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第25回WebSig会議「エコだけじゃない!『ネットを使って社会をよくする』新潮流とWeb屋の関係」WebSiteExpertに掲載頂いた記事原文です!

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環境や身近な社会問題への高まる関心

 さまざまな環境問題の顕在化はいうまでもなく,長く続く経済不況や,超高齢化社会の進行,そして社会保障への不安などで,日本社会は,これまで当たり前のように受け入れていた成長・拡大志向から,平衡(これまでと同じ)あるいは縮退(これまでよりレベルが下がっていく)ムードに変わってきたといわれます. このことをさまざまな統計や調査などで見ると,「ポスト団塊ジュニア世代が最も重視するのは『家族を中心とした人のつながり』」(リクルート住宅総研:2015年ビジョンレポート),「4割の生活者にボランティア参加意向あり」(アサツー ディ・ケイ:生活者の社会貢献意識/活動に関する調査レポート)など,人々の関心が,これまでの消費一辺倒から身近な社会問題・環境問題にも向かってきているという意識の変化が見て取れます. 私たちの生業に密接な関わりがあるインターネットの発達は,世代や国境などのさまざまな垣根を取り払い,(少なくともインターネットが普及した国々においては)世界規模の「フラット化」が進んでいると言われます.このことはまた,地球環境や社会のさまざまな問題を見えやすくもしました. また,ブログを皮切りとし,最近ではとくにTwitterの急成長が注目を集める「ソーシャルメディア」は,コミュニケーションの「量」と「伝搬スピード」を高め続けています.地理的に離れた人々が情報を共有するだけでなく,効果的に「協働」するためのソフトウェアやサービスがWeb上に充実してきたこともあいまって,環境や社会

の問題への新たなアプローチが日々試され,また,新しい人々の参画を促しているようです.

ではインターネットやWeb屋ができることは?

 そんな中,Webの構築や運用を仕事とし,同時に変遷が激しいスキルの習得にもまじめに取り組んでいる私たち「Webのプロ」は,このトレンドの中で演じることができる「役割の大きさ」に注目してみるべきなのかもしれません.この分野は,まるで草創期のインターネットのような新たなフロンティア(未踏領域)だともいうことができ,「面白さ,ワクワク感」も同時に感じ取ることができるはずです. こうしたトレンドを捉え,WebSig24/7では,去る2009年10月31日に「エコだけじゃない!

『ネットを使って社会をよくする』新潮流とWeb屋の関係」と題したイベントを行いました. ゲストスピーカーは,NPO「サービスグラント」の岡本祥公子さん,社会をよくしたいと思う人が集まるSNS「4good(フォーグッド)」を運営する塚田寛一さん,「ネットスクエアード東京」を主催する市川裕康さんの3人です.  筆 者 は,WebSig24/7の 分 科 会 とし て,2006年に「Web屋の環境・社会貢献を考えよう」をテーマとする「WebSigエコ&ピース(略称:エコピ)」を立ち上げ,カジュアルな定期勉強会や,実際にスキルを使ったボランティアなどの活動を続け,仲間を増やしてきました. そして,「社会を良くする取り組みへのインターネットの活用」がブレイク前夜ともいえる今,それぞれエッジが立った取り組みを行う3人のゲストを招いて「環境・社会問題に対してWeb屋ができる

Web屋にもプ ロボノの波がやってきた! 第25回WebSig会議      

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株式会社アークウェブ代表取締役社長中野 宗 NAKANO Hajime

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Web屋にもプスキル・ボランティア

ロボノの波がやってきた! 第25回WegSig会議

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WebSig24/7イベント

スキル・ボランティア

第25回WebSig会議「エコだけじゃない!『ネットを使って社会をよくする』新潮流とWeb屋の関係」イベントレポート 10月31日,第25回WebSig会議「エコだけじゃない!『ネットを使って社会をよくする』新潮流とWeb屋の関係」が東京の秋葉原で開催されました.

WebSig会議とは?

 「WebSig24/7(ウェブシグ・トゥウェンティーフォーセブン)」は,Webに関連する市場の健全な発展を通じて,私たちWeb屋,顧客,そしてネットユーザという全てのステークホルダーのハッピーを実現しようというビジョンのもと,2004

年から活動している任意団体です.毎回レポートをお届けしている「WebSig会議」は私たちのメインの活動であり,旬なテーマでの講義と参加

WebSig24/7代表 和田嘉弘氏

こと」を考えるというイベントを,モデレーターを務めるWebSig24/7で行うことができました. 本稿は,このイベントレポートの拡大版として,ゲストスピーカーのお話の採録はもちろん,興味を持った人がすぐできることの提案,関連イベン

トの紹介などを行いながら,読者の皆さんがWeb屋×環境・社会問題へのアプローチへの理解を深めることができ,また実際にアクションをしてみたくなるような内容をお届けしたいと思います.

セミッター(http://semitter.com/)のイメージ

49WebSite expert #28●

第一部:開催趣旨の説明(中野) 

 中野(筆者)による開催趣旨の説明では,まず,社会の縮小ムードの中で身近な人のつながりが社会関係資本として見直され,ボランティアなどへの関心も高まっていること,また,Twitterなどソーシャルメディアを活用したさまざまな問題の啓蒙,オンラインの協働,ファンドレイジング

(資金集め)などの事例が増えてきていることを説明しました.

企業,NPO,ボランティアの関係

者のグループワークを組み合わせた隔月イベントです.Ustreamでビデオのライブ中継を行い,Twitterで話し合える「セミッター」を使い,講演資料は後日CCライセンスで公開するなど,可能な限りオープンにしています. 最近では「WebSig会議を大阪で見ようの会」(主催:Re:Creator’s Kansai)がボランタリーに開催されるなど,東京圏以外にも広がっています. このような活動はできるだけサポートしていきたいと考えていますので,興味があればご連絡ください.

第一部ゲスト講演サービスグラント,4good,ネットスクエアード東京の取り組み

構成はゲスト講演とワールド・カフェの二部構成

 今回のWebSig会議は,第一部では代表である和田(インテリジェントネット株式会社)の挨拶,企画者の中野(筆者)による開催趣旨の説明を経てサービスグラントの岡本さん,4goodの塚本さん,ネットスクエアード東京の市川さんのプレゼンテーション.第二部では,WebSigではとても好評な「ワールド・カフェ」形式のグループワークで,参加者が一緒に「Web屋と環境・社会問題を」を考えました.

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 また,今回のテーマに合うヒントとして『定常型社会—新しい「豊かさ」の構想』(広井良典著/岩波書店/ ISBN978-4004307334)という書籍から,広井氏が提唱する「定常型社会」というコンセプトを紹介しました.ポイントは以下のようなものです.

・脱・物質化社会(物質・エネルギー消費が一定となる)

・脱・量的拡大(経済の量的拡大を目的としない)・変化しないものにも価値を見つける社会(コミュニティや自然を再発見する)

・伝統的社会が持っていた「伝統的共同体」は,近代以降,政府が担う「公」と個人や市場が担う「私」に分断されたが,これからは再び「新しい共同体」が現れてくる

 「定常型社会」では,新しい共同体とは,自立した個人が自発的に作り出すネットワークだと説明されており,筆者は,これはインターネット的だということができ,新しいコミュニティ創出のためにWeb屋ができることは多いのではないか,と説明しました. 広井氏は「定常型社会」のあとがきで,定常型社会というビジョンに対して,世代間で反応が鮮やかに違うと説明しています.50歳代(団塊の世

第一部:NPO「サービスグラント」の岡本さんの講演

 1つめの団体であるNPO「サービスグラント」からは,代表理事の嵯峨生馬(さがいくま)さんの代理として,事務局の岡本祥公子(おかもとさよこ)さんが登壇しました. サービスグラントは,金銭や単純労働ではなく,

サービスグラント|あなたのスキルを活かす 社会との新しいつながり方 http://svgt.jp/

代)の典型的な反応は「ゼロ成長社会などありえない」「新たなものを追求し続けるからこそ,生きがいがあるのだ」といったもので,一方大学生など若い世代は「成長すれば豊かになるとは思えない」「日本は成長という目標に捉われすぎているのではないか」といった意見だそうです. あなたの感想はどちらに近いでしょうか?.

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ビジネスパーソンが持つ職業的スキルを提供する「プロボノ(Pro Bono, Pro Bono Publico:ラテン語で「公共善のために」)」というスタイルのボランティアによって,NPOのWebサイトやパンフレットなどコミュニケーションツールの制作の支援プログラムを提供しています. 団体名の「サービスグラント」とは,「Service

(サービス, 労力)」と「Grant(助成金, 資金)」を組み合わせた言葉で,お金ではなく知恵,アイディア,スキルなどでNPOに貢献することを意味します. 代表の嵯峨生馬さんは,2004年にアメリカのサンフランシスコを訪問した際に現地のNPO

「タップルートファウンデーション(Taproot Foundation)」が提供するサービスグラントの取り組みを知りました.そしてその可能性に惹かれ,同年12月に,同じ仕組みを東京に持ち込み「サービスグラントTOKYO」の第一期をスタートしました.以後,組織化や体制強化に力を尽くし,提供件数の拡充をめざし,2009年には活動のさらなる拡大のため「サービスグラント」としてNPO法人化しました(筆者は理事を務めています). 嵯峨さんは「地域通貨」にも造詣が深く,東京の渋谷・原宿・青山などを中心に普及している地域通貨「アースデイマネー」の立ち上げに関わり,以後普及に努めています. サービスグラントは現在,NPOに対して,「Webサイト」「印刷物」「営業戦略」の3つのメニューで支援を行っています.プロジェクトが立ち上がるとスキル登録者(登録済みのボランティア)からマネジャー,マーケッター,コピーライター1人,デザイナー,コーダー,プログラマーといった構成でチームが編成され,5 〜 6 ヵ月のスケジュールを組んでスタートします. プロジェクトは以下のようなプロセスで進みます.

①審査プロセス 理念,理事会,事務局の機能,支援要請の意図などを審査

②キックオフ プロジェクトメンバーを決め,ヒアリングする

③マーケティングフェーズ 顧客の要望や市場環境を踏まえて企画立案を行う

④中間提案 提案をまとめ,顧客にレビューしていただく

⑤プランニングフェーズ 決定した企画骨子を元に,詳細仕様などを詰める

⑥制作フェーズ Webやパンフレットの制作を実際に行う

 サービスグラントの活動は,志をもち社会的ニーズの高い活動をしているもののWebサイトをつくるスキルがない,効果あるパンフレットが作成できないなどの“コミュニケーション下手”なNPOの広報力などを高めるものであり,支援先のNPOから高い評価を得ています.また見逃せないのは,スキル登録者たちの感想に見られるような満足感です.

「自分の個性を殺すことなくボランティア体験ができ,社会に関わる感覚があって新鮮だった」

「ボランティアのための時間をやりくりすることで,毎日の時間の使い方がうまくなった」

「同じような思いを持っているクリエイティブ系の人たちと知り合うことができた」

「社会についての意識が高まり,自分の仕事を見直し,結果として転職にもつながるなど,大きな影響を受けた」

  岡 本 さん は,サ ービ スグ ラントを 通じた ボ ラン ティア は「 成 果 が はっきり目に見えて残ること」「知的な社会貢献活動であること 」「 仕 事との 両 立 は 可 能 」「 きっちりマネジメントされ気持ち良く作業できること」がポイントだと締めくくりました.

第一部:SNS「4good」の塚田さんの講演

 講演の2つめは,社会を良くしたいと思う人が集まるWebサービス「4good(フォーグッド)」

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を運営する塚田寛一(つかだひろかず)さん(株式会社ヨセミテ代表取締役). 4goodは,2009年8月にスタートしたばかり.ユーザはまだ400人ほどですが,社会・公共分野に興味のある人だけが集まるという異色のサービスです. 塚田さんは,東京大学法学部在学中の2001年に,インターンシップや起業支援のNPO「ETIC.

(エティック)」を通じて有限会社イー・マーキュリー(現株式会社ミクシィ)と株式会社ペイメント・ワン(現GMOペイメントゲートウェイ株式会社)で,いずれも創業期のインターンを経験.当時のイー・マーキュリーは,社長の笠原氏とバイト数人という小さな会社だったとそうです. 大学卒業後,イー・マーキュリーに再び戻り,Find Job! 事業を担当.マーケティングからユーザサポートまで幅広く対応.後に事業部長,役員に就任.その後同社はSNS「mixi」を立ち上げ急成長します. 塚田さんは2007年6月,役員の任期満了・改選というタイミングで退任の道を選びます.周囲にサービスを立ち上げ,会社を興す人が多く,改めて自分の力を試してみたい,と考えたからだそうです. そこで注目したのが「社会・公共分野」.理由の1つは,ETIC.を通じて知り合った社会起業家やNPOの人は魅力的な人が多かったこと.また,

少し前にインターネット業界に感じたフロンティア(未踏領域)感に近いものが公共分野にはある,面白い人や話が集まっている,と直感したことも理由として大きかったとのこと. 当初は公共分野でのインキュベーション(事業家支援)をやろうと考えていたものの,当時フォートラベル株式会社代表取締役の津田全泰さんと出会って意気投合し,2008年1月に株式会社ヨセミテを共に起業しました. ヨセミテは事業の目標として「インターネットを活用して公共分野を改善」を掲げ,組織面では「インターネット時代の理想の組織実現」をめざす会社.「みんなの闘病サイトOnlife(オンライフ)」を立ち上げたものの,闘病する人の本質的なニーズをWebサービスで解決するのは困難だと感じ,2009年7月にクローズ. 体制を見直して次のサービスを,と半年前から構想していた「4good」を立ち上げるタイミングで,社長の津田氏は退任,塚田さんが代表となって今に至ります. 「イイコトしたい」人のためのサービスとしての4goodの主要機能は,次の3つです.

①発信・交流 社会を良くしたいと思う人が集まるプラットフォームとしてのSNS機能.ひとことがタイムラインに表示され,公開範囲を設定できる.「注

フォーグッド(4good)│イイコトつなげるインターネット http://4gd.jp/

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目」(フォロー中の人)のひとことやアクティビティ(あるプロジェクトの関心メンバーになった,など)も表示される

②行動 「プロジェクト」(コミュニティ機能)を使って,メンバー内部のコミュニケーションを行い,情報発信などで支援の輪を広げていくことができる.メンバーは管理人,コミットメンバー,関心メンバーという3つのレイヤーがある

③寄付 「グッド」という利他的な特徴を持つ仮想通貨が流通している.ユーザ登録する,人を招待する,ひとことをつぶやく,といったアクションで貯めることができる.他のメンバーにプレゼントする,プロジェクト(公認のみ)に寄付するという2つの使い道があり,人のためだけに使うことができる

 4goodの構想段階では,海外のサービス,とくに途上国向けマイクロファイナンスサービスの

「Kiva.org」,硬派な活動家やNPOが活用するコミュニティ「Change.org」,ライト路線だが巨大なコミュニティ「Care2.com」などを参考にしたそうです. 4goodの今後の展開としては,招待制の見直し・改善を含め,よりオープンにすること,よりライトな人にも参加してもらうことなどを目指し,Twitterなど外部サービスとの連携も検討中とのこと.また,NPO向けの決済機能などツールの充実についてのリクエストも多く,対応を検討中.つぶやきによるコミュニケーションが主体のサービス設計にはなっていますが,人間の根源的欲求のひとつである「イイコトしたい」ニーズにうまく応えることにチャレンジ中とのこと. 10月からはプロデューサー笹森氏(大手企業在籍中に仲間と共にブログパーツ「Gremz」を立ち上げ,登録ブログ数4万,植林実績1万本を達成)を迎えるなど,運営体制も強化しているとのことです. 一方,“幅広いターゲット向けの新サービス”も検討中で,4goodとうまく住み分けをしつつ,

「インターネットを利用した公共サービスの改善」を実現していくというビジョンを持っています. 塚田さんは,最後に「『ネットで世直し』楽しいですよ.ぜひ4goodを使ってください」と締めくくりました.

第一部:NetSquared東京」を主催する市川さんの講演

 早い段階から「社会起業家」に着目してきた市川さんですが,こんなアクティブなキャリアを語ってくれました. 市川さんは,米国留学中(大学時代)に米国ニューヨークにあるホームレス支援NPO

「Common Ground(コモングラウンド)」が運営する施設に住み込みインターンシップを体験しました.コモングラウンドは,今や社会起業家として著名なロザンヌ・ハガティ氏が1990年に設立したNPO.ニューヨークの荒れたホテルをアパートに改造し,ホームレス,低所得者,元麻薬中毒者,低所得者などを住人として受け入れ,職業訓練などの社会的・精神的サポート,自立支援を行うという活動をしています.現在では他のホテルも合わせ600室あまりの規模であるとのこと.このNPOで働いた体験が,社会起業の可能性を考える強烈な原体験となったそうです. 大学卒業後,最初に就職したのは日本のNGO.Web,デザイン,社会貢献のメッセージが込められたビジネス雑誌「FastCompany」(95年創刊)に触発され,再び渡米. 帰国後は,人材紹介企業で就転職支援の業務にあたりながら,2001年という早い時期に“課外活動”として社会起業家をテーマにブログ・メルマガの配信をスタートしました.現在はブログ

「ソーシャルカンパニー」を拠点に「社会起業家的な働き方」をテーマとして情報発信,メールマガジン「ソシアレ」も発行しています. 2009年春には会社を退社し,「ネットスクエアード(NetSquared)」と出会い,東京支部代表となりました.また,2009年11月からは「社会起業家フォーラム(JSEF)」のディレクターとして,社会起業家のための情報発信などに従事しています. アメリカには「Techsoup Grobal(テックスープ・グローバル)」という老舗のNPO(拠点:サ

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ンフランシスコ),があり,この団体はマイクロソフトやアドビがスポンサーとなって,NPOへのソフトウェアの無償提供など大規模に行っています(日本支部も2009年6月に設立).ネットスクエアードは,このTechsoupの傘下で,とくにNPOの活動へのソーシャルメディアの活用・啓蒙を行う目的で設立されたもの. ネットスクエアードは現在,世界82都市に支部があり,うち52都市では定期的に交流会,ワークショップなどが行われています.サンフランシスコ,ニューヨーク,ワシントンなどの主要都市に,それぞれ約1,000人の登録者がいます.東京では市川さんのアクションによって2009年7月にスタートしました. ネットスクエアードの活動には,オンライン

(ブログ,コミュニティサイトなど)とオフラインがあり,リアルイベントのフォーマットは「Net Tuesday(ネットチューズデイ)」と呼ばれる,各国で火曜日に開催されるイベントです. 東京では7月の第1回から定期的に開催されており,10月にはマスコラボレーションをテーマにしたドキュメンタリー映画「US Now」上映会と

「ウィキノミクス」著者の講演会(共催:日経デジタルコア),11月にはアフリカの難民支援NPO

「Forge」を運営する若手社会起業家シェアステン・エリクソン氏を招いてのイベントを開催しました. ネットスクエアード東京の今後の活動として,市川さんは4つの柱を挙げました.

①場の提供 オフラインイベント「NetTuesday」(月1回)を開催.オンラインでは,Twitter,Facebook,Meetup,Flickrなどのインフラを活用

②情報・リソース提供 海外の優良記事,ビデオ(動画セミナー)などの日本語化

③きっかけ提供 学び,仲間づくり,プロジェクト進行など

④組織化 いろいろな人が関わることができるプラットフォームにしていく

 市川さんは,2009年春以降,ソーシャルメディアを活用した社会変革とムーブメントが強まっていると感じており,ノウハウ紹介の優良サイト

「SocialBrite」や,PayPalらの企業がTwitterを活用してがん撲滅のための寄付や啓蒙に成功した

「Beat Cancer Campaign」などを紹介しました.英語圏では「NPTech(NPO+Technology)」というキーワードが盛んに使われ,NPOでのテクノロジー活用などへの関心が一層高まっているそうです. 最後に市川さんは,ネットスクエアード東京はまだアーリーステージであり,興味のある人は運営チームにぜひ加わってください!,と結びました.

NetSquared Tokyo | rimixing the web for social change http://www.netsquared.jp/

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第二部ワールド・カフェ「あなたが気にかかる社会の問題は?Webはどんなことができるでしょうか?」

うか?そのためには,どんなアイディアやツールが必要ですか?」 テーブルクロス代わりの模造紙に書き込まれたテーマを拾ってみると,以下のようなものです

(「現状」や「欲求」が入り混じっていますが,この混沌がワールド・カフェの持ち味なのでご了承を).

・地域格差 東京以外の街がさびしい・ ITリテラシーの格差 おじいちゃんのTwitter

 第二部は,WebSig会議では恒例となった「ワールド・カフェ」(ホールシステム・アプローチに基づくグループワーク手法)での話し合いです. 第一ラウンドは「あなたが気にかかる社会の問題はなんですか?それはどのようにあなたに関係していますか?」として,ふと目に留まった問題,経験したこと,地域や環境のことで気になること,などが話し合われました. 第二・第三ラウンドのテーマは「社会をもっとよくするためにWebはどんなことができるでしょ

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活用?・AmazonのCD1枚にこの包装は必要?地域のショップで要らないものをマッチング?

・貧乏とは?お金?心?時間?・Webのよさは匿名性・Webは自分で選択できる 全盲の人でも選べる

・地方の雇用問題 Jターンに助成金を・生物多様性・アーティストが食えない.アーティストが自分でアートをマネージするのはありえない

・ワークライフバランス 職住隣接・国の借金・自殺者3万人!・ネットは地方では活用されない?東京でも使わ

ない人は多い・情報に対する感度の格差?・成功体験があるかどうか

 筆者はワールド・カフェの最中にすべてのテーブルを見て回りましたが,「東京と地方の格差」

「ネットを使える人と使えない人の格差」という問題がほぼすべてのテーブルで挙がっていたのが印象的でした.また,後半になるほど,よく報道されているような“大きな問題”を話すテーブルが増えてきたのですが,参加者の意識が深まった結果なのか,「自分との関係」をやや置き去りにする傾向があったのかは,判断を留保したいと思います.

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まとめ 今回のWebSig会議は,そのテーマ性のためか「WebSigは初参加です」という人の割合が多かった点が印象的でした.アンケート結果によれば,3人のゲストスピーカーのお話を聴くだけでなく,参加者同士で社会的問題について話してみる体験は,多くの参加者にとって満足度の高いものだったようです. 2010年も,WebSig会議などWebSig24/7の活動にぜひご期待ください!

 2010年は,Web屋もいよいよ「プロボノ(スキルを活かしたボランティア)」をやるべき年です.情報収集,仲間づくり,イベント参加,実際の貢献など,ぜひやってみましょう.あなたがファーストステップを踏み出すために,ぜひ以下の情報を参考にしてください.

Action!サービスグラントの活動に参加してみよう!  サービスグラントの活動に興味を持ったら,ぜひ定期的に行われている説明会に参加してみましょう.せっかちな人は早速サイト上の「スキル登録フォーム」から登録してみましょう! サービスグラントスキル登録のご案内http://svgt.jp/skill/apply.html

からです. また,サービスグラントはこれまでに30ほどの支援プロジェクトを行ってきているので,洗練されたプロジェクト進行のもと,作業時間は週5時間までなど,仕事とボランティアの両立を実現しながら自分らしく活動することができるでしょう.副次的には,人脈を豊かにしたり,自分のキャリアパスを見直す機会にしたりといった効果も期待できます. まずはサービスグラントのWebサイトをぜひチェックしてみましょう! なお,サービスグラントの活動は現時点では東京圏に本拠を置くNPOの支援に限られています.東京以外の人は,まずは地域でどんなNPOが活動をしているのか,求められている支援は何かなどを調べてみては?

Action!4goodに参加してみよう!(ただし現時点では招待制)  社会を良くしたい人が集まるWebサービス4goodには,社会起業家やNPOに関わる人,エコやソーシャルに興味がある社会人や学生など,数百人のメンバーが登録してコミュニケーション中です. この記事で興味を持ったらぜひ登録を──とお勧めしたいのですが,現在のところ「招待制」で,すでにメンバーになっている人に招待状をもらう必要があります.安心できる場を提供し,徐々に成長させていきたいというねらいのようですから仕方がありません.登録するには,すでに4goodユーザとなっている知り合いを探してみ

2010年はWeb屋もプロボノ!アクションしてみよう

 サービスグラントが行うプロボノ(スキルボランティア)では,Webのデザイナー,マークアップエンジニア,プログラマー,ディレクターなどの人が持つスキルはとても貴重です.多くのNPOにとってWebサイトの活用は重要な課題だ

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ましょう(筆者までご連絡をいただければなんとかなるかも…). 一方,4goodは半オープンなSNSであり,一部のユーザページ(設定による),メンバーが立ち上げた「プロジェクト」ページなどは,非ユーザでも閲覧することができます.

プロジェクト|フォーグッド(4good)http://4gd.jp/project

 「東京」と名前が付くぐらいなので,イベント開催は今のところ東京に限られていますが,興味はあるけど東京は遠い…という人は,ぜひ自分でも立ち上げてみては? 市川さんに連絡すれば,心得やノウハウ面でさまざまな助力をしてもらえるかもしれませんよ!

Action!WebSigエコ&ピースに参加してみよう  筆者が代表を務める「WebSigエコ&ピース(エコピ)」についても少しだけ宣伝しておきます. エコピでは,2010年も開かれる国内最大級のエコイベント「アースデイ東京」(4月17日(土)・18日(日))で,公式Webサイトの構築・運用と,TwitterやTumblrなどソーシャルメディアを活用した広報のお手伝いを行うことが決まっています.詳細は未定ながら,Webを使って当日の会場

(代々木公園周辺)のエコ化に貢献する試みも企画中です. 毎年20万人もの人が集まる環境の一大イベントの“Web部門”を担うのは,Web屋のプロボノとしてはかなり面白いと思いませんか? エコピのアースデイ東京2010チームに加わりたい人は,ぜひmixiか4goodのコミュニティから参加表明をしてください!

 プロジェクトには,すでに活動しているNPOの“支店”的ページもあれば,4goodを拠点として立ち上がったばかりのものも.自分にできること,やりたいことを探すのなら,このプロジェクトページで物色して主催者に直接連絡を取ってみるのもいいかもしれませんよ!

Action!ネットスクエアード東京に参加してみよう  「ネットスクエアード東京」は2009年7月からスタートしたばかりのコミュニティであり,社会問題への関心が高いインターネット関係者やNPOの人が火曜日に集まるという

「NetTuesday」というイベントを精力的に開催しています.また,海外から社会起業家・活動家が来日した際にはタイムリーにイベントを開いています. ぜひそれらのイベント情報をチェックしてください.

NetSquaredTokyo|rimixingthewebforsocialchangehttp://www.netsquared.jp/

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大盛況の「Hello, PRO BONO プロボノフォーラム」(2009年12月5日 ラフォーレミュージアム原宿) 2009年12月5日,WebSig会議でもプレゼンを行ったNPOサービスグラント主催の「Hello, PRO BONO プロボノフォーラム」が,ラフォーレミュージアム原宿で開かれました. このイベントは,「2010年はプロボノ元年」をキャッチフレーズに,ゲストとしてWFP(国連食糧計画)のサポーターとしても知られるモデルの知花くららさんや雑誌「ソトコト」編集長の小黒一三さんをゲストに招いて開催されたもの. 内容は,プロボノの本家といえるタップルート・ファウンデーションを取材したビデオ映像,プロボノによる支援を受けたNPO(NPOマドレボニータ,NPOフローレンス)の人によるコメント,法律家や企業のプロボノ実践例,サービスグラント経験者たちの感想など,プロボノの可能性と魅力を多面的に紹介するものとなりました.

 総合司会の生駒芳子さん(ファッションジャーナリスト, 元『Marie Claire』誌編集長)からは

「2010年はプロボノをぜひ流行語大賞に!」という元気なメッセージが飛び出し,ゲストの小黒さんからも「日本の将来は明るいかもしれないね」という感想が漏れるなど,日本経済の停滞ムードとは無縁の明るさに満ちたイベントでした. 終盤,嵯峨生馬さん(サービスグラント代表)が登壇して行われたグループセッションの締めでは,来場者が「来年これだけの時間をプロボノに使います」と宣言した結果をリアルタイムに集計.総時間は29,808時間,時給を3,600円と換算とすると107,308,800円(1億円あまり!)もの価値があるとの結果が出ました. 当初予定300人のところ,当日の参加者は320人を超えたとのこと.まだほとんど知られて

Hello, PRO BONO 〜 2010年は“プロボノ”元年 http://svgt.jp/probono/

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Web屋にもプスキル・ボランティア

ロボノの波がやってきた! 第25回WegSig会議

「エコだけじゃない! 『ネットを使って社会をよくする』新潮流とWeb屋の関係」レポート拡大版

いない「プロボノ」というキーワードを冠したイベントとしては予想外の成功だったといえるのではないでしょうか. 筆者は当日裏方としてTwitter中継を担当しましたが,「環境や社会にいいことってなんだろう」

「そのために自分ができることはなんだろう」という問いについて考えはじめた人々が日本社会には沢山いる,と体感することができました. 当日は,WebSig24/7の協力でUstream.tvによる配信とTwitter中継で会場の模様がリアルタイム共有されました.Ustreamの映像は以下のURLで観ることができるので,ぜひご覧ください.

Hello,PROBONO〜2010年は"プロボノ"元年(Ustream)http://www.ustream.tv/recorded/2715299

 繰り返しになりますが,プロボノは金銭・物資などではなく労働(ボランティア活動)による支援.また,頼まれるままにやる単純労働ではなく,あなたの得意分野・スキルを活かした貢献活動なのです. NPOなど支援先のニーズとうまくマッチすれば,お金の寄付などよりもずっと感謝され,自分自身も豊かな気持ちになれるのではないでしょうか.2010年,あなたもあなたなりのプロボノを,ぜひはじめてみてください!

2010年,プロボノ元年を予感させる「プロボノフォーラム」

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