-1での値であり、後述の 3.4.3 c)項で示すように単流操作システ

ムにおいては流量を更に下げる必要がある為、それに伴い圧損も大幅に低下することが考えられる。

図 3.4.10 100、50、10%TLにおける各流路の LSVカーブ

Page 45: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

45

図 3.4.11 100、50、10%TLにおける各流路の電流効率

表 3.4.1 各流路の流路パラメーターと圧損

d) アノードおよびアノード支持体構造の最適化(100 cm2級電解槽)

図 3.4.12 にアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する LSV カーブの結果を示す。従来のア

ノードメッシュ孔かつ非熱圧縮 Ti web支持体において 0.4 A cm-2におけるセル電圧は 2.11 Vであった

が、ファインアノードを適用することにより 1.91 Vまで低減し、さらに熱圧縮 Ti webを適用すること

により 1.80 V まで低減した。これはファインアノードと熱圧縮 Ti webがそれぞれ 0.20 V および 0.11

V の大幅なセル電圧低減できる機能を持っていることを表している。これらの結果はすべて運転温度

60℃における結果であるが、70℃に上げるとセル電圧はさらに低減し 1.76 Vとなった。

図 3.4.13に 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率の結果を示

す。従来のアノードメッシュ孔かつ非熱圧縮 Ti web 支持体に対し、ファインアノードと熱圧縮 Ti web

を適用することで電流効率が向上することが分かった。

これらの結果は図 3.4.3(a)に示した様な電解質膜の湾曲防止によるカソード触媒の有効利用率の向

上および膜への圧縮応力を均一化が機能し、電気化学特性向上に繋がったと考えられる。

Page 46: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

46

図 3.4.12 アノードおよびアノード支持体構造の変化に対する LSV カーブ

図 3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率

e) 連続単流操作運転における流量と転化率の関係の評価(100 cm2級電解槽)

図 3.4.14に 100%TL供給、0.4 A cm-2印加時の連続単流操作運転における流量と転化率およびセル電

圧の関係を示す。連続単流操作運転において一定電流(密度)を印加した場合、電流値、トルエンの入

口から出口まで流れるのにかかる時間(カソード室内の体積と流量から算出)、イオン価数に伴う反応

電子数からファラデーの法則により転化率の設定値が流量の関数として算出される。図 3.4.14 におけ

る点線は電流効率 100%とした場合の設定転化率(計算値)を表している。一方、従来型アノード/非熱

圧縮 Ti web/バーコーター法/N/C=0.3/触媒 0.5 mg cm-2およびファインアノード/熱圧縮 Ti web/

バーコーター法/N/C=0.3/触媒 0.5 mg cm-2の構成に対する測定転化率は両条件共に設定転化率ライン

に対しほとんど一致しており、計算上の転化率が 100%となる流量 0.5 ml min-1付近において測定転化率

はそれぞれ 95および 92%となった。これらの結果は現状の 100 cm-2電極面積、0.4 A cm-2条件における

TL-MCH転化率の評価基準に対してはシステムがほとんど完成していることを示す。さらに将来の実用化

Page 47: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

47

による電解槽大型化を視野に入れた場合、本結果は連続単流操作運転でのシステム設計の可能性に対し

て基盤技術の確立を意味し、コストの大幅削減につながると考えられる。

図 3.4.14 100%TL供給、0.4 A cm-2印加時の連続単流操作運転時の流量と転化率およびセル電圧の関係

3-4-4 まとめ

小型電解槽の開発として、カソード流路、アノードおよびアノード支持体の改善、連続単流操作運転

の評価を行った。カソード多孔質体流路、ファインメッシュアノードおよび熱圧縮 Ti web アノード支

持体を採用することにより電気化学特性の飛躍的な向上を達成した。連続単流操作運転において現状の

電解槽は流量に依存した転化率の計算値にほぼ一致し、最高で 90%以上の転化率を確認した。

3-4-5 今後の課題

多孔質体流路構造の更なる最適化とアノードおよびアノード支持体の一体化による低抵抗化を含め、

各要素を改善し、最高転化率向上とセル電圧低減化に開発を注力する。

Page 48: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

48

3-5.電解槽の副生成物の解析

3-5-1 はじめに

トルエンの電解水素化では所望の生成物であるメチルシクロヘキサンの他にベンゼン、ジフェニルエ

タン及びそれらの水素化体が副生成物として想定される。また、低転化率条件下では反応中間体として

メチルシクロヘキサジエン、メチルシクロヘキセンの混在も十分に予測される。このため、本項では以

下に示す項目を目的として研究を実施した。

a) 各種電解条件における電解セル評価方法を構築し、微量化合物(反応中間体、副生成物)の同定を

行うことならびに o-キシレンの電解水素化にも着手し、対応する水素化生成物の立体化学を検証す

ることで反応機構を推定。

b) 循環システムを有する電解セル評価法を構築することで、微量な副生成物についての詳細な解析。

c) PtRu 合金触媒が現状では最適な触媒として考えられているため、Pt と Ru 双方の特性からの合金触

媒の特性の検証。さらに、Ptと Ruを合金としてではなく、物理的に混合した触媒の特性評価。

3-5-2 実験方法

プロトン交換膜を用いた膜型ハーフセルの構造を図 3.5.1および図 3.5.2に示す。図 3.5.1はワンパ

ス方式による電解反応試験であり 3-5-1 a)にて、図 3.5.2は微量生成物を詳細に評価する目的で循環ポ

ンプを導入した循環方式による電解反応試験であり 3-5-1 b)および c)にて適用された。アノードには

水素ガスをバブラーに通して、加湿した状態で導入し電解反応でプロトンを生成し、カソードではアノ

ードから供給されたプロトンと電子がトルエンと反応することによって所望の生成物を得る構造であ

る。膜電極接合体(MEA)は、高分子膜に Nafion® NRE212を用い、両極共にカーボンペーパーのガス拡

散層(GDL)に Pt/C触媒を塗布して高分子膜と接合した構成である。その際の、反応条件は電流密度、反

応温度、反応溶液の流速、また電極触媒(Pt, Rh, Ru, Pd, Pt-Ru)についても広範に検討することでト

ルエンの電解水素化における生成物、とりわけメチルシクロヘキサン以外の微量化合物の存在について

検証した。さらに、o-キシレンの電解水素化にも着手し、対応する水素化生成物の立体化学、即ち cis-

1,2-ジメチルシクロヘキサンと trans-1,2-ジメチルシクロヘキサンの生成比の検証を行い、トルエンの

電解水素化の反応機構を推測した。3-5-1 c)ではカソード側の触媒として Pt, Ru,および Pt-Ruを用い、

担持量を 0.01 ~0.5 mg cm-2でそれぞれ変化させた。メチルシクロヘキサンおよび微量副生成物の定量

は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。

Page 49: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

49

図 3.5.2循環方式膜型ハーフセル電解システム

3-5-3 結果及び考察

a) ワンパス方式セルを用いた微量化合物(反応中間体、副生成物)の同定

膜型ハーフセルを用いて、各種電極触媒(Pt, Rh, Ru, Pd, Pt-Ru)及び電流密度(12.5, 25, 50,

100, 200 mA cm-2)を検討した際の結果を表 3.5.1に示す。Rh, Ru, Pt-Ruの 3種に関しては Pt以上の

電流効率が得られ、特に Pt-Ruではいずれの電流密度においても約 90%以上の結果が得られた。一方、

Pd ではいずれの条件下でもメチルシクロヘキサンの生成は極僅かであった。これらの結果より Pt-Ru

が本反応系における適切な触媒であることが示唆された。

図 3.5.1 ワンパス方式膜型ハーフセル電解システム

Page 50: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

50

一方、いずれの電解条件下においてもトルエンの電解水素化によって得られる電解生成物はメチル

シクロヘキサンのみで、当初予想されたベンゼン、ジフェニルエタンおよびそれらの水素化体、さら

にはメチルシクロヘキサジエン、メチルシクロヘキセンといった副生成物は一切確認されなかった。

表 3.5.1 トルエンの電解水素化に及ぼす各種電極触媒と電流密度の影響

b) o-キシレンの電解水素化と対応する水素化生成物の立体化学的検証と反応機構推定。

膜型ハーフセルを用いた o-キシレンの電解水素化の結果を表 3.5.2及び表 3.5.3に示す。いずれの

電流密度、温度(室温, 40~70ºC)においても cis-1,2-ジメチルシクロヘキサンと trans-1,2-ジメチ

ルシクロヘキサンの生成比はおおよそ 85:15であることが分かった。これは白金触媒による o-キシレ

ンの化学的接触水素化の生成比に近いことから、水素化段階ではともに類似の反応機構で進行してい

ることが示唆された。また、いずれの電解条件下においても o-キシレンの電解水素化によって得られ

る電解生成物はジメチルシクロヘキサンのみで、微量化合物(反応中間体、副生成物)は一切確認さ

れなかった。

表 3.5.2 o-キシレンの電解水素化に及ぼす電流密度の影響

Page 51: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

51

表 3.5.3 o-キシレンの電解水素化に及ぼすセル温度の影響

c) 循環式電解セルを用いたトルエンの電解水素化

膜型ハーフセルを用いて、各種電極触媒(Pt,Ru,および Pt-Ru)を用いて電流密度 12.5 mA cm-2で固

定して実施した。今回、循環ポンプを用いた循環型の電解を行ったところ、前年度のワンパス型とは

異なり微量ながら副生成物として部分水素化体の生成が観測され、後述の通り、各微量生成物の収率

および電流効率を評価した。すなわち、微量生成物の精密な評価手法を確立することに成功した。

d) 副生物生成の各種触媒依存性の評価

いずれの触媒を用いた場合にも触媒担持量の減少に伴いメチルシクロヘキサン生成の電流効率の低

下及び 1-メチル-1-シクロヘキセン選択性が増加する傾向が確認された。この選択性の向上は水添サイ

トが減少し、完全に水添される前に反応場から基質が排出されるためであると考えられる。Ru触媒を用

いた場合のみ 3-メチル-1-シクロヘキセン及び 4-メチル-1-シクロヘキセンがガスクロマトグラフ質量

分析計(GC-MS)にて検出された。表 3.5.4、表 3.5.5および表 3.5.6における各種触媒を用いた電解結果

を比較すると Ruは有機物に対する吸着が強いと言われているため、Ptに Ruが加わることでメチルシク

ロヘキサン生成の電流効率の増大が確認できたと考えられる。また Ruに Ptが加わることにより副生物

生成が大幅に抑えられたことから Ptは水添能が高いと考えられる。

以上より Pt は高いトルエン水添能を有しており、Ru は高いトルエン吸着能を有していることが示唆

された。

Page 52: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

52

表 3.5.4 トルエン電解水素化における Pt触媒担持量依存性 a

表 3.5.5 トルエン電解水素化における Ru触媒担持量依存性 a

Page 53: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

53

表 3.5.6 トルエン電解水素化における Pt-Ru触媒担持量依存性 a

e) 合金及び混合触媒の比較

膜型ハーフセルを用いて、各種電極触媒(Pt,Ru,および Pt-Ru)を用いて電流密度 12.5 mA cm-2で電

解を実施した結果、表 3.5.7 に示すように PtRu 合金が副生物を抑えつつ目的のメチルシクロヘキサン

を高効率で得られる触媒であることが明らかとなった。Pt の吸着水素保持能力と Ru のトルエン吸着能

が相まって最適な触媒として振舞うことが示唆された。一方、合金触媒である必要性を精査するために、

単純に Ptと Ruを物理混合した触媒を用いてトルエンの電解水素化を実施した。

合金触媒と比較して単純に混合した触媒ではメチルシクロヘキサンに対して大幅な電流効率の低下

が確認された。この結果から推測すると双方の金属が合金として密接していることが重要であるととも

に、電子状態の変化なども特性に影響しているものと考えられる。

表 3.5.7 各種電極触媒を用いた電解結果 a

3-5-4.まとめ

電解水素化反応機構の解明として微量生成物・中間体の分析法の確立し、通常の条件では中間体の生

成は検出感度以下であることを明らかにした。

Page 54: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

54

トルエンの電解水素化を循環方式で行ったところ、微量副生成物の精密な評価を行うことに成功した。

すなわち、微量副生成物として主に 1-メチル-1-シクロヘキセンが生成していることが明らかになった。

さらに各種触媒を用いた際の副生物生成及びメチルシクロヘキサン生成の電流効率および副生物生成

の選択性を比較して Ptと Ruそれぞれの役割を推測した。その結果 Ptは高いトルエン水添能を Ruは高

いトルエン吸着能を有していることが示唆された。

Pt と Ru は合金触媒であることが非常に重要であることが示唆された。合金触媒や混合触媒のミクロ

な解析にまでは至ってはいないが、金属間距離や金属の電子状態などの違いによるものであると推測さ

れる。

3-5-5.今後の課題

カソード側に関しては分析手法を確立することに成功したが、アノード側の副反応等については未だ

詳細に評価を行えていない。そこで今後はアノード側での副生成物の評価法を確立することでトルエン

の水添反応プロセスにおける反応機構の全容の解明に取り組む。

Page 55: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

55

4.外部発表実績

(1)論文発表

<査読付き> 6件(投稿中 1件)

1. S. Mitsushima, Y. Takakuwa, K. Nagasawa, Y. Sawaguchi, Y. Kohno, K. Matsuzawa, Z. Awaludin,

A. Kato, and Y. Nishiki, Membrane Electrolysis of Toluene Hydrogenation with Water

Decomposition for Energy Carrier Synthesis. Electrocatalysis, 7, 127–131 (2016).

2. K. Takano, H. Tateno, Y. Matsumura, A. Fukazawa, T. Kashiwagi, K. Nakabayashi, K. Nagasawa,

S. Mitsushima, and M. Atobe, Electrocatalytic Hydrogenation of Toluene Using a Proton

Exchange Membrane Reactor, Bull. Chem. Soc. Jpn., 89, 1178-1183 (2016).

3. K. Nagai, K. Nagasawa, and S. Mitsushima, OER Activity of Ir-Ta-Zr Composite Anode as a

Counter Electrode for Electrohydrogenation of toluene, Electrocatalysis, 7, 441–444 (2016).

4. K. Takano, H. Tateno, Y. Matsumura, A. Fukazawa, T. Kashiwagi, K. Nakabayashi, K. Nagasawa,

S. Mitsushima, and M. Atobe, Electrocatalytic Hydrogenation of o-Xylene in a PEM Reactor

as a Study of a Model Reaction for Hydrogen Storage, Chem. Lett., 45, 1437-1439 (2016).

5. K. Nagasawa, Y. Sawaguchi, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima, Rate-Determining Factor

of the Performance for Toluene Electrohydrogenation Electrolyzer, Electrocatalysis, 8,

164-169 (2017).

6. K. Nagasawa, A. Kato, Y. Nishiki, Y. Matsumura, M. Atobe, and S. Mitsushima, The Effect

of Flow-Field Structure in Toluene Hydrogenation Electrolyzer for Energy Carrier Synthesis

System, Electrochim. Acta, 246, 459-465 (2017).

7. K. Tanimoto, K, Ikegami, K. Nagasawa, Y. Kuroda, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima,

Permeation of Toluene in Proton Exchange Membrane by Permeation Cell Measurement,

Electrochim. Acta, submitted.

<査読なし(総説等含む)> 1件

8. 光島重徳, 長澤兼作,「固体高分子電解質(SPE)電解技術を応用した有機ハイドライド電解合成」

触媒, 58(6), 346 (2016).

Page 56: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

56

(2)学会、展示会等発表

<招待講演・特別講演> 国内 3件、海外 2件

9. S. Mitsushima, Y. Takakuwa, K. Nagai, Y. Kohno, and K. Matsuzawa, Electrohydrogenation of

Toluene for Hydrogen Storage and Transportation Using Organic Hydride, Grand Renewable

Energy 2014, O-Hf-5-1 (2014.7).

10. 光島重徳,高桑靖知,澤口裕喜,河野雄次,松澤幸一,エネルギーキャリア合成プロセスとしての

SPE電解を用いたトルエンの水素化,電気化学会第 82回大会,1G10 (2015.3).

11. 光島重徳,エネルギーキャリア製造プロセスとして PEM 電解によるトルエン水素化,第 128 回燃料

電池研究会セミナー,3(2015.7).

12. S. Mitsushima, K. Nagasawa, Y. Sawaguchi, N. Morita, Y. Kohno, K. Matsuzawa, A. Kato, and

Y. Nishiki, Direct Hydrogenation of Toluene with Water Decomposition Using Membrane

Electrolysis, International Green Energy Conference: InGEC & EmHyTec, C16-011 (2016.5).

13. 長澤兼作,光島重徳,再生可能エネルギーの大規模貯蔵・輸送のための有機ハイドライド電解合成

技術,神奈川県ものづくり技術交流会,(2016.10)

<口頭発表> 国内学会 31件、国際学会 12件

14. 高桑靖知,澤口裕喜,河野雄次,松澤幸一,加藤昭博,錦善則,光島重徳,エネルギーキャリアとし

てのトルエン電解水素化用電解槽の内部抵抗の低減,2014年電気化学会秋季大会講演要旨集, p.55,

1E06 (2014.9).

15. 高野拳,柏木恒雄,中林康治,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエンの電気化学的

水素添加反応(2),2014年電気化学会秋季大会講演要旨集,p.160, 1J08 (2014.9).

16. S. Mitsushima, Y. Takakuwa, Y. Kohno, K. Matsuzawa, A. Kato, and Y. Nishiki, Electrolyzer

for Hydrogenation of Organic Hydride with Oxygen Evolution Reaction from Water, 226th ECS

Meeting, (2014.10).

17. S. Mitsushima, Y. Takakuwa, K. Nagai, Y. Sawaguchi, K. Matsumae, Y. Kohno, K. Matsuzawa,

A. Kato, and Y. Nishiki, Electrohydrogenation of Toluene with Oxygen Evolution Reaction

from Water for Energy Carrier System, International Symposium on Electrocatalysis (ECAT),

(2014.10).

Page 57: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

57

18. 西島陽大郎,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,トルエン-硫酸二層系でのトルエンの電解水素化に

おける電荷移動速度の評価法,第 38回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-,2 (2014.11).

19. 高野拳,柏木恒雄,中林康治,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエン及びその類縁

体の電気化学的水素添加反応,第 38回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-講演要旨集,p.9, 3

(2014.11).

20. 永井航平,松前健司,河野雄次,松澤幸一,加藤昭博,錦義則,光島重徳,トルエンが溶存する硫酸

中での IrO2-Ta2O5/Ti アノードの酸素発生過電圧,第 38 回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-

講演要旨集,p.13, 4 (2014.11).

21. 高桑靖知,澤口裕喜,河野雄次,松澤幸一,加藤昭博,錦善則,光島重徳,トルエン電解水素化用電

解槽内の物質移動の改善,第 34回水素エネルギー協会大会(HESS)講演要旨集,p.29, A11 (2014.11).

22. 澤口裕喜,高桑靖知,河野雄次,松澤幸一,光島重徳, トルエン電解水素化用電解層の分極及び抵

抗成分の評価,電気化学会第 82回大会,3Q07 (2015.3).

23. 永井航平,松前健司,河野雄次,松澤幸一,加藤昭博,錦義則,光島重徳,トルエン溶存硫酸中での

Zr酸化物添加 IrO2-Ta2O5/Ti電極の酸素発生過電圧,電気化学会第 82回大会,3Q05 (2015.3).

24. 松前健司,永井航平,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,トルエン共存時 IrO2-Ta2O5/Ti系電極の耐久

性評価,電気化学会第 82回大会,3Q06 (2015.3).

25. 光島重徳,高桑靖知,澤口裕喜,河野雄次,松澤幸一,再生可能エネルギーの大規模輸送を目指す

トルエンの直接水素化 SPE電解,第 22回燃料電池シンポジウム講演予稿集,p.164-167, 10,(2015.5).

26. S. Mitsushima, Y. Takakuwa, Y. Sawaguchi, Y. Kohno, and K. Matsuzawa, Electrohydrogenation

of Toluene by a SPE Electrolyzer in Organic Hydride Energy Carrier Systems, 7th

International Conference on Green and Sustainable Chemistry / 4th JACI/GSC Symposium,

(2015.7).

27. 松前健司,永井航平,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,トルエン共存時 IrO2-Ta2O5/Ti系電極性能の

熱分解温度依存性,第 25回電極材料研究会講演要旨集,p.9 (2015.7).

28. 長澤兼作,澤口裕喜,森田直人,高桑靖知,河野雄次,松澤幸一,加藤昭博,錦善則,光島重徳,ト

ルエン電解水素化用電解槽のアノード電極形状と性能の関係,2015 年電気化学会秋季大会,1G30

(2015.9).

Page 58: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

58

29. B. Yun, T. Napporn, K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Method of Activity

Determination for Electrohydrogenation of Toluene, 2015年電気化学会秋季大会,1G31 (2015.9).

30. S. Mitsushima, K. Matsumae, K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, A. Kato, and Y. Nishiki,

Internal Resistance Reduction of a Membrane Electrolyzer for Electrohydrogenation of

Toluene as Hydrogen Carrier Synthesis, 228th ECS Meeting, 1522 (2015.10).

31. K. Nagai, Y Kohno, K. Matsuzawa, Z. Awaludin, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima,

Effect of ZrO2 Additive for IrO2-Ta2O5/Ti on Activity of OER in Sulfuric Acid with Toluene

Contamination, 228th ECS Meeting, 959 (2015.10).

32. 永井航平,松前健司,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,トルエン電解水素化反応の対極としての Ir-

Ta-Zr 混合酸化物電極の触媒活性,第 39回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-,9 (2015.11).

33. 澤口裕喜,森田直人,永井航平,長澤兼作,高桑靖知,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,トルエン電

解水素化用電解槽の運転温度と電流効率の関係,第 39 回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-,

12 (2015.11).

34. 深澤篤,高野拳,松村吉将,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエンの電解水素化反

応の機構解明,第 39回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-,10 (2015.11).

35. 深澤篤,高野拳,松村吉将,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエンの電解水素化に

おける触媒の影響,日本化学会第 96春季年会,2H6-17 (2016.3).

36. 長澤兼作,澤口裕喜,森田直人,河野雄次,松澤幸一,加藤昭博,錦善則,光島重徳,大電極面積化

トルエン電解水素化用電解槽の性能評価及び特性向上,2016 年電気化学会第 83 回大会,3Q22

(2016.3).

37. B. Yun, T. Napporn, K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Method of

Evaluating of Toluene Electro-Hydrogenation Reaction: Charge and Mass Transfer, 2016年電

気化学会第 83回大会,3Q25 (2016.3).

38. 森田直人,澤口裕喜,長澤兼作,河野雄次,松澤幸一,加藤昭博,錦善則,光島重徳,トルエン電解

水素化用電解槽におけるアノード構造の検討,2016 年電気化学会第 83回大会,3Q23 (2016.3).

39. 谷本圭亮,池上芳,長澤兼作,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,プロトン交換膜のトルエン透過度

への影響,2016年電気化学会第 83回大会,3Q24 (2016.3).

Page 59: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

59

40. 松前健司,長澤兼作,松澤幸一,加藤昭博,錦 善則,光島重徳,トルエン共存時 IrO2-Ta2O5系電極

の性能評価,第 26回電極材料研究会,(2016.7).

41. K. Nagasawa, Y. Sawaguchi, N. Morita, Y. Kohno, K. Matsuzawa, A. Kato, Y. Nishiki, and S.

Mitsushima, Development of Bi-polar Electrolyzer for Toluene Hydrogenation, 67th Annual

Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE), s07 (2016.8).

42. K. Nagasawa, Y. Sawaguchi, N. Morita, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima, The Effect

of Flow Path Structure for Toluene Direct Hydrogenation Electrolyzer, International

Symposium on Electrocatalysis (ECAT), O2-11 (2016.9).

43. B. Yun, T. Napporn, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Charge and Mass Transfer

on Pt/C for Toluene Electro-Hydrogenation Reaction, International Symposium on

Electrocatalysis (ECAT), O1-22 (2016.9).

44. S. Mitsushima, K. Nagasawa, Y. Sawaguchi, K. Matsuzawa, A. Kato and Y. Nishiki, Improvement

of Current Efficiency of a Membrane Electrolyzer for Electrohydrogenation of Toluene as

Hydrogen Carrier Synthesis, PRiME 2016/230th ECS Meeting, 2511 (2016.10).

45. Y. Sawaguchi, N. Morita, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, A. Kato, Y. Nishiki and S. Mitsushima

Improvement of Current Efficiency for a Hydrogenation Electrolyzer with Low Concentration

of Toluene, PRiME 2016/230th ECS Meeting, 1649 (2016.10).

46. Bao Yun,Teko Napporn,長澤兼作,松澤幸一,光島重徳,Electrocatalytic Activity on Pt/C for

Toluene Hydrogenation,第 40回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-,14 (2016.11).

47. 澤口裕喜,森田直人,長澤兼作,松澤幸一,加藤昭博,錦善則,光島重徳,間接水素化触媒によるト

ルエン電解水素化電解槽の転化率向上,第 40 回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-,5

(2016.11).

48. A. Fukazawa, K. Takano, Y. Matsumura, S. Mitsushima, and M. Atobe, Study on Electrochemical

Hydrogenation of Toluene in a PEM Reactor with Various Noble Metal Supported Catalysts,

The sixth Asia-Oceania Conference on Sustainable and Green Chemistry (AOC-SGC6), P-10

(2016.11).

49. 谷本圭亮,池上芳,長澤兼作,松澤幸一,光島重徳,プロトン交換膜のトルエン透過度の温度依存

性,電気化学会第 84回大会,1K26 (2017.3).

Page 60: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

60

50. 長澤兼作,澤口裕喜,森田直人,加藤昭博,錦善則,光島重徳,トルエン直接電解水素化用電解槽

のカソード流路構造,電気化学会第 84回大会,1K27 (2017.3).

51. 長澤兼作,澤口裕喜,森田直人,加藤昭博,錦善則,光島重徳,トルエン直接電解水素化用電解槽

の高性能化,第 24回燃料電池シンポジウム,(2017.5).

52. 間庭晃平,松前健司,長澤兼作,加藤昭博,錦善則,松澤幸一,黒田義之,光島重徳,Si添加 IrO2-

Ta2O5/Tiアノード触媒の性能,第 27回電極材料研究会,(2017.7).

53. 長澤兼作,澤口裕喜,森田直人,加藤昭博,錦善則,光島重徳,トルエン直接電解水素化カソード

流路での間接水素化触媒の効果,2017年電気化学会秋季大会,2K18 (2017.9).

54. S. Mitsushima, K. Nagasawa, A. Kato, and Y. Nishiki, Membrane Electrolysis for Organic

Chemical Hydride Synthesis with Water Oxidation, 232nd ECS Meeting, 1673 (2017.10).

55. 谷本圭亮,池上芳,長澤兼作,黒田義之,松澤幸一,光島重徳,プロトン交換膜中のトルエン透過

度の評価,第 41回電解技術討論会-ソーダ工業技術討論会-,(2017.11).

56. 三須健裕,谷本圭亮,長澤兼作,黒田義之,松澤幸一,光島重徳,プロトン交換膜中のトルエン-

メチルシクロヘキサンの透過度,電気化学会第 85回大会,(2018.3).

<ポスター発表> 国内学会 7件、国際学会 12 件

57. Y. Nishijima, Y. Kohno, K. Matsuzawa, S. Mitsushima, Electrochemical Method for Electro-

Hydrogenation of Toluene in Two-Phase System of Toluene and H2SO4, 65th Annual Meeting of

the International Society of Electrochemistry (ISE), (2014.8).

58. 高野拳,中林康治,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエン及びその類縁体の電気化

学的水素添加反応に関する研究,第 4 回 CSJ 化学フェスタ 2014 プログラム・講演予稿集,p.448,

P3-038 (2014.10).

59. 澤口裕喜,高桑靖知,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,トルエン電解水素化用電解槽の分極評価法,

第 34回水素エネルギー協会大会(HESS)講演要旨集,p.125, P15 (2014.11).

60. 松前健司,永井航平,河野雄次,松澤幸一,光島重徳,トルエン共存時 IrO2-Ta2O5/Ti電極の劣化機

構,第 34回水素エネルギー協会大会(HESS)講演要旨集,p.129, P16 (2014.11).

61. K. Matsumae, K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Degradation of IrO2-

Page 61: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

61

Ta2O5 / Ti Anode with Toluene Contamination, 66th Annual Meeting of the International

Society of Electrochemistry(ISE), s09-045 (2015.10).

62. Y. Sawaguchi, Y. Takakuwa, K. Nagasawa, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima,

Polarization for a Toluene Hydrogenation Electrolyzer with Various Concentration of

Toluene Feed. 66th Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry(ISE),

s09-070 (2015.10).

63. 高野拳,光島重徳,跡部真人,PEM リアクターを用いたトルエン及び o-キシレンの電気化学的水素

化反応に関する研究,第 5回 CSJ化学フェスタ 2015, P5-045 (2015.10).

64. K. Takano, T. Kashiwagi, K. Nakabayashi, S. Mitsushima, and M. Atobe, Electrochemical

Hydrogenation of Toluene and o-Xylene Using a PEM Reactor, Pacifichem, 1532 (2015.12).

65. 深澤篤,高野拳,松村 吉将,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエンの電解水素化

反応における白金族触媒の影響,第 5回 JACI/GSCシンポジウム,B-25 (2016.6).

66. 深澤篤,高野拳,松村吉将,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエンの電解水素化反

応における貴金属触媒の影響,第 40回有機電子移動化学討論会,P4 (2016.6).

67. Y. Bao, T. Napporn, K. Nagasawa, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Method of

Evaluating of Toluene Electro-Hydrogenation Reaction: Charge and Mass Transfer, 67th

Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE), s01-018 (2016.8).

68. N. Morita, Y. Sawaguchi, K. Nagasawa, Y. Kohno, K. Matsuzawa, A. Kato, Y. Nishiki, and S.

Mitsushima, Structure of Oxygen Evolution Anode for Toluene Electrohydrogenation

Electrolysis, 67th Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE),

s11-030 (2016.8).

69. K. Matsumae, K. Nagasawa, Y. Kohno, K. Matsuzawa, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima,

Durability of IrO2 Based Anode for O2 Evolution with Toluene Contamination, 67th Annual

Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE), s12-003 (2016.8).

70. N. Morita, Y. Sawaguchi, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima,

Property of Expand Metal Based Anode for Toluene Electrohydrogenation Electrolysis,

International Symposium on Electrocatalysis (ECAT), P11 (2016.9).

71. A. Fukazawa, K. Takano, Y. Matsumura, S. Mitsushima, and M. Atobe, Electrochemical

Page 62: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

62

Hydrogenation of Toluene Using a PEM Reactor with Various Noble Metal Supported Catalysts.

International Symposium on Electrocatalysis (ECAT), P18 (2016.9).

72. Y. Sawaguchi, N. Morita, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima,

The Effect of Pt Loaded Cathode Backing for a Hydrogenation Electrolyzer, International

Symposium on Electrocatalysis (ECAT), P19 (2016.9).

73. 深澤篤,高野拳,松村吉将,光島重徳,跡部真人,PEMリアクターを用いたトルエンの電気化学的水

素化反応における貴金属担持触媒の影響,第 6回 CSJ化学フェスタ 2016,P1-098 (2016.11).

74. K. Nagasawa, Y. Sawaguchi, N. Morita, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima, Development

of Toluene Direct Hydrogenation Electrolyzer for Energy Carrier Technology, 68th Annual

Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE), S06-024 (2017.8).

75. K. Tanimoto, K. Ikegami, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Factors of Toluene

Permeation in Proton Exchange Membrane, 68th Annual Meeting of the International Society

of Electrochemistry (ISE), S06-040 (2017.8).

<展示会、ワークショップ、シンポジウム等> 11件

76. K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Activity for Oxygen Evolution

Reaction on Ir-Ta-Zr Composite Electrocatalysts in Sulfuric Acid with Toluene

Contamination, 1st International Workshop on Hydrogen and Fuel Cells in 8th International

Summer School on Advanced Studies of Polymer Electrolyte Fuel Cells, p.40 (2015.8).

77. K. Matsumae, K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Durability of IrO2-Ta2O5

/ Ti Anode with Toluene Contamination, 1st International Workshop on Hydrogen and Fuel

Cells in 8th International Summer School on Advanced Studies of Polymer Electrolyte Fuel

Cells, p.56 (2015.8).

78. Y. Sawaguchi, K. Nagasawa, N. Morita, Y. Takakuwa, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S.

Mitsushima, Polarization for A Toluene Hydrogenation Electrolyzer with Various Operation

Temperature and Toluene Concentration Feeding, 1st International Workshop on Hydrogen and

Fuel Cells in 8th International Summer School on Advanced Studies of Polymer Electrolyte

Fuel Cells, p.50 (2015.8).

79. B. Yun, T. Napporn, K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, The Charge

Transfer of Toluene Direct Electrohydrogenation Reaction on Pt/C, 1st International

Page 63: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

63

Workshop on Hydrogen and Fuel Cells in 8th International Summer School on Advanced Studies

of Polymer Electrolyte Fuel Cells, p.48 (2015.8).

80. B. Yun, T. Napporn, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Kinetic Determination

of Toluene Electro-Hydrogenation on Pt/C, 2nd International Workshop on Hydrogen and Fuel

Cells, p.30 (2016.8).

81. K. Matsumae, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Improvement of Durability for

IrO2 Based Anode with Toluene Contamination, 2nd International Workshop on Hydrogen and

Fuel Cells, p.65 (2016.8).

82. N. Morita, Y. Sawaguchi, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Oxygen Evolution

Anode Structure for Toluene Electrohydrogenation Electrolyzer, 2nd International Workshop

on Hydrogen and Fuel Cells, p.74 (2016.8).

83. Y. Sawaguchi, K. Nagasawa, N. Morita, K. Matsuzawa, A. Kato, Y. Nishiki, and S. Mitsushima,

Improvement of Faraday Efficiency for a Toluene Hydrogenation Electrolyzer, 2nd

International Workshop on Hydrogen and Fuel Cells, p.82 (2016.8)

84. K. Tanimoto, K. Nagasawa, K. Ikegami, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Influence on Toluene

Permeation Through Proton Exchange Membrane, 2nd International Workshop on Hydrogen and

Fuel Cells, p.90 (2016.8).

85. K. Tanimoto, K. Ikegami, K. Nagasawa, Y. Kuroda, K. Matsuzawa, and S. Mitsushima, Effects

of Ion Exchange Capacity on Toluene Permeability of Proton Exchange Membrane, 10th

International Summer School on Advanced Studies of Polymer Electrolyte Fuel Cells, p.53

(2017.8).

86. K. Maniwa, K. Matsumae, K. Nagasawa, K. Matsuzawa, Y. Kuroda, and S. Mitsushima, Extension

of Specific Surface Area of IrO2-Ta2O5/Ti Anode Catalyst, 10th International Summer School

on Advanced Studies of Polymer Electrolyte Fuel Cells, p.75 (2017.8).

(3)マスメディア等取材による公表

87. 化学工業日報,「横国大など MCHの製造プロセスと燃料電池開発へ」(2014.12.24)

http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2014/12/24-18545.html

Page 64: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

64

5.特許出願実績

出願番号 発明の名称 出願年月日 出願人

1 特願2014-195202

有機ケミカルハイドライド

製造用電解セル 2014/9/25

横浜国立大学

ペルメレック電極株式会社

2 特願2014-228096 酸素発生用アノード 2014/11/10

横浜国立大学

ペルメレック電極株式会社

3

特願2014-236772

有機ハイドライド製造装置

およびこれを用いた有機ハ

イドライドの製造方法

2014/11/21 横浜国立大学

ペルメレック電極株式会社

4

特願2016-510361 有機ハイドライド製造装置 2015/3/24

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

JX日鉱日石エネルギー株式

会社

5

PCT/JP2015/058824

有機ハイドライド製造装置

(特願2014-069716)を国際

出願

2015/3/24

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

JX日鉱日石エネルギー株式

会社

6

PCT/JP2015/076769

有機ケミカルハイドライド

製造用電解セル

(特願2014-195202)を国際

出願

2015/9/18

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

7

PCT/JP2015/081518

酸素発生用アノード

(特願2014-228096)を国際

出願

2015/11/9

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

8

PCT/JP2015/82616

有機ハイドライド製造装置

およびこれを用いた有機ハ

イドライドの製造方法

(特願2014-236772)を国際

出願

2015/11/19

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

9

特願2016-163131

カソード、有機ハイドライ

ド製造用電解セル及び有機

ハイドライドの製造方法

2016/8/23

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

JXエネルギー株式会社

10

特願2016-222563

有機ハイドライド製造装置

及び有機ハイドライドの製

造方法

2016/11/15

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

JXエネルギー株式会社

11 特願2017-101419 有機ハイドライド製造装置 2017/5/23 横浜国立大学

Page 65: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

65

デノラ・ペルメレック株式会

JXTGエネルギー株式会社

12

PCT/JP2017/025984

カソード、有機ハイドライ

ド製造用電解セル及び有機

ハイドライドの製造方法

2017/7/18

横浜国立大学

JXTGエネルギー株式会社

デノラ・ペルメレック株式会

13

PCT/JP2017/037647

有機ハイドライド製造装置

及び有機ハイドライドの製

造方法

2017/10/18

横浜国立大学

デノラ・ペルメレック株式会

Page 66: 6 有機HD 電解合成 横浜国大 - JST図3.4.13 10% TLにおけるアノードおよびアノード支持体構造の変化に対する電流効率 図3.4.14 100%TL供給、0.4

66

6.参考文献

1) 資源エネルギー庁 エネルギー白書 2012 第 2部.

http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2012/index.htm

2) 環境省委託事業 平成 22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書 平成 23年 3月.

3) 三菱重工 風力講座 1.3 世界の風資源.

http://www.mhi.co.jp/products/expand/wind_kouza_0103.html.

4) 風力発電導入ガイドブック改訂第 9版, NEDO, p.88 (2008)

5) http://www.3tier.com/en/support/resource-maps/

6) 太田健一郎, 大城善郎, 水素エネルギーシステム, 38, 116 (2013).

7) NEDO 燃料電池・水素技術開発部蓄電技術開発室, NEDO 二次電池技術開発ロードマップ(Battery

RM2010)(2010).http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g100519a05j.pdf

8) WO 2011/122155.

9) 特開 2013-84360.

10) K. Miyoshi, Y. Sato, S. Mitsushima, 224th ECS meeting, abstracts, #759, (2013).

11) S. Mitsushima, Y. Takakuwa, K. Nagai, Y. Kohno, K. Matsuzawa, Proceedings of the Grand

Renewable Energy 2014, (Aug., 2014, Tokyo).

12) 竹中啓恭, 安田和明, 第 6版電気化学便覧, 電気化学会編, p.439 (2013).

13) ソーダ技術ハンドブック 2009, ソーダ工業会(2009).

14) http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/alternative/nafion.html.

15) Technical Data Sheet of E98-05S edited by SOLVAY.

16) Technical Data Sheet of E87-05S edited by SOLVAY.

17) A. Ghielmi, P. Vaccarono, C. Troglia, and V. Arcell, J. Power Sources, 145, 108-115

(2005).

18) 高橋正雄, 増子昇, ”工業電解の化学”, p. 181-183, アグネ (1979).

19) 電気化学協会編, ”第 4版 電気化学便覧”, p. 269-271, 丸善株式会社 (1985).