78 日 本 応 用 動 物 昆 虫 学 会 誌 第6巻 第1号

パ ラフ ィン 紙 に イ ネ カ ラバ エ の卵

を産 み つ け させ る方 法1

湯 嶋 健 ・富 沢 純 士

農林 省農業技術研 究所 ・農林省農事試験場

昆虫 を人工食餌に よって飼 育す る場合,卵 の殺 菌が完

全 に行 なわれ るためには,紙 に産 卵が行 なわれ る ことが

望 ま しい。紙 に産卵 しない ような場合,た とえば シロイ

チモジマダ ラメイガにおいては,植 物体上に産 みつけ ら

れ た卵を一 粒ずつはが し,パ ラフ ィン紙にアルブ ミンで

は りつ ける とい う操 作 も必要 とな り(内 藤,1959),き

わめて手 数がかか る。

イネカラバエの場合において もなかなか紙には産卵 し

ないが,次 の よ うな操 作に よってパ ラフ ィン紙上に産卵

させ ることがで きるので簡単に報告す る。

方法 径2.5cm高 さ15cmの 試験管 の底 に脱脂綿 をつ

め,水 を少 し含 ませ る。 円筒状 に巻 いたパラフ ィン紙を

試験 管の管壁に きっち りと接す るよ うに して入れ,根 も

とを水で しめ らした脱脂綿を まいた イネ苗を1～2本 入

れ る。次 に雌雄 約10組 のカ ラバエ成虫を入れ パ ラフィン

紙 のふ たをす る。 イネに産 卵が相 当多数行なわれ るよ う

にな った ら,イ ネ苗 だけ を取 り去 るか,イ ネ苗 を含 まな

い上述 の操作 を行 な った試験管 にカ ラバエを移す と,管

壁 に沿 って入れ たパ ラフィン紙およびふ たに使 ったパラ

フ ィン紙上に産卵が行なわれる。

管壁 に接 して入れたパ ラフィン紙のつ ぎ目は蜂 みつ を

水で うすめた ものを ガラス棒で しめ しては り合わせ る。

この よ うにす ると,カ ラバエはみつをなめ ることに よっ

て産卵数が増す とともに,紙 と試験管のあいだに虫がは

い出 ることを防 ぐ。

結果 以上の操作 によ って若干の卵 を得 ることがで き

るが,イ ネに産卵 させ た場合 に比べ て産卵数 はきわめて

少 な く,ま たち ょっとした不 明の要 因によ って多数の産

A Method for Obtaining Eggs of the Rice Stem Maggot, Chlorops oryzae MATSUMURA, on _paper. By Takeshi YUSHIMA and Junshi TOMISAWA, National Institute of Agricultural Sciences and National Agricultural Experiment Station.日本 応用動物 昆虫学会誌 第6巻 第1号 (1961年12月16日 受領)

1962年3月 短 報 79

卵が行 なわれ た りほ とんど行 なわれ なか った りす る。 し

か し,最 も多数産卵 され る場合 には1日 に1試 験 管当た

り,約50粒,最 少2～3粒,平 均約20粒 で人工飼 育の 目

的にはあ る程 度 こたえ られる(第1図)。

このよ うに してパ ラフィン紙に産 みつけ られた卵は殺

菌が容易に行なわれ,60本 の人工食 餌に接種 して3本 に

雑菌の発生 を見たにす ぎなか った。 しか し,残 念なが ら,

その後の実験を も含め,現 在 まで物理的あ るい は化学的

に異な った約20種 類,300本 の人工食餌に よ って飼育 を

試みたがいずれ も失敗 した。

引 用 文 献

内藤 篤(1959)応 動昆3: 136～137.

第1図 パ ラ フ ィ ン紙 上 に産 卵 さ れ た イ ネ カ ラバ エ

の 卵(背 景 の 黒 い の は下 に 黒色 の 紙 を 置 い

たた め)