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第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

第4章 橋梁付属物

4.1 支承

4.1.1 一 般

(1)支承は、上部構造から伝達される荷重を確実に下部構造に伝達し、地震、風、温度

変化などに対して安全となるように設計しなければならない。 (2)支承の耐震設計は、道示Ⅴの規定によって行うものとする。

解E A

(1)道示Ⅴ15.1 より、レベル 2 地震動に対して支承部の機能を確保する構造のみを規定し

ている。 従来、変位制限構造と補完し合ってレベル 2 地震動により生ずる水平力に抵抗する構

造としてタイプ A 支承が定義され、橋台の拘束により上部構造に大きな振動が生じにく

い場合や、支承部の構造上やむをえない場合に用いてもよいことが規定されていた。 しかし、支承部の点検や維持管理のために支承部周辺は可能な限り複雑にしない方が

よいこと、地震によりタイプ A の支承部が損傷した場合にその部材や破片の落下による

第三者被害が生じないような配慮が必要であることを踏まえ改定された。

3―189

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

(2)支承の種類には以下のようなものがある。 1)水平反力分散支承

水平反力分散支承とは、ゴムのせん断剛性や下部構造の剛性を利用することにより、

地震時に発生する水平力を複数の下部構造に分散させる支承をいう。

2)免震支承 免震支承とは、一定以上の減衰機能を有し、地震時のエネルギー吸収ができるゴム支

承をいう。 一般的に用いられる免震支承としては、次の 2 種類がある。 ・高減衰積層ゴム支承(HDR) 特殊配合された減衰機能を付加したゴムによる積層ゴム支承である。補強鋼板は

SS400 を使用する。 鉛直力に対して積層ゴムの大きな圧縮剛性で支持し、水平力に対しては柔らかいせ

ん断剛性で長周期化を図る。またゴム自身に復元力(バネ剛性)とエネルギー吸収力

(減衰効果)を有する。 ・鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB) 積層ゴム中央部にエネルギー吸収装置としての鉛プラグを挿入し、両者を一体化し

た免震支承である。 ゴムは、天然ゴムを使用し、補強鋼板は SS400、鉛は 99.99%以上の鉛地金を使用

する。 鉛直力に対して積層ゴムの大きな圧縮剛性で支持し、水平力に対しては柔らかいせ

ん断剛性で長周期化を図る。また、鉛の弾塑性変形により地震エネルギーを吸収する。

ただし、小水平力に対しては、鉛の弾性で抵抗する。

(a)鋼 橋 (b)コンクリート橋 図-3.4.1 ゴム支承の構造例

3―190

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4.1.2 可動支承の摩擦係数

可動支承に働く水平力の算出には表-3.4.1 の摩擦係数を用いるものとする。

表-3.4.1 可動支承の摩擦係数

摩 擦 機 構 支 承 の 種 類 摩擦係数 こ ろ が り 摩 擦 ローラーおよびロッカー支承 0.05 す べ り 摩 擦

ふっ素樹脂支承板支承 0.10 高力黄銅鋳物支承板支承 0.15 鋼の線支承 0.25

ゴム支承の摩擦係数に相当する係数 0.15

4.1.3 支承下面の構造

(1)沓座モルタルの厚さは、原則として下部構造天端から 30mm 程度とする。 (2)沓座モルタルには、補強鉄筋を配置すること。

A 解E

(1)沓座モルタル補強鉄筋は、支承に作用する鉛直力による支圧に対して D16-100×100を配置するものとし、その大きさは沓座モルタル上面幅とする。D16-100×100 の配置

が困難な場合は、同量の鉄筋量を見込む鉄筋径とし、ピッチを調整するものとする。 (2)橋座部は「第 6 章 6.6 橋座の設計」に規定する鉄筋を配置すること。 (3)プレンテンション I 桁とホロー桁のような連続したゴム支承を用いる場合は、荷重が分

散されるため、沓座モルタル補強鉄筋や沓座補強鉄筋は省略してよいものとする。 (4)箱抜き長はアンカーボルト下端+100mm 程度、径はアンカーボルト径+100mm 程度

とする。

図-3.4.4 支承下面の標準構造 図-3.4.2 支承下面の構造

3―191

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.2 伸縮装置

4.2.1 一 般 伸縮装置は、道路の性格、橋梁形式、必要伸縮量を基本に耐久性、平たん性、排水性と水

密性、施工性、補修性、経済性を考慮して型式を選定する。 ただし鋼橋には、鋼製伸縮継手をベースに検討するのがよい。

A 解E A

現在用いられている各種の伸縮装置はそれぞれ一長一短があり、選択はどの事項を重視す

るかで判断することになる。伸縮装置を鋼製とゴムに大別して総括的に比較すると表-

3.4.2 のとおりとする。 表-3.4.2 伸縮装置特性比較表(橋建協・伸縮装置の手びき)

鋼 製 ジ ョ イ ン ト ゴ ム 系 ジ ョ イ ン ト

構 造 性 フィンガージョイントは適用伸縮量の範囲が

大。斜橋にも使い易い。

一般に適用伸縮量が小さい。斜橋では伸縮方

向に注意を要す。

耐 久 性 適正に設計、施工されたものは耐久性に富む。 一般的には、鋼製に比べて劣る。

平たん性 製作、据え付け、前後の舗装に十分な配慮が

必要。

特に後付型式では平坦度を出し易く走行性が

よい。

排 水 性

水 密 性

従来の排水樋方式では維持管理が困難。水密

性を必要とする場合は非排水タイプとする。

一般的に水密性に富み、防水、防音性に優れ

ている。

施 工 性 施工時に細心の注意が必要。 軽量であり、一般に鋼製に比し施工し易い。

補 修 性 補修内容にもよるが一般的には補修がやりに

くい。 鋼製に比べて一般に補修し易い。

経 済 性 ゴム系に比し新設時の工費は高い。 一般に鋼製よりは安価。

埋没ジョイントは、原則としてコンクリート橋に用いるものとするが、鋼橋においても、

振動、騒音を抑制する必要がある場合は、これによらなくてもよいものとする。 (1)伸縮装置の設計伸縮量について

伸縮装置の設計伸縮量は、常時の移動量とレベル 1 地震動で想定される移動量に対

してその機能が確保されるよう設計する。したがって、伸縮装置は道示Ⅴ14.4.2 に基

づき、レベル 1 地震動においては破損させないように設計すること。なお、免震設計

を用いる場合の「桁端部の遊間」、「地震時設計伸縮量」は道示Ⅴ14.4 上部構造端部構

造によること。 (2)桁遊間について

桁端部の遊間については、道示Ⅴ14.4.1 上部構造端部の遊間に基づき設計するもの

とする。 桁端部には、原則として地震時に桁と橋台、あるいは、隣接する桁同士が衝突しな

いように、十分な遊間を設けるものとする。

3―192

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

また、免震設計を用いる場合以外においても(反力分散沓等)、「道路橋の耐震設計

に関する資料」等を参考とし、道示Ⅴ14.4.1 に基づき設計するものとする。

3―193

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(3)大きな伸縮量に対応できる形式について 大きな伸縮量(±100mm 以上程度)に対応できる伸縮装置を参考として記載する。

なお、形式の選定にあたっては、経済性、構造性、施工性、維持管理等についてよく検

討し、採用すること。

図-3.4.3 鋼製フィンガージョイント 図-3.4.4 鋼製支持式ジョイント

図-3.4.5 鋳鉄製フィンガージョイント 図-3.4.6 マウラージョイント

図-3.4.7 マゲバ KM ジョイント 図-3.4.8 シーペックジョイント

(参 考) ・ マウラージョイント : 日本鋳造 株式会社 ・ マゲバ KM ジョイント : 川口金属工業 株式会社 ・ シーペックジョイント : 株式会社 橋梁メンテナンス

3―194

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4.2.2 設計一般 (1)伸縮量の決定における温度変化は、鋼橋(上路橋)で-10℃~+40℃、鋼橋(下路橋

及び鋼床版橋)で-10℃~+50℃、コンクリート橋で-5℃~+35℃とする。 (2)桁端部のたわみ角は表-3.4.3 による。

表-3.4.3 L/δ 400 500 600 700 800 900 1,000 1,500 2,000 θ 1/100 1/125 1/150 1/175 1/200 1/225 1/250 1/375 1/500 k 0.0100 0.0080 0.0067 0.0057 0.0050 0.0044 0.0040 0.0027 0.0020

L:支間長 δ:支間中央のたわみ θ:(rad):桁端のたわみ角 k:たわみ曲線が 2 次放物線の単純桁として算出した係数

(3)コンクリートのクリープ及び乾燥収縮

表-3.4.4 コンクリートのクリープ係数 ψ= 2.0

コンクリートの乾燥収縮量 20deg 降下相当

(4)クリープ、乾燥収縮の低減係数

表-3.4.5 コンクリート材令

( 月 ) 0.25 0.5 1 3 6 12 24

低 減 係 数(β) 0.8 0.7 0.6 0.4 0.3 0.2 0.1

A 解E A

フィンガーの設置時遊間は据付時温度を標準として決定するものとするが、据付時温度は

表-3.4.6 のとおりとする。 表-3.4.6 据付時温度

据付時期 温 度 春・秋 +15℃ 夏 +25℃ 冬 +5℃

3―195

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4.2.3 鋼フィンガージョイント 鋼フィンガージョイントの形式は片持式を原則とし、支承部の保護に配慮し、非排水タ

イプとする。

A 解E

(1)鋼フィンガージョイントの一般的な形状を図-3.4.9 に示す。

図-3.4.9 非排水タイプ (2)伸縮量 15mm 程度以上、または支間長 30m 程度以上に適用するのが望ましい。 (3)使用材料の規格及び基本寸法

3―196

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表-3.4.7 (橋建協・伸縮装置の手びき) 名 称 材 質 寸法・板厚・規格等 摘 要

フェースプレート SM400 ABC JIS G 3106 車道部最小厚 25mm

歩道部 12mm 以上

ウェブプレート SS400 JIS G 3101 車道部最小厚 12mm

下フランジプレー

ト 〃

JIS G 3101 車道部最小厚 12mm

リブプレート 〃 JIS G 3101 最小厚10mm 標準 500mmピッチ

アンカープレート 〃 JIS G 3101 最小厚 9mm フラットバー使用

間隔 40mm 以下 幅 50mm

アンカーバー NSD400

排水関係 SUS304 JIS G 4305 斜角 85 度以上の場合

セットボルト F10T JIS B 1186

(4)フェースプレートにはコンクリート打設時の空気抜き及びコンクリートのまわり具合

確認のための小孔をあけるのが望ましい。 (5)フェースプレートの下面も面取りをする。 (6)リブプレートにはコンクリートの定着をよくし、補強鉄筋を通すための穴を設け、鉄

筋はリブプレートに溶接するものとする。 (7)フィンガープレート形状

直橋におけるフィンガーの形状は、フィンガー長(Lo)に応じて図-3.4.10 に示す A-D 型の 4 種類を用いる。通常は A-C 型を用いるが輪帯幅の小さい車(表-3.4.8 参

照)が通る場合、フィンガー長が大きくなるとタイヤがフィンガーの隙間に入りこむ

危険があるのでこのような場合は D 型を用いる。

表-3.4.8 車 種 最小タイヤ幅

二輪車(オートバイ) 約 58mm 自 転 車 約 28mm

3―197

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(a)A 型 (c)C 型 Lo≦130mm Lo>190mm (b)B 型 (d)D 型 130<Lo≦190mm Lo>190mm

(注)Lo;フィンガー長

図-3.4.10 フィンガー長によるフィンガーの形状

(8)バックアップ材の形状を図-3.4.11 に示す。

図-3.4.11 バックアップ材

3―198

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

(9)ステンレス樋の形状を図-3.4.12 に示す。 樋幅 H についてはフェースプレート遊間 L1 の 1.5 倍以上とする。

図-3.4.13 樋幅の決定方法

図―3.4.12 ステンレス樋

3―199

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(10)歩道部、端部の処理を図-3.4.14 に示す。

図-3.4.14

歩道部はレベルにしないで必要厚を確保する。 端部は路面より 10cm 上げた位置まで施工する。

図-3.4.15 端部の処理 (11)樋の水切りパイプの設置

ステンレス管(SUS304 20A)を勾配変化点に設置するものを標準とするが、桁の配置

より、これによりがたい場合は別途考慮する。

図-3.4.16 樋の水切りパイプ

3―200

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

(12)鋼フィンガージョイントの設置方向 連続曲線構造における伸縮装置の設置方向は、原則として次のとおりとする。

1)1 連の場合 固定支承と伸縮部とを直線で結んだ方向に設置する。

図-3.4.17

2)2 連以上の場合 掛け違い部は、伸縮装置の両側の固定支承を直線で結んだ方向に平行(図-

3.4.18)とし、また固定支承が複数の場合は、各々の固定支承の中央点を直線で

結んだ方向に平行に設置する。(図-3.4.19)

図-3.4.18

図-3.4.19

3―201

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.2.4 そ の 他 伸縮装置の構造には、据付時温度を基準とした遊間~据付け温度図を明記するものとす

る。

解E A

(1)伸縮装置構造図には、遊間~据え付け温度直線を明記すること。例を図-3.4.20 に

示す。

図-3.4.20 遊間~据付温度図(鋼橋、L=60mの場合)

(2)伸縮装置構造図の数値は 15℃で据え付けた場合を示すものとする。 (3)ジョイントの前後は摩耗による段差が生じ易いので、図-3.4.21 のように車道部

をコンクリート仕上げとする。なお、パラペット部におけるジョイント背面鉄筋

は据付時の作業性を考慮して配筋をすること。

図-3.4.21

3―202

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

なお、車道部の後打ちコンクリートは鋼製、ゴム系とも床版コンクリートと同等のもの とする。

歩道部についてはジョイント端までアスファルト舗装仕上げとする。

図-3.4.22

4.2.5 ゴム系ジョイント ゴム系ジョイントは、伸縮自在な各種形状のゴム材と鋼材とを組み合わせて、直接輪荷

重を支持できる構造とするものとする。

A 解E A

(1)伸縮量によってゴムのセル数を変えるものと、ゴム形状を変えるものとがあり、いず

れも設置時に初圧縮を与えるものとする。 (2)ゴム系ジョイントは、原則として輪荷重を床版遊間で支持できる荷重支持型を用いる

ものとする。 (3)斜橋に使用する場合は、斜方向の移動に対する安全性を確認するものとする。

3―203

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4.2.6 埋設ジョイント (1)埋設ジョイントは、継目部を前後の舗装と同程度の性状を有する舗装材料を用いて、

舗装面と一体とした継目なしの構造とするものとする。 (2)埋設ジョイントの使用範囲は、表-3.4.9 のとおりとする。

表-3.4.9 埋設ジョイントの使用範囲 橋 種 伸 縮 量

コンクリート橋 40mm 未満 鋼 橋 40mm 未満

A 解E A

(1)埋設ジョイントは、伸縮量、耐久性、施工性、補修性などを考慮して、総合的に選定

するものとする。 (2)鋼橋においては、振動、騒音を抑制する場合に限り使用を検討するものとする。 (3)設計に際しては「埋設ジョイント設計施工の手引き(案)平成 5 年 3 月(既設橋梁の

ノージョイント工法の調査研究委員会(財)道路保全技術センター)」によるものとする。

3―204

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4.3 排水装置

4.3.1 一般 橋面には排水をすみやかに行うため、路肩部分には必要な間隔で十分な排水機能を有する

装置を設けるものとする。

A 解E A

(1) 排水桝の間隔は、路面横断勾配が両匂配の場合は 20m 以下、片匂配の場合は 10m 以

下とする。排水面積 80m2程度に 1 ヶ所設置するものとする。 ただし、横引き管を設置する場合等で流量計算を行う場合は、これによらなくても

よいものとする。 材質は塩ビ管(VP)を原則とするが、横引き管等で振動の影響を受ける支持スパン

が長い場合は鋼管(STK)も使用できるものとする。 (2)縦断勾配が凹部及び伸縮装置部の付近の排水桝の配置は図-3.4.23 による。

図-3.4.23 (3)緩和曲線区間、あるいは S 字曲線区間の変曲点付近に生じる横断勾配が、水平か水平

に近い区間では、排水桝の設置位置について十分検討しなければならない。 (4)排水桝天端は設置箇所における舗装面より 10mm 程度低くし、周囲の舗装ですりつけ

る。片勾配区間については、路肩に外下りの 2%横断勾配を付して排水効果をあげるこ

とも検討すること。

図-3.4.24

3―205

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

(5)排水管内径は縦管で 150mm、横引き管で 200mm 以上とする。 材質は塩ビ管(VP)使用を原則とする。排水管下端は支間中央部では下フランジから

40cm 下がり、支承部では沓座面より 40cm 下がりとする。

図-3.4.25 垂れ流し排水管の下端処理 (6)横引き管は、排水性を考慮して、桁より下には下げない範囲でできるだけ急勾配で配

置するものとする。横引き管の延長が長い場合は伸縮継ぎ手を適宜設ける。

図-3.4.26 横引き管の勾配 (7)屈曲部を設ける場合には曲り管を用いるものとする。

図-3.4.27 屈曲部の曲り管 (8)上部工と下部工とを縁切りした受け桝方法では、凍結抑制剤を含んだ水が下部工にか

かりコンクリート劣化の原因になることから、接続部は、排水性、保全性のよいフレ

キシブル管を用いるものとする。

3―206

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

図-3.4.28 フレキシブル管の配置

3―207

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

(9)排水桝のつく部分は図-3.4.29 のように鉄筋で補強すること。

図-3.4.29 床版補強 (10)排水桝 排水桝形状は、資料-15 を参照。

4.3.2 支持金具 (1)支持金具および取り付けボルトの材質は、原則として SS400 材とし、溶融亜鉛メッキ

を施すものとする。 (2)支持金具は、水の衝撃、風荷重などに振動しない構造とし、排水管がずり落ちない位

置に取り付けるものとする。

解E A

(1)支持金具は、発錆の著しい箇所であるにもかかわらず塗り替えが頻繁に行えないこと

から、原則として溶融亜鉛メッキ(JIS H86412 種 HDZ55 相当)を施すものとする。 (2)ボルトのゆるみおよび排水管の破損の原因になるため、支持金具は振動しない構造と

し、高さ 20m 以上の高橋脚の場合には、排水管と支持金具の間に衝撃緩和材を設ける

ものとする。

(SD345)

3―208

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

図-3.4.30 支持金具

3―209

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.4 橋梁用防護柵

4.4.1 一般(防護柵設置要網) (1)橋梁用防護柵の種類は、橋梁用車両防護柵、歩行者自転車用柵兼用車両防護柵、及

び歩行者自転車用柵とする。防護柵等の設置は、図 3.4.31 を参照のこと。 (2)橋梁車両防護柵は、種別に応じて次の性能を有するものでなければならない。

1)車両の逸脱防止性能 2)乗員の安定性能 3)車両の誘導性能 4)構成部材の飛散防止性能

A 解E A

(1)橋梁用防護柵の機能は次のとおりである。 1)橋梁用車両防護柵は、橋梁に設置する車両防護柵の総称で、走行中に進行を誤った車

両が橋梁外などに逸脱するのを防ぐとともに、乗員の傷害および車両の破損を最小限

にとどめて、車両を正常な進行方向に復元させることを目的としたものである。 2)歩行者自転車用柵兼用車両防護柵は、橋梁用車両防護柵に歩行者、自転車の橋面外へ

の転落を防止することを目的とした、歩行者自転車用柵としての機能を持たせたもの

である。 3)歩行者自転車用柵は、歩行者及び自転車の橋梁外への転落を防止することが目的であ

り歩車道境界に橋梁用車両防護柵が設置される場合に、歩道部の地覆上に設置するも

のとする。 4)歩車道境界の車両防護柵は、次の場合に設置するものとする。 ①転落車両による二次的事故の発生を防止する必要がある場合。 ②線形が視認されにくい曲線部など、車両の路外逸脱が生じやすい場合。

(2)防護柵の機能を発揮するために満足すべき性能を示し、防護柵の設置にあってはこれ

らの性能が確認されているものを用いることとした。なお、これまでに性能を確認さ

れている車両用防護柵についての仕様をまとめた「車両用防護柵標準仕様・同解説 平

成 19 年 4 月(社団法人 日本道路協会)」が発刊されているので参考にすること。 1)車両の逸脱防止性能について ①強度性能 車両の衝突に対して、防護柵が突破されない強度を有すること。

②変形性能 車両の衝突に対して、たわみ性防護柵は車両の最大進入行程が設置場所に応じて所定

の値を満足することとし、剛性防護柵は主たる部材に塑性変形が生じないこととする。 2)乗員の安全性能について

車両の衝突に対して、車両の受ける加速度が種別、種類に応じて所定の値を満足する

こと。 3)車両の誘導性能について

3―210

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

①車両は、防護柵衝突後に横転など生じないこと。 ②防護柵衝突後の離脱速度は、衝突速度の 6 割以上であること。 ③防護柵衝突後の離脱角度は、衝突角度の 6 割以下であること。

4)構成部材の飛散防止機能について 車両の衝突時に構成部材が大きく飛散しないこと。

3―211

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

※)山梨県においては、一般国道および県道の車道部に設置する防護柵は、新設、付

替に限らず全て歩行者自転車用柵兼用車両防護柵とする。

○両側歩道の橋梁、高架での設置の考え方

図-3.4.31 歩行者自転車用柵および橋梁用車両防護柵設置図

注 3)片側歩道の橋梁においては、車道側に歩行者

等が混入するおそれがないとはいえないことから、

転落防止機能を有する歩行者自転車用柵を兼用し

た車両防護柵を設置するものとする。

注 1)歩道のない一般国道および県道においては、

歩行者等が混入するおそれがあることから、転落防

止機能を有する歩行者自転車用柵を兼用した車両

防護柵を設置するものとする。

歩行者自転車用柵兼用車両防護柵

歩行者自転車用柵兼用車両防護柵

○片側歩道の橋梁、高架での設置の考え方

○歩道のない橋梁、高架での設置の考え方

3―212

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

橋梁の防護柵の選定は下図を参考にするとよい。 注 1) 橋梁下に、鉄道、道路、家屋等が存在する場合など。

注 2) 跨線橋等では、その取付け部も含め剛性防護柵(壁高欄)が望ましい。 注 3) 歩行者のみだりな横断を防止するためには、別途歩車道境界に種別Pの横断防止柵を設置

する。

歩道があるか

線形が視認 されにくい曲線等 車両が路外に逸脱 しやすい道路か。

転落車両に より二次的事故が発生 する恐れがあるか。

注1)

歩道がある

No

No

Yes

Yes

歩道がない

歩行者自転車用柵

兼用車両防護柵 (兼用型 C~SS) 注 2)

歩行者自転車用柵

兼用車両防護柵 (兼用型 B~SS) 注 2)

歩車道境界用

車両用防護柵

(Cp~SBp) +

歩行者自転車用柵兼

用車両防護柵(Sp)

歩行者自転車用柵

兼用車両防護柵 (兼用型 C~A)

3―213

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

(3)車両用防護柵は、表-3.4.10 に示す道路区分と設計速度及び設置する区間に応じて防

護柵種別を決定する。

表-3.4.10

3―214

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

3―215

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.4.2 橋梁用車両防護柵及び歩行者自転車用柵兼用車両防護柵 橋梁用車両防護柵及び歩行者自転車用柵兼用車両防護柵は、原則としてブロックア

ウト型及び剛性防護柵(壁高欄)とする。

A 解E

(1)橋梁用車両防護柵及び歩行者自転車用柵兼用車両防護柵の高さは、図-3.4.32 を標準

とする。

(2)剛性防護柵は、次の場合に設置するものとする。 1)車両が橋梁外に転落し、二次的災害を起こす可能性が高い跨線橋、跨道橋、高架橋

など。 2)高規格道路の橋梁。(ただし、中央分離帯側で車両が橋梁下に落下する恐れがない

場合は、ガードレールを設置するものとする。) (3)橋梁用ビーム型防護柵の端部の支柱間隔は、一般部の支柱間隔の 1/2 以下とする。

図-3.4.32 防護柵の高さ

3―216

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.4.3 剛性防護柵(壁高欄)

剛性防護柵は、鉄筋コンクリート壁製とする。

A 解E

(1)鉄筋コンクリート壁式防護柵の形状は、図-3.4.33 を標準とする。 (2)鉄筋コンクリート壁の高さは、原則として車道面から 100cm(4.4.1 に規定する種別

SS のみ 110cm)歩道面から 110cm とする。 (3)鉄筋コンクリート壁には、10m 間隔で伸縮目地を設けるものとし、橋軸方向水平鉄筋

は、伸縮目地部で切断するものとする。

図-3.4.33 剛性防護柵標準断面

(フロリダ型)

(フロリダ型)

3―217

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.4.4 歩行者自転車用柵

歩行者自転車用柵は、歩行者及び自転車の橋梁外への転落防止機能を有する構造としな

ければならない。

A 解E A

(1)歩行者自転車用柵の形式としては縦桟型を標準とする。 (2)歩行者自転車用柵の高さは、図-3.4.34 のとおりとする。

4.4.5 設置位置

橋梁用車両防護柵の設置位置は、地覆への定着、建築限界などを考慮して決定すること。

A 解E A

(1) ブロックアウト型の橋梁用車両防護柵及び歩行者自転車用柵兼用車両防護柵の設置

位置は、図-3.4.35 のとおりとする。

(2) 歩行者自転車用柵の設置位置は、地覆の中央部とする。

図-3.4.34 歩行者自転車用柵の高さ

図-3.4.35 ブロックアウト型防護柵の設置位置

3―218

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.4.6 定着部の構造 橋梁用防護柵は、埋込み方式またはアンカーボルト方式により地覆部に十分定着するも

のとする。 解 (1)埋込み方式の定着は、支柱下端(ベースプレート下面)を床版上面として、埋め込み

深さを十分確保するものとし、その一般的な定着構造は、図-3.4.36 のとおりとする。

図-3.4.36 埋込み方式の定着構造 (2)アンカーボルト方式の一般的な定着構造は、図-3.4.37 のとおりとする。

図-3.4.37 アンカーボルト方式の定着構造

3―219

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.5 照明

4.5.1 設置区分〔道路照明設置基準〕

(1)橋長 50m 以上の長大橋梁には原則として照明施設を設置する。 (2)上記以外の橋梁についても必要に応じて照明施設を設置する。

A 解E A

橋梁の照明は、原則として局部照明として取扱い、設計にあたっては、下記の事項を考慮

する必要がある。 1)橋梁の構造などによっては、灯具の取付高さや間隔が制限されることがある。灯具

の取付高さが制限された場合には、間隔は取付高さを基準として、4.5.2 以降の規定

を参考にする。 2)橋梁によっては、橋梁を側面から見た照明効果やその装飾性などに特別の考慮が必

要となることがある。

4.5.2 照明設計の基本

連続照明の設計にあたっては、下記に示す照明の要件を考慮するものとする。 (1)平均路面輝度が適切であること (2)路面の輝度均斉度が適切であること (3)グレアが十分抑制されていること (4)適切な誘導性を有すること

4.5.3 性能指標

連続照明の性能指標は、平均路面輝度、輝度均斉度、視機能低下グレア、誘導性とする。 (1)平均路面輝度

平均路面輝度は、道路分類および外部条件に応じて、表-3.4.11 の上段の値を標準と

する。 ただし、中央帯に対向車前照灯を遮光するための設備がある場合には、表-3.4.11 の

下段の値をとることができる。 表-3.4.11 平均路面輝度 (単位:cd/m2)

外 部

条件 道路分類

A B C

主要幹線道路 1.0 0.7 0.5 0.7 0.5 -

幹線・補助幹線道路 0.7 0.5 0.5 0.5 - -

3―220

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

(2)視機能低下グレア

視機能低下グレアは、相対閾値増加を原則として表―3.4.12 の値とする。 表-3.4.12 相対閾値増加 (単位:%)

道 路 区 分 相 対 閾 値 増 加

主 要 幹 線 道 路 15 以下

幹線・補助幹線道路

(3)誘導性

適切な誘導性が得られるよう、灯具の高さ、配列、間隔等を決定するものとする。

3―221

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.5.4 灯具の配置

(1)灯具の配置の基本 ポール照明方式では、照明施設の性能指標である平均路面輝度、輝度均斉度、視機能低

下グレア、および誘導性を満足するために、4.5.2、4.5.3 に示した規定に基づき配置する

ものとする。

解E

(1)灯具の配列 灯具の配列は図―3.4.38 以外にも幾つかのものが考えられるが、いずれもこの 3 種類

の組合せであり、広い中央帯で往復分離されている道路はそれぞれの車道を独立した道

路として考えればよく、中央帯に 2 灯式のポールを設置するいわゆる中央配列は片側配

列 2 組と考えればよい。千鳥配列の車線軸均斉度は他の 2 種類の配列より劣り、運転者

からみて路面上の道路軸方向の輝度分布が不均一になりやすい傾向があることに注意す

る必要がある。 (a)片側配列 (b)千鳥配列 (c)向き合わせ配列

S;灯具の間隔(m)

図-3.4.38 灯具の配列

なお、曲線半径 1,000m 以下の曲線部においては、曲線の外縁に片側配列とすること

が望ましい。

3―222

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.6 添架物

4.6.1 基本方針 (1)添架物件は、原則的に公共性のあるもののみとする。 (2)添架物件は、橋梁の耐用年数及び耐荷力の低下をきたさない位置及び構造とする。 (3)添架物件は、橋梁の維持管理に支障をおよぼさない位置及び構造とする。 (4)橋梁の景観を損なわないよう十分考慮すること。 (5)添架物件の支持金具を含む合計重量が 50kg/m を超える場合は、添架負担金を徴収する。 (6)既設橋梁への添架は原則として認めない。

4.6.2 協 議 橋梁ヘの添架について、予備設計時には占用事前協議により添架物件の名称、外径、重量等

を明示し、詳細設計時には占用実施協議により添架物件の詳細構造(位置、重量、工法等)を

協議すること。また、複数の添架物件がある場合は、とりまとめて協議すること。

A 解E A

図-3.4.39

山 梨 県 (建設事務所)

NTT、東電、CATV 水道、下水道、ガスなど

占用事前協議 (添架物の構造、重量)

占用実施協議 (添架構造の検討)

橋 梁 計 画

詳 細 設 計

施 工

予 備 設 計

占 用 申 請

3―223

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.6.3 添架構造一般 (1)添架物件は、漏電漏水等がないよう適切な防護措置を講ずること。 (2)添架物件は、支承条件を考慮し、地震時等における上部構造の移動を拘束しない構

造とするように配慮すること。 (3)添架物件の位置は外側から見えないところとし、原則的には主桁の内側で主桁下面

より下に出ないこと。 (4)歩行者自転車用柵及び地覆には原則として添加しないこと。 (5)添架物件の支持金具は占用者の負担により占用者独自のものを設置すること。 (6)橋梁上部工の穴あけ及び切り欠きは原則として認めない。しかし、添架物件の構造

及び橋梁の構造上やむを得ない場合は、主幹課と協議すること。 (7)橋台を添架物件が貫通する場合は、パラペット部を鞘管により貫通させるものとし、

躯体部を貫通させることは認められない。

4.6.4 鋼橋への添架 (1)橋体本体への穴あき及び切り欠き(横桁の開口)は、原則として認めない。しかし、

やむを得ないと認められる場合は構造等について主幹課と協議すること。 (2)床版からの吊り下げは行わないこと。 (3)添架物件の支持金具の現場溶接は行わないこと。 (4)添架物件は横桁や対傾構などでは支持せず、独立して支持すること。 (5)添架物件及び支持金具は橋梁と同系統の彩色を行うこと。また、耐候性鋼材を用い

た橋梁については、メンテナンスを必要としない処理を施すこと。

A 解E A

図-3.4.40

3―224

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.6.5 コンクリート橋への添架 (1) コンクリート橋への添架は、橋梁の構造的な要因により位置、外径、重量など厳し

い制限をうけるため、事前に綿密な協議を行うこと。 (2) 橋梁への支持金具の取付けは、埋込みアンカーボルトにより行い削孔やボルト、ケ

ミカルアンカーなどの打ち込みは行わないこと。 (3) 構造上地覆外側部に添加するケースが多くなるが、カバーで覆うなどの橋梁の景観

を損なわないよう考慮すること。

A 解E A

図-3.4.41

3―225

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

4.7 親柱および橋名板

橋梁には、橋名・橋歴板と必要に応じて親柱を設けるものとする。

A 解E A

橋梁には、原則として親柱を設けない。旧橋に親柱がある場合や、景観性などにより必要

である場合は設けるものとした。橋名・橋歴板を取付ける場合は、次の事項を原則として考

える。

①橋梁には橋名板を図-3.4.42 に従って取り付けるものとする。

なお、ひらがなで表現する場合は、「○○○はし」のように、濁音をもうけない。

a)4 枚取り付ける場合 (親柱または高欄等に設置)

図-3.4.42

注)河川以外の場合は河川名には、竣工年月を入れるものとする。

b)2 枚取り付ける場合 (小規模な橋梁やボックスカルバート等で地覆上面に橋名板受台を設置)

図-3.4.43

ひらがな橋名

路 線 終点側

路 線 起点側

竣工年月

河 川 名 漢字橋名

路 線 終点側

路 線 起点側

漢字橋名 河川名

3―226

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

②橋歴板の材質は、耐候性橋梁はブロンズ製、塗装橋梁はねずみ鋳鉄製を原則とし、寸法

及び記載事項は、図-3.4.44 のとおりとする。 また、取付け位置は路線起点側、上流側、橋梁端部とする。

<鋼橋の場合> <コンクリート橋の場合>

図-3.4.44 ③コンクリート橋における設置位置は地覆側面とする。

④分割施工の橋梁については、各々の工区ごとに橋歴板を作成するものとする。ただし、

取付位置は、上記②の位置に分割工区全ての橋歴板を並べて付けるものとする。

⑤橋歴板を記載する年月は、桁の製作完了年月とする。

⑥橋梁名案内標識は、20m 以上の橋梁について新設既設共にできるだけ設置するのが望ま

しい。 なお、橋梁名案内標識を次項に示す。

○ ○橋 20○○年○○月 山梨県県土整備部 道示(2012)B 活荷重 使用鋼材:○○○○ 設 計:○○設計事務所 製 作:○○○会社

8mm

200m

300mm

○ ○橋 20○○年○○月 山梨県県土整備部 道示(2012)B 活荷重 定着方式:○○○○ 設 計:○○設計事務所 施 工:○○○会社

200m

300mm

8mm

13mm

3―227

第 3 編 設計 第 4 章 橋梁付属物

U橋梁名案内標識図(参考図)

n:表示漢字数 ※1.h は漢字の文字高を示す。(h=20cm)

2.板寸法は図の式で計算後、四捨五入で cm 単位にまとめるものとする。 3.通行者にとって視認しやすい場所に設置すること。 4.既設の標識等の視認性を妨げないこと。 5.建築限界を侵さないこと。 6.歩道等の有効幅員を狭めないこと。 7.交通の障害とならないようにすること。 8.起終点 2 ヶ所(進行方向に対して左側)に設置する。

設置場所

設置位置及び高さ

3―228

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

第 5 章 耐 震 設 計

5.1 耐震設計の基本方針

耐震設計は、「道路橋示方書 V耐震設計編」に準拠するものとし、その基本方針は道示

V2 章によらなければならない。

5.1.1 耐震設計の基本

(1)橋の耐震設計は、設計地震動のレベルと橋の重要度に応じて、必要とされる耐震性能

を確保することを目的として行う。 (2)耐震設計にあたっては、地形・地質・地盤条件、立地条件等を考慮した上で構造を計

画するとともに、橋を構成する各部材及び橋全体系が必要な耐震性を有するように配

慮しなければならない。

解E

(1) 橋は、地震後における避難路や救助・救急・医療・消火活動及び被災地への緊急物資

の輸送路として非常に重要な役割を担っている。このため、橋の耐震設計においては、

地震時における橋の安全性を確保するとともに、橋の重要度に応じて、地域社会生活に

支障を与えるような機能の低下をできるだけ抑制すること及び地震によって損傷が生じ

た場合にも、その損傷の発見や機能の回復が比較的容易にできることが重要となる。こ

の様な橋の役割の重要性を踏まえ、橋の耐震設計では設計地震動のレベルと橋の重要度

に応じて必要とされる耐震性能を確保する事を規定している。 (2) 橋の耐震設計にあたっては、建設地点における地形・地質・地盤条件、立地条件等を

考慮して適切な構造計画を検討する事が重要である。また、構造部材の強度を向上させ

ると同時に塑性変形性能及びエネルギー吸収性能を高めて橋全体系として地震に耐える

構造系を目指す必要がある。

3―229

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.1.2 耐震設計一般

(1)橋の耐震設計においては、以下の設計地震動を考慮しなければならない。 レベル 1 地震動:橋の供用期間中に発生する確率が高い地震動 レベル 2 地震動:橋の供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度をもつ地震動で

以下の 2 段階のレベルの設計地震動 <タイプⅠ地震動>プレート境界型の大規模な地震 <タイプⅡ地震動>兵庫県南部地震のような内陸直下型地震

(2)橋の重要度は、道路種別及び橋の機能・構造に応じて重要度を以下の 2 つに区分する。 A 種の橋:重要度が標準的な橋 B 種の橋:特に重要度が高い橋

(3)橋の耐震性能は、橋全体系の挙動を踏まえ、次の通りとする。 耐震性能 1:地震によって橋としての健全性を損なわない性能 耐震性能 2:地震による損傷が限定的なものに留まり、橋としての機能の回復が速やか

に行い得る性能 耐震性能 3:地震による損傷が橋として致命的とならない性能

(4)橋の耐震設計においては、設計地震動のレベルと橋の重要度に応じて、次のように設計

しなければならない。 1)レベル 1 地震動に対しては、A 種の橋、B 種の橋ともに、耐震性能 1 を確保するよう

に耐震設計を行う 2)レベル 2 地震動に対しては、A 種の橋は耐震性能 3 を、また、B 種の橋は耐震性能 2

を確保するよう耐震設計を行う

表-3.5.1 耐震設計で考慮する地震動と目標とする橋の耐震性能 設計地震動 A 種の橋 B 種の橋

レベル 1 地震動 地震によって橋としての健全性を損なわない性能 (耐震性能 1)

レベル 2 地震動

タイプⅠ地震動 (プレート境界型の大

規模な地震) 地震による損傷が橋と

して致命的とならない

性能 (耐震性能 3)

地震による損傷が限定的

なものに留まり、橋とし

ての機能の回復が速やか

に行い得る性能 (耐震性能 2)

タイプⅡ地震動 (兵庫県南部地震のよ

うな内陸直下型地震)

3―230

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

A 解E

(1)~(3) 橋の耐震設計は、橋の重要度に応じて必要とされる耐震性能を確保する

事を目標として行う。橋の重要度は、道路種別および橋の機能・構造に応じて重要度が標

準的な橋と特に重要度が高い橋(以下、それぞれ、A 種の橋および B 種の橋と呼ぶ)の 2つに区分する。A 種の橋は、橋の供用期間中に発生する確率が高い地震動に対しては健全

性を損なうことなく、また、橋の供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度をもつ地

震動に対しては限定された損傷に留めることを目標とする。ここで、橋の供用期間中に発

生する確率は低いが大きな強度をもつ地震動としては、プレート境界型の大規模な地震を

想定したタイプⅠの地震動および内陸直下型地震を想定したタイプⅡの地震動の 2種類を

考慮する。

3―231

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

(4)耐震性能 1~3 について、耐震設計上の安全性、耐震設計上の供用性、耐震設計上の

修復性の観点から整理したものを表-3.5.2 に示す。

表-3.5.2 耐震性能の観点

橋の耐震性能 耐震設計上 の安全性

耐震設計上 の供用性

耐震設計上の修復性 短期的修復性 長期的修復性

耐震性能 1: 地震によって橋として

の健全性を損なわない

性能

落橋に対す

る安全性を

確保する

地震前と同

じ橋として

の機能を確

保する

機能回復のた

めの修復を必

要としない

軽微な修復でよ

耐震性能 2: 地震による損傷が限定

的なものに留まり、橋と

しての機能の回復が速

やかに行い得る性能

落橋に対す

る安全性を

確保する

地震後橋と

しての機能

を速やかに

回復できる

機能回復のた

めの修復が応

急修復で対応

できる

比較的容易に恒

久復旧を行うこ

とが可能である

耐震性能 3: 地震による損傷が橋と

して致命的とならない

性能

落橋に対す

る安全性を

確保する

5.1.3 橋の重要度の区分

A 種の橋及び B 種の橋は、表-3.5.3 に示すように区分する。

表-3.5.3 橋の重要度の区分 橋の重要度の区分 対象となる橋

A 種の橋 下記以外の橋 B 種の橋 ・高速自動車国道、都市高速道路、指定都市高速道路、本州四

国連絡道路、一般国道の橋 ・都道府県道、市町村道のうち、複断面、跨線橋、跨道橋及び

地域の防災計画上の位置付けや当該道路の利用状況等から

特に重要な橋

3―232

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

A 解E

山梨県における橋の重要度の区分は、橋の道路種別に応じて以下の通りとする。 B 種の橋 …… ① 一般国道(指定区間外)に架かる橋

② 県道の内、緊急輸送道路に架かる橋および跨線橋、跨道橋 ③ 上記①、②以外であって、2 以上の市町村を連絡している広域的な

道路に架かる橋 ④ 上記①、③以外で代替道路のない行き止まり路線等であって、当

該路線の最終集落に至る区間に架かる橋 A 種の橋 …… B 種の橋以外の橋

※:原則として上記方針によるものとするが、将来の道路計画、利用状況等により判断

しがたい場合は主幹課と協議されたい。また、市町村道については、上記基準を参考に

して主幹課と協議の上決定するものとする。

5.1.4 耐震性能の照査方法

(1)耐震'性能の照査にあたっては、道示Ⅴ5.2 から 5.4 に規定する橋の限界状態に基づき、

各部材の限界状態を適切に設定し、設計地震動によって生じる各部材の状態が限界状

態を超えないことを照査することにより行われなければならない。 (2)耐震性能の照査方法は、地震時の挙動が複雑でない橋に対しては、静的照査法により

耐震性能の照査を行い、地震時の挙動が複雑な橋に対しては、動的照査法により耐震

性能の照査を行うものとする。

A 解E

図-3.5.1 は、耐震設計の全体的な流れと道示の関連する主な条文規定の章節番号を整理

し示したものである。

3―233

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.1 耐震設計の全体的な流れと道示Ⅴに関連する条文の規定箇所

3―234

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

(1)耐震性能の照査では、橋の限界状態に基づき、塑性化を考慮する部材や部位を選定す

るとともに、橋を構成する個々の部材の限界状態を適切に設定することが必要である。

耐震性能の照査は、設計地震力が作用した際に橋を構成する各部材に生じる状態が限界

状態を超えないことを照査することにより行うことを規定している。各耐震性能に対す

る橋の限界状態を以下に示す。 1)耐震性能 1 に対する橋の限界状態 耐震性能 1 に対する橋の限界状態は、地震によって橋全体系としての力学的特性が弾

性域を超えない範囲内で適切に定めなければならない。 2)耐震性能 2 に対する橋の限界状態 耐震性能 2 に対する橋の限界状態は、塑性化を考慮する部材にのみ塑性変形が生じ、

その塑性変形が当該部材の修復が容易に行い得る範囲内で適切に定めなければならない。

塑性化を考慮する部材としては、確実にエネルギー吸収を図ることができ、かつ速やか

に修復を行うことが可能な部材を選定しなければならない。橋の構造特性を踏まえ、塑

性化又はエネルギー吸収を考慮する部材を適切に組合せるとともに、その組合せに応じ

て、各部材の限界状態を適切に設定しなければならない。

3―235

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.4 一般的な橋に対する塑性化又はエネルギー吸収を考慮する部材の組合せ例

と各部材の限界状態(耐震性能 2)

3―236

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.2 塑性化又はエネルギー吸収を考慮する部材の組合せの例

3―237

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

3)耐震性能 3 に対する限界状態 耐震性能 3 に対する橋の限界状態は、塑性化を考慮する部材にのみ塑性変形が生じ、

その塑性変形が当該部材の保有する塑性変形能を超えない範囲内で適切に定めなければ

ならない。塑性化を考慮する部材としては、確実にエネルギー吸収を図ることができる

部材を選定しなければならない。橋の構造特性を踏まえ、塑性化又はエネルギー吸収を

考慮する部材を適切に組合せるとともに、その組合せに応じて、各部材の限界状態を適

切に設定しなければならない。

3―238

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.5 一般的な橋に対する塑性化又はエネルギー吸収を考慮する部材の組合せ例と各

部材の限界状態(耐震性能 3)

3―239

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

(2)橋の耐震性能の照査法としては、大きく分けて静的照査法と動的照査法の 2 つがある。

条文では、適用する耐震性能の照査方法は地震時の挙動の複雑さに応じて選定すること

を規定しているが、地震時挙動の複雑な橋は、一般に次に示すとおりである。

1) 橋の応答に主たる影響を与える振動モードが静的照査法で想定する振動モードと

著しく異なる場合 2) 橋の応答に主たる影響を与える振動モードが 2 種類以上ある場合 3) レベル 2 地震動に対する耐震性能の照査において、塑性化が複数箇所に生じる可能

性がある場合、又は、複雑な構造で塑性化がどこに生じるかはっきりしない場合 4) レベル 2 地震動に対する耐震性能の照査において、構造部材や橋全体系の非線形履

歴特性に基づくエネルギー一定則の適用性が十分検討されていない場合

上記の基本的な考え方に基づき、地震時の挙動が複雑な橋に対する耐震性能の照査に

おいて、動的照査法を適用する対象橋梁に関する具体例を示すと以下のとおりである。

① 固有周期の長い橋(一般に、固有周期 1.5 秒程度以上)、又は、橋脚高さが高

い橋(一般に、30m 程度以上) ② 弾性支承を用いた地震時水平力分散構造を有する橋 ③ 免震橋 ④ ラーメン橋 ⑤ 鋼製橋脚に支持される橋 ⑥ 斜張橋、吊橋等のケーブル系の橋 ⑦ アーチ橋 ⑧ トラス端 ⑨ 曲線橋

橋の構造形式と耐震性能の照査に適用可能な照査方法についてまとめると表-

3.5.6 のとおりである。

3―240

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.6 地震時の挙動の複雑さと耐震性能の照査方法 橋の動的

特性

照査

をする

耐震性能

地震時の挙動が複

雑ではない橋

塑性化やエネルギ

ー吸収を複数個所

に考慮する橋又は

エネルギー一定則

の適用性が十分検

討されていない構

造の橋

静的解析の適用性が限定される橋

高次モードの影響

が懸念される橋

塑性ヒンジが形成

される箇所がはっ

きりしない橋又は

複雑な振動挙動を

する橋

耐震性能 1 静的照査法 静的照査法 動的照査法 動的照査法

耐震性能 2

耐震性能 3 静的照査法 動的照査法 動的照査法 動的照査法

適用する橋の例

・固定支承と可動

支承により支持

される桁橋

(曲線橋を除く)

・両端橋台の単純

桁橋

(免震橋を除く)

・弾性支承を用い

た地震時水平力

分散構造を有す

る橋

(両端橋台の単純

橋を除く)

・免震橋

・ラーメン橋

・鋼製橋脚に支持

される橋

・固有周期の長い

・橋脚高さが高い

・斜張橋、吊橋等

のケーブル系の橋

・アーチ橋

・トラス橋

・曲線橋

3―241

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.2 耐震設計上考慮すべき荷重

5.2.1 耐震設計上考慮すべき荷重

(1) 耐震設計にあたっては、次の荷重を考慮する。 1) 主荷重

a) 死荷重(D) b) プレストレス力(PS) c) コンクリートのクリープの影響(CR) d) コンクリートの乾燥収縮の影響(SH) e) 土圧(E) f) 水圧(HP) g) 浮力又は揚圧力(U)

2) 従荷重 地震の影響(EQ)

荷重の組合せは次のとおりとする。 1)に示す主荷重+地震の影響(EQ)

A 解E

(1)耐震設計においては活荷重及び衝撃の影響、雪荷重を考慮する必要はない。雪荷重に

ついては、冬期除雪をおこなわない橋も存在するが、この場合においても雪荷重は原則

として考慮しないものとする。 5.2.2 地震の影響

地震の影響として、次のものを考慮するものとする。 1) 構造物重量に起因する慣性力(以下、慣性力という。) 2) 地震時土圧 3) 地震時動水圧 4) 地盤の液状化および流動化の影響 5) 地震時地盤変位

3―242

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.3 設計地震動

5.3.1 一般

(1) 静的照査法に用いるレベル 1 地震動およびレベル 2 地震動は、道示Ⅴ6.3 及び 6.4 の

規定により設定するものとする。 (2) 動的照査法に用いるレベル 1 地震動およびレベル 2 地震動は、道示Ⅴ7.2 の規定によ

り設定するものとする。

5.3.2 地域別補正係数

山梨県内の地域別補正係数は、表-3.5.7 に示す値とする。

表-3.5.7 地域別補正係数と地域区分 地域

区分 地域別補正係数

対象地域 cz cⅠz cⅡz

A1 1.0 1.2 1.0 富士吉田市、都留市、大月市、上野原市、西

八代郡、南巨摩郡、南都留郡 A2 1.0 1.0 1.0 A1 以外の地域

A 解E

山梨県内の地域別補正係数は、規模の大きい地震が発生する可能性が高い A1 及び A2地域に該当する。地域別補正係数を定めるための検討には、平成 23 年 東北地方太平洋

沖地震、北海道の太平洋沖の地震が連動する場合や、東海地震、東南海地震、南海地震

及び日向灘地震が連動する場合などの大規模な地震の震源域が連動する影響も考慮して

いる。特に、山梨県内は、東海地震、東南海地震、南海地震が連動した場合の大規模地

震に対して影響が大きいと想定され、県南部の地域においては、タイプⅠ地震動の地域

別補正係数 cⅠzが 1.2 に設定されている。

3―243

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

地域区分 A2

地域区分 A1

図-3.5.3 山梨県の地域区分

3―244

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.3.3 耐震設計上の地盤種別

耐震設計上の地盤種別は、道示V4.5 で算出される地盤の特性値 TG をもとに表-3.5.8により区別するものとする。

TG = 4ΣHi/Vsi……………………………………………………式(3.5.1) ここに、TG:地盤の特性値(s)

Hi:i 番目の地層の厚さ(m) Vsi:i 番目の地層の平均せん断弾性波速度(m/s) i :当該地盤が地表面から耐震設計上の基盤面までの n 層に区分さ

れるときの地表面から i 番目の地層の番号

表-3.5.8 耐震設計上の地盤種別 地盤種別 地盤の特性値 TG(S) 備 考

Ⅰ 種 TG<0.2 岩盤、地表面が基盤面と一致する

場合

Ⅱ 種 0.2 ≦TG<0.6 Ⅰ種、Ⅲ種いずれにも属さない洪

積および沖積地盤 Ⅲ 種 0.6 ≦TG 沖積地盤のうち軟弱地盤

A 解E

耐震設計上の地盤種別は、道示Ⅴ4 章に規定される設計地震動を設定する場合に、地盤

の影響を考慮するために規定されているものであり、道示Ⅴ4.5 によるものとする。

概略の目安としては、Ⅰ種地盤は良好な洪積地盤及び岩盤、Ⅲ種地盤は沖積地盤のうち

軟弱地盤、Ⅱ種地盤はⅠ種地盤及びⅢ種地盤のいずれにも属さない洪積地盤及び沖積地盤

と考えてよい。ここでいう沖積層には、がけ崩れ等による新しい堆積層、表土、埋立土な

らびに軟弱層を含み、沖積層のうち締まった砂層、砂れき層、玉石層については洪積層と

して取り扱ってよい。

地盤種別は、地盤の特性値 TGをもとに表-3.5.8 により区別することを原則とする。Vsiは、弾性波探査や PS 検層によって測定するのが望ましいが、実測値がない場合は、下式

によって N 値から推定してもよい。この場合の N 値は各層の平均的な N 値で代表し、む

やみに計算を煩雑にする必要はない。

粘性土層の場合 Vsi=100Ni1/3 (1≦Ni≦25) 砂質土層の場合 Vsi=80Ni1/3 (1≦Ni≦50)

ここに Ni:標準貫入試験による i 番目の地層の平均 N 値 なお、N 値が 0 の場合は Vsi=50m/s としてよい。 また、耐震設計上の基盤面とは、対象地点に共通する広がりを持ち、耐震設計上振動す

るとみなす地盤の下に存在する十分堅固な地盤の上面を想定している。ここで、十分堅固

な地盤とは、せん断弾性波速度 300m/s 程度(粘性土層では N 値 25、砂質土層では N 値

3―245

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

50)以上の値を有している剛性の高い地層と考えてよい。

一般には、盛土等、地表面が平坦でなく、図-3.5.4(a)に示すように盛土内にフーチング

を設ける場合には、下部構造の振動が盛土の振動に影響されるため、盛土の天端を地表面

と見なして地盤の特性値を求めるものとする。図-3.5.4(b)に示すようにフーチングを盛土

下の地盤内に設ける場合には、周辺の平均的な地表を地表面とみなして地盤の特性値を求

める。

図-3.5.4 盛土等における地表面のとり方

5.3.4 耐震設計上の地盤面

耐震設計上の地盤面は、常時における設計上の地盤面とする。ただし、フーチングを有す

る基礎において、常時における設計上の地盤面がフーチング下面より上方にある場合には、

耐震設計上の地盤面はフーチング下面とする。また、地震時に地盤反力が期待できない土層

がある場合においては、その影響を考慮して適切に耐震設計上の地盤面を設定しなければな

らない。

A 解E

耐震設計上の地盤面とは、構造物や土の重量に起因する慣性力を、その面より上方では

考慮し、その面より下方では考慮しないとして定めた地盤面であり、設計地震動の入力位

置である。耐震設計上の地盤面は、図-3.5.5 及び図-3.5.6 に示すとおり、下部構造編

9.5 に規定する常時における設計上の地盤面としているが、地震時に地盤反力が期待でき

ない土層がある場合には、その影響を考慮して適切に耐震設計上の地盤面を設定する必要

がある。ここで、地震時に地盤反力が期待できない土層とは、ごく軟弱な土層又は液状化

する土層で道示Ⅴ8.2.4の規定により耐震設計上土質定数を零とする土層である。

地盤反力が期待できない土層が互層状態で存在する場合には、図-3.5.7に示すように、

耐震設計上の地盤面は少なくとも層厚が 3m 以上の地盤反力が期待できる土層の上面とし

てよい。

3―246

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.5 橋脚における耐震設計上の地盤面

図-3.5.6 橋台における耐震設計上の地盤面

図-3.5.7 地盤反力が期待できない土層が互層状態で存在する場合の耐震設計上の地盤面

H2 ≧

3m

H

1

H1≧3m の場合の 耐震設計上の地盤面

H2<3m の場合の 耐震設計上の地盤面

H1

H2 ≧

3m

H1≧3m の場合の 耐震設計上の地盤面

H2<3m の場合の 耐震設計上の地盤面

3―247

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.4 地震時に不安定となる地盤の影響

5.4.1 一般 (1) 基礎周辺地盤が地震時に不安定となる影響を考慮する場合においては、道示Ⅴ8.2 及

び 8.3 の規定により、その影響を橋の耐震性能の照査に考慮しなければならない。

なお、地震時に不安定となる地盤とは、耐震設計上ごく軟弱と判定される土層を有

する地盤、橋に影響を与える液状化が生じると判定される土層を有する地盤又は橋

に影響を与える流動化が生じると判定される地盤とする。 (2) 橋に影響を与える液状化が生じると判定される土層を有する地盤上の橋の耐震性能

の照査においては、橋に影響を与える液状化が生じると仮定した場合及び橋に影響

を与える液状化が生じないと仮定した場合の照査を行わなければならない。 (3)橋に影響を与える流動化が生じると判定される地盤上の橋の耐震性能の照査において

は、橋に影響を与える流動化が生じると仮定した場合、橋に影響を与える液状化だ

けが生じると仮定した場合並びに橋に影響を与える液状化及び流動化が生じないと

仮定した場合の照査を行わなければならない。

A 解E

(1) 橋の耐震性に大きな影響を与える地盤は、以下のとおりとする。 1) 地震により繰り返し変形を受けると強度の低下が生じる恐れを有する、ごく軟弱な粘

性土層およびシルト質土層。 2) 地盤の液状化およびこれに伴う地盤の流動化の生じる飽和砂質土層。 なお、土層の地震時安定性の判定については、1 地点のみの土質調査結果にとらわれる

ことなく、全体の地層構成、地質状況を踏まえて適切に行うものとする。また、土質定

数の値に対する信頼性が低いと考えられる場合には、調査不十分のままに、いたずらに

基礎の寸法を大きくすることを避けるように留意するものとし、必要となる地盤調査の

実施を検討するものとする。 (2) 地震動や地盤特性によっては、設計で想定したとおりの状況にならない可能性もある

ことから、地震時に地盤が不安定とはならないという条件でも耐震性能の照査を行い、

いずれか厳しいほうの結果を用いることとする。 ① 流動化が生じると考えたケース ② 液状化だけが生じると考えたケース ③ 液状化も流動化も生じないと考えたケース

3―248

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.4.2 耐震設計上ごく軟弱な土層または橋に影響を与える液状化が生じると判定された

砂質土層の土質定数

① 耐震設計上ごく軟弱な土層の判定 (1) 現地盤面より 3m 以内に存在する一軸圧縮強度が 20kN/m2以下の粘性土層およびシ

ルト質土層は、耐震設計上ごく軟弱な土層とみなすものとする。 (2) ごく軟弱な粘性土層およびシルト質土層と判定された土層の土質定数は、耐震設計

上、零とするものとする。

A 解E

(1) 一軸圧縮強度が 20kN/m2 以下の粘性土層およびシルト質土層は、土質試験時に供試

体を自立させることが困難な程度に軟弱であるため、地震時に基礎構造を有効に支持す

る作用は期待できないため、ごく軟弱な粘性土層あるいはシルト質土層とみなすものと

した。 粘性土層およびシルト質土層においては、地盤調査時における乱れ、サンプラーから

の抽出の巧拙、一軸圧縮強度試験時の供試体の取り扱いなどにより、測定値は著しく影

響を受けるため、一軸圧縮強度試験のほか、ベーン試験およびスウェーデン式サウンデ

ィングなどの原位置試験を併用して十分に地盤調査をおこなって一軸圧縮強度が

20kN/m2以下の土層であることを判定するものである。 (2) シルト質土層で一軸圧縮強度が 20kN/m2 以下であっても、現地試験では比較的大

きな弾性係数が得られることがあるが、このような場合においても現地盤から 3m 以

内の土層については、土質定数は零とするものである。

3―249

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

②液状化の判定 (1) 沖積層の土層で橋に影響を与える液状化が生じる可能性の条件全てに該当する場合、

道示 V8.2.3 に基づき、液状化に対する抵抗率 FL により液状化の判定をおこなうもの

とし、FL が 1.0 以下の砂質土層については液状化が生じるものと判断する。 (2) 橋に影響を与える液状化が生じると判断された土層は、レベル 1 地震動及びレベル 2

地震動のそれぞれに対して算出した液状化に対する抵抗率 FL の値に応じて耐震設計

上土質定数を低減させる。橋に影響を与える液状化が生じると判定された場合の土質

定数は、その土質定数が液状化しないと仮定して求めた土質定数に表-3.5.9 の係数

DE を乗じて算出する。

表-3.5.9 土質定数の低減係数 DE

FLの範囲 現地盤面からの

深度 x(m) 動的せん断強度比 R

R≦0.3 0.3<R

FL≦1/3 0≦x≦10 0 1/6 10<x≦20 1/3 1/3

1/3<FL≦2/3 0≦x≦10 1/3 2/3 10<x≦20 2/3 2/3

2/3<FL≦1 0≦x≦10 2/3 1 10<x≦20 1 1

土質定数 DEが 0 の土層は、耐震設計上土質定数を零とする土層とする。

A 解E

(1) 液状化の判定 1) 下記の 3 つの条件すべてに該当する場合、橋に影響を与える液状化が生じる可能性が

あるため、道示Ⅴ8.2.3(2)に基づき液状化に対する抵抗値(FL)を算定し、液状化の判定

を行うものとする。 イ) 地下水位が現地盤面より 10m 以内にあり、かつ、現地盤面から 20m 以内の深さに

存在する飽和土層。 ロ) 細粒分含有率 FC が 35%以下の土層、または、FC が 35%を超えても塑性指数 Ipが

15 以下の土層。 ハ) 平均粒径 D50が 10mm 以下で、かっ、10%粒径 D10が 1mm 以下である土層

2) 粒径は、標準貫入試験により得られる試料を粒度分析して求めた値によるものとする。 3) 液状化に対する抵抗率 FLに基づく液状化の判定は、レベル 1 地震動、レベル 2 地震

動のタイプⅠ及びタイプⅡの地震動に対してそれぞれおこなうものとする。 4) 液状化に対する抵抗率 FLの算定に用いる土の単位体積重量γt、平均粒径 D50および

細粒含有率 FC は、原位置で採取した試料の物理特性試験により求めることを原則と

する。

3―250

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5) 液状化に対する抵抗値 FLは、道示Ⅴ8.2.3(2)に示される算定式により算定するものと

する。算定にあたっての留意点を下記に示す。 イ) 砂質土とれき質土の区分は、平均粒径 D50 が 2mm 未満であるか以上であるかに

よるものとする。 ロ) 河床のように水位が地表面より上に存在する場合、地下水位が地表面に存在するも

のとして全上載圧および有効上載圧を求めるものとする。 ハ) N 値を測定するための標準貫入試験は、打撃時のエネルギー損失の少ない自然落下

法により行うことが望ましい。 ニ) 土質定数の低減係数 DEを求めるための液状化に対する抵抗率FLは、1m 程度間隔

で FLを算定し、各土層ごとに平均的な FLを求めるものとする。 6) 洪積土層の液状化 イ) 洪積層は東北地方太平洋沖地震や、兵庫県南部地震を含む、既往の地震において液

状化したという事例は確認されていない。洪積砂質土は一般に N 値が高く、また、

続成作用を受けているために液状化に対する抵抗が高いためである。したがって、

原則として洪積層は液状化の判定の対象とする必要はない。

7) 礫質土の液状化 液状化の判定にあたり、砂質土とれき砂質土の区分は平均粒径 D50が 2mm 未満で

あるか以上かにより行うものとする。 なお、砂質土層の液状化の判定式を用いて、れき質土の繰返し三軸強度比を求める

際に必要となる 100kN/m3相当に換算した N 値 N1の値は、砂質土の場合と同様の式

で算定してよい。 (2)耐震設計上土質定数を低減させる土層とその扱い

1) 橋に影響を与える液状化が生じると判定された砂質土層等は、液状化に対する抵抗

率 FLの値に応じて土質定数の低減を行うものとする。橋に影響を与える液状化が生

じると判定された場合の土質定数は、その土層が液状化しないものとして求めた土質

定数に表-3.5.9 に示す土質定数の低減係数 DEを乗じて算出するものとする。 2) 低減係数 DE を乗じて低減させる土質定数とは、地盤反力係数、地盤反力度の上限

値および最大周面摩擦力度を指すものとする。 3) 液状化に対する抵抗率 FLは、標準貫入試験が実施された深度において得られるが、

土質定数の低減係数 DEを求めるためには通常 1m 間隔にて FLを計算し、土層ごと

に平均的なFLを求めて、この値により表-3.5.9によりDEを求めることが望ましい。 4) 耐震設計上土質定数を零あるいは低減させる土層は、将来的に掘削あるいは洗掘さ

れる可能性がない場合には、それ以下の地盤に負載重量として作用するものとする。 5) 耐震設計上土質定数を零あるいは低減させる土層における地震時動水圧および地震

時土圧は、地震の影響として考慮しなくてもよい。

3―251

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

③ 耐震設計上ごく軟弱な土層または橋に影響を与える液状化が生じると判定された土層

がある場合の耐震設計 (1) 耐震設計上ごく軟弱な土層と判定された土層の土質定数の取り扱いは、道示Ⅴ8.2.2

によるものとする。 (2) 橋に影響を与える液状化が生じると判定された砂質土層の土質定数の取り扱いは、

道示Ⅴ8.2.4 によるものとする。 (3) 固有周期を算定する場合の土質定数は、上記(1)および(2)の規定は適用しないもの

とする。 (4) 耐震設計においては、土質定数を上記(1)および(2)の規定によらないケースについ

てもおこない、いずれか厳しい方の結果を用いるものとする。 (5) 道示Ⅴ16.2 の規定により、桁かかり長を算出する場合には、耐震設計上土質定数

を低減させる土層の影響を見込むものとする。

A 解E

(3) 地盤の不安定化が起こる過渡的な振動特性のメカニズムについては、まだ、未解明な

点が多いため、固有周期の算定にあたっては、耐震設計上ごく軟弱な土層または橋に影

響を与える液状化が生じると判定された土層に対し、地震時の地盤の不安定化に伴う土

質定数の低減を考慮し固有周期を算定すると設計地震力を小さめに評価する可能性があ

り、安全側の設計地震力の算定に配慮したものである。

5.4.3 橋に影響を与える流動化が生じる可能性があると判定された地盤がある場合の耐

震性能の照査

① 耐震設計上ごく軟弱な土層の判定 (1) 液状化に伴い橋に影響を与える流動化が生じる可能性がある場合、当該地盤中にあ

る橋脚基礎においては、この影響を考慮して耐震設計を行うものとする。 (2) 橋に影響を与える液状化のみが生じた場合の耐震設計も行い、いずれか厳しい方の

結果を用いるものとする。

A 解E

(1) 橋に影響を与える流動化が生じる可能性がある場合には、その影響を考慮して耐震設

計を行うものとする。 1) 流動化は、液状化に伴う支持力の低下に応じて生じるものであることから、液状化す

ると判定され、かつ、偏土圧の作用する土層では流動化が生じる可能性があると考え

ることができる。このことから、次の 2 条件のいずれにも該当する地盤は、橋に影響

を与える流動化が生じる可能性がある地盤とみなしてよい。 イ) 臨海部において、背後地盤と前面の水底との高低差が 5m 以上ある護岸によって形

成された水際線から 100m 以内の範囲にある地盤。

3―252

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

ロ) 層厚 5m 以上の液状化すると判定される砂質士層があり、かつ、当該土層が水際線

から水平方向に連続的に存在する地盤。 2) 水際線から 100m 以内にあっても液状化すると判定される土層が水際線から水平方向

に連続的に存在しなくなる場合には、その背後の地盤は流動化が生じないとみなして

よいものとする。

図-3.5.8 水底との高低差および水際線からの距離のとり方

3) 流動化が生じる可能性がある場合には、単に橋梁基礎を強化するだけではなく、横剛

性の大きい基礎形式の採用も含め、橋全体として有害な影響を受けないようにするも

のとする。 4) 橋台は背面に土圧を受けるため偏土圧に抗する構造物であり、流動化の影響を受けて

も前面に押し出される方向に移動するため、上部構造の落橋に直接つながりにくいこ

とから、橋台の基礎については、流動化の影響を考慮しなくてもよいものとする。た

だし、斜角の小さい橋、流動化の影響により上部構造が回転し大きな変位を生じる可

能性がある場合、また、橋台が上部構造を押し出すことにより、中間橋脚部等で大き

な変位が生じる可能性がある場合については、桁の連続化の検討や落橋防止システム

に対する検討を入念に行なうなど、橋全体系としての耐震性を向上させるように配慮

することが望ましい。 5) 河川部についても、偏土圧の影響が大きいと考えられる直立式低水護岸背後の高水敷

や直立式の特殊堤の堤内地盤においては、流動化の影響を検討するものとする。 6) 流動化の影響は水平力として与え基礎の耐震性を検討するものとするが、構造物の重

量に起因する慣性力は同時に考慮しなくてもよいものとする。 イ) 流動化が橋脚基礎に及ぼす影響のメカニズムは研究途上の部分があるが、ここでは

図 3.5.9 のように取扱うものとする。

3―253

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.9 橋脚基礎への流動化の影響メカニズム

ロ) 流動化の影響により、橋脚基礎構造に作用する水平力(流動力)は以下によるものと

する。

図-3.5.10 非液状化層の下に液状化層がある場合

3―254

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.11 液状化層と非液状化層の場合

3―255

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.12 地表面まで液状化層がある場合

3―256

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

② 流動力の算出方法 流動化の影響を考慮する場合における橋脚基礎に作用させる流動力は、次のとおりとす

る。

図-3.5.10 に示す状態で流動化が生じた場合においては、流動化の影響を考慮する範

囲内の非液状化層及び液状化層注に位置する部材に、それぞれ、式(3.5.2)及び式(3.5.3)

による単位体積当りの流動化を作用させる。この場合、流動化の影響を考慮する必要のあ

る範囲内の土層の水平抵抗は考慮しない。

qNL = cs・cNLKp・γNL・x (0≦x≦HNL) ………………………式(3.5.2) qL =cs・cL・{γNL・HNL+γL(x-HNL)} (HNL<x≦HNL+HL) …式(3.5.3)

ここに、

qNL: 非液状化層中にある構造部材に作用する深さ x(m)の位置の単位面積当 りの流動力(kN/m2)

qL: 液状化層中にある構造部材に作用する深さ x (m)の位置の単位面積当り の流動力(kN/m2)

cs: 水際線からの距離による補正係数で、下表の値とする。

表-3.5.10 水際線からの距離による補正係数 cs 水際線からの距離 s(m) 補正係数 cs

s≦50 1.0 50<s≦100 0.5

100<s 0

cNL : 非液状化層中の流動力の補正係数であり、下式による液状化指数 PL

に応じて、表-3.5.11 の値とする。

( )( )dxx5.010F1P20

0 LL −−= ∫

表-3.5.11 非液状化層中の流動力の補正係数 cNL

水際線からの距離 s(m) 補正係数 cs s≦50 1.0

50<s≦100 0.5 100<s 0

cNL : 非液状化層中の流動力の補正係数であり、下式による液状化指数 PL

に応じて、下表の値とする。

( )( )dxx5.010F1P20

0 LL −−= ∫

3―257

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.11 非液状化層中の流動力の補正係数 cNL 液状化指数 PL 補正係数 cNL

PL≦5 0 5<PL≦20 (0.2PL-1)/3

20<PL 1 cL : 液状化層中の流動力の補正係数(=0.3) Kp : 受働土圧係数(常時) γNL : 非液状化層の平均単位体積重量(kN/m3) γL : 液状化層の平均単位体積重量(kN/m3) x : 地表面からの深さ(m) HNL : 非液状化層厚(m) FL : 4-2-2 に規定する液状化に対する抵抗率であり、FL≧1 の場合には FL=1

とする。

A 解E

1) qNL は非液状化層の受働土圧相当の力を基本に、非液状化層から構造物に作用する

単位面積当りの流動力を表すものである。 2) qL は全上載圧に相当する力を基本に、液状化層から構造物に作用する単位面積当り

の流動力を表すものである。 3) 単位深さ当りの流動力は以下により求めるものとする。

Q = qNLW または qLW………………………………………………式(3.5.4) ここに、Q :単位深さ当りの流動力(kN/m)

W :流動力の作用する幅(m)で以下によるものとする。 橋脚およびフーチング―躯体幅 杭基礎――――――――流動化に抵抗する面の両端に位置する杭の最外

縁幅 杭基礎以外の基礎―――基礎幅

4) 杭基礎においては、全ての杭が分担して流動力に抵抗するものとして設計を行うもの

とする。 5) 流動力を作用させる際には、流動化の影響を考慮する必要のある範囲内の土層の水平

抵抗力は考慮しないものとする。

3―258

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.5 静的照査法による耐震性能の照査

5.5.1 一般

(1)静的照査法による耐震性能の照査は、地震の影響を震度を用いて算出する荷重に置き

換え、これを橋に静的に作用させる震度法に基づいて行うものとする。 (2)レベル 1 地震動に対する耐震性能の照査を静的照査法により行う場合、弾性域の振動

特性を考慮した震度法により耐震性能 1 の照査を行うものとする。 (3)レベル 2 地震動に対する耐震性能の照査を静的照査法により行う場合、非線形域の振

動特性を考慮した地震時保有水平耐力法により耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査を行

うものとする。

A 解E

耐震性能の照査方法を静的照査法と動的照査法に大別し、静的照査法については、レベ

ル 1地震動に対しては震度法により、レベル 2地震動については地震時保有水平耐力法に

より照査を行う事を規定している。

レベル 1地震動及びレベル 2地震動に対して静的照査法を適用する場合、慣性力、地震

時土圧、地震時動水圧の算定方法については道示Ⅴ6.2の規定によるものとする。

5.5.2 静的照査法を適用する場合の荷重の算定方法

(1) 静的照査法により耐震性能の照査を行う場合には、地震の影響として、慣性力、地

震時土圧、地震時動水圧、地盤の液状化及び流動化の影響を、それぞれ適切に考慮す

るものとする。 1) 慣性力は、道示Ⅴ6.2.2 の規定によるものとする。 2) 地震時土圧は、道示Ⅴ6.2.4 の規定によるものとする。 3) 地震時動水圧は、道示Ⅴ6.2.5 の規定によるものとする。 4) 地盤の液状化及び流動化の影響は、道示Ⅴ8.1 の規定によるものとする。

(2) 耐震設計上の地盤面より下方の構造部分には、慣性力、地震時土圧及び地震時動水

圧を作用させなくてもよい。

A 解E

(1) 静的照査法を適用する場合において考慮すべき地震の影響を規定したものである。 (2) 地中部分の慣性力を無視する場合には、基礎構造部の周囲が耐震設計上の地盤面より

下方の地盤に接していることを前提としているので、軟らかい土で埋戻しをした場合等

には施工法によってはその条件を満足し得ない。したがって、その場合にはこの規定を

適用してはならない。

3―259

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.5.3 慣性力

(1) 慣性力は、設計振動単位ごとに本編 5.5.4 に規定する固有周期に応じた設計水平震度を

算出し、構造物の重量にその設計水平震度を乗じた水平力とし、これを設計振動単位の

慣性力の作用方向に作用させるものとする。ただし、上部構造と下部構造の連結部分が

慣性力の作用方向に対して可動の場合には、上部構造の慣性力として静摩擦力を作用さ

せるものとする。 (2) 上部構造の慣性力の作用位置は、その重心位置とする。ただし、直橋の場合には、橋

軸方向に作用させる慣性力については、上部構造の慣性力の作用位置は支承の底面とし

てよい。

A 解E

(1)道示Ⅴ6.2.2 慣性力の規定による。 1) 設計振動単位は慣性力の作用方向、橋の形式、支承の固定条件、橋脚間の固有周期特

性に応じて、表-3.5.12 に示すように定める。連続桁橋の橋軸直角方向において、橋

脚間の固有周期特性が橋脚ごとに大きく異ならないとは、仮に橋を 1 基の橋脚とそれ

が支持している上部構造部分に分割して、それぞれを一つの設計振動単位とみなして

求めた固有周期の最大値と最小値の比が 1.5 未満であることをいう。 2) 上部構造の慣性力は、道示Ⅴ6.3.2 及び 6.4.2 の規定によるものとする。

(2)上部構造における慣性力の作用位置は、図-3.5.13 に示すようにその重心位置とする

が、下部構造の設計における上部構造の慣性力の作用位置は、慣性力の伝達機能を考慮

し、さらに設計の便宜を考えて図-3.5.14 に示すとおりとしてよい。なお、斜橋の場合、

上部構造の慣性力の作用位置は、いずれの方向に対しても上部構造の重心位置としなけ

ればならない。ただし、支承の回転方向あるいは可動方向の条件によっては、その方向

のモーメントあるいはせん断力の成分が伝達されないため、慣性力の作用方向の関係を

考慮して下部構造天端に作用する慣性力を求めてもよい。

図-3.5.13 上部構造における慣性力の作用位置

3―260

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.14 下部構造の耐震設計における上部構造の慣性力の作用位置と下部

構造の頂部に作用する荷重

3―261

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.12 設計振動単位

5.5.4 固有周期算出

(1) 固有周期の算定方法は、道示Ⅴ6.2.3 の規定によるものとする。

(2) 地震時に不安定となる地盤がある場合には、道示Ⅴ8.2.4 に規定される土質定数の

低減は見込まないで固有周期を算出するものとする。

A 解E

(1)固有周期の算定方法は、道示Ⅴ6.2.3 によるものとする。なお、固有周期の算定手順と

関連する道示の章節番号を図-3.5.15 に示す。

3―262

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.15 固有周期の算定フロー

3―263

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.5.5 レベル 1 地震動に対する耐震性能の照査

① 設計水平震度

(1)レベル 1 地震動の設計水平震度は式(5.1)により算出する。ただし、式(5.1)によ

る値が 0.1 を下回る場合には 0.1 とする。 kh=czkh0 ………………………………………………………………式(3.5.5) ここに、 kh :レベル 1 地震動の設計水平震度(小数点以下 2 けたに丸める)

kh0 :レベル 1 地震動の設計水平震度の標準値で、本編 5.3.3 の規定により区別

した地盤種別と本編 5.5.4 により算出したレベル 1 地震動に対する固有周

期 T に応じて、表-3.5.13 により求める。 cz :地域別補正係数(本編 5.3.4 を参照)

ただし、レベル 1 地震時に対する耐震性能の照査において、土の重量に起因する慣

性力及び地震時土圧の算出に際しては、式(5.2)により算出する地盤面における設

計水平震度を用いるものとする。 khg=czkhg0 ………………………………………………………………式(3.5.6)

ここに、 khg :レベル 1 地震動の地盤面における設計水平震度(小数点以下 2 けたに丸

める) khg0:レベル 1 地震動の地盤面における設計水平震度の標準値で、地盤種別がⅠ

種、Ⅱ種、Ⅲ種に対して、それぞれ、0.16、0.2、0.24 とする。

表-3.5.13 レベル 1 地震動の設計水平震度の標準値 kh0 地盤種別 固有周期 T(s)に対する kh0の値

Ⅰ種 T<0.1

kh0=0.431T1/3 ただし、kh0≧0.16

0.1 ≦T≦1.1 kh0=0.20

1.1<T kh0=0.213 T-2/3

Ⅱ種 T<0.2

kh0=0.427T1/3 ただし、kh0≧0.20

0.2 ≦T≦1.3 kh0=0.25

1.3<T kh0=0.298 T-2/3

Ⅲ種 T<0.34

kh0=0.430T1/3 ただし、kh0≧0.24

0.34 ≦T≦1.5 kh0=0.30

1.5<T kh0=0.393 T-2/3

(2)同一の設計振動単位においては、同一の設計水平震度を用いることを原則とする。

3―264

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

A 解E

(1) 構造物の重量に起因する慣性力を算出する際は、その重量に設計振動単位の固有周期 T(s)に応じて求まる設計水平震度 kh を乗じる。また、土の重量に起因する慣性力を

算出する際は、その重量に地盤面における設計水平震度 khg を乗じる。 (2) 同一の設計振動単位内においては、同じ地震力を見込むことが望ましいという観点か

ら、同一の設計振動単位内にある橋脚ごとの地盤種別を考慮して求めた設計水平震度の

うち最も大きな値を用いるものとする。

3―265

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

② 耐震性能 1 の照査 静的照査法によるレベル 1 地震動に対する耐震性能 1 の照査は、道示Ⅴ6.3.4 の規定によ

るものとする。

A 解E A

耐震性能 1 に対する限界状態は、各部材のコンクリート又は鋼材に生じる応力度が地震

時の許容応力度(割増し係数 1.5)に達した状態としている。したがって、各部材の照査

は、許容応力度法に基づいて行う。 鉄筋コンクリート橋脚及び橋台の照査は、道示Ⅳ下部構造編 5.1、基礎の照査は、道示

Ⅳ下部構造編 5.1、鋼製橋脚及び鋼上部構造の照査は道示Ⅱ鋼橋編、コンクリート上部構

造の照査は道示Ⅲコンクリート橋編 4 章の設計荷重作用時の照査、免震橋の照査は道示

Ⅴ15.1、支承部の照査は道示Ⅴ15.1 の規定に基づいてそれぞれ行う。 耐震性能 1 に対する主な照査項目を表-3.5.14 に示す。

3―266

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.14 耐震性能 1 に対する主な照査項目

耐震性能 1 を満たす各部材の限

界状態の組合せ

耐震性能の観点

主な照査項目 照査において支

配的となる観点

上部構造

本体

力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

耐震設計上の修

復性

耐震設計上の併

用性

耐震設計上の安

全性 応力度<許容応力度

伸縮

装置

損傷が生じない

限界の状態

耐震設計上の修

復性

耐震設計上の併

用性

耐震設計上の安

全性

地震時設計伸縮量

<伸縮装置の伸縮量

支承部

弾性

支承 力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

耐震設計上の修

復性

耐震設計上の併

用性

耐震設計上の安

全性

せん断ひずみ<許容せん断ひずみ

応力度<許容応力度

鋼製

支承 応力度<許容応力度

橋脚及

び橋台

力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

耐震設計上の修

復性

耐震設計上の併

用性

耐震設計上の安

全性 応力度<許容応力度

基礎

基礎の力学的特

性が弾性域を超

えることなく、

基礎を支持する

地盤の力学的特

性に大きな変化

が生じない限界

の状態

耐震設計上の修

復性

耐震設計上の併

用性

耐震設計上の安

全性

支持力<許容支持力

応力度<許容応力度

応答変位<許容変位

フーチン

力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

耐震設計上の修

復性

耐震設計上の併

用性

耐震設計上の安

全性 応力度<許容応力度

3―267

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.5.7 レベル 2 地震動に対する耐震性能の照査

① 設計水平震度

(1) レベル 2 地震動の設計水平震度は以下により算出するものとする。 1) レベル 2 地震動(タイプⅠ)の設計水平震度

レベル 2 地震動(タイプⅠ)の設計水平震度は、式(3.5.7)により算出する。ただ

し、設計水平震度の標準値 khc0に地域別補正係数 cⅠzを乗じた値が 0.4 を下回る場合

には、設計水平震度は 0.4 に構造物特性補正係数 csを乗じた値とする。また、設計水

平震度が 0.4 に地域別補正係数 czを乗じた値を下回る場合には、設計水平震度は 0.4に地域別補正係数 cⅠzを乗じた値とする。

khc=cScⅠzkhc0 …………………………………………………………式(3.5.7) ここに、

khc: レベル 2 地震動(タイプⅠ)の設計水平震度(小数点以下 2 けたに丸める)

khc0: レベル 2 地震動(タイプⅠ)の設計水平震度の標準値で、本編 5.3.5 の規

定により区別した地盤種別と本編 5.5.4 により算出したレベル 2 地震動に

対する固有周期 Ts に応じて、表-3.5.15 により求める。 cs : 道示Ⅴ6.4.4 に規定される構造物特性補正係数 cⅠz: 地域別補正係数(本編 5.3.4 を参照) なお、レベル 2 地震動(タイプⅠ)に対する耐震性能の照査における耐震性能の照

査において、土の重量に起因する慣性力及び地震時土圧の算出に際しては式(3.5.8)により算出する地盤面における設計水平震度を用いる。

khg=cⅠzkhg0 ………………………………………………………………式(3.5.8)

ここに、 khg : レベル 2 地震動(タイプⅠ)の地盤面における設計水平震度(小数点以下

2 けたに丸める) khg0: レベル 2 地震動(タイプⅠ)の地盤面における設計水平震度の標準値で、

地盤種別がⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種に対して、それぞれ、0.30、0.35、0.40 とす

る。 表-3.5.15 レベル 2 地震動(タイプⅠ)の設計水平震度の標準値 khc0

地盤種別 固有周期 T(s)に対する khc0の値

Ⅰ種 T<0.16

khc0=2.58T1/3 0.16≦T≦0.6

khc0=1.40 0.6<T

khc0=0.996T-2/3

Ⅱ種 T<0.22

khc0=2.15T1/3 0.22≦T≦0.9

khc0=1.30 0.9<T

khc0=1.21T-2/3

Ⅲ種 T<0.34

khc0=1.72T1/3 0.34≦T≦1.4

khc0=1.20 1.4<T

khc0=1.50T-2/3

2) レベル 2 地震動(タイプⅡ)の設計水平震度

3―268

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

レベル 2 地震動(タイプⅡ)の設計水平震度は、式(3.5.9)により算出する。ただ

し、設計水平震度の標準値 khc0に地域別補正係数 cⅡzを乗じた値が 0.6 を下回る場合に

は、設計水平震度は 0.6 に構造物特性補正係数 csを乗じた値とする。また、設計水平

震度が 0.4 に地域別補正係数 cⅡzを乗じた値を下回る場合には、設計水平震度は 0.4 に

地域別補正係数 cⅡzを乗じた値とする。 khc=cScⅡzkhc0 …………………………………………………………式(3.5.9)

ここに、

khc : レベル 2 地震動(タイプⅡ)の設計水平震度(小数点以下 2 けたに丸める) khc0: レベル 2 地震動(タイプⅡ)の設計水平震度の標準値で、本編 5.3.5 の規

定により区別した地盤種別と本編 5.5.4 により算出したレベル 2 地震動に

対する固有周期 T に応じて、表-3.5.16 により求める。 cs : 道示Ⅴ6.4.4 に規定される構造物特性補正係数

cⅡz : 地域別補正係数(本編 5.3.4 を参照) なお、レベル 2 地震動(タイプⅡ)に対する耐震性能の照査における耐震性能の照

査において、土の重量に起因する慣性力及び地震時土圧の算出に際しては式(3.5.10)により算出する地盤面における設計水平震度を用いる。

khg=cⅡzkhg0……………………………………………………………式(3.5.10) ここに、

khg : レベル 2 地震動(タイプⅡ)の地盤面における設計水平震度(小数点以下

2 けたに丸める) khg0:

レベル 2 地震動(タイプⅡ)の地盤面における設計水平震度の標準値で、

地盤種別がⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種に対して、それぞれ、0.80、0.70、0.60 とす

る。 表-3.5.16 レベル 2 地震動(タイプⅡ)の設計水平震度の標準値 khc0

地盤種別 固有周期 T(s)に対する khc0の値

Ⅰ種 T<0.3

khc0=4.46T1/3 0.3≦T≦0.7 khc0=2.00

0.7<T khc0=1.24T-4/3

Ⅱ種 T<0.4

khc0=3.22T1/3 0.4≦T≦1.2 khc0=1.75

1.2<T khc0=2.23T-4/3

Ⅲ種 T<0.5

khc0=2.38T1/3 0.5≦T≦1.5 khc0=1.50

1.5<T khc0=2.57T-4/3

(2)同一の設計振動単位においては、同一の設計水平震度を用いることを原則とする。

3―269

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

② 構造物特性補正係数

(1)構造物特性補正係数 cS は、部材の塑性化の程度等の力学的特性を考慮して適切に定

めなければならない。

(2)完全弾塑性型の抵抗特性を有する 1 自由度振動系にモデル化出来る構造系に対する構

造物特性補正係数 cSは、式(3.5.11)により算出しなければならない。

cs=12

1

a-μ………………………………………………………………式(3.5.11)

ここに、

μa : 完全弾塑性型の抵抗特性を有する構造系の許容塑性率で、鉄筋コンクリ

ート橋脚の場合においては、耐震性能 2 に対しては道示Ⅴ 式(10.2.3)により、耐震性能 3 に対しては道示Ⅴ 式(10.2.4)により、それぞれ算

出する。

3―270

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

解E A

構造物特性補正係数は、1 基の下部構造とそれが支持する上部構造部分を単位とする

構造系を 1 質点の振動系に置換し、その非線形応答をエネルギー一定則によって近似的

に求めた場合の設計水平震度の補正係数を与えたものである(図-3.5.16 参照)。 式(5.7)は、主たる塑性化を鉄筋コンクリート橋脚の基部にのみ考慮する場合の許容

塑性率の算定式である。また、ラーメン橋のように、橋脚基部以外の部位にも主たる塑

性化を考慮する場合には、図-3.5.17 に示すように、橋全体系に対するプッシュオーバ

ー解析等を行って降伏変位δy と終局変位δu を求め、これらの値を用いて式(5.10)により許容塑性率を求めればよい。ここで、橋全体系に対する終局変位は、橋の限界状

態を踏まえ、橋の構造形式に応じて設定する必要がある。

図-3.5.16 橋脚の弾塑性応答変位 図-3.5.17 プッシュオーバー解析のモデル例

③ 耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査

静的照査法によるレベル 2 地震動に対する耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査は、道示

Ⅴ6.4.5 から 6.4.10 の規定に基づいて照査を行うものとする。

A 解E A

耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査は、道示Ⅴ5.3 又は 5.4(本編 5.4.2)の規定に基づ

いて設定する当該部材の限界状態を超えないことを照査することにより行う。 表-3.5.17 及び表-3.5.18 は、一般的な桁橋で、橋脚に主たる塑性化を考慮すること

を設計条件とした場合を例として、耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査を行う時の各部材

に対して設定される限界状態と主な照査項目をまとめて示したものである。

3―271

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.17 耐震性能 2 に対する主な照査項目

(一般的な桁橋で、鉄筋コンクリート橋脚に主たる塑性化を考慮することを設計条件とした場合の例)

耐震性能 2 を満たす各部材の限

界状態の組合せ

耐震性能の観点

主な照査項目 調査において

支配的となる

観点

上部構造

遊間 損傷が生じない

限界の状態

耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

上部構造端部の遊間の設計値

<上部構造端部の遊間

支承部

弾性

支承

安定した力学的

特性を示す限界

の状態 耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

耐震設計上の

安全性

せん断ひずみ<許容せん断ひずみ

断面力<耐力

鋼製

支承

力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

断面力<耐力

橋脚

損傷の修復を容

易に行い得る限

界の状態

耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

安全性

耐震設計上の

安全性

慣性力<地震時保有水平耐力

残留変位<許容残留変位

基礎

副次的な塑性化

に留まる限界の

状態

耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

耐震設計上の

安全性

設計水平地震力<基礎の降伏耐力

作用せん断力<せん断耐力

フ ー チ

ング

力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

耐震設計上の

安全性

作用曲げモーメント

<降伏曲げモーメント

作用せん断力<せん断耐力

3―272

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.18 耐震性能 3 に対する主な照査項目 (一般的な桁橋で、鉄筋コンクリート橋脚に主たる塑性化を考慮することを設計条

件とした場合の例)

耐震性能 3 を満たす各部材の限

界状態の組合せ

耐震性能の観点

主な照査項目 調査において

支配的となる

観点

上部構造

遊間 損傷が生じない

限界の状態

耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

上部構造端部の遊間の設計値

<上部構造端部の遊間

支承部

弾性

支承

安定した力学的

特性を示す限界

の状態 耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

耐震設計上の

安全性

せん断ひずみ<許容せん断ひずみ

断面力<耐力

鋼製

支承

力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

断面力<耐力

橋脚

橋脚の水平耐力

を保持できる限

界の状態

耐震設計上の

安全性 慣性力<地震時保有水平耐力

基礎

副次的な塑性化

に留まる限界の

状態

耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

耐震設計上の

安全性

設計水平地震力<基礎の降伏耐力

作用せん断力<せん断耐力

フ ー チ

ング

力学的特性が弾

性域を超えない

限界の状態

耐震設計上の

修復性

耐震設計上の

併用性

耐震設計上の

安全性

作用曲げモーメント

<降伏曲げモーメント

作用せん断力<せん断耐力

3―273

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.6 動的照査法による耐震性能の照査

5.6.1 一般

(1) 動的照査法による耐震性能の照査は、道示Ⅴ7 章の規定によるものとする。 (2) 動的照査法による耐震性能の照査は、道示Ⅴ7.2 に規定される地震動を作用させたと

きに、各部材に生じる断面力、変位等を動的解析により算出し、道示Ⅴ7.4 の規定に

基づいて行うことを標準ととする。 (3) 動的解析では、解析目的及び設計地震動のレベルに応じて、道示Ⅴ7.3 の規定により

適切な解析モデルを設定するとともに、適切な解析方法を選定しなければならない。

A 解E A

(2)単柱式の橋脚と同様にモデル化することができる構造部材については、地震時保有

水平耐力法による耐震性能の照査と同様に、地震時保有水平耐力や許容水平変位、

又は、許容残留変位等の照査を行う。一方、複雑な構造系の橋では、橋全体あるい

は各構造部材として地震後に要求される機能に応じて、塑性化を考慮してよい部材、

考慮してはならない部材等について十分に検討し、橋全体の耐震性能が確保できる

ように照査するのがよい。なお、一般には、各構造部材に生じる断面力又は応答塑

性率等の応答値が、いずれも断面の耐力又は許容塑性率以下に収まっていることを

照査する。さらに、動的照査法により耐震性能の照査を行う場合には、以下の点を

確認するのがよい。 1) 解析モデルや設定パラメータが構造特性に適合していること。 2) 固有周期、固有振動モードの形状、応答波形、履歴曲線、変形分布、断面力分

布、塑性化が生じた部材の位置等に基づき橋全体系の挙動を把握し、得られた

解析結果が橋の地震時の挙動からみて妥当であること 3) 塑性化を考慮してはならない部材に塑性化が生じていないこと 4) 部材に塑性化が生じることにより橋全体系が不安定にならないこと 5) 免震橋においては、設計で考慮したように主として免震支承でエネルギーを吸

収していること (3)動的解析による橋の地震時挙動の解析は、固有振動特性、減衰特性、橋脚等の非線

形履歴特性を十分考慮し、橋の動的特性を表現できる解析モデルを用いて地震時の応

答を算出する必要がある。動的解析における橋のモデル化にあたっては、地震レベル

とそれに対する部材の限界状態に応じて適切なモデル及び解析方法を選定する必要

がある。レベル 1 地震動に対する耐震性能 1 の照査では、弾性域における橋の動的

特性を表現できる解析モデル及び解析方法を、レベル 2 地震動に対する耐震性能 2又は耐震性能 3 の照査では、必要に応じて部材の非線形履歴特性を考慮し、橋の非

線形域の動的特性を表現できる解析モデル及び解析方法を用いる必要がある。

3―274

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.6.2 動的解析に用いる地震動

動的解析に用いる地震動は、道示Ⅴ7.2 の規定によるものとする。

A 解E A

動的解析法として応答スペクトル法を用いる場合には、道示Ⅴ4.2、4.3 に示す加速度応

答スペクトルを用いる。 時刻歴応答解析法を用いた時に使用する加速度波形は、既往の代表的な強震記録を元に

道示Ⅴ4.2 及び 4.3 に規定する加速度応答スペクトルに近い特性を有するように振幅調整

した加速度波形を用いることとする。時刻歴応答解析に用いる加速度波形のもととした強

震記録を表-3.5.19 に示す。

表-3.5.19 動的解析に用いる振幅調整した加速度波形のもととした強震記録

3―275

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.6.3 解析モデルおよび解析方法

(1)動的解析に際しては、次に示す解析目的及び設計地震動のレベルに応じて、適切な解

析モデル及び解析方法を用いるものとする。 1) レベル 1 地震動に対する耐震性能 1 の照査では、弾性域における橋の動的特性を

表現できる解析モデル及び解析方法を用いるものとする。 2) レベル 2 地震動に対する耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査では、必要に応じて塑

性化を考慮する部材の非線形の効果を含めた橋の動的特性を表現できる解析モデ

ル及び解析方法を用いるものとする。 (2)部材のモデル化は、道示Ⅴ7.3.2 の規定によるものとする。

A 解E A (1) 耐震性能の照査に用いる動的解析法としては以下の方法があるが、一般には、構造部

材に対して非線形履歴モデルを用いた時刻歴応答解析法を選定するのがよい。 ① 非線形履歴モデルを用いた時刻歴応答解析法 ② 等価線形化法を用いた時刻歴応答解析法 ③ 等価線形化法を用いた応答スペクトル法 ④ プッシュオーバー解析と時刻歴応答解析法を組合せた方法

(2) レベル 2 地震動に対する耐震性能の照査に用いる動的解析モデルを作成する際に、参

照すべき道示Ⅴの規定等を整理したものを表-3.5.20 に示す。

表-3.5.20 解析モデルと関連する道示Ⅴの規定 動的解析モデル 解析モデルを作成する上で関連する道示Ⅴの規定等

解析対象とするモデル化の範囲 表-解 6.2.1 設計振動単位

非線形域の特性を考慮する部材 図-解5.3.1塑性化あるいは非線形域を考慮する部材の組合せの例

上 部 構 造 コンクリート上部構造

14.3 コンクリート上部構造

鋼上部構造 14.2 鋼上部構造

下 部 構 造

鉄筋コンクリート橋脚

式(10.2.1):破壊形態の判定 10.3 単柱式の鉄筋コンクリート橋脚の水平耐力及び水平変

位の算出 10.4 コンクリートの応力度-ひずみ曲線及び限界圧縮ひず

み並びに鉄筋の応力-ひずみ曲線及び許容ひずみ 10.6 鉄筋コンクリートラーメン橋脚の地震時保有水平耐力

及び許容塑性率並びに動的解析に用いる非線形履歴モデル

10.7 上部構造等の死荷重による偏心モーメントが作用する鉄筋コンクリート橋脚の地震時保有水平耐力及び許容塑性率並びに動的解析に用いる非線形履歴モデル

鋼 製 橋 脚 11.2 動的照査法による照査 11.3 鋼製橋脚の非線形履歴モデル、降伏変位及び水平耐力

基礎構造~周辺地盤系

式(解 6.2.1)~式(解 6.2.5)、式(解 6.2.12)~式(解 6.2.14) 12.2 橋脚基礎に生じる断面力及び変位並びに地盤反力度の算出

支 承 構 造 上部構造と下部構造の結合条件

表-解 6.2.2 支承部のモデル化の例

支 承 15.3 免震支承のモデル化 耐震設計上ごく軟弱な粘性土層又は橋に影響を与える液状化が生じると判定された土層の影響

固有周期算定に際しては土質定数の低減は見込まない。 (道示Ⅴ66 頁下から 9 行~4 行)

減 衰 効 果 7.3.2 解(3) 表-解 7.3.1 各構造要素の減衰定数の標準値

下部構造の位置によって地盤種別が異なることによる地震動特性の違いの影響

各々の地盤種別に対する地震動を用いて動的解析を行う。 (道示Ⅴ112 頁 22 行~27 行)

3―276

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.6.4 耐震性能の照査

(1)動的照査法によるレベル 1 地震動に対する耐震性能 1 の照査は、道示Ⅴ7.4(1)の規定

によるものとする。 (2)動的照査法によるレベル 2 地震動に対する耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査は、道

示Ⅴ7.4(2)から(5)の規定によるものとする。

A 解E A

(1)耐震性能 1 に対する限界状態は、各部材のコンクリート又は鋼材に生じる応力度が地

震時の許容応力度(割増し係数 1.5)に達した状態としている。したがって、各部材の

照査は、動的解析により算出される断面力を用いて許容応力度法に基づいて行う。 なお、一般に、耐震設計上の地盤面より下に位置する橋脚基礎については、動的解析

により求められる橋脚基部に生じる最大断面力を橋脚基礎に作用する地震力とみなして、

道示Ⅳ下部構造編 5.1 及び 9.2 の規定により照査を行うものとする。 (2)耐震性能 2 又は耐震性能 3 の照査は、道示Ⅴ5.3 又は 5.4(本編 5.4.2)の規定に基づい

て設定する当該部材の限界状態を超えないことを照査することにより行う。 動的照査法により耐震性能の照査を行う場合には、橋全体系としての耐震性を確保す

ることに留意するため、橋全体系としての水平耐力が過度に小さくなっていないことや

変形が過度に大きくなっていないこと等に配慮するのがよい。具体的に、静的照査法に

おいては、過度に水平耐力が小さい橋が設計されることがないように、設計水平震度に

下限値を設定しているのと同様に、動的照査法においても、耐震性能を照査した橋に対

して、橋脚の地震時保有水平耐力が道示Ⅴ7.4 式(解 7.4.1)を満たしていることを確認

するのがよい。 Pa≧0.4c2zW …………「道示Ⅴ7.4 の式(解 7.4.1)」

ここに、 Pa :橋脚の地震時保有水平耐力(N) c2z :地域別補正係数でタイプⅠは cⅠz、タイプⅡは cⅡzを用いる W :地震時保有水平耐力法に用いる等価重量(N)

また、可動支承を有する橋脚に対しては、静的照査法による場合と同様に、死荷重反力

の 1/2 に設計水平震度を乗じた値に相当する地震時保有水平耐力を確保するのが良い。 表-3.5.21 は、動的照査法によるレベル 2 地震動に対する耐震性能の照査項目と道示Ⅴ

の規定等をまとめたものである。

3―277

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

表-3.5.21 動的照査法によるレベル2地震動に対する耐震性能の照査(道示Ⅴの規定) 橋を構成する部材と橋の構

造形式 動的解析により得られる応答量 耐震性能の照査を行う上で関連する道示Ⅴの規定等

上部構造

コンクリート上部構造 断面力、曲率 14.3.1 耐力及び許容変形量並びに応答値を算出する

ためのモデル化

鋼上部構造 断面力、変形量 14.2.1 耐力及び許容変形量並びに応答値を算出するためのモデル化

上部構造端部の遊間 桁端部相対変位 14.4.1 上部構造端部の遊間

鉄筋コンクリート橋脚

塑性率(変位、曲率、回転角) せん断力 軸 力

10.2 単柱式のコンクリート橋脚の破壊形態の判定、地震時保有水平耐力及び許容塑性率並びに動的解析に用いる非線形履歴モデル

10.3 単柱式の鉄筋コンクリート橋脚の水平耐力及び水平変位の算出

10.5 鉄筋コンクリート橋脚のせん断耐力 10.6 鉄筋コンクリートラーメン橋脚の地震時保有水

平耐力及び許容塑性率並びに動的解析に用いる非線形履歴モデル

10.9 上部構造等の死荷重による偏心モーメントが作用する鉄筋コンクリート橋脚の地震時保有水平耐力及び許容塑性率並びに動的解析に用いる非線形履歴モデル

最大応答塑性率μmax を式(6.4.9)に代入して得られる残留変位δR 6.4.6 鉄筋コンクリート橋脚の照査

慣性力の下限値 式(解7.4.1):最小限の耐力を保有しているか

鋼 製 橋 脚

塑性率(変位、曲率、回転角) 軸 力 11.2 動的照査法による照査

最大応答塑性率μmax を式(6.4.9)に代入して得られる残留変位δR

式(6.4.9) 11.2 動的照査法による照査

慣性力の下限値 式(解7.4.1):最小限の耐力を保有しているか

基 礎 構 造

橋脚基部が塑性化

死荷重と橋脚の終局水平耐力を式(6.4.11)に代入して求めた基礎に作用する地震力 6.4.7 橋脚基礎の照査

12章 橋脚基礎の応答値及び許容値 橋脚の挙動が弾性域

死荷重と橋脚基部に生じる断面力(=基礎に作用する地震力とする)

支承構造

ゴム支承、免震 支承以外の支承 断 面 力 15.4 支承部の照査に用いる設計地震力

15.5 支承部の照査 ゴ ム 支 承 免 震 支 承

断 面 力 せん断ひずみ

免震橋

鉄筋コンクリート橋脚 塑性率(変位、曲率、回転角) 式(9.2.1)と式(9.2.2):塑性変形の制限

鋼 製 橋 脚 免震支承と鋼製橋脚に生じる非線形化の度合い

免震支承においてエネルギー吸収が確実に行えることに留意し、個別に設定する。(道示Ⅴ、157頁5~9行)

複雑な構造系を有する橋 地震時の挙動が複雑な構造形式の橋

橋全体あるいは各構造部材として地震後に要求される機能に応じて、塑性化を考慮してよい部材、考慮してはならない部材等について十分に検討し、橋全体の耐震性能が確保できるようにする。具体的には、各構造部材に生じる断面力又は応答塑性率が、いずれも断面の耐力又は許容塑性率以下に収まっていることを照査する。 各部材間の耐力等のバランスが悪くなっていないこと、橋全体系が不安定になっていないこと、一部の部材の破壊が橋全体系の崩壊に結びつかないように橋としてのリダンダンシーのある構造であることを検討する。

すべての橋

1) 解析モデルや設定パラメータが構造特性に適合していること。 2) 固有周期、固有振動モードの形状、応答波形、履歴曲線、変形分布、断面力分布、塑性化が生じ

た部材の位置等に基づき橋全体系の挙動を把握し、得られた解析結果が橋の地震時の挙動からみて妥当であること

3) 塑性化を考慮してはならない部材に塑性化が生じていないこと 4) 部材に塑性化が生じることにより橋全体系が不安定にならないこと 5) 免震橋においては、設計で考慮したように主として免震支承でエネルギーを吸収していること

3―278

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.7 落橋防止システム

5.7.1 一般

(1)落橋防止システムは、道示Ⅴ16 章に基づいて設計するものとする。 (2)落橋防止システムは、桁かかり長、落橋防止構造及び横変位拘束構造から適切に選定

した落橋防止システムを設置しなければならない。 (3)落橋防止システムを構成する各要素は次の機能を備えなければならない。

1) 桁 か か り 長:支承部が破壊した時に、上部構造が下部構造の頂部から逸脱する

ことを防止する機能 2) 落橋防止構造:支承部が破壊した時に、橋軸方向の上下部構造間の相対変位が桁

かかり長を超えないようにする機能 3) 横変位拘束構造:支承部が破壊した時に、橋の構造的要因等によって上部構造が橋

軸直角方向に変位する事を拘束する機能 (4)橋軸方向に大きな変位が生じにくい構造特性を有する橋又は端支点の鉛直支持が失わ

れても上部構造が落下しない構造特性を有する橋の場合においては、落橋防止構造の

設置を省略しても良い。 (5)横変位拘束構造は、上部構造の橋軸直角方向への移動により落橋する可能性のある橋

に対して設置を行うものとし、次の条件のいずれかに該当する橋とする。 1) 上部構造の構造条件や幾何学的条件から、支承の破壊後に上部構造が隣接桁や橋台

の拘束を受けずに回転できる橋で、かつ径間数が 1 径間又は 2 径間の一連の上部構

造を有する橋 2) 下部構造の頂部幅が狭い橋

A 解E A

(1)設計で想定されない地震動が作用したり、周辺地盤の破壊や構造部材の予測しない複

雑な振動によって、想定を超える地震力や変位、変形が橋に生じたりする場合がある。

このような不測の事態に対するフェイルセーフ機構として落橋防止システムに関する規

定を示している。 図-3.5.18 に落橋防止システム選定の基本的な考え方を示す。

3―279

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.18 落橋防止システム選定の基本的な考え方

(4)落橋防止構造の省略が可能となる橋軸方向に大きな変位が生じにくい構造特性の橋を

以下に示す。 1) 両端が橋台に支持された一連の上部構造を有する橋

両端が橋台に支持された一連の上部構造を有する橋は、橋長や地盤種別にかかわ

らず、構造特性により橋軸方向に落橋に至るような大きな相対変位が上下部構造間

に生じにくい橋とみなすことができることが明らかとなっていることから、落橋防

止構造を省略してよい。ただし、橋台に背面土等がない特殊な形式や背面土に軽量

盛土を用いた場合は、落橋防止構造を省略することが出来ない。 2) 橋軸方向に 4 基以上の下部構造において弾性支持又は固定支持される一連の上部構

造を有する橋 多点支持される橋では、支承の破壊に対する補完性又は代替性が高いため、地盤種

別にかかわらず、図-3.5.19 示すような橋軸方向に 4 基以上の下部構造において弾

性支持又は固定支持される一連の上部構造を有する橋は大きな変位が生じにくい橋

とみなせるため、落橋防止構造を省略してよい。

3―280

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.19 橋軸方向に 4 基以上の下部構造において弾性支持又は固定支持され る一連の上部構造を有する条件の例

3) 2 基以上の下部構造が剛結される上部構造を有するラーメン橋 ラーメン橋は、下部構造が上部構造に剛結された構造であり、この剛結部が破壊

して上下部構造間が分離する可能性は極めて低いことから、大きな変位が生じにく

い橋としてみなせるため、2 基以上の下部構造が剛結される上部構造を有するラー

メン橋の場合には、落橋防止構造を省略してよい。

図-3.5.20 2 基以上の下部構造が剛結される上部構造を有するラーメン橋の例

(5)横変位拘束構造の設置が必要となる構造条件を以下に示す。

1) 1 径間又は 2 径間の一連の上部構造を有する橋で、上部構造の幾何学的条件から上

部構造が隣接桁や橋台の拘束を受けずに回転できる橋は、横変位拘束構造を設置す

る。なお、斜角を有する橋の場合には道示Ⅴ 式(解 16.1.2)、曲線橋の場合には道

示Ⅴ 式(解 16.1.3)にて簡便に判定することも出来る。 ①斜橋が回転できる条件

22sin θ

>Lb………………………………………………道示Ⅴ式(解 16.1.2)

②曲線橋が回転できる条件

'cosθ >Lb……………………………………………… 道示Ⅴ式(解 16.1.3)

ここに、 L:一連の上部構造の長さ(m) b:上部構造の全幅員(m) θ:斜角(°)

3―281

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

θ’:曲線橋の回転条件を評価するための斜角(°)(図-解 16.1.5 参照)

式(解 16.1.2)及び式(解 16.1.3)は、図-3.5.21 及び図-3.5.22 に示すように

上部構造の幾何学的条件から、上部構造が隣接桁や橋台パラペットの拘束を受けずに

回転できる条件を示している。

図-3.5.21 隣接桁や橋台の影響を受けずに斜橋が回転できる条件

図-3.5.22 隣接桁や橋台の影響を受けずに曲線が回転できる条件

3―282

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

図-3.5.23 橋軸直角方向に横変位拘束構造が必要な斜橋の条件

図-3.5.24 橋軸直角方向に横変位拘束構造が必要な曲線橋の条件

3―283

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.7.3 桁かかり長 (1) 桁かかり長は、道示V16.2 桁かかり長に基づいて算出するものとする。桁かかり長

は、式(3.5.12)により算出する値以上とする。ただし、この値が式(3.5.13)によ

る桁かかり長の最小値を下回る場合には、桁かかり長は式(3.5.13)により算出する

値以上とする。なお、斜橋や曲線橋のように橋軸方向と橋台に働く土圧の作用方向が

一致しない場合においては、桁かかり長は支承線に直角な方向に確保する。 SER=UR+UG≧SEM ……………………………………………式(3.5.12) SEM=70+0.005l ………………………………………………式(3.5.13) UG=εGL …………………………………………………………式(3.5.14)

ここに、 SER ; 必要桁かかり長(m) UR ; レベル 2 地震動により生じる支承部の最大応答変形量(m)で、橋に影

響を与える地盤の液状化又は流動化が生じると判定される場合におい

ては、この影響を適切に考慮する。ただし、UR算出に際して落橋防止構

造及び横変位拘束構造の効果は考慮してはならない。 UG ; 地震時の地盤ひずみによって生じる地盤の相対変位(m) SEM ; 桁かかり長の最小値(m) εG ; 地震時地盤ひずみで、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ種地盤では、それぞれ 0.0025、0.00375、

0.005 とする。 L ; 桁かかり長に影響を及ぼす下部構造間の距離(m) l ; 支間長(m)1 橋脚上に 2 つの上部構造の端部が支持され両側の桁の支

間長が異なる場合には、大きい方の支間長を用いる。

(2) 道示Ⅴ16.1(4) 1)の条件に該当する橋の場合においては、桁かかり長は(1)を満たす

とともに、式(3.5.15)により算出する値以上とする。なお、上部構造両端部の支承線

が平行でなく非対称の斜橋では、両端いずれか小さい方の斜角を用いて SEθR を算出

する。 SEθR=2Lθsin(αE/2)cos(αE/2-θ) …………………………式(3.5.15)

ここに、 SEθR ; 道示Ⅴ16.1(4) 1)の条件に該当する橋の必要桁かかり長(m) Lθ ; 上部構造の一連の長さ(m) θ ; 斜角(°) αE ; 限界脱落回転角(°)で、一般に 2.5°としてよい。

解E A

(1)桁かかり長は、レベル 2 地震動が作用した場合に桁端部に生じる上下部構造間の最

大応答変位と地盤ひずみを基本にして算出する値以上とすることを規定している。ただ

し、このようにして算出した必要桁かかり長が最小値 SEM よりも小さくなる場合には

SEM以上とすることを規定している。

3―284

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

(2)上部構造が隣接桁や橋台の拘束を受けずに回転できる橋で、かつ 1 径間又は 2 径間

の上部構造を有する橋は落橋が生じる可能性があるため、回転の影響を考慮して必要桁

かかり長を設定することを規定している。

3―285

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.7.4 落橋防止構造

(1)落橋防止構造の耐力は、式(3.5.16)により算出する設計地震力を下回ってはならな

い。ここで、落橋防止構造の耐力は、鋼部材の場合においては割増係数 1.7 を考慮した

許容応力度から算出してよい。コンクリート部材の場合においては、その耐力を用いて

よい。 1) 上下部構造を連結する形式の落橋防止構造の場合 HF=PLG ただし HF≦1.5Rd 2) 2 連の桁を相互に連結する形式の落橋防止構造の場合 HF≦1.5Rd ここに、

HF ; 落橋防止構造の設計地震力(kN) PLG ; 当該支点を支持する下部構造の橋軸方向の水平耐力(kN) Rd ; 死荷重反力(kN)。ただし、2 連の桁を相互に連結する形式の落橋防

止構造を用いる場合においては、いずれか大きい方の鉛直反力の値を

用いる。 (2)落橋防止構造の設計遊間量は、式(3.5.17)により算出する値を超えない範囲で可能

な限り大きい値としなければならない。 SF≦cFSE …………………………………………………………………式(3.5.17) ここに、

SF ; 落橋防止構造の設計最大遊間量(m) SE ; 桁かかり長(m) cF ; 落橋防止構造の設計変位係数で、0.75 を標準とする。

(3)その他の規定に関しては、道示Ⅴ16.3 落橋防止構造を参照のこと。

A 解E A

(1)落橋防止構造は、桁かかり長の機能と補完するもので、支承部が破壊し、上下部構

造間に大きな相対変位が橋軸方向に生じた場合に、これが桁かかり長に達する前に機

能し、上部構造の端部が下部構造の頂部から逸脱することを防止することが期待され

る構造である。 従来は、落橋防止構造の設計地震力は、死荷重反力の 1.5 倍に相当する力としてい

たが、今回の改定では、当該支点を支持する下部構造の耐力に相当する力としている。 以下に、落橋防止構造の設置例を示す。

……式(3.5.16)

3―286

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

(a)鋼上部構造の場合 (b)コンクリート部構造の場合

図-3.5.25 上部構造と下部構造を連結する落橋防止構造の例

(a)コンクリートブロックを用いる落橋防止構造 (b)鋼製ブラケットを用いる落橋防止構造

図-3.5.26 上部構造および下部構造に突起を

設ける落橋防止構造の例

(a)鋼上部構造の場合 (b)コンクリート上部構造の場合

図-3.5.27 2 連の上部構造を相互に連結する落橋防止構造の例

3―287

第 3 編 設計 第 5 章 耐震設計

5.7.5 横変位拘束構造

(1) 横変位拘束構造は、道示Ⅴ16.1(4) 1)に該当する橋の上部構造においては端支点に、

また、16.1.(4) 2)に該当する橋の上部構造においては端支点及び中間支点に設置しな

ければならない。 (2) 横変位拘束構造の耐力は、式(3.5.18)により算出する設計地震力を下回ってはなら

ない。この場合、横変位拘束構造の耐力は、鋼部材の場合においては割増係数 1.7 を

考慮した許容応力度から算出してよい。コンクリート部材の場合においては、その耐

力を用いてよい。 HS=PTR ただし HS≦3khRd

ここに、 HS ; 横変位拘束構造の設計地震力(kN) PTR ; 当該支点を支持する下部構造の橋軸直角方向の水平耐力(kN) kh ; レベル 1 地震動に相当する設計水平震度で、道示Ⅴ6.3.3 の規定によ

る。 Rd ; 死荷重反力(kN)

(3) 横変位拘束構造の設計遊間量は、レベル 2 地震動に対する支承部の橋軸直角方向へ

の変形量に余裕を見込んだ値とする。 (4)その他の規定に関しては、道示Ⅴ16.4 横変位拘束構造を参照のこと。

解E A

(1)道示Ⅴ16.1.(4) 1)の規定に該当する斜橋や曲線橋では、上部構造が隣接桁や橋台の拘束

を受ける構造特性を有していれば橋軸直角方向への変位は生じにくいため、横変位拘束

構造は端支点のみに設置すればよく、中間支点上の設置は必要ない。道示Ⅴ16.1(4) 2)の規定に該当する下部構造の頂部幅が狭い橋では、支承部に破壊が生じることで橋軸直

角方向に落橋の可能性があるため、端支点及び中間支点に横変位拘束構造を設置するこ

とを規定している。 (2)設計遊間量は、支承が破壊した場合に横変位拘束構造が速やかに作動して上下部構造

の相対変位が過大とならないようにする必要があることから、レベル 2 地震動に対する

支承部の変形量と同程度としている。なお、固定条件の場合には、支承部の変形量は零

としてよい。また、横変位拘束構造の遊間量に対する余裕量は、従来の規定を踏襲して

一般に 15mm 程度を目安としてよい。

…………………………………………式(3.5.18)

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