2014医療薬学会 副作用報告調査
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医薬品副作用発生報告書を利用した副作用情報の一元管理および内容分析
JCHO 札幌北辰病院 薬剤科
〇門村 将太、林 祐希、西倉 奈央、川本 康太郎、山田 尚枝、関根 有貴、
藤井 達郎、鈴木 智子、野田 聖奈子、竹内 美奈、福田 由布子、井藤 達也
2014 年 9 月 28 日(日)第 24 回日本医療薬学会年会
名古屋国際会議場28-P4PM-52
総務省は、平成 25 年 3 月 22 日付で厚生労働省に対し
て「医薬品等の普及・安全に関する行政評価・ 監視結果に基づく勧告」を行い、医療関係者か
らの副作用報告が励行されるよう通知した。
各医療機関は、自施設で発生した副作用情報を包括的に把握し、医薬品安全性情報報告を行う必要がある。
副作用を早期に発見するため、医薬品情報( DI )担当薬剤師は病棟薬剤師との連携・情報共有が必要である
背景
医薬品副作用発生報告書を利用した副作用発生状況の把握
薬剤部門における医薬品副作用情報の一元管理
医薬品副作用報告の内容分析
目的
• 単施設(二次医療機関 一般 276 床)
• 診療録:電子カルテ HOPE/EGMAIN-GX
( FUJITSU )
• 薬剤師数: 11 名(うち DI 担当は兼任 1 名)
セッティング
施設概要:内科(循環器内科・呼吸器内科・腎臓内科消化器内科・糖尿病内分泌科・血液内科・リウマチ科)、総合診療科、小児科、外科、整形外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、産婦人科、放射線診断科、病理診断科、腎・透析センター、健康管理センター
【副作用報告の流れ】
方法 ①医薬品副作用発生報告書本文書は記載事項に記載されましたら、すみやかに薬剤部まで御提出願います。ご不明な点がございましたら、DI PHS8200 346担当( または 内線 )へ御連絡下さい。※ カルテの印刷物等の情報を添付いただければ、太線枠内以外は結構です。
記載年月日 2014/ 9/ 28
記載者所属
氏名
主担当医患者情報
患者氏名 性別 男 ・ 女
ID( 番号) ( ) 年齢(歳)
患者属性 外来 ・ 入院 入院病棟
医薬品副作用発生情報発生した副作用
副作用発生 年月日(西暦)被疑薬
(製品名・剤形・規格)使用理由
(病名など)
投与経路
用法用量
被疑薬の投与期間(西暦) ~
詳細経過 (自由記述形式)
報告書受理日
PMDAへの安全性報告 □ □ ⇒ 有 ・ 無 理由:
製薬企業への副作用報告 □ □ ⇒ 有 ・ 無 理由:
DI 担当者 記載項目
発見者は医薬品副作用発生報告書を作成
DI 担当薬剤師へ提出
副作用報告データベースへ登録
薬事委員会(毎月)への報告
薬剤科内に回覧し共有(毎月)
必要に応じて、カルテの閲覧、厚労省へ医薬品安全性情報報告
① 副作用(疑いを含め)により死亡あるいは障害を起こした、 あるいはそれらにつながるおそれがある場合
② 副作用(疑いを含め)により入院あるいは入院期間の延長を 要する場合
③ 副作用(疑いを含め)により薬剤の投与を中止(あるいは 変更)した後に改善を認めた場合
④ 副作用(疑いを含め)により改善のために追加で薬剤の投与が必要となった場合
⑤ 「薬剤性○○」(疑いを含め)と医学診断がなされた場合
方法 ②
※抗悪性腫瘍剤については全てを把握することは難しいため、有害事象共通用語規準( CTCAE ) v4.0 における Grade 4 ~ 5 、あるいはそれ以下でも報告すべきと判断される場合を対象とした。
【報告対象】
【対象患者】2013 年 4 月~ 2014 年 3 月( 1 年間)に医薬品副作用発生
報告書(副作用報告書)が DI 担当薬剤師に提出された患者
方法 ③
【調査項目】 ・患者の所属(入院・外来)、副作用に関連した入院また
は入院期間延長が認められた件数、安全性情報報告件数
・副作用報告症例の重篤度分類
・被疑薬の薬効別分類
・副作用の器官別大分類
結果 ①
項 目 件数 (%)
外来患者
入院患者
13
( 20.0 )
52
( 80.0 )
副作用に関連した入院
または入院期間の延長
20
( 30.8 )
安全性情報報告 19
( 29.2 )
総
件数 65
表 1 副作用報告の患者特性および安全性情報報告数
結果 ②
図 1 報告症例の CTCAE重篤度分類
14
6
28
14
3
Grade 1
Grade 2
Grade 3
Grade 4
Grade 5
( n=65 )
結果 ③
図 2 被疑薬の薬効分類別件数( n=65 )
抗菌薬
血液凝固阻止薬
消化器用薬
ホルモン治療薬
降圧剤
その他0 5 10 15 20 25
20
18
5
4
3
3
2
2
2
2
4
抗悪性腫瘍薬
解熱鎮痛消炎薬
中枢神経用薬
抗菌薬
血液凝固阻止薬
結果 ④
図 3 副作用の器官別大分類別件数( n=65 )
臨床検査皮膚および皮下組織障害
胃腸障害呼吸器、胸郭および縦隔障害
免疫系障害血液およびリンパ系障害
肝胆道系障害神経系障害
腎および尿路障害眼障害
血管障害 心臓障害
0 5 10 15 20 25
22
19
4
4
4
3
2
2
2
1
1
1
肝胆道系障害
皮膚および皮下組織障害臨床検査
有益事例【報告後に添付文書改訂に至った事例】
呼吸器内科担当薬剤師から、 間質性肺炎により入院した患者について、医薬品副作用報告書が提出された事例である。他の医療機関から処方された 持参薬のうち、リバーロキサバンが被疑薬として疑われたため、 安全性情報報告および企業報告を行った。その後、左記の通知がなされ、 同剤の添付文書が改訂された。
副作用報告書は主に病棟薬剤師から提出され、少なくとも入院患者の副作用発生状況の把握が可能となった
副作用報告書を通じて、病棟薬剤師と DI 担当薬剤師の連携が図られ、薬剤部門での副作用情報の一元管理が可能となった。また、安全性情報報告件数は以前 (年間1 ~ 2件)と比べて増加した。
本調査において、薬効別分類で抗菌薬、抗悪性腫瘍薬、血液凝固阻止薬が多く、また器官別分類で皮膚および皮下組織障害が多かった傾向は既報 1) とほぼ同様であった。一方、重篤度分類は既報と比べ Grade 3 以上の割合が高かった。
考察
本結果では入院患者の割合が多かったことから外来患者の副作用発生状況の把握が十分でないかもしれない。
副作用報告書はあくまで自発報告であること から、報告漏れの可能性がある。本調査では、軽微な副作用の報告が少ない可能性がある。
本調査では、 Naranjo 有害事象因果関係判定スケール等を用いた評価は行っていなかった ため、副作用の可能性の高低は不明である。
本研究の限界
副作用報告書は、おもに入院患者における副作用発生状況の把握、薬剤部門における副作用情報の一元管理の一手段として有用であった。
外来患者における副作用発生状況、報告漏れへの対策、副作用可能性の評価等が必要と考えられ、今後の課題である。
院内外の副作用の全数把握のためには、前向きの自発報告のみでなく、後ろ向きの薬剤使用評価などの薬剤疫学的手法を用いる必要があるだろう。
結論
日本医療薬学会COI開示
筆頭発表者名:門村 将太
演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業などはありません。
参考文献1) 田中広紀、平嶋志穂ら、“医薬品の副作用収集と報告体制の構築”、
日本病院薬剤師会雑誌、 50 、 157-60 ( 2014 )
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