ai研究の歴史と未来 - wiley research events€¦ · 01/08/2019  ·...

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札幌市立大学中島秀之

AI研究の歴史と未来

「知能」の定義

情報が不足した状況で,適切に処理する能力

–中島秀之:『知能の物語』 2015, p.154

–予期が必要

2019/8/1

AIとは

『人工知能とは』近代科学社

• 知能を探求する学問領域– コンピュータを用いて人間の知能を研究する

– 知的な作業のできる機械を作る

• 私は機械より人間に興味がある– プログラム作りを通して人間の知能を見てきた

(c) H. Nakashima

AI事典

初版 (1988) 第2版 (2003)

(c) H. Nakashima 第3版 2019(予定)

最新作(2018/11/30)

(c) H. Nakashima

AI白書2019(2018/12/11)

(c) H. Nakashima

分野地図

ITAI

機械学習

知識表現推論

ニューラルネットワーク

深層学習

環境知能Internet of ThingsCyber Physical System

実世界応用

ビッグデータ

AIの眼

AI研究の歴史

超簡略版AIの歴史

• 第一の夏:記号処理

• 第一の冬:常識の欠如

• 第二の夏:知識処理

• 第二の冬:暗黙知の処理ができない

• 第三の夏:DeepLearningによる暗黙知の処理

人工知能の始まり

• コンピュータは数値だけでなく記号も処理できる(人間以外に唯一記号処理ができる機械)– 1950年頃 チューリング(イギリス)シャノン(アメリカ):コンピュータにもチェスが指せることを示した

– ほら吹きサイモン:「あと10年でチェスで世界チャンピオンに勝つ!」

– 最初の人工知能ブーム(1度目の夏)

• 1956年 ダートマス会議でArtificial Intelligence人工知能と命名(マッカーシーら)

• 1960年代 機械翻訳の失敗– 1度目の冬

2019/8/1 (c) H. Nakashima

初期の機械翻訳の失敗

The spirit is willing, but the flesh is weak精神は強いが肉体は弱い

↓ロシア語дух бодр, плоть же немощна

↓英語に戻すThe vodka is good, but the meat is rottenウォッカは良いが肉は腐っている

spiritには精神の他に酒の意味がありfleshには肉体の他に肉の意味がある

2019/8/1

ウィノグラードの難問 [Winograd 72](人間には簡単だがAIには難しい)

• 大きすぎたのでトロフィーはカバンに入らなかった

– 大きすぎたのは

トロフィー?カバン?

• 手助けに対してジョアンはスーザンに感謝した

– 助けたのは

ジョアン?スーザン?

2019/8/1

フレーム問題氏田雄介『54字の物語』PHPより

(c) H. Nakashima

ニューラルネットワークの学習原理

2019/8/1 (c) H. Nakashima

入力 出力x1

x2

xk

w1

w2

wn

y1

ym

出力が望む値になるようにwnを調節する.出力から戻すのでバックプロパゲーションと呼ばれる

Σxiwj

閾値関数

A)

B)

C)

ニューラルネットの複雑化

A) パーセプトロン

Perceptron

B) 多層パーセプトロン

中間層ができた

C) Deep Learning (超多層)

中間層の多層化

「深層学習」

入力 出力

深層学習

Googleの猫(2012)

シニフィエ

1週間にわたりYouTubeビデオを同ネットワークに見せたところ、ネットワークは猫の写真を識別す

ることを学習した。事前に猫をネットワークに教えたわけでも、「猫」のラベル付けをした画像を与えたわけでもなかった。

Quoc Le, et. al: Building High-level Features Using Large Scale Unsupervised Learning, ICML2012, 2012

アルファ碁の衝撃

• 深層学習+モンテカルロ法+強化学習

• 2016年3月 韓国イ・セドル(世界2位)に勝利

• 2017年5月中国カ・ケツ(世界1位)に勝利

• ディープマインド社は「AI囲碁」プロジェクトの終了を宣言

深層学習には膨大な計算量が必要

• アルファ碁の場合

– 学習に50個のGPU 一か月

• プロ棋士の棋譜3千万局面から深層学習

• その後1手当たり10万回の試行で強化学習

– 対戦は1202個のCPUと176個のGPU

機械学習とは要するに

• 判別結果=F(事例)

– 要するにこのFを同定すること

– 事例は超多次元

– 従来は人間がこの軸を与えていた

– 深層学習は軸も学習できる

– Fはかなり複雑な関数だが

• 多重にすれば個々のFは単純

• 判別結果=Fn(Fn-1(… F1(事例)…))

2019/8/1 © Hideyuki Nakashima 33

DLだけでは…

• DLは「暗黙知」を学習できる

• でも機械学習が全てではない

• 知識表現/推論機構と結合したい

– DLだけでやろうとする研究もある

– 大脳はそうかもしれないが進化的に長い時間をかけている(はず)

– 結果先取りが実用的にはベター

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 35

AIと人間・社会

情報は物質,エネルギーに並ぶ世界観

• 農耕社会- 衣食住

• 工業社会(産業革命)– ハードウェア

• 情報社会

– ソフトウェア

– コンテンツ

– ビッグデータ

• 人間社会

– 価値,物語

– サービス

現在

情報

エネルギー

物質

AI

2000年頃使っていたスライド

1.0 狩猟社会: O(百万年)

2.0 農耕社会: O(万年)

3.0 工業社会: O(百年)

4.0 情報社会: O(十年)

5.0 超スマート社会

Society 5.0(加速する歴史)

情報の制御

エネルギーの制御

物質の制御

シンギュラリティ!

39

伝えたいメッセージ

• 情報処理技術は社会の仕組みを根本から変える能力を持っている

• 現在行なわれている情報化は,以前の社会の仕組みをそのままに,その一部をコンピュータやネットワークで置き換えたにすぎず,情報処理の可能性を十分に使っていない

• 新しい社会の仕組みそのものをデザインすることが望まれる

– 情報アーキテクト

– 社会工学 (Social engineering)

h.nakashima@fun.ac.jp 44

私の主張と同じ本が出た(2018)

「問うべきは,テクノロジーが私たちに何をするかではなくて,私たちがテクノロジーを使って何をするか,ということである.

だから,ロボットがアメリカ中の雇用をすっかり奪ってしまうといった見方は,根本的に間違っている.テクノロジーそれ自体は道具であって,運命ではない.運命を決めるのは私たちだ.」(p.13)2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 45

氏田雄介『54字の物語』より

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 46

ソサエティ5.1(中島版)

• 組織/働き方マネージメント– メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ– AIによるマッチング

• 企業:ミッションごとに組織編成• 働き手:フリーランス/Work sharing

– すべての大企業は人材商社に?

• 社会的意思決定システム(多数決に代わる)– 例えば直接民主制– 社会システムデザインが必須!

• 経済システム(資本主義からシェアリング経済へ)– AIに仕事を奪われても暮らせる社会

• 教育– AIによる個別専門教育

• CBT (Computer-Based Test)• IRT (Item Response Theory)

2019/8/1 (c) H. Nakashima

AIはゲームが得意

• ゲームは評価基準が単純,明確,不変

• 実生活では評価基準が超多数,場合に応じて変化

– 停電や事故によるダイヤ遅れからの復旧

• 人間の方がうまい

• 乗客が重要視する生活の様々な要因を知っている

AIは有能な助手

• AIは道具である

• 使い方と最終判断は人間に

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 49

戦略と戦術

戦略は人間

目的地設定

人生設計

どんなゲームをするのか

戦術はAI自動運転

学習塾

裏技の習得

2019/8/1 © Hideyuki Nakashima 50

健康

IBM Watson• IBMの人工知能「Watson」が、特

殊な白血病患者の病名を10分ほ

どで見抜き、その生命を救ったと東京医科学研究所が発表しました。患者は当初、医師に急性骨髄性白血病と診断され抗癌剤治も受けていたものの、まったく効果が現れていませんでした。東京医科学研究所は「AIが命を救

った国内初の事例ではないか」とのこと。– http://japanese.engadget.com/201

6/08/07/ibm-watson-10/

• Watsonの学習方式

– https://youtu.be/2K3rjIMasRc

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 52

自閉症を脳回路から見分ける技術

https://www.atr.jp/topics/press_160414.html

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 53

国際電気通信基礎技術研究所(ATR)東京大学昭和大学日本医療研究開発機構

自閉症児はロボットとなら会話できる

• ERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト

• JTP:ヒューマノイドロボット NAOによる自閉症療育支援

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 54

https://www.jtp.co.jp/solutions/autism-solution-kids/

教育

AIが職を奪うという議論について

• 深い専門はAIが得意

• 広い視野とデザインは人間が得意

• 今の教育はAIの得意なことだけ教えていないか?

2019/8/1

リベラルアーツ

• ギリシャ・ローマ時代のオリジナル– 市民であるために必要な教養– 文法,修辞学,論理学,算術,幾何学,天文学,音楽

• 池上彰『現代の教養』(2014)版リベラルアーツ– 宗教,宇宙,人類の旅路,人間と病気,経済学,歴史,日本と日本人

• 中島版(2018)リベラルアーツ– AIとITを使いこなすために必要な教養

– 情報技術,デザイン学,統計,日本語,哲学,人類の歴史,芸術

– 作法,道徳,体育などの躾はベースとして仮定

機械学習の限界

その解決策(提案)

機械学習の問題点1

• 過学習 (over fitting)• 騙され易い(ある意

味の過般化)

– 誤認識に導くパターンが容易に作れる

– 人間にも錯視はあるが…

→ トップダウン予期で解決可能

2019/8/1

https://japanese.engadget.com/2017/08/07/ai/

ワシントン大学やミシガン大学からなる研究チームが、いとも簡単に自動運転車のAIを混乱させる方

法を発見しました。たとえば既存の停止標識にいくつかのステッカーを貼るだけで、自動運転AIはそ

れを速度制限の標識に誤認識するとのこと。

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 66

https://www.gizmodo.jp/2018/01/toaster-attack-sticker.html

2019/8/1 67

機械学習の問題点2:

学習データの偏り問題

• 学習データが偏っていると学習結果も偏る

– Microsoft ヒットラー問題

– 中国 政府批判

– 犯罪者の写真に黒人が多い

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 68

解決案

• 見たいものを予期してから認識を開始する

– 「予測」とは違う

• 予測は認識の後に来る

– 予測=prediction– 予期=expectation/anticipation

2019/8/1

予測と予期

• 予測:【大辞林】将来の

出来事や状態を前もっておしはかること。また,その内容。「米の収穫高を―する」「―がはずれる」

• 予期:【大辞林】あらかじめ期待覚悟すること。「―したとおりの結果」「―に反して」

予測

予期

予測

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 71

予期

2019/8/1 (c) Hideyuki Nakashima 72

時間があれば:環境との相互作用

AIは英語のscienceで日本語の工学

•工学はScienceの一部

– science ←scientia=知識

– art ←ars=わざ・(職人的な)技術 (techne)

2019/8/1

SCIENCEART 工学 科学芸術

科学と工学

• 科学

– 客観的外部観測者

– 分析的

– Computer Science

• 工学

– 内部観測者

– 構成的

– AI (agents’ view)

2019/8/1

「科学者は神と語らい,工学者は社会と語らう」保立和夫(2014)

日本語は虫の視点が自然川端康成の「雪国」より

• English translation by E.G. Seidensticker:

The train came out of the long tunnel into the snow country.

• Original Japanese:国境の長いトンネルを抜けると雪国であった.

2019/8/1

英語では虫の視点(状況依存視点)が取りにくい

• 英語は鳥の視点 • 日本語は虫の視点» 金谷武洋「英語にも主語はなかった」( 2004)

2019/8/1

テキスト

庭園を見る視点の差

西欧の庭園(左:ベルサイユ宮殿)はその配置自体に意味があるが,日本の庭園(右:桂離宮)の美は環境に埋め込まれている

2019/8/1

テキスト

新形信和:日本人の<わたし>を求めて(pp. 16-17)

ユクスキュル:環世界(思索社 1973)

• 1892−1905の研究

• 環境は生物が作り出す

• 環境

• ダニの環世界1. 光:灌木の枝に登る

2. 酪酸:落下

3. 温度:冷たければ1に戻る

4. 触覚:毛の少ない場所から吸う2019/8/1

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