機能強化型在支診の制度を活用した当直医体制 村上事務長
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機能強化型在支診の制度を活用した 当直医体制の運営方法と経済性の検証
-当直医活動実績の分析から-
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村上 典由1)、 飯塚 以和夫2)、荒木 庸輔3)、小森 敦6)、 片山 智栄1)、 遠藤 拓郎4)、 近藤 善子2)、畠中 正孝6)、 遠矢 純一郎1)、大石 佳能子5)、関 有香子3)
1)医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック 2)医療法人社団プラタナス 施設在宅医療部 3)医療法人社団プラタナス 松原アーバンクリニック 4)医療法人社団プラタナス 臨床研究推進室 5)医療法人社団プラタナス 6)医療法人社団和五会 鷺沼ファミリークリニック
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目的
在宅医療に求められる24時間対応は、患者が最期まで安心して在宅療養できるか否かの重要な要素であるが、一方で、主治医にとっては大きな負担であり、在支診の普及が進まない要因になっているとも言われている
また、緊急時や看取りの際に、主治医以外の医師が代理往診を行うと、患者や家族の不満に繋がるとも言われている
そこで、当法人では、
① 診療の質を落とすことなく、主治医の負担を軽減できる「当直医による代理往診体制」を整備すること
② 待機コストがかかる当直医体制を、機能強化型制度の増収分でカバーするための条件を明らかにすること
この2点について具体的な取り組みの中で検証した
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住所 東京都世田谷区用賀2-41-18
理事長 野間口聡
従業員数 217人(医師85人,看護師24人他)
<在宅医療診療実績>
松原アーバンクリニック(有床診) 桜新町アーバンクリニック
鎌倉アーバンクリニック
医療法人社団和五会 鷺沼ファミリークリニック[連携医療機関]
有床の機能強化型在支診 (2法人4クリニック連携)
在宅医 50名 (常勤10名、非常勤40名)
患者数 1700名 (個人宅300名、施設1400名)
看取り数 240名/年
(連携医療機関 医療法人社団和五会 鷺沼ファミリークリニック含む)
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医療法人社団プラタナス
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機能強化型在支診
和五会 鷺沼ファミリー クリニック
松原アーバン クリニック(有床診)
当直医による夜間・休日の臨時往診体制
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鎌倉アーバン クリニック
桜新町アーバン クリニック
当直医
有床診である松原アーバンクリニックは、在宅患者の急変時、レスパイト、看取りのためのバックベッド機能を担っている
2年前から夜間・休日の臨時往診は、有床診の当直医が、法人内の他クリニックに対しても主治医に代わって代理往診を行なっている
昨年から機能強化型在支診の制度を活用し、上記の仕組みを地域の別法人に拡大展開した(医療法人社団和五会 鷺沼ファミリークリニック等)
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主治医でない医師が代理往診をする際の問題点とその解決策
代理往診医は主治医のクリニックの医師として往診を行う。そのために、
①各クリニックと代理往診する医師が契約(業務請負契約)
②代理往診を依頼する際のルールと環境を整備
③クリニック間の金銭の精算を毎月することで、問題解決した
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主治医
• 患者・家族の不満になる? • 別クリニックから往診すると初診料が発生し患者負担が増える • 患者さんへの請求が2箇所からになる • 頻回往診していたのにターミナル加算等が取れない
代理往診医
• 初診になるので、保険証確認、カルテ登録、請求などが大変 • 何かあったときのリスクは? • 待機コストがかかる、不公平感
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機能強化型在支診(有床)
当法人の代理往診の仕組み
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急変 看取り
① 主治医がコール対応
Cクリニック 主治医
Bクリニック 主治医
Aクリニック 主治医
臨時往診する場合は、 ② 当直医に往診依頼 ③ 患者情報を共有 ④ 主治医が責任を持って診
療内容を指示
⑦ 診療報酬の算定 ⑧ 代理往診料の支払い
有床診の 当直医
⑤ 主治医のクリニックの医師として往診
⑥ 診察後、結果を報告
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夜間・休日の 臨時往診
年間490件
1年間の代理往診の実績
7 ※2012.3~2013.2 夜間・休日の臨時往診実績より
1年間で夜間・休日の臨時往診は490件あった
そのうち当直医による代理往診は82%(403件)、看取りが48件であった
代理往診によるクレームは無く、一定の質を維持することができた
当直医による
代理往診
82%
主治医による
往診 18%
夜間・休日の 臨時往診
年間490件
往診403件 うち看取り48件
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機能強化型による1ヶ月の診療報酬の増額幅
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在宅時医学総合管理料 (処方箋交付)
訪問診療料1 (月2回~)
居宅療養 管理指導料
管理料・処置料・ 往診料など
在支診 4200 平均7000点 (7万円)
280 ×2
無床型 5,000円UP
有床型 10,000円UP
機能強化型 (無床)
平均7500点 (7.5万円)
機能強化型 (有床)
平均8000点 (8万円)
830 830 500
4600 (+400)
830 830 600 (+100)
280 ×2
5000 (+800)
280 ×2
830 830 700 (+200)
※管理料・処置料・往診料などは、当院の診療報酬実績より
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当直・宅直の1ヶ月の待機人件費をカバーするために必要な患者数
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<待機人件費/月>
(夜間) 45,000円×30日=1,350,000円
(休日) 60,000円× 9日= 540,000円
1,890,000円
<診療報酬UP/月>
患者1人あたり 1,000点(10,000円)
機能強化型の増収分だけで考えると、以下の患者数でカバーすることができる ・「有床」の場合は当直医のコストを在宅患者189名以上
・「無床」の場合は宅直医のコストを在宅患者174名以上
※当直医の人件費は当院での実績金額。 宅直医の人件費は想定金額。臨時往診による収入は考慮していない
1,890,000円÷10,000円= 189名
<待機人件費/月>
(夜間) 20,000円×30日= 600,000円
(休日) 30,000円× 9日= 270,000円
870,000円
<診療報酬UP/月>
患者1人あたり 500点(5,000円)
870,000円÷ 5,000円= 174名
宅直医(無床) 当直医(有床)
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当直医による
代理往診
82%
主治医による
往診 18%
夜間・休日の 臨時往診
年間490件
どの曜日、どの時間帯に臨時往診が多いか?
10 ※2012.3~2013.2 夜間・休日の臨時往診実績より
休日・日中の臨時往診が非常に多く、全体の43%を占めた
休日・日中に日直を配置することで、主治医の負担が効率的に軽減できる
月 火
水 木
金 土
日
0
20
40
60
80
100
早…
日…
夜…
深… 深夜
夜間
日中
早朝
83
99 休日・日中の 臨時往診が 全体の43%
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休日・日中の待機人件費をカバーするために必要な患者数
11 ※宅直医の人件費は想定金額。臨時往診による収入は考慮していない
<待機人件費/月>
(休日) 30,000円× 9日= 270,000円
270,000円
<診療報酬UP/月>
患者1人あたり 500点(5,000円)
270,000円÷ 5,000円= 54名
宅直医(無床)
休日・日中の日直医の待機人件費は、在宅患者数54名以上でカバーできる
この「代理往診体制」は、曜日・時間帯を絞ることで、小規模な機能強化型連携でも活用できる
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結果
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① 1年間の夜間・休日の臨時往診のうち、82%を当直医が代理往診し、うち48件の看取りを行った。主治医ではない医師が代理往診してもクレームはなく、一定の質を維持することができた
② 但し、そのためには各種体制整備が必要である
③ 機能強化型在支診の増収分だけで考えると、 ・「有床」の場合は当直医のコストを在宅患者189名以上、 ・「無床」の場合は宅直医のコストを在宅患者174名以上、
でカバーすることができる
④ 休日・日中の臨時往診は全体の43%を占め、ここに日直を配置すると主治医の負担が効率的に軽減できる。この日直医のコストは在宅患者数54名以上でカバーすることができる
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考察
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複数の医療機関が連携して、当直医(宅直医)を配置し、主治医に代わって「代理往診」する体制は、一定の質を維持しつつ、主治医の負担が軽減できる
また、機能強化型の制度を活用することで、一定の患者数があればそのコストをカバーできる。そして、曜日・時間帯を絞ることで、小規模な機能強化型連携でも活用できる
一方で、この「代理往診体制」を運用するためには、複数の医療機関間を調整をするコーディネート役や、患者情報を常に閲覧できるシステム環境などが必須であると考えられる
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