第8章ds-cdma 8.1 ds-cdmaの原理 - · pdf filefa/tohoku_u「無線伝送工学」 1...
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FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 1
第8章DS-CDMA8.1 DS-CDMAの原理
通信工学専攻
安達文幸
「無線伝送工学」
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 2
目次
8.1.1 スペクトル拡散通信
8.1.2 DS-CDMA8.1.2.1 拡散
8.1.2.2 逆拡散
8.1.3 雑音
8.1.3.1 広帯域雑音
8.1.3.2 狭帯域雑音
8.1.4 拡散符号
8.1.4.1 拡散符号の条件
8.1.4.2 擬似雑音(PN)符号
8.1.4.3 直交符号
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 3
8.1.1 スペクトル拡散通信
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 4
スペクトル拡散
ス ペ ク ト ル 拡 散 通 信 (spread spectrumcommunication:SS通信)とは,情報信号のスペクトルをより広い帯域幅に広げて伝送する通信方式のことである.
信号の電力スペクトル密度が雑音のそれより低くなる場合もあり,第3者が傍受しようとしても難しいことから,軍事通信に使われてきた.
S
W
N0
f SW
N0
f
スペクトル拡散
0
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 6
シャノンの通信容量と通信帯域幅との関係
論は教えていない.までは,シャノンの理方式を用いれば良いか
な変調方式や誤り訂正信するためにどのよう●ただし,誤りなく通
である.となり,
より
の限界値は,としたときの●
である.により実現するのが●帯域幅の拡大を拡散
できる.ことで通信容量を増加のまま帯域幅を広げる
わち,信号電力一定は単調に増加するすなて行くと,通信路容量
を広げ帯域幅を一定)にしたままでを一定(すなわち,●
とするとここで
●通信容量
0
20
221
21
0
02
0
2
/443.1443.1log)/(
1,loglog)1(log
CDMA
//)/(1log
/)/(/)/1(log
NSCeNSC
xeexxxCW
WSNSWNSWC
WNSNSNSWC
W
x
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8.1.2 DS-CDMA
8.1.2.1 拡散
8.1.2.2 逆拡散
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 8
直接拡散,周波数ホッピングと時間ホッピング
マルチアクセス機能の付加
DS-CDMA:各ユーザに固有の拡散符号を割り当てる
FH-CDMA:各ユーザに固有の周波数ホッピングパターンを割り当てる
スペクトル拡散通信(SS通信)
周波数ホッピング(FH)
時間ホッピング(TH)
直接拡散(DS) マルチアクセス機能 DS-CDMAFH-CDMA
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拡散しないシステム
スペクトル拡散をしないディジタルシステムの例としてBPSK(binary phase shift keying)変調を用いるシステムを示す.
T
Acos(2fct)
受信フィルタ
2cos(2fct)
チャネル
dk=±1送信データ0/1
2222
)(])(sin[
4)(])(sin[
4)(
Tff
TffTATff
TffTAfPc
c
c
cs
電力スペクトル密度
0 fc-fc
電力スペクトル密度Ps(f)
A2T/4
送信フィルタ
)(ˆ tdBPSK変調
拡散
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である.を超えない最大の整数はであり,
ここで,
表わせる.た信号は次式のようにとするときの拡散されを拡散率
で表すと,のインパルス応答を信チップ整形フィルタを乗算し拡散する.送
に拡散チップ系列波形●データシンボル系列
xx
jj
d
nTthcdts
Nth
nckd
k
ncTnNn
T
nk
QPSK ,2
11BPSK ,01
)()(
factor) spreading()(
,...}1,0,1...,;{,...}1,0,1...,;{
/
}{ kd
}{ nc
送信チップ整形
フィルタhT(t)
)(ts
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 11
である.ここで,
ただし,
ように表わせる.
は次式のである.このとき,と,
とするフィルタを用いるものを持つ送信チップ整形●矩形インパルス応答
10 if )0(1)(
)/()(
)/()(
)()()(
)()(otherwise0 if ),0(1)(
xxu
nTtuctc
kTtudtd
tctdts
tsTtth
ncn
kk
cT
d(t) c(t)
+1 +1 +1+1 -1 -1-1 +1 -1-1 -1 +1
)()( tctd
c
ccT fT
fTTfH
)sin(
)(
Tc0
1t
hT(t)
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になっている.帯信号の等価低域表現はつまり,
る.は次式のように表わせ信号に変換された信号●
RF)()]2exp()(Re[
)2sin()](Im[)2cos()](Re[)(~RF
tstfjtsA
tftsAtftsAts
c
cc
PN発生器
{dk }
{cn}
データ変調器送信
データ
cTTN /
Re[As(t)]cos(2fct)]-Im[As(t)]sin(2fct)]
-Asin(2fct)
搬送波発生器
Im[s(t)]
Acos(2fct)Re[s(t)]
/2s(t)
無線周波数帯の信号
送信チップ整形フィルタ
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BPSK変調信号スペクトルの拡散
拡散率(SF: spreading factor)が4で,データ変調と拡散変調ともに2PSKの場合の例を下図に示す.
データ変調(2PSK)
“1”“0”
搬送波cos(2fct)
拡散符号系列
拡散された信号
“1” “0” “0” “1”
+1-1
チップフィルタ出力s(t)
+1 +1-1 -1
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周波数スペクトル
拡散チップ系列に周期Nチップの疑似雑音(PN)系列を用いる.
Tm
mm
c
ncn
n
dttTmjtcT
tTmjtc
NT
nTtuctc
Nc
0))/(2exp()()/1(
))/(2exp()(
)()(
}1{PN
ただし
る.級数で表すことができ
ーリエって,次式のようにフの周期波形になる.従は,周期
であるので,の周期が系列
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みなしてよい.)波の集まりであると両側波帯変調波(
を搬送波とした信号は,周波数●従って,拡散された
みなしてよい.
り立っているとは多数の搬送波から成このことは,拡散信号
をもつ.の整数倍の多数の成分は周波数が●すなわち,
DSB/
/1)(
)/2exp(1exp/
)/sin(
2expexp/
)/sin(
1
0
1
0
Tm
Ttc
NmnjcNN
mjNm
Nm
TTmnjc
TTmj
TmTTmT
TT
N
nn
N
n
cn
c
c
ccm
電力スペクトル密度はどのようになるだろうか?BPSK変調の場合について,s(t)の電力スペクトル密度を求める.
電力スペクトル密度P(f)は自己相関関数のフーリエ変換であるから,s(t)の自己相関関数R()はc(t)の自己相関関数とd(t)のそれとの積である.
このことは,P(f)はc(t)の電力スペクトル密度Pc(f)とd(t)の電力スペクトル密度Pd(f)との畳み込みになっていることを意味している.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 16
)()()]()([)]()([)]()()()([)]()([)(
dc RRtdtdEtctcEtdtctdtcEtstsER
dfjRfP
dfjRfP
tdtcfPfP
fPfPdfjRfP
cc
dd
dc
dc
)2exp()()(
)2exp()()(
)()()()(
)()()2exp()()(
スペクトル密度であり
の電力およびはそれぞれ,およびここで,
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 17
elesewhereNTNTN
TNR
NTNTRtcN
elesewereTT
R
cc
c
c
ccc
d
.囲で次式のようになる
の範の周期関数になり,は周期相関関数
の自己るときの系列を拡散符号に用いの●一方,周期
すると
のと仮定が等確率で生起するもとムで,●送信データがランダ
,/1||0,/1}/||1){/11(
/||)/11(1)(
2/||)()(PN
,0||0,/||1
)(
"0""1"
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T
T-T
-T 0
0
Rd()
Rc()
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2)sin()2exp()()(
/1)()(
fTfTTdfjRfP
TRfP
dd
dd
る.の連続スペクトルにな帯域幅
,次式のように等価のフーリエ変換でありは●
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
-4 -2 0 2 4fT
Pow
er sp
ectru
m d
ensi
ty
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c
c
c
T
cc
ckk
T
T cc
ccc
k ckc
cc
c
dNT
kTNT
NG
NdT
NTN
NG
elesewhereTTN
NR
NTkjGR
NTRfP
00,
20
2cos/1/112
1/||1/111
,0||0,/||1/11
/1)(
2exp)(
)()(
であるから,
でのように表せる.ここ
そのフーリエ級数はの周期関数であるのでは周期
を求める.●次に
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0
2
2
2
/2
0
/2
00,
)/()sin(/11)(1)(
)(/
)/sin(/11
)/2cos(12
/11
)cossin(2
sin/11
cos2
1/11/2
kc
cc
c
Nk
Nkkk
c
TkffT
fTN
NfN
fP
RNk
NkN
N
Nkk
Nk
N
xxxk
Nxk
N
xdxxk
Nk
NG
NTkx
得られる.電力スペクトル密度がをフーリエ変換すれば●
とおくとここで
繰返し周期Nの擬似雑音(PN)系列を用いて生成した,振幅±1,パルス幅(チップ幅)Tc=T/NのNRZ波形を拡散信号とするとき, Pc(f)は1/T[Hz]間隔の線スペクトルの集合になる.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 22
1,)/()sin(1)(
0
2
NTkffT
fTN
fPkc
cc
0N/T=1/Tc
f
PN系列の電力スペクトル密度Pc(f)
-N/T=1/Tc
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Nが十分大きければ,Pd(f)の広がりは拡散信号のそれに比べて十分狭い.このようなとき,P(f)は次式のように近似できることが導かれる.
すなわち,拡散された信号波形の電力スペクトルの広がりはもとのディジタル信号波形のN倍になっていることが分かる.
2)sin(
)()(
)2exp()()(
c
ccdc fT
fTTfPfP
dfjRfP
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PN信号によるスペクトルの拡散
・
Nチップ周期のPN, T=NTc
(c)拡散された信号
f1/T
2)sin()(
fT
fTTfPd
0
2
)/(/
)/sin(1)(k
c TkfNk
NkN
fP
N/T f
2)sin()(
c
cc fT
fTTfP
N/T f
電力スペクトル密度
図 拡散された信号の電力スペクトル密度
d(t)
c(t)
d(t)c(t)
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電力スペクトルの簡単なモデル
データ変調波d(t)の電力スペクトル密度(電力を1に正規化してあることに注意)
拡散されたデータ変調波c(t)d(t)の電力スペクトル密度
RF帯送信波の電力スペクトル密度
T1/T
0
f
Tc=T/N1/Tc
fc-fc
1/Tc
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逆拡散
拡散された信号中のPN信号と同じタイミングの同一PN信号を受信信号に乗ずることを逆拡散という.
こうすると,広い帯域幅(~1/Tc)に拡散されていたデータ信号成分はもとの帯域幅(~1/T)のスペクトルに戻される.
一方,白色雑音のスペクトルは逆拡散で不変である.
PN発生器
c*(t)
ディジタル復調器 受信データ
Tk
kTdt
T)1(1
積分器
r(t)t=(k+1)T
)(ˆ td kd̂
低域フィルタ
Im[r(t)]
局部発振器
2cos(2fct)
Re[r(t)]
+/2
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表現である.は受信信号の等価低域
ここで
ことができる.は次のように書き表す項は雑音である.上式ここで,第
.は次式のように表せる●受信信号
)()()()()(
)]2exp()(Re[)2exp()()()()(Re)(~
2)}2sin()()2cos()({
)}2sin()]()(Im[)2cos()]()({Re[)(~)(~
tjntntctAdtr
tfjtrtfjtjntntctAdtr
tftntftntftctdtftctdAtr
tr
sc
c
csc
cscc
cc
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は雑音成分である.ここで,
であるからとなる.ところで
逆拡散された信号は
逆拡散する.の複素共役を乗積してに拡散信号●次に,
る.を取り出すことができつまり,等価低域信号
のベースバンド成分
のベースバンド成分
る.出すと次式のようにな成分をフィルタで取り
ドを乗積してベースバンおよびに●受信信号
)()()()(ˆ
1|)(|)()(|)(|)()()}()()({
)()()(ˆ
)()()(
)](Im[)()]()(Im[)]2sin(2[)(~
)](Re[)()]()(Re[)2cos(2)(~
)2sin(2)2cos(2)(~
2
tntntAdtd
tctctntctAdtctntctAd
tctrtd
tctrtr
trtntctdAtftr
trtntctdAtftr
tftftr
s
c
c
c
cc
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●積分フィルタを用いてを時間区間[kT,(k+1)T]で積分すると,送信データシンボルに対応する受信シンボルが次式のように得られる.
第1項は信号成分,第2項は雑音成分である.d^kを用いて,データ判
定が行われる.
●BPSK変調と2値拡散符号を用いるときの逆拡散・積分の様子を次の図に示す.このときのデータ判定はRe[d^
k]にもとづいて行われる.
Tk
kTk
Tk
kTk dttctnT
AddttctrT
d)1()1(
)()(1)()(1ˆ
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 30
逆拡散・積分過程
)(ˆ td
kd̂
t
t受信信号Ad(t)c(t)+n(t)
拡散波形c(t)
(k-1)T kT (k+1)T
(k-1)T kT
(k+1)T t積分器出力
t逆拡散された信号
1ˆ
kd
送信データ信号d(t)
dk=+1dk+1=-1
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8.1.3雑音
8.1.3.1 広帯域雑音
8.1.3.2 狭帯域雑音
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広帯域雑音
白色雑音を周波数変換,逆拡散したときの雑音成分電力スペクトル密度
0
N0
0
N0/2RF帯域の白色雑音n(t)
周波数変換w(t)=n(t)×2cos(2fct)
fn
f
0 fn
N0f/(1/Tc)
f
1/Tc
0.5/Tc
0.5/T
逆拡散された雑音の電力スペクトル密度(周波数がfnの成分のみ表示)
-0.5/Tc
逆拡散
fc-fc
積分器出力帯域
周波数が|fn|>0.5/Tcの拡
散された雑音成分は積分器出力帯域の外
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周波数が|fn|<0.5/Tcの雑音成分が積分器出力に現れる
w(t)=n(t)×2cos(2fct)
逆拡散された雑音の電力スペクトル密度
帯域幅1/Tcには全部で(1/Tc)/f個の微小帯域があるから,積分器出力帯域で見た雑音電力スペクトル密度は結局, (1/Tc)/f×N0f/(1/Tc)=N0となる.すなわち,逆拡散しないときと同じである.
0
N0
fn 0.5/Tc-0.5/Tcf
0 0.5/T
N0
0 0.5/T
N0f/(1/Tc) f
f
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狭帯域雑音の抑圧
RF帯域の正弦波g(t)=Bsin(2(fc+fg)t)が妨害信号として受信されているとき,積分器出力帯域に落ち込む成分の電力スペクトル密度を求める
周波数変換w(t)=g(t)×2cos(2fct)の低域成分
逆拡散された成分の電力密度スペクトル(周波数が+fgの成分のみ表示)
逆拡散
0 fg
TcB2/41/Tc
0.5/T
積分器出力帯域
0f
fc-fc fc+fg-fc-fg
B2/4B2/4
0 fg 0.5/Tc-0.5/Tc -fg
B2/4B2/4
f
f
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 35
積分器出力電力
Tc×B2/4×(1/T)×2= (Tc/T)×(B2/2)=(B2/2)/Nとなるので,妨害信号電力はN分の1に抑圧される.
すなわち,妨害信号が拡散されたことと等価である.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 36
8.1.4 拡散符号
8.1.4.1 拡散符号の条件
8.1.4.2 擬似雑音(PN)符号
8.1.4.3 直交符号
参考文献丸林,中川,河野:スペクトル拡散通信とその応用,電子情報通信学会,1998年
複数のユーザに異なる拡散符号を割り当てることにより,同一の周波数帯域を使用して同時通信できる.これが符号分割マルチアクセスである.
拡散符号はシステムの性能を左右する重要な役割を果たす.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 37
PN発生器
ci(t)
ディジタル復調器
受信データ
d^i,k
積分器
同期
多数のユーザ
ci(t), i=0,1,2,…
ユーザ#iの信号を受信する受信機(等価低域表現)
d^i(t)
t=(k+1)T
復調器
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 38
拡散符号の条件
DS-CDMA拡散符号として用いるための条件をまとめると以下のようになる.
自己相関関数Raa(l)がl mod N=0(Nは周期)で鋭
いピークを有し,それ以外で十分小さい絶対値をもつこと.これは,初期同期捕捉と同期保持が容易であることのための条件である.
符号の集合内で,任意の2つの符号間の相互相関関数が全ての時間シフトlで十分小さな絶対値であること.これは,他ユーザからの干渉をできるだけ低く抑えるための条件である.
符号数が多いこと.これは,割当できる拡散符号数が多いための条件である.しかし,他ユーザからの干渉により同時通信者数が制限されるので無限大である必要はない.
ユーザ#iからのCDMA信号を受信することを考える.
干渉ユーザ#jが存在し,その拡散符号が時間同期していて,しかも搬送波の周波数と位相も同期しているものとする(最悪条件) .
下図は等価低域表現.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 39
PN発生器
di(t)
ci(t)ディジタル変調器送信
データ
di,k si(t)
PN発生器
dj(t)
cj(t)ディジタル変調器送信
データ
cTTN /
dj,k sj(t)
ユーザ#i
ユーザ#jPN
発生器
ci(t)ディジタル復調器
受信データ
積分器
t=(k+1)T)(ˆ tdi
基地局
移動局
kid ,ˆ
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 40
)は発生しない.ユーザユーザとなって,干渉成分(
を満足すれば
つの系列が直交条件●もし,
)ユーザ干渉成分(ユーザユーザ希望ユーザ成分
の軟判定値●ユーザ
ij
dAd
ccN
iji
ccN
dAdA
dttctcT
dAdA
dttctctdAtctdAT
d
i
kiiki
N
nnjni
N
nnjnikjjkii
Tk
kT ijkjjkii
Tk
kT ijjjiiiki
##
ˆ
01
2##)#(
1
)()(1
)()}()()()({1ˆ
#
,,
1
0,,
1
0,,,,
)1(,,
)1(,
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 41
もし,拡散符号が完全直交でなければ,ユーザ#jはユーザ゙#iに干渉を与えることになる.つまり,相互相関の小さい拡散符号の設計が重要になる.
基地局からの距離が異なるとき,受信信号振幅に大きな差が発生する.相互相関を完全にはゼロにできないので大きな干渉が発生することになる.これは遠近問題として知られている.
遠近問題を解決するのが送信電力制御である.
ij
Tk
kT ijkjj
Tk
kT ijkjjkiiki
AAdttctcT
dA
dttctcT
dAdAd
if)()(1
)()(1ˆ
)1(
,
)1(
,,,
ユーザ#j
ユーザ#i
基地局
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 42
擬似雑音(PN)符号
熱雑音などの白色雑音は自己相関関数が時間シフトゼロで鋭いピークをもち,それ以外ではゼロとなる不規則波形である.
PN系列は熱雑音のような不規則性を有しているが,周期性を持った決定論的な系列である.
系列の周期性,相似性は,自己相関関数,相互相関関数で測ることができる.周期Tを有する時間関数a(t),b(t)の自己相関関数と相互相関関数は次式で定義される.
T
ab
T
aa
dttbtaT
R
dttataT
R
0
0
)()(1)(
)()(1)(
相互相関関数
自己相関関数
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 43
自己相関関数は,ある時間関数(または系列)とそれを時間的にシフトしたものとの類似性(周期性)を表し,周期関数の自己相関関数は周期関数になる.相互相関関数は,2つの時間関数の間の類似性を表し,相互相関関数が零に近いほどお互いに似ていない関数であることを意味する.時間関数 a(t), b(t) が周期 N チップの周期系列{an=±1;n=0~N-1},{bn=±1;n=0~N-1} から構成されるとき,a(t), b(t)の自己相関関数や相互相関関数は{an},{bn}の自己相関関数Raa(l)と相互相関関数Rab(l)を用いて表すことができる.
1
0mod)(
1
0mod)(
)(
)(
N
nNlnnab
N
nNlnnaa
balR
aalR
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 44
である.
ここで,
の領域でとすると,
c
cab
cabab
caa
caaaa
c
N
nNlnnab
N
nNlnnaa
Tl
lT
lRlT
lRR
lT
lRlT
lRR
NT
balR
aalR
)1(1)()(
)1(1)()(
0
)(
)(
1
0mod)(
1
0mod)(
狭義のPN系列は「自己相関関数が2値だけをとり,かつ1周期中の0 (または-1)の個数と1(または+1)の個数の差がたかだか1である2元または2値の周期系列」.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 45
otherwise ,10mod ,
)(
PN21)(2}1,0{)(}1{
)()(2)(
)()(2)(
1
0
1
0mod)(
1
0
1
0mod)(
NlNlR
naanaa
lnbnaNbalR
lnanaNaalR
aa
nn
N
n
N
nNlnnab
N
n
N
nNlnnaa
系列と呼ぶ.
を狭義のが次のようになるもの値系列の自己相関関数従って,
である.とするとであり,ここで,
相互相関関数
自己相関関数
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 46
熱雑音などの白色雑音は自己相関関数が時間シフト0で鋭いピークをもち,それ以外ではゼロとなる不規則波形である.
狭義のPN系列は時間シフトがNチップ(l mod N=0)以外で自己相関関数値がゼロに近い小さな値をもつ2元(または2値)周期系列である.また,1周期中に現れる0(または-1)の個数と1(または+1)の個数がほとんどバランスしている.このように雑音と似た性質をもっている.
排他的論理和による帰還タップをもつ線形帰還シフトレジスタ(LFSR:linear feedback shift register)に全ゼロ以外の初期値を与えることにより2元(0, 1)の周期系列を生成できる.
代表的なPN系列の一つが最大周期シフトレジスタ(Maximum length shift register)系列であり,M系列と呼ばれる.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 47
m段LSFRで生成されるM系列の周期はN=2m-1になる.m=4のときの周期はN=24-1=15となる.
帰還結線は11001で多項式表現はx4 + x3+1
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 48
4段LSFRで生成されるM系列{a(n)=0,1;n=0~14}をパルス幅Tcで±1の値をもつNRZ信号a(t)に変換した2値系列{an=±1;n=0~14}を考える.
その自己相関関数は,鋭いピークを15チップの整数倍の時間シフトで有する周期N=15の周期関数である.また,そのスペクトルは1/T(=1/(15Tc))毎の線スペクトルの集合であり,その電力スペクトル密度は次式のようになる.
0
2
)/()sin(1)(
mc
cc Tmf
fTfT
NfP
)/()(
10)(11)(
nTtuata
anaana
cn
n
n
であり, (n+1)Tc
+1t
nTc
(n+1)Tc
-1
tnTc
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 49
周期15のM系列の自己相関関数と電力スペクトル密度
Raa(l)
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 50
M系列の特徴狭義のPN系列の定義を満たしている.1周期中の1(または+1)の連なりの確率分布と0(または-1)の連なりの確率分布がほとんど等しい,かつ連なりが1つ増える毎に確率が半減する.LFSRから一意に決定される周期系列で,再現できる.
しかし相互相関は必ずしも良くない.周期が与えられたときの系列数が限られている.周期1023のとき60個しかない.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 52
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 53
周期31のM系列生成用LFSR
x5 x4 x2x3 x0x1
周期31のM系列生成用LFSR帰還結線は101001で多項式表現はx5 + x3+1
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 54出典:丸林,中川,河野:スペクトル拡散通信とその応用,電子情報通信学会,1998年
31
周期31のM系列の自己相関と相互相関の例
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 55
Gold系列周期Nの2つのM系列の一方をシフトさせたものとの排他論理和で合成して得られる周期NのLFSR系列をGold系列と呼ぶ.
M系列発生器
M系列発生器
Gold系列
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 56
Preferred pairなGold系列M系列の中で相互相関の値が,小さな3値しか取らないものを Preferred pair な M 系列と呼ぶ.このよ うなPreferred pairなM系列から生成されるGold系列をPreferred pairなGold系列と呼ぶ.
LSFR段数
周期 M系列数
PreferredM系列数
PreferredGold系列数
10 1023 60 3 1025
拡散符号設計
上りリンクでは,ユーザチャネルは非同期であるから疑似雑音チップ系列を拡散符号として用いることができる.
しかし,拡散符号間の直交性が保てないから非零の相互相関によりマルチアクセス干渉(MAI)が発生し,これが上りリンク容量を制限する.
従って,小さい相互相関を有する拡散符号を設計することが重要である.
一方,下りリンクでは,すべてのユーザのチャネルは同期している.従って,直交符号を用いることができる.
良く知られた直交符号は直交可変拡散率符号(OVSF符号)[Adachi, 1997]である.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 57
F. Adachi, M. Sawahashi, and K. Okawa, “Tree-structured generation oforthogonal spreading codes with different lengths for forward link of DS-CDMA mobile radio,” IEE Electron. Lett., vol. 33, pp. 27-28, Jan. 1997.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 58
直交符号
各ユーザの時間が完全同期している場合に用いられる.このような条件が成立するのは,セルラ通信システムにおける基地局からの送信である.
直交条件
2値直交関数として実数関数であるHadamard-Walsh関数が知られている.周期NのHadamard-Walsh関数は全部でN個存在する.
jidttataT
ji ,0)()(0
+1 -1 +1 -1 +1 -1 +1 -1
+1 +1 -1 -1 +1 +1 -1 -1
+1 -1 -1 +1 +1 -1 +1 +10 T
a0(t)
a1(t)
a2(t)
t
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 59
Hadamard-Walsh関数の生成法
号になる.であり,各行が拡散符
ただし
の行列であり,は
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
1111
,
1111
1111
1111
1111
1111
,1
84
21
2/2/
2/2/
HH
HH
HHHH
H
H
NN
NNN
N NN
直交可変拡散率(OVSF)符号
最近の移動通信では多様な伝送レートの通信(マルチレート通信)が要求されている.
チップレート一定(すなわち拡散帯域幅一定)のもとで干渉を発生せずにマルチレート伝送を行うユーザを多重するためには,異なる拡散率の拡散符号間の直交性を保証しなければならない.このような性質を持つ拡散符号が,次式のように再帰的に生成される直交可変拡散率(OVSF: orthogonal variable spreading factor)符号であり,次のように再帰的に生成できる[Adachi].
CN(2n)およびCN(2n+1),n=0~N/2-1,は±1を要素に持つN次元の行ベクトルであり,C1=C1(0)=1である.
下りリンクでは全てのユーザの信号が時間同期しているので,にOVSF符号を用いることができる.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 60
CN/2(n)
CN(2n)=[CN/2(n), CN/2(n)]
CN(2n+1)=[CN/2(n), -CN/2(n)]
直交可変拡散率(OVSF)符号はWalsh-Hadamard系列からなる符号である..OVSF符号は木構造を持っている.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 61
c1(SF=1)=1
c0(SF=2)= (1,1)
c0(SF=4)=(1,1,1,1)
c1(SF=4) = (1,1,-1,-1)
c2(SF=4) = (1,-1,1,-1)
c2(SF=4) = (1,-1,-1,1)
c1(SF=2)= (1,-1)
SF= 1(OFDM)
SF = 2
SF = 4
SF = 8
c0(SF=8) = (1,1,1,1,1,1,1,1)
c1(SF=8) = (1,1,1,1,-1,-1,-1,-1)
c2(SF=8) = (1,1,-1,-1,1,1,-1,-1)
c3(SF=8) = (1,1,-1,-1,-1,-1,1,1)
c4(SF=8) = (1,-1,1,-1,1,-1,1,-1)
c5(SF=8) = (1,-1,1,-1,-1,1,-1,1)
c6(SF=8) = (1,-1,-1,1,1,-1,-1,1)
c7(SF=8) = (1,-1,-1,1,-1,1,1,-1)
F. Adachi, M. Sawahashi, and K. Okawa, “Tree-structured generation of orthogonal spreading codes withdifferent lengths for forward link of DS-CDMA mobile radio,” IEE Electron. Lett., vol. 33, pp. 27-28, Jan.1997.
拡散率Nが同じN個の符号は互いに直交している.これらの符号は拡散率がそれより小さい符号(それより左側の符号)と,また直交している.
しかし,ある符号とそれに到達する枝を左に遡った親符号とは直交関係にない.例えば,N=8の8個の符号は互いに直交しているが,C8(2)符号はその親であるC4(1)符号,C2(0)符号,C1(0)符号とは直交関係にない.
OVSF符号木を用いれば,異なる伝送レートのユーザを直交させるための拡散符号を簡単に見つけ出すことができる.
例えば,シンボルレートがチップレートの1/8(つまりN=8)のユーザ#0とシンボルレートがチップレートの1/4(つまりN=4)のユーザ#1を直交多重する.このとき,もしユーザ#0にはC8(2)符号を割り当てたなら,ユーザ#1にはC4(1)以外の符号を割り当てればよい.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 62
スクランブル
直交拡散符号と共通の疑似雑音系列との積は疑似直交符号を形成する.
疑似直交符号の自己相関関数RCC(m)はデルタ関数に近い.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 63
Scramble seq.cpn(n)
cOVSF(n) c(n)
c*(n-m)
c(n) RCC(m)SF
1
自己相関関数
1
m0 1-1
RCC(m)
-2 2
IPI IPI
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 64
直交下りリンク
Hadamard-Walsh符号やOVSF符号は規則性の高い系列である(自己相関関数を調べると理解できる)ので,拡散符号として適していない.
直交性を保ちつつランダム性を持たせるには,全ての直交関数に同一のPN系列を乗算すればよい.
なお,このPN系列の周期は,直交系列のそれの数倍以上であっても良い.このようなPN系列は長周期PN系列と呼ばれる.
データ変調
ユーザ#iのデータ
ci(n)
データ変調
ユーザ#jのデータ
cj(n)
cpn(n)
)()()( , ncncnc pnuOVSFu 疑似直交符号
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 65
ディジタル変調
ユーザ#iの送信データ
di,kai(t)
ディジタル
変調ユーザ#jの送信データ
dj,k aj(t)pn(t)
ディジタル復調器 受信
データ
ai(t)pn(t)
積分器
ユーザ#i
基地局 t=(k+1)T
移動局
kid ,ˆ
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 66
ユーザ#iの受信機を考える.
しない.となって,干渉は発生
符号であるから
は直交条件を満足するここで,
であるので常に
系列であるからのが逆拡散・積分出力は,
)(ˆ
WalshHadamard)(),(
)()(1)()(
)()(|)(|1ˆ
1|)(|PN1)(
,
)1(
)1( 2,,,
mAdd
tata
dttataT
mAdmAd
dttatatpnT
dAdAd
tpntpn
iki
ji
Tm
mT ijji
Tk
kT ijkjjkiiki
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 67
参考文献
[1] 丸林,中川,河野:スペクトル拡散通信とその応用,電子情報通信学会,1998年
[2] F. Adachi and D. K. Kim, “Interference suppressionfactor in DS-CDMA systems,” IEE Electronics Letters, vol.35, pp.2176-2177, Dec. 1999.
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 68
問題8.1.1周期31のM系列生成用LFSRの自己相関関数と相互相関関数を求めよ.
帰還結線が101001(多項式表現x5 + x3+1)のM系列
帰 還 結 線 が 101111 ( 多 項 式 表 現 x5 +x3+x2+x1+1)のM系列
FA/Tohoku_U「無線伝送工学」 69
問題8.1.2問1:次のように再帰的に生成されるHadamard-Walsh系列の自己
相関関数と相互相関関数を求めよ.ただし,周期N=32の系列とする.
問2:自己相関関数および相互相関関数を考察することにより,なぜHadamard-Walsh系列とスクランブル符号との積を拡散系列として用いるのか,その理由を述べよ.
問3:生成多項式x5+x3+1の周期31のM系列(1,0)を(+1, -1)の系列に変換し,それに-1の値を持つ1チップを追加して周期32の系列を生成する.それとHadamard-Walsh系列との積の系列の自己相関関数と相互相関関数を求め,Hadamard-Walsh系列のそれらと比較せよ.
11
2/2/
2/2/
HHH
HHH
NN
NNN