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103 7.コンセント(2 時間耐火壁)に関する性能検証 7.1 検証対象の検討 7.1.1 検証対象の概要 検証対象としたコンセント(2 時間耐火壁)の概要を図 7.1 に示す。本検証は、木造耐火構造(2 間)の壁に設けるコンセントの実用的な不燃措置の確立を目指したものである。 (1)コンセント①:試験体 B-c(耐火シート厚 6mmc 仕様)両面張り(底面のみ)) (2)コンセント②:試験体 D-a (内側:耐火シート厚 3mmb 仕様)重張り、外側:強化せっこうボード厚 21mm7.1 検討対象としたコンセント(2 時間耐火壁)の概要

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7.コンセント(2 時間耐火壁)に関する性能検証

7.1 検証対象の検討 7.1.1 検証対象の概要

検証対象としたコンセント(2 時間耐火壁)の概要を図 7.1 に示す。本検証は、木造耐火構造(2 時

間)の壁に設けるコンセントの実用的な不燃措置の確立を目指したものである。

(1)コンセント①:試験体 B-c(耐火シート厚 6mm(c 仕様)両面張り(底面のみ))

(2)コンセント②:試験体 D-a

(内側:耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張り、外側:強化せっこうボード厚 21mm)

図 7.1 検討対象としたコンセント(2 時間耐火壁)の概要

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(3)コンセント③:試験体 D-b(耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張りの両面張り(底面のみ))

図 7.1 検討対象としたコンセント(2 時間耐火壁)の概要(つづき)

7.1.2 試験体の設計

コンセント(2 時間耐火壁)の措置は、次のように試験体を設計した 1。

①コンセントボックス:(コンセント①)後付け鋼製ボックス

(コンセント②と③)鋼製ボックス ②木部までの離隔距離 1:(コンセント①)たて材左80mm、たて材右312mm、よこ材上80mm、よこ材下313mm

(コンセント②)たて材左80mm、たて材右234mm、よこ材上253mm、よこ材下80mm (コンセント③)たて材左80mm、たて材右272mm、よこ材上292mm、よこ材下80mm

③取 付 金 具 の 処 理:(コンセント①)取付金具なし(付属のビスで、壁の強化せっこうボードに固定) (コンセント②と③)たて材との間にせっこうボード厚21mm を挟む

④鋼製ボックスの配線用孔:(共通)処理なし。ただしコンセント②・③のケーブルはさや管(PF 管)に挿入 ⑤鋼製ボックスの被覆等:(コンセント①)後付け鋼製ボックスの底面の両側に耐火シート厚6mm(c 仕様)張り

(コンセント②)鋼製ボックスの底面と側面に耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張りして外

側から強化せっこうボード厚21mm を被覆 (コンセント③)鋼製ボックスの底面の両側に耐火シート厚3mm(b 仕様)を重張り

⑥そ の 他:(コンセント③)鋼製ボックス外側の耐火シートは取付金具との間に挟んだ ①⑤⑥について:木造耐火構造(1 時間)のコンセント部には、コンセント鋼製ボックス(以下、鋼

製ボックスと呼ぶ)を活用して不燃措置が施されている 2。今回の検証では、こうした鋼製ボックスに

1 コンセント①は鋼製ボックス外周面から木部表面までの距離。コンセント②は鋼製ボックス外側の強化せっこうボード

外周面から木部表面までの距離。コンセント③はコンセント開口(鋼製ボックス外形寸法+上下左右 2mm)から木部

表面までの距離。なお、コンセント②と③に用いた鋼製ボックスの外形寸法は 136mm×117mm×44mm(カバー部を

除く)。 2 日本ツーバイフォー建築協会は次の措置を求めている:①鋼製ボックスを用いる。②鋼製ボックスはたて枠から 80mm

以上離す。③鋼製ボックスの取付部分(鋼製ステー)とたて枠の間にはせっこうボード厚 12.5mm を挟む。④配線を

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耐火シート張りを加えた不燃措置を対象とした。具体的には、後付け鋼製ボックスの底面の両側に耐火

シート厚 6mm(c 仕様)を張ったもの(コンセント①:試験体 B-c)、鋼製ボックスの底面と側面に耐

火シート厚 3mm(b 仕様)を重張りして外側から強化せっこうボード厚 21mm を被覆したもの(コン

セント②:試験体 D-a)、鋼製ボックスの底面の両側に耐火シート厚 3mm(b 仕様)を重張りしたもの

(コンセント③:試験体 D-b)の 3 種類である。耐火シート張りは各製品が定める方法にしたがったが、

コンセント③では鋼製ボックス外側に張った耐火シートは取付用鋼製バーとの間に挟み込み、発泡途中

での脱落を防ぐ工夫を加えた(表 7.1、表 7.2)。 なお、鋼製ボックスの多くは耐火被覆工事(強化せっこうボード張り)より先に取付ける必要がある。

ただし、後付け用の鋼製ボックスも存在しており、こうした製品は改修工事等に対する適性が高い。そ

のため、木造耐火構造の改修工事も視野に入れ、コンセント①には後付け用鋼製ボックスを用いた。 ②について:木造耐火構造(1 時間)では、コンセントと木部との間に少なくとも 80mm の離隔距離

を設けている。今回の検証では、コンセントの左側と上側の離隔距離にこの下限値を採用した。 ③について:コンセント②と③の取付金具は、木造耐火構造(1 時間)に用いるものよりも厚い強化

せっこうボード厚 21mm を挟んでからたて材に取付けた。なお、後付け鋼製ボックスを用いたコンセン

ト①には、たて材に取り付ける金具は存在しない。 ④について:鋼製ボックス底面に張った耐火シートが発泡することによって配線用孔は塞がれるため、

この部分に対する不燃材充填は省略した。なおコンセント①ではケーブルを露出配線したが、コンセン

ト②と③のケーブルはさや管(PF 管)に挿入した。

通した鋼製ボックスの孔には不燃材を充填する。⑤鋼製ボックスの周囲には断熱材を被覆する(コンセント用開口の面

積に応じて厚みを規定)。(「枠組壁工法耐火建築物設計・施工の手引」日本ツーバイフォー建築協会、2012.11、pp.工Ⅶ-2-P1~P2)。

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コンセント①:試験体 B-c

(耐火シート厚 6mm(c仕様)両面張り(底面のみ))

鋼製ボックス

写真 7.1 後付け鋼製ボックスを使用

耐火シート張り

写真 7.3 後付け鋼製ボックスの内側(底面)への耐火シート張り

試験体に設置された状態

写真 7.6 後付け鋼製ボックス外側(底面)への耐火シート張り

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表 7.1 コンセント措置に関する試験体の詳細

コンセント②:試験体 D-a (内側:耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張り、 外側:強化せっこうボード厚 21mm を被覆)

コンセント③:試験体 D-b (耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張りの

両面張り(底面のみ))

写真 7.2 鋼製ボックス。取付金具(自在バー)を用いて壁の耐火被覆工事の前に取付ける

写真 7.4 鋼製ボックスの底面と側面への耐火シート張り 写真 7.5 鋼製ボックスの外側(底面)への耐火シート張り

写真 7.7 外側は強化せっこうボードを被覆 写真 7.8 外側の耐火シートは取付金具で挟んだ

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表 7.2 コンセント措置の試験体の製作状況

写真7.9 試験体Bの全体(試験体B-cは上部の左部分) 写真7.10 試験体B-cのコンセント用の開口(裏側)

写真 7.11 試験体 D の全体

(試験体 D-a と D-b は上部の左部分と中央部分) 写真7.12 試験体D-aとD-bのコンセント用の開口部

写真 7.13 試験体 B-c の後付け鋼製ボックスへの

耐火シート厚 6mm(c 仕様)張り。シート裏面

の粘着力が弱かったため側面からアルミテープ

で外れ止め補強を行った。またこの製品は固いた

め、こうした小片になると接着面へ密着させるの

に手間取った。

写真 7.14 試験体 D-a と D-b の鋼製ボックスへの

耐火シート厚 3mm(b 仕様)の重張り。こちら

はメーカー担当者に張付けを依頼した。耐火シー

トを熱して柔らかくすることで接着面にしっか

りと密着させることができた。

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7.2 3種類の納まりに関する温度推移 7.2.1 温度測定の位置

(1)コンセント①:試験体 B-c 温度測定位置

(2)コンセント②:試験体 D-a 温度測定位置

図 7.2 検討対象としたコンセント(2 時間耐火壁)の温度測定位置

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(3)コンセント③:試験体 D-b 温度測定位置

図 7.2 検討対象としたコンセント(2 時間耐火壁)の温度測定位置(つづき)

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7.2.2 温度測定の結果

図 7.3 から図 7.6 に、主要な測定点の温度推移を示す。〈 〉内の数字は温度測定位置を示す。 コンセント①仕様では、離隔距離の短いよこ材上の表面温度が加熱開始直後から上昇し、加熱開始 30

分付近で一度温度低下が起きている。これはパネルボックス裏面に張った耐火シートが発泡し始めたか

らと推測される。しかしながらその後徐々に温度上昇し、よこ材上は最高温度 199℃に達した(加熱開

始 120 分)。 コンセント②仕様及び③仕様では、加熱終了後も概ね 100℃前後を推移しており、コンセント②仕様

で、最高温度 114℃(よこ材上、加熱開始 216 分)、コンセント③仕様で、最高温度 121℃(よこ材上、加

熱開始 209 分)と、問題ない温度であった。

図 7.3 コンセント(2 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (1)たて材左

図 7.4 コンセント(2 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (2)たて材右

1 凡例の〈 〉内の数字は温度測定位置を示す(図 7.2 参照)。

020406080

100120140160180

0 60 120 180 240 300 360

温度

(℃)

時間(分)

コンセント①:試験体B-c〈9〉 コンセント②:試験体D-a〈7〉 コンセント③:試験体D-b〈11〉

020406080

100120140160180

0 60 120 180 240 300 360

温度

(℃)

時間(分)

コンセント①:試験体B-c〈10〉 コンセント②:試験体D-a〈8〉 コンセント③:試験体D-b〈12〉

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図 7.5 コンセント(2 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (3)よこ材上

図 7.6 コンセント(2 時間耐火壁)に関する木部の温度推移 1 (4)よこ材下

1 凡例の〈 〉内の数字は温度測定位置を示す(図 7.2 参照)。

0

50

100

150

200

250

0 60 120 180 240 300 360

温度

(℃)

時間(分)

コンセント①:試験体B-c〈11〉 コンセント②:試験体D-a〈9〉 コンセント③:試験体D-b〈13〉

0

20

40

60

80

100

120

0 60 120 180 240 300 360

温度

(℃)

時間(分)

コンセント①:試験体B-c〈12〉 コンセント②:試験体D-a〈10〉 コンセント③:試験体D-b〈14〉

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7.3 3種類の納まりに関する加熱試験の目視結果

表 7.3 目視記録(試験体 B 及び試験体 D)

コンセント①(試験体 B) コンセント②、③(試験体 D)

3 分:壁のボードが黒く変色。 5 分:表面のプレートが黒く変色。 8 分:よこ材上〈11〉が 50℃に上昇。 11 分:壁のボードが白く変色。 15 分:金属プレートが黒く変色。コンセント

①本体がたわみ始める(耐火シート発

泡?)。

23 分:表面のプレートが消失。コンセント本

体が露出。

25 分:よこ材上〈11〉が 100℃を超える。 25 分:コンセント部から発火(耐火シート発

泡を確認)。 26 分:コンセント②から激しく炎が発生。 30 分:よこ材上〈11〉が温度低下。 34 分:コンセント①から炎が噴出。 55 分:コンセント①本体の原型がなくなる。 56 分:壁ボードの目地開きが大きくなる。 73 分:コンセント本体の原型がなくなる。

79 分:コンセント③左右のボード(端材)が

消失、コンセントボックスがほぼ露出。

98 分:コンセント②の耐火シートが加熱側に

露出し、炎が噴出(発泡を確認)。 120 分:加熱終了。炉内放置。 120 分:加熱終了。炉内放置。

300 分:試験終了、脱炉。

480 分:試験終了、脱炉。

たて材(左、右)の上部、よこ材(上)に軽微な炭

化が見られた。 たて材、よこ材ともに炭化等は見られなかっ

た。 注)〈〉内の数字は温度測定位置を示す

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試験前、脱炉後、強化せっこうボード解

体後の目視結果を表 7.4 に示す。 試験体 D では、加熱開始すぐに表面プレ

ートが黒く変色し、23 分付近にプレートは

消失してコンセント本体が露出している。

加熱中、炎が噴出しており、耐火シートが

発泡していたことを裏付けるものと思われ

る。 脱炉後、コンセント①(試験体 B-c)では、

金属プレートは残存しており、コンセント

本体は一部が残存していた。コンセント②

(試験体 D-a)及びコンセント③(試験体

D-b)では、金属プレートは焼失したが、コ

ンセントボックスとコンセント本体の一部

が残存していた。

コンセント①:試験体 B-c

(耐火シート厚 6mm(c仕様)両面張り(底面のみ))

試験前

写真 7.15 試験前のコンセント①

脱炉後

写真 7.18 脱炉後

強化せっこうボード解体後

写真 7.21 強化せっこうボード解体後

(コンセントは後付けのためボードと一緒に解体)

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表 7.4 コンセント(2 時間耐火壁)に関する目視結果の一覧 (1)

コンセント②:試験体 D-a (内側:耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張り、 外側:強化せっこうボード厚 21mm を被覆)

コンセント③:試験体 D-b (耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張りの

両面張り(底面のみ))

写真 7.16 試験前のコンセント② 写真 7.17 試験前のコンセント③

写真 7.19 脱炉後 写真 7.20 脱炉後

写真 7.22 強化せっこうボード解体後 写真 7.23 強化せっこうボード解体後

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脱炉解体後の、コンセントボックスの状

態、たて材、よこ材の状態の目視結果を表

7.5 に示す。 コンセント①(試験体 B-c)は後付け用鋼

製ボックスを用いたため、強化せっこうボ

ードとともに解体されている。コンセント

ボックスの内側に張った耐火シートについ

ては、発泡した状態が確認されたが、コン

セントボックス裏側に張った耐火シートに

ついては、半分発泡しない状態で確認され

た。これは、耐火シートの粘着力とアルミ

テープによる留め付けでは、接着力が不足

していたものと考えられる。 コンセント②(試験体 D-a)及びコンセン

ト③(試験体 D-b)では、コンセントボック

ス内に張っていた耐火シート(b 仕様)が発

泡した状態が確認された。しかしコンセン

ト③(試験体 D-b)でコンセントボックスの

裏側(非加熱側)に張った耐火シートは、

発泡していたが一部脱落していた。コンセ

ント②(試験体 D-a)でコンセントボックス

を取り囲む強化せっこうボードは、健全な

状態で残っていた。 コンセントボックス周囲の木部(たて材

及びよこ材)の状態を確認した。コンセン

ト①(試験体 B-c)では、よこ材下は黒色に

変色しているのみだったが、たて材の上部、

よこ材上については炭化(ただし軽微)し

た状態であった。コンセント②(試験体 D-a)及びコンセント③(試験体 D-b)では、炭化

等は見られず、健全な状態であった。

コンセント①:試験体 B-c

(耐火シート厚 6mm(c仕様)両面張り(底面のみ))

コンセントボックスの状態

写真 7.24 コンセントボックスの状態

たて材・よこ材の状態(1)

写真 7.27 よこ材上、たて材上部の状態

たて材・よこ材の状態(2)

写真 7.30 解体後の各材の状態

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表 7.5 コンセント(2 時間耐火壁)に関する目視結果の一覧 (2)

コンセント②:試験体 D-a (内側:耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張り、 外側:強化せっこうボード厚 21mm を被覆)

コンセント③:試験体 D-b (耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張りの

両面張り(底面のみ))

写真 7.25 コンセントボックスの状態 写真 7.26 コンセントボックスの状態

写真 7.28 たて材左の状態 写真 7.29 たて材左の状態

写真 7.31 よこ材上の状態 写真 7.32 よこ材上の状態

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7.4 性能検証結果に関する考察 7.4.1 今回の試験の結果

今回の試験結果の概要を表 7.4 に示す。

表 7.4 性能検証結果の概要(コンセント(2 時間耐火壁))(表 1.13 再掲)

検証対象 コンセント① (試験体 B-c)

コンセント② (試験体 D-a)

コンセント③ (試験体 D-b)

試験体の仕様

コンセントボックス 後付け鋼製ボックス 鋼製ボックス

不燃措置 耐火シート厚 6mm (c 仕様)両面張り

耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張り+強化せっこうボード厚 21mm 張り

耐火シート厚 3mm(b 仕様)重張りの両面張り

たて材左

最高温度 (達した時間)

159.9℃〈9〉 (120 分)

94.7℃〈7〉 (228 分)

99.1℃〈11〉 (207 分)

燃焼痕 炭化 変色も炭化もなし 変色も炭化もなし

たて材右

最高温度 (達した時間)

152.4℃〈10〉 (208 分)

93.0℃〈8〉 (146 分)

95.1℃〈12〉 (145 分)

燃焼痕 炭化 変色も炭化もなし 変色も炭化もなし

よこ材上

最高温度 (達した時間)

199.3℃〈11〉 (120 分)

113.8℃〈9〉 (224 分)

121.4℃〈13〉 (218 分)

燃焼痕 炭化 変色も炭化もなし 変色も炭化もなし

よこ材下

最高温度 (達した時間)

112.3℃〈12〉 (260 分)

91.1℃〈10〉 (151 分)

93.6℃〈14〉 (149 分)

燃焼痕 変色 変色も炭化もなし 変色も炭化もなし

備考 耐火シートの 半分は未発泡 耐火シートは発泡 耐火シートは発泡

(一部は未発泡)

評価 × ○ ○

注)〈 〉内の数字は温度測定位置を示す(図 7.2 参照)。

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7.4.2 関連する既往試験について

耐火構造(2 時間)の壁に対するコンセント措置の性能検証は、今回が初めてと考えられる。なお、

耐火構造(1 時間)の壁のコンセント措置に関しては、木造耐火構造の技術基準導入の際に性能検証が

行われ 1 、その成果は日本ツーバイフォー建築協会の「枠組壁工法耐火建築物設計・施工の手引」など

に反映されている。 また、配線・配管関連の部材メーカーは、貫通部の防火措置について大臣認定を受けた製品を提供し

ている。しかし、現時点では木造耐火構造が適用対象であることを明示している製品は少ない。実際、

コンセント①に用いた後付け鋼製ボックスは、耐火構造(1 時間)の壁貫通部措置として大臣認定(PS060WL-0628)を受けた製品であるが、そのカタログには「木製下地を除く」と記されている。 7.4.3 鋼製ボックスの底面と側面に耐火シート厚 3mm(b 仕様)を重張りして外側から強化せっ

こうボード厚 21mm を被覆したコンセント措置(2 時間耐火壁)について

今回の性能検証によれば、鋼製ボックスの底面と側面に耐火シート厚 3mm(b 仕様)を重張りして外

側から強化せっこうボード厚 21mm で被覆したコンセント措置は、耐火構造(2 時間)の壁の耐火性能

を損なわないことが確認された。 7.4.4 鋼製ボックス底面の両側に耐火シート厚 3mm(b 仕様)を重張りしたコンセント措置(2

時間耐火壁)について

今回の性能検証によれば、鋼製ボックス底面の両側に耐火シート厚 3mm(b 仕様)を重張りしたコン

セント措置は、耐火構造(2 時間)の壁の耐火性能を損なわないことが確認された。 なおこの措置の試験では、鋼製ボックスの外側に張った耐火シートのほとんどが発泡していた。つま

り、この措置が有効性を持つためには、鋼製ボックスの外側に張った耐火シートが十分に発泡すること

が必要と考えられる。 7.4.5 後付け鋼製ボックスの底面の両側に耐火シート厚 6mm(c 仕様)を張ったコンセント措置

(2 時間耐火壁)について

後付け鋼製ボックス底面の両側に耐火シート厚 6mm(c 仕様)を張ったコンセント措置は、今回の性

能検証では、両側のたて材と上部のよこ材が炭化することになった。ただし、裏側に張った耐火シート

はその半分ほどが発泡しておらず、発泡の初期段階で鋼製ボックスから脱落したと考えられる。したが

って、鋼製ボックス外側の耐火シートの脱落を防ぐことによって、耐火構造(2 時間)の壁の耐火性能

1 「木質系構造の耐火性能に関する研究 その 13:コンセントボックス設置壁の耐火性能試験」(日本建築学会大会学術

講演梗概集、pp.147-148、2004.8)、「木質複合構造の耐火性能 その 3:コンセントボックスの耐火性」(日本建築学

会大会学術講演梗概集、pp.73-74、2006.9)。

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を損なわない措置へと発展させることも可能と考えられる。 7.4.6 鋼製ボックスと耐火シートなどを活用したコンセント措置(2 時間耐火壁)の実用化に向

けて

今回の性能検証によって、木造耐火構造(2 時間)の壁のコンセント措置が、鋼製ボックスと耐火シ

ートなどを組合わせることによって実現できる見通しが得られた。ただし、この措置については、実用

に向けた製品開発が大きな課題として残されている。具体的には次の 2 つの課題を中心に検討を進める

必要があると考えられる。

課題① 電気工による取付作業を可能にする部材のパッケージ化 課題② 鋼製ボックスの外側に張った耐火シートの脱落防止

課題①について:電気工が円滑に作業できることが、実用的なコンセント措置の必須条件である。つ

まり、強化せっこうボードを使うにせよ耐火シートを使うにせよ、用いる部材は簡便な組立作業のみで

済むよう予め加工されている必要がある。パッケージ化の方向性には、概ね事前に組立ててしまうプレ

ファブ化と一定の現場組立作業を前提とした部材キット化の 2 つがありうると思われる。 課題②について:通常の用い方では、耐火シートは接着面が最後に発泡する。一方、鋼製ボックスの

裏側に設けた場合には、接着面から発泡していく。そのため、耐火シートをコンセント措置に活用する

際には、発泡途中の脱落を防止する何らかの手立てが求められる。耐火シートの厚みや固さを考慮しな

がら、鋼製ボックスの加工等も検討することが重要になる。