age-associated elongation of the ascending aorta in adults. · 2013-04-25 · age-associated...

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表1 体表面での推定動脈長 (頸動脈~大腿動脈):car-fem (胸骨上端~大腿動脈)-(胸骨~頸動脈): (ssn-fem)-(ssn-car) (頸動脈~大腿動脈)-(胸骨~頸動脈): (car-fem)-(ssn-car) (胸骨上端~臍部)+(臍部~大腿動脈)- (胸骨~頸動脈): (ssn-umb-fem)-(ssn-car) 英文原著論文紹介 ⑮ 加齢 Age-associated elongation of the ascending aorta in adults. Sugawara J, Hayashi K, Yokoi T, Tanaka H. JACC Cardiovasc Imaging 200; 1: 3-. PMID: 1310 動脈長の加齢変化が大動脈脈波伝播速度測定に与える影響 菅原 順(テキサス大学オースチン校キネシオロジー学部、独立行政法人産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門) 林貢一郎/横井孝志/田中弘文 目 的 通常、大動脈脈波伝播速度(pulse wave velocity; PWV)測定では、体表面で測った距離や身長から求 めた推定長が用いられている。しかし、加齢に伴い大 動脈は湾曲・延長すると考えられている。もしそうで あれば、高齢者では若年者に比べて PWV が過小評価 されてしまうことになる。そこで本研究では、大動脈、 頸動脈、および腸骨動脈長の加齢変化特性を明らか にし、それらが大動脈 PWV 測定に与える影響につい て検討した。 方 法 男性 130 名、女性 126 名(19 〜 79 歳)を対象とし た。MRI を用いて、心臓拡張末期における総頸動脈 から大腿部までの横断画像を撮影し、3 次元解析によ り、大動脈、頸動脈、および腸骨動脈長を測定した。 また、大動脈 PWV、中心動脈血圧をそれぞれ form PWV/ABI、HEM-9010AI を用いて測定した。大動 脈 PWV は MRI による大動脈長(下行大動脈長+腸 骨動脈長−頸動脈長)および下記の体表面での推定 動脈長(表 1)を用いて算出した。 結 果 上行大動脈長は加齢に伴い延長した(r = 0.72、p < 0.0001、図1)。また、ステップワイズ解析 の結果、上行大動脈長の有意な独立変数として、大 動脈 PWV(β =0.50)および大動脈脈圧─上腕動脈 脈圧比(β= 0.24)が採択された。下行大動脈長、頸 動脈長、および腸骨動脈長は年齢と有意な相関を示 さなかった。 MRI で得られた動脈長を用いて算出した大動脈 PWV(493 ± 35cm/sec)に対して、測定誤差が最も小 さかったのは(car −fem)−(ssn −car)であった(518 ± 31cm/sec、+5%) (図 2) 。一方、car − fem を用い た場合の誤差は+ 26%であった(621 ± 37cm/sec)。 これらの結果から、加齢に伴う動脈長の変化によっ て生じる誤差よりも、体表面での動脈長推定法によ る誤差の方が大きい可能性が示唆された。 結 論 大動脈 PWV を測定する際の主要部位である下行大 動脈長、頸動脈長および腸骨動脈長の加齢変化は小 さい。一方、加齢変化が著明な上行大動脈は大動脈 PWV の測定に含まれていない。そのため、加齢によ る動脈形状の変化が大動脈 PWV 測定に及ぼす影響は 小さいと考えられる。 図1 上行大動脈長は加齢に伴い延長する 年齢(歳) 上行大動脈長(mm) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 r=0.72 p<0.0001 150 100 50 0 この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles.

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表1 体表面での推定動脈長

(頸動脈~大腿動脈):car-fem

(胸骨上端~大腿動脈)-(胸骨~頸動脈): (ssn-fem)-(ssn-car)

(頸動脈~大腿動脈)-(胸骨~頸動脈): (car-fem)-(ssn-car)

(胸骨上端~臍部)+(臍部~大腿動脈)-(胸骨~頸動脈): (ssn-umb-fem)-(ssn-car)

英文原著論文紹介 ⑮ 加齢

Age-associated elongation of the ascending aorta in adults.Sugawara J, Hayashi K, Yokoi T, Tanaka H.JACC Cardiovasc Imaging 200�; 1: �3�-��. PMID: 1�3���10

動脈長の加齢変化が大動脈脈波伝播速度測定に与える影響菅原 順(テキサス大学オースチン校キネシオロジー学部、独立行政法人産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門)林貢一郎/横井孝志/田中弘文

   目 的

 通常、大動脈脈波伝播速度(pulse wave velocity;PWV)測定では、体表面で測った距離や身長から求めた推定長が用いられている。しかし、加齢に伴い大動脈は湾曲・延長すると考えられている。もしそうであれば、高齢者では若年者に比べて PWV が過小評価されてしまうことになる。そこで本研究では、大動脈、頸動脈、および腸骨動脈長の加齢変化特性を明らかにし、それらが大動脈 PWV 測定に与える影響について検討した。

   方 法

 男性 130 名、女性 126 名(19 〜 79 歳)を対象とした。MRI を用いて、心臓拡張末期における総頸動脈から大腿部までの横断画像を撮影し、3 次元解析により、大動脈、頸動脈、および腸骨動脈長を測定した。また、大動脈 PWV、中心動脈血圧をそれぞれ form PWV/ABI、HEM-9010AI を用いて測定した。大動脈 PWV は MRI による大動脈長(下行大動脈長+腸骨動脈長−頸動脈長)および下記の体表面での推定動脈長(表1)を用いて算出した。

   結 果

 上行大動脈長は加齢に伴い延長した(r =

0.72、p < 0.0001、図1)。また、ステップワイズ解析の結果、上行大動脈長の有意な独立変数として、大動脈 PWV(β =0.50)および大動脈脈圧─上腕動脈脈圧比(β= 0.24)が採択された。下行大動脈長、頸動脈長、および腸骨動脈長は年齢と有意な相関を示さなかった。 MRI で得られた動脈長を用いて算出した大動脈PWV(493 ± 35cm/sec)に対して、測定誤差が最も小さかったのは(car − fem)−(ssn − car)であった(518± 31cm/sec、+5%)(図2)。一方、car − fem を用いた場合の誤差は+ 26%であった(621 ± 37cm/sec)。これらの結果から、加齢に伴う動脈長の変化によって生じる誤差よりも、体表面での動脈長推定法による誤差の方が大きい可能性が示唆された。

   結 論

 大動脈 PWV を測定する際の主要部位である下行大動脈長、頸動脈長および腸骨動脈長の加齢変化は小さい。一方、加齢変化が著明な上行大動脈は大動脈PWV の測定に含まれていない。そのため、加齢による動脈形状の変化が大動脈 PWV 測定に及ぼす影響は小さいと考えられる。

図1 上行大動脈長は加齢に伴い延長する

年齢(歳)

上行大動脈長(mm)

10 20 30 40 50 60 70 80 90

r=0.72p<0.0001

150

100

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この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちらClick "Arterial Stiffness" web site for more articles.

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図2 動脈長をMRIで直接測定した場合のPWV(PWVMRI)と体表面で間接測定した場合のPWVとの関係(左)、   およびそれぞれのBland and Altman's plot(右)

400 800 1,200 1,600 2,000

PWVcar-fem(cm/sec)

r=0.96p<0.0001

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2,200

PWVMRI(cm/sec)400 800 1,200 1,600

400 800 1,200 1,600

400 800 1,200 1,600

400 800 1,200 1,600

Difference in PWV(cm/sec)

-600

-400

-200

0

200

400

600

Averaged PWV(cm/sec)

400 800 1,200 1,600 2,000

PWV(car-fem)-(ssn-car)(cm/sec)

r=0.97p<0.0001

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2,200

PWVMRI(cm/sec)

Difference in PWV(cm/sec)

-600

-400

-200

0

200

400

600

Averaged PWV(cm/sec)

400 800 1,200 1,600 2,000

PWV(ssn-fem)-(ssn-car)(cm/sec)

r=0.97p<0.0001

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2,200

PWVMRI(cm/sec)

Difference in PWV(cm/sec)

-600

-400

-200

0

200

400

600

Averaged PWV(cm/sec)

400 800 1,200 1,600 2,000

PWV(ssn-umb-fem)-(ssn-car)(cm/sec)

r=0.97p<0.0001

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2,200

PWVMRI(cm/sec)

Difference in PWV(cm/sec)

-600

-400

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0

200

400

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Averaged PWV(cm/sec)

英文原著論文紹介 ⑮この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちらClick "Arterial Stiffness" web site for more articles.