ハロゲン化アルキル(alkyl halideweb.tuat.ac.jp/~kajita/files/mcmary 7_2017_11_26.pdfbr r...
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ハロゲン化アルキル(alkyl halide)
・ハロゲン化アルキルの命名法
・ハロゲン化アルキルの合成
アルコールからの合成
・ハロゲン化アルキルの反応
Grignard(グリニャール)試薬
求核置換反応(SN2反応,SN1反応)
脱離反応(E2反応,E1反応)
ハロゲン化アルキルの命名法(1)
段階1:最も長い炭素鎖を見つけて,母体を決める.
多重結合がある場合には,母体の炭素鎖はそれを含むものでなければならない.
段階2:最初の置換基により近い末端から始めて炭素鎖に番号を付ける.
置換基がアルキル基かハロゲンで優先順位は違うのか?
関係なくその置換基に近い末端から始めて炭素鎖に番号をつける.
ブタン2-ブロモ
2-bromobutane
ブタン1-ヨード -3-メチル
1-iodo-3-methylbutane
ペンタン4-ブロモ-1-クロロ
4-bromo-1-chloropentane
問題
つぎのハロゲン化アルキルにIUPAC名(日本語・英語)を付けよ.
CH3CH2CHCH3
Br
CH3CHCH2CH2I
CH3
CH3CHCH2CH2CH2Cl
Br
(a)
(b)
(c)
両端から同じ位置に置換基がある場合は?
置換基名のアルファベット順が上位になるほうの末端から番号をつける.
段階2:最初の置換基により近い末端から始めて炭素鎖に番号を付ける.
ハロゲン化アルキルの命名法(2)
BrCH2CH2CH2CH2Cl1 2 3 4 Br; bromo (上位)
Cl; chloro
段階3:すべての置換基をアルファベット順に並べ名前を付ける.
同種の置換基が2個以上存在する場合は?
ジ-(di-);2個,トリ-(tri-);3個,テトラ-(tetra-);4個
5-bromo-2,4-dimethylheptane 2-bromo-4,5-dimethylheptane
5-ブロモ-2,4-ジメチルヘプタン 2-ブロモ-4,5-ジメチルヘプタン
最初にアルキル基名+ハロゲン
慣用名
ハロゲン化アルキルの命名法(3)
系統名 iodomethane ヨードメタン
慣用名 methyl iodide ヨウ化メチル
系統名 2-chloropropane 2-クロロプロパン
慣用名 isopropyl chloride 塩化イソプロピル
問題
つぎのハロゲン化アルキルにIUPAC名(日本語・英語)を付けよ.
(d)
(e)
(f)
CH3CH2CHCH2CH2CH3
CH2Br
H3CHC CHCH2CHCH3
I
ヘキサン3-(ブロモメチル)
3-(bromomethyl)hexane
5-ヨード -2-ヘキセン
5-iodo-2-hexene
4,6-ジブロモ-1-クロロ-2-ヘキシン
4,6-dibromo-1-chloro-2-hexyne
5-iodo-hex-2-ene
4,6-dibromo-1-chloro-hex-2-yne
ハロゲン化アルキルの製法(1)
C C
ClH
C C
Br
Br
CH3Cl HCl
アルケンへのハロゲン化水素の付加
アルケンへのハロゲンの付加
アルカンと塩素の置換反応
C C HCl+
C C Br2+
CH4 Cl2+ +
CC
H
Cl-
カルボカチオン中間体
Br+
Br-
ブロモニウムイオン中間体
hν
ハロゲン化アルキルの製法(2)
アルコールとハロゲン化水素からの合成
メチル
H
H
H
OH
第一級(1o)
H
R
H
OH
第二級(2o)
H
R
R
OH
第三級(3o)
R
R
R
OH
反 応 性反応性小 反応性大
< < <
R OH HX R X H2O+ +
HCl(気体)
エーテル,0Co
H3C OH
1-メチルシクロヘキサノール
H2O+
H3C Cl
1-クロロ-1-メチルシクロヘキサン
(90%)
ハロゲン化アルキルの製法(3)
アルコールからの合成
SO2 HCl+ +
P(OH)3+
OH
シクロペンタノール
Cl
クロロシクロペンタン
CH3CH2CHCH3
OH
3
2-ブタノール
CH3CH2CHCH3
Br
3
2-ブロモブタン
SOCl2(塩化チオニル)
PBr3
エーテル,35℃
(三臭化リン)
ハロゲン化アルキルの反応:Grignard試薬
R X Mg R Mg X R HH2O
+
Grignard試薬
R = 1o, 2
o, 3
oのアルキル,アリール,アルケニル
X = Cl, Br, I
δ+
δ- MgCl
臭化フェニルマグネシウム
(phenylmagnesium chloride)
(δ-)
(δ+)
Cl
クロロベンゼン
(chlorobenzene)
H
ベンゼン
(chlorobenzene)
Mg H2O
Grignard試薬は塩基でもあり,求核試薬でもある.
炭素-マグネシウム結合が強く分極しているため,有機部位は求核的で塩基性となる.
エーテル
例題7・2
いくつかの反応を順次用いると,1段階では達成できない変換を行うことができる.
アルコールの1-メチルシクロヘキサノールからアルカンのメチルシクロヘキサンを合成
するにはどうしたらよいか.
OH
CH3
1-メチルシクロヘキサノール
CH3
1-メチルシクロヘキサン
?
CH3
臭化1-メチルシクロヘキシルマグネシウム
MgBr
CH3
H2O
Br
CH3
1-ブロモ-1-メチルシクロヘキサン
Mg
エーテル
OH
CH3
HBr
問題
つぎの反応の生成物A~Cを予測せよ.
CH3CH2CHCH3
OHPBr3
CH3CH2CHCH3
Br
MgCH3CH2CHCH3
MgBrH2O
CH3CH2CHCH3
H
A
B C
求核置換反応
R X
Nu
Nu R Nu+
R NuR X X
X
CH3Br C C CH3R Br+
求核試薬(nucleophile,Nu:またはNu:-)が基質のR-Xと反応し,
X:-(脱離基;leaving group)と置換してR-Nuを与える反応
+
+ +
+
+R C Cアセチリドアニオン
例題7・3
1-クロロプロパンとNaOHとの反応でできる置換生成物は何か.
Na+ -OH-ClNa+CH3CH2CH2Cl
1-クロロプロパン
CH3CH2CH2OH
1-プロパノール
+ +
求核試薬は?
脱離基は?
-OH
-Cl
SN2反応求核置換反応(nucleophilic substitution reaction)
HO
ブロモメタンと水酸化物イオンの反応
H3C Br HO CH3 Br+ +
反応は,基質と求核試薬が衝突すると起こる(求核剤の結合と脱離基の乖離が同時).
反応速度は何に依存するか?
SN2反応の速度は,ハロゲン化アルキルと求核試薬の二分子の濃度に依存する.
HO H3C Br
の濃度が2倍
の濃度が2倍
反応速度は2倍反応速度は2倍
二分子的;二次反応(second-order reaction)、協奏反応
問題
(S)-2-ブロモペンタンと酢酸ナトリウム(CH3CO2Na)のSN2反応において,
(a) 出発物と生成物の構造を立体化学を含めて示せ.
(b) 酢酸ナトリウムの濃度を2倍にしたとき反応速度はどうなるか.
(c) 溶媒を足して反応液の体積を2倍にしたとき反応速度はどうなるか.
Br O
O
-OCOCH3
2倍になる
4分の1倍になる
(d) 基質を(R)-2-ブロモペンタンに用いたとき反応速度はどうなるか.
R体の場合と同様
SN2反応の反応機構
OH-
Br H
(S)-2-ブロモブタン
H OH
(R)-2-ブタノール
++
C BrHCH3
CH2CH3
CHO HCH3
CH2CH3
HOBr-+C
CH2CH3
H CH3
BrHO
‡
δ- δ-
遷移状態
SN2反応は遷移状態を経て進行する(一段階の反応).
SN2反応では,基質の立体化学が反転して生成物ができる.
求核置換反応では,基質、脱離基、求核剤の構造や反応に使われる溶媒の性質が反応の行き先を決める
SN2反応における立体効果
反 応 性反応性小 反応性大
< < <
第三級
CH3
H3C
CH3
Br
第二級
H
H3C
CH3
Br
第一級
H
H3C
H
Br
メチル
H
H
H
Br
求核剤の攻撃を受ける炭素の周りの空間が大きいほど立体障害が小さくなるので、反応性が高くなる
相対反応性 <1 500 40,000 2,000,000
R Br Cl- R Cl Br-++
SN2反応に不活性な化合物
・ハロゲン化アルケニル ・ハロゲン化アリール
求核試薬が背面攻撃をするには,分子の内側に入って脱離基の逆側から炭素を攻撃する必要がある.従って、p軌道に電子があると求核剤の攻撃が阻害される
× ×
SN2反応の求核剤
炭素、窒素、酸素、ハロゲンなど、さまざまな原子が使われる。
炭素の原子核を攻撃するために、アニオン性(陰イオン性や負に偏った電荷)あるいは非共有電子対を持つ必要がある
基質の求核剤の嵩が高いと反応が起きにくいのと同様に、求核剤の嵩が大きくなると、立体障害によって基質中の炭素を攻撃が難しくなるので、反応が起きにくくなる
求核剤の嵩が大きい場合は、嵩の小さい基質、外れやすい脱離基、反応を促進する溶媒を使ったり、反応温度を上げるなど、条件を変えることで反応を促進する
SN2反応の脱離基
OH- NH2- OR- F- Cl- Br- I-
反 応 性反応性小 反応性大
相対反応性 <<1 1 200 30,00010,000
優れた脱離は安定なアニオンを与えるもの(強い酸のアニオン、強い酸の共役塩基: 強い酸=pKaの小さい酸)
一般的な脱離基は,塩基性が小さく、負電荷を安定に保持できるハロゲン化物イオン(I-,Br-,Cl-)やスルホン酸エステル(p-トルエンスルホニル基、トシル基OTs)
OTs、トシラートアニオン
SN2反応の溶媒
プロトン性溶媒(プロトンを持つ極性溶媒)は、求核剤と酸塩基反応して、求核性を損なうことがある
グリニャール試薬
(δ-)(δ+) (δ-) (δ+)
グリニャール試薬が、求核剤ではなく塩基として溶媒であるアルコールに作用する
非プロトン性溶媒(プロトンを持たない極性溶媒)
溶媒和
リチウムカチオンと溶媒が溶媒和することで、エノラートアニオンと離れてアニオンの求核性が向上する
リチウムエノラート
SN1反応の反応機構
C
H3C
H3C
H3C
OH
H Br
BrC
H3C
H3C
H3C
OH2 +
Br
H2O+ C
H3C
H3C
H3C
Br
C
H3C
H3C
OHH3C C
H3C
H3C
BrH3CH Br H2O+ +
tert-ブチルアルコール 2-ブロモ-2-メチルプロパン
律速段階
C
H3C
H3C
H3C
カルボカチオン
律速段階(rate-determining step);全体の反応速度を支配する段階
カルボカチオンが反応中間体となる2段階の反応
安定な脱離基(H2O)にするためにヒドロキシ基をプロトン化することが必要
SN1反応の速度
SN1反応はカルボカチオン中間体を経て進行する.
基質による反応性の違いは?
生成するカルボカチオン中間体の安定性の順序と同じ.
R3COH R2CHOH RCH2OH CH3OH>> > >
SN1反応の速度は何に依存するか?
基質の濃度だけに依存し,求核試薬の濃度には無関係.
単分子的;一次反応(first-order reaction)
問題
(CH3)3COCH3を与える(CH3)3CBrとCH3OHのSN1反応において,
つぎの変化は反応速度にどんな影響を与えるか示せ.
(a) (CH3)3CBrの濃度を2倍にして,CH3OHの濃度を半分にする.
(b) (CH3)3CBrの濃度を半分にして,CH3OHの濃度を2倍にする.
(c) (CH3)3CBrとCH3OHの濃度を両方とも3倍にする.
2倍になる
2分の1倍になる
3倍になる
SN1反応の立体化学
キラルな基質についてSN1反応を行うと,生成物はラセミ体になる.
HCl+ +
C
HH3CH2CH2C OH
(R)-1-フェニル-1-ブタノール
C
HCH2CH2CH3Cl
(S)-1-クロロ-1-
フェニルブタン
C
HH3CH2CH2C Cl
(R)-1-クロロ-1-
フェニルブタン
C
H CH2CH2CH3
平面のアキラルなカルボカチオン中間体
ClCl
(R)-1-クロロ-1-
フェニルブタン
50%が立体配置を保持
(S)-1-クロロ-1-
フェニルブタン
50%が立体配置を反転
カルボカチオンの炭素はsp2
混成であること(空のp軌道を持つ)を思い出せ
求核剤(塩素イオン)は両側から攻撃可能
SN1反応の脱離基
基本的にはSN2反応と同様に安定なアニオンを与えるものが優れた脱離基である.
F Cl Br IH2O=
反 応 性劣った脱離基 優れた脱離基
<< < <
問題7・16
(S)-3-メチル-3-オクタノールとHBrとのSN1反応でどんな生成物が得られるか.
出発物と生成物の立体化学を示せ.
CC2H5 C5H11
H3C OH
(S)-3-メチル-3-オクタノール
HBr+ +CC2H5 C5H11
H3C Br
(S)-3-ブロモ-3-メチルオクタン
CC2H5 C5H11
Br CH3
(R)-3-ブロモ-3-メチルオクタン
ラセミ体
SN1反応の溶媒
SN2と異なり、プロトン性溶媒(プロトンを持つ極性溶媒)が有効
SN1反応の一段階目はカルボカチオンの生成
溶媒がイオンを安定化させる
エタノール(溶媒)
水 アルコール
酢酸
次の求核置換反応における生成物を答え、各々を命名せよ
(S)-2-ブロモブタン + CH3OH
(S)-2-ブロモブタン + CH3ONa
SN1
SN2
①
②
①
②
問題 1-ブロモ-2,2-ジメチルブタンは、SN2反応も、SN1反応も起こりにくい
その理由を述べなさい
脱離基の結合する炭素は1級炭素(結合するアルキル基が1個)なのでカルボカチオンができにくい(SN1起きにくい)
隣接する炭素は4級炭素なので1位の炭素に対する立体障害が大きい(SN2起きにくい)
脱離反応:E2反応
置換反応 C C
Br
H
OH+ +C C
H OHBr
X
H RR
RR
B
B H
X
‡
X
H RR
RR
Bδ+
δ-
遷移状態
RR
RR+
E2反応では、プロトンの引き抜きとハロゲンの脱離が同時に起こる
脱離反応 +C C
Br
H
OH BrH2O+ +C C
塩基
塩基(OH- )が脱離基に結合した炭素に隣接する炭素からプロトンを奪う
求核剤(OH-)が脱離基に結合した炭素を攻撃する
OH-が求核剤としても、塩基としても作用するので、置換生成物も脱離生成物も生成する(塩基性の低い求核剤を使えば、置換生成物が優先してできる)
求核性と塩基性
求核性:炭素を攻撃する能力の強さ(置換反応や付加反応)炭素を攻撃するので、嵩が大きいと求核剤としての反応性が落ちる
塩基性:プロトンを攻撃する能力強さ(脱離反応)攻撃するのは基質の外側にあるプロトンなので嵩が大きくても問題にならない
同じ分子種が求核剤としても、塩基としても働く可能性があるどちらとして機能するかは、ケースバイケース
E2反応の立体選択性
E2反応は基本的にアンチ近平面系(H-C-C-Brが同じ平面上にある配座)で起こる.
Ph =KOH
エタノールC C
Br
H HPh
PhBr
メソ-1,2-ジブロモ-1,2-
ジフェニルエタン
C C
Ph
HBr
Ph
(E)-1-ブロモ-1,2-
ジフェニルエテン
アンチ近平面系
(ねじれ形,エネルギーが低い)
引き抜かれるプロトンが結合する炭素と脱離基が結合する炭素は、反応の前後でsp3混成からsp2混成へ軌道の状態が変化する.基質のH、C、C、Brの4つの原子が同じ平面上にあるときに脱離が起こらないと、反応後にp軌道が重なってπ結合を作れない
Eは体のみ生成し、Z体はできない
E2反応の位置選択性
CH3CH2CHCH3
Br
2-ブロモブタン
(19%) (81%)
1-ブテン
CH3CH2CH CH2
2-ブテン
CH3CH CHCH3
KOH
エタノール+
Zaitsev則
ハロゲン化アルキルからHXが脱離する場合,より多く置換されたアルケンが主生成物となる(理由 生成物の熱力学的安定性).
塩基によって引き抜かれるプロトンは赤と青の5個のうちのいずれかである
引き抜かれるプロトンが赤の場合と青の場合では、生成物が異なる
これを位置選択性という
脱離反応:E1反応
B
Cl+C C
H
H
H
H3C
H3C
C
Cl
CH3H3C
CH3
2-クロロ-2-メチルプロパン
H
HH3C
H3C
2-メチルプロペン
律速段階
カルボカチオン中間体
速い
E1反応の反応機構
E1反応の優れた基質は、SN1反応でも優れた基質
H2O,エタノール
65oC+C
Cl
CH3H3C
CH3
2-クロロ-2-メチルプロパン
C
OH
CH3H3C
CH3
2-メチル-2-プロパノール
H
HH3C
H3C
2-メチルプロペン
通常置換生成物と脱離生成物の混合物が得られる.
(64%) (36%)
問題7・21
つぎの反応はSN1,SN2,E1,E2のいずれで進行していると考えられるか.
(a)
(b)
(c)
CH3CH2CH2CH2Br CH3CH2CH2CH2N3NaN3
CH3CH2CHCH2CH3
Cl
CH3CH2CH CHCH3KOH
Cl
CH3
CH3COOHOCCH3
CH3
O
HCl
+
+
+ +
置換が起こっているのか?それとも脱離が起こっているのか?
安定なカルボカチオンが発生する基質かどうか?
E2
SN2
SN1
問題7・19
つぎのアルケンはどんなハロゲン化アルキルから生成するか.
(a)
(b)
CH3
CH3
◎
◎
問題 次の化合物を基質にして、E1反応とE2反応を行った時にできる主生成物の構造を書き、各々命名しなさい
① (R)-2-ブロモペンタン
② (2R, 3S)-2-ブロモ-3-メチルペンタン
① (R)-2-ブロモペンタン
ハロゲンの脱離により2位の炭素はカチオン(sp2混成)になる
E2反応
より安定な配座
より不安定な配座
これもアンチ近平面だが、、、
① (R)-2-ブロモペンタン
H、C、C、Brがアンチ近平面になるような配座
② (2R, 3S)-2-ブロモ-3-メチルペンタン
E1反応
E2反応
② (2R, 3S)-2-ブロモ-3-メチルペンタン
H、C、C、Brがアンチ近平面になるような配座は、これ以外にない
E体はできない
問題7・22
次の分子とNa+ -SCH3およびNaOHとの反応から期待される生成物は何か?
(a) (b) (c)
問題7・22 (a)
置換生成物
置換生成物
脱離生成物
何故に、メチルメルカプタンナトリウムでは脱離生成物ができにくいのか?
一級のハロゲン化アルキルでは、水酸化物イオン(OH-)やアルコキシドイオン(RO-)のような強い塩基を用いるとE2経路で反応する(226ページ)。塩基の強さは、その共役酸のの強さ(酸解離乗数やpKa値)を指標にする
H2O H+ OH-+
塩基共役酸pKa=15.7
CH3OH H+ +
塩基共役酸pKa=15.5
CH3O-
強い塩基の共役酸は、弱い酸
CH3SH H+ +
塩基共役酸pKa=10.3
CH3S-
チオラートアニオンは、水酸化物イオンやアルコキシドよりも塩基としては弱い塩基(Sは原子半径がOよりも大きく分極しやすいために、CH3S
-はOH-
よりも強い求核剤である)
基質が三級のハロゲン化アルキルなので、SN2は考えなくてよい。SN1は中性、又は酸性条件下の時のみに起こるが(219ページ)、中性や酸性条件
下ではチオラートアニオンや水酸化物イオンはできにくいので、これも考慮しなくてよい。結局、脱離生成物だけを考えればよい。
ザイツェフ則により上記のアルケンが優先的にできるはず
二級のハロゲン化アルキルでは、置換反応と脱離反応が起きえるが、チオラートアニオンは塩基性が小さく、求核性が大きいので、置換生成物が優先する。