6章 細胞と外界mail2.nara-edu.ac.jp/~masaki/cbl-site/other_files/6章...1890年代...
TRANSCRIPT
-
6章 細胞と外界
-
溶液 solution
溶媒 solvent: 溶質を溶かし込む液体
溶質 solute: 溶けている物質�水溶液の場合
水�
気体同様に液体の場合もそこに存在する物質の分子は自由に動き回っている
ブラウン運動
拡散 diffusion
従って、水分子と溶質は自ずと混ざりあう
数研出版「視覚でとらえる生物図録」より�
-
浸透 osmosis 1膜を隔てた物質の移動�
この膜が全く溶質や水を通さないような膜の場合
変化無し
水やスクロースを自由に通す膜である場合
拡散
-
数研出版「視覚でとらえる生物図録」より�
浸透 osmosis 2
水は通すが溶質(スクロース)を通さない膜
半透膜 semipermeable membrane
水は半透膜を通過してスクロース溶液側に入る
水分子の拡散
浸透圧
静水圧(重力によって作られる圧力)
水が浸透して行く力
浸透圧 osmotic pressure
ファント-ホッフの公式�P = RCT
P 圧力R 気体定数 0.082C 溶液のモル濃度
T 絶対温度�
浸透圧と静水圧が等しくなるまで、水が浸透する
浸透 osmosis
液面の差�
-
溶質の濃度が相対的に高いもの
水の濃度が低い浸透圧が高い
溶質の濃度が相対的に低いもの
水の濃度が高い浸透圧が低い
高張液 hypertonic solution
低張液 hypotonic solution
低張液と高張液
溶質の濃度が相対的に等しいもの
等張液 isotonic solution
hemolysis�
-
細胞膜
細胞膜は差別的透過膜 differentially permeable membraneである
水や溶解ガス(CO2, O2) 細胞膜をとおって拡散する
大部分のイオンや分子 細胞膜にあるタンパク質によって細胞内外に輸送される
細胞膜は、かなり速い速度で水を拡散させる
有機分子無機イオン
分子の拡散は厳密に制限
-
細胞膜の脂質的性質1890年代細胞膜の様々な溶質に対する透過性に関する研究 油に溶ける物質ほど細胞膜を通過しやすい
主要な脂質分子
1)リン脂質 phospholipid疎水性の二つの脂肪酸
親水性の頭部にリン酸を結合
3)ステロール sterol 疎水性の炭化水素
親水性はOH基だけ
コレステロール cholesterol
動物細胞: 最も共通なステロール
2)糖脂質 glycolipid 疎水性の二つの脂肪酸
親水性の頭部に糖を結合
両親媒性 amphipathic
-
適当な条件化では脂質の2重層の形で
リポソーム liposome
両親媒性脂質分子
親水性の頭部は外側疎水性部分は内側
ミセルを形成
水を入れ子にしたような小胞の形態
シート状形態
リポソームliposome
細胞の原形
-
細胞膜の流動モザイク説1971年細胞膜の脂質分子 液体のような状態
横方向に拡散する�
回転する�
屈曲できる�
たまに層間で入れ替わる�
自由度
が高い�
個体の状態�低温�
液体相
�������個体相�相転移
相転移温度 transition temperature
脂肪酸の炭化水素部の不飽和度が増すほどに低くなる
不飽和度が高い
屈曲する
(隣との距離が空く)
低い温度でも
固化しない
-
コレステロール分子
両親媒性
OH基のみ
親水部分が小さい 2重膜とは成り得ない
疎水性相互作用
イオン結合� 膜の流動性下降
膜の透過性減少
固化しやすい
流動モザイク説(脂質)
親水性�
疎水性�
相転移温度を上げる
相転移温度以下
細胞は生き延びる事が出来ない
結晶状態
力学的強度を高める
相転移温度 = 細胞が生き延びるための 下限の温度を定義する 重要な要因である
分子間の距離が縮まる�
-
流動モザイク説(タンパク質)生体膜 重量比 50〜70% タンパク質
30〜50% 脂質
膜タンパク質
膜を塩溶液で洗うと簡単に解離する
膜貫通タンパク質 transmembrane protein
親水性領域を膜の内側と外側に突出
疎水性の領域はαヘリックス
両親媒性
膜の総タンパクの1/3 細胞膜の表面にイオン結合で付着
2)内在性タンパク integral protein
1)表在性タンパク peripheral protein
-
洗剤の皮膜を作ったような形タンパク質を可溶化
内在性タンパク質疎水性領域
塩溶液にて溶出できない
疎水性相互作用
脂質分子間との疎水性相互作用
界面活性剤(洗剤)
破壊�
両親媒性
内在性タンパク質疎水性部分
結合
疎水性部位
親水性部分
ドデシル硫酸ナトリウム
-
抗体を用いて、細胞表面のタンパク質を追跡することから証明された。
ヒト
細胞�
マウス
細胞� 流動モザイク説まとめ
脂質分子 液体のような状態
膜タンパク質 横方向に自由に移動
細胞融合�
センダイウイルス
両方の細胞に
感染可能
マウス
膜タンパク
に対する
抗体�ヒト
膜タンパク
に対する
抗体�
抗体標識抗体処理
0分�標識は混ざり合わない
抗体処理
40分�
標識が均質に混ざり合う 膜の表面のタンパク質が移動している
-
エネルギー消費は必要としない
物質の濃度差に依存濃度の高い方から低い方へ移動
細胞内外への物質の移動
1)単純拡散 simple diffusion
受動的 passive
3)能動輸送 active transport
2)促通拡散 facilitated diffusion
1次能動輸送 primary active transport 2次能動輸送 secondary active transport
チャンネル輸送 channel transport キャリア輸送 carrier transport
-
水溶液の電位差と濃度差によって通過して行く
単純拡散 simple diffusion
(1)分子量に依存 大きい程、拡散速度は遅い
(2)脂質溶解性に依存 溶解度が大きい程、たやすく移動する
(3)電荷に依存 正に電荷したものが負に電荷を持つものより容易く移動する
(4)分子形状に依存 球状分子は非対称形分子より速く移動する
膜を通過可能な小さな分子の移動
物理化学的法則に従って膜を通過
-
(2)飽和が存在する
促通拡散 facilitated diffusion �膜を通過できない小さな分子の移動��
特別なタンパク質がその輸送に関係�
輸送系� 担体 carrier チャンネル channelにより促進された輸送
直線グラフ拡散速度が濃度増加に比例
単純拡散
促進拡散 双曲線
ミカエリス・メンテン
Vmax を持つ
単純拡散よりはるかに速い
膜の両側での濃度が等しくなる速さを加速する
担体は特異的な基質分子しか運搬しない
(1)移動速度
(3)選択性が存在する
酵素反応的
-
チヤンネル輸送
ゲートの種類 1)電位作動性2)リガンド作動性3)機械ストレス作動性
膜貫通タンパク質親水性孔 poreを形成
電荷を持ったイオンや水を通過させる
フィルター filter
物質の大きさ電荷の状態に依存して
選択的に通過させる
ゲートgate
確率論的におこる開閉を制御する
-
キャリア輸送
膜貫通型タンパク質 チャンネル輸送からすると極めて遅い酵素反応に類似Michaelis-Mentenの式に乗っ取った反応
単輸送 uniport
単一の物質を輸送
共輸送 co-toransport
同時に複数の物質を��
共役的に運ぶ�
シンポート symport 同じ方向に物質を運ぶ輸送
アンチポート antiport 逆方向に運ぶ輸送
-
能動輸送
イオン� :Na+
化学物質
電荷を持つ� 電気化学的ポテンシャル�
電気化学ポテンシャル勾配
能動輸送 active transport
エネルギーが必要
物質の濃度勾配に逆らう輸送
電気化学ポテンシャル勾配
に逆らって上坂 uphill に輸送
ATP
1次能動輸送 輸送分子自体がATP分解酵素を内在直接的間接的 2次能動輸送 1次能動輸送で形成された電気化学的
ポテンシャル勾配を利用した輸送
-
Na-K pump
1次能動輸送 輸送体タンパク質がATPを分解する酵素ATPaseを内在している
ポンプのように上坂 uphill に汲み上げる
Na+ と結合�
ATP
加水分解�
リン酸化
構造変化� Na+ を放出�
脱リン酸化
K+ と結合�
構造復帰
K+ を放出�
運ぶイオンの名前をつけてナトリウムーカリウムポンプ
Na-K pumpカルシウムポンプ
Ca pumpと呼ばれる
-
tight junction
例)小腸上皮細胞�
2次能動輸送
2Na+
Glucose
Na+
Amino acid
[Na+]i Low
[Na+]o High
[Na+]o High
[AA]i High [AA]o Low
[Glu]i High [Glu]o Low
ATPの加水分解エネルギーを間接的に利用
3Na+
2K+
ATP
ADP + Pi
Na-K pump1次能動輸送� Fructose
促進拡散�
Glu
[Glu]o Low
促進拡散�
AA
[AA]o Low
促進拡散�
2次能動輸送�
2次能動輸送�
1次能動輸送で形成された電気化学的ポテンシャル勾配
を利用した輸送 Na+の濃度勾配�
上坂 uphill
-
膜を使った物質の移動 分子より大きなものの細胞への取り込み・放出
細胞膜により包み込む
1) エクソサイトーシス 細胞外への放出
2) エンドサイトーシス 細胞内への取り込み
・飲作用 pinocytosis 巨大分子の取込み 受容体媒介飲作用 receptor medieated 特定有機物の取込み ・食作用 phagocytosis 餌生物の取込み 自食作用 autophagy 細胞内小器官の消化
-
飲作用 pinocytosis
アミノ酸タンパク質ウイルス等
巨大分子の膜を使った細胞内への取込み
+ 無機イオン
融合�
初期エンドソーム�
後期エンドソーム�
消化�
ゴジル体�
酸性加水分解酵素 を含んだ小胞
リソソーム
消化酵素�
-
受容体媒介飲食作用 receptor mediated pinocytosis
例) コレステロール取込み
特定有機物の取込み
低密度リポタンパク質low density lipoprotein(LDL)
リン脂質とタンパクの複合体
コレステロール
コレステロール分子
タンパク質
リン脂質�
結合�血液中�
LDL受容体 receptor
LDL結合部位
被覆結合部位
被覆
クラスリン clathrinLDL
LDL-コレステロール複合体と結合
細胞膜が内部に向かって陥入
被覆孔 coated pit を形成
サッカーボールのような構造
被覆小胞coated vesicle
-
ヒト繊維芽細胞
ゾウリムシ�
Allen & Fok, 1993,
「Advances in Cell and
Molecular Biology of Membranes, Vol 2b」�
被覆小胞 coated vesicle
-
被覆小胞の消化
リソソームと融合
リポタンパク-コレステロールの分解
細胞膜新生の為のコレステロールが細胞に供給
受容体タンパクのリサイクル
クラスリンの離脱
エンドサイトーシス�
出芽budding
初期エンドソーム�
-
食作用 phagocytosis 顕微鏡で観察できるような大きな顆粒
細胞体のような餌生物の取込み
原生動物や白血球のような細胞で観察される
細胞膜�
細菌�
仮足�
白血球細胞 white blood cell
pseudopodia
アメーバ Amoeba の捕食�
細胞膜の一部を仮足 pseudopodia として伸ばし餌を捕獲
食胞 food vacule
digestive vacuole
を形成する
-
食作用による消化例) ゾウリムシ Paramecium
排泄過程
食胞形成過程 円盤小胞
酸性化過程 酸性小胞 DV-Ⅱ pH低下
消化過程 ライソソーム DV-Ⅲ 消化酵素
DV- I 細胞口 エンドサイトーシス
DV-IV 細胞肛門 エクソサイトーシス
-
細胞内小器官等の寿命は細胞のそれよりも短い
自食作用 autophagy 損傷して使用できなくなったオルガネラ等の消化
細胞内消化
飲作用
自食作用
自食作用
自食胞 autophagosome
消化して
分子の再利用
-
エクソサイトーシス 開口分泌 exocytosis
小胞体で作られたタンパク質
細胞内から外への輸送
ゴルジ体で修飾
1)収縮胞による水分の放出2)神経伝達物質の放出
細胞内輸送
細胞内輸送
分泌
-
収縮胞 contractile vacuole
淡水にすむ原生動物
細胞質の塩類濃度 外界より高い
外界の水が常に細胞内 に入り込んでくる
放置すれば細胞は破裂
細胞内の水を小胞(収縮胞)に集め体外に放出している
-
医学書院「標準生理学」より
神経伝達物質の微量放出