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皮膚病総合医学研究所大通じんぼ皮膚科神保 孝一

2019年11月17日(日)

◆主催 加齢皮膚医学研究会 皮膚悪性腫瘍研究会 ◆後援 公益財団法人札幌国際プラザ

第31回

市民公開講座

1

Ⅱ.皮膚バリアー機能の低下

皮脂欠乏症,乾皮症,スキンケア

Ⅲ. 免疫・抗アレルギー力の低下

皮膚 アレルギー、蕁麻疹、

アトピー性皮膚炎

Ⅰ.冬の生活環境と生活習慣皮膚病サルコペニア・フレイル

2

ストレス

全身

皮膚

紫外線寒冷乾燥

精神的葛藤

戸外活動減少表皮

真皮

脂肪

精神

寒冷・乾燥ストレスに伴う皮膚・身体変化

乾皮掻痒

免疫・坑アレルギー低下

3

治療への不対応

社会活動の低下

生活の質低下

心身症・精神疾患の合併

心理的負担とストレス

肉体活動の低下

ストレス対処の低下

加齢に伴う生活習慣皮膚病

慢性的寒冷環境

加齢に伴う生活習慣皮膚病とは筋肉量と筋力(サルコ)の消失(ぺニア)であるサルコペニアと生理的予備能の低下(フレイル)

冬の雪国に特異な生活環境と生活習慣皮膚病

社会的フレイル

心理的フレイル

精神的フレイル4

冬の生活と骨格筋量減少と筋力低下サルコペニア糖尿病・

5

メタボリック

骨格筋機能障害筋力低下

肥満インスリン抵抗性

冬季生活習慣病

栄養障害

骨粗鬆症

不安・抑うつ

心・血管疾患

サルコペニア

身体活動性の低下

シンドローム

サルコペニアサルコ:筋肉ぺニア:減少

[日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版作成委員会編:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018.第5版,メディカルレビュー社,東京,2018;35]改変)

免疫細胞(ランゲルハンス)

角化細胞(ケラチノサイト)

色素細胞(メラノサイト)

角層(皮膚バリアー:防壁)

低下・機能不全・外界からの刺激が直接身体に影響

・酸、アルカリ、化学物質の侵入・皮膚呼吸障害・易感染・体内水分・蛋白・電解質の漏出・免疫力の低下・全身の70%損傷は致死的

皮膚表面のバリアー(防壁)機能

6

角質層:角質(ケラチンが充満)細胞

層板顆粒から放出された天然保湿因子が細胞質と細胞間に充満している

1.角質細胞層が厚くなる

2.皮脂の分泌が低下する

3.発汗等の水分代謝低下

4.全身の免疫能の低下

顆粒層:顆粒細胞(天然保湿因子を産生する層板顆粒を形成)

天然保湿因子:セラミド、コレステロール、脂肪酸などを放出

顆粒細胞

角質細胞

有棘細胞

基底細胞基底膜

免疫細胞(ランゲルハンス細胞)

冬の寒冷に伴う皮膚の乾燥・ 免疫の低下

7

皮膚のバリアー機能と乾燥

乾燥から皮膚を守る ● ゴシゴシこすらず、お風呂やシャワーのお湯と一緒に手でさっと洗い流す

● 毎日せっけんで洗うのは、首から下は、わきの下と股だけ

● 風呂から上がったら顔は3分以内、体は10分以内に保湿剤を塗る

● 部屋の湿度は50~60%に乾燥やこすり過ぎで角層のバリアー機能は壊れる

角層

スポンジ層

水分保持層

バリアー層

ランゲルハンス

細胞

健康な皮膚 乾燥した皮膚

表皮

水分

出展:朝日新聞:改変 8

皮脂欠乏性皮膚炎・老人性乾皮症

保湿剤

生活習慣に対するアドバイス

・塗り心地のよい保湿外用剤の選択

・入浴剤の使用

・入浴時に関する注意(保湿効果のある入浴剤、固形石鹸の使用)

・室内の適度な湿度の維持

・刺激性の強い肌着を避ける

・水分の経口摂取

9

スキンケア用品1.ワゼリン :石油ゼリー、パラフィンゼリーとも言う。

石油を分離譲留する際の残りかす。水に不溶。

皮膚の水分を保持し皮膚表面からの水分漏出を防ぐ

2.尿 素 :角層蛋白の水結合性を増加

3.ヘパリノイド :アミノ酸と糖のエステル、保湿、止痒作用

4.水溶性コラーゲン:コラーゲンペプチドの側鎖に水和作用

5.ヒアルロン酸 :結合組織中の酸性ムコ多糖、低湿度環境でも保湿

効果が高い

6.ガンマーオリザノール:米糠油、米胚芽油由来で皮脂分泌量を増加

7.精製ツバキ油 :オレイン酸トリグリセライド、皮脂との高い親和

性と酸化安定性を有す10

➢ 一日2リットルの水分を取る。一度に取らず一日かけて飲む

➢ 肌の表面が取られてしまうので、スポンジ等で肌を擦りすぎない

➢ 風呂上りに使い心地のよい乳液タイプやクリームの保湿剤を肌が乾く前に塗る。→肌に刺激のある香料や、肌を乾燥させるアルコールが入っていないものを選ぶ。

→さらさらの物よりも濃いテクスチャーの物が良い

➢ 加湿器を使用する。→洗濯物を室内で干す→浴槽にお湯をはったままドアを開ける→鍋物、麺類など湯気の上がるものを選ぶ→鉢植えの植物を飾る

➢ 外気が肌に触れないようにする。頭、首元、足首も注意。

身近な乾燥肌対策

11

アレルギーとは?◎免疫反応の結果として、全身または局所に障害を生じる反応。

◎4種類に分類される。

◎Ⅰ型(即時型・アナフィラキシー型)はIgE依存性の反応。最も罹患率が高く、湿疹(アトピー性皮膚炎)、喘息や花粉症などが代表的疾患。

◎Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ型反応は、Ⅱ,Ⅲ型はIℊG,IgMに依存、Ⅳ型は感作T細胞に依存。

12

狭義のアレルギー性疾患はⅠ型だけを指すことが多い。

アレルギー反応を引き起こすものを総括する用語

(1)ハウスダスト(室内ごみ)、ダニ、花粉、食物など。

アレルゲンとは?

(2)アレルギー反応を起こす分子を含有するもの。(3)アレルゲンを生産する生物などをさす。

(1)環境アレルゲン;ダニの排泄物、猫の上皮、カビの胞子、杉・白樺の花粉。

アレルゲンは大別すると2群

(2)食物アレルゲン;鶏卵、牛乳、小麦、豆(ピーナツ、大豆)、魚・甲殻類、果物、野菜。

13

皮膚一経皮感作の重要性

・皮膚は単なる“外と内を分ける1枚の皮”ではない。

・全身のアレルギーの入り口。

・皮膚のバリア機能を正常に維持する事、皮膚に炎症を引き起こさないこと。

・経皮感作のリスクを下げると、種々のアレルギー反応の予防につながる。

・新生児に保湿剤によるスキンケアを行うことで優位にアトピー性皮膚炎の発症率を下げえる。

14

1.全身性皮膚瘙痒は肝実質障害の約2年前に皮膚症状として出現しうる。

・治療は困難で、皮膚保湿剤,ステロイド外用剤,抗ヒスタミン剤は無効。

・高コレステロール血症治療薬のコレスチラミンは、約80%の患者に有効で、メチルテストステロンなどのアンドロゲン誘導体は、有効だが、作用機序が不明。

皮膚瘙痒,浮腫(蕁麻疹)1

15

・紫外線(UVA,UVB)を用いた光線療法が有効。

・作用機序は起痒物質の分解による。

2.飲酒は、全身の免疫系に影響を及ぼすのみならず、蕁麻疹発生にも関係する。

・飲酒後、亢進する腸管リポ蛋白と単球により、活性化されたリンパ球由来のサイトカイン産生が亢進し、血中のIgEレベルが上昇し、蕁麻疹,アナフィラキシー反応が発生するとされる。

・飲酒後の蕁麻疹反応…①皮膚表面の盛り上がり(膨疹)を発症と②皮膚深層と粘膜の浮腫を発症する血管性浮腫よりなる。

…アルコール自体の毒性,代謝酵素の欠損・機能低下により先天性,後天性に発生。稀に、アルコール中に含まれる防腐剤,着色料等によっても発生する。ごく少数に、飲酒後の体温上昇によるコリン作動性蕁麻疹が発生する。

16

皮膚瘙痒,浮腫(蕁麻疹)2

蕁麻疹の起こる仕組み

① アレルゲンが皮膚から直接、もしくは血管を通して真皮内のマスト細胞(肥満細胞)に到達② マスト細胞が活性化し、ヒスタミンなどが放出される③ ヒスタミンにより血管が拡張し、血漿成分が漏れ出ることで、皮膚は赤く

膨れ上がる④ ヒスタミンが知覚神経を刺激し、痒みを感じる

③ ①

アレルゲン

血管

血管

知覚神経

表皮

マスト細胞(肥満細胞)

ヒスタミン

真皮

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アトピー性皮膚炎の痒みと掻破との関係

表皮

真皮

肥満細胞

神経ペプチド

(サブスタンスPなど)脱顆粒

痒みの受容体

痒み

軸索反射

求心性C線維

脊髄

大脳皮質

表皮細胞傷害

サイトカイン

ヒスタミン

痒みとして認識

神経ペプチド

(substance P)

ストレス刺激

掻破

ヒスタミン

18

アトピー性皮膚炎の病因論的分類

Johnsson SG,et al:Allerfy 2001;56:813-824 引用,改変

非アレルギー性AD アレルギー性AD(内因性アトピー)

19

(自然免疫型AD)(外因性アトピー)(獲得型AD)

移行・共存

皮膚バリア機能異常(フィラグリン,セラミド)

発汗異常

ストレス

植物由来因子(抗菌ペプチドの産生低下,ブドウ球菌由来因子など)

アトピー性皮膚炎症候群

IgEによるアトピー(古典的アトピー型) IgEによらないアトピー

湿疹かゆみ

乾燥肌

T細胞好酸球IgG(自己抗体)その他

アトピー性皮膚炎の緊急課題難治性成人型発生例の増加

1.成人になるまでに治ることが多いが、近年難治例や成人型が増加

2.顔面に難治性の発赤、頚部を主体に明らかな色素沈着、全身に痒みの強い小結節(痒疹)が多発する症例が注目されている

3.子供の頃にはアトピー性皮膚炎はなかったが、20歳頃に初めて症状が出ることもあり、その場合は顔面から頚部にかけて強く発赤を認めることが多くなる

20

成人型・大人アトピーの発生原因

・以前に比べて大気汚染がひどくなったこと、ダニやカビが繁殖しやすい機密性の高い建物が増えたこと、衣類や食品に化学物質が増えたことなどが背景

・ストレスや不規則な生活習慣も大人アトピーを増加させる原因

・子供の治療とは違い、その人にあった治療法を見つけて治療しなければならない

・幼少期よりステロイドを使っている場合、皮膚のステロイド依存が強く、幼少時より脱ステロイドを行うことが難しくなる

21

アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法の一例

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ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏の適量をしっかりと全身に塗る

症状が軽くても今まで発疹が出たところ全体に,週に3~2~1日は薄く塗りのばす

皮膚の強さ

毎日欠かさずに保湿剤を全身に塗る

時間経過(週)

病態に応じた治療をまず行う

ありふれた治療で普通の生活ができること

アレルギー的側面(アレルギー反応)

非アレルギー的側面(敏感肌)

治療のゴール

痒みを抑える スキンケア

ステロイド外用薬免疫抑外用薬

第一選択治療薬

(どうしてもコントロールできないとき)

第二選択治療へ

成人型アトピー性皮膚炎の治療戦略

抗アレルギー薬 保湿薬

今ある湿疹を抑える

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