7章 バルセロナチェアーの逆襲(3ds...

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 前章までは Shade を使ってCGを作成しながら,CGの原理について学んできました。CGをつくるためのソフト(アプリケーション)にはいろいろな製品があります。CGの原理は共通であるに違いないのですが,CGソフトにはそれぞれに特徴があります。   最初にCGを始める時には,どのCGソフトを使うか迷うかもしれませんが,CGのプロはさまざまなソフトを多様に使いこなしていると思います。CGソフトには得手不得手があるので,実際の仕事では,状況に応じて,ソフトウェアを使い分けていくことになります。一つのソフトウェアだけで仕事は完結しません。   幕末にオランダ語を習っていた武士が,ペリー来航以降,これからは「英語の時代だ」ということになり,オランダ語を習っていたことは無駄だったと嘆いたという話があります。しかし,その武士は,すぐに英語とオランダ語が似ていることに気がつき,オランダ語を習っていたことが無駄ではなかったと思い直します。ソフトウェアの使い方もそんなもんではないかと思います。ほとんどの場合,原理は同じでインターフェス(使い方)が違うだけですから,どれか一つを使いこなせれば,他のものに慣れることは容易だと思います。   CGソフトの使い方はそれなりにやっかいで,最初は覚えることがたくさんあります。最初の頃にいろいろなソフトを使うと,使い方の違いに混乱してしまうかもしれません。それでも,使っているうちに,共通の原理に気がつくと思います。そして,原理に気がつくことこそが勉強のおもしろいところです。   本章では,気分転換も含めて,Shade ではなく,3ds max  を使って,バルセロナチェアーをつくって1

みましょう(図1)。  3ds max はオートデスク社(アメリカ)の3DCGソフトです。静止画をつくるというよりはアニメーションをつくるためのソフトウェアとして有名で,映画のVFX(視覚効果)にも多様されています。 "7-1. 3ds max  3ds max を立ち上げると,図2のような画面が表れます。ここで,キーボードで”alt+w”を押すと,画面は図3のように切り替わります。   図3では,中央に4つの図面が並んでいます。左上から,[トップ](上面図),[レフト](左面図),[フロント](正面図),[パースペクティブ](透視図)です。

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7章 バルセロナチェアーの逆襲(3ds max)

図1 バルセロナチェアー(3ds max)

図2 起動画面

図3 4画面

3ds max には,3ds max と 3ds max design と呼ばれる2つの製品があります。大きな違いはないようですが,3ds 1max design は太陽光の設定など,建築分野向けの機能が強化されています。本章では,3ds max design を使っています。

3ds max では,これらの4面図を[ビューポート]と呼んでいます。それぞれの[ビューポート]の右上には[ViewCube]と呼ばれるアイコンがあります。   [ビューポート]の上部に[ツールバー],右上に[コマンドパネル],右下に[ビューポート]の表示を操作する[ビューポートナビゲーション]があります。[ビューポートナビゲーション]の左には,[数値入力ボックス]があります。[数値入力ボックス]の両側に画面左下から[ビューポートナビゲーション]にかけて細長く並んでいるのは,アニメーション作成時に使用するツールです。"7-2. 画面の操作  画面は,[ビューポートナビゲーション],マウス,キーボードのショートカットキー,[ViewCube]によって複合的に操作できます。基本的な操作を試してみましょう。  4つの[ビューポート],すなわち[トップ,フロント,レフト,パースペクティブ]が表示された状態では,いずれかの[ビューポート]が黄色い枠で縁取られているはずです。黄色い枠はその[ビューポート]がアクティブ(選択されている)ことを示します。別の[ビューポート]をアクティブにするのは,その上でマウスを右クリックしましょう(左クリックだと図形が選択されてしまうことがあるので,右クリックがいいです)。   [ビューポートナビゲーション]の右下に[ビューポート最大化切り替え]アイコンがあります。それを押すと,4画面表示が全画面表示に切り替わり,アクティブな[ビューポート]が大きく表示されます。この操作は,キーボードのalt+mでもできます(alt+mを覚えましょう)。その他,[ビューポートナビゲーション]には,[ズーム](拡大縮小),[パン](移動),[オービット](回転)などのアイコンがあります。  マウスのホイールボタンを押しながら[ビューポート]内でドラッグすると画面が[パン](移動)します。alt+ホイールボタンでドラッグすると画面が回転します。キーボードのトップ,フロント,レフト,パースペクティブの頭文字である”t/f/l/p”を押すと,それぞれの画面に切り替わります。[ViewCube]の”上/前/右/左”をクリックしても画面が切り替わります。[ViewCube]の右上のホームボタンを押せば,初期設定の画面に戻ります。  ホイールボタンを回すと画面が拡大縮小します。でも,この操作だとかなりおおざっぱに拡大縮小してしまいます。ctrl+alt+ホールボタンで[ビューポート]を上下にドラッグすると,スムースに拡大縮小します。  [ビューポートナビゲーション]右上の[全範囲ズーム全ビューポート]アイコンをクリックすると,すべての[ビューポート]が図形にフィット(図形に合わせてズー

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図4 単位の設定

図5 グリッドの設定

図6 ボックスの作成

ム)します。この操作のショートカットキーは”z”です。 7-3. 単位とグリッドの設定  最初に,単位とグリッドの設定をしましょう。  単位とグリッドの設定の手順は以下の通りです。 1) メニュー[カスタイズ]>[単位設定…]>”ミリメートル”(図4)

2) メニュー[ツール]>[グリッド/スナップ]>[グリッド/スナップ設定…]>タブ[ホームグリッド]>[グリッドの間隔]>”150(mm)”(図5) "

7.4. ボックスの作成  大きさの目安となるダミーのボックスを作成しましょう。前章で述べたように,バルセロナチェアーのサイズは,「幅:749ミリ,奥行き:762ミリ,高さ:768ミリ,座面の高さ:432ミリ」ですが,サイズの目安とするボックスは,「750×750×750ミリ」としましょう。 3) パネル[作成]>[ジオメトリ]>[標準プリミティブ]>[ボックス]をオンにし,適当な大きさのボックスを作成(寸法は後で調整する)。基点から底面の端点までをドラッグし,その後に高さをクリックで確定する(図6)。

4) パネル内の[パラメータ]に以下の数値を入力(図7)。 長さ(奥行き):750,幅:750,高さ:750 長さセグメント:5,幅セグメント:5, 高さセグメント5

[セグメント]はボックスを分割するもの。[ビューポート]左上の「スムーズ+ハイライト」の表示をクリックし,「エッジ面」をオンにすると,[セグメント]の[エッジ]が表示される。 "

7.5 レイヤの作成

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図7 ボックスの設定

図8 レイヤの作成

図9 スナップの設定 図10 オブジェクトの移動

ボックスを描いたレイヤに名前をつけ,レイヤを管理しましょう。レイヤの管理には[レイヤ]ツールが便利なので,[レイヤ]ツールが見当たらない場合は,[ツールバー]の空いている部分をクリックし,[レイヤ]ツールを表示しましょう。 5) ツール[レイヤ]>[新規レイヤを作成]から新しいレイヤを作成(図8)。

6) レイヤの[名前]を入力し,[OK]でレイヤが作成される。 "

 ここで,[新規レイヤに選択を移動]にチェックが入っていると,選択されているオブジェクト(ここでは作成したボックス)が新たに作成するレイヤに移動します。ここではそれで「OK」なのですが,もし単に新規レイヤを作成し,オブジェクトの移動を行いたくない場合は,[新規レイヤに選択を移動]のチェックをオフにする必要があります。  以後,作業レイヤの切り替えは,ツール[レイヤ]から行いましょう。 "7-6. ボックスの移動   ボックスの基点を原点に移動しておきましょう。オブジェクト(図形)の基点や端点などをマウスでつかむには,[スナップ]を使用します。 7) ツール[スナップ切り替え](ショートカットは”s”)を右クリックし,タブ[スナップ]の[グリッドポイント]と[頂点]をオンにする(図9)。この設定はツール[スナップ切り替え]をオンにすると有効になる。

8) ツール[選択して移動](ショートカットは”w”)をオンにし,ボックスの基点を原点にドラッグする(図10)。 "

7-7. 脚 7-7-1. X形フレーム

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図11 レイヤの作成

図12 円弧の作成

図14 レイヤの非表示

図13 ライン(曲線)の作成

 椅子の脚となっているX形のフレームの軸を描きます。ここでは,正確さにこだわらず,おおまかな形状でモデリングを進めましょう。 9) ビューポートを[左]に切り替える。[スナップ]は[頂点]と[エッジ/セグメント]をオンにしておくとよい。

10)フレームを作成するためのレイヤ「frame」を作成(図11)。レイヤを「frame」に切り替える。

11)パネル[作成]>[シェイプ]>(スプライン)>[円弧]を選択。[作成方法]を[中心-始点-終点]に切り替えて,脚の形状の一つとなる1/4円弧を,中心から始点へドラッグし,終点でクリックして描く(図12)。

12)パネル[作成]>[シェイプ]>[スプライン]>[ライン]を選択して,さらに,パネル内の[作成の方法]>[初期タイプ]/[ドラッグタイプ]>[スムーズ]をオンにして,もう一つの脚の形状となる曲線を描く(図13)。 "

7-7-2. フレームの断面  次にフレームの断面形状を描きます。

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図15 長方形の作成

図16 アタッチ

図17 モディファイヤリスト

図18 スウィープ

図19 正しいスウィープ

13)大きさの目安としていたボックスは不要なので,レイヤ「Box」は,ツール[レイヤ]>[レイヤマネージャー]より,[非表示]としておく(図14)。

14)ビューポートを[前]に切り替え,パネル[作成]>[シェイプ]>(スプライン)>[長方形]を選択し,「長さ:32ミリ,幅:12ミリ」の長方形を描く(図15)。 "

7-7-3. 脚の一体化  脚の形状は2本のラインによって描かれていますが,この2本のラインを1つの図形に一体化しましょう。 15)ビューポートを[パース]に切り替え,曲線を選択する(1/4円弧ではなく曲線を選択する)。そして,パネル[修正]>[ジオメトリ]>[アタッチ]をオンにして,1/4円弧をクリックする(図16)。 "

7-7-4. 脚の立体化   一体化したラインに断面形状を与え,立体化します。 16)ラインを選択し,パネル[修正]>[モディファイヤリスト]をプルダウンして,[オブジェクトスペースモディファイヤ]>[スウィープ]を選択する(図17)。すると,ラインに断面形状が与えられる。

17)しかし,デフォルトでは,断面形状に[ビルトイン断面]が与えられてしまう(図18)。そこで,パネル内の[断面タイプ]から[カスタム断面を使用]を選び,[ピック]をオンにえしてから,先に描いた長方形(フレームの断面形状)を[ピック]する(図19)。 "

  これで片方の脚ができました。スウィープ元となる断面形状を表す長方形は不要なので,削除してしまいましょう。 "7-7-5. 脚をコピー  脚をコピーします。

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図20 脚をコピー

図20 コピー+移動

図21 レイヤを作成 図22 ボックスを作成

18)ツール[選択して移動]を選択し,脚をクリックして横方向(X軸のプラス方向)に”750ミリ”[移動+コピー]。[移動+コピー]は,Shiftキーを押しながら移動する。移動した直後に,[クローンオプション]ダイアログが表示されるので,[インスタンス]がチェックされていることを確認して[OK]を押す([インスタンス]と[コピー]の違いについては後述)(図20)。 "

  ここで,移動距離について説明をします。移動距離は画面下の[数値入力ボックス]から調整することができます。[数値入力ボックス]には[絶対モード]と[オフセットモード](相対モード)があります。[絶対モード]でオブジェクトを選択すると,[数値入力ボックス]にはその重心の座標が表示されます。   上記18)のX軸方向に+750に[移動+コピー]するには,以下の2つの方法があります。 1. [絶対モード]で,Shiftキーを押しながらコピー元を適当な位置にドラッグ。その後,[数値入力ボックス]の[X:]に”750”を入力。

2. [オフセットモード]で,コピー元のオブジェクトを選択して右クリック。コンテクストメニューから[クローン作成]を選択。その後,[数値入力ボックス]の[X:]に”750”を入力。 "

  移動の際には,オブジェクトを選択するとその重心に表れる[ギズモ]と呼ばれるハンドル(座標軸)を使うと便利です。オブジェクトは,[ギズモ]のX/Y/Z軸上をドラッグするとその軸に沿って,2軸による面上でドラッグするとその面上を移動します。 "7-8. シートと背もたれ 7-8-1. シートの作成

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図23 ボックスの移動

図24 平面の作成

図25 配列コピー

図26 平面を選択

 シートをモデリングします。シートはヴォリュームを表す本体に,凹凸のある上面を張りつけることにしましょう。 19)レイヤ「seat」を作成(図21)。 20)シート本体として,パネル[作成]>[ジオメトリ]>[拡張プリミティブ]>[面取りボックス]をオンにし,「長さ:550,幅:750,高さ:70,フィレット:6」の面取りボックスを作成(図22)。ここで,シートの位置は後で脚に合わせるので,適当な位置につくればよい。

21)シートの位置は後で脚に合わせるが,おおまかに脚の上方に移動しておくとよい(図23)。 "

7-8-2. シート上面の作成   シートの上面には凸凹のある平面を5×4つ並べてモデリングする。 22)パネル[作成]>[ジオメトリ]>[標準プリミティブ]>[平面]から,「長さ:132,幅:145,長さセグメント:5,幅セグメント:5」の平面を作成(図24)。

23)メニュー[ツール]>[配列]を使用して,5×4の配列コピーを行う。すなわち,[配列変換:ワールド座

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図27 FFD 4x4x4 を選択

図28 コントロールポイントを移動

図29 凹凸の表現

図30 グループ化

図31 位置合わせ

標(基点中心を使用)]>[増分]>[X]に”145”,[配列の次元]>[2D]をオン,[配列の次元]>[数]>”5, 4”。また,[オブジェクトタイプ]は[インスタンス]としておく(図25)。 ""

7-8-3. シート上面の凹凸  シート上面として作成した平面に凹凸をつけます。 24)配列コピーしたシート上面の部品(5×4のうちの1つ)を選択(図26)。パネル[修正]>[モディファイヤリスト]から[オブジェクトスペースモディファイヤ]>[FFD 4x4x4]を選択(図27)。

25)パネル内の[FFD 4x4x4]を展開し,[コントロールポイント]を選択(図28)。ツール[選択して移動]を使って,シート上面の部分の中央にある4つのコントルールポイントを上方へ12ミリほど移動(図29)。ここは,[数値入力ボックス]の[絶対モード]で数値を指定するとよい。

26)5×4のシート上面は,5×4の全部を選択し,メニュー[グループ]>[グループ]を用いて,グループ化するとよい(図30) "

 ここで1つの部品の形状を修正すると他の部品の形状も同時に修正されることがわかります。これは配列コピーの際に,部品が「インスタンス(継承)」されているからです。すなわち,[インスタンス]されたオブジェクトは,オブジェクトの1つを修正した場合に他のオブジェクトにも修正が影響します。他のオブジェクトに修正を影響したくない場合は[インスタンス]ではなく[コピー]を用いればOKです。 "7-8-4. 上面の位置合わせ   シートの上面を本体の上に位置合わせして,本体と上面もグループ化しましょう。ツール[位置合わせ]を用いると,効率的に位置合わせができます。 27)グループ化した上面を選択して,ツール[位置合わせ]をクリック。その後,シート本体をクリック。すると,[選択の位置合わせ]ダイアログが表示される。

28)第1段階として,上面と本体の高さを合わせる。そのためには,[選択の位置合わせ]ダイアログを以下のように設定する(図31)。設定後,[OK]を押す。 [X位置]と[Y位置]:オフ [Z位置]:オン [現在のオブジェクト]:[最小] [ターゲット オブジェクト]:[最大]

29)第2段階として,再度,ツール[位置合わせ]をクリックして,[選択の位置合わせ]ダイアログを以下のように設定する(図32)。

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図32 位置合わせ

図33 クローンの作成

図34 回転

[X位置]と[Y位置]:オン [Z位置]:オフ [現在のオブジェクト]:[中心] [ターゲット オブジェクト]:[中心]

30)上面と本体の両者を選択してグループ化。 "7-8-5. 背もたれの作成   グループ化したシートを脚の位置に合わせる前に,シートを流用して(コピーして),背もたれをつくりましょう。シートの奥行は550ミリですが,背もたれは,高さを550ミリ×90%=495ミリとしましょう。 31)グループ化したシートを選択して右クリック。コンテクストメニューから[クローン作成]をクリック(図33)。表示される[クローンオプション]から[コピー]を選択して[OK](ここでは[インスタンス]を選択しない)。

32)ツール[選択して回転](ショートカットは”e”)をオンにして,X軸周りに”-90度”回転(図34)。

33)右クリックで表示されるコンテクストメニューから[スケール]の[数値入力ボックス](右側の四角いアイコン)をクリック。表示される[スケールキー入力変換]ダイアログの[Y:]に”-90”を入力して”enter”(図35)。 "

7-8-6. シートと背もたれの位置合わせ   最後に,ツールの[選択して移動]と[選択して回転]を使って,シートと背もたれの位置を脚に合わせてください(図36)。  細かいことですが,脚の側面(X座標)がシートの幅の両端より16ミリ飛び出ているので,脚の側面をシートの側面に合わせるといいと思います(図37)。  これで,バルセロナチェアーの完成です。 "

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図36 シートと背もたれの位置合わせ

図37 完成

図35 スケール変換

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